説明

印刷装置及び印字ギャップ調整方法

【課題】手動により印字媒体の厚さに応じて最適なギャップ設定を実現する。
【解決手段】プラテンローラ10と、ヘッド支持機構部8と、ギャップ設定機構部12とを備える。ヘッド支持機構部は、印字ヘッド4又は該印字ヘッドに併設されたガイド部6を前記プラテンローラの方向に移動可能に支持する。ギャップ設定機構部は、前記プラテンローラ上の印字媒体(印刷用紙14)に前記印字ヘッドのヘッド面又は前記印字ヘッドを搭載しているガイド部が接触する位置を基準位置とする。そして、この基準位置から前記印字ヘッド及び前記ガイド部を前記プラテンローラから離間方向に移動させ、前記印字ヘッド又は前記ガイド部にギャップ(ギャップ幅d)を設定する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インパクトドットプリンタ等の印刷装置に関し、例えば、印字媒体に応じたヘッドギャップの最適化を可能にした印刷装置及び印字ギャップ調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インパクトドットプリンタの印字ヘッドギャップの設定方法には、自動と手動がある。自動設定方法は、ギャップ検出センサを使用し、検出ギャップに応じたギャップを自動設定する方法であって、ミドルクラスないしハイエンドクラスの印刷装置に採用されている。手動設定方法は低コスト化を図るため、ローエンドクラスの印刷装置に採用されている。
【0003】
手動設定方法では、予め標準的な用紙厚を基準にした数種類のヘッドギャップ(固定値)を用意し、印字する用紙厚に応じ、レバー等でヘッドギャップを切り替えている。例えば、3枚の重ね用紙であれば、レンジ3に合わせ、対応するヘッドギャップを得ている。
【0004】
この印字ヘッドのギャップ調整に関し、基準位置からパルスモータの回転量を調整し、印字ヘッドの上下位置を調整することが知られている(特許文献1)。
【0005】
また、印刷装置において、印字ヘッドの偏心ステーシャフトの支持軸に設けられたコントロールレバーの円周方向の位置を移動させることにより、偏心ステーシャフトを回転させてヘッドギャップを変化させることが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−282058号公報
【特許文献2】実開昭63−148445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、標準的な用紙厚を基準に用紙の枚数に応じたヘッドギャップを設定した場合には、実際の用紙厚によっては3枚重ね用紙に用意されたヘッドギャップでは広すぎ、用紙へのインパクト力が弱く、印字濃度が低下する。また、印字ヘッド内のストッパへのダメージが大きく、ヘッド寿命が短くなり、故障の原因になる。
【0008】
用紙によってはヘッドギャップが狭く、印字ヘッドに隣接するガイドに用紙が接触し、用紙搬送に不良を発生する等の問題がある。
【0009】
そこで、本開示の印刷装置及び印字ギャップ調整方法の目的は、手動により印字媒体の厚さに応じて最適なギャップ設定を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本開示の印刷装置は、プラテンローラと、ヘッド支持機構部と、ギャップ設定機構部とを備える。ヘッド支持機構部は、印字ヘッド又は該印字ヘッドに併設されたガイド部を前記プラテンローラの方向に移動可能に支持する。ギャップ設定機構部は、前記プラテンローラ上の印字媒体に前記印字ヘッドのヘッド面又は前記印字ヘッドを搭載しているガイド部が接触する位置を基準位置とする。そして、この基準位置から前記印字ヘッド及び前記ガイド部を前記プラテンローラから離間方向に移動させ、前記印字ヘッド又は前記ガイド部にギャップを設定する。斯かる構成により、上記目的が達成される。
【0011】
また、上記目的を達成するため、本開示の印字ギャップ調整方法は、印字ヘッド又は該印字ヘッドに併設されたガイド部の移動工程と、最適位置設定工程とを含む。印字ヘッド又はガイド部の移動工程は、印字ヘッドのヘッド面又は該印字ヘッドに併設されたガイド部のガイド面をプラテンローラに設置した印字用紙の接触位置まで移動させる。最適位置設定工程は、前記接触位置を基準に前記印字ヘッドのヘッド面又は前記ガイド部のガイド面を前記プラテンローラから離間方向に移動させ、前記ヘッド面を最適位置に設定する。斯かる構成により、上記目的を達成できる。
【発明の効果】
【0012】
本開示の印刷装置及び印字ギャップ調整方法によれば、次の何れかの効果が得られる。
【0013】
(1) ヘッドギャップを手動設定でき、ヘッドギャップ設定手段の低コスト化、ヘッドギャップ精度の最適化を図ることができる。
【0014】
(2) ヘッドギャップの最適化により、適正な印字濃度、印字ヘッドの長寿命化、用紙搬送の不具合防止、印字性能の安定化が図られる。
【0015】
そして、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面及び各実施の形態を参照することにより、一層明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施の形態に係る印刷装置の一例を示す図である。
【図2】印刷装置のギャップ設定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】第2の実施の形態に係る印刷装置の構成例を示す図である。
【図4】印刷装置の印字ヘッドの一例を示す図である。
【図5】ギャップ設定機構部の一例を示す図である。
【図6】ギャップ設定機構部に作用する力の状態の一例を示す図である。
【図7】ギャップ設定機構部のフランジ部の構成例を示す図である。
【図8】操作及びギャップの調整手順の一例を示す図である。
【図9】操作及びギャップの調整手順の一例を示すフローチャートである。
【図10】印刷装置の実施例を示す図である。
【図11】印刷装置の周辺機構部の実施例を示す図である。
【図12】給紙パスの実施例を示す図である。
【図13】比較例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1の実施の形態〕
【0018】
第1の実施の形態について、図1を参照する。図1は、第1の実施の形態に係る印刷装置の一例を示す図である。尚、図1に示す構成は一例であって、これに限定されない。
【0019】
この印刷装置2は、本開示の印刷装置の一例であって、例えば、インパクトドットプリンタで構成している。そして、この印刷装置2は、例えば、印字ヘッド4、ガイド部6、ヘッド支持機構部8、プラテンローラ10、ギャップ設定機構部12等を備える。
【0020】
印字ヘッド4は、印字媒体である印刷用紙14に対する印字手段の一例であって、例えば、複数の印字ピンを内蔵している。そして、この印字ピンを印刷用紙14を配置するプラテンローラ10側に向けて突出させることで、複数枚に重ねられた印刷用紙14の最下層側まで印字ピンの押圧力を伝える。この印字ヘッド4は、ヘッド支持機構部8に保持されており、例えば、プラテンローラ10に対して水平方向又は鉛直方向に移動可能に支持されている。
【0021】
この印刷装置2は、標準的な厚さの印刷用紙14を1枚ずつ印刷する他、例えば、標準厚さよりも厚幅又は薄幅の用紙を1枚ずつ印刷する場合や、これらの用紙を複数枚重ねて同時に印刷する場合を含む。
【0022】
ガイド部6は、印刷用紙14に対する印刷位置のガイド手段の一例であって、ヘッド支持機構部8に形成されている。このガイド部6は、例えば、印字ヘッド4の印字面の左右側を囲むように併設されており、また、この印字面に対して略同一の高さに設定されている。そして、印刷装置2に挿入された印刷用紙14に対し、印字ヘッド4が印字する目安となる位置を明示する。これにより、利用者は、印刷用紙14の位置を移動させ、任意の位置に対して印刷を開始させるように調整することが可能となる。また、このガイド部6は、プラテンローラ10側に対して接近又は離間することにより、プラテンローラ10又は印刷用紙14との距離であるギャップ幅dを調整することができる。このギャップ幅dは、例えば、印刷動作時に印字ヘッド4から突出する印字ピンの突出間隔であり、適した幅dをとることで、印字ピンの破損を防止するとともに、適した印字圧力を印刷用紙14にかけることができる。
【0023】
ヘッド支持機構部8は、例えば、印字ヘッド4やガイド部6等を固定支持する手段の一例であるとともに、印字ヘッド4及びガイド部6をプラテンローラ10の方向に移動可能に支持する手段の一例である。このヘッド支持機構部8は、印字ヘッド4を平行移動させることにより、プラテンローラ10上に配置された印刷用紙14に対して印字させる。また、ヘッド支持機構部8は、印字ヘッド4及びガイド部6をプラテンローラ10に対して接近又は離間させることによりギャップ調整を行うことができる。
【0024】
プラテンローラ10は、印刷用紙14の印刷面側を印字ヘッド4に向けて支持するとともに、印刷用紙14を印刷方向に運搬する手段の一例である。このプラテンローラ10は、例えば、印字ヘッド4等の印字タイミングに合わせて、用紙の送り方向に回転することで、印刷用紙14の印刷箇所を印字ヘッド4側に搬送することができる。
【0025】
ギャップ設定機構部12は、ヘッド支持機構部8に支持された印字ヘッド4やガイド部6をプラテンローラ10に対して接近又は離間させる手段の一例である。そこで、例えば、ギャップ設定機構部12は、印字ヘッド4やガイド部6を支持するヘッド支持機構部8を、プラテンローラ10側との間で接近させ、又は離間させる動力を与える。そして、ギャップ設定処理では、プラテンローラ10に配置された印刷用紙14に対して印字ヘッド4又はガイド部6が接触する位置を基準にして、ギャップ幅dを設定する。
【0026】
次に、ギャップ設定処理について、図2を参照する。図2は、印刷装置のギャップ設定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。尚、図2に示す処理手順、処理内容等は一例であって、これに限定されない。
【0027】
このギャップ設定処理は、本開示の印字ギャップ調整方法の一例である。そこで、この印刷装置2は、印字ヘッド4のヘッド面又はガイド部6のガイド面をプラテンローラ10に設置した印刷用紙14の表面に接触する位置まで移動させる(ステップS1)。この処理では、例えば、ヘッド支持機構部8をプラテンローラ10側に動作させることで、印字ヘッド4及びガイド部6を移動させる。このとき、印字ヘッド4又はガイド部6が印刷用紙14に接触した位置を基準位置、又は基準高さとして設定する。そして、この基準位置から印字ヘッド4及びガイド部6をプラテンローラ10から離間させるように移動させる(ステップS2)。
【0028】
印字ヘッド4又はガイド部6とプラテンローラ10との間に所定のギャップ幅dができた場合、この位置を最適位置として設定し(ステップS3)、ギャップ調整を終了する。
【0029】
斯かる構成によれば、ヘッドギャップを手動設定でき、ヘッドギャップ設定手段の低コスト化、ヘッドギャップ精度の最適化を図ることができる。また、ヘッドギャップの最適化により、適正な印字濃度、印字ヘッドの長寿命化、用紙搬送の不具合防止、印字性能の安定化が図られる。
【0030】
〔第2の実施の形態〕
【0031】
次に、第2の実施の形態について、図3及び図4を参照する。図3は、第2の実施の形態に係る印刷装置の構成例を示す図、図4は、印刷装置の印字ヘッドの一例を示す図である。尚、図3、図4に示す構成は一例であって、これに限定されない。また、図3、図4において、図1と同一構成については、その説明を省略する。
【0032】
この印刷装置20は、本開示の印刷装置の一例であって、単数又は複数枚を重ねて配置した印刷用紙14に対して、印字ヘッド4に内蔵された印字ピンの押圧によって印字処理を行う。そして、この印刷装置20は、印字ピンによる押圧を適正に行うため、配置された印刷用紙14と、印字ヘッド4又はガイド部6との間にギャップ幅dの設定を行う。そこで、この印刷装置20は、例えば、既述のように、印字ヘッド4、ガイド部6、プラテンローラ10、ギャップ設定機構部12を備える他、キャリアユニット22、ステーシャフト24、軸26等を備えている。
【0033】
キャリアユニット22は、ヘッド支持機構部8の一例であって、印字ヘッド4やガイド部6等を同一位置に配置して保持する筐体部を構成しており、例えば、印字ヘッド4及びガイド部6をプラテンローラ10に向けて移動可能に支持している。また、キャリアユニット22は、プラテンローラ10に対して並列に配置されたステーシャフト24に貫通支持されており、例えば、図示しないタイミングベルトを介してステッピングモータの回転力により、ステーシャフト24に沿って平行に移動させることができる。これにより、プラテンローラ10上に配置された印刷用紙14に対して、印字ヘッド4を平行移動させて印字することができる。
【0034】
ステーシャフト24は、キャリアユニット22を印刷用紙14の印刷面に対して平行移動させるためのガイド手段の一例であって、印字ヘッド4、ガイド部6及びキャリアユニット22の支持軸として機能する。ステーシャフト24は、例えば、プラテンローラ10に対して並列に配置しており、キャリアユニット22をステーシャフト24に沿ってスライドさせることで、印刷用紙14に対して直線状に印字させることができる。さらに、ステーシャフト24は、印字ヘッド4又はガイド部6をプラテンローラ10の方向に移動させるヘッド支持機構部8を構成する。
【0035】
軸26は、ギャップを設定するためにギャップ設定機構部12で付与された、例えば旋回力等をキャリアユニット22やステーシャフト24等のヘッド支持機構部8側に伝達する手段の一例である。この軸26は、ステーシャフト24の中心とは異なる位置に対して直線状に接続され、又は一体に構成されており、ギャップ設定機構部12で発生させた旋回力等によって回転する。これにより、ステーシャフト24は、軸26の中心位置を基準に偏心回転する。
【0036】
印字ヘッド4及びガイド部6の移動によるギャップ幅dは、図4に示すように、ギャップ設定機構部12から付与された旋回力により、軸26及びステーシャフト24を回転させ、キャリアユニット22を移動させて設定する。既述のように、軸26は、ステーシャフト24の中心O1 とは異なる位置に配置しており、この軸26が中心O2 を中心軸として回転することで、ステーシャフト24を偏心回転させる。これにより、例えば、軸26が図中の矢印Aの実線方向に回転することで、キャリアユニット22は図中の矢印Bの実線方向に向けて移動することになる。また、軸26が矢印Aの破線方向に回転すると、キャリアユニット2は矢印Bの破線方向に移動する。
【0037】
このように、ギャップ設定機構部12によって付与された旋回力に応じた軸26の回転方向により、キャリアユニット22とともに、印字ヘッド4及びガイド部6を移動させる。この場合、印字ヘッド4及びガイド部6の移動距離は、例えば、ステーシャフト24の中心軸O1 と軸26の中心軸O2 との縦方向の距離Yに応じて決まる構成とすればよい。ギャップ設定処理では、例えば、軸26を矢印Aの実線方向に回転させて、印字ヘッド4又はガイド部6が印刷用紙14に接触する基準位置までプラテンローラ10側に向けて移動させる。そして、印字ヘッド4又はガイド部6が基準位置に達したら、所定のギャップ幅dが設定されるように軸26を矢印Aの破線方向に回転させる。
【0038】
次に、ギャップ設定機構部の構成について、図5、図6及び図7を参照する。図5は、ギャップ設定機構部の一例を示す断面図、図6は、ギャップ設定機構部に作用する力の状態の一例を示す図、図7は、ギャップ設定機構部のフランジ部の構成例を示す図である。尚、図5〜図7に示す構成は一例であって、これに限定されない。また、図5〜図7において、図3、図4と同一部分には同一符号を付してある。
【0039】
このギャップ設定機構部12は、例えば、既述のように軸26がステーシャフト24に連続して、又は一体に形成されている。ギャップ設定機構部12は、図5に示すように、軸26を中心にして、例えば、フランジ部28、30を備えている。また、軸26は、操作レバー32や、ねじりバネ34、36等を備えている。
【0040】
フランジ部28は、所定方向への回転を可能にする第1のフランジ部の一例であって、例えば、ラッチ又はラチェット等の一方向に回転可能に噛み合わせる歯車を備え、フランジ部30側の歯車と噛み合わせて操作レバー32の回転量を制御する。このフランジ部28は、例えば、中心部を軸26に貫通させており、軸26に対して回転可能に保持される。また、フランジ部28は、歯車を備える面の反対面側に切欠部38を形成しており、切欠部38の内部には、操作レバー32が配置されている。この切欠部38は、図6に示すように、例えば、a面、b面及びc面で形成されている。そして、操作レバー32が設定量以上に回転した場合に、操作レバー32を接触させてフランジ部28を回転させる手段であり、例えば、操作レバー32を矢印A方向に回し、フランジ部28の切欠部38のa面に当てることで、フランジ部28も回転する。
【0041】
また、このフランジ部28は、図7に示すように、外周側を覆って配置したカラー40、カラーストッパ42等を備える。カラー40は、後述するフランジ部28とフランジ部30との噛み合わせを解除する場合の操作部の一例であって、フランジ部28に対して、回転フリーに構成されている。このカラー40は、フランジ部28の外周側全体を覆うように構成してもよく、又は一部のみを覆うように構成してもよい。カラーストッパ42は、例えば、噛み合わせ解除方向に操作されたカラー40に接触してフランジ部28を噛み合わせ解除方向に移動させる手段の一例である。また、カラー40がフランジ部28から外れるのを防止する手段の一例である。このカラーストッパ42は、例えば、フランジ部28に対してねじ等の固定部品44で固定すればよい。
【0042】
フランジ部30は、第1のフランジ部と係合し、所定方向に対して逆方向への回転を制止する第2のフランジ部の一例であって、フランジ部28と同様に、一端側にラッチ又はラチェット等の一方向に回転可能に噛み合わせる歯車を備えている。フランジ部30は、ギャップ設定機構部12の筐体壁46に対し、例えば、ねじ等の固定部品48で固定されており、中心内部を貫通させた軸26が回転してもフランジ部30が回転しないように保持されている。そこで、フランジ部30は、図5に示すように、筐体壁46に向けて固定部品48を挿入させる固定孔50を備えてもよい。
【0043】
操作レバー32は、軸26やフランジ部28に旋回力を付与する操作手段の一例である。この操作レバー32は、フランジ部28の切欠部38の内部に配置されて、軸26に固定、又は軸26と一体に構成されている。そして、印字ギャップ調整処理において、図6に示すように、例えば、A方向に回転させると、切欠部38のa面に接触し、フランジ部28とともに回転する。これにより、軸26からの旋回力を受けたステーシャフト24が回転することで、印字ヘッド4やガイド部6をプラテンローラ10に配置した印刷用紙14側に向けて接近させることができる。
【0044】
ねじりバネ34は、操作レバー32の操作により回転した軸26に対し、その回転方向とは反対の方向への旋回力を付与する第1の弾性部材の一例である。そこで、このねじりバネ34は、例えば、図5及び図7に示すように、フランジ部30の内部側に配置されており、その一端側を筐体壁46に貫通して保持させている。また、他の一端側を軸26に設置した固定ピン52に対し、軸26の回転によってねじりバネ34が巻き付けられるように係止させている。このねじりバネ34は、軸26に対し、例えば、操作レバー32側から見て反時計回りの方向に巻き付けられている。
【0045】
そして、図6に示すように、矢印Aの方向に向けた操作レバー32、軸26の旋回操作に対し、巻き付けられたねじりバネ34は、軸26に対して、この操作方向の矢印Aとは反対方向にF1 の旋回力を与える。この旋回力F1 は、例えば、A方向への操作を解除することで軸26を初期位置方向に戻す復元力となり、これにより、印字ヘッド4やガイド部6をプラテンローラ10から離間方向に移動させる力となる。
【0046】
ねじりバネ36は、軸26とともに回転したフランジ部28に対して、反対方向への旋回力を付与する第2の弾性部材の一例である。そこで、このねじりバネ36は、例えば、図5及び図7に示すように、フランジ部28の内部側に配置されており、その一端側を軸26に配置した固定ピン54に固定し、他端を予め、ねじって(旋回力を付与して)切欠部38に突出させている。このねじりバネ36は、フランジ部28に対してF2 (図6)の旋回力とともに、フランジ部30側へと引き寄せるようにF3 (図6)のスラスト力を付与する。
【0047】
このような構成において、操作レバー32の操作を印字ヘッド4やガイド部6が印刷用紙14に接触する位置を基準位置とし、その基準位置に達したら操作レバー32を開放する。そして、操作レバー32を開放すると、例えば、旋回力F1 により、軸26が矢印Aと反対方向に回転を開始し、操作レバー32は切欠部38のb面に接触する。即ち、ねじりバネ34は、印字ヘッド4やガイド部6を接触位置に移動させた際に、印字ヘッド4やガイド部6をプラテンローラ10側から離間方向に移動させる手段の一例となる。
【0048】
これに対し、フランジ部28は、フランジ部30との間でラッチにより噛み合っており、矢印A方向と反対方向への回転を制止しているため、操作レバー32及び軸26は、切欠部38のb面で保持される。この操作レバー32及び軸26の動作によれば、印字ヘッド4やガイド部6は、操作レバー32が切欠部38のa面からb面に戻る回転量に応じた分だけ印刷用紙14から離間することなる。そして、このときの離間した幅がギャップ幅dとして設定される。そこで、フランジ部28の切欠部38の回転幅は、ギャップ幅dに対応して設定すればよい。即ち、この切欠部38は、印字ヘッド4のヘッド面又はガイド部6のガイド面を最適位置に停止させて、最適なギャップ幅dを設定可能な最適化位置設定手段を構成する。
【0049】
また、例えば、印刷処理が終了した場合や、印刷装置20に新たな印刷用紙14をセットする場合は、再度印字ギャップを設定することになる。そこで、フランジ部28とフランジ部30との係合を開放すると、ねじりバネ36の旋回力F2 により、軸26を初期位置に戻すことで、ギャップ幅dを最大値にする。この場合、例えば、フランジ部28に設置したカラー40をフランジ部30から離間させる方向に引っ張ることで、ラッチの噛み合いが開放され、指で押さえているカラー40の内側を、フランジ部28が空転し、軸26とともに初期位置に戻る。敢えて回転させて戻す必要がないため、正しく初期位置に戻すことができる。
【0050】
このギャップ設定機構部12は、例えば、筐体壁46に対して軸26を保持させる軸受部56、ねじりバネ36の移動や軸受部56との接触を防止するためのストッパ58等を備えてもよい。
【0051】
尚、上記の構成では、固定ピン52、54に対し、それぞれのねじりバネ34、36が軸26の回転方向に応じて巻き付けられる方向から係止させる構成としたが、これに限られない。図6、図7に示す係止方向は一例であり、軸26の回転方向に応じて係止方向を変更させればよい。また、例えば、ねじりバネ34、36の一端側をリング状に形成し、固定ピン52、54をこのリング内に挿入させて係止させるようにしてもよい。
【0052】
次に、ギャップ設定操作について、図8及び図9を参照する。図8は、操作及びギャップの調整手順の一例を示す図、図9は、操作及びギャップの調整手順の一例を示すフローチャートである。尚、図8及び図9に示す構成、処理内容及び処理手順等は一例であって、これに限定されない。また、図8において、図5〜図7に示す構成と同一部分については、説明を省略する。
【0053】
ギャップ幅dの調整手順として、図8のAに示すように、初期状態では、操作レバー32が操作されず、フランジ部28の切欠部38のb面(38b)に接触した状態を保っている。この状態において、印字ヘッド4や図示しないガイド部6は初期位置に配置され、プラテンローラ10に配置された印刷用紙14とのギャップ幅dは最大値となっている。
【0054】
図8のBに示すように、フランジ部28の回転開始状態では、矢印Aに示す方向に軸26の回転が開始され、操作レバー32が切欠部38のa面(38a)に接触することにより、フランジ部28の回転を開始させている。この状態では、軸26及び操作レバー32が切欠部38のb面からa面に回転移動しており、この回転移動量に応じて印字ヘッド4等がプラテンローラ10の方向に向けて移動している。
【0055】
次に、図8のCに示すように、操作レバー32とともにフランジ部28を回転させ、印字ヘッド4やガイド部6が印刷用紙14に接触すれば、回転操作を停止する。この位置は、ギャップ幅dが0となる基準位置であり、この基準位置から適正なギャップ幅dの設定を行う。
【0056】
そして、図8のDに示すように、図示しないフランジ部30と噛み合って回転を制止されたフランジ部28に対し、操作レバー32に対する回転操作を解除すると、操作レバー32は、切欠部38のa面からb面に向けて回転移動する。この回転移動により、切欠部38の回転量に応じた分だけ印字ヘッド4やガイド部6がプラテンローラ10から離間する方向に移動し、印刷用紙14に対して適正に印字を行えるギャップ幅dが設定される。
【0057】
次に、ギャップの調整手順は、本開示の印字ギャップ調整方法の一例である。この処理では、例えば、印字ヘッド4のヘッド面又はガイド部6のガイド面をプラテンローラ10に設置した印字用紙14の表面に接触する位置まで移動させる。そして、この接触位置を基準に印字ヘッド4のヘッド面又はガイド部6のガイド面をプラテンローラ10から離間する方向に移動させ、ヘッド面を最適位置に設定する工程を含む。
【0058】
そこで、図9に示すように、印字する印刷用紙14をプラテンローラ10と印字ヘッド4やガイド部6との間に挿入する(ステップS11)。印刷用紙14をセットしたら、操作レバー32を例えば、図6の矢印Aの方向に旋回すると、フランジ部28の切欠部38のa面を押し、フランジ部28とともに旋回する。そして、印字ヘッド4やガイド部6が印刷用紙14に接触する位置まで旋回させる(ステップS12)。
【0059】
このとき、フランジ部28とフランジ部30とはラッチにより噛み合わせて回転をロックさせる(ステップS13)。そして、操作レバー32への旋回方向への操作を開放すると、軸26に作用する旋回力で操作レバー32は切欠部38のb面に突き当って停止する(ステップS14)。
【0060】
新たに印刷用紙14をセットする場合や、印刷処理を終了する場合には、フランジ部28を引くことにより、旋回力F2 に合わせて軸26及びフランジ部28を旋回させて、初期位置に戻すことでギャップ幅dを最大値にする(ステップS15)。
【0061】
斯かる構成によれば、ヘッドギャップを手動設定でき、ヘッドギャップ設定手段の低コスト化、ヘッドギャップ精度の最適化を図ることができる。また、ヘッドギャップの最適化により、適正な印字濃度、印字ヘッドの長寿命化、用紙搬送の不具合防止、印字性能の安定化が図られる。更に、操作レバーを回転させ、印刷用紙に向けて印字ヘッド等を移動させて基準位置を取り、この基準位置から設定された切欠部の所定の回転量に応じたギャップが設定されるので、印刷用紙の種類や重ねられた枚数によらず、一定量の印字ギャップ幅dが設定できる。また、ラッチにより基準位置に設定したフランジ部が回転移動するのを制止することで、手動により、簡易にギャップ幅dを設定することができる。
【実施例】
【0062】
次に、実施例について、図10、図11及び図12を参照する。図10は、印刷装置の実施例を示す図、図11は、印刷装置の周辺機構部の実施例を示す図、図12は、給紙パスの実施例を示す図である。尚、図10〜図12に示す構成は一例であって、これに限定されない。
【0063】
この印刷装置100は、本開示の印刷装置の一例であって、印字ヘッド調整手段を搭載した実施例である。そこで、この印刷装置100は、例えば、印字ヘッド102、インクリボンカセット104、プラテン106、カラー108、用紙圧調整レバー110、フロントカバー112、リアカバー114、操作パネル116、電源スイッチ118等を備える。
【0064】
印字ヘッド102は、既述の印字ヘッド4の一例であって、セットされた印刷用紙に対して印字する手段であり、例えば、内部の印字ピンの突出により印字処理を行う。そして、この印字ヘッド102は、プラテン106側に向けて接近又は離間させて印字ギャップの設定が行える。
【0065】
インクリボンカセット104は、印刷用紙に対して印字するインクを保持する手段であって、例えば、インクが塗布されたリボンを内蔵してユニット化されている。そして、このインクリボンを印刷用紙と印字ヘッド102との間に配置させて、印字ヘッド102の印字ピンを突出させることで、印刷用紙に印字される。
【0066】
プラテン106は、印刷用紙を配置し、印刷用紙を支持するとともに所定の印刷位置に送るための手段の一例である。このプラテン106は、既述のプラテンローラ10に対応する。
【0067】
カラー108は、印字ギャップ設定手段を保持する筐体の一例であって、既述のカラー40に対応しており、内部には、例えば、2枚のフランジ部をラッチにより一方方向に回転可能に噛み合わせた印字ギャップ設定機構部12を備えている。そして、例えば、印刷処理を終了した場合、又は新たに印刷用紙をセットする場合には、このカラー108を印刷装置100から離すように引っ張ることで、設定された印字ギャップをリセットすることができる。
【0068】
用紙圧調整レバー110は、既述の操作レバー32の一例であって、例えば、レバー110を前進又は後退の何れかの方向に移動させることで印字ヘッド102等をプラテン106側に接近させることができる。そして、既述のように、印字ギャップ調整操作では、例えば、印字ヘッド102が基準位置まで移動したときに用紙圧調整レバー110から利用者が手を離すことで、手動で所定量の印字ギャップを設定することが可能となる。
【0069】
フロントカバー112は、印刷装置100の筐体部の一部であり、例えば、印刷装置100の上部側に開閉可能に設置されている。そして、印字ヘッド102やインクリボンカセット104を覆うことで、内部にゴミ等が進入するのを防止している。
【0070】
リアカバー114は、印刷を行う印刷用紙を保持する手段の一例であって、例えば、印刷装置100の上部の背面側の印刷口に対応した位置に設置されており、印刷処理では、印刷用紙を印刷口内に導く。この印刷装置100で利用する印刷用紙14として、例えば、単票用紙と連続帳用紙の2種類があり、リアカバー114は、例えば、単票用紙の送りを支える。そこで、リアカバー114は、例えば、単票用紙を利用する場合には、立てるように配置し、連続帳用紙を利用する場合には倒すように配置すればよい。
【0071】
操作パネル116は、印刷装置100に対する操作手段の一例であって、例えば、印刷用紙の種類に合わせた印刷モードの設定ボタン等が配置されている。その他、例えば、印刷装置100の状態等を示す表示部を備えてもよい。この表示部は、例えば、表示ランプを利用してもよく、又は液晶表示パネル等を備えてもよい。
【0072】
電源スイッチ118は、印刷装置100への給電部に対する操作手段の一例である。この印刷装置100は、例えば、電源スイッチ118の押下を契機に給電され、印刷処理の準備動作等を開始させればよい。
【0073】
また、印刷装置100の内部には、例えば、図11に示すように、カードガイド120、ステーシャフト122、キャリアユニット124、ステッピングモータ126、軸128等を備えている。
【0074】
カードガイド120は、印刷装置100内に印刷用紙14を送るための案内板の一例であって、既述のガイド部6に対応する。また、カードガイド120は、例えば、印字する文字等について、「行」方向の印字位置を合わせるための基準として機能させてもよい。
【0075】
ステーシャフト122は、既述のステーシャフト24の一例であって、キャリアユニット124に固定された印字ヘッド102を、ステーシャフト122に沿ってスライドさせることで、印刷用紙14に印字させる手段である。
【0076】
キャリアユニット124は、既述のキャリアユニット22の一例であって、例えば、印字ヘッド102、インクリボンカセット104やカードガイド120等を保持する手段である。また、このキャリアユニット124は、背面側にプラテン106と平行に設置されたガイドギア125に係合しており、例えば、ガイドギア125に設定された歯数に応じて移動する。
【0077】
ステッピングモータ126は、キャリアユニット124に対する駆動手段の一例であって、例えば、図示しない制御手段による支持に応じて、タイミングベルト127を引き込ませて、キャリアユニット124を移動させる。
【0078】
軸128は、既述の軸26の一例であって、例えば、ギャップ設定機構部12から付与された旋回力によってステーシャフト122をプラテン方向に接近又は離間させることで、印字ヘッド102等のギャップ幅dを設定することができる。
【0079】
このような構成において、印字ヘッド102及びインクリボンカセット104をキャリアユニット124に搭載し、ステッピングモータ126の回転力をタイミングベルト127を介してステーシャフト122上をキャリアユニット124がスライドする。プラテン106上に印刷用紙14が供給され、印字ヘッド102はスライドしながら、印字ヘッド102のインパクトでインクリボンカセット104のインクを印刷用紙14に転写するものである。
【0080】
更に、印刷装置100内に所定の送り量で印刷用紙14を送る手段である給紙パス130は、例えば、印刷装置100の背面側に設置されている。そして、図12に示すように、単票用紙手差し給紙口132、連続帳用紙給紙口134、用紙送りトラクタ136、用紙案内部138、排出ローラ140等を備える。
【0081】
この印刷装置100は、印刷用紙14の種類に応じた複数の給紙手段を備えており、例えば、給紙パス130の上段側には、単票用紙を手差しで挿入するための単票用紙手差し給紙口132を備えている。また、下段側には、例えば、連続帳用紙がずれないように揃えて用紙案内部138に送る手段である用紙送りトラクタ136側に連続帳用紙給紙口134を備えている。印刷の準備処理では、例えば、単票又は連帳用紙を印刷装置100の各給紙口132、134にセットし、図示しない給紙開始ボタン等を押下することで、印刷用紙14の先端部が所定の位置に送られて、停止する。
【0082】
用紙案内部138は、例えば、用紙送りトラクタ136から送られてきた連続帳用紙を所定の印刷位置に合わせて印字ヘッド102側に送る手段の一例である。そして、プラテン106上に配置され、印字された印刷用紙14は、排出ローラ140により送られ、排出口142から排出される。
【0083】
尚、印刷装置100について、上記以外の構成部分は、例えば、従来のインパクトドットプリンタと同様の構成を利用すればよい。
【0084】
〔第1の実施の形態、第2の実施の形態及び実施例の利点及び他の実施の形態〕
【0085】
(1) この印刷装置100は、実際に使用する印刷用紙14を給紙パス130のプラテン106上に載せ、その印刷用紙14に印字ヘッド102を搭載したカードガイド120を接触させて「0」ポジションを決定する。そして、その「0」ポジションを基準にしてギャップを空けることを特徴とする。
【0086】
(2) フランジ部28とフランジ部30とを同一回転中心に配置し、このフランジ部28とフランジ部30とは互いに円周状クラッチで噛み合う構造を備えている。
【0087】
(3) フランジ部28とフランジ部30との回転中心の軸26の終端に操作レバー32を設けており、この操作レバー32は、フランジ部28の切欠部38の範囲で旋回を制限する構成である。
【0088】
(4) 操作レバー32を利用者の手動により旋回させると、フランジ部28が旋回する。操作レバー32を止めるとラッチの噛み合いでフランジ部28は固定される。そして、操作レバー32から手を離し開放されると、操作レバー32は、フランジ部28の切欠38の反対面に突き当たるように旋回する構成である。
【0089】
(5) フランジ部28をスラスト方向に移動させ、フランジ部30とのラッチ嵌合を解除することで、ギャップが最大値である初期値に戻すことができる。
【0090】
(6) 操作レバー32の操作によって回転する軸26に対し、この軸26の回転中心とは異なる位置にステーシャフト24の中心軸を備え、ステーシャフト24を偏心回転させる構成である。
【0091】
(7) この印刷装置は、ギャップの調整又は設定処理を手動で行う方法に関するものであり、特に、低コストを実現しつつ、自動設定方法と同等のヘッドギャップ精度を提供することができる。
【0092】
(8) この印刷装置又はギャップ調整方法は、操作レバー32がフランジ部28の切欠部38に突き当たるまで旋回させ、操作レバー32を開放することで、正確なヘッドギャップが設定できる。
【0093】
(9) ギャップ設定機構部12のフランジ部28と軸26には、ねじりバネ34、36により、常時、旋回力F1 又はF2 が付与されている。また、フランジ部28には、フランジ部30の向きに、ねじりバネ36によるスラスト力が常時付与されている。
【0094】
(10)この印刷装置及びギャップ調整方法によれば、操作レバー32が突き当たるまで旋回させ、その操作レバー32から指を離すだけの一連の操作で、実際の用紙厚からの印字ギャップを設定できるので、最適ギャップとなり、適正な印字濃度と、印字ヘッドの寿命を確保でき、用紙搬送の不具合を防止し、安定した印字性能を提供することができる。
【0095】
〔比較例〕
【0096】
次に、比較例について、図13を参照する。図13は、比較例を示す図である。
【0097】
この比較例は、印刷装置に対する手動によるギャップ幅dの設定手段の一例であって、この印刷装置は、標準的な用紙厚を基準にした幾種類かのギャップ幅dを予め設定し、このギャップ幅dが得られるように設定した操作レバー200を備えている。そして、印刷用紙の重ねられた枚数に応じて操作レバー200を切り替えることで、所定量のギャップ幅dが得られる。例えば、3枚重ね用紙に印刷を行う場合、操作レバー200を「3」のレンジに合わせるように操作することで、一律に設定された3枚用ギャップ幅dが設定されていた。
【0098】
このギャップ設定手段202は、例えば、図13のAに示すように、図示しないステーシャフトに接続した軸204を備え、その一端側には、操作レバー200が設置されている。また、このギャップ設定手段202は、図13のBに示すように、操作レバー200に対して、操作位置を決定するためのスライドスイッチ206を備えている。このスライドスイッチ206は、操作レバー200の先端側を所定位置で保持する手段である。例えば、このスライドスイッチ206は、印刷装置の筐体外部側に配置されており、スライド位置には、用紙厚に応じた目盛りが設定されている。そして、その目盛りに合わせてスライドスイッチ206を移動させることで軸204を旋回し、ギャップ幅dを変化させる。
【0099】
そして、実際に使用する用紙厚により、例えば、3枚重ね用紙で3レンジに合わせても、ギャップ幅dが広すぎて、用紙へのインパクト力が弱く印字濃度が低かったりすることがある。また、印字ヘッド内のストッパへのダメージが大きく、本来のヘッド寿命まで持たずに故障するおそれがある。また、ギャップ幅dが狭すぎて印刷用紙14とガイド部6とが接触し、用紙搬送不良が発生する場合がある。このような構成に対し、本開示の印刷装置及びギャップ調整方法によれば、斯かる不都合を解消することができる。
【0100】
次に、以上述べた実施例を含む実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。以下の付記に本発明が限定されるものではない。
【0101】
(付記1) プラテンローラと、
印字ヘッド又は該印字ヘッドに併設されたガイド部を前記プラテンローラの方向に移動可能に支持するヘッド支持機構部と、
前記プラテンローラ上の印字媒体に前記印字ヘッドのヘッド面又は前記印字ヘッドを搭載しているガイド部が接触する位置を基準位置とし、この基準位置から前記印字ヘッド及び前記ガイド部を前記プラテンローラから離間方向に移動させ、前記印字ヘッド又は前記ガイド部にギャップを設定するギャップ設定機構部と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【0102】
(付記2) 前記ギャップ設定機構部は、
前記印字ヘッド及び前記ガイド部を前記接触位置に移動させた際に前記印字ヘッド又は前記ガイド部を前記プラテンローラから離間方向に移動させる手段と、
前記印字ヘッドのヘッド面又は前記ガイド部のガイド面を最適位置に停止させる最適化位置設定手段と、
を備えることを特徴とする付記1に記載の印刷装置。
【0103】
(付記3) 更に、前記プラテンローラに対して並列に配置され、前記ヘッド支持機構部を貫通して支持する支持軸部と、
前記支持軸部の中心とは異なる位置で接続し、前記ギャップ設定機構部から付与された旋回力を前記支持軸部に伝達する軸部と、
を備え、前記支持軸部は、該軸部から伝達された旋回力により偏心回転し、前記ヘッド支持機構部を前記プラテン方向に移動させることを特徴とする、付記1に記載の印刷装置。
【0104】
(付記4) 更に、前記ギャップ設定機構部は、
前記軸部に貫通して支持され、所定方向への回転を可能にする第1のフランジ部と、
前記第1のフランジ部と係合し、該所定方向に対して逆方向への回転を制止する第2のフランジ部と、
前記軸部及び/又は前記第1のフランジ部に旋回力を付与する操作レバーと、
該操作レバーの操作により回転した前記軸部に対して、反対方向への旋回力を付与する第1の弾性部材と、
前記第1のフランジ部に形成され、前記操作レバーが設定量以上回転した場合に、前記操作レバーを接触させて前記第1のフランジ部を回転させる切欠部と、
を備え、前記基準位置に達した際に前記操作レバーを開放することで、前記第1の弾性部材の旋回力により、前記切欠部内に前記軸部を回転させ、前記設定量分のギャップを設定することを特徴とする、付記3に記載の印刷装置。
【0105】
(付記5) 更に、前記ギャップ設定機構部は、前記軸部とともに回転した前記第1のフランジ部に対して、反対方向への旋回力を付与する第2の弾性部材を備え、
前記第1のフランジ部と前記第2のフランジ部との係合の開放により、前記第2の弾性部材により、前記軸部を初期位置に戻してギャップを最大値にすることを特徴とする、付記3に記載の印刷装置。
【0106】
(付記6) 印字ヘッドのヘッド面又は該印字ヘッドに併設されたガイド部のガイド面をプラテンローラに設置した印字用紙の接触位置まで移動させる工程と、
前記接触位置を基準に前記印字ヘッドのヘッド面又は前記ガイド部のガイド面を前記プラテンローラから離間方向に移動させ、前記ヘッド面を最適位置に設定する工程と、
を含むことを特徴とする印字ギャップ調整方法。
【0107】
以上説明したように、本開示の印刷装置及び印字ギャップ調整方法の好ましい実施の形態等について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0108】
2、20、100 印刷装置
4、102 印字ヘッド
6 ガイド部
8 ヘッド支持機構部
10 プラテンローラ
12 ギャップ設定機構部
14 印刷用紙
22、124 キャリアユニット
24、122 ステーシャフト
26、128 軸
28 第1のフランジ部
30 第2のフランジ部
32 操作レバー
34、36 ねじりバネ
38 切欠部
40、108 カラー
104 インクリボンカセット
106 プラテン
110 用紙圧調整レバー
120 カードガイド
126 ステッピングモータ
130 給紙パス
132 単票用紙手差し給紙口
134 連続帳用紙給紙口
136 用紙送りトラクタ
138 用紙案内部
140 排出ローラ
142 排出口
200 操作レバー
206 スライドスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラテンローラと、
印字ヘッド又は該印字ヘッドに併設されたガイド部を前記プラテンローラの方向に移動可能に支持するヘッド支持機構部と、
前記プラテンローラ上の印字媒体に前記印字ヘッドのヘッド面又は前記印字ヘッドを搭載しているガイド部が接触する位置を基準位置とし、この基準位置から前記印字ヘッド及び前記ガイド部を前記プラテンローラから離間方向に移動させ、前記印字ヘッド又は前記ガイド部にギャップを設定するギャップ設定機構部と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記ギャップ設定機構部は、
前記印字ヘッド及び前記ガイド部を前記接触位置に移動させた際に前記印字ヘッド又は前記ガイド部を前記プラテンローラから離間方向に移動させる手段と、
前記印字ヘッドのヘッド面又は前記ガイド部のガイド面を最適位置に停止させる最適化位置設定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
更に、前記プラテンローラに対して並列に配置され、前記ヘッド支持機構部を貫通して支持する支持軸部と、
前記支持軸部の中心とは異なる位置で接続し、前記ギャップ設定機構部から付与された旋回力を前記支持軸部に伝達する軸部と、
を備え、前記支持軸部は、該軸部から伝達された旋回力により偏心回転し、前記ヘッド支持機構部を前記プラテン方向に移動させることを特徴とする、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
更に、前記ギャップ設定機構部は、
前記軸部に貫通して支持され、所定方向への回転を可能にする第1のフランジ部と、
前記第1のフランジ部と係合し、該所定方向に対して逆方向への回転を制止する第2のフランジ部と、
前記軸部及び/又は前記第1のフランジ部に旋回力を付与する操作レバーと、
該操作レバーの操作により回転した前記軸部に対して、反対方向への旋回力を付与する第1の弾性部材と、
前記第1のフランジ部に形成され、前記操作レバーが設定量以上回転した場合に、前記操作レバーを接触させて前記第1のフランジ部を回転させる切欠部と、
を備え、前記基準位置に達した際に前記操作レバーを開放することで、前記第1の弾性部材の旋回力により、前記切欠部内に前記軸部を回転させ、前記設定量分のギャップを設定することを特徴とする、請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
印字ヘッドのヘッド面又は該印字ヘッドに併設されたガイド部のガイド面をプラテンローラに設置した印字用紙の接触位置まで移動させる工程と、
前記接触位置を基準に前記印字ヘッドのヘッド面又は前記ガイド部のガイド面を前記プラテンローラから離間方向に移動させ、前記ヘッド面を最適位置に設定する工程と、
を含むことを特徴とする印字ギャップ調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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