印刷装置
【課題】印刷される情報量を等しくしつつ、紙幅の異なる感熱紙を使用することできる印刷装置を提供する。
【解決手段】複数の発熱素子145が列状に配置されたサーマルヘッド1と、前記サーマルヘッド1を回動可能に保持するヘッド保持機構77と前記ヘッド保持機構77に保持された前記サーマルヘッド1が押圧状態で当接するプラテン71とを備え、前記ヘッド保持機構77は、前記発熱素子145が異なる配列ピッチに形成された複数種の前記サーマルヘッド1のうちの1つの前記サーマルヘッド1を保持することを特徴とする。
【解決手段】複数の発熱素子145が列状に配置されたサーマルヘッド1と、前記サーマルヘッド1を回動可能に保持するヘッド保持機構77と前記ヘッド保持機構77に保持された前記サーマルヘッド1が押圧状態で当接するプラテン71とを備え、前記ヘッド保持機構77は、前記発熱素子145が異なる配列ピッチに形成された複数種の前記サーマルヘッド1のうちの1つの前記サーマルヘッド1を保持することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギーによって反応する感熱紙を選択的に加熱することで印刷する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置の1つとしてサーマルプリンタが知られている。サーマルプリンタは、微小発熱素子が直線的に配置されたサーマルヘッドを有している。サーマルヘッドに配置された微小発熱素子は、通電により選択的に発熱する。そして、この熱エネルギーが感熱紙に含まれる発色剤と選択的に反応することにより、感熱紙上に種々の情報を印刷する。この印刷方式は、感熱発色方式と呼ばれている。この感熱発色方式により印刷するサーマルプリンタは、サーマルヘッドと、当該サーマルへッドが押圧構造により押圧されるプラテンとを備え、感熱紙をサーマルヘッドとプラテンとの間に挟持して、選択的に加熱しながら搬送する。このとき、感熱紙の発色剤が熱エネルギーに反応して印刷が行われる。この後、印刷された感熱紙は、サーマルヘッドとプラテンとにより挟持搬送され、サーマルプリンタの外部へ送出される(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−98699号公報
【特許文献2】特開2001−322304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のサーマルプリンタは、サーマルヘッド上に微小発熱素子が一定のピッチで所定数だけ配置されている。そのため、印刷される最大情報量や最大印刷幅が固定されている。それに伴って、使用される感熱紙の紙幅が決定されている。近年、省資源のため使用される感熱紙の量をできるだけ低減しようとする動きがある。しかし、この種のサーマルプリンタにおいては、当該感熱紙に印刷される情報量を等しくしつつ、紙幅の狭い感熱紙を使用することが困難であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
(適用例1)複数の発熱素子が列状に配置されたサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドを回動可能に保持するヘッド保持機構と、前記ヘッド保持機構に保持された前記サーマルヘッドが押圧状態で当接するプラテンとを備え、前記ヘッド保持機構は、前記発熱素子が異なる配列ピッチに形成された複数種の前記サーマルヘッドのうちの1つの前記サーマルヘッドを保持することを特徴とする印刷装置。
【0007】
(適用例2)前記複数種のサーマルヘッドは、列状に形成されている前記発熱素子の数が同数であることを特徴とする上記の印刷装置。
【0008】
これらの構成によれば、この印刷装置は、異なる配列ピッチに形成された同数の発熱素子を有する複数種のサーマルヘッドのうちのどちらか1つをヘッド保持機構に保持し、記録媒体としての感熱紙をサーマルヘッドとプラテンとにより挟持搬送させ印刷することができる。サーマルヘッドは、異なる配列ピッチに形成された同数の発熱素子を有するため、同じ数の画素から構成される印刷情報を異なる幅で印刷することができる。すなわち、情報量を等しくして、複数の紙幅を有する感熱紙を選択的に使用することができる。
【0009】
そのため、紙幅の広い感熱紙に印刷されていた情報を、情報量を損なわず紙幅の狭い感熱紙に印刷することができる。従って、使用される感熱紙の量を低減することができる。その結果、使用されるロール紙のコスト低減を実現することができ印刷装置のランニングコスト低減に寄与することができるとともに、紙の消費量を削減することができ省資源化が実現できる。
【0010】
また、この印刷装置は、同数の画素からなる情報を印刷するため、異なる配列ピッチの発熱素子を有したサーマルヘッドが搭載されても、同一数の画素からなる印刷データを共有することができる。さらには、同数の発熱素子を制御するため、制御手段を共通とすることが可能になる。
【0011】
(適用例3)前記サーマルヘッドは、回動する支点となる支持軸が設けられており、前記ヘッド保持機構は、前記サーマルヘッドの前記支持軸と、前記サーマルヘッドを前記プラテン側に付勢するバネを有するバネ受け部と、を受ける溝部を有していることを特徴とする上記の印刷装置。
【0012】
(適用例4)前記サーマルヘッドは、前記ヘッド保持機構に着脱可能に保持されていることを特徴とする上記の印刷装置。
【0013】
これらの構成によれば、この印刷装置のヘッド保持機構は、サーマルヘッドの支持軸と、バネを有するバネ受け部を同じ溝部に挿入し、当該バネによってサーマルヘッドをプラテン等の度当てに付勢することにより、サーマルヘッドを保持することができる。また、バネの付勢を外すことによってサーマルヘッドを取り外すことができる。従って、異なる配列ピッチに形成された同数の発熱素子を有する複数種のサーマルヘッドを選択的に印刷装置に保持することができる。
【0014】
(適用例5)配列ピッチの異なる同数の前記発熱素子を有する前記複数種のサーマルヘッドごとに、異なる紙幅の感熱紙からなるロール紙が想定されており、前記ロール紙を収容するロール紙収容部をさらに備え、前記ロール紙収容部は、前記ロール紙の側面をガイドするガイド部を有し、前記ガイド部は、複数種の前記ロール紙の紙幅に対して調整可能に設けられていることを特徴とする上記の印刷装置。
【0015】
異なる配列ピッチに形成された同数の発熱素子を有する複数種のサーマルヘッドは、それぞれのサーマルヘッドごとに最大印刷幅が規定されている。そして、この最大印刷幅によって、所定の紙幅の感熱紙からなるロール紙が設定されている。
この構成によれば、この印刷装置は、保持されているサーマルヘッドに適応した紙幅のロール紙を、側面のガイド位置が調整可能なガイド部でガイドして、ロール紙収容部に安定的に収容することができる。また、ロール紙の側面をガイドすることによって、感熱紙の安定的な紙送りを確保することができる。
【0016】
(適用例6)前記複数種のサーマルヘッドは、少なくとも、前記発熱素子の数が512個である前記サーマルヘッドを含むことを特徴とする上記の印刷装置。
【0017】
この構成によれば、この印刷装置は、512個の画素からなる情報を印刷することができる。このとき、複数種のサーマルヘッドは、512個の画素からなる印刷データを共有することができる。さらには、512個の発熱素子を制御する制御手段を共通とすることが可能になる。
【0018】
(適用例7)前記複数種のサーマルヘッドは、前記発熱素子の形成密度が180dpiである前記サーマルヘッドと前記発熱素子の形成密度が250dpiである前記サーマルヘッドとを含むことを特徴とする上記の印刷装置。
【0019】
この構成によれば、この印刷装置は、サーマルヘッドの発熱素子の形成方向に180dpi、すなわち約0.141mmピッチ、もしくは250dpi、すなわち約0.101mmピッチで512個の画素からなる情報を印刷することができる。
【0020】
(適用例8)前記発熱素子の形成密度が180dpiである前記サーマルヘッドに対応する前記ロール紙の紙幅が約80mmであり、前記発熱素子の形成密度が250dpiである前記サーマルヘッドに対応する前記ロール紙の紙幅が約58mmであることを特徴とする上記の印刷装置。
【0021】
この構成によれば、この印刷装置は、180dpiすなわち約0.141mmピッチで512個の画素情報を紙幅約80mmの感熱紙に印刷することができ、さらに、同じ512個の画素情報を250dpiすなわち約0.101mmピッチで紙幅約58mmの感熱紙に印刷することができる。そのため、印刷される情報量を等しくし、使用される感熱紙の紙幅を約80mmから約58mmに減ずることができる。従って、使用される感熱紙の量を低減することができる。その結果、使用されるロール紙のコスト低減を実現することができ印刷装置のランニングコスト低減に寄与することができるとともに、紙の消費量を削減することができ省資源化が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本実施形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で参照する図面では、説明および図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0023】
(サーマルプリンタの全体構成について)
本実施形態の印刷装置としてのサーマルプリンタを、図1〜3を参照して説明する。図1は、サーマルプリンタの外観構成を示す斜視図である。図2および図3は、プリンタ機構部の外観を示す斜視図であり、図2は、カバーフレームが開いた状態のプリンタ機構部の斜視図であり、図3は、カバーフレームが閉じた状態のプリンタ機構部の斜視図である。
【0024】
このサーマルプリンタ100は、POSシステム等に用いられ、レシートやクーポン等を印刷して発行することに適用される。サーマルプリンタ100は、ロール状の感熱紙S(図4参照)を使用して、この感熱紙Sに情報を印刷する。なお、図1〜図3に示すX方向は、印刷される感熱紙Sの幅方向を示し、Y方向は感熱紙Sの紙送り方向を示し、Z方向はX方向およびY方向と直交する方向を示す。
【0025】
図1〜3に示すように、サーマルプリンタ100は、外装ケース部200と、プリンタ機構部300と、図示しない制御部を有している。
図2および図3に示すプリンタ機構部300は、基板等からなる制御部とともに図1に示す外装ケース部200に収容される。詳しくは、プリンタ機構部300は、樹脂等からなる下ケース205に固定され、側面部および後方部は、上ケース210に覆われており、そのY方向の前方部分は、パネル215により覆われている。さらに、プリンタ機構部300の上面は、上部カバー220に覆われている。
【0026】
図2に示すように、プリンタ機構部300は、印刷された感熱紙Sを切断するための紙カット部20およびロール状の感熱紙Sを収納保持するためのロール紙収容部30を備えている。図1に示すパネル215の上部にはこの紙カット部20が配置され、紙カット部20はカッタカバー225で覆われている。このカッタカバー225は、図1中矢印A方向にスライドさせて引き出すことができる。
【0027】
図1に示すように、上ケース210の上面のX方向の一方の側には、オープンボタン230が設けられている。オープンボタン230は、図1中矢印B方向に押し下げられることによって、プリンタ機構部300に設けられたカバーオープンレバー235を、支点240を中心に回転させることができる。カバーオープンレバー235は、図2に示すプリンタ機構部300のカバーフレーム10のロック機構と係合しており、時計方向に回転されることにより、ロック機構が解除される。さらに、カバーフレーム10は、上部カバー220と結合されている。
【0028】
そのため、矢印B方向にオープンボタン230を押下げると、カバーオープンレバー235が時計方向に回転されてロック機構が外され、上部カバー220が矢印C方向に開き、ロール紙収容部30が露出する。すなわち、この状態が、図2に示すプリンタ機構部のカバーフレーム10が開いた状態である。このようにすることにより、ロール状の感熱紙Sのセットもしくは取り出しができる。
【0029】
なお、本実施形態で使用する感熱紙Sは、発色剤がバインダ等により保持されている発色層からなる印刷面を有し、この印刷面を外面に順次積層され形成されているロール状の感熱紙Sである。以降、このロール状の感熱紙Sをロール紙R(図4参照)とも呼ぶ。この感熱紙Sすなわちロール紙Rは所定の紙幅に形成されている。この紙幅については後述する。
【0030】
(プリンタ機構部について)
次いで、プリンタ機構部の詳細を図2〜5を参照して説明する。図4は、プリンタ機構部の側断面を示す側断面である。図5はサーマルヘッド1の取付を説明する側面図であり、(a)はサーマルヘッドが本体フレームに取り付けられた状態を示す部分側面図、(b)はサーマルヘッドを本体フレームに取り付ける過程を示す部分側面図である。なお、図4および図5に示すY方向およびZ方向は、図1〜3に示すY方向およびZ方向と同一方向である。
図2〜4に示すように、プリンタ機構部300は、本体フレーム60とカバーフレーム10と、ロール紙収容部30と、紙カット部20と、印刷部70と、を備えている。
【0031】
図2に示すように、本体フレーム60は、板金等からなり、Z方向上方およびY方向前方に開口を有するほぼ箱型に形成されている。カバーフレーム10は、本体フレーム60の上部後方に設けられている。カバーフレーム10は、本体フレーム60の後部両側の上端部に設けられた支軸68を中心として回動、すなわち、開閉自在に取り付けられている。カバーフレーム10には、カバーフレーム10を閉じた際にロール紙Rとの接触を避けるための円弧状の蓋部15が設けられている。また、本プリンタの設置角度を変える場合、すなわち、例えば縦置きにする場合、この蓋部15は、ロール紙Rを受ける保持部材としても機能する。
【0032】
図2に示すように、ロール紙収容部30は、本体フレーム60の箱状の形成された内部後方に上記カバーフレーム10に覆われて設けられている。ロール紙収容部30は、ロール紙ホルダ31と、一対のロール紙側面ガイド板32とを有している。
【0033】
ロール紙ホルダ31は、樹脂等により形成され、中央部にロール紙Rの最大径に相当するほぼ円弧状のくぼみを有し、本体フレーム60の底部に、円弧状のくぼみの側面開口が本体フレーム60の両側面側に向くように取り付けられている。一対のロール紙側面ガイド板32は収容されるロール紙Rの両側面にわずかの隙間を有して接するように、ロール紙ホルダ31の側面方向に設けられている。そのため、ロール紙Rは、側面を一対のロール紙側面ガイド板32に幅方向の動きを規制され、ロール紙ホルダ31のほぼ円弧状のくぼみに回転自在に保持される。
【0034】
なお、この一対のロール紙側面ガイド板32は、ロール紙ホルダ31から着脱可能に設けられている。本実施形態では、ロール紙側面ガイド板32は紙ホルダ31に設けられた溝に挿入され保持されている。この一対のロール紙側面ガイド板32をロール紙ホルダ31に設けられた溝に対し、選択的に挿入することによって異なる紙幅のロール紙Rを収容することができる。
【0035】
また、ロール紙側面ガイド板32を、紙ホルダ31から取り外すことにより、さらに大きな紙幅を有するロール紙Rをロール紙収容部30に収容することができる。このとき、本体フレーム60のX方向の内側の両側面部分がロール紙側面ガイド部として機能する。すなわち、上述のロール紙収容部30は、異なる紙幅を有する複数種のロール紙Rを収容することができる。
【0036】
図3に示すように、紙カット部20は、本体フレーム60の前方すなわちカバーフレーム10の支軸68とは相対する位置に設けられている。紙カット部20は、可動刃21およびその駆動手段が収納されている。可動刃21は駆動手段により、支点22を中心に矢印E方向に回動する。図4に示すように、この可動刃21とハサミ状に交叉する固定刃24は、紙カット部20に対向するようにカバーフレーム10に配置される。
【0037】
この固定刃24と可動刃21との隙間は感熱紙Sが通過する紙出口Gに連結している。そのため、駆動手段により回動される可動刃21の刃部と固定刃24の刃部とがハサミ状に交叉することによって、感熱紙Sは紙出口G近傍でカットされる。なお、固定刃24の上部には、固定刃カバー25が設けられている。また、感熱紙Sを切断しない時は、可動刃21は紙カット部20の内部に収納されており、可動刃21の刃部は露出しない。
【0038】
図4に示すように、印刷部70は、ロール紙収容部30を始点として紙カット部20の紙出口Gを終点とする感熱紙Sの搬送経路D上の紙カット部20側に設けられている。図4および図5に示すように、印刷部70は、プラテン71とサーマルヘッド1とヘッド保持機構77とを備えている。
【0039】
サーマルヘッド1は、両側面にヘッド支持軸102が設けられている。このサーマルヘッド1の詳細については後述する。ヘッド保持機構77は、本体フレーム60に形成された溝部としての切り欠き部62とヘッド押圧板72とヘッド押圧板72に取り付けられるバネ75とから構成されている。
【0040】
図5(b)に示すように、切り欠き部62は、本体フレーム60の上方に開口を有し、プラテン側に溝62aが形成され、溝62aと対向する位置の上下に溝62b,62cが形成されている。サーマルヘッド1は、ヘッド支持軸102が本体フレーム60の切り欠き部62に挿入され、ヘッド支持軸102が切り欠き部62の溝62aに係合することによって、本体フレーム60に取り付けられる。ヘッド押圧板72は、上下に曲げ部72b,72cが形成され、圧縮コイルバネであるバネ75が固定されている。このヘッド押圧板72は、切り欠き部62に挿入され、曲げ部72b,72cがそれぞれ切り欠き部62の溝62b,62cに係合する。
【0041】
このようにすることによって、サーマルヘッド1とヘッド押圧板72とは、切り欠き部62の両側に、互いにほぼ平行状態で支持される。ヘッド押圧板72に固定されるバネ75は、サーマルヘッド1の背面に当接する。このバネ75によりサーマルヘッド1はプラテン71方向に付勢される。
【0042】
上述のヘッド保持機構77は、ヘッド押圧板72に固定されたバネ75をサーマルヘッド1の背面からずらすことによって、切り欠き部62から取り外すことができる。サーマルヘッド1もバネ75からの付勢力がなくなることによって、切り欠き部62から取り外すことができる。このようにして、サーマルヘッド1は本体フレーム60に対して、着脱可能に支持される。
【0043】
図2に示すように、プラテン71は、ゴム等の弾性部材により円筒形のローラ状に形成され、プラテン軸受73を介してカバーフレーム10に回転可能に支持されている。プラテン71の一方の軸には、プラテン歯車74が圧入されている。本体フレーム60には、溝部64が設けられており、カバーフレーム10を閉じると、プラテン71が、サーマルヘッド1の案内斜面部104(図4参照)に案内された後、プラテン軸受73が溝部64と当接する。さらに、サーマルヘッド1によるプラテン71への加圧力で、カバーフレーム10には下向きの力が作用し、プラテン71の位置が定められる。
【0044】
以上の構成により、図5(a)に示すように、プラテン71は、感熱紙Sの内面S2の側から感熱紙Sをサーマルヘッド1の方向に押圧し、プラテン71と対向するサーマルヘッド1は、感熱紙Sの外面S1の側から感熱紙Sをプラテン71の方向に押圧して、感熱紙Sを挟持する。なお、このとき感熱紙Sの外面S1の表面に、前述の発色層が形成されている。
【0045】
また、図2に示すように、本体フレーム60の側面には、プラテン71を回転駆動させるための紙送りモータ66と紙送り伝達歯車67とが設けられている。上述のように、プラテン71が本体フレーム60の溝部64に位置決めされることによって、プラテン歯車74と紙送り伝達歯車67とが噛み合い、紙送りモータ66からの動力がプラテン71へ伝達される。
【0046】
上述の構造を有するサーマルプリンタ100は、上部カバー220と連結するカバーフレーム10を開き感熱紙Sからなるロール紙Rをセットして、感熱紙Sを紙出口Gまで引き出し、上部カバー220と連結するカバーフレーム10を閉じることによって、感熱紙Sはプラテン71とサーマルヘッド1との間にセットされる。そして、紙送りモータ66を起動しプラテン71を回転させて感熱紙Sを送りながら、サーマルヘッド1の直線状に配置された微小発熱素子に選択的に通電して微小発熱素子を発熱させることによって、感熱紙Sに所定の情報を印刷することができる。
【0047】
プリンタ機構部300は、さらに複数の検出機構を有している。検出機構について、図2および図6に基づいて説明する。図6は、ニヤエンド検出機構を説明する図であり、(a)はニヤエンド検出機構の正面図、(b)は(a)のg−g断面図、(c)は収容されるロール紙Rが小径になったときの状態を示す(a)のg−g断面図である。図6に示すX方向、Y方向、Z方向は、図1〜3に示すX方向、Y方向、Z方向と同一な方向を示す。
【0048】
図2示すように、紙検出器80は、ロール紙ホルダ31の印刷部70側に設けられている。紙検出器80は、印刷部70の近傍で、印刷される感熱紙Sの有無を検出する装置である。紙検出器80は、反射型の光学式検出器であり、紙検出器80部分を通過する紙の有無を検出する。また、紙検出器80のロール紙Rの収容側、すなわち紙送り方向において上流側には、感熱紙Sに付着した異物や紙粉を下方へ落とす穴81が設けられており、紙粉等の影響で、紙検出器80が誤動作しないようになっている。
【0049】
図6に示すように、ニヤエンド検出機構85は、ロール紙収容部30のロール紙側面ガイド板32のうちの一方の側に設けられている。ニヤエンド検出機構85は、ロール紙Rが消費され所定の径以下となったこと、すなわち、ロール紙Rの残量が少なくなってきたことを検出し、ロール紙Rの交換を促すための装置である。
【0050】
以下、小さい紙幅のロール紙Rが収納される場合を例にとり、ニヤエンド検出機構85を説明する。図6(a),(b)に示すように、ニヤエンド検出機構85は、アクチュエータ87とマイクロスイッチ88とを備え、ロール紙側面ガイド板32に取り付けられる。アクチュエータ87は、樹脂等により長方形の板状に形成され、端部に位置する一方の面に、その面から突出するようにほぼ円錐形状の突起部89が形成されている。また、アクチュエータ87の上方向の他面には、その面から一定の距離をおいて平行かつ外方向に延出する2つの支軸86が形成されている。
【0051】
ロール紙側面ガイド板32には、ロール紙Rをガイドする面とは反対の面に、その面から直角に延出するように2つの支持板92が設けられている。支持板92には、Z方向上方向に開口するU字形状の支持部92aが形成されている。そして、アクチュエータ87は、支軸86が、ロール紙側面ガイド板32の支持部92aに取り付けられ、支軸86を中心として回動可能に支持されている。
さらに、ロール紙側面ガイド板32には、図示しないマイクロスイッチ取付板によってマイクロスイッチ88が取り付けられている。マイクロスイッチ88は、スイッチ部88aを有し、アクチュエータ87が支軸86を中心として回動することによって、アクチュエータ87のZ方向の面87aがスイッチ部88aを押すことにより、オンオフされる。
【0052】
図6(b)に示すように、ロール紙収容部30に大径のロール紙Rが収容されているときは、アクチュエータ87は、アクチュエータ87の突起部89の先端がロール紙Rの側面にあたり、支軸86を中心に矢印F(−)方向に回転した状態で静止している。ロール紙収容部30のロール紙Rが使用され、その直径が減じてくると、ロール紙Rはロール紙ホルダ31の下方向のくぼみに移動する。ロール紙Rは、中心部に空洞を有する紙管90を有しており、感熱紙Sは紙管90にロール状に巻きつけられている。
【0053】
図6(c)に示すように、小径になったロール紙Rがロール紙ホルダ31のくぼみに移動すると、アクチュエータ87の突起部89の先端が、ロール紙Rの紙管90の空洞に入り込む。このことによって、アクチュエータ87は支軸86を中心に矢印F(+)方向に回転し、突起部89に対して、支軸86を挟んで反対側に位置する面87aがマイクロスイッチ88のスイッチ部88aを押す。そして、マイクロスイッチ88のオンオフ信号が出力され、ロール紙Rが消費され所定の径以下となったこと、すなわち、ロール紙Rの残量が少なくなってきたことを検出する。
【0054】
本実施形態では、ロール紙収容部30に小さい紙幅のロール紙Rが収容されて、ニヤエンド検出機構85がロール紙側面ガイド板32に取り付けられている場合を例に説明した。しかし、例えば、ロール紙収容部30に大きい紙幅のロール紙Rが収容された場合、すなわち、ロール紙側面ガイド板32を取り外して、本体フレーム60の両側面部分をロール紙側面ガイド部として機能させた場合は、本ニヤエンド検出機構85を本体フレーム60の側面部に設ければよい。
【0055】
図3に示すように、上述の各種検出機構や紙カット部20、紙送りモータ66のリード線群13およびサーマルヘッド1の接続端子は、本体フレーム60の右側面内部に固定された図示しない中継基板に接続されている。さらに、中継基板と本プリンタを制御する制御部を構成する図示しない主回路基板は、FFC(フレキシブルフラットケーブル)16等によって接続される。主回路基板は外装ケース部200の下ケース205の底部に設けられている。
【0056】
(サーマルヘッドについて)
次いで、サーマルヘッド1について、図7および図8を参照して説明する。図7はサーマルヘッドの外観斜視図である。図8は、サーマルヘッドのヘッドチップの平面図であり、(a)は、ヘッドチップ全体図、(b)は、(a)の部分拡大図である。
【0057】
図7に示すように、サーマルヘッド1は、放熱板106とヘッドチップ110とヘッド支持軸102とコネクタ108とを有している。放熱板106は、アルミニウム等の引き抜き材である。ヘッドチップ110は、放熱板106の係止面106bに両面粘着テープ等で貼り付けられている。ヘッドチップ110のX方向の幅は放熱板106のX方向の幅よりも短いため、ヘッドチップ110の左右には放熱板106の一部である係止面106bがヘッドチップ110から突出する構造になっている。
【0058】
また、放熱板106のヘッドチップ110のZ方向上方には、案内斜面部104が放熱板106の長手方向に渡って形成されている。この案内斜面部104は、カバーフレーム10を閉じる際に、プラテン71を滑動させて所定の位置まで案内する。この際、案内斜面部104の傾斜は、プラテン71がヘッドチップ110と衝突しないような所定の角度を有している。また、案内斜面部104の斜面は、この案内斜面部104に近接して付設されたヘッドチップ110とほぼ同じ高さになるように設定されている。ヘッド支持軸102は円柱状の丸ピンであり、放熱板106の左右の側面部に設けられた穴部に圧入されている。
【0059】
ここでヘッドチップ110について、図8を参照して説明する。図8(a),(b)に示すように、ヘッドチップ110は、長矩形状をしたアルミナセラミック等からなるヘッド基板112の上面に長手方向に沿って、通電された電流を熱に変換する線状の発熱体140が保護膜に保護された状態で直線状に配置されている。この発熱体140とヘッド基板112の一側縁112aとの間の帯状領域には、コモン配線パターン114が配置されている。このコモン配線パターン114の両端部は、ヘッド基板112の他側縁112b
にいたるまでに延ばされていて、その端部がコモン用端子116に接続されている。
【0060】
図8(b)に示すように、上記コモン配線パターン114から、櫛歯状のコモン電極114aが延ばされており、一方、この櫛歯状のコモン電極114a間に入り込むようにして、個別電極118の一端が延出されている。各個別電極118の他端部は、基板上に搭載される駆動IC120の近傍まで延びており、その端部には、それぞれワイヤボンディング用パッド118aが形成されている。
【0061】
上記発熱体140は、図8(b)に仮想線で示すように、上記櫛歯状のコモン電極114aおよびこれらの間に入り込む個別電極118に重なるようにして形成されている。そのため、隣合う櫛歯状コモン電極114aと個別電極118とによって、発熱素子145が規定される。すなわち、選択された個別電極118がオン駆動されると、この個別電極118と櫛歯状コモン電極114aとに囲まれる領域の発熱体140に電流が流れ、その部分が発熱素子145として機能する。
【0062】
すなわち、それぞれの領域の発熱体140が選択的に通電されることで、通電された領域の発熱体140のみが瞬時に発熱するとともに、通電が休止された場合は、速やかに放熱板106に放熱されるように構成されている。さらに、発熱体140は、感熱紙Sを挟持搬送するプラテン71とサーマルヘッド1との接点近傍に配置されている。そのため、発熱体140から発熱された熱エネルギーは感熱紙Sの発熱素子145の領域に伝わる。
【0063】
また、発熱素子145を所定個数ずつ担当して駆動するための駆動IC120は、その一側縁上面に、所定個数の出力パッド124が千鳥状に配置されている。この出力パッド124と前述のワイヤボンディング用パッド118aとはワイヤボンディングにより接続される。駆動IC120は、図7に示すエポキシモールド130により封止される。さらには、このエポキシモールド130内で結線されたガラエポ基板135が他方の端部から懸架されている。そして、ガラエポ基板135の端部には、このサーマルプリンタ100を制御する制御部を構成する主回路基板(図示せず)とFFC16等によって接続されるコネクタ108が設けられている。
【0064】
(サーマルヘッドの制御方法について)
次いで、サーマルヘッドの制御方法について、図9および図10を参照して説明する。図9は、サーマルヘッドの制御ブロック図である。図10は、サーマルヘッドのブロック図である。
【0065】
図9に示すように、サーマルヘッド1の制御部400は、CPU420と印字バッファ430と履歴バッファ435と論理回路440とセレクタ445と制御回路部450とを備えている。CPU420には、POSシステム等を構成する上位コンピュータ500が接続されている。上位コンピュータ500は、印刷データや制御データ等の制御情報をCPU420に送出する。そして、CPU420は、制御プログラムに従って、入力された各種検出信号、各種指令、各種データ等を処理した後、制御回路部450等に各種の制御信号を出力することにより、サーマルヘッド1の印刷動作を制御している。
【0066】
CPU420から送られる印刷画素データは、その1ドットライン分が、一旦、印字バッファ430に格納され、セレクタ445を介してサーマルヘッド1へ送られる。次のドットライン分の印刷画素データを、印字バッファ430に格納する場合には、これに先立って、印字バッファ430内のデータを履歴バッファ435へ移動させる。履歴バッファ435に格納されたデータと印字バッファ430に格納されたデータは、論理回路440によって、ビットごと即ち発熱素子145ごとに演算され、セレクタ445に出力される。
【0067】
セレクタ445は、一種のシーケンサであり、制御回路部450から送信されるデータセレクタ信号によって、印字バッファ430からのデータと論理回路440からのデータを順次出力する。即ち、通電期間は印字バッファ430からのデータに対応する部分(期間1)と、論理回路440からのデータに対応する部分(期間2)とに分割されており、期間1では上記のデータセレクタ信号によって印字バッファ430からのデータが、期間2では上記の論理回路440からのデータがそれぞれ出力され、サーマルヘッド1へ与えられる。
【0068】
図10に示すように、サーマルヘッド1は1ドットラインの印刷画素データを同時に印刷するための多数の発熱素子145からなる発熱体140と、発熱素子145をそれぞれ独立して加熱駆動するための複数の駆動回路150と、1ドットラインの印刷画素データを一時的に記憶するシフトレジスタ155とラッチレジスタ160とを有する。駆動回路150はPNPトランジスタで構成することが可能である。該駆動回路150を選択的に駆動することによって、対応する発熱素子145が選択的に加熱され、感熱紙S上の対応する位置が発色される。
【0069】
駆動回路150をNAND回路で表現したのは、当該回路の論理動作を示すためである。すなわち、ストローブ信号が非アクティブ(Highレベル)の状態では、駆動回路150の動作が禁止されるのである。かかる回路はPNPトランジスタのベースにデータとストローブ信号(正論理)とをワイヤードオア回路構成で接続することにより容易に実現することができる。
【0070】
駆動回路150は、図示しない遅延回路によって生成される4つのストローブ信号/St1〜/St4の反転信号(正論理)およびラッチレジスタ160から出力されたデータ(正論理)を入力し、両信号のレベルに応じて駆動される。すなわち、印刷画素データとして「印刷」を意味する「1」のデータが与えられているときに、前記ストローブ信号が「High」から「Low」、すなわち有効に遷移されると、NAND回路で構成される駆動回路150は「Low」を出力する。
【0071】
これによって対応する発熱素子145にヘッド電源電圧との電位差が生じ加熱され、感熱紙Sの対応領域はこの熱パルスを受けて発色する。ストローブ信号は、パルス幅の異なる3或いは4の分割された信号として供給される。なお、4つのストローブ信号/St1〜/St4は、遅延回路によってその出力タイミングをずらして与えることができ、これによって、多数の駆動回路150が同時に通電状態となることによって生じる電源電圧降下の問題を回避できる。
【0072】
シフトレジスタ155には、クロック信号に同期して当該期間に対応する1ドットライン分の印刷画素データが入力され、保持される。なお、印刷画素データは、1ドットライン分の各印刷画素に対応するデータであるが、厳密には、印刷画素1ドットラインの発熱素子145について、当該期間に通電を行うか否かを示すデータである。印刷画素データは、「通電」を意味する「1」および「通電しない」を意味する「0」のビット列で構成される。なお、シフトレジスタ155には、現在の印刷画素データと過去の印刷画素データとで所定の演算を施したものが所定の通電期間ごとに入力される。
【0073】
ラッチレジスタ160は、シフトレジスタ155にパラレルに接続され、シフトレジスタ155上の各ビットデータを、同時並列的に、その対応する記憶領域に移送して保持する。これにより、通電期間中にもシフトレジスタ155に次の通電期間に対応する印刷画素データを入力することができる。シフトレジスタ155からラッチレジスタ160へのデータの転送タイミングは、制御部400から出力されるラッチ信号Lのラッチレジスタ160への入力タイミングによって制御される。
【0074】
このタイミングは、前回の通電期間の後で次回の通電期間の前であり、かつ、次回の通電期間に対応する印刷画素データがシフトレジスタ155にセットされた後ということになる。前述のようにラッチレジスタ160の各記憶領域は、駆動回路150の一方の入力端に接続されており、ラッチ信号Lの入力によりラッチレジスタ160に新たなデータが取り込まれると、その内容に応じて駆動回路150への入力データが直ちに変化する。前記各駆動回路150は、それに与えられる遅延ストローブ信号が「Low」(アクティブ)である期間に、ラッチレジスタ160のデータに従って、対応する発熱素子145を通電駆動する。
【0075】
上述の構成を有するサーマルヘッド1の制御方法は、サーマルヘッド1とプラテン71との間に感熱紙Sを挟持しながら搬送するとともに、印刷画素データに基づいてサーマルヘッド1に直線的に配置された発熱素子145を選択的に通電し発熱させることによって、感熱紙S上に1ドットラインずつの画素を印刷することができる。
【0076】
(実施例1)
実施例1について、図11および図13を参照して説明する。図11は、実施例1を説明する図であり、(a)は、実施例1に使用されるサーマルヘッドを発熱体が設けられた面から見た平面図であり、(b),(c)は、当該サーマルヘッドによって印刷される文字パターンを示す図である。図13は、実施例1および実施例2で印刷された印字サンプルを示す図であり、(a)は実施例1で印刷された印字サンプルを示す図、(b)は実施例2で印刷された印字サンプルを示す図である。
【0077】
図11(a)に示すように、実施例1のサーマルプリンタ100に搭載されるサーマルヘッド1aのヘッド基板112a上には、発熱素子145aが、ヘッド基板112aの長手方向に沿って、180dpi(ドット/インチ)の密度、言い換えると約0.141mmのピッチで512個一列に形成されている。この512個の発熱素子145aが1ドットラインを構成している。なお、図11(a)において、黒塗りの四角で表した部分が発熱素子145aの発熱領域に相当する。なお、図11(a)では、発熱素子145aのみを示し、その他の構成は省略している。
【0078】
サーマルヘッド1aを搭載した実施例1のサーマルプリンタ100は、図2に示す紙送りモータ66を所定の周期で駆動しプラテン71を一定速度で回転させることによって、感熱紙Sをサーマルヘッド1aの発熱素子145aの密度とほぼ同等な紙送りピッチ約0.141mmで送ることができるように設定されている。このことによって、図11(b)に示すように、感熱紙S上に、サーマルヘッド1aのドットライン方向および紙送り方向とも約0.141mmピッチで構成された印刷領域が形成される。つまり、発熱素子145aを選択的に通電して発熱させながら紙送りを行うことによって、感熱紙S上に横約0.141mm×縦約0.141mmの画素を自由に形成することができる。
【0079】
本実施例1では、文字情報を印刷する場合を例に説明する。図11(b)に示すように、例えば、1つの文字パターンは、横12ドット×縦24ドットで構成される。英字の場合は、最大領域横12ドット×縦24ドットに対して、大文字小文字とも横10ドット×縦20ドットの大きさで構成され、最大の文字サイズは、横方向1.41mm×縦方向2.82mとなる。ただし、このとき、横方向の2ドット(約0.282mm)は桁間スペースとなり、大文字は、横12ドット×縦24ドットで構成される文字パターンの縦方向上部に位置し、下部に4ドット分のスペースが設けられる。また、小文字は、横12ドット×縦24ドットで構成される文字パターンの縦方向下部に位置し、上部に4ドット分のスペースが設けられる。
【0080】
サーマルヘッド1aには、発熱素子145aが512個一列に形成されているので、1ドットラインの最大印刷幅は約72.2mm(約0.141mm×512個)となる。また、上述の文字を印刷する場合は、最大印刷文字数は42文字(512個÷12)、すなわち42桁となる。
【0081】
また、実施例1では、紙幅約80mmの感熱紙Saからなるロール紙Rが使用されることが好ましい。以降、感熱紙Sの紙幅が約80mmと特定されている場合には、感熱紙Saと表す。なお、この紙幅約80mmの感熱紙Saは、市場で汎用的に流通している感熱紙Sである。この場合、図13(a)に示すように、紙幅約80mmの感熱紙Saのほぼ中央に最大印刷領域72.2mm、最大印刷桁数42桁の文字情報が印刷される。
【0082】
なお、この場合、図2に示すプリンタ機構部300のロール紙収容部30は、ロール紙側面ガイド板32が取り外され、本体フレーム60の両側面内側を紙幅約80mmのロール紙Rの側面ガイドとして用いる。このとき、ニヤエンド検出機構85は、本体フレーム60の側面外側に取り付けられる。
【0083】
本実施例1のサーマルプリンタ100は、汎用的に使用される紙幅約80mmの感熱紙Saに、横方向1.41mm×縦方向2.82mの文字サイズで最大512ドット、42桁の情報量を印刷することができる。そのため、大きな文字で見やすい印刷が行われたレシートもしくはクーポン等の印刷物を提供することができる。
【0084】
(実施例2)
実施例2について、図12および図13を参照して説明する。図12は、実施例2を説明する図であり、(a)は、実施例2に使用されるサーマルヘッドを発熱体が設けられた面から見た平面図であり、(b),(c)は、当該サーマルヘッドによって印刷された文字パターンを示す図である。
【0085】
実施例2のサーマルプリンタ100は、実施例1で説明したサーマルプリンタ100に対し、サーマルヘッド1aを、発熱素子145bの配列密度が250dpiであるサーマルヘッド1bに、図2に示す伝達歯車67を含む歯車輪列を、感熱紙Sを約0.101mmのピッチで紙送りできる伝達歯車を含む歯車輪列に交換したものである。
【0086】
図12(a)に示すように、実施例2のサーマルプリンタ100に搭載されるサーマルヘッド1bのヘッド基板112b上に、発熱素子145bが、ヘッド基板112bの長手方向に沿って、250dpi(ドット/インチ)の密度、言い換えると約0.101mmピッチで512個一列に形成されている。この512個の発熱素子145bが1ドットラインを構成している。なお、図12(a)において、黒塗りの四角で表した部分が発熱素子145bの領域に相当する。なお、図12(a)では、発熱素子145bのみを示し、その他の構成は省略している。
【0087】
感熱紙Sを約0.101mmのピッチで紙送りできる伝達歯車を含む歯車輪列を有する実施例2のサーマルプリンタ100は、図2に示す紙送りモータ66を所定の周期で駆動しプラテン71を一定速度で回転させることによって、感熱紙Sをサーマルヘッド1bの発熱素子145bの密度とほぼ同等な紙送りピッチ約0.101mmで送ることができる。このことによって、感熱紙Sには、サーマルヘッド1bのドットライン方向および紙送り方向とも約0.101mmピッチで構成された印刷領域が形成される。つまり、発熱素子145bを選択的に通電して発熱させながら紙送りを行うことによって、感熱紙S上に横約0.101mm×縦約0.101mmの画素を自由に形成することができる。
【0088】
本実施例2で、文字情報を印刷する場合を例に説明する。図12(b)に示すように、例えば、最大領域横12ドット×縦24ドットに対して、1つの文字パターンは、横12ドット×縦24ドットで構成される。英字の場合は、大文字小文字とも横10ドット×縦20ドットの大きさで構成され、最大の文字サイズは横方向約1.01mm×縦方向約2.02mmとなる。ただし、このとき、横方向の2ドット(約0.202mm)は桁間スペースとなり、大文字は横12ドット×縦24ドットで構成される文字パターンの縦方向上部に位置し、下部に4ドット分のスペースが設けられる。また、小文字は、横12ドット×縦24ドットで構成される文字パターンの縦方向下部に位置し、上部に4ドット分のスペースが設けられる。
【0089】
サーマルヘッド1bには、発熱素子145bが512個一列に形成されているので、1ドットラインの最大印刷幅は約51.7mm(約0.101mm×512個)となる。また、上述の文字を印刷する場合は、最大印刷文字数は42文字(512個÷12)、すなわち42桁となる。
【0090】
また、実施例2では、紙幅約58mmの感熱紙Sbからなるロール紙Rが使用されることが好ましい。以降、感熱紙Sの紙幅が約58mmと特定されている場合には、感熱紙Sbと表す。なお、この紙幅約58mmの感熱紙Sbは、市場で汎用的に流通している感熱紙Sであり、紙幅約58mmの感熱紙Sbからなるロール紙Rは市場で容易に入手できる。図13(b)に示すように、紙幅約58mmの感熱紙Sbのほぼ中央に最大印刷領域51.7mm、最大印刷桁数42桁の文字情報が印刷される。
【0091】
なお、この場合、図2に示すプリンタ機構部300のロール紙収容部30は、ロール紙側面ガイド板32が取り付けられ、ロール紙側面ガイド板32の両側面内側を紙幅約58mmのロール紙Rの側面ガイドとして用いる。このとき、ニヤエンド検出機構85は、ロール紙側面ガイド板32の側面外側に取り付けられる。
【0092】
本実施例2では、サーマルヘッド1および伝達歯車67の交換と、ロール紙側面ガイド板32の取り付けとにより、他の構成部材、印刷画素データ、および制御方法を変更することなしに、汎用的に使用される紙幅約58mmの感熱紙Sbに、文字サイズ1.01mm(横)×2.02m(縦)の文字で最大512ドット、42桁の情報量を印刷することができる。すなわち、紙幅約80mmの感熱紙Saに印刷されていた情報量と同量な情報量を、視認性を十分確保しつつ、紙幅約58mmの感熱紙Sbに印刷することができる。
また、文字の縦サイズを、実施例1の縦方向2.82mから縦方向2.02mmに減ずることができ、同量の情報量において、印刷される紙幅約58mmの感熱紙Sbのトータル長さを低減させることができる。
【0093】
そして、これらのことにより、使用される感熱紙Sの使用量を半分近くにまで削減できる。従って、同一桁数、同一行数の情報量を印刷する場合において、視認性を十分確保しつつ、使用される感熱紙Sの消費量を大幅に削減することができ、実施例2のサーマルプリンタ100のランニングコスト削減に寄与することができるとともに、紙の省資源化が実現できる。
【0094】
(実施例3)
実施例3について、図14を参照して説明する。図14は、実施例3を説明する図であり、(a),(b)は、実施例3に使用されるサーマルヘッドによって印刷された文字パターンを示す図である。
【0095】
実施例3のサーマルプリンタ100は、実施例1で説明したサーマルプリンタ100に対し、サーマルヘッド1aを、発熱素子145bの配列密度が250dpiであるサーマルヘッド1bに交換したものである。すなわち、図12(a)に示す250dpiの密度の発熱素子145bが512個形成されたサーマルヘッド1bを用い、紙幅約58mmの感熱紙Sbをサーマルヘッド1aのヘッド密度の180dpi、すなわち約0.141mmピッチで紙送りするものである。
【0096】
このことによって、紙幅約58mmの感熱紙Sbには、サーマルヘッド1bのドットライン方向に約0.101mmピッチ、紙送り方向に約0.141mmピッチで構成された印刷領域が形成される。つまり、発熱素子145bを選択的に通電して発熱させながら紙送りを行うことによって、紙幅約58mmの感熱紙Sb上に横約0.101mm×縦約0.141mmの画素を自由に形成することができる。
【0097】
本実施例2で、文字情報を印刷する場合を例に説明する。図14(a)に示すように、例えば、1つの文字パターンは、最大横12ドット×縦24ドットで構成される。例えば、英字の場合は、最大領域横12ドット×縦24ドットに対して、大文字小文字とも横10ドット×縦20ドットで構成される。すなわち、横方向の2ドット(約0.202mm)は桁間スペースとなり、大文字は、横12ドット×縦24ドットで構成される文字パターンのパターンの縦方向上部に位置し、下部に4ドット分のスペースが設けられる。また、小文字は、横12ドット×縦24ドットで構成される文字パターンのパターンの縦方向下部に位置し、上部に4ドット分のスペースが設けられる。
【0098】
その結果、最大の文字サイズ1.01mm(横)×2.82m(縦)が実現できる。サーマルヘッド1bには、発熱素子145bが512個一列に形成されているので、最大印刷幅は約51.7mm(約0.101mm×512個)、最大印刷文字数は42桁(512個÷12)となる。また、実施例3では、紙幅約58mmの感熱紙Sbからなるロール紙Rが使用されることが好ましい。紙幅約58mmの感熱紙Sbに最大印刷領域51.7mm、最大印刷桁数42桁の文字情報が印刷される。
【0099】
本実施例3では、サーマルヘッド1の交換と、ロール紙側面ガイド板32の取り付けとにより、他の構成部材を変更することなしに、紙幅約58mmの感熱紙Sbに文字サイズ1.01mm(横)×2.82m(縦)の文字で最大印刷桁数42桁の印刷が行われる。そのため、印刷される情報量を低減させることなし、使用される感熱紙Sの紙幅を低減させることができるとともに、文字高さは従来と同等に高さを確保することができる。そのため、使用されるロール紙Rの紙幅を小さくすることができつつ、文字高さを高く保つことができ、読みやすい文字情報を提供することができる。従って、ロール紙Rのコストを低減できるとともに、大きな文字で見やすい印刷が行われたレシートもしくはクーポン等の印刷物を提供することができる。
【0100】
以下、実施形態の効果を記載する。
(1)上述のサーマルプリンタ100は、ヘッド密度の異なるサーマルヘッド1aもしくはサーマルヘッド1bのどちらか一方をヘッド保持機構77を介して保持することができる。また、ロール紙収容部30は、ロール紙収容部30のロール紙ホルダ31にロール紙側面ガイド板32を取り付けることによって、紙幅約58mmのロール紙Rを収容することができ、ロール紙側面ガイド板32を取り外すことによって、紙幅約80mmのロール紙Rを収容することができる。さらに本体フレーム60に設けられた伝達歯車67を交換することによって、感熱紙Sの紙送りピッチを変えることができる。すなわち、サーマルヘッド1、ロール紙側面ガイド板32および伝達歯車67を交換し、それ以外の構成部品は同じくして、種々の仕様に対応するサーマルプリンタ100を提供することができる。
【0101】
(2)上述のサーマルプリンタ100に搭載されるサーマルヘッド1aおよびサーマルヘッド1bは、どちらも発熱素子145aおよび発熱素子145bを512個、すなわち、同数個有している。そのため、サーマルヘッド1に搭載される駆動IC120の数も等しくすることができる。また、用いられる文字パターンの構成も共通にすることができる。従って、種々の仕様に対応するサーマルプリンタ100に対して、サーマルヘッド1の回路および制御方法を共通にすることができる。換言すると、サーマルヘッド1、ロール紙側面ガイド板32および伝達歯車67等のメカ部品を交換するだけで、回路、制御方法を変えずに、種々の仕様に対応するサーマルプリンタ100を提供することができる。
【0102】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。例えば上記実施形態以外の変形例は、以下の通りである。
【0103】
(変形例1)本実施形態では、サーマルヘッド1aに、発熱素子145aが、180dpiの密度(約0.141mmピッチ)で512個一列に形成され、紙幅約80mmの感熱紙Saに印字され、サーマルヘッド1bに、発熱素子145bが、250dpiの密度(約0.101mmピッチ)で512個一列に形成され、紙幅約58mmの感熱紙Sbに印字されている場合を例にとり説明したが、これに限定されない。あるサーマルヘッドに、発熱素子を、203dpiの密度(約0.125mmピッチ)で576個一列に形成して、紙幅約80mmの感熱紙Saに印字し、別のサーマルヘッドに、発熱素子を、280dpiの密度(約0.091mmピッチ)で576個一列に形成して、紙幅約58mmの感熱紙Sbに印字してもよい。
【0104】
変形例1では、あるサーマルヘッドを別のサーマルヘッドに置換え、ロール紙側面ガイド板32をロール紙ホルダ31に取り付け、約58mm幅のロール紙Rを収容することによって、あるサーマルヘッドでは、約80mmの紙幅の感熱紙Saに印刷されていた576個の画素によって構成される情報を、別のサーマルヘッドにより、約58mmの紙幅の感熱紙Sbに同じく576個の画素によって構成される情報を印刷することができる。
【0105】
そのため、印刷される情報量が低減することなし、使用される感熱紙Sの紙幅を約80mmから約58mmに低減させることができる。すなわち、使用されるロール紙Rの紙幅を小さくすることにより、紙の消費量を削減することができる。従って、ロール紙Rのコスト低減を実現することができ、省資源化が実現できる。
【0106】
(変形例2)本実施形態では、プリンタ機構部300が外装ケース部200内に収容されている、いわゆるスタンドアローンタイプの場合を例にとり説明したが、これに限定されない。プリンタ機構部300が、例えば、POSシステムに組み込まれている形態や他の周辺機器と一体に組み込まれる複合機の形態でもよい。
【0107】
(変形例3)本実施形態では、サーマルヘッド1の保持方法として、本体フレーム60に切り欠き部62を設け、ヘッド押圧板72とバネ75とによりサーマルヘッド1を保持する場合を例にとり説明したが、これに限定されない。保持方法はねじ等の締結部品を用いてもよい。サーマルヘッド1を着脱可能に保持することができればよい。
また、ロール紙側面ガイド板32をロール紙ホルダ31の溝部に差込取り付ける場合を例にとり説明したがこれに限定されない。取付方法は、ねじ等の締結部品を用いてもよい。ロール紙側面ガイド板32を着脱可能に取り付けることができればよい。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】サーマルプリンタの外観構成を示す斜視図。
【図2】カバーフレームが開いた状態のプリンタ機構部の斜視図。
【図3】カバーフレームが閉じた状態のプリンタ機構部の斜視図。
【図4】プリンタ機構部の側断面を示す側断面。
【図5】サーマルヘッドの取り付けを説明する側面図。
【図6】ニヤエンド検出機構を説明する図。
【図7】サーマルヘッドの外観斜視図。
【図8】サーマルヘッドのヘッドチップの平面図。
【図9】サーマルヘッドの制御ブロック図。
【図10】サーマルヘッドのブロック図。
【図11】実施例1を説明する図。
【図12】実施例2を説明する図。
【図13】実施例1および実施例2で印刷された印字サンプルを示す図。
【図14】実施例3を説明する図。
【符号の説明】
【0109】
1,1a,1b…サーマルヘッド、20…紙カット部、30…ロール紙収容部、32…ロール紙側面ガイド板、60…本体フレーム、70…印刷部、71…プラテン、85…ニヤエンド検出機構、100…サーマルプリンタ、110,110a,110b…ヘッドチップ、112,112a,112b…ヘッド基板、114a…コモン電極、118…個別電極、120…駆動IC、140…発熱体、145…発熱素子、200…外装ケース部、205…下ケース、300…プリンタ機構部、400…制御部、420…CPU、R…ロール紙、S…感熱紙。
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギーによって反応する感熱紙を選択的に加熱することで印刷する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置の1つとしてサーマルプリンタが知られている。サーマルプリンタは、微小発熱素子が直線的に配置されたサーマルヘッドを有している。サーマルヘッドに配置された微小発熱素子は、通電により選択的に発熱する。そして、この熱エネルギーが感熱紙に含まれる発色剤と選択的に反応することにより、感熱紙上に種々の情報を印刷する。この印刷方式は、感熱発色方式と呼ばれている。この感熱発色方式により印刷するサーマルプリンタは、サーマルヘッドと、当該サーマルへッドが押圧構造により押圧されるプラテンとを備え、感熱紙をサーマルヘッドとプラテンとの間に挟持して、選択的に加熱しながら搬送する。このとき、感熱紙の発色剤が熱エネルギーに反応して印刷が行われる。この後、印刷された感熱紙は、サーマルヘッドとプラテンとにより挟持搬送され、サーマルプリンタの外部へ送出される(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−98699号公報
【特許文献2】特開2001−322304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のサーマルプリンタは、サーマルヘッド上に微小発熱素子が一定のピッチで所定数だけ配置されている。そのため、印刷される最大情報量や最大印刷幅が固定されている。それに伴って、使用される感熱紙の紙幅が決定されている。近年、省資源のため使用される感熱紙の量をできるだけ低減しようとする動きがある。しかし、この種のサーマルプリンタにおいては、当該感熱紙に印刷される情報量を等しくしつつ、紙幅の狭い感熱紙を使用することが困難であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
(適用例1)複数の発熱素子が列状に配置されたサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドを回動可能に保持するヘッド保持機構と、前記ヘッド保持機構に保持された前記サーマルヘッドが押圧状態で当接するプラテンとを備え、前記ヘッド保持機構は、前記発熱素子が異なる配列ピッチに形成された複数種の前記サーマルヘッドのうちの1つの前記サーマルヘッドを保持することを特徴とする印刷装置。
【0007】
(適用例2)前記複数種のサーマルヘッドは、列状に形成されている前記発熱素子の数が同数であることを特徴とする上記の印刷装置。
【0008】
これらの構成によれば、この印刷装置は、異なる配列ピッチに形成された同数の発熱素子を有する複数種のサーマルヘッドのうちのどちらか1つをヘッド保持機構に保持し、記録媒体としての感熱紙をサーマルヘッドとプラテンとにより挟持搬送させ印刷することができる。サーマルヘッドは、異なる配列ピッチに形成された同数の発熱素子を有するため、同じ数の画素から構成される印刷情報を異なる幅で印刷することができる。すなわち、情報量を等しくして、複数の紙幅を有する感熱紙を選択的に使用することができる。
【0009】
そのため、紙幅の広い感熱紙に印刷されていた情報を、情報量を損なわず紙幅の狭い感熱紙に印刷することができる。従って、使用される感熱紙の量を低減することができる。その結果、使用されるロール紙のコスト低減を実現することができ印刷装置のランニングコスト低減に寄与することができるとともに、紙の消費量を削減することができ省資源化が実現できる。
【0010】
また、この印刷装置は、同数の画素からなる情報を印刷するため、異なる配列ピッチの発熱素子を有したサーマルヘッドが搭載されても、同一数の画素からなる印刷データを共有することができる。さらには、同数の発熱素子を制御するため、制御手段を共通とすることが可能になる。
【0011】
(適用例3)前記サーマルヘッドは、回動する支点となる支持軸が設けられており、前記ヘッド保持機構は、前記サーマルヘッドの前記支持軸と、前記サーマルヘッドを前記プラテン側に付勢するバネを有するバネ受け部と、を受ける溝部を有していることを特徴とする上記の印刷装置。
【0012】
(適用例4)前記サーマルヘッドは、前記ヘッド保持機構に着脱可能に保持されていることを特徴とする上記の印刷装置。
【0013】
これらの構成によれば、この印刷装置のヘッド保持機構は、サーマルヘッドの支持軸と、バネを有するバネ受け部を同じ溝部に挿入し、当該バネによってサーマルヘッドをプラテン等の度当てに付勢することにより、サーマルヘッドを保持することができる。また、バネの付勢を外すことによってサーマルヘッドを取り外すことができる。従って、異なる配列ピッチに形成された同数の発熱素子を有する複数種のサーマルヘッドを選択的に印刷装置に保持することができる。
【0014】
(適用例5)配列ピッチの異なる同数の前記発熱素子を有する前記複数種のサーマルヘッドごとに、異なる紙幅の感熱紙からなるロール紙が想定されており、前記ロール紙を収容するロール紙収容部をさらに備え、前記ロール紙収容部は、前記ロール紙の側面をガイドするガイド部を有し、前記ガイド部は、複数種の前記ロール紙の紙幅に対して調整可能に設けられていることを特徴とする上記の印刷装置。
【0015】
異なる配列ピッチに形成された同数の発熱素子を有する複数種のサーマルヘッドは、それぞれのサーマルヘッドごとに最大印刷幅が規定されている。そして、この最大印刷幅によって、所定の紙幅の感熱紙からなるロール紙が設定されている。
この構成によれば、この印刷装置は、保持されているサーマルヘッドに適応した紙幅のロール紙を、側面のガイド位置が調整可能なガイド部でガイドして、ロール紙収容部に安定的に収容することができる。また、ロール紙の側面をガイドすることによって、感熱紙の安定的な紙送りを確保することができる。
【0016】
(適用例6)前記複数種のサーマルヘッドは、少なくとも、前記発熱素子の数が512個である前記サーマルヘッドを含むことを特徴とする上記の印刷装置。
【0017】
この構成によれば、この印刷装置は、512個の画素からなる情報を印刷することができる。このとき、複数種のサーマルヘッドは、512個の画素からなる印刷データを共有することができる。さらには、512個の発熱素子を制御する制御手段を共通とすることが可能になる。
【0018】
(適用例7)前記複数種のサーマルヘッドは、前記発熱素子の形成密度が180dpiである前記サーマルヘッドと前記発熱素子の形成密度が250dpiである前記サーマルヘッドとを含むことを特徴とする上記の印刷装置。
【0019】
この構成によれば、この印刷装置は、サーマルヘッドの発熱素子の形成方向に180dpi、すなわち約0.141mmピッチ、もしくは250dpi、すなわち約0.101mmピッチで512個の画素からなる情報を印刷することができる。
【0020】
(適用例8)前記発熱素子の形成密度が180dpiである前記サーマルヘッドに対応する前記ロール紙の紙幅が約80mmであり、前記発熱素子の形成密度が250dpiである前記サーマルヘッドに対応する前記ロール紙の紙幅が約58mmであることを特徴とする上記の印刷装置。
【0021】
この構成によれば、この印刷装置は、180dpiすなわち約0.141mmピッチで512個の画素情報を紙幅約80mmの感熱紙に印刷することができ、さらに、同じ512個の画素情報を250dpiすなわち約0.101mmピッチで紙幅約58mmの感熱紙に印刷することができる。そのため、印刷される情報量を等しくし、使用される感熱紙の紙幅を約80mmから約58mmに減ずることができる。従って、使用される感熱紙の量を低減することができる。その結果、使用されるロール紙のコスト低減を実現することができ印刷装置のランニングコスト低減に寄与することができるとともに、紙の消費量を削減することができ省資源化が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本実施形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で参照する図面では、説明および図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0023】
(サーマルプリンタの全体構成について)
本実施形態の印刷装置としてのサーマルプリンタを、図1〜3を参照して説明する。図1は、サーマルプリンタの外観構成を示す斜視図である。図2および図3は、プリンタ機構部の外観を示す斜視図であり、図2は、カバーフレームが開いた状態のプリンタ機構部の斜視図であり、図3は、カバーフレームが閉じた状態のプリンタ機構部の斜視図である。
【0024】
このサーマルプリンタ100は、POSシステム等に用いられ、レシートやクーポン等を印刷して発行することに適用される。サーマルプリンタ100は、ロール状の感熱紙S(図4参照)を使用して、この感熱紙Sに情報を印刷する。なお、図1〜図3に示すX方向は、印刷される感熱紙Sの幅方向を示し、Y方向は感熱紙Sの紙送り方向を示し、Z方向はX方向およびY方向と直交する方向を示す。
【0025】
図1〜3に示すように、サーマルプリンタ100は、外装ケース部200と、プリンタ機構部300と、図示しない制御部を有している。
図2および図3に示すプリンタ機構部300は、基板等からなる制御部とともに図1に示す外装ケース部200に収容される。詳しくは、プリンタ機構部300は、樹脂等からなる下ケース205に固定され、側面部および後方部は、上ケース210に覆われており、そのY方向の前方部分は、パネル215により覆われている。さらに、プリンタ機構部300の上面は、上部カバー220に覆われている。
【0026】
図2に示すように、プリンタ機構部300は、印刷された感熱紙Sを切断するための紙カット部20およびロール状の感熱紙Sを収納保持するためのロール紙収容部30を備えている。図1に示すパネル215の上部にはこの紙カット部20が配置され、紙カット部20はカッタカバー225で覆われている。このカッタカバー225は、図1中矢印A方向にスライドさせて引き出すことができる。
【0027】
図1に示すように、上ケース210の上面のX方向の一方の側には、オープンボタン230が設けられている。オープンボタン230は、図1中矢印B方向に押し下げられることによって、プリンタ機構部300に設けられたカバーオープンレバー235を、支点240を中心に回転させることができる。カバーオープンレバー235は、図2に示すプリンタ機構部300のカバーフレーム10のロック機構と係合しており、時計方向に回転されることにより、ロック機構が解除される。さらに、カバーフレーム10は、上部カバー220と結合されている。
【0028】
そのため、矢印B方向にオープンボタン230を押下げると、カバーオープンレバー235が時計方向に回転されてロック機構が外され、上部カバー220が矢印C方向に開き、ロール紙収容部30が露出する。すなわち、この状態が、図2に示すプリンタ機構部のカバーフレーム10が開いた状態である。このようにすることにより、ロール状の感熱紙Sのセットもしくは取り出しができる。
【0029】
なお、本実施形態で使用する感熱紙Sは、発色剤がバインダ等により保持されている発色層からなる印刷面を有し、この印刷面を外面に順次積層され形成されているロール状の感熱紙Sである。以降、このロール状の感熱紙Sをロール紙R(図4参照)とも呼ぶ。この感熱紙Sすなわちロール紙Rは所定の紙幅に形成されている。この紙幅については後述する。
【0030】
(プリンタ機構部について)
次いで、プリンタ機構部の詳細を図2〜5を参照して説明する。図4は、プリンタ機構部の側断面を示す側断面である。図5はサーマルヘッド1の取付を説明する側面図であり、(a)はサーマルヘッドが本体フレームに取り付けられた状態を示す部分側面図、(b)はサーマルヘッドを本体フレームに取り付ける過程を示す部分側面図である。なお、図4および図5に示すY方向およびZ方向は、図1〜3に示すY方向およびZ方向と同一方向である。
図2〜4に示すように、プリンタ機構部300は、本体フレーム60とカバーフレーム10と、ロール紙収容部30と、紙カット部20と、印刷部70と、を備えている。
【0031】
図2に示すように、本体フレーム60は、板金等からなり、Z方向上方およびY方向前方に開口を有するほぼ箱型に形成されている。カバーフレーム10は、本体フレーム60の上部後方に設けられている。カバーフレーム10は、本体フレーム60の後部両側の上端部に設けられた支軸68を中心として回動、すなわち、開閉自在に取り付けられている。カバーフレーム10には、カバーフレーム10を閉じた際にロール紙Rとの接触を避けるための円弧状の蓋部15が設けられている。また、本プリンタの設置角度を変える場合、すなわち、例えば縦置きにする場合、この蓋部15は、ロール紙Rを受ける保持部材としても機能する。
【0032】
図2に示すように、ロール紙収容部30は、本体フレーム60の箱状の形成された内部後方に上記カバーフレーム10に覆われて設けられている。ロール紙収容部30は、ロール紙ホルダ31と、一対のロール紙側面ガイド板32とを有している。
【0033】
ロール紙ホルダ31は、樹脂等により形成され、中央部にロール紙Rの最大径に相当するほぼ円弧状のくぼみを有し、本体フレーム60の底部に、円弧状のくぼみの側面開口が本体フレーム60の両側面側に向くように取り付けられている。一対のロール紙側面ガイド板32は収容されるロール紙Rの両側面にわずかの隙間を有して接するように、ロール紙ホルダ31の側面方向に設けられている。そのため、ロール紙Rは、側面を一対のロール紙側面ガイド板32に幅方向の動きを規制され、ロール紙ホルダ31のほぼ円弧状のくぼみに回転自在に保持される。
【0034】
なお、この一対のロール紙側面ガイド板32は、ロール紙ホルダ31から着脱可能に設けられている。本実施形態では、ロール紙側面ガイド板32は紙ホルダ31に設けられた溝に挿入され保持されている。この一対のロール紙側面ガイド板32をロール紙ホルダ31に設けられた溝に対し、選択的に挿入することによって異なる紙幅のロール紙Rを収容することができる。
【0035】
また、ロール紙側面ガイド板32を、紙ホルダ31から取り外すことにより、さらに大きな紙幅を有するロール紙Rをロール紙収容部30に収容することができる。このとき、本体フレーム60のX方向の内側の両側面部分がロール紙側面ガイド部として機能する。すなわち、上述のロール紙収容部30は、異なる紙幅を有する複数種のロール紙Rを収容することができる。
【0036】
図3に示すように、紙カット部20は、本体フレーム60の前方すなわちカバーフレーム10の支軸68とは相対する位置に設けられている。紙カット部20は、可動刃21およびその駆動手段が収納されている。可動刃21は駆動手段により、支点22を中心に矢印E方向に回動する。図4に示すように、この可動刃21とハサミ状に交叉する固定刃24は、紙カット部20に対向するようにカバーフレーム10に配置される。
【0037】
この固定刃24と可動刃21との隙間は感熱紙Sが通過する紙出口Gに連結している。そのため、駆動手段により回動される可動刃21の刃部と固定刃24の刃部とがハサミ状に交叉することによって、感熱紙Sは紙出口G近傍でカットされる。なお、固定刃24の上部には、固定刃カバー25が設けられている。また、感熱紙Sを切断しない時は、可動刃21は紙カット部20の内部に収納されており、可動刃21の刃部は露出しない。
【0038】
図4に示すように、印刷部70は、ロール紙収容部30を始点として紙カット部20の紙出口Gを終点とする感熱紙Sの搬送経路D上の紙カット部20側に設けられている。図4および図5に示すように、印刷部70は、プラテン71とサーマルヘッド1とヘッド保持機構77とを備えている。
【0039】
サーマルヘッド1は、両側面にヘッド支持軸102が設けられている。このサーマルヘッド1の詳細については後述する。ヘッド保持機構77は、本体フレーム60に形成された溝部としての切り欠き部62とヘッド押圧板72とヘッド押圧板72に取り付けられるバネ75とから構成されている。
【0040】
図5(b)に示すように、切り欠き部62は、本体フレーム60の上方に開口を有し、プラテン側に溝62aが形成され、溝62aと対向する位置の上下に溝62b,62cが形成されている。サーマルヘッド1は、ヘッド支持軸102が本体フレーム60の切り欠き部62に挿入され、ヘッド支持軸102が切り欠き部62の溝62aに係合することによって、本体フレーム60に取り付けられる。ヘッド押圧板72は、上下に曲げ部72b,72cが形成され、圧縮コイルバネであるバネ75が固定されている。このヘッド押圧板72は、切り欠き部62に挿入され、曲げ部72b,72cがそれぞれ切り欠き部62の溝62b,62cに係合する。
【0041】
このようにすることによって、サーマルヘッド1とヘッド押圧板72とは、切り欠き部62の両側に、互いにほぼ平行状態で支持される。ヘッド押圧板72に固定されるバネ75は、サーマルヘッド1の背面に当接する。このバネ75によりサーマルヘッド1はプラテン71方向に付勢される。
【0042】
上述のヘッド保持機構77は、ヘッド押圧板72に固定されたバネ75をサーマルヘッド1の背面からずらすことによって、切り欠き部62から取り外すことができる。サーマルヘッド1もバネ75からの付勢力がなくなることによって、切り欠き部62から取り外すことができる。このようにして、サーマルヘッド1は本体フレーム60に対して、着脱可能に支持される。
【0043】
図2に示すように、プラテン71は、ゴム等の弾性部材により円筒形のローラ状に形成され、プラテン軸受73を介してカバーフレーム10に回転可能に支持されている。プラテン71の一方の軸には、プラテン歯車74が圧入されている。本体フレーム60には、溝部64が設けられており、カバーフレーム10を閉じると、プラテン71が、サーマルヘッド1の案内斜面部104(図4参照)に案内された後、プラテン軸受73が溝部64と当接する。さらに、サーマルヘッド1によるプラテン71への加圧力で、カバーフレーム10には下向きの力が作用し、プラテン71の位置が定められる。
【0044】
以上の構成により、図5(a)に示すように、プラテン71は、感熱紙Sの内面S2の側から感熱紙Sをサーマルヘッド1の方向に押圧し、プラテン71と対向するサーマルヘッド1は、感熱紙Sの外面S1の側から感熱紙Sをプラテン71の方向に押圧して、感熱紙Sを挟持する。なお、このとき感熱紙Sの外面S1の表面に、前述の発色層が形成されている。
【0045】
また、図2に示すように、本体フレーム60の側面には、プラテン71を回転駆動させるための紙送りモータ66と紙送り伝達歯車67とが設けられている。上述のように、プラテン71が本体フレーム60の溝部64に位置決めされることによって、プラテン歯車74と紙送り伝達歯車67とが噛み合い、紙送りモータ66からの動力がプラテン71へ伝達される。
【0046】
上述の構造を有するサーマルプリンタ100は、上部カバー220と連結するカバーフレーム10を開き感熱紙Sからなるロール紙Rをセットして、感熱紙Sを紙出口Gまで引き出し、上部カバー220と連結するカバーフレーム10を閉じることによって、感熱紙Sはプラテン71とサーマルヘッド1との間にセットされる。そして、紙送りモータ66を起動しプラテン71を回転させて感熱紙Sを送りながら、サーマルヘッド1の直線状に配置された微小発熱素子に選択的に通電して微小発熱素子を発熱させることによって、感熱紙Sに所定の情報を印刷することができる。
【0047】
プリンタ機構部300は、さらに複数の検出機構を有している。検出機構について、図2および図6に基づいて説明する。図6は、ニヤエンド検出機構を説明する図であり、(a)はニヤエンド検出機構の正面図、(b)は(a)のg−g断面図、(c)は収容されるロール紙Rが小径になったときの状態を示す(a)のg−g断面図である。図6に示すX方向、Y方向、Z方向は、図1〜3に示すX方向、Y方向、Z方向と同一な方向を示す。
【0048】
図2示すように、紙検出器80は、ロール紙ホルダ31の印刷部70側に設けられている。紙検出器80は、印刷部70の近傍で、印刷される感熱紙Sの有無を検出する装置である。紙検出器80は、反射型の光学式検出器であり、紙検出器80部分を通過する紙の有無を検出する。また、紙検出器80のロール紙Rの収容側、すなわち紙送り方向において上流側には、感熱紙Sに付着した異物や紙粉を下方へ落とす穴81が設けられており、紙粉等の影響で、紙検出器80が誤動作しないようになっている。
【0049】
図6に示すように、ニヤエンド検出機構85は、ロール紙収容部30のロール紙側面ガイド板32のうちの一方の側に設けられている。ニヤエンド検出機構85は、ロール紙Rが消費され所定の径以下となったこと、すなわち、ロール紙Rの残量が少なくなってきたことを検出し、ロール紙Rの交換を促すための装置である。
【0050】
以下、小さい紙幅のロール紙Rが収納される場合を例にとり、ニヤエンド検出機構85を説明する。図6(a),(b)に示すように、ニヤエンド検出機構85は、アクチュエータ87とマイクロスイッチ88とを備え、ロール紙側面ガイド板32に取り付けられる。アクチュエータ87は、樹脂等により長方形の板状に形成され、端部に位置する一方の面に、その面から突出するようにほぼ円錐形状の突起部89が形成されている。また、アクチュエータ87の上方向の他面には、その面から一定の距離をおいて平行かつ外方向に延出する2つの支軸86が形成されている。
【0051】
ロール紙側面ガイド板32には、ロール紙Rをガイドする面とは反対の面に、その面から直角に延出するように2つの支持板92が設けられている。支持板92には、Z方向上方向に開口するU字形状の支持部92aが形成されている。そして、アクチュエータ87は、支軸86が、ロール紙側面ガイド板32の支持部92aに取り付けられ、支軸86を中心として回動可能に支持されている。
さらに、ロール紙側面ガイド板32には、図示しないマイクロスイッチ取付板によってマイクロスイッチ88が取り付けられている。マイクロスイッチ88は、スイッチ部88aを有し、アクチュエータ87が支軸86を中心として回動することによって、アクチュエータ87のZ方向の面87aがスイッチ部88aを押すことにより、オンオフされる。
【0052】
図6(b)に示すように、ロール紙収容部30に大径のロール紙Rが収容されているときは、アクチュエータ87は、アクチュエータ87の突起部89の先端がロール紙Rの側面にあたり、支軸86を中心に矢印F(−)方向に回転した状態で静止している。ロール紙収容部30のロール紙Rが使用され、その直径が減じてくると、ロール紙Rはロール紙ホルダ31の下方向のくぼみに移動する。ロール紙Rは、中心部に空洞を有する紙管90を有しており、感熱紙Sは紙管90にロール状に巻きつけられている。
【0053】
図6(c)に示すように、小径になったロール紙Rがロール紙ホルダ31のくぼみに移動すると、アクチュエータ87の突起部89の先端が、ロール紙Rの紙管90の空洞に入り込む。このことによって、アクチュエータ87は支軸86を中心に矢印F(+)方向に回転し、突起部89に対して、支軸86を挟んで反対側に位置する面87aがマイクロスイッチ88のスイッチ部88aを押す。そして、マイクロスイッチ88のオンオフ信号が出力され、ロール紙Rが消費され所定の径以下となったこと、すなわち、ロール紙Rの残量が少なくなってきたことを検出する。
【0054】
本実施形態では、ロール紙収容部30に小さい紙幅のロール紙Rが収容されて、ニヤエンド検出機構85がロール紙側面ガイド板32に取り付けられている場合を例に説明した。しかし、例えば、ロール紙収容部30に大きい紙幅のロール紙Rが収容された場合、すなわち、ロール紙側面ガイド板32を取り外して、本体フレーム60の両側面部分をロール紙側面ガイド部として機能させた場合は、本ニヤエンド検出機構85を本体フレーム60の側面部に設ければよい。
【0055】
図3に示すように、上述の各種検出機構や紙カット部20、紙送りモータ66のリード線群13およびサーマルヘッド1の接続端子は、本体フレーム60の右側面内部に固定された図示しない中継基板に接続されている。さらに、中継基板と本プリンタを制御する制御部を構成する図示しない主回路基板は、FFC(フレキシブルフラットケーブル)16等によって接続される。主回路基板は外装ケース部200の下ケース205の底部に設けられている。
【0056】
(サーマルヘッドについて)
次いで、サーマルヘッド1について、図7および図8を参照して説明する。図7はサーマルヘッドの外観斜視図である。図8は、サーマルヘッドのヘッドチップの平面図であり、(a)は、ヘッドチップ全体図、(b)は、(a)の部分拡大図である。
【0057】
図7に示すように、サーマルヘッド1は、放熱板106とヘッドチップ110とヘッド支持軸102とコネクタ108とを有している。放熱板106は、アルミニウム等の引き抜き材である。ヘッドチップ110は、放熱板106の係止面106bに両面粘着テープ等で貼り付けられている。ヘッドチップ110のX方向の幅は放熱板106のX方向の幅よりも短いため、ヘッドチップ110の左右には放熱板106の一部である係止面106bがヘッドチップ110から突出する構造になっている。
【0058】
また、放熱板106のヘッドチップ110のZ方向上方には、案内斜面部104が放熱板106の長手方向に渡って形成されている。この案内斜面部104は、カバーフレーム10を閉じる際に、プラテン71を滑動させて所定の位置まで案内する。この際、案内斜面部104の傾斜は、プラテン71がヘッドチップ110と衝突しないような所定の角度を有している。また、案内斜面部104の斜面は、この案内斜面部104に近接して付設されたヘッドチップ110とほぼ同じ高さになるように設定されている。ヘッド支持軸102は円柱状の丸ピンであり、放熱板106の左右の側面部に設けられた穴部に圧入されている。
【0059】
ここでヘッドチップ110について、図8を参照して説明する。図8(a),(b)に示すように、ヘッドチップ110は、長矩形状をしたアルミナセラミック等からなるヘッド基板112の上面に長手方向に沿って、通電された電流を熱に変換する線状の発熱体140が保護膜に保護された状態で直線状に配置されている。この発熱体140とヘッド基板112の一側縁112aとの間の帯状領域には、コモン配線パターン114が配置されている。このコモン配線パターン114の両端部は、ヘッド基板112の他側縁112b
にいたるまでに延ばされていて、その端部がコモン用端子116に接続されている。
【0060】
図8(b)に示すように、上記コモン配線パターン114から、櫛歯状のコモン電極114aが延ばされており、一方、この櫛歯状のコモン電極114a間に入り込むようにして、個別電極118の一端が延出されている。各個別電極118の他端部は、基板上に搭載される駆動IC120の近傍まで延びており、その端部には、それぞれワイヤボンディング用パッド118aが形成されている。
【0061】
上記発熱体140は、図8(b)に仮想線で示すように、上記櫛歯状のコモン電極114aおよびこれらの間に入り込む個別電極118に重なるようにして形成されている。そのため、隣合う櫛歯状コモン電極114aと個別電極118とによって、発熱素子145が規定される。すなわち、選択された個別電極118がオン駆動されると、この個別電極118と櫛歯状コモン電極114aとに囲まれる領域の発熱体140に電流が流れ、その部分が発熱素子145として機能する。
【0062】
すなわち、それぞれの領域の発熱体140が選択的に通電されることで、通電された領域の発熱体140のみが瞬時に発熱するとともに、通電が休止された場合は、速やかに放熱板106に放熱されるように構成されている。さらに、発熱体140は、感熱紙Sを挟持搬送するプラテン71とサーマルヘッド1との接点近傍に配置されている。そのため、発熱体140から発熱された熱エネルギーは感熱紙Sの発熱素子145の領域に伝わる。
【0063】
また、発熱素子145を所定個数ずつ担当して駆動するための駆動IC120は、その一側縁上面に、所定個数の出力パッド124が千鳥状に配置されている。この出力パッド124と前述のワイヤボンディング用パッド118aとはワイヤボンディングにより接続される。駆動IC120は、図7に示すエポキシモールド130により封止される。さらには、このエポキシモールド130内で結線されたガラエポ基板135が他方の端部から懸架されている。そして、ガラエポ基板135の端部には、このサーマルプリンタ100を制御する制御部を構成する主回路基板(図示せず)とFFC16等によって接続されるコネクタ108が設けられている。
【0064】
(サーマルヘッドの制御方法について)
次いで、サーマルヘッドの制御方法について、図9および図10を参照して説明する。図9は、サーマルヘッドの制御ブロック図である。図10は、サーマルヘッドのブロック図である。
【0065】
図9に示すように、サーマルヘッド1の制御部400は、CPU420と印字バッファ430と履歴バッファ435と論理回路440とセレクタ445と制御回路部450とを備えている。CPU420には、POSシステム等を構成する上位コンピュータ500が接続されている。上位コンピュータ500は、印刷データや制御データ等の制御情報をCPU420に送出する。そして、CPU420は、制御プログラムに従って、入力された各種検出信号、各種指令、各種データ等を処理した後、制御回路部450等に各種の制御信号を出力することにより、サーマルヘッド1の印刷動作を制御している。
【0066】
CPU420から送られる印刷画素データは、その1ドットライン分が、一旦、印字バッファ430に格納され、セレクタ445を介してサーマルヘッド1へ送られる。次のドットライン分の印刷画素データを、印字バッファ430に格納する場合には、これに先立って、印字バッファ430内のデータを履歴バッファ435へ移動させる。履歴バッファ435に格納されたデータと印字バッファ430に格納されたデータは、論理回路440によって、ビットごと即ち発熱素子145ごとに演算され、セレクタ445に出力される。
【0067】
セレクタ445は、一種のシーケンサであり、制御回路部450から送信されるデータセレクタ信号によって、印字バッファ430からのデータと論理回路440からのデータを順次出力する。即ち、通電期間は印字バッファ430からのデータに対応する部分(期間1)と、論理回路440からのデータに対応する部分(期間2)とに分割されており、期間1では上記のデータセレクタ信号によって印字バッファ430からのデータが、期間2では上記の論理回路440からのデータがそれぞれ出力され、サーマルヘッド1へ与えられる。
【0068】
図10に示すように、サーマルヘッド1は1ドットラインの印刷画素データを同時に印刷するための多数の発熱素子145からなる発熱体140と、発熱素子145をそれぞれ独立して加熱駆動するための複数の駆動回路150と、1ドットラインの印刷画素データを一時的に記憶するシフトレジスタ155とラッチレジスタ160とを有する。駆動回路150はPNPトランジスタで構成することが可能である。該駆動回路150を選択的に駆動することによって、対応する発熱素子145が選択的に加熱され、感熱紙S上の対応する位置が発色される。
【0069】
駆動回路150をNAND回路で表現したのは、当該回路の論理動作を示すためである。すなわち、ストローブ信号が非アクティブ(Highレベル)の状態では、駆動回路150の動作が禁止されるのである。かかる回路はPNPトランジスタのベースにデータとストローブ信号(正論理)とをワイヤードオア回路構成で接続することにより容易に実現することができる。
【0070】
駆動回路150は、図示しない遅延回路によって生成される4つのストローブ信号/St1〜/St4の反転信号(正論理)およびラッチレジスタ160から出力されたデータ(正論理)を入力し、両信号のレベルに応じて駆動される。すなわち、印刷画素データとして「印刷」を意味する「1」のデータが与えられているときに、前記ストローブ信号が「High」から「Low」、すなわち有効に遷移されると、NAND回路で構成される駆動回路150は「Low」を出力する。
【0071】
これによって対応する発熱素子145にヘッド電源電圧との電位差が生じ加熱され、感熱紙Sの対応領域はこの熱パルスを受けて発色する。ストローブ信号は、パルス幅の異なる3或いは4の分割された信号として供給される。なお、4つのストローブ信号/St1〜/St4は、遅延回路によってその出力タイミングをずらして与えることができ、これによって、多数の駆動回路150が同時に通電状態となることによって生じる電源電圧降下の問題を回避できる。
【0072】
シフトレジスタ155には、クロック信号に同期して当該期間に対応する1ドットライン分の印刷画素データが入力され、保持される。なお、印刷画素データは、1ドットライン分の各印刷画素に対応するデータであるが、厳密には、印刷画素1ドットラインの発熱素子145について、当該期間に通電を行うか否かを示すデータである。印刷画素データは、「通電」を意味する「1」および「通電しない」を意味する「0」のビット列で構成される。なお、シフトレジスタ155には、現在の印刷画素データと過去の印刷画素データとで所定の演算を施したものが所定の通電期間ごとに入力される。
【0073】
ラッチレジスタ160は、シフトレジスタ155にパラレルに接続され、シフトレジスタ155上の各ビットデータを、同時並列的に、その対応する記憶領域に移送して保持する。これにより、通電期間中にもシフトレジスタ155に次の通電期間に対応する印刷画素データを入力することができる。シフトレジスタ155からラッチレジスタ160へのデータの転送タイミングは、制御部400から出力されるラッチ信号Lのラッチレジスタ160への入力タイミングによって制御される。
【0074】
このタイミングは、前回の通電期間の後で次回の通電期間の前であり、かつ、次回の通電期間に対応する印刷画素データがシフトレジスタ155にセットされた後ということになる。前述のようにラッチレジスタ160の各記憶領域は、駆動回路150の一方の入力端に接続されており、ラッチ信号Lの入力によりラッチレジスタ160に新たなデータが取り込まれると、その内容に応じて駆動回路150への入力データが直ちに変化する。前記各駆動回路150は、それに与えられる遅延ストローブ信号が「Low」(アクティブ)である期間に、ラッチレジスタ160のデータに従って、対応する発熱素子145を通電駆動する。
【0075】
上述の構成を有するサーマルヘッド1の制御方法は、サーマルヘッド1とプラテン71との間に感熱紙Sを挟持しながら搬送するとともに、印刷画素データに基づいてサーマルヘッド1に直線的に配置された発熱素子145を選択的に通電し発熱させることによって、感熱紙S上に1ドットラインずつの画素を印刷することができる。
【0076】
(実施例1)
実施例1について、図11および図13を参照して説明する。図11は、実施例1を説明する図であり、(a)は、実施例1に使用されるサーマルヘッドを発熱体が設けられた面から見た平面図であり、(b),(c)は、当該サーマルヘッドによって印刷される文字パターンを示す図である。図13は、実施例1および実施例2で印刷された印字サンプルを示す図であり、(a)は実施例1で印刷された印字サンプルを示す図、(b)は実施例2で印刷された印字サンプルを示す図である。
【0077】
図11(a)に示すように、実施例1のサーマルプリンタ100に搭載されるサーマルヘッド1aのヘッド基板112a上には、発熱素子145aが、ヘッド基板112aの長手方向に沿って、180dpi(ドット/インチ)の密度、言い換えると約0.141mmのピッチで512個一列に形成されている。この512個の発熱素子145aが1ドットラインを構成している。なお、図11(a)において、黒塗りの四角で表した部分が発熱素子145aの発熱領域に相当する。なお、図11(a)では、発熱素子145aのみを示し、その他の構成は省略している。
【0078】
サーマルヘッド1aを搭載した実施例1のサーマルプリンタ100は、図2に示す紙送りモータ66を所定の周期で駆動しプラテン71を一定速度で回転させることによって、感熱紙Sをサーマルヘッド1aの発熱素子145aの密度とほぼ同等な紙送りピッチ約0.141mmで送ることができるように設定されている。このことによって、図11(b)に示すように、感熱紙S上に、サーマルヘッド1aのドットライン方向および紙送り方向とも約0.141mmピッチで構成された印刷領域が形成される。つまり、発熱素子145aを選択的に通電して発熱させながら紙送りを行うことによって、感熱紙S上に横約0.141mm×縦約0.141mmの画素を自由に形成することができる。
【0079】
本実施例1では、文字情報を印刷する場合を例に説明する。図11(b)に示すように、例えば、1つの文字パターンは、横12ドット×縦24ドットで構成される。英字の場合は、最大領域横12ドット×縦24ドットに対して、大文字小文字とも横10ドット×縦20ドットの大きさで構成され、最大の文字サイズは、横方向1.41mm×縦方向2.82mとなる。ただし、このとき、横方向の2ドット(約0.282mm)は桁間スペースとなり、大文字は、横12ドット×縦24ドットで構成される文字パターンの縦方向上部に位置し、下部に4ドット分のスペースが設けられる。また、小文字は、横12ドット×縦24ドットで構成される文字パターンの縦方向下部に位置し、上部に4ドット分のスペースが設けられる。
【0080】
サーマルヘッド1aには、発熱素子145aが512個一列に形成されているので、1ドットラインの最大印刷幅は約72.2mm(約0.141mm×512個)となる。また、上述の文字を印刷する場合は、最大印刷文字数は42文字(512個÷12)、すなわち42桁となる。
【0081】
また、実施例1では、紙幅約80mmの感熱紙Saからなるロール紙Rが使用されることが好ましい。以降、感熱紙Sの紙幅が約80mmと特定されている場合には、感熱紙Saと表す。なお、この紙幅約80mmの感熱紙Saは、市場で汎用的に流通している感熱紙Sである。この場合、図13(a)に示すように、紙幅約80mmの感熱紙Saのほぼ中央に最大印刷領域72.2mm、最大印刷桁数42桁の文字情報が印刷される。
【0082】
なお、この場合、図2に示すプリンタ機構部300のロール紙収容部30は、ロール紙側面ガイド板32が取り外され、本体フレーム60の両側面内側を紙幅約80mmのロール紙Rの側面ガイドとして用いる。このとき、ニヤエンド検出機構85は、本体フレーム60の側面外側に取り付けられる。
【0083】
本実施例1のサーマルプリンタ100は、汎用的に使用される紙幅約80mmの感熱紙Saに、横方向1.41mm×縦方向2.82mの文字サイズで最大512ドット、42桁の情報量を印刷することができる。そのため、大きな文字で見やすい印刷が行われたレシートもしくはクーポン等の印刷物を提供することができる。
【0084】
(実施例2)
実施例2について、図12および図13を参照して説明する。図12は、実施例2を説明する図であり、(a)は、実施例2に使用されるサーマルヘッドを発熱体が設けられた面から見た平面図であり、(b),(c)は、当該サーマルヘッドによって印刷された文字パターンを示す図である。
【0085】
実施例2のサーマルプリンタ100は、実施例1で説明したサーマルプリンタ100に対し、サーマルヘッド1aを、発熱素子145bの配列密度が250dpiであるサーマルヘッド1bに、図2に示す伝達歯車67を含む歯車輪列を、感熱紙Sを約0.101mmのピッチで紙送りできる伝達歯車を含む歯車輪列に交換したものである。
【0086】
図12(a)に示すように、実施例2のサーマルプリンタ100に搭載されるサーマルヘッド1bのヘッド基板112b上に、発熱素子145bが、ヘッド基板112bの長手方向に沿って、250dpi(ドット/インチ)の密度、言い換えると約0.101mmピッチで512個一列に形成されている。この512個の発熱素子145bが1ドットラインを構成している。なお、図12(a)において、黒塗りの四角で表した部分が発熱素子145bの領域に相当する。なお、図12(a)では、発熱素子145bのみを示し、その他の構成は省略している。
【0087】
感熱紙Sを約0.101mmのピッチで紙送りできる伝達歯車を含む歯車輪列を有する実施例2のサーマルプリンタ100は、図2に示す紙送りモータ66を所定の周期で駆動しプラテン71を一定速度で回転させることによって、感熱紙Sをサーマルヘッド1bの発熱素子145bの密度とほぼ同等な紙送りピッチ約0.101mmで送ることができる。このことによって、感熱紙Sには、サーマルヘッド1bのドットライン方向および紙送り方向とも約0.101mmピッチで構成された印刷領域が形成される。つまり、発熱素子145bを選択的に通電して発熱させながら紙送りを行うことによって、感熱紙S上に横約0.101mm×縦約0.101mmの画素を自由に形成することができる。
【0088】
本実施例2で、文字情報を印刷する場合を例に説明する。図12(b)に示すように、例えば、最大領域横12ドット×縦24ドットに対して、1つの文字パターンは、横12ドット×縦24ドットで構成される。英字の場合は、大文字小文字とも横10ドット×縦20ドットの大きさで構成され、最大の文字サイズは横方向約1.01mm×縦方向約2.02mmとなる。ただし、このとき、横方向の2ドット(約0.202mm)は桁間スペースとなり、大文字は横12ドット×縦24ドットで構成される文字パターンの縦方向上部に位置し、下部に4ドット分のスペースが設けられる。また、小文字は、横12ドット×縦24ドットで構成される文字パターンの縦方向下部に位置し、上部に4ドット分のスペースが設けられる。
【0089】
サーマルヘッド1bには、発熱素子145bが512個一列に形成されているので、1ドットラインの最大印刷幅は約51.7mm(約0.101mm×512個)となる。また、上述の文字を印刷する場合は、最大印刷文字数は42文字(512個÷12)、すなわち42桁となる。
【0090】
また、実施例2では、紙幅約58mmの感熱紙Sbからなるロール紙Rが使用されることが好ましい。以降、感熱紙Sの紙幅が約58mmと特定されている場合には、感熱紙Sbと表す。なお、この紙幅約58mmの感熱紙Sbは、市場で汎用的に流通している感熱紙Sであり、紙幅約58mmの感熱紙Sbからなるロール紙Rは市場で容易に入手できる。図13(b)に示すように、紙幅約58mmの感熱紙Sbのほぼ中央に最大印刷領域51.7mm、最大印刷桁数42桁の文字情報が印刷される。
【0091】
なお、この場合、図2に示すプリンタ機構部300のロール紙収容部30は、ロール紙側面ガイド板32が取り付けられ、ロール紙側面ガイド板32の両側面内側を紙幅約58mmのロール紙Rの側面ガイドとして用いる。このとき、ニヤエンド検出機構85は、ロール紙側面ガイド板32の側面外側に取り付けられる。
【0092】
本実施例2では、サーマルヘッド1および伝達歯車67の交換と、ロール紙側面ガイド板32の取り付けとにより、他の構成部材、印刷画素データ、および制御方法を変更することなしに、汎用的に使用される紙幅約58mmの感熱紙Sbに、文字サイズ1.01mm(横)×2.02m(縦)の文字で最大512ドット、42桁の情報量を印刷することができる。すなわち、紙幅約80mmの感熱紙Saに印刷されていた情報量と同量な情報量を、視認性を十分確保しつつ、紙幅約58mmの感熱紙Sbに印刷することができる。
また、文字の縦サイズを、実施例1の縦方向2.82mから縦方向2.02mmに減ずることができ、同量の情報量において、印刷される紙幅約58mmの感熱紙Sbのトータル長さを低減させることができる。
【0093】
そして、これらのことにより、使用される感熱紙Sの使用量を半分近くにまで削減できる。従って、同一桁数、同一行数の情報量を印刷する場合において、視認性を十分確保しつつ、使用される感熱紙Sの消費量を大幅に削減することができ、実施例2のサーマルプリンタ100のランニングコスト削減に寄与することができるとともに、紙の省資源化が実現できる。
【0094】
(実施例3)
実施例3について、図14を参照して説明する。図14は、実施例3を説明する図であり、(a),(b)は、実施例3に使用されるサーマルヘッドによって印刷された文字パターンを示す図である。
【0095】
実施例3のサーマルプリンタ100は、実施例1で説明したサーマルプリンタ100に対し、サーマルヘッド1aを、発熱素子145bの配列密度が250dpiであるサーマルヘッド1bに交換したものである。すなわち、図12(a)に示す250dpiの密度の発熱素子145bが512個形成されたサーマルヘッド1bを用い、紙幅約58mmの感熱紙Sbをサーマルヘッド1aのヘッド密度の180dpi、すなわち約0.141mmピッチで紙送りするものである。
【0096】
このことによって、紙幅約58mmの感熱紙Sbには、サーマルヘッド1bのドットライン方向に約0.101mmピッチ、紙送り方向に約0.141mmピッチで構成された印刷領域が形成される。つまり、発熱素子145bを選択的に通電して発熱させながら紙送りを行うことによって、紙幅約58mmの感熱紙Sb上に横約0.101mm×縦約0.141mmの画素を自由に形成することができる。
【0097】
本実施例2で、文字情報を印刷する場合を例に説明する。図14(a)に示すように、例えば、1つの文字パターンは、最大横12ドット×縦24ドットで構成される。例えば、英字の場合は、最大領域横12ドット×縦24ドットに対して、大文字小文字とも横10ドット×縦20ドットで構成される。すなわち、横方向の2ドット(約0.202mm)は桁間スペースとなり、大文字は、横12ドット×縦24ドットで構成される文字パターンのパターンの縦方向上部に位置し、下部に4ドット分のスペースが設けられる。また、小文字は、横12ドット×縦24ドットで構成される文字パターンのパターンの縦方向下部に位置し、上部に4ドット分のスペースが設けられる。
【0098】
その結果、最大の文字サイズ1.01mm(横)×2.82m(縦)が実現できる。サーマルヘッド1bには、発熱素子145bが512個一列に形成されているので、最大印刷幅は約51.7mm(約0.101mm×512個)、最大印刷文字数は42桁(512個÷12)となる。また、実施例3では、紙幅約58mmの感熱紙Sbからなるロール紙Rが使用されることが好ましい。紙幅約58mmの感熱紙Sbに最大印刷領域51.7mm、最大印刷桁数42桁の文字情報が印刷される。
【0099】
本実施例3では、サーマルヘッド1の交換と、ロール紙側面ガイド板32の取り付けとにより、他の構成部材を変更することなしに、紙幅約58mmの感熱紙Sbに文字サイズ1.01mm(横)×2.82m(縦)の文字で最大印刷桁数42桁の印刷が行われる。そのため、印刷される情報量を低減させることなし、使用される感熱紙Sの紙幅を低減させることができるとともに、文字高さは従来と同等に高さを確保することができる。そのため、使用されるロール紙Rの紙幅を小さくすることができつつ、文字高さを高く保つことができ、読みやすい文字情報を提供することができる。従って、ロール紙Rのコストを低減できるとともに、大きな文字で見やすい印刷が行われたレシートもしくはクーポン等の印刷物を提供することができる。
【0100】
以下、実施形態の効果を記載する。
(1)上述のサーマルプリンタ100は、ヘッド密度の異なるサーマルヘッド1aもしくはサーマルヘッド1bのどちらか一方をヘッド保持機構77を介して保持することができる。また、ロール紙収容部30は、ロール紙収容部30のロール紙ホルダ31にロール紙側面ガイド板32を取り付けることによって、紙幅約58mmのロール紙Rを収容することができ、ロール紙側面ガイド板32を取り外すことによって、紙幅約80mmのロール紙Rを収容することができる。さらに本体フレーム60に設けられた伝達歯車67を交換することによって、感熱紙Sの紙送りピッチを変えることができる。すなわち、サーマルヘッド1、ロール紙側面ガイド板32および伝達歯車67を交換し、それ以外の構成部品は同じくして、種々の仕様に対応するサーマルプリンタ100を提供することができる。
【0101】
(2)上述のサーマルプリンタ100に搭載されるサーマルヘッド1aおよびサーマルヘッド1bは、どちらも発熱素子145aおよび発熱素子145bを512個、すなわち、同数個有している。そのため、サーマルヘッド1に搭載される駆動IC120の数も等しくすることができる。また、用いられる文字パターンの構成も共通にすることができる。従って、種々の仕様に対応するサーマルプリンタ100に対して、サーマルヘッド1の回路および制御方法を共通にすることができる。換言すると、サーマルヘッド1、ロール紙側面ガイド板32および伝達歯車67等のメカ部品を交換するだけで、回路、制御方法を変えずに、種々の仕様に対応するサーマルプリンタ100を提供することができる。
【0102】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。例えば上記実施形態以外の変形例は、以下の通りである。
【0103】
(変形例1)本実施形態では、サーマルヘッド1aに、発熱素子145aが、180dpiの密度(約0.141mmピッチ)で512個一列に形成され、紙幅約80mmの感熱紙Saに印字され、サーマルヘッド1bに、発熱素子145bが、250dpiの密度(約0.101mmピッチ)で512個一列に形成され、紙幅約58mmの感熱紙Sbに印字されている場合を例にとり説明したが、これに限定されない。あるサーマルヘッドに、発熱素子を、203dpiの密度(約0.125mmピッチ)で576個一列に形成して、紙幅約80mmの感熱紙Saに印字し、別のサーマルヘッドに、発熱素子を、280dpiの密度(約0.091mmピッチ)で576個一列に形成して、紙幅約58mmの感熱紙Sbに印字してもよい。
【0104】
変形例1では、あるサーマルヘッドを別のサーマルヘッドに置換え、ロール紙側面ガイド板32をロール紙ホルダ31に取り付け、約58mm幅のロール紙Rを収容することによって、あるサーマルヘッドでは、約80mmの紙幅の感熱紙Saに印刷されていた576個の画素によって構成される情報を、別のサーマルヘッドにより、約58mmの紙幅の感熱紙Sbに同じく576個の画素によって構成される情報を印刷することができる。
【0105】
そのため、印刷される情報量が低減することなし、使用される感熱紙Sの紙幅を約80mmから約58mmに低減させることができる。すなわち、使用されるロール紙Rの紙幅を小さくすることにより、紙の消費量を削減することができる。従って、ロール紙Rのコスト低減を実現することができ、省資源化が実現できる。
【0106】
(変形例2)本実施形態では、プリンタ機構部300が外装ケース部200内に収容されている、いわゆるスタンドアローンタイプの場合を例にとり説明したが、これに限定されない。プリンタ機構部300が、例えば、POSシステムに組み込まれている形態や他の周辺機器と一体に組み込まれる複合機の形態でもよい。
【0107】
(変形例3)本実施形態では、サーマルヘッド1の保持方法として、本体フレーム60に切り欠き部62を設け、ヘッド押圧板72とバネ75とによりサーマルヘッド1を保持する場合を例にとり説明したが、これに限定されない。保持方法はねじ等の締結部品を用いてもよい。サーマルヘッド1を着脱可能に保持することができればよい。
また、ロール紙側面ガイド板32をロール紙ホルダ31の溝部に差込取り付ける場合を例にとり説明したがこれに限定されない。取付方法は、ねじ等の締結部品を用いてもよい。ロール紙側面ガイド板32を着脱可能に取り付けることができればよい。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】サーマルプリンタの外観構成を示す斜視図。
【図2】カバーフレームが開いた状態のプリンタ機構部の斜視図。
【図3】カバーフレームが閉じた状態のプリンタ機構部の斜視図。
【図4】プリンタ機構部の側断面を示す側断面。
【図5】サーマルヘッドの取り付けを説明する側面図。
【図6】ニヤエンド検出機構を説明する図。
【図7】サーマルヘッドの外観斜視図。
【図8】サーマルヘッドのヘッドチップの平面図。
【図9】サーマルヘッドの制御ブロック図。
【図10】サーマルヘッドのブロック図。
【図11】実施例1を説明する図。
【図12】実施例2を説明する図。
【図13】実施例1および実施例2で印刷された印字サンプルを示す図。
【図14】実施例3を説明する図。
【符号の説明】
【0109】
1,1a,1b…サーマルヘッド、20…紙カット部、30…ロール紙収容部、32…ロール紙側面ガイド板、60…本体フレーム、70…印刷部、71…プラテン、85…ニヤエンド検出機構、100…サーマルプリンタ、110,110a,110b…ヘッドチップ、112,112a,112b…ヘッド基板、114a…コモン電極、118…個別電極、120…駆動IC、140…発熱体、145…発熱素子、200…外装ケース部、205…下ケース、300…プリンタ機構部、400…制御部、420…CPU、R…ロール紙、S…感熱紙。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発熱素子が列状に配置されたサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドを回動可能に保持するヘッド保持機構と、
前記ヘッド保持機構に保持された前記サーマルヘッドが押圧状態で当接するプラテンとを備え、
前記ヘッド保持機構は、前記発熱素子が異なる配列ピッチに形成された複数種の前記サーマルヘッドのうちの1つの前記サーマルヘッドを保持することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記複数種のサーマルヘッドは、列状に形成されている前記発熱素子の数が同数であることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記サーマルヘッドは、回動する支点となる支持軸が設けられており、
前記ヘッド保持機構は、前記サーマルヘッドの前記支持軸と、前記サーマルヘッドを前記プラテン側に付勢するバネを有するバネ受け部と、を受ける溝部を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記サーマルヘッドは、前記ヘッド保持機構に着脱可能に保持されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
配列ピッチの異なる同数の前記発熱素子を有する前記複数種のサーマルヘッドごとに、異なる紙幅の感熱紙からなるロール紙が想定されており、
前記ロール紙を収容するロール紙収容部をさらに備え、
前記ロール紙収容部は、前記ロール紙の側面をガイドするガイド部を有し、
前記ガイド部は、複数種の前記ロール紙の紙幅に対して調整可能に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記複数種のサーマルヘッドは、少なくとも、前記発熱素子の数が512個である前記サーマルヘッドを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記複数種のサーマルヘッドは、前記発熱素子の形成密度が180dpiである前記サーマルヘッドと前記発熱素子の形成密度が250dpiである前記サーマルヘッドとを含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記発熱素子の形成密度が180dpiである前記サーマルヘッドに対応する前記ロール紙の紙幅が約80mmであり、前記発熱素子の形成密度が250dpiである前記サーマルヘッドに対応する前記ロール紙の紙幅が約58mmであることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項1】
複数の発熱素子が列状に配置されたサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドを回動可能に保持するヘッド保持機構と、
前記ヘッド保持機構に保持された前記サーマルヘッドが押圧状態で当接するプラテンとを備え、
前記ヘッド保持機構は、前記発熱素子が異なる配列ピッチに形成された複数種の前記サーマルヘッドのうちの1つの前記サーマルヘッドを保持することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記複数種のサーマルヘッドは、列状に形成されている前記発熱素子の数が同数であることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記サーマルヘッドは、回動する支点となる支持軸が設けられており、
前記ヘッド保持機構は、前記サーマルヘッドの前記支持軸と、前記サーマルヘッドを前記プラテン側に付勢するバネを有するバネ受け部と、を受ける溝部を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記サーマルヘッドは、前記ヘッド保持機構に着脱可能に保持されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
配列ピッチの異なる同数の前記発熱素子を有する前記複数種のサーマルヘッドごとに、異なる紙幅の感熱紙からなるロール紙が想定されており、
前記ロール紙を収容するロール紙収容部をさらに備え、
前記ロール紙収容部は、前記ロール紙の側面をガイドするガイド部を有し、
前記ガイド部は、複数種の前記ロール紙の紙幅に対して調整可能に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記複数種のサーマルヘッドは、少なくとも、前記発熱素子の数が512個である前記サーマルヘッドを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記複数種のサーマルヘッドは、前記発熱素子の形成密度が180dpiである前記サーマルヘッドと前記発熱素子の形成密度が250dpiである前記サーマルヘッドとを含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記発熱素子の形成密度が180dpiである前記サーマルヘッドに対応する前記ロール紙の紙幅が約80mmであり、前記発熱素子の形成密度が250dpiである前記サーマルヘッドに対応する前記ロール紙の紙幅が約58mmであることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−131985(P2009−131985A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308412(P2007−308412)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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