説明

印刷装置

【課題】 サーマルヘッドにより熱転写型の印刷用インク及びオーバーコート用インクを被記録媒体に重ねて印刷を行う印刷装置に関し、特にオーバーコート用インクを用いて情報の印刷を可能とすると共に、印刷された情報の漏洩を防止可能な印刷装置を提供する。
【解決手段】 CPU111は、各カラー原色インクY、M、Cを重ねて印刷し印刷データに基づくフルカラー印刷を行う(S1〜S7)。その後、情報記録データに基づいて、情報記録の内容が印刷される部分以外の部分に対して、所定量の紫外線吸収剤を含有する透明なオーバーコートインクOPでオーバーコート層91を形成し(S8、S9)、情報記録の内容が印刷される部分には、オーバーコートインクOPの2倍以上の紫外線吸収剤を含有する透明な情報記録用インクIで情報記録層92を形成する(S10、S11)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドを介してリボンカセットに収納されたインクリボンに配置される熱転写型の印刷用インク及びオーバーコート用インクを被記録媒体に重ねて印刷を行う印刷装置に関し、特にオーバーコート用インクを用いて情報の印刷が可能な印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、デジタルカメラ等が広く普及しており、それに伴って、周辺機器として写真等の色彩豊かな画像を印刷可能な印刷装置も普及している。そして、当該印刷装置を使用し、IDカード等の作成が行われている。
この点、例えば、社員証や会員証のようなIDカードの場合においては、他の社員、会員と識別するために、個人情報が記録されていることが必要となる。ここで、氏名、生年月日等の個人情報については、個人情報保護法やプライバシーの観点から、当該個人情報が容易に第三者に漏出することがないように、その取り扱いに細心の注意を払うことが必要となる。
【0003】
ここで、画像を印刷するためのマゼンタ、シアン、イエローの原色インク領域とともに、個人情報等を印刷する為のセキュリティー層を有する感熱転写リボンが特許文献1に記載されている。
この特許文献1においては、セキュリティー層として、蛍光塗料や透かしインク等のインクがインクリボンに塗布されており、前記原色インク領域とは別の部分において、インクリボンに塗布された態様や、3色の原色インク領域のうち何れか一つの原色インク領域の上面に塗布された態様が実施例として記載されている。
即ち、特許文献1に記載されているインクリボンを用い、印刷装置で印刷した場合には、マゼンタ、シアン、イエローの原色インク領域を用いて、色彩豊かな画像を印刷することができ、且つ、個人情報等に代表される漏出を防止すべき情報をセキュリティー層のインクにより印刷することができる。
【0004】
また、特許文献2には、画像を印刷するためのマゼンタ、シアン、イエローの原色インクと、前記原色インクによって印刷された画像を保護するためのオーバーコートインクを用いた画像印刷が可能な印刷装置が記載されている。
この特許文献2に記載された印刷装置においては、オーバーコートインクを使用するという特性を活かし、上述したような個人情報等をオーバーコート層の有無により表現することを可能としている。
【特許文献1】特開2004−050754号公報
【特許文献2】特開2002−211017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているインクリボンを用いた場合には、個人情報等の保護を要する情報を完全に保護することが困難であった。具体的に説明すると、セキュリティー層を原色インク領域と別領域に形成した場合には、画像の形成と、セキュリティー層とが順に形成されるので、セキュリティー層の有無に基づいて、画像の表面に印刷内容に基づく凹凸が形成されてしまう。即ち、当該凹凸に基づいて生じる影の形状により、セキュリティー層のインクをもちいて印刷した内容、即ち、個人情報等を判読することが可能となってしまう。
【0006】
又、マゼンタ、シアン、イエローの原色インク領域の内、いずれか一つの原色インク領域の上面にセキュリティー層を形成したばあいには、感熱転写を行うと、セキュリティー層が上面に塗布されている原色インク領域の色を使用する場合には、セキュリティー層のインクが印刷されてしまい、セキュリティー層のみを使用したい場合であっても、当該セキュリティー層の下方に位置する原色インクも使用されて印刷されてしまう。従って、画像全体にセキュリティー層が形成され、個人情報等の判読ができない場合が生じる。
また、セキュリティー層のインクのみで印刷することができないので、当該個人情報を原色インクで印刷した場合となんらかわらず、肉眼による個人情報の判読が可能となってしまう場合や、画像の美観を大きく損なう場合が生じてしまう。
【0007】
この点、特許文献2に記載されている印刷装置の場合には、無色透明なオーバーコート層の有無で個人情報等の情報を印刷している。しかしながら、オーバーコート層の有無に基づいて、印刷面に凹凸が生じてしまうので、凹凸により生じる影の形状から個人情報等を判読することが可能となってしまう。
更に、オーバーコート層の有無で情報を表現するため、オーバーコート層のない部分は、紫外線等の影響に基づいて画像の劣化が発生してしまう。即ち、オーバーコート層の有無に基づいて、色の変質等の画像の劣化が発生するので、画像の劣化の程度差により、個人情報等の内容を判読することができてしまう。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題点を鑑みてなされたものであり、サーマルヘッドを介してリボンカセットに収納されたインクリボンに配置される熱転写型の印刷用インク及びオーバーコート用インクを被記録媒体に重ねて印刷を行う印刷装置に関し、特にオーバーコート用インクを用いて情報の印刷を可能とすると共に、印刷された情報の漏洩を防止することができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために成された請求項1に係る発明は、複数の発熱素子が列設されたサーマルヘッドを有する印刷手段と、透明な長尺状のベースフィルムと、該ベースフィルム上に搬送方向に所定順序で繰り返し配置される熱転写型の印刷用インクと、前記印刷用インクで印刷された印刷面を保護するオーバーコート層を形成するオーバーコート用インクとを有するインクリボンが収納された略矩形状のリボンカセットを着脱可能な状態で支持するカセット支持手段と、前記被記録媒体を搬送するシート搬送手段と、前記リボンカセット内に収納されるインクリボンを搬送するリボン搬送手段と、前記シート搬送手段とリボン搬送手段とを介して印刷用インク及びオーバーコートインクを被記録媒体に重ねて印刷を行う印刷制御手段とを備える印刷装置において、前記オーバーコート用インクは、無色透明を呈し、紫外線吸収剤を所定量含有する第1オーバーコート用インクと、無色透明を呈し、前記第1オーバーコート用インクとは異なる量の紫外線吸収剤を含有する第2オーバーコート用インクを有し、前記印刷制御手段は、前記印刷用インクによる印刷面に対し、前記第1オーバーコート用インクにより、情報を表示すると共に印刷面の保護を行う第1保護部を形成し、第2オーバーコート用インクにより、情報が表示される印刷面を除く印刷面を保護する第2保護部を形成することを特徴とする。
【0010】
そして、請求項2に係る発明は、前記請求項1に記載の印刷装置において、前記印刷制御手段は、前記第1保護部及び第2保護部により、同一平面の外表面を有するオーバーコート層を形成することを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、前記請求項1又は2に記載の印刷装置において、前記第1オーバーコート用インク及び第2オーバーコート用インクの一方が他方の2倍以上の紫外線吸収剤を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
すなわち、請求項1に係る発明の印刷装置は、サーマルヘッドを有する印刷手段で熱転写型の印刷用インクにより、被記録媒体に対して印刷が行われる。そして、前記印刷用インクで印刷された印刷面には、オーバーコート用インクで当該印刷面を保護するオーバーコート層を形成する。
ここで、オーバーコート層は、無色透明を呈し、紫外線吸収剤を所定量含有する第1オーバーコート用インクにより形成され、情報を表示すると共に印刷面の保護を行う第1保護部と、無色透明を呈し、前記第1オーバーコート用インクとは異なる量の紫外線吸収剤を含有する第2オーバーコート用インクにより形成され、情報が表示される印刷面を除く印刷面を保護する第2保護部とで構成される。
これにより、被記録媒体の印刷面は、第1保護部及び第2保護部により、その全域が保護されるので、自然光に含まれる紫外線の影響を受けず、印刷面の画質を確実に保護することができる。
【0013】
更に、第1保護部を形成する第1オーバーコート用インクと、第2オーバーコート用インクとでは、紫外線吸収剤の含有量が異なっている。ここで、紫外線吸収剤は、暗部でブラックライト等を照射すると、照射される光に含まれる近紫外線を吸収し、発光する性質を有している。従って、暗部でブラックライト等を照射した場合には、第1保護部が発する光の強さと、第2保護部が発する光の強さが異なるので、第1保護部により表示された情報を明確に判読することができる。
そして、通常の状態においては、第1オーバーコート用インク及び第2オーバーコート用インクの何れも無色透明を呈しているので、第1保護部で表示される情報を判読することはできない。
即ち、通常の状態では、第三者が当該情報を判読することはできず、暗部でブラックライトを照射するという特殊な状態でのみ、当該情報の判読が可能となるので、第1保護部で表示される情報の漏洩を防止することができる。
【0014】
そして、請求項2に係る印刷装置は、前記請求項1に記載の印刷装置において、前記印刷制御手段は、前記第1保護部及び第2保護部により、同一平面の外表面を有するオーバーコート層を形成するので、第1保護部及び第2保護部との境界において、段差に基づく陰影が形成されることはない。これにより、第1保護部及び第2保護部との境界、即ち、第1保護部により表示される情報の輪郭線を上記陰影に基づいて読み取ることができなくなり、第1保護部で表示される情報の漏洩を防止することができる。
【0015】
また、請求項3に係る印刷装置は、前記請求項1又は2に記載の印刷装置において、前記第1オーバーコート用インク及び第2オーバーコート用インクの一方が他方の2倍以上の紫外線吸収剤を含有するので、暗部でブラックライト等により近紫外線を照射した場合に、第1オーバーコート用インクで形成される第1保護部から発せられる光と、第2オーバーコート用インクで形成される第2保護部から発せられる光の間で、その発光強度が明らかに異なることになる。これにより、第1保護部で表示される情報を、第2保護部とはっきりと区別することができ、当該情報を確実に判読することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る印刷装置について、具体化した一実施例に基づいて図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
先ず、本実施例に係る印刷装置及び当該印刷装置に使用されるリボンカセットの概略構成について図1乃至図9に基づき説明する。
図1乃至図4に示すように、印刷装置1は、左右両側に配設される側壁3及び4を持つフレーム5等から構成される本体筐体2と、この側壁3に貫通される横長のリボンカセット孔6に側面側から嵌め込むことによって該フレーム5内に着脱自在に取り付けられるリボンカセット8と、被記録媒体としての用紙10が複数枚積層状態で収納されて本体筐体2の前面側下部に前側から嵌め込んで装着される用紙トレー11とから構成されている。
【0018】
本体筐体2には、リボンカセット8に対向する上側にヘッドユニット16が配設されている。そして、このヘッドユニット16には、前側下端縁部に、複数の発熱素子が列設された長尺状のサーマルヘッド15が配設されている。
そして、ヘッドユニット16の下側には、リボンカセット8の有・無を検出するリボンカセット検出センサ38が配設されている。即ち、リボンカセット検出センサ38は、リボンカセット8が装着されていない場合にはOFF信号を出力し、リボンカセット8が装着された場合にはON信号を出力するように構成されている。
ここで、該ヘッドユニット16の後端部は、フレーム5の各側壁3、4に各端縁部が軸支される回転軸17を中心にして回動可能に取り付けられている。この回転軸17にはトーションバネ18が装着されており、このトーションバネ18の一端は側壁4に係止され、他端はヘッドユニット16の側壁31の後端31Aに引っ掛けられている。そして、ヘッドユニット16は、この回転軸17に装着されたトーションバネ18によって回転軸17を中心に図4における時計方向回りに付勢されている。
また、このヘッドユニット16の長手方向中央部の前側側面部には、赤外発光ダイオードとフォトトランジスタとが内蔵される反射型フォトセンサ36が設けられている。
【0019】
そして、ヘッドユニット16の長手方向両端縁部の上側には、フレーム5の各側壁3、4の上端縁部に両端が軸支される回転軸20に固定された一対のカム部材21、22が設けられている。このカム部材21、22は、側面視略長四角形に形成され(図4参照)、一方の端縁部が回転軸20に固定され、他方の端縁部は、円弧状に形成されて、滑らかにヘッドユニット16上端面部に当接して摺動するように形成されている。
ここで、一方のカム部材21の外側側面部には、後側の側端縁部から前側方向に略1/4円弧状のカムギヤ21Aが形成されている。このカムギヤ21Aは、側壁4の後端縁部外側に配設されるステッピングモータ等によって構成されるヘッドモータ24及びこの側壁4の内側面に配設される第1ギヤ列25を介して正逆回転駆動される。従って、図4に示すように、ヘッドモータ24の回転駆動に基づいて、ヘッドユニット16の姿勢制御が行われる。具体的に説明すると、リボンカセット8の着脱時においては、ヘッドモータ24を逆回転駆動して各カム部材21、22が略水平に位置するように後側方向に回動することにより、ヘッドユニット16から離間するように駆動制御される。この時、該ヘッドユニット16は、トーションバネ18によってリボンカセット8よりも上側に位置するように上方に回動される。
一方、用紙10に印刷する場合には、ヘッドモータ24を正回転駆動することにより、ヘッドユニット16は、用紙10の搬送状態に合わせて下方に回動される(図7、図9参照)。尚、この点については、後に詳細に説明する。
【0020】
また、図4に示すように、このヘッドユニット16の下端部には、サーマルヘッド15に対向する後端縁部に沿って、該サーマルヘッド15よりも下側方向に突出する側断面略三角形状で樹脂製のリボンガイド部材28が設けられている。このリボンガイド部材28は、サーマルヘッド15とほぼ同じ長さに形成され、リボンカセット8の開口部46に挿入される(図1、図5参照)。また、サーマルヘッド15の上側は、ヘッドユニット16の各側壁31間に横架される側面視クランク形の天板33の前側部下面に固定されている。尚、サーマルヘッド15は、印刷時には、ヘッドバネ35により所定押圧力でプラテンローラ37に押しつけられるように構成されている。
【0021】
そして、図1、図4及び図5に示すように、リボンカセット8は、略円筒状のリボン収納部41と、このリボン収納部41に対向して設けられる略円筒状の巻取収納部42と、リボン収納部41、巻取収納部42を連結する左右一対の連結部43、44によって一体化された略矩形状に構成されている。リボンカセット8の中央部には、サーマルヘッド15とほぼ同じ幅のインクリボン45の走行路が形成されると共に、長尺状のサーマルヘッド15及び横長のリボンガイド部材28が上方から挿入される開口部46が形成されている。
このリボン収納部41には、インクリボン45の印刷面が外側になるように巻回されるリボンスプール48が回転可能に収納されており、開口部46側下端縁部に開設されたインクリボン送出口41Aから、インクリボン45を走行路及び巻取収納部42方向へ引き出すことができる。
一方、巻取収納部42には、リボン収納部41から走行路を経由したインクリボン45が印刷時に引き込まれるインクリボン引込口42Aが開口部46側下端縁部に開設されている。
そして、巻取収納部42には、インクリボン45が巻き取られるリボン巻取スプール49が回転可能に収納されており、リボン巻取スプール49の外周面にインクリボン引込口42Aから引き込まれたインクリボン45の先端部が固着されている。従って、巻取収納部42においては、インクリボン引込口42Aから引き込まれたインクリボン45がリボン巻取スプール49に巻回されて収納される。
【0022】
ここで、巻取収納部42のインクリボン引込口42Aには、開口部46側の側壁部の幅方向中央部に、略四角形に切り欠かれた切欠部42Cが形成されている。また、このインクリボン引込口42Aの切欠部42Cに対向する奥側の側壁部には、反射部材としてのアルミテープ42Dが貼着されている。
そして、側壁4には、ステッピングモータ等によって構成されるリボン送りモータ65が配設されており、リボン送りモータ65は、第3ギヤ列53を介してリボンスプール48及びリボン巻取スプール49に動力を作用させることができる。即ち、リボン送りモータ65を正逆回転駆動することによって、第3ギヤ列53を介してリボンスプール48及びリボン巻取スプール49の正逆回転駆動が可能となり、インクリボン45の往復搬送が可能となる。
【0023】
また、リボンカセット8は、側壁3に開口されたリボンカセット孔6に嵌挿されることで、各連結部43、44がプラテンローラ37に近接して配設される。この時、リボン収納部41のインクリボン送出口41A、即ち開口部46のリボン収納部41側の端縁部が、プラテンローラ37の上端縁部よりも上下方向の下側に位置するように、図4中、右側下がりに本体筐体2内に配設される。従って、図4に示すように、本体筐体2内に装着されたリボンカセット8の開口部46内のインクリボン45は、サーマルヘッド15とリボンガイド部材28の下端部とを結ぶ平面とほぼ平行になる。
【0024】
ここで、インクリボン45の概略構成について図6に基づいて説明する。
図6に示すように、インクリボン45は、長尺状の透明なベースフィルム71上に、1枚の用紙10に対するカラー印刷に用いるインクが印刷時の搬送方向に基づいて、所定の順番で繰り返し配置されている。
具体的に説明すると、ベースフィルム71には、先ず、フルカラーで画像等を印刷する際に用いる3色のカラー原色インクが配置されている。即ち、印刷時に搬送される順に、「イエロー」を呈色するカラー原色インクY、「マゼンタ」を呈色するカラー原色インクM、「シアン」を呈色するカラー原色インクCが配置されている。
そして、カラー原色インクY、M、Cの後方には、無色透明を呈し、カラー原色インクY、M、Cにより印刷された画像等の印刷面を保護するオーバーコートインクOPが配置されている。このオーバーコートインクOPには、所定量の紫外線吸収剤が含有されている。具体的に本実施例におけるオーバーコートインクOPには、当該オーバーコートインクOPを構成する原材料の総乾燥重量の7%を紫外線吸収剤が占めている。
従って、カラー原色インクY、M、Cによる印刷面をオーバーコートインクOPで覆うことで、紫外線吸収剤により自然光に含まれる紫外線を吸収することができる。この結果、自然光に含まれる紫外線により生じる画像の劣化(例えば、色彩の変色等)を防止することができる。
【0025】
また、透明なオーバーコートインクOPに続いては、情報記録用インクIがベースフィルム71上に配置されている。この情報記録用インクIは、前述のオーバーコートインクOPと同様に、無色透明を呈しているが、情報記録用インクIを構成する原材料の総乾燥重量の17%を占める紫外線吸収剤を含有している。即ち、情報記録用インクIは、紫外線吸収剤の含有量が異なるのみであり、その他の原材料は、前記オーバーコートインクOPと同様である。従って、カラー原色インクY、M、Cで画像等を印刷した後、当該印刷面上に情報記録用インクIで情報を記録することにより、当該情報を記録した部分の下方に位置する印刷面を、上記オーバーコートインクOPと同様に保護することができる。
そして、カラー原色インクY、カラー原色インクM、カラー原色インクC、オーバーコートインクOP、情報記録用インクIの印刷時搬送方向の先端側端縁部の近傍位置には、夫々に所定隙間を空けて所定幅寸法(約2〜3mmである。)の位置決め用マーク72が配置されている。また、情報記録用インクIの搬送方向の後端側端縁部とカラー原色インクYの先端側に位置する位置決め用マーク72との間には、印刷終了位置検出用マーク81がそれぞれの間に所定隙間を空けて配置されている。
【0026】
これにより、後述のように、位置決め用マーク72がアルミテープ42Dの前側を通過した場合には、反射型フォトセンサ36によってその通過を検出することができるので」、各カラー原色インクY、M、C、オーバーコートインクOP及び情報記録用インクIの頭出しを行うことができる。
また、後述のように、印刷終了位置検出用マーク81がアルミテープ42Dの前側を通過した場合には、反射型フォトセンサ36によってその通過を検出することができる。これにより、1枚の用紙10に対するインクリボン45、即ち、図6に示すカラー原色インクY、カラー原色インクM、カラー原色インクC、オーバーコートインクOP、情報記録用インクIから構成される1セットのインクが消費されたことを検出することができる。
【0027】
また、図4に示すように、本体筐体2には、用紙トレー11の前端部上方に、用紙トレー11に収納された用紙10の最上部を圧接しながら回転して、該用紙10を1枚ずつ搬送する給紙ローラ55が設けられている。この給紙ローラ55の搬送方向下流側には、プラテンローラ37の近傍位置に用紙10を印刷開始位置まで回転して搬送する用紙送りローラ56と、この用紙送りローラ56に圧接されて回転可能に設けられるピンチローラ57とが設けられている。そして、用紙送りローラ56の搬送方向上流側の近傍位置には、給紙ローラ55によって供給された用紙10の先端部を検出する先端検出スイッチ58が設けられている。
従って、本実施例に係る印刷装置1においては、用紙10に印刷を行う際には、先ず、給紙ローラ55により用紙トレー11に収納された用紙10のうち、最上面に位置する一枚の用紙10を用紙送りローラ56、ピンチローラ57へと搬送する。そして、給紙ローラ55により搬送された用紙10の先端部を先端検出スイッチ58で検出されると、先端検出スイッチ58の検出信号に基づいて、用紙送りローラ56の回転駆動が開始される。これにより、給紙ローラ55により用紙送りローラ56、ピンチローラ57方向へ搬送された用紙10は、用紙送りローラ56、ピンチローラ57の回転に基づいて、プラテンローラ37、サーマルヘッド15等の印刷機構へと搬送される。
【0028】
また、給紙ローラ55の上側には、印刷された用紙を排出方向に案内するガイド片59が設けられている。また、給紙ローラ55の排出方向斜め上側には、ガイド片59に沿って搬送されてきた用紙10を回転して搬送する排出ローラ61と、この排出ローラ61に圧接されて回転可能に設けられるピンチローラ62とが設けられている。
そして、図1乃至図4に示すように、用紙送りモータ51を所定方向に回転駆動することによって第2ギヤ列52を介して給紙ローラ55及び用紙送りローラ56が回転されて用紙10が印刷開始位置まで搬送される。また、用紙送りモータ51を所定方向に対して反対方向に回転駆動することによって第2ギヤ列52を介してプラテンローラ37、用紙送りローラ56及び排出ローラ61が回転されて、サーマルヘッド15によって印刷された用紙10が排出方向(図4中、左側方向)に搬送されて外部に排出される。
【0029】
ここで、ヘッドモータ24を回転駆動制御してヘッドユニット16を下方向に回動させた場合の反射型フォトセンサ36とアルミテープ42Dとの位置関係を図7乃至図9に基づいて説明する。
図7及び図8に示すように、ヘッドモータ24を正方向に所定時間(所定ステップ数)回転駆動して、第1ギヤ列25を介してカムギヤ21Aを回転角度約55度時計方向に回転させて各カム部材21、22をヘッドユニット16上で摺動させた場合には、ヘッドユニット16が所定角度下方に回動される。これにより、サーマルヘッド15は、プラテンローラ37の近傍位置まで下げられ、ヘッドユニット16の前面部に設けられた反射型フォトセンサ36は、リボンカセット8の巻取収納部42に設けられたアルミテープ42Dに対向する。
【0030】
従って、ヘッドモータ24を駆動してヘッドユニット16をこの位置に回動させて停止させた場合には、リボン送りモータ65を駆動してインクリボン45を一定速度で搬送することによって、該反射型フォトセンサ36を介して各インク(カラー原色インクY、カラー原色インクM、カラー原色インクC、オーバーコートインクOP、情報記録用インクI)に対応する位置決め用マーク72や印刷終了位置検出用マーク81を検出することが可能となる。
このとき、プラテンローラ37を通過して水平に搬送された用紙10の先端部は、ヘッドユニット16の回動に伴って下方に移動したサーマルヘッド15とリボンガイド部材28の下端面によって側面視斜め右下がりに押下されたインクリボン45に当接する。従って、用紙10の先端部は、このインクリボン45の下面に沿って斜め右下方向に案内され、リボン収納部41のリボン送出口よりも下側向きに案内される。これにより、用紙10がリボンカセット8のインクリボン送出口41Aに当接するのを回避でき、用紙10のジャムを確実に防止することができる。
【0031】
また、図9に示すように、用紙10は、給紙ローラ55及び用紙送りローラ56の回転によってインクリボン45の下面に沿って搬送されるので、リボン収納部41のインクリボン送出口41Aで搬送障害を発生させることなく、印刷開始位置まで搬送される。
そして、用紙10を印刷開始位置まで搬送した時点で用紙送りモータ51を停止して、ヘッドモータ24を更に正方向に所定時間(所定ステップ数)回転駆動することにより、第1ギヤ列25を介してカムギヤ21Aを回転角度約95度時計方向に回転させ、各カム部材21、22をヘッドユニット16上で摺動させた場合には、各カム部材21、22が側面視垂直な状態となる。この時、サーマルヘッド15はインクリボン45と用紙10をプラテンローラ37に圧接すると共に、該サーマルヘッド15が用紙10の印刷開始位置に対向することとなる。尚、この時、ヘッドユニット16の前面部に設けられた反射型フォトセンサ36は、リボンカセット8の巻取収納部42に設けられたアルミテープ42Dよりも少し下側に位置する。
【0032】
次に、上記のように構成された印刷装置1の制御系について図10に基づいて説明する。
図10に示すように、印刷装置1の制御系は制御回路部110を核として構成されている。この制御回路部110はCPU111、ROM112、CGROM113、RAM114、及び、入出力回路(I/O)115から構成され、これらはバス線116を介して相互に接続されている。
【0033】
ここに、ROM112は各種のプログラムを記憶させておくものであり、後述の用紙10を印刷開始位置に搬送すると共に、ヘッドモータ24を回転駆動制御してヘッドユニット16の上下回動を行うプログラムや、後述する印刷制御プログラム等の印刷装置1の制御上必要な各種のプログラムが記憶されている。
そして、CPU111はかかるROM112に記憶されている各種のプログラムに基づいて各種の演算を行なうものである。
【0034】
また、CGROM113には各キャラクタに対応するドットパターンデータが記憶されており、必要に応じてドットパターンデータがCGROM113から読み出され、そのドットパターンデータに基づいてサーマルヘッド15を介して用紙10上にドットパターンが印刷される。
また、RAM114はCPU111により演算された各種の演算結果等を一時的に記憶させておくためのものであり、テキストメモリ、イメージバッファ、印刷バッファ等の各種のメモリエリアが設けられている。
【0035】
また、入出力回路(I/0)115には、外部の制御ユニットとしてのホストPC117、サーマルヘッド15を駆動するヘッド駆動回路119、用紙10の搬送等を行う用紙送りモータ51を駆動するモータ駆動回路120、ヘッドユニット16を上下方向に回動させてサーマルヘッド15の圧着・リリース等を行うヘッドモータ24を駆動するモータ駆動回路121、インクリボン45の往復搬送を行うリボン送りモータ65を駆動するモータ駆動回路122が接続されている。
また、入出力回路(I/0)115には、給紙ローラ55によって給紙される用紙10の先端部を検出する先端検出スイッチ58、インクリボン45の各位置決め用マーク72、や印刷終了位置検出用マーク81を検出する反射型フォトセンサ36、リボンカセット8の装着の有・無を検出するリボンカセット検出センサ38等が接続されている。
【0036】
次に、このように構成された印刷装置1の印刷処理プログラムについて、図11、図12を参照しつつ詳細に説明する。図11は、本実施例に係る印刷装置1における印刷処理プログラムのフローチャートである。
ここで、印刷処理プログラムを開始する際には、RAM114には、既に、用紙10に印刷する印刷データが格納されている。即ち、RAM114には、用紙10に印刷される画像を構成する「イエロー」、「マゼンタ」、「シアン」の各色に対応した画像データと、当該用紙10に印刷される情報に係る情報記録データが格納されている。
【0037】
ここで、ホストPC117から印刷開始指示が入力され、印刷処理プログラムが開始されると、CPU111は、S1において用紙トレー11より用紙10を引き出し、印刷開始位置まで搬送する用紙搬送処理を行う。
従って、S1においては、CPU111は、先ず、ヘッドモータ24を逆回転駆動することにより、ヘッドユニット16の前側部を上側に向かって移動させる。その後、CPU111は、用紙送りモータ51を所定方向に回転駆動して第2ギヤ列52を介して給紙ローラ55、用紙送りローラ56を回転駆動して、用紙10の搬送を開始する。ここで、用紙送りモータ51は、先端検出スイッチ58によって用紙10の先端部が検出され、用紙10がプラテンローラ37に到達するまで回転駆動される。
こうして、用紙10がサーマルヘッド15、プラテンローラ37により押圧可能であって、インクリボン45により印刷可能な印刷開始位置まで搬送されると、CPU111は、ヘッドモータ24を正方向に所定時間(所定ステップ数)回転駆動し、ヘッドユニット16を下方に向かって移動させる。これにより、サーマルヘッド15とリボンガイド部材28の下端面が下方向に移動するので、インクリボン45を側面視斜め右下がりに下側方向に向かって押下することになり、インクリボン45を介して、用紙10の先端部を下側方向に押下可能な位置にセットされる(図7参照)。
このように、用紙10を印刷開始位置まで搬送すると、用紙送りモータ51の回転駆動を停止して用紙搬送処理(S1)を終了し、S2へと移行する。
【0038】
次に、S2においては、CPU111は、「イエロー」のカラー原色インクYに対応する印刷データに基づいて、用紙10に印刷を行うべく、インクリボン45の位置調整を行う。即ち、S2においては、反射型フォトセンサ36の検出信号に基づいて、カラー原色インクYの搬送方向先端部分に形成された位置決め用マーク72を検出し、カラー原色インクYの頭出しを行う。
上述したように、S2に移行した時点では、ヘッドユニット16は下方に移動しているので、ヘッドユニット16の前側側面部に配置された反射型フォトセンサ36が、リボンカセット8の巻取収納部42に設けられたアルミテープ42Dに対向し、インクリボン45の各位置決め用マーク72や印刷終了位置検出用マーク81等を検出可能となる(図8参照)。従って、リボン送りモータ65を駆動することにより、リボンスプール48、リボン巻取スプール49が回転し、インクリボン45が搬送されることにより、カラー原色インクYの搬送方向先端に位置する位置決め用マーク72を検出することができる。そして、このカラー原色インクYの先端部に位置する位置決め用マーク72を検出することにより、位置決め用マーク72に基づいて、カラー原色インクYの頭だしが行われる。
【0039】
続いて、S3では、CPU111は、用紙10に対して、カラー原色インクYを用いた印刷を行うイエロー印刷処理を実行する。ここで、CPU111は、ヘッドモータ24を正方向に所定時間(所定ステップ数)回転駆動することにより、第1ギヤ列25を介してカムギヤ21Aを回転角度約85〜95度時計方向に回転させて、各カム部材21、22を側面視垂直な状態にする。これにより、ヘッドユニット16がさらに下方に向かって押し下げられる。従って、ヘッドユニット16が更に下方向に所定距離回動されて、サーマルヘッド15がさらに下方に移動するので、サーマルヘッド15は、インクリボン45及び用紙10をプラテンローラ37に圧接する位置にセットされる。また、リボンガイド部材28の下端面も下方に移動してインクリボン45を側面視斜め右下がりに下側方向に更に押下する位置にセットされる(図9参照)。
その後、CPU111は、リボン送りモータ65及び用紙送りモータ51を同期させて駆動すると共に、サーマルヘッド15を駆動してイエローの印刷データをRAM114から順次読み出して、用紙10に印刷する。
そして、用紙10に対して、カラー原色インクYを用いたイエローの印刷データの印刷を終了すると、ヘッドモータ24を逆方向に所定時間(所定ステップ数)回転駆動して、ヘッドユニット16を上方に向かって移動させる。これにより、サーマルヘッド15とリボンガイド部材28の下端面が上方向に移動して、プラテンローラ37から離間する。これにより、サーマルヘッド15とプラテンローラ37により挟持されていた用紙10が移動可能となるので、CPU111は、用紙送りモータ51を所定方向に所定時間(所定ステップ数)回転駆動し、給紙ローラ55、用紙送りローラ56の回転駆動に基づいて、再び、用紙10を印刷開始位置に戻す。
カラー原色インクYを用いたイエローの印刷データに係る印刷が行われた用紙10を印刷開始位置に戻した後、イエロー印刷処理(S3)を終了する。
【0040】
イエロー印刷処理(S3)を終了した後、S4においては、CPU111は、カラー原色インクMによる印刷を実行すべく、カラー原色インクMに対するリボン位置調整処理を実行する。このリボン位置調整処理においては、カラー原色インクMの搬送方向先端部分に位置する位置決め用マーク72を反射型フォトセンサ36で検出することにより、カラー原色インクMの頭だしが行われる。即ち、このS4は、上述したS2と反射型フォトセンサ36で検出する位置決め用マーク72が異なるだけであり、既にS2において詳細に説明しているので、詳細な説明は省略する。カラー原色インクMの頭だしを完了した時点で、CPU111は、S5へと移行する。
【0041】
そして、S5では、RAM114に格納されているマゼンタに係る印刷データに基づいて、用紙10にカラー原色インクMを用いて印刷を行うマゼンタ印刷処理が行われる。このマゼンタ印刷処理(S5)においては、上述したイエロー印刷処理(S3)と用いるカラー原色インク及び印刷データが異なるのみであり、既にイエロー印刷処理(S3)において詳細に説明しているので、再度の説明は省略する。カラー原色インクMを用いて、マゼンタに係る印刷データが印刷された用紙10を印刷開始位置へ戻した後、CPU111は、S6へと移行する。
【0042】
続いて、S6においては、カラー原色インクCの頭だしを行うリボン位置調整処理が行われる。このS6においても、上記S2、S4と同様であるので、詳細な説明は省略する。カラー原色インクCの搬送方向先端部分に位置する位置決め用マーク72を反射型フォトセンサ36で検出し、カラー原色インクCの頭だしが完了した時点で、CPU111はS7へと移行する。
【0043】
S7では、CPU111は、RAM114に格納されているシアンの印刷データに基づいて、カラー原色インクCを用いた印刷を行うシアン印刷処理を実行する。ここで、シアン印刷処理(S7)も、S3、S5と同様の処理であり、印刷データ、カラー原色インクが異なるのみであるので、詳細な説明は省略する。シアンに係る印刷データをカラー原色インクCで用紙10に印刷した後、用紙10を再び印刷開始位置に搬送し、S8へと移行する。カラー原色インクY、M、Cを重ねて印刷することにより、用紙10には印刷データに基づいてフルカラーで印刷された印刷面90が形成されるが、図12(a)に示すように、この時点では、印刷面90全体が露出した状態である。
【0044】
そして、S8においては、カラー原色インクY、M、Cに続いて配置されているオーバーコートインクOPの頭だしを行うリボン位置調整処理が行われる。このS8では、上述した各リボン位置調整処理(S2、S4、S6)と同様に、位置決め用マーク72を反射型フォトセンサ36で検出することにより、オーバーコートインクOPの頭だしを行うので、詳細な説明は省略する。オーバーコートインクOPの搬送方向先端部分に位置する位置決め用マーク72を反射型フォトセンサ36で検出し、オーバーコートインクOPの頭だしを行った後、CPU111は、S9へと処理を移行する。
【0045】
次に、S9では、用紙10に対して、オーバーコートインクOPを用いた印刷を行うことにより、カラー原色インクY、M、Cによりフルカラー印刷された画像、即ち印刷面90を保護するオーバーコート層91を形成するオーバーコート印刷処理が行われる。
このオーバーコート印刷処理(S9)においては、RAM114に格納されている情報記録データに基づいて、用紙10に記録される情報の内容(例えば、文書や画像)を除く部分に対して、オーバーコートインクOPを用いた印刷を行う。この点、オーバーコート印刷処理においても、上述した各カラー原色インクY、M、Cに係る印刷処理(S3、S5、S7)と同様に動作するので、印刷処理に係る動作についての詳細な説明は省略する。
そして、オーバーコートインクOPによる印刷がなされた用紙10を印刷開始位置に再びセットすると、オーバーコート印刷処理(S9)を終了し、S10へと移行する。
尚、S9終了時点においては、図12(b)に示すように、当該情報記録データの内容以外の印刷面90に対してはオーバーコート層91が形成されるが、当該情報記録データの内容が印刷される部分には、オーバーコートインクOPによるオーバーコート層91は形成されておらず、印刷面90が露出した状態にある。
【0046】
続いて、S10においては、情報記録用インクIを用いて、RAM114に格納されている情報記録データが示す情報内容を印刷すべく、情報記録用インクIの頭だしを行うリボン位置調整処理が実行される。このS10では、上述した各リボン位置調整処理(S2、S4、S6、S8)と同様に、位置決め用マーク72を反射型フォトセンサ36で検出することにより、情報記録用インクIの頭だしを行うので、詳細な説明は省略する。情報記録用インクIの搬送方向先端部分に位置する位置決め用マーク72を反射型フォトセンサ36で検出し、情報記録用インクIの頭だしを行った後、CPU111は、S11へと処理を移行する。
【0047】
そして、S11では、用紙10に対して、情報記録用インクIを用いた印刷を行うことにより、カラー原色インクY、M、Cによりフルカラー印刷された画像を保護すると共に、情報記録データが示す情報内容を記録する情報記録印刷処理が行われる。
この情報記録印刷処理(S11)においては、RAM114に格納されている情報記録データに基づいて、用紙10に記録される情報の内容(例えば、文書や画像)が記録される部分に対して、情報記録用インクIを用いた印刷を行う。この点、情報記録印刷処理においても、上述した各カラー原色インクY、M、C、オーバーコートインクOPに係る印刷処理(S3、S5、S7、S9)と同様に動作するので、印刷装置1における印刷動作に関する詳細な説明は省略する。
【0048】
そして、情報記録用インクIによる印刷がなされると、オーバーコートインクOPによるオーバーコート層91が存在せず、印刷面90が露出している部分には、前記オーバーコート層91と同一平面を形成するように、情報記録用インクIによる情報記録層92が形成される。これにより、カラー原色インクY、M、Cにより印刷された印刷面90の上には、オーバーコートインクOPにより形成されるオーバーコート層91と、情報記録用インクIからなる情報記録層92が形成された状態となる(図12(c)参照)。
上述したように、情報記録用インクIは、オーバーコートインクOPと同様に紫外線吸収剤を含有しており、自然光に含まれる紫外線から印刷面90を保護することができるので、情報記録層92の下方に位置する印刷面90を保護することができる。
即ち、S11までの処理を経ることにより、用紙10の情報記録された部分は情報記録用インクIで保護され、情報記録されていない部分は、オーバーコートインクOPで保護される。従って、用紙10の全面に情報記録用インクI、オーバーコートインクOPで紫外線を吸収する層が形成されるので、用紙10の全面を保護することが可能となる。
【0049】
オーバーコートインクOPによるオーバーコート層91及び、情報記録用インクIによる情報記録層92が形成されると、CPU111は、用紙送りモータ51を回転駆動することにより、CPU111は、用紙送りモータ51を回転駆動してプラテンローラ37、用紙送りローラ56及び排出ローラ61を回転駆動する。これにより、カラー原色インクY、M、Cで印刷データがフルカラー印刷され、オーバーコートインクOP、情報記録用インクIで情報記録データが印刷されるとともに、前記印刷面90の全面を保護された用紙10は、印刷装置1の外部に排出される。そして、用紙10を印刷装置1の外部へ排出した後、情報記録印刷処理(S11)を終了し、当該印刷処理プログラムを終了する。
【0050】
次に、上述したようにして印刷された用紙10において、オーバーコートインクOP及び、情報記録用インクIで印刷された情報の確認方法について、図13を参照しつつ詳細に説明する。
ここで、図13においては、印刷装置1を用いて、或る会社(○×△株式会社)の社員証を作成する場合を具体例として説明する。従って、印刷データとしては、「○×△株式会社」に所属する或る社員の写真や当該社員証の模様等の画像データがRAM114に格納されており、情報記録データとして、当該社員の氏名や社員番号等の個人情報を示す文書データがRAM114に格納されている。
【0051】
この場合には、上記印刷処理プログラムのS1〜S7までの処理を行うことにより、RAM114に格納されている印刷データが用紙10にフルカラー印刷される。そして、当該社員を示す個人情報を示す文書データを印刷する際には、RAM114に格納されている文書データに基づいて、当該文書データの内容が印刷される部分を除いた部分に対して、オーバーコートインクOPを用いた印刷(S8、S9)を行う。即ち、CPU111は、文書データに基づく印刷結果を白黒反転させたデータを作成し、当該データに基づいて、オーバーコートインクOPによる印刷を行う。これにより、文書データの内容が印刷される部分の印刷面は露出した状態となり、その他の部分に該当する印刷部分には、オーバーコートインクOPによるオーバーコート層91が形成される。
続いて、情報記録用インクIによる文書データの内容を印刷する際には、CPU111は、文書データに基づく印刷結果をそのまま再現するように、情報記録用インクIで印刷するので、オーバーコートインクOPによりオーバーコート層91が形成されていない印刷面90に情報記録用インクIによる情報記録層92が形成される。
これにより、当該社員証に係る印刷面90全域がオーバーコートインクOP及び情報記録用インクIにより保護されるので、画像の劣化等を防止することができる。
更に、オーバーコート層91及び情報記録層92は、同一平面を構成するように形成されるので(図12(c)参照)、オーバーコート層91と情報記録層92との間に段差が生じることはない。これにより、段差に基づく陰影が生じることもなくなるので、自然な状態では、当該社員証に記載された個人情報を読み取ることができなくなり、個人情報の漏洩を防止することができる。
【0052】
図13(a)に示すように、当該印刷装置1により印刷された社員証は、無色透明なオーバーコートインクOP、情報記録用インクIにより印刷面90が保護されており、その表面に文書データを構成する文字の輪郭に沿った段差も形成されていないので、自然光の下で当該社員に関する個人情報を判読することはできない。
そして、当該社員証に印刷された社員の個人情報を確認する際には、暗部でブラックライトを照射すればよい。ここで、ブラックライトとは、近紫外線を照射する照明であり、オーバーコートインクOP及び情報記録用インクIには紫外線吸収剤が含まれている。この点、紫外線吸収剤は紫外線を吸収すると発光する特徴を有しているので、オーバーコートインクOP及び情報記録用インクIで印刷された部分は、暗部でブラックライトを照射すると発光する。
上述したように、情報記録用インクIには、当該情報記録用インクIを構成する原材料の総乾燥重量の17%を占める紫外線吸収剤が含有されており、オーバーコートインクOPには、オーバーコートインクOPを構成する原材料の総乾燥重量の7%を占める紫外線吸収剤が含有されている。即ち、情報記録用インクIはオーバーコートインクOPと比較して、2倍以上の紫外線吸収剤を含有しているので、情報記録層92である「氏名:○山△男」、「社員番号:0123456」、入社年月日:2000年4月1日」の文字の部分は、オーバーコート層91が形成されている部分よりも強い光を発し、情報記録層92が形成されている部分、即ち、当該社員の個人情報がはっきりと浮かびあがるので、個人情報を判読することができる(図13(b)参照)。
これにより、図13(a)に示すように、通常は当該情報を確認することができず、必要な場合にのみ、ブラックライトの照射という簡単な作業で確認することができるので、当該社員証における個人情報のような情報の漏洩に注意を要する情報を印刷することができ、万全が情報管理を行うことができる。
【0053】
尚、オーバーコートインクOP及び情報記録用インクIで印刷された情報をはっきりと判読することができるように、情報記録用インクIの紫外線吸収剤の含有量は、オーバーコートインクOPの2倍以上であることが望ましいが、過剰に紫外線吸収剤を添加した場合には耐光性が低下する虞がある。この点、情報記録用インクIに含有される紫外線吸収剤をオーバーコートインクOPの3倍とした場合には、情報の判読は容易に可能とすることができるが、紫外線等による画像の劣化を防止する機能が低下する傾向にある。
従って、画像の劣化を防止する機能と、情報の判読容易性とを考慮すると、情報記録用インクIの紫外線吸収剤は、オーバーコートインクOPに含有されている紫外線吸収剤の2倍以上3倍以下であることが望ましい。
【0054】
以上詳細に説明した通り、本実施例に係る印刷装置1では、カラー原色インクY、M、Cで印刷された印刷面90に対して、情報記録データに基づいて情報が印刷される部分には、情報記録用インクIで情報記録層92を形成し、用紙10における情報記録層92が形成されない部分にはオーバーコートインクOPによりオーバーコート層91を形成する。
そして、オーバーコートインクOP及び情報記録用インクIには、紫外線吸収剤が含有されているので、用紙10の全面に対して、自然光が含む紫外線による画像の劣化を防止することができる。この点、オーバーコートインクOP及び情報記録用インクIは、無色透明であるので、画像の美感を損ねることなく、画像上に情報記録を行うことができる。即ち、用紙10の全面に画像を配することも可能となる。
また、情報記録用インクIの紫外線吸収剤は、オーバーコートインクOPの2倍以上の紫外線吸収剤を含有しているので、暗部でブラックライトを照射した場合に、情報記録データに基づいて記録された情報の内容をはっきりと判読することができる。
そして、本実施例に係る印刷装置1では、オーバーコートインクOPで形成されるオーバーコート層91と、情報記録用インクIで形成される情報記録層92との間において、各層の表面が同一平面を形成するように印刷するので、情報の内容に基づく陰影が生じることはない。これにより、「文字の輪郭に基づく陰影から情報を判断する」等の陰影に基づく情報の漏洩を防止することができる。
【0055】
尚、本発明は前記実施例に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、前記実施例では、情報記録データとして、個人情報を示す文書データを用いていたがこれに限定するものではなく、種々のデータを用いることができる。即ち、印刷装置において2色刷りで印刷可能なデータであれば、本発明を適用することができる。例えば、文書データに限らず、2色で表現可能な画像データや2次元コード等のデータを情報記録データとして印刷することも可能である。ここで、2色で表現可能な画像データには、2色を用いた諧調で表現された画像データも含まれる。
更に、本実施例では、氏名や社員番号等の個人情報を例として挙げているが、生年月日、血液型等のその他の個人情報を用いてもよいことはもちろんである。
【0056】
そして、情報記録データとしては、個人情報に係るデータのみでなく、様々な情報を使用することができる。例えば、リボンカセット8に収納されているインクリボン45の使用可能回数を情報記録として使用することも可能であるし、撮影場所や撮影条件等の情報を記録することも可能である。例えば、印刷した画像の元になる画像データのファイル名を情報記録データとして用い、情報記録用インクIで印刷しておくことにより、その画像がどの画像データに基づくものであるかを容易に判断することができる。
【0057】
また、本実施例においては、情報記録用インクIの紫外線吸収剤の含有量を、オーバーコートインクOPの2倍以上の紫外線吸収剤を含有するものとし、より強く発光する情報記録用インクIにより情報記録層を形成し、オーバーコート層を紫外線吸収剤の少ないオーバーコートインクOPで形成するように構成していたが、この態様に限定するものではない。例えば、紫外線吸収剤を多く含有するインクによりオーバーコート層91を形成し、紫外線吸収剤の少ないインクで情報記録層92を形成してもよい。この場合には、図13(b)で示した態様とは異なり、用紙10の全面に対して情報記録がなされている部分が白抜きで印刷されたような態様となるが、紫外線吸収剤の含有量に差があることにより、紫外線吸収剤が少ないインクで印刷された情報記録の内容をはっきりと判読することができる。
【0058】
また、本実施例においては、オーバーコートインクOPによる情報記録データが印刷される部分以外の部分に対して、先にオーバーコート層91を形成し、その後、情報記録データが印刷される部分に対して、情報記録用インクIによる情報記録層92を形成しているが、この順番に拘泥するものではない。即ち、先に情報記録用インクIで情報記録層92を形成し、その後、情報記録層92が形成されていない部分に対して、オーバーコートインクOPによるオーバーコート層91を形成する態様であってもよい。
更に、本実施例においては、印刷用インクとして、カラー原色インクY、M、Cが塗布されたインクリボン45で印刷を行う印刷装置により説明したが、複数色を用いた印刷を行う印刷装置に限定するものではない。例えば、黒色のみのインクが塗布されたインクリボン等、単一色のインクが塗布されたインクリボンで印刷を行う印刷装置に適用することも可能であることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施例に係る印刷装置、リボンカセットの概略構成を示す斜視図である。
【図2】印刷装置にリボンカセットを装着した状態を示す斜視図である。
【図3】印刷装置にリボンカセットを装着した状態を示す平面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】リボンカセットの概略構成を示す下側斜視図である。
【図6】リボンカセットに収納されるインクリボンの一例を示す平面図である。
【図7】印刷開始位置に搬送される用紙の先端部がインクリボンに到達した時の状態を示す側断面図である。
【図8】図7の反射型フォトセンサの部分を示す要部拡大側断面図である。
【図9】用紙が印刷開始位置に搬送された状態を示す側断面図である。
【図10】印刷装置の制御構成を示すブロック図である。
【図11】印刷装置の印刷処理プログラムのフローチャートである。
【図12】印刷処理プログラム実行中における用紙の断面図である。(a)は、カラー印刷終了時、(b)はオーバーコート層の形成終了時を示し、(c)は、情報記録層の形成終了時を示す。
【図13】印刷装置で印刷された用紙において、情報記録された内容を確認する際の説明図である。(a)は通常の状態を示し、(b)は、暗部においてブラックライトを照射した状態を示す。
【符号の説明】
【0060】
1 印刷装置
2 本体筐体
3、4 側壁
5 フレーム
6 リボンカセット孔
8 リボンカセット
15 サーマルヘッド
16 ヘッドユニット
37 プラテンローラ
45 インクリボン
51 用紙送りモータ
55 給紙ローラ
56 用紙送りローラ
57、62 ピンチローラ
65 リボン送りモータ
71 ベースフィルム
91 オーバーコート層
92 情報記録層
110 制御回路部
111 CPU
112 ROM
114 RAM
Y、M、C カラー原色インク
OP オーバーコートインク
I 情報記録用インク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発熱素子が列設されたサーマルヘッドを有する印刷手段と、
透明な長尺状のベースフィルムと、該ベースフィルム上に搬送方向に所定順序で繰り返し配置される熱転写型の印刷用インクと、前記印刷用インクで印刷された印刷面を保護するオーバーコート層を形成するオーバーコート用インクとを有するインクリボンが収納された略矩形状のリボンカセットを着脱可能な状態で支持するカセット支持手段と、
前記被記録媒体を搬送するシート搬送手段と、
前記リボンカセット内に収納されるインクリボンを搬送するリボン搬送手段と、
前記シート搬送手段とリボン搬送手段とを介して印刷用インク及びオーバーコートインクを被記録媒体に重ねて印刷を行う印刷制御手段とを備える印刷装置において、
前記オーバーコート用インクは、
無色透明を呈し、紫外線吸収剤を所定量含有する第1オーバーコート用インクと、
無色透明を呈し、前記第1オーバーコート用インクとは異なる量の紫外線吸収剤を含有する第2オーバーコート用インクを有し、
前記印刷制御手段は、
前記印刷用インクによる印刷面に対し、
前記第1オーバーコート用インクにより、情報を表示すると共に印刷面の保護を行う第1保護部を形成し、
第2オーバーコート用インクにより、情報が表示される印刷面を除く印刷面を保護する第2保護部を形成することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の印刷装置において、
前記印刷制御手段は、前記第1保護部及び第2保護部により、同一平面の外表面を有するオーバーコート層を形成することを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の印刷装置において、
前記第1オーバーコート用インク及び第2オーバーコート用インクの一方が他方の2倍以上の紫外線吸収剤を含有することを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−76245(P2007−76245A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268989(P2005−268989)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】