説明

印刷装置および印刷装置の書込方法

【課題】迅速な印刷処理・書込処理を可能とする印刷装置およびその書込方法を提供する。
【解決手段】無線タグMを有する記録媒体D上に印刷を行う印刷部14と、記録媒体を印刷部へと搬送する搬送部32,33と、電磁波を放射して無線タグMにデータを書き込むアンテナ部34と、アンテナ部を移動する移動部35と、搬送部が記録媒体を印刷部へと搬送している際に、無線タグにデータ書込み可能にアンテナ部を移動させるべく移動部を制御する制御部10をもつ印刷装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無線タグを有する記録媒体に対して記録媒体には印刷を行い無線タグには書き込みを行う印刷装置および印刷装置の書込み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、印刷装置は用途が複雑化・多様化してきており、様々な形態の印刷処理が可能になってきている。そこで、例えば、台紙上にラベルを貼付し、このラベルに無線タグを設け、ラベルには印刷、無線タグへはアンテナからのデータの書込み処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−313901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の印刷装置においては、記録媒体への印刷と共に記録媒体が有する無線タグへデータを書き込む処理を行う場合、無線タグへの書込みのためのアンテナは、固定されたものであり、印刷のための記録媒体の搬送と無線タグへの書込みを同時に行うと、無線タグへのデータ書込みの精度が悪かった。従って、無線タグへの書込み精度を向上させるためには、無線タグへのデータの書込みの間、搬送系を停止する必要が生じるために全体の処理動作は必ずしも最短時間で行われているわけではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
課題を解決する一実施形態は、
無線タグを有する記録媒体に印刷を行う印刷部と、
前記記録媒体を搬送路に沿って前記印刷部へと搬送する搬送部と、
電磁波を放射して前記無線タグにデータを書き込むアンテナ部と、
前記アンテナ部を前記搬送路に沿って移動させる移動部と、
前記搬送部が前記記録媒体を前記印刷部へと搬送している際に、前記無線タグにデータ書込み可能に前記アンテナ部を移動させるべく前記移動部を制御する制御部と、
を具備することを特徴とする印刷装置である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の一実施形態に係る印刷装置における外観の一例を示す外観図。
【図2】同印刷装置の内部の一例を示す説明図。
【図3】同印刷装置における機械的な内部構造の一例を示す側面図。
【図4】同印刷装置における機械的構成の一例を示す説明図。
【図5】同印刷装置における電気的構成の一例を示すブロック図。
【図6】同印刷装置における無線タグを伴う台紙の一例を示す説明図。
【図7】同印刷装置における無線タグ書込処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係る印刷装置1を図1乃至図5を用いて、以下に詳細に説明する。本発明の一実施形態に係る印刷装置1は、図1乃至図5において、全体の動作を制御する制御部11と、ユーザの操作を受けて操作信号を制御部11等に供給する印刷装置1の正面に設けられた操作部5と、操作情報や操作メニュ等を表示する液晶画面等を用いた表示部5と、操作情報や設定情報、動作プログラム等が格納されたROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13と、制御部11の制御下においてラベル等の記録媒体に印刷を行うサーマルヘッド14と、ユーザが操作することで印刷発行コマンドや記録媒体に関する情報(値a,値b,値c)等を入力する外部のホストコンピュータH等と通信を行うための通信部15と、図4に示すように発光部16−1と受光部16−2により台紙Dの光の透過率を検出することで、後述するラベル41(図6参照)を検出するラベルセンサ16を有している。なお、図4は、無線タグMの搬送路31およびこの搬送路31に平行して設けられたアンテナ用リニアモータ35と無線タグ用アンテナ34の現在位置を検知するリニアセンサ36を拡大して描いた図面である。また、ラベルセンサ16は、台紙Dの光の透過率を検出するもの以外に、反射センサとして、例えば、表面にラベルが貼り付けられた台紙の裏側に黒マーク等が印字されたものに対して光を照射し、この黒マーク箇所とその他の箇所(黒マーク以外の部分)との光の反射率からラベル41の位置を検出する反射センサであってもよい。
【0008】
また、印刷装置1は、さらに、無線タグMに書き込むための電磁波を生成する電磁波発生部30と、ラベル等の記録媒体を貼付した台紙等を搬送する搬送路31と、このラベル等の記録媒体を貼付した台紙等を搬送するモータである台紙搬送モータ32,33と、電磁波発生部30から電磁波を受けて無線タグMに書き込むために電磁波を放射する無線タグ用アンテナ34と、この無線タグ用アンテナ34を移動するためのアンテナ用リニアモータ35と、この無線タグ用アンテナ34の現在位置を検知するリニアセンサ36を有している。また、図2および図3において、リボン供給軸55,リボン巻取軸56、用紙保持軸57,一対のサイドフェンス58a,58bが示されている。
【0009】
このような構成をもつ印刷装置1は、制御部11の制御下において、操作部4またはホストコンピュータHからの操作に従って、一例として、台紙に貼付されたラベルにサーマルヘッド14により例えば価格情報等を印字して、台紙搬送モータ32,33により台紙を搬送し、印字されたラベル等の記録媒体を外部に供給する。
【0010】
また、印刷装置1が扱う用紙の一例として、図6に示すように、台紙Dの上に複数のラベル41が貼付されており、さらに、ラベル41上には、無線タグMが貼付されている。ここで、後述するように、台紙Dについて、ラベル41の大きさa、無線タグMの貼付される位置b、ラベルの間隔cが例えば操作部4により入力されて制御部11に格納されることが望ましい。
【0011】
なお、この印刷装置1の無線タグ用アンテナ34により、無線タグMにデータが書き込まれるが、この印刷装置1は、無線タグMが貼付されないラベル41に印刷することもできるし、ラベル41が貼付されていない単なる記録媒体である用紙に対しても印刷は可能である。
【0012】
次に、この実施形態の印刷装置1による無線タグへのデータ書込み処理を、図7のフローチャートを用いて、以下に詳細に説明する。すなわち、無線タグMが貼付されたラベル41に対して印刷を行うとともに、無線タグMに対してデータの書込みを行う場合、二つの作業を同時に行うかある程度平行して行えれば、総合的な処理時間が短縮されることは明白である。そこで、本発明の実施形態においては、印刷時の台紙搬送モータ32,33を用いて台紙Dをサーマルヘッド14に移動する期間に、無線タグ用アンテナ34を無線タグMに伴走させることでラベル41上の無線タグMへの書込みを行うものである。
【0013】
すなわち、この無線タグ用アンテナ34の書込み処理は、アンテナが固定されていれば、台紙搬送モータ32,33は、書込みの際に停止させなければ書込み精度が低下するが、本発明の実施形態においては、台紙搬送モータ32,33の搬送速度と等速に無線タグ用アンテナ34を搭載したアンテナ用リニアモータ35を移動させるため、書き込み中も台紙搬送モータ32,33の速度を減速させる必要がない。
【0014】
すなわち、図7のフローチャートを用いて具体的に説明すると、印刷装置1の制御部11は、印刷装置1の電源がオンされ、印刷装置1が起動したことの検出を待機し(ステップS11)、印刷装置が起動したことを検出すると(ステップS11のYes)、次に、ユーザが使用するための外部のホストコンピュータHから通信部15を介して台紙Dについて、ラベル41の大きさa、無線タグMの貼付される位置b、ラベルの間隔cの値を受信するとRAM13等の記憶領域にこれらの値a、値b、値cを格納する(ステップS12)。なお、これらの値a、値b、値cは、操作部4のオペレーションパネルから入力されるものであってもよい。制御部11は、台紙Dを台紙搬送モータ32,33で搬送を開始すると(ステップS13)、先に入力された値a、値b、値cおよび現在の目標の無線タグMの位置および速度に基づいて、現在時刻の無線タグMの位置を求め、この現在時刻の無線タグMの位置を、目標の無線タグMの搬送路31に沿って無線タグ用アンテナ34をアンテナ用リニアモータ35により伴走させるための、現在の無線タグ用アンテナ34の適正位置とする(ステップS14)。そして、制御部11は、無線タグ用アンテナ34が、先に求めた現在時刻の無線タグMの位置となるべく、リニアセンサ36による現在位置に基づいて、無線タグ用アンテナ34をアンテナ用リニアモータ35を用いて無線タグMの搬送路31に沿って無線タグ用アンテナ34を伴走させる(ステップS15)。ここで、無線タグ用アンテナ34が目標の無線タグMに同じ速度で伴走している間は、互いが停止しているのと実質的に同じ状態となるため、電磁波発生部30で発生された電磁波を、無線タグ用アンテナ34を介して無線タグMに書き込むことができる(ステップS16)。
【0015】
なお、無線タグ用アンテナ34の位置は、必ずしも、現在時刻の無線タグMの位置に完全に一致していなくともよく、無線タグMにデータが書込み可能な程度に近い位置(例えばアンテナの通信範囲内)であればよい。
【0016】
また、ここで、無線タグ用アンテナ34が目標の無線タグMに伴走している間は、台紙搬送モータ32,33は無線タグMの移動速度を落とすことなく、サーマルヘッド14に搬送し続けることが望ましい。しかしながら、無線タグMへの書込み時間が、無線タグMの移動時間よりも長い場合は、書込みを行う時間だけは、台紙搬送モータ32,33とアンテナ用リニアモータ35との移動速度を同時に遅くして、書込み時間を十分に取ることが好適である。そして、無線タグMへのデータ書き込みが完了した後に、無線タグMの搬送速度を速めることが好ましい。
【0017】
これら、無線タグMおよび無線タグ用アンテナ34の移動速度がどれぐらいの速度が最もふさわしいかは、実際に多くの速度で書込みおよび移動を行ってみて決定することが望ましい。一例として、台紙Dへの印字速度を、10IPS(Inch Per Second)〜14IPSとすることが知られているが、この印字速度で台紙Dおよび無線タグMを移動し、同じくこの速度で、無線タグ用アンテナ34を移動しながらデータを書き込む例が可能である。
【0018】
この実施形態においては、このように、無線タグMへのデータの書込みのために台紙Dの搬送系を停止することがないので、全体の処理速度が無線タグMへのデータの書込みにより低下することがないため、迅速な印刷処理・書込処理を可能とする印刷装置およびその書込方法を提供することができる。
【0019】
そして、データの書込みが完了し、その後、台紙Dがサーマルヘッド14に到達して、サーマルヘッド14によりラベル41に印刷を行うと、ラベル41を図示しないカッターで台紙Dと共に切断して外部に供給する。
【0020】
しかし、台紙Dがサーマルヘッド14に到達した後、サーマルヘッド14によりラベル41に印刷を行うと同時に、無線タグMへのデータの書込みを行うことも可能である。
【0021】
以上記載した様々な実施形態は複数同時に実施することが可能であり、これらの記載により、当業者は本発明を実現することができるが、さらにこれらの実施形態の様々な変形例を思いつくことが当業者によって容易であり、発明的な能力をもたなくとも様々な実施形態へと適用することが可能である。従って、本発明は、開示された原理と新規な特徴に矛盾しない広範な範囲に及ぶものであり、上述した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0022】
1…印刷装置、4…操作部、5…表示部、11…制御部、12…ROM、13…RAM、14…サーマルヘッド、15…通信部、H…ホストコンピュータ、M…無線タグ、32,33…台紙搬送モータ、34…無線タグ用アンテナ、35…アンテナ用リニアモータ、36…リニアセンサ、D…台紙、41…ラベル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線タグを有する記録媒体に印刷を行う印刷部と、
前記記録媒体を搬送路に沿って前記印刷部へと搬送する搬送部と、
電磁波を放射して前記無線タグにデータを書き込むアンテナ部と、
前記アンテナ部を前記搬送路に沿って移動させる移動部と、
前記搬送部が前記記録媒体を前記印刷部へと搬送している際に、前記無線タグにデータ書込み可能に前記アンテナ部を移動させるべく前記移動部を制御する制御部と、
を具備することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記移動部により前記アンテナ部を移動させるとともに、前記搬送部は前記記録媒体を搬送することを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記移動部は、前記アンテナ部の位置を、リニアセンサを用いて検知し、リニアモータを用いて前記アンテナ部を移動させることを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記搬送部の現在の搬送速度、前記記録媒体上の前記無線タグの位置および大きさを認識し、前記無線タグの現在の位置を予測した上で、この予測した位置に対応して前記移動部により前記アンテナ部を移動させることを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、少なくとも前記記録媒体である台紙上の複数のラベルの大きさ、前記ラベル上における前記無線タグの位置、前記ラベルの間隔のうち何れかひとつを取得し、これらの値に基づいて、前記無線タグの現在の位置を予測することを特徴とする請求項4記載の印刷装置。
【請求項6】
無線タグを有する記録媒体に印刷を行う印刷部と、電磁波を放射して前記無線タグにデータを書き込むアンテナ部を有する印刷装置において、
前記記録媒体を前記印刷部へ搬送している際に、前記記録媒体にデータを書き込み可能に前記アンテナ部を移動させることを特徴とする印刷装置の書込方法。
【請求項7】
前記アンテナ部を移動させるとともに、前記記録媒体を搬送させることを特徴とする請求項6記載の印刷装置の書込方法。
【請求項8】
リニアセンサを用いて前記アンテナ部の位置を検知し、リニアモータを用いて前記アンテナ部を移動することを特徴とする請求項6記載の印刷装置の書込方法。
【請求項9】
前記記録媒体の現在の搬送速度、前記記録媒体上の前記無線タグの位置および大きさを認識し、前記無線タグの現在の位置を予測し、
この予測した位置に対応して前記アンテナ部が移動されることを特徴とする請求項6記載の印刷装置の書込方法。
【請求項10】
前記記録媒体である台紙上の複数のラベルの大きさ、前記ラベル上における前記無線タグの位置、前記ラベルの間隔を取得し、
これらの値に基づいて、前記無線タグの現在の位置を予測することを特徴とする請求項9記載の印刷装置の書込方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−45912(P2012−45912A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192681(P2010−192681)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】