説明

印刷装置

【課題】印刷用紙のカールの発生を効果的に防止できる印刷装置を提供する。
【解決手段】ラベルプリンタ1では、直近の印刷完了の時点から所定時間が経過すると、プラテンローラ33が駆動され、順搬送方向及び逆搬送方向の双方に同一の搬送距離だけラベル用紙LPが搬送される。これにより、ラベル保持軸31のラベルロールからラベル用紙LPがわずかに繰り出される。その結果、ガイドローラ32にかかるラベル用紙LPの張力が緩和されるため、ガイドローラ32との接触により生じるラベル用紙LPにおけるカールの発生を効果的に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状の印刷用紙を印刷対象とする印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レシートを印刷するレシートプリンタや、ラベルを印刷するラベルプリンタなどの印刷装置においては、長尺状の印刷用紙が印刷対象とされる。このような長尺状の印刷用紙は、印刷装置の内部において、ロール状に巻回された状態で回転可能な保持軸に保持され、その一端を繰り出し可能とされる。印刷用紙は、この保持軸からガイドローラによって案内されつつ、印刷ヘッドにより印刷が行われる位置まで搬送されることになる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−189304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガイドローラは印刷用紙の搬送経路の一部を規定することになるが、このガイドローラと接触する印刷用紙の部分は、ガイドローラの外周形状に沿って略円形に変形する。印刷動作中は、印刷用紙が順次に搬送され、印刷用紙の当該部分も順次入れ替わるために特に問題が生じることはない。
【0005】
しかしながら、印刷完了後は、印刷用紙の搬送が停止されるため、ガイドローラと接触している印刷用紙の部分については変形状態が維持される。このため、そのままの状態で放置すると、印刷用紙の当該部分においてカール(いわゆる「癖」)が発生することがある。
【0006】
このようなカールは、その後の印刷において印刷内容の「位置ずれ」や「かすれ」が生じるなど、印刷品質の低下の原因となる。また、特にラベルカッタなどの印刷用紙の切断機構を備えた印刷装置においては、カールを原因として切断不良や紙詰まりなどが生じることもある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、印刷用紙のカールの発生を効果的に防止できる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、長尺状の印刷用紙を印刷対象とする印刷装置であって、未印刷の前記印刷用紙をロール状態で保持する保持手段と、前記保持手段から搬送された所定の印刷位置に存在する前記印刷用紙に印刷する印刷ヘッドと、前記印刷用紙に接触して、前記保持手段から前記印刷位置までの前記印刷用紙の搬送経路の一部を規定する経路規定部材と、前記印刷ヘッドの非印刷時に、前記印刷用紙を前記保持手段から繰り出し、前記経路規定部材にかかる前記印刷用紙の張力を緩和する張力緩和手段と、を備えている。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の印刷装置において、前記張力緩和手段は、前記保持手段から前記印刷位置まで前記印刷用紙を搬送する搬送手段である。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項2に記載の印刷装置において、前記張力緩和手段は、前記保持手段から前記印刷用紙を繰り出す向きの第1方向に前記印刷用紙を所定距離搬送した後、前記第1方向とは反対の第2方向に前記印刷用紙を前記所定距離と同一距離搬送することで、前記印刷用紙の張力を緩和する。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の印刷装置において、前記張力緩和手段は、前記印刷ヘッドの動作停止から所定時間が経過すると、前記印刷用紙の張力を緩和する。
【0012】
また、請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の印刷装置において、印刷済の前記印刷用紙が発行される発行口の近傍に配置され、前記印刷済の前記印刷用紙を切断する切断手段、をさらに備えている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1ないし5の発明によれば、経路規定部材との接触により生じる印刷用紙のカールの発生を効果的に防止できる。その結果、カールを原因とする印刷品質の低下を防止できる。
【0014】
また、特に請求項2の発明によれば、張力緩和手段と搬送手段とが兼用されるため、カールの発生防止のために特別な機構が必要とならない。
【0015】
また、特に請求項3の発明によれば、張力を緩和するための第1方向及び第2方向の双方の印刷用紙の搬送距離が同一であることから、張力緩和動作前に印刷位置に存在していた印刷用紙の部分が、張力緩和動作後においても印刷位置に存在することになり、張力緩和動作によって印刷内容が本来の位置からずれることがない。
【0016】
また、特に請求項4の発明によれば、ユーザ操作を伴うことなく、張力を緩和する動作を自動的に行うことができる。
【0017】
また、特に請求項5の発明によれば、印刷用紙のカールの発生を効果的に防止できるために、印刷用紙を切断する場合であっても、発行口で印刷用紙がつまったり、切断不良が生じることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下では、本発明の実施の形態に係る印刷装置の一として、ラベルを印刷するラベルプリンタについて図面を参照しつつ説明する。
【0019】
<1.構成>
図1は、ラベルプリンタ1の斜視図である。このラベルプリンタ1は、コンピュータなどの外部装置からの印刷指示信号に応答して、ラベルを印刷し、印刷したラベルを発行する機能を有している。図に示すようにラベルプリンタ1は主として、略直方体状の箱形のハウジング2を備えており、このハウジング2の一部には外部装置からの印刷指示信号等を受信する外部インターフェイス5が設けられる。
【0020】
なお、以下の説明においては、方向及び向きを示す際に、適宜、図中に示す3次元のXYZ直交座標を用いる。このXYZ軸はハウジング2に対して相対的に固定される。ここで、X軸及びY軸方向は水平方向、Z軸方向は鉛直方向(+Z側が上側)である。また、Y軸方向が奥行方向(−Y側が前面側、+Y側が背面側)である。
【0021】
ハウジング2の前面側には、印刷済のラベルを送出するためのラベル発行口21が形成されるとともに、発行されたラベルを蓄積するためのラベルトレイ22が設けられている。ラベルの印刷は、ハウジング2の内部のラベル印刷部3においてなされる。このラベル印刷部3は、長尺状のラベル用紙LPを収納し、このラベル用紙LPに含まれるラベルに対して印刷ヘッド41により印刷を行う。
【0022】
図2は、X軸−側からみたラベル印刷部3の概略構成を示す図である。図に示すように、ラベル印刷部3には、ラベル台紙LMに対して複数の未印刷のラベルLBを連続貼付して含む長尺状のラベル用紙LPが収容される。ラベル印刷部3の構成は、このようなラベルLBを印刷する印刷ヘッド41と、ラベル用紙LPを保持及び搬送する保持搬送部30と、ラベル用紙LPを切断するラベルカッタ42とに大別される。
【0023】
印刷ヘッド41は、複数の発熱素子をX軸方向に沿ってライン状に備えたサーマルヘッドで構成される。印刷ヘッド41は、複数の発熱素子の選択的な発熱により、感熱紙としてのラベルLBの表面を選択的に黒化させ、印刷内容をラベルLB上に形成する。
【0024】
保持搬送部30は、ラベル保持軸31、ガイドローラ32、及び、プラテンローラ33を備えて構成される。未印刷のラベル用紙LPは、コア材となる紙管LCを中心としてロール状に巻回された状態で、ラベル保持軸31に保持される。その収納の際には、軸心を中心に回転自在に支持されたラベル保持軸31が、ラベル用紙LPの紙管LCに対して嵌め込まれる。これにより、ラベル用紙LPは、ラベル保持軸31の軸心を中心として回転自在とされ、その非固定側の一端が繰り出し可能な状態とされる。なお、以下、ロール状態のラベル用紙LPを「ラベルロール」という。
【0025】
プラテンローラ33は、ラベル用紙LPの搬送経路を挟んで、印刷ヘッド41と対向配置される。プラテンローラ33と印刷ヘッド41とに挟まれた、ラベル用紙LPの搬送経路上の位置P1は、印刷が実際に行われる位置(以下、「印刷位置」という。)となる。すなわち、この印刷位置P1に存在するラベルLBに対して印刷ヘッド41の複数の発熱素子により印刷が行われる。
【0026】
ガイドローラ32は、印刷ヘッド41の背面側(+Y側)の所定位置において回転自在に固定的に配置される。このガイドローラ32は、その下方側においてラベル用紙LPと接触し、ラベル保持軸31から印刷位置P1までのラベル用紙LPの搬送経路の一部を規定する経路規定部材となる(図1も併せて参照。)。ラベル保持軸31に保持されたラベルロールから繰り出されたラベル用紙LPは、まず、ガイドローラ32まで搬送され、ガイドローラ32の外周に沿って搬送の向きが変更された後、さらに、印刷位置P1まで搬送されることになる。
【0027】
このようなラベル用紙LPの搬送は、プラテンローラ33の回転駆動によって行われる。プラテンローラ33にはステッピングモータ34が接続されており、このステッピングモータ34の駆動によりプラテンローラ33が回転駆動する。ラベル用紙LPは、印刷位置P1においてプラテンローラ33と印刷ヘッド41とによって物理的に挟み込まれるため、このプラテンローラ33の回転駆動に従って搬送される。
【0028】
通常の印刷動作においては、ラベル用紙LPは、プラテンローラ33の回転駆動により、ラベル保持軸31に保持されたラベルロールから繰り出され、ラベル発行口21へ向かう矢印AR1の方向(以下、「順搬送方向」という)に搬送される。また、プラテンローラ33はその逆回転も可能となっており、プラテンローラ33が逆回転したときには、ラベル用紙LPは、順搬送方向とは反対の矢印AR2の方向(以下、「逆搬送方向」という)に搬送される。プラテンローラ33の非回転時には、ラベル用紙LPは、印刷位置P1においてプラテンローラ33と印刷ヘッド41とによって挟まれて押圧された状態で固定される。
【0029】
ラベルカッタ42は、ラベル用紙LPを切断するものであり、印刷ヘッド41の前面側(−Y側)のラベル発行口21の近傍において、上下方向(Z軸方向)に駆動可能に配置される。印刷ヘッド41により印刷が完了したラベル用紙LPは、ラベル発行口21からハウジング2の外部へ送出される。そして、一のラベルLB分の長さが送出されると、ラベルカッタ42がラベル用紙LPに向けて移動されてラベル用紙LPが切断される。これにより、印刷済のラベルLBが、長尺状のラベル用紙LPから切り離され、一のラベルLBごとに取扱い可能とされる。切り離されたラベルLBは、ラベルトレイ22に載置されることになる。
【0030】
また、ラベルプリンタ1のハウジング2の内部には、ラベルプリンタ1の各処理部の動作を統括的に制御する制御部が設けられている。図3は、このような制御部10を含むラベルプリンタ1の電気的構成を機能ブロックにて示す図である。
【0031】
制御部10は、マイクロコンピュータを備えて構成される。より具体的には、制御部10は、各種演算処理を行うCPU11、制御用プログラム等を記憶するROM12、演算処理の作業領域となるRAM13、各種データを記憶する不揮発性メモリであるバッテリーバックアップされたSRAM14、及び、計時機能を有するタイマ15等を備え、これらはバスライン6を介して電気的に相互に接続される。
【0032】
また、このバスライン6には、上述した外部インターフェイス5が電気的に接続され、外部インターフェイス5を介して外部装置9から入力される印刷指示信号等が制御部10において取扱い可能とされる。さらに、ラベル印刷部3の印刷ヘッド41、ラベルカッタ42及びステッピングモータ34もバスライン6に電気的に接続され、これらの各部は制御部10の制御下にて動作することとなる。
【0033】
制御部10の各種の制御機能は、ROM12内に予め記憶された制御用のプログラムに従ってCPU11が演算処理を行うことにより実現されることになる。
【0034】
<2.カールについて>
上記のようにラベル用紙LPは、ラベル印刷部3において、ラベル保持軸31からガイドローラ32まで、及び、ガイドローラ32から印刷位置P1までそれぞれ直線的に(すなわち、最短距離で)搬送される(図2参照。)。この際、ガイドローラ32にはラベル用紙LPの張力が与えられ、また、ガイドローラ32と接触するラベル用紙LPの部分は、ガイドローラ32の外周形状に沿って略円形に変形することになる。
【0035】
図2においては、ガイドローラ32と接触している一のラベルLTが変形している。このため、印刷を行わずに図2に示す状態のままで暫く放置したとすると、ラベルLTにカール(変形後の略円形形状から本来の直線形状に戻しにくくなる状態:いわゆる「癖」)が発生することになる。
【0036】
そして、このようなカールがラベルLTに発生した状態で、その後に印刷を続行した場合は、ラベルLTに関して印刷内容の「位置ずれ」や「かすれ」などが生じ、印刷品質が低下するおそれがある。また、カールが生じたラベルLTの直前でラベル用紙LPを切断したとすると、当該ラベルLTが、ハウジング2とラベルカッタ42との間などに入り込むなどしてラベル発行口21から送出されず、紙詰まりなどが生じる可能性もある。また、カールによってラベルカッタ42による切断不良が生じるおそれもある。
【0037】
本実施の形態のラベルプリンタ1では、カールを原因とするこれらの弊害を排除するため、ラベルLBの印刷完了後に、ラベル保持軸31に保持されたラベルロールからラベル用紙LPをわずかに繰り出すことでガイドローラ32にかかるラベル用紙LPの張力を緩和し、カールの発生を防止するようにしている。以下では、このような本実施の形態のラベルプリンタ1の動作について説明する。
【0038】
<3.動作>
図4は、ラベルプリンタ1の動作の流れを示す図である。ラベルプリンタ1は、外部装置からの印刷指示信号に応答してラベルを印刷するものであるため、起動すると印刷指示信号の入力を待機する状態となる(ステップS11)。
【0039】
印刷指示信号が入力されると(ステップS11にてYes)、印刷指示信号に含まれる画像データに基づいて制御部10の制御により、ラベル印刷部3においてラベルLBの印刷がなされる。すなわち、プラテンローラ33によりラベル用紙LPが順搬送方向に搬送されつつ、印刷ヘッド41の発熱素子が選択的に発熱されることにより、ラベルLBに印刷内容が形成される(ステップS12)。
【0040】
ラベルLBの印刷が完了し印刷ヘッド41の印刷動作が停止されると、ラベルカッタ42が駆動され、当該印刷済のラベルLBを含むラベル用紙LPが、未印刷のラベルLBを含む長尺状のラベル用紙LPから切断される。これにより、印刷済のラベルLBがラベルトレイ22に載置される(ステップS13)。
【0041】
また一方で、ラベル用紙LPの張力を緩和するための準備動作として、ラベルLBの印刷完了の時点(印刷ヘッド41の動作停止の時点)から、タイマ15により計時が開始される(ステップS14)。これにより、ラベルLBの印刷完了の時点からの経過時間が計時される。
【0042】
そして以降、タイマ15による計時時間が、所定時間(例えば、5秒〜30秒)を経過するまで待機される(ステップS16にてNoの間)。もし、この計時時間が所定時間を経過するまでに、次の印刷指示信号の入力があったときは(ステップS15にてYes)、タイマ15による計時動作は中止され、ステップS12に戻って再びラベルLBの印刷がなされることとなる。
【0043】
一方、印刷指示信号の入力がないままタイマ15による計時時間が所定時間を経過したとき(つまり、直近の印刷完了の時点から所定時間を経過したとき)は(ステップS16にてYes)、ガイドローラ32にかかるラベル用紙LPの張力を緩和する動作が制御部10の制御によりなされる。
【0044】
すなわちまず、プラテンローラ33が回転駆動され、印刷位置P1に位置するラベル用紙LPが順搬送方向に所定距離だけ搬送される(ステップS17)。これにより、ラベル保持軸31に保持されたラベルロールから、所定距離だけラベル用紙LPが引き出される。
【0045】
続いて、プラテンローラ33がその逆方向に回転駆動され、印刷位置P1に位置するラベル用紙LPが逆搬送方向に所定距離だけ搬送される(ステップS18)。この搬送距離は、ステップS17にて搬送されたラベル用紙LPの搬送距離と同一とされる。
【0046】
これらのステップS17及びS18の動作(以下、「張力緩和動作」という。)により、ラベルロールからラベル用紙LPが所定距離だけ繰り出される。したがって、ラベル保持軸31から印刷位置P1までのラベル用紙LPの搬送経路中に存在するラベル用紙LPの部分の長さが、その搬送経路の直線距離たる最短距離よりも長くなる。その結果、図5に示すように、この搬送経路中に存在するラベル用紙LPの部分が全体的に撓み、ガイドローラ32にかかるラベル用紙LPの張力が緩和されることになる。
【0047】
図2と図5とを比較してわかるように、張力緩和動作前の図2においてガイドローラ32と接触して大きく変形していたラベルLTは、張力緩和動作後の図5においてはガイドローラ32から離間されて変形の程度も緩和されている。したがって、図5に示す状態のままで暫く放置したとしても、ラベルLTにカールが発生することはなくなることになる。
【0048】
このような張力緩和動作の後は、ラベルプリンタ1は、再び、印刷指示信号の入力を待機する状態となる(ステップS11に戻る)(図4参照。)。そして、次の印刷指示信号の入力があったときは(ステップS11にてYes)、ラベルLBの印刷が再びなされることとなる。前述のように、張力緩和動作では、順搬送方向に搬送するラベル用紙LPの搬送距離と逆搬送方向に搬送するラベル用紙LPの搬送距離とは同一である。このため、印刷位置P1に存在するラベル用紙LPの部分は、張力緩和動作の前後で同一となる。したがって、張力緩和動作の後に再びラベルLBの印刷を行っても、印刷内容の位置ずれが生じることもなく、正常に印刷を続行できることになる。
【0049】
以上説明したように、ラベルプリンタ1では、印刷ヘッド41の非印刷時に、搬送経路中におけるラベル用紙LPの部分がその搬送経路の最短距離よりも長くなるように、ラベル用紙LPがラベル保持軸31から繰り出される。したがって、ガイドローラ32にかかるラベル用紙LPの張力が緩和されるため、ラベル用紙LPにおけるカールの発生を有効防止できる。その結果、カールを原因とした弊害である、印刷内容の「位置ずれ」や「かすれ」などの印刷品質の低下、ラベル発行口21での紙詰まり、及び、ラベルカッタ42による切断不良などを排除できることになる。
【0050】
また、ラベル保持軸31から印刷位置P1までラベル用紙LPを搬送する通常の搬送手段たるプラテンローラ33の駆動によりラベル用紙LPの張力の緩和がなされるため、カールの発生防止のために、複雑な動作や特別な機構が必要とならず、ラベル用紙LPの張力の緩和を簡便に行うことができる。
【0051】
また、張力緩和動作における順搬送方向へのラベル用紙LPの搬送距離と逆搬送方向へのラベル用紙LPの搬送距離とが同一であることから、張力緩和動作前に印刷位置に存在していたラベル用紙LPの部分が、張力緩和動作後においても印刷位置に存在することになり、張力緩和動作によって印刷内容が本来の位置からずれることもない。
【0052】
また、直近の印刷完了の時点からの所定時間の経過に応答して、ラベル用紙LPの張力が緩和されることから、ユーザが意識することなく張力を緩和する動作を自動的に行うことができる。
【0053】
<4.他の実施の形態>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、この発明は上記実施の形態(以下、「代表形態」という。)に限定されるものではなく様々な変形が可能である。以下では、このような他の実施の形態について説明する。
【0054】
<4−1.巻取り方式>
上記代表形態において説明した技術は、長尺状の印刷用紙を印刷対象とする印刷装置であれば、どのようなものであっても適用することが可能である。いずれの場合も、ラベル用紙LPにおけるカールの発生を効果的に防止できるため、印刷内容の「位置ずれ」や「かすれ」などをなくすことができ、印刷品質を向上できる。
【0055】
例えば、図6に示すように、ラベル用紙LPの切断機構を備えずに、印刷済のラベルLBのみをラベル台紙LMから剥離した状態でラベル発行口21から発行する方式のラベルプリンタ1aであってもよい。
【0056】
このラベルプリンタ1aのラベル印刷部3の構成は、ラベルカッタ42を備えず、剥離部材35と台紙巻取部36とを備えている他は、図2に示すものと同様である。剥離部材35は、ラベル発行口21の近傍に設けられ、印刷済のラベルLBをラベル台紙LMから剥離するように機能する。また、台紙巻取部36は、DCモータ37が接続され、印刷済のラベルLBが剥離されてラベル台紙LMのみとなったラベル用紙LPを巻き取るように機能する。このようなラベルプリンタ1aであっても、代表形態と同様のプラテンローラ33の駆動により、ガイドローラ32にかかるラベル用紙LPの張力を緩和する動作を行うことが可能である。
【0057】
ところで、このようなラベルプリンタ1aの台紙巻取部36は一般に、一定トルクでラベル台紙LMのみとなったラベル用紙LPを巻き取ることになる。しかしながら、巻取開始時と巻取終了時とでは台紙巻取部36に既に巻き取られているラベル用紙LPの径が異なるため、台紙巻取部36が一定トルクで回転したとしても、剥離部材35にかかる張力は一定とならない。そのような張力の変化は、プラテンローラ33によるラベル用紙LPの搬送量にも影響し、その結果、印刷位置がずれる可能性がある。
【0058】
このため、台紙巻取部36のDCモータ37のトルクについてPWM(Pulse Width Modulation/パルス幅変調方式)による比率制御を行うことで、トルクを可変に制御してもよい。より具体的には、プラテンローラ33によるラベル用紙LPの搬送量をラベルセンサで検出する。そして、検出した搬送量を所定の設定値と比較して、誤差が生じたときはその誤差に応じて、比率を上下させてDCモータ37のトルクを調整する。これにより、巻取開始時から巻取終了時まで、剥離部材35にかかる張力を一定とすることができ、プラテンローラ33によるラベル用紙LPの搬送量も一定とすることができる。その結果、印刷位置の位置決め精度や印刷精度を向上できることとなる。
【0059】
<4−2.ラベル保持軸の回転>
また、代表形態では、ラベル保持軸31は回転自在(従動的に回転する)とされていたが、ラベル保持軸31がモータ等の接続により能動的に回転できるようにしてもよい。この場合は、印刷ヘッド41の非印刷時に、ラベル用紙LPを繰り出す方向へのラベル保持軸31の回転駆動によりラベル用紙LPを繰り出して、ガイドローラ32にかかるラベル用紙LPの張力を緩和してもよい。これによっても、搬送経路中におけるラベル用紙LPの部分がその搬送経路の最短距離よりも長くなり、ラベル用紙LPにおけるカールの発生を効果的に防止できることになる。
【0060】
また、このようにラベル保持軸31の能動的な回転動作により張力を緩和する場合において、張力緩和動作中にプラテンローラ33を非回転とすれば、ラベル用紙LPは、印刷位置P1においてプラテンローラ33と印刷ヘッド41とによって挟まれて押圧された状態で固定される。このため、この場合でも、印刷位置P1に存在するラベル用紙LPの部分は張力緩和動作の前後で同一となり、印刷内容の位置ずれが生じることもない。
【0061】
なお、このようにラベル保持軸31を能動的に回転させる場合には、一般に、ラベル保持軸31とラベルロールの紙管LCとの間で位置ずれが生じないように、図7に示すように、ラベル保持軸31に位置ずれ防止用のストッパ71が形成される。
【0062】
このような機構を採用すると、図7に示すように通常動作時においては、ラベル保持軸31は図外のプラテンローラ33と協働してラベル用紙LPを順搬送方向(矢印AR3の方向)にラベル用紙LPを搬送することになる。しかしながら、図8に示すようにラベルロールのラベル用紙LPの量が少なくなると、ラベル保持軸31は逆搬送方向(矢印AR4の方向)にラベル用紙LPを搬送する力(以下、「逆搬送力」という。)を生じることになる。このような逆搬送力は、順搬送方向への搬送の負荷となり、また、駆動系に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0063】
このため、図9に示すように、ストッパ71を有さず、かつ、紙管LCの内径よりも外径が小となる円柱状部材をラベル保持軸31として採用してもよい。これによれば、ラベル保持軸31はその上端の位置P2においてのみ紙管LCと接触し、紙管LCの内部には空間79が形成されることになる。
【0064】
この場合も通常動作時においては、ラベル保持軸31は、紙管LCとの接触部分P2に生じる摩擦力により、図外のプラテンローラ33と協働してラベル用紙LPを順搬送方向(矢印AR5の方向)にラベル用紙LPを搬送することになる。一方、図10に示すように、ラベルロールのラベル用紙LPの量が少なくなると、この場合においても逆搬送方向(矢印AR6の方向)に逆搬送力を生じさせるが、ラベル保持軸31と紙管LCとの接触部分P2において滑りが生じるため、この逆搬送力を比較的小さくすることができる。このため、駆動系への悪影響を小さくすることが可能となる。
【0065】
<4−3.その他の変形例>
また、代表形態では、ラベルを印刷媒体とするラベルプリンタを例に説明を行ったが、例えば、レシートを印刷するレシートプリンタなど、ラベル以外の用紙を印刷媒体とする印刷装置であっても、代表形態と同様の技術を適用することが可能である。
【0066】
また、代表形態では、印刷ヘッドとしてサーマルヘッドを用いたサーマルプリンタとして説明を行ったが、これに限定されず、例えば、印刷ヘッドとしてインクジェットヘッドを用いたインクジェットプリンタなどであっても、代表形態と同様の技術を適用することが可能である。
【0067】
また、代表形態では、直近の印刷完了の時点からの所定時間の経過に応答して張力緩和動作がなされていたが、ユーザのボタン操作や電源停止などの所定の動作(イベント)に応答して張力緩和動作がなされるようになってもよい。
【0068】
また、代表形態のような外部装置からの印刷指示信号に応答して印刷する印刷装置では、印刷が実行されなかった場合に、外部装置側と印刷装置側とのいずれにその原因があるのかの把握が難しい場合がある。このため、印刷装置にブザー(音声出力手段)やパトライト(表示手段)を設けておき、外部装置から正常に印刷指示信号を受信したときは、ブザーから音声を出力するとともにパトライトを発光させ、その旨をユーザに伝達するようにしてもよい。これによれば、ユーザは、ブザーやパトライトが駆動しているのに印刷が実行されなかった場合は、印刷装置側にその原因があると認識でき、逆にブザーやパトライトの駆動が無い場合は、外部装置側にその原因があると認識できることになる。また、ブザーやパトライトの駆動によってその旨をユーザに伝達するため、ユーザが印刷装置から離れた位置にいたとしても、その旨を容易に把握可能である。
【0069】
なお、正常時と異常時とで区別できれば、ブザーやパトライトの駆動態様はどのようなものであってもよい。例えば、外部装置から異常な印刷指示信号を受信したときのみブザーやパトライトを駆動させてもよく、また、ブザーやパトライトの駆動態様(音の長さ、音の高低、音の出力回数、発光時間、発光色、点滅回数等)を正常時と異常時とで異ならせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】ラベルプリンタの斜視図である。
【図2】ラベル印刷部の概略構成を示す図である。
【図3】ラベルプリンタの電気的構成を機能ブロックにて示す図である。
【図4】ラベルプリンタの動作の流れを示す図である。
【図5】張力緩和動作後のラベル印刷部の様子を示す図である。
【図6】ラベル印刷部の構成の他の一例を示す図である。
【図7】ストッパを設けたラベル保持軸の近傍の様子を示す図である。
【図8】ストッパを設けたラベル保持軸の近傍の様子を示す図である。
【図9】ストッパを備えないラベル保持軸の近傍の様子を示す図である。
【図10】ストッパを備えないラベル保持軸の近傍の様子を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 ラベルプリンタ
3 ラベル印刷部
21 ラベル発行口
31 ラベル保持軸
32 ガイドローラ
33 プラテンローラ
41 印刷ヘッド
42 ラベルカッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の印刷用紙を印刷対象とする印刷装置であって、
未印刷の前記印刷用紙をロール状態で保持する保持手段と、
前記保持手段から搬送された所定の印刷位置に存在する前記印刷用紙に印刷する印刷ヘッドと、
前記印刷用紙に接触して、前記保持手段から前記印刷位置までの前記印刷用紙の搬送経路の一部を規定する経路規定部材と、
前記印刷ヘッドの非印刷時に、前記印刷用紙を前記保持手段から繰り出し、前記経路規定部材にかかる前記印刷用紙の張力を緩和する張力緩和手段と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記張力緩和手段は、前記保持手段から前記印刷位置まで前記印刷用紙を搬送する搬送手段であることを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置において、
前記張力緩和手段は、前記保持手段から前記印刷用紙を繰り出す向きの第1方向に前記印刷用紙を所定距離搬送した後、前記第1方向とは反対の第2方向に前記印刷用紙を前記所定距離と同一距離搬送することで、前記印刷用紙の張力を緩和することを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の印刷装置において、
前記張力緩和手段は、前記印刷ヘッドの動作停止から所定時間が経過すると、前記印刷用紙の張力を緩和することを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の印刷装置において、
印刷済の前記印刷用紙が発行される発行口の近傍に配置され、前記印刷済の前記印刷用紙を切断する切断手段、
をさらに備えることを特徴とする印刷装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−272610(P2006−272610A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91501(P2005−91501)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パトライト
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】