説明

印刷装置

【課題】機密保持モード設定者が設定した機密保持モードに係る印刷作業を完全に終わらないうちに、機密保持モード設定者以外の者によって、その印刷物および版胴上の製版済みのマスタの機密情報・内容を見ることができない状態にするのは無論のこと、他のユーザに対して、使い勝手が悪くならず、かつ、機密保持モード関連情報を把握させることが可能な孔版印刷装置を提供する。
【解決手段】孔版印刷装置1において、機密保持モードを設定する機密保持キー78を有し、機密保持キー78により機密保持モードが設定されている場合、製版済みのマスタ34における製版外エリア34bの情報製版部34cまたは34dに機密保持モードに関連する機密関連情報として機密保持モード設定者に関する情報等を製版可能にすると共に、機密関連情報が製版されたマスタ34の情報製版部34cまたは34dだけを印刷可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製版済みのマスタを版胴の外周面上に巻装して印刷を行う孔版印刷装置を含む印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、簡便な印刷方法としてデジタル式感熱孔版印刷が知られている。これは、熱可塑性樹脂フィルムとインキ通過性の多孔性支持体とを貼り合わせてなる感熱孔版マスタ(以下、「マスタ」という)に微細な発熱素子が1列に並んだサーマルヘッドを接触させ、この発熱素子に対しパルス的に通電を行いながらマスタをプラテンローラ等のマスタ搬送手段で搬送しながら、画像情報に応じてマスタの熱可塑性樹脂フィルム部分を加熱溶融穿孔させて穿孔画像を形成した後、この製版済みのマスタを版胴に巻装させ、プレスローラ等の押圧手段によって印刷用紙を多孔性円筒状の版胴の外周面に押圧させることで、版胴の開孔部およびマスタの穿孔部分からインキを滲出させ、このインキを印刷用紙に転移させて印刷画像を得るものである。
【0003】
上記孔版印刷を行う孔版印刷装置において、印刷を行う者以外にその印刷物およびその製版済みのマスタの内容を知られたくない場合に機密保持モードを設定可能な孔版印刷装置が提案されている(例えば特許文献1および2参照)。
すなわち、特許文献1記載の発明は、外周面上に製版済みマスタを巻装して回転駆動される多孔性円筒状の版胴を有する印刷部と、マスタを製版し前記製版済みマスタを前記版胴に巻装させる製版部と、前記版胴の外周面上より使用済みのマスタを剥離、廃棄する排版部と、印刷スタートキー(印刷起動手段)と、製版スタートキー(製版起動手段)とを具備し、前記印刷スタートキーが押されたときには前記印刷部を作動させて印刷を行い、前記製版スタートキーが押されたときには前記排版部によって前記版胴の外周面上より前記使用済みのマスタを除去した後、前記製版部によって前記版胴の外周面上に新しい製版済みマスタを巻装させる孔版印刷装置において、印刷を行う者以外にその印刷物の内容を知られたくない場合に機密保持モードを設定する機密保持キーと、前記機密保持キーが押されたときには前記製版スタートキーからの入力のみを有効とすると共に、前記機密保持モード時において前記製版スタートキー以外のキーが押された場合には前記機密保持モードを継続し、前記製版スタートキーが押されたときのみ前記機密保持モードを解除させる制御手段とを具備し、前記版胴が孔版印刷装置本体に対して着脱自在であり、前記制御手段は前記機密保持キーが押されたときに前記版胴の前記孔版印刷装置本体からの離脱を禁止することを特徴とするものである。
【0004】
特許文献2記載の発明は、製版済みの版を巻装する印刷ドラムを備え装置本体に対して着脱自在なドラムユニット、原稿の画像を読み取る原稿読取手段を備え上記装置本体に対して開閉自在な読取ユニット、版を製版する製版手段を備え上記装置本体に対して着脱自在な製版ユニットおよび上記印刷ドラムから剥離された使用済みの版を収納する収納手段を備え上記装置本体に対して着脱自在な排版ユニットのうちの上記ドラムユニット単独の場合を除く少なくとも一つのユニットを具備し、上記印刷ドラム上の製版済みの版に用紙を押し付けることにより印刷画像を形成する印刷装置において、印刷を行う者以外に上記印刷ドラム上の製版済みの版の情報および印刷物の情報を知られたくない場合に機密保持モードを設定する機密保持モード設定手段と、上記機密保持モード設定手段により上記機密保持モードが設定されたとき、上記少なくとも一つのユニットの上記装置本体からの離脱を阻止するための、上記少なくとも一つのユニットごとに配設されたロック手段とを有することを特徴とするものである。
【0005】
【特許文献1】特許第3566367号公報
【特許文献2】特開2005−153224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および2記載の技術では、機密保持モード設定者以外の他のユーザが、機密保持モード設定者によって上記機密保持モードが設定されている孔版印刷装置を使用しようとした場合、機密保持モード設定状態であること以外分からず、使い勝手が悪いという問題点がある。
一方で、操作パネル等に機密保持モード設定状態に関連する情報(以下、「機密保持モード関連情報」ともいう)が表示・報知されていて、その孔版印刷装置の前を通る者がその情報を見ることができるのもセキュリティ上よくない。
本当に、孔版印刷装置を使いたい他のユーザが機密保持モード関連情報を見ることができる状態にしたい。
【0007】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、機密保持モード設定者が設定した機密保持モードに係る印刷作業を完全に終わらないうちに、機密保持モード設定者以外の者によって、その印刷物および版胴上の製版済みのマスタの機密情報・内容を見ることができない状態にするのは無論のこと、他のユーザに対して、使い勝手が悪くならず、かつ、機密保持モード関連情報を把握させることが可能な孔版印刷装置を含む印刷装置を実現し提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決すると共に上述した目的を達成するために、請求項ごとの発明では、以下のような特徴ある手段・発明特定事項(以下、「構成」という)を採っている。
請求項1記載の発明は、製版済みのマスタを外周面上に巻装する版胴を有する印刷部と、マスタを製版し該製版済みのマスタを前記版胴に巻装する製版給版部と、前記版胴の外周面上より使用済みのマスタを剥離、廃棄する排版部と、前記印刷部をして印刷動作を起動させる印刷起動信号を生成する印刷起動手段と、前記排版部をして排版動作を起動させる排版起動信号および前記製版給版部をして製版給版動作を起動させる製版起動信号を生成する製版起動手段とを具備し、前記印刷起動信号に基づいて前記印刷部を作動させて印刷を行い、前記排版起動信号および前記製版起動信号に基づいて、前記排版部によって前記版胴の外周面上より使用済みのマスタを除去した後、前記製版給版部によって前記版胴の外周面上に新しい製版済みのマスタを巻装する印刷装置において、印刷を行う者以外にその印刷物およびその製版済みのマスタの内容を知られたくない場合に機密保持モードを設定する機密保持モード設定手段を有し、前記機密保持モード設定手段により前記機密保持モードが設定されている場合、マスタの製版外エリアに前記機密保持モードに関連する機密関連情報を製版可能にすると共に、該機密関連情報が製版されたマスタの前記製版外エリア部位だけを印刷可能にしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の印刷装置において、前記機密関連情報は、機密保持モード設定者に関する情報であることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の印刷装置において、前記機密関連情報は、前記機密保持モード設定者が設定する機密保持モード設定時間および機密保持モード解除可能時間であることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項2または3記載の印刷装置において、前記機密保持モード設定者が、前記機密関連情報を設定し、かつ、前記機密関連情報が製版されたマスタの前記製版外エリア部位だけを印刷可能に設定したとき、前記製版起動信号の入力を無効とすることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4の何れか一つに記載の印刷装置において、前記機密関連情報が製版されたマスタの前記製版外エリア部位だけを印刷すべく設定する機密関連情報印刷設定手段を有することを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項2記載の印刷装置において、前記機密保持モードの設定を解除する機密保持モード解除手段が、前記製版起動手段からなり、前記製版起動手段からの前記製版起動信号によって前記機密保持モードの設定が解除されたとき、前記機密保持モード設定者に関する情報を自動的に取り消すことを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項3記載の印刷装置において、前記機密保持モードの設定を解除する機密保持モード解除手段が、前記製版起動手段からなり、前記機密保持モード設定者が設定した前記機密保持モード設定時間を超えたとき、前記製版起動手段からの前記製版起動信号の入力のみ有効とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記課題を解決して新規な孔版印刷装置を含む印刷装置を実現し提供することができる。請求項ごとの発明の効果を挙げれば、以下のとおりである。
請求項1ないし4記載の発明によれば、上記構成により、機密保持モード設定者が印刷作業を完全に終わらないうちに、他のユーザによって、機密保持した製版済みのマスタを排版されてしまうことがなくなる。さらには、他のユーザに対して機密保持モード設定者の情報を把握させることができることで、他のユーザに誤解を与えず、使い勝手も悪くならない。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、上記構成により、本当に孔版印刷装置を使いたい他のユーザのみが、機密保持モード設定者に関する情報取得を可能となるだけでなく、その使用理解度が上がり、使い易さも向上する。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、上記構成により、機密保持モード設定者に関する情報が自動的に取り消されることで、個人情報漏洩が防止できる。
【0018】
請求項7記載の発明によれば、上記構成により、機密保持モード設定者が設定した機密保持モード設定時間を超えたとき、製版起動手段からの製版起動信号の入力のみ有効とするので、機密保持モード設定者が機密保持モードの解除を忘れた場合でも他のユーザが使用できなくなることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図を参照して実施例を含む本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という)を説明する。各実施形態等に亘り、同一の機能および形状等を有する構成要素(部材や構成部品)等については、一度説明した後では同一符号を付すことによりその説明を省略する。図および説明の簡明化を図るため、図に表されるべき構成要素であっても、その図において特別に説明する必要がない構成要素は適宜断わりなく省略することがある。公開特許公報等の構成要素を引用して説明する場合は、その符号に括弧を付して示し、各実施形態等のそれと区別するものとする。
【0020】
図1〜図14を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
まず、図1を参照して、本実施形態に係る印刷装置の一例としての孔版印刷装置1の全体構成について説明する。同図において、孔版印刷装置1は、印刷部2、製版給版部3、給紙部4、排版部5、排紙部6から主に構成されている。
【0021】
印刷部2は、版胴7、インキ供給手段8、プレスローラ9から主に構成されている。
版胴7は、特許文献1の段落「0013」に記載されていると同様の材料で多孔性円筒状に形成されている周知のものからなる。版胴7は、版胴駆動手段としての版胴駆動モータ12によって図1の矢印A方向に回転駆動される。
版胴7の外周面上には、特許文献1の段落「0013」に記載されていると同様の材料およびメッシュ数で形成された図示しないメッシュスクリーンが1〜3層程度巻装されている。さらに版胴7の外周面上には、版胴7の軸線と同方向に延在するステージ部10と、ステージ部10と共にマスタの先端を挟持するマスタ保持手段としてのクランパ11とが配設されている。クランパ11は、支軸11aに揺動自在に支持され、ステージ部10に対して開閉・接離自在に設けられている。
【0022】
版胴7の内部には、インキ供給手段8が配設されている。インキ供給手段8は、インキ供給パイプ13、インキローラ14、ドクターローラ15から主に構成されている。
インキ供給パイプ13は、版胴7の支持軸を兼ねており、その一端を孔版印刷装置1の筐体側板(図示せず)に回転自在に支持されている。インキ供給パイプ13の表面には、版胴7の内部にインキを供給するための無数の小さな孔が穿設されている。インキ供給パイプ13の下方には、インキローラ14とドクターローラ15とが配設されている。インキローラ14は、その外周面を版胴7の内周面と僅かな隙間を保って、版胴7の側板(図示せず)に回転自在に支持されている。インキローラ14の外周面は、プレスローラ9が版胴7の外周面に圧接したときに、版胴7の内周面に接触し、インキ供給パイプ13より供給されたインキを版胴7の内周面に供給する。
【0023】
インキローラ14の近傍には、回転自在なドクターローラ15が配設されている。ドクターローラ15は、その外周面とインキローラ14の外周面との間に僅かな間隙が生じるように配設されており、インキローラ14との外周面の近接部において、楔状のインキ溜まり16を形成する。インキ供給パイプ13よりインキ溜まり16へと供給されたインキは、インキローラ14とドクターローラ15との間隙を通過することにより均一な層状とされ、インキローラ14の外周面に供給される。
【0024】
図2を参照して、版胴7の駆動機構を説明する。この版胴7の駆動機構は、特許文献1の図2に示されていると同様の構成である。
版胴7の各端部は、円板状の一対の端板7a,7bの外周部に固着されている。版胴7の一方の端板7aの外壁面には、インキ供給パイプ13を中心としたギヤ17が、インキ供給パイプ13と僅かに隙間をもって固着されている。インキ供給パイプ13の図示を省略した先端部は、ギヤ17を貫通して、孔版印刷装置1の図示しない筐体側板に支持されている。端板7aにおける版胴7の外周縁寄りの外壁面には、版胴7の回転位置被検知用の、版胴7の軸方向に延出する遮光部材であるドグ25が固着されている。また、一方の端板7aと他方の端板7bの外方のインキ供給パイプ13には、版胴7を軸方向に跨ぐように、版胴7を持ち運ぶための略コ字状をなす図示しない取手が取り付けられている。他方の端板7b側の図示しない取手部分には、インキ供給パイプ13へ供給するインキを補充するための図示しないインキ供給装置が設けられている。
【0025】
ギヤ17は、ギヤ部17aとフランジ部17bとを有しており、ギヤ部17aが端板7a側に位置するように配設され、フランジ部17bの一部が切り欠かれている。ギヤ17の近傍には、ギヤ部17aと噛合するギヤ部18aとフランジ部18bとを有し、孔版印刷装置1の筐体に回転自在に支持された支軸18cの一端部に固着されたギヤ18が配設されている。ギヤ18は、フランジ部18bが端板7a側に位置するように配設され、フランジ部18bの一部がフランジ部17bと同様に切り欠かれている。ギヤ17とギヤ18とは、互いの切り欠き部が一致した状態においてのみ版胴7の軸方向(版胴の着脱方向でもある)に係脱自在となっており、他の状態では噛み合った各ギヤ部17a,18aが各フランジ部17b,18bに挟まれて、係合状態を解除できないように構成されている。版胴7は、孔版印刷装置1の筐体に設けられた図示しないレール部材に、前述の図示しない取手を係合可能に構成されており、各フランジ部17b,18bの切り欠き部が一致する図の状態において、図の白抜き矢印で示す方向に抜き出すことにより、孔版印刷装置1からの取り外しが可能となっている。
【0026】
版胴7の回転に伴って移動するドグ25の円軌道上には、それぞれ光透過型フォトセンサからなるホームポジションセンサ26と機密モード位置センサ27とが配設されている。各センサ26,27は、孔版印刷装置1の筐体に取り付けられており、ドグ25がその検知部を通過する際に、後述する制御手段80へ向けて信号を出力する。ホームポジションセンサ26は、フランジ部17bの切り欠き部とフランジ部18bの切り欠き部とが一致する位置においてドグ25を検知するように配設されている。フランジ部17bの切り欠き部とフランジ部18bの切り欠き部とが一致する位置は、また、クランパ11が図1において拡開して待機する給版位置に対応して、すなわち版胴7のホームポジションとして設定されている。
【0027】
支軸18cの他端部には、歯付プーリ19が固着されている。この歯付プーリ19は、孔版印刷装置1の筐体に取り付けられた版胴駆動モータ12の出力軸端に固着された歯付プーリ20と、タイミングベルト21によって連結されている。版胴駆動モータ12の出力軸には、エンコーダ22が固着されており、版胴駆動モータ12は、孔版印刷装置1の筐体に取り付けられたパルス検出センサ23によってその回転角度を検出され、その検出された角度信号は、図示しないパルスカウンタおよび比較器を通過した後、後述する制御手段80に入力される。
【0028】
上述の構成により、版胴駆動モータ12の回転駆動力が、その出力軸、歯付プーリ20、タイミングベルト21、歯付プーリ19、支軸18c、ギヤ18、ギヤ17とこの順に伝達されて、版胴7がインキ供給パイプ13を中心に回転駆動される。
【0029】
版胴7の下方には、インキローラ14と対向する配置状態でプレスローラ9が配設されている。プレスローラ9は、図3および図4に示すプレスローラ接離機構155によって、その外周面を所定の範囲の版胴7の外周面に対して接離自在に設けられている。プレスローラ9は、後述する給紙部4より給送される印刷用紙を版胴7上の製版済みのマスタに押圧し、印刷用紙に印刷画像を形成させる。プレスローラ接離機構155は、後述する。
【0030】
印刷部2の右斜め上方には、マスタを製版し該製版済みのマスタを版胴7に巻装する製版給版部3が配設されている。製版給版部3は、マスタ貯容手段28、製版手段29、切断手段30、搬送手段31等から主に構成されている。
【0031】
マスタ貯容手段28は、孔版印刷装置1の筐体の製版側板対に固着されたマスタロール支持部材33等から主に構成されている。マスタロール支持部材33は、マスタ34をロール状に巻成したマスタロール34Aの芯部34Aaを回転自在に支持している。
マスタ貯容手段28の左方には、製版手段29が配設されている。製版手段29は、マスタ搬送手段としてのプラテンローラ36、サーマルヘッド37等から主に構成されている。プラテンローラ36は、図示しない筐体の製版側板対に回転自在に支持されている。プラテンローラ36は、マスタ搬送駆動手段としてのステッピングモータからなるマスタ搬送モータ35によって回転駆動される。
多数の発熱素子を有するサーマルヘッド37は、図示しない筐体の側板に取り付けられており、図示しない付勢手段によって付勢され、図示しないサーマルヘッド接離手段によりプラテンローラ36に接離自在に設けられている。サーマルヘッド37は、製版時には図示しないサーマルヘッド接離手段によってプラテンローラ36に圧接される。
【0032】
製版手段29のマスタ搬送方向X下流側には、筐体に取り付けられた固定刃30aと、この固定刃30aに対して回転移動する可動刃30bとからなる切断手段30が配設されている。切断手段30のマスタ搬送方向X下流側には、マスタ搬送モータ35に連結され図示しないギヤ列等からなる駆動力伝達手段を介して、マスタ搬送モータ35によって回転駆動される駆動ローラ31a,31cと、各駆動ローラ31a,31cと連れ回りする従動ローラ31b,31dとから構成される搬送ローラ対31a,31b、31c,31d等からなるマスタ搬送手段31、およびマスタを案内するガイド板38,39等がそれぞれ配設されている。
製版済みのマスタ34を版胴7の外周面に巻装する給版手段は、駆動ローラ31c、従動ローラ31d、マスタ搬送モータ35、クランパ11、版胴駆動モータ12、クランパ11を開閉する図示しない開閉手段等から構成される。
【0033】
図5を参照して、製版給版部3で製版可能なマスタ34の領域について説明する。図5は、製版済みのマスタ34の先端部が版胴7(同図には図示せず)のクランパ11で挟持される状態の展開図を示している。
一般的な製版印刷一体型の孔版印刷装置を始めとして、孔版印刷装置1では、図5に示すように、画像情報(画像データ信号)に応じて、マスタ34に対して製版することが可能な通常の領域である「製版エリア34a」が決まっているが、そのマスタ34の中で製版エリア34aの前後には画像の天地を移動させるためのエリアが存在し、大半の場合は、この部分に製版されることはない。
本実施形態では、製版エリア34aの前後に存在する画像の天地を移動させるためのエリアを利用して情報製版部34c,34dを設定し、後述する機密保持モードが設定されている場合、機密保持モードに関連する機密関連情報として、機密保持モード設定者に関する情報等を情報製版部34c,34dに製版可能に構成したことを一つの特徴としている。情報製版部34c,34dは、同図においてハッチを施して示す製版外エリア34bに属す。製版外エリア34bは、製版エリア34aの左右(マスタ幅方向)にも存在する。
【0034】
図1において、製版給版部3の各構成部材間および搬送ローラ対31c,31dのニップ部から版胴7の給版位置(ホームポジション)で拡開しているクランパ11とステージ部10との挟持部までの各距離は決まっていて、マスタ搬送手段を構成するプラテンローラ36、駆動ローラ31a,31cがステッピングモータからなるマスタ搬送モータ35によって回転駆動されるので、マスタ搬送モータ35に付与されるパルス数(あるいはステップ数)によって、マスタ34の搬送量(搬送距離)およびを正確に制御できる。
従って、製版外エリア34bにおける情報製版部34c,34dへの製版は、製版給版部3において、マスタ搬送モータ35に付与するパルス数とサーマルヘッド37での製版開始タイミングとを変更するだけで容易に製版することができる。
【0035】
印刷部2の上方であって筐体の上部には、原稿画像を読み取る原稿読取部32が配設されている。原稿読取部32は、ADFユニット40、コンタクトガラス41、蛍光灯42、ミラー群43、レンズ44、画像読取センサ45等を有する周知の構成である。
【0036】
製版給版部3の右斜め下方には、給紙部4が配設されている。給紙部4は、給紙トレイ46、給紙ローラ47、分離手段48、レジストローラ対49等から主に構成されている。
給紙台としての給紙トレイ46は、その上面に印刷用紙Pを積載される印刷用紙Pの増減と連動して、筐体に上下動自在に支持されている。また、給紙トレイ46には、一対のサイドフェンス51と、一対のサイドフェンス51の移動に伴って印刷用紙Pの幅を検知する印刷用紙幅検知センサ52とが設けられている。
【0037】
給紙手段としての給紙ローラ47は、給紙トレイ46上の最上位の印刷用紙Pと当接するように設けられており、ステッピングモータ等の図示しない駆動手段で回転駆動される。給紙ローラ47は、図示しないタイミングベルトおよび歯付プーリ等の駆動力伝達手段を介して駆動ローラ48aに連結されている。分離手段48は、上記ステッピングモータ等の図示しない駆動手段で回転駆動される駆動ローラ48aと、駆動ローラ48aと当接するように配設された分離ローラ48bとからなる。分離手段48は、給紙ローラ47によって複数枚の印刷用紙が引き出された場合、その最上位の1枚のみを分離するように構成されている。
レジストローラ対49は、分離手段48によって給送されてくる印刷用紙Pの先端をそのニップ部に一時的に停止させてスキューなどを矯正した後、版胴7上の製版済みのマスタの製版画像と印刷用紙Pとが合致する所定のタイミングで、印刷用紙Pの先端部をくわえ込み、回転している版胴7の外周面と上昇してくるプレスローラ9との間に印刷用紙Pを送り出すレジスト手段として機能する。図において下側のレジストローラ49は、図示しないタイミングベルトおよび歯付プーリ等の駆動力伝達手段を介して、ステッピングモータからなるレジストモータ50に連結されていて、レジストモータ50によって回転駆動される。
【0038】
印刷部2の左方には、排版部5が配設されている。排版部5は、上部排版部材53、下部排版部材54、排版ボックス55、圧縮板56等から主に構成されている。
上部排版部材53は、図示しない駆動手段で回転駆動される駆動ローラ57と従動ローラ58、および各ローラ間に掛け渡されたゴムベルト59から構成されている。下部排版部材54は、駆動ローラ57と図示しないギヤによって連結され回転駆動される駆動ローラ60と従動ローラ61、および各ローラ間に掛け渡されたゴムベルト62から構成されている。下部排版部材54は、駆動ローラ57の支軸を中心に、図示しない移動手段によって左右方向に移動自在に設けられており、駆動ローラ60の外周面は、版胴7の外周面に対して接離自在となるように構成されている。排版ボックス55は、内部に使用済みマスタを貯容する機能を有し、筐体に対して着脱自在に設けられている。排版ボックス55の上方には、図示しない昇降手段によって図の実線位置と破線位置とを選択的に取り得る上下動自在な圧縮板56が配設されている。
【0039】
排版部5の下方には、排紙部6が配設されている。排紙部6は、剥離爪63、従動ローラ64、駆動ローラ65、ゴムベルト66、吸引ファン67、排紙トレイ68等から主に構成されている。
剥離爪63は、版胴7の外周面からインキを転移された印刷用紙Pを剥離させる機能を有し、図示しない筐体側板に揺動自在に支持されている。剥離爪63は、図示しない揺動手段により、その先端を版胴7の外周面に近接して版胴7の製版済みのマスタから印刷画像を形成された印刷用紙の先端部を剥離する剥離位置と、この剥離位置から離間した非剥離位置とを選択的に占めるように構成されている。また、剥離爪63は、上記図示しない揺動手段により、版胴7の外周面上に存在するクランパ11等の障害物がその先端と干渉しないように揺動可能に、版胴7の回転と同期が取られている。
【0040】
従動ローラ64と駆動ローラ65とは、筐体側板に回転自在に支持されており、各ローラ間には、表面に複数の開孔を有するゴムベルト66が掛け渡されている。駆動ローラ65は、駆動手段としての図示しない排紙モータに連結された駆動力伝達手段を介して回転駆動され、この回転駆動力はゴムベルト66を介して従動ローラ64に伝達される。従動ローラ64と駆動ローラ65との間の下方には、ゴムベルト66の表面に印刷画像を形成された印刷用紙Pを吸引するための吸引ファン67が配設されている。駆動ローラ65の印刷用紙搬送方向下流側には、印刷画像を形成された印刷用紙Pを積載する排紙台としての排紙トレイ68が配設されている。排紙トレイ68は、筐体に着脱自在に取り付けられている。
【0041】
図3および図4を参照して、版胴7上の製版済みのマスタに対するプレスローラ9の押圧範囲を変える印圧範囲可変手段としてのプレスローラ接離機構155を説明する。
図3および図4に示すように、プレスローラ接離機構155は、カムフォロア141、印圧ばね142、多段カム143、図示しないプレスローラ係止手段、移動アーム148、段差カム149から主に構成されている。このプレスローラ接離機構155の作動によって、プレスローラ9は、図3に示す離間位置と図1に示した圧接位置とを選択的に占めることが可能になると共に、図5に示したマスタ34の通常の製版エリア34aおよび情報製版部34c,34dの何れか一つのエリアに対応した印刷が可能になる。
【0042】
プレスローラ9は、金属製の軸部9aにゴム等の弾性体を巻成して構成されており、版胴7の軸方向に延在して設けられている。プレスローラ9は、図3に示すように軸部9aの紙面の手前側および奥側の両端部を一対のアーム部材120(紙面の手前側は省略)によって回転自在に支持されている。各アーム部材120は、略L字形状をなし、その曲折部近傍の部位に取り付けられた揺動軸121によってそれぞれ一体化されている。揺動軸121は、孔版印刷装置1の筐体側板によって所定角度の範囲で回動自在、すなわち揺動自在に支持されている。
【0043】
図3に示すように、各アーム部材120の、プレスローラ9が支持された一端側と反対側の他端側には、それぞれ回転自在なカムフォロア141が互いに外側を向く態様で配設されている。また、カムフォロア141が配設された位置の各アーム部材120の近傍には、その一端を筐体側板に固着された印圧ばね142の他端がそれぞれ取り付けられている。この印圧ばね142により、各アーム部材120の一端側および他端側は、揺動軸121を中心にして図3において時計回り方向への回転付勢力をそれぞれ付与されている。
【0044】
各カムフォロア141の左方近傍には、3枚のカム板143A,143B,143Cを有する多段カム143がそれぞれ配設されている。各カム板143A,143B,143Cは、両端を筐体側板に回転自在に、かつ、図3の紙面方向に移動自在に支持されたカム軸144にそれぞれ所定の間隔をもって固着されており、装置手前側から実線で示すカム板143B、破線で示すカム板143A、二点鎖線で示すカム板143Cの順に配設されている。
各カム板143A,143B,143Cは、カム軸144と同心の円板である小径部(基部)とそれぞれ同一突出量の大径部(凸部)とを有している。カム板143Bの小径部形状143Baは、図3に示す狭い角度範囲の1箇所のみ、同様にカム板143Cの小径部形状143Caは、図3に示す狭い角度範囲の1箇所のみである。
多段カム143は、図4に示すように、カム軸144に取り付けられた駆動ギヤ145および筐体側板に回転自在に支持された支軸146に取り付けられた伝達ギヤ147を介して、版胴駆動モータ12からの回転駆動力を伝達され、図3において時計回り方向に回転駆動される。
【0045】
プレスローラ9は、各カム板143A,143B,143Cの何れかの大径部がカムフォロア141と当接したときにその外周面が版胴7の外周面より離間する図3に示す離間位置を占め、何れかの大径部とカムフォロア141との当接が解除されたときに印圧ばね142の付勢力によってその外周面が版胴7の外周面に圧接する図1に示す圧接位置を占める。各カム板143A,143B,143Cは、プレスローラ9が圧接位置を占めたときに、印圧ばね142の付勢力が完全に付与されるように、その小径部とカムフォロア141とが接触しないように構成されている。
【0046】
各カム板143A,143B,143Cの小径部の形成範囲は、プレスローラ9と、図5に示した版胴7のクランパ11によって挟持された製版済みのマスタ34との接触範囲が、カム板143Aでは通常の製版エリア34aとなるように、カム板143Bでは情報製版部34cと同じ範囲となるように、カム板143Cでは情報製版部34dと同じ範囲となるようにそれぞれ形成されている。また、各カム板143A,143B,143C間の間隔は、アーム部材120の板厚よりも十分に大きくなるように設定されている。
【0047】
図3において、各アーム部材120の右方近傍には、プレスローラ9が離間位置を占めた状態で各アーム部材120の揺動を禁止する、図示しないプレスローラ係止手段が配設されている。図示しないプレスローラ係止手段は図示しないソレノイドを有しており、この図示しないソレノイドのオン・オフの切り換えによって各アーム部材120を保持する状態とその保持を解除する状態とが選択的に切り換えられる。図示しないソレノイドは、カムフォロア141が各カム板143A,143B,143Cの何れか一つの大径部と当接した状態で作動される。
【0048】
カム軸144の下方近傍には、図4に示すように移動アーム148と段差カム149とが配設されている。移動アーム148は、略L字形状をなし、筐体側板に回転自在に支持された支軸148aにその曲折部を取り付けられている。移動アーム148の一端には、ローラ148bが、他端にはカムフォロア148cがそれぞれ回転自在に取り付けられている。さらに、移動アーム148の他端と曲折部との間の部位には、その一端を筐体側板に取り付けられた引張ばね150の他端が取り付けられており、移動アーム148には、支軸148aを中心に図4において時計回り方向への回転付勢力が付与されている。
【0049】
ローラ148bは、カム軸144の中程に間隔をおいて固着された円板144a,144b間に配置されており、カムフォロア148cは、引張ばね150の付勢力によってその周面を段差カム149の輪郭外周面に圧接させている。各円板144a,144b間の間隔は、ローラ148bの直径よりも僅かに大きくなるように形成されている。
【0050】
段差カム149は、その輪郭外周面に3箇所のカム部149a,149b,149cを有しており、筐体側板に回転自在に支持された支軸151に固着されている。支軸151には、筐体側板に取り付けられたステッピングモータ152の出力軸に取り付けられたギヤ153と噛み合うギヤ154が取り付けられている。段差カム149は、ステッピングモータ152の作動により図4の矢印方向に回転駆動される。この構成により、ステッピングモータ152が作動して段差カム149が回転すると、移動アーム148が支軸148aを中心に揺動し、ローラ148bが円板144aあるいは円板144bを押すことで、カム軸144が図4の左右方向に移動する。
【0051】
各カム部149a,149b,149cは、カムフォロア148cとカム部149aとが当接したときにカム板143Bがカムフォロア141と当接可能位置となるように、カムフォロア148cとカム部149bとが当接したときにカム板143Aがカムフォロア141と当接可能位置となるように、カムフォロア148cとカム部149cとが当接したときにカム板143Cがカムフォロア141と当接可能位置となるように、カム軸144を移動させる形状にそれぞれ形成されている。
【0052】
図6を参照して、孔版印刷装置1の上記各部・装置に動作指示を与えたり、その動作状態を知るための操作部としての操作パネル69を説明する。操作パネル69は、筐体の上部前面に設けられており、製版スタートキー70、印刷スタートキー71、試し刷りキー72、クリア/ストップキー73、テンキー74、4方向キー75、印刷速度設定キー76、LCD(液晶表示装置)およびタッチパネル駆動装置を備えて構成された画面操作部77、メイン電源スイッチ79、メイン電源表示器79aを有している。
操作パネル69には、同図に示すように、上記した以外の各種キーや表示装置等が配設されているが、本実施形態で使用する主なもののみを挙げた。
【0053】
製版スタートキー70は、排版部5をして排版動作を起動させる排版起動信号および製版給版部3をして製版給版動作を起動させる製版起動信号を生成する製版起動手段として機能する。また、製版スタートキー70は、機密保持モードの設定を解除する機密保持モード解除手段としても機能する。
印刷スタートキー71は、印刷部2をして印刷動作を起動させる印刷起動信号を生成する印刷起動手段として機能すると共に、図5に示した機密関連情報が製版されたマスタ34の製版外エリア34b部位の情報製版部34cまたは34dだけを印刷すべく設定する機密関連情報印刷設定手段として機能する。
【0054】
画面操作部77のLCD表示部は、上記各部・装置の動作状態やユーザ(機密保持モード設定者を含む)が操作・入力すべき内容、後述する機密関連情報として機密保持モード設定者に関する情報等の入力を促す表示等をすることにより、ユーザ(機密保持モード設定者を含む)に知らせる表示手段ないし報知手段として機能する。画面操作部77に加えて、報知手段としての音声ガイド等を付加してもよい。
画面操作部77のタッチパネルは、上記各部・装置に各種動作指示を与える動作指示手段として機能する。画面操作部77のタッチパネルには、印刷を行う者以外にその印刷物およびその製版済みのマスタの内容を知られたくない場合に機密保持モードを設定する機密保持モード設定手段としての機密保持キー78等が配設されている。
【0055】
メイン電源スイッチ79は、孔版印刷装置1の上記各部・装置への電力供給の断接を行うものであり、メイン電源表示器79Aは、LED(発光ダイオード)からなり、メイン電源スイッチ79の投入・オン/オフ状態を点灯/消灯することにより報知する公知のものである。
操作パネル69からの出力信号は制御手段80に送信され、制御手段80からの指令信号は上記各部・装置および画面操作部77のLCD表示部へ送信される。
【0056】
図7を参照して、孔版印刷装置1の制御構成を説明する。筐体内部には、孔版印刷装置1の動作を制御する制御手段80が配設されている。同図において、制御手段80はCPU85、記憶手段としてのRAM86およびバックアップRAM88、ROM87、図示しないバックアップタイマ等を有して構成されたマイクロコンピュータを具備している。
【0057】
CPU85には、画像読取部32で読み取られ、その内部の原稿画像読取回路32で処理された後、さらに図示しない画像処理装置を介して画像処理された画像データ信号と、パルス検出センサ23で検出され、図示しないパルスカウンタおよび比較器を通過した版胴駆動モータ12の角度信号と、操作パネル69の各種キーからの出力信号と、ホームポジションセンサ26からの出力信号と、機密モード位置センサ27からの出力信号とが、図示しない入力ポートを介して入力される。入力された各種信号は、ROM87に記憶された動作プログラムに基づいて処理され、印刷部2、給紙部4および排紙部6を駆動制御する主駆動回路と、製版給版部3を駆動制御する製版給版駆動回路(サーマルヘッド37を駆動制御するサーマルヘッド駆動回路を含む)と、排版部5を駆動制御する排版駆動回路とに、図示しない出力ポートを介してそれぞれ動作指令信号として出力される。
【0058】
RAM86には、CPU85によってROM87より呼び出された動作プログラムが一時的に書き込まれる。書き込まれた動作プログラムは、操作パネル69からの入力によって書き換えられる。また、バックアップRAM88は、機密保持モード設定者によって設定・入力される機密保持モード設定者に関する情報、機密保持モード設定時間および機密保持モード解除可能時間等を記憶する機能を有する。バックアップRAM88は、電池でバックアップされており、書き込まれた上記機密関連情報(データ)は、孔版印刷装置1のメイン電源(図6のメンイン電電スイッチ79参照)が切られても上記バックアップタイマによって計時される機密保持モード設定時間内は消去されないように構成されている。
【0059】
RAM86に書き込まれた機密保持モードプログラムは、操作パネル69からの入力によって書き換えることはできず、製版スタートキー70が押されたときのみ消去される。
ROM87には、孔版印刷装置1の各部・装置に配設されている各種駆動手段・アクチュエータを作動させる複数の動作プログラムおよび図8に示す動作フローを含む機密保持モードプログラムが記憶されている。
【0060】
上記構成に基づき、孔版印刷装置1の動作を以下に説明する。
まず、機密保持キー78を使用しない場合の通常モード時の動作を説明する。ADFユニット40上の原稿載置部に複数枚の原稿がセットされ、機密保持モード設定者を含むユーザによって操作パネル69上の各種キーによって製版条件が設定された後に製版スタートキー70が押されると、原稿読取部32において原稿画像が読み取られ、読み取られた画像は図示しない画像信号処理装置で画像処理された上で画像データ信号としてCPU85に送られる。
【0061】
画像読取部32での画像読取動作と並行して、排版部5では、版胴7の外周面上から使用済みのマスタ34を剥離する排版動作が行われる。外周面上に使用済みのマスタ34を巻装している版胴7は、CPU85からの動作指令信号(以下、単に「指令」という)によって作動する版胴駆動モータ12により回転駆動され、図1において反時計回り方向に回転を開始する。そして版胴7が、その外周面上に巻装した使用済みのマスタ34の後端が駆動ローラ60と対応する所定の排版位置に到達したことを、パルス検出センサ23からの信号に基づいてCPU85が判断すると、CPU85からの指令により図示しない移動手段と駆動手段とが作動し、各駆動ローラ57,60を回転させると共に下部排版部材54を版胴7側に移動させる。駆動ローラ60の外周面が版胴7の外周面上の使用済みのマスタ34と当接したとき、版胴7は反時計回り方向への回転を継続しており、駆動ローラ60と当接してすくい上げられた使用済みのマスタ34は、下部排版部材54と上部排版部材53とで挟持され、版胴7の外周面より剥離される。剥離された使用済みのマスタ34は、下部排版部材54と上部排版部材53とで搬送されて排版ボックス55内に廃棄された後、圧縮板56によって圧縮される。
【0062】
版胴7の外周面より使用済みのマスタ34が全て剥離されると、版胴7はさらに回転を継続する。そして、版胴7が図1に示す所定の給版位置であるホームポジションに到達し、ドグ25がホームポジションセンサ26によって検知されると、ホームポジションセンサ26からCPU85にその信号が出力される。CPU85は、ホームポジションセンサ26からの信号を受けて版胴駆動モータ12に指令を送り、版胴駆動モータ12の回転を停止させる。版胴駆動モータ12の停止により、版胴7がホームポジションで停止すると、CPU85より図示しない開閉手段へ指令が送られ、クランパ11が時計回り方向に揺動し、版胴7が図1に示す給版待機状態となって排版動作が完了する。
【0063】
排版動作が完了すると、これに続いて製版給版動作が行われる。版胴7が給版待機状態となると、CPU85からの指令によってマスタ搬送モータ35が作動してプラテンローラ36と各駆動ローラ31a,31cが回転駆動され、マスタロール34Aからマスタ34が引き出される。そして、マスタ搬送モータ35のステップ数より、マスタ34の画像形成領域がサーマルヘッド37の発熱素子と対応する位置に達したことをCPU85が判断すると、CPU85より指令が送られ、上記画像データ信号に基づいてサーマルヘッド37の発熱素子が選択的に発熱し、マスタ34上に穿孔製版画像が形成される。
【0064】
穿孔製版画像を形成された製版済みのマスタ34は、各ガイド板38,39にガイドされつつ搬送手段31によってクランパ11へと搬送される。マスタ搬送モータ35のステップ数より、マスタ34の先端がクランパ11とステージ部10との間の所定位置まで到達したことをCPU85が判断すると、図示しない開閉手段に指令が送られてクランパ11が反時計回り方向に揺動し、ステージ部10とクランパ11とで製版済みのマスタ34の先端部を挟持する。その後、CPU85より版胴駆動モータ12に指令が送られ、版胴7がマスタ34の搬送速度と同じ周速度で図1中A方向(時計回り方向)に回転駆動され、マスタ34の版胴7への巻装・給版動作が行われる。そして、マスタ搬送モータ35のステップ数より、1版分の製版が完了したことをCPU85が判断すると、プラテンローラ36と各駆動ローラ31a,31cの回転が停止すると共に、可動刃30bが回転移動してマスタ34が切断される。切断された製版済みのマスタ34は版胴7の回転動作によって引き出され、版胴7が再びホームポジションに到達すると、CPU85からの指令によって版胴駆動モータ12が停止して巻装・給版動作が完了する。
【0065】
給版動作に引き続き、版付け動作が行われる。版胴7がホームポジションで停止すると、CPU85からの指令によって図示しないプレスローラ係止手段が作動すると共に図4のステッピングモータ152が作動して段差カム149が回転され、そのカム部149bをカムフォロア148cに当接させる。これにより移動アーム148が支軸148aを中心に揺動されてカム軸144がカム板143Aをカムフォロア141に対して当接可能となる位置に移動された後、図示しないプレスローラ係止手段の作動が解除される。
【0066】
その後、駆動ローラ48aの回転駆動を介して給紙ローラ47を駆動する上記図示しないステッピングモータの作動により、給紙ローラ47および駆動ローラ48a、駆動ローラ65、吸引ファン67がそれぞれ回転駆動されると共に、CPU85より指令が送られて版胴駆動モータ12が作動し、版胴7が低速で図1中A方向に回転駆動される。すなわち、給紙ローラ47と駆動ローラ48aとの回転により、給紙トレイ46上に積載された複数枚の印刷用紙Pのうち、最上位の1枚の印刷用紙Pのみが引き出され、その印刷用紙Pの先端がレジストローラ対49のニップ部に突き当て一時的に停止され、スキューなどを矯正された後、版胴7に巻装された製版済みのマスタ34の画像領域の、版胴7の回転方向における先端部が、プレスローラ9と対応する位置に到達したことを、パルス検出センサ23からの信号に基づいてCPU85が判断すると、CPU85よりレジストモータ50に指令が送られてレジストローラ対49が所定のタイミングで回転駆動されることにより、印刷用紙Pを版胴7とプレスローラ9との間に給送する。
【0067】
この際、版胴7の回転に同期して、プレスローラ接離機構155ではカム軸144およびこれと一体に設けられた多段カム143が回転駆動されており、上述したようにカムフォロア141と当接可能となる位置に移動されたカム板143Aは、上記所定のタイミングにおいてその大径部をカムフォロア141から離脱させる。これによりプレスローラ9がその外周面を版胴7の外周面に印圧ばね142の付勢力によって圧接させることで、レジストローラ対49より給送された印刷用紙Pは、プレスローラ9によって版胴7上の製版済みのマスタ34に押圧される。
この押圧動作により、プレスローラ9と印刷用紙Pと製版済みのマスタ34と版胴7の外周面とが圧接し、インキローラ14によって版胴7の内周面に供給されたインキは、版胴7の外周面の開孔部とメッシュスクリーンより滲出した後、版胴7の外周面と製版済みのマスタ34の多孔性支持体に充填された後、製版済みのマスタ34の穿孔部を介して印刷用紙Pに転移され、いわゆる版付けが行われる。インキを転移された印刷用紙Pは、剥離爪63の先端で版胴7の外周面より剥離されて下方へと落下し、吸引ファン67の吸引力によってゴムベルト66の上面に引き付けられつつ左方へと搬送され、排紙トレイ68上に排出される。その後、版胴7は再びホームポジションまで回転して停止し、この一連の工程によって版付け動作が完了し、孔版印刷装置1は印刷待機状態となる。
【0068】
上述の、原稿読取、排版、製版、給版、版付けの各動作が完了して、印刷待機状態となった孔版印刷装置1において、ユーザによって試し刷りキー72が押されると、上記版付け動作と同様に、給紙トレイ46上の最上位の1枚の印刷用紙Pが給紙ローラ47と分離手段48とによって引き出され、レジストローラ対49のニップに一時的に停止されると共に、CPU85より指令が送られて版胴駆動モータ12が作動し、版胴7が高速で回転駆動される。レジストローラ対49は、版付け動作と同じ所定のタイミングで、高速回転している版胴7とプレスローラ9との間に印刷用紙Pを給送する。給送された印刷用紙Pは、プレスローラ9によって版胴7上の製版済みのマスタ34に押圧されてインキを転移され、その上面に印刷画像を形成された後、剥離爪63によって版胴7の外周面より剥離され、ゴムベルト66によって左方へと搬送されて、排紙トレイ68上に排出される。版胴7は再びホームポジションに戻り、試し刷り動作が完了する。
【0069】
この試し刷りによって印刷画像の濃度や位置を確認し、これらを操作パネル69上の各種キーで調整して再度試し刷りを行った後、テンキー74で印刷枚数を設定し、適宜、印刷速度設定キー76で印刷速度を設定し、印刷スタートキー71を押すことにより、給紙部4より印刷用紙Pが連続的に給送され、印刷動作が行われる。設定された印刷枚数の印刷動作完了後に、版胴7は再びホームポジションに戻り、孔版印刷装置1は再び印刷待機状態となる。
【0070】
図8等を参照しながら、機密保持モード設定者が機密保持キー78を使用して機密保持モードを設定した場合の孔版印刷装置1の動作を説明する。
本実施形態の機密保持モード設定の時機(タイミング)は、上記特許文献1のそれと基本的に異なる。すなわち、上記特許文献1の機密保持モード設定時機は、上述と同様に、製版、給版、版付け、適宜の試し刷り、印刷の各工程を経て印刷物を得た印刷動作完了後であって、その印刷物の内容およびそれに用いた製版済みのマスタが機密を要する場合に、機密保持キーを押して設定するものであった。
図8に示す本実施形態および従来の技術の機密保持モードは、上記特許文献1の機密保持モード設定時機と比べて、機密保持を要するマスタの製版前に、機密保持キー78を使用して機密保持モードを設定する点が相違する。
【0071】
機密保持モード設定者は図6に示すように機密保持モード設定に係る初期画面を画面操作部77に表示させるための操作を行う。この初期画面を画面操作部77に表示させるには、例えば、孔版印刷装置1を共同で使用し機密保持を図るために同じ目的をもった機密保持モード設定者たちが予め各種キーとの組み合わせで設定したサービスプログラムによって、あるいは予め取り決めた暗証番号等で呼び出し・表示させることが望ましい。ここでは、例えば暗証番号を操作パネル69のテンキー74を用いて入力し、図6の初期画面を画面操作部77に表示させるものとする。
【0072】
図6に示した画面操作部77の初期画面において、機密保持モード設定者が「機密保持モード設定」と表示されている機密保持キー78部分をタッチすると、機密保持モード設定に係る信号がCPU85に送られる。CPU85はROM87より機密保持モードプログラムを呼び出し、RAM86に機密保持モードプログラムを書き込むと共に、操作パネル69に信号を送り、「機密保持モード設定」キー78部分を白黒反転表示して機密保持モードが設定されたことを表示する(ステップS1)。
【0073】
機密保持モードが設定されると、図9に示す画面操作部77に自動的に切り換わり、そのLCD表示部に「機密情報入力しますか?」、「イエス(はい)」、「ノー(いいえ)」選択画面が表示される(ステップS2)。
このステップS2において、機密保持モード設定者がノーキー90bをタッチすると、上記した従来とおりの機密保持モードが設定される(ステップS3)。
【0074】
すなわち、従来の機密保持モードとは、上述と同様に、機密保持を要する製版前に設定されるモードである。この従来の機密保持モードでは、印刷スタートキー71からの印刷起動信号や試し刷りキー72からの試し刷り起動信号等はCPU85によって無効化されて受付されないが、製版スタートキー70からの排版起動信号および製版起動信号のみはCPU85によって有効化されて受付されると共に、版胴7に巻装された製版済みのマスタの製版画像が他の者には見ることができないモードである。
【0075】
具体的には、RAM86への機密保持モードプログラムの書き込み動作後、CPU85は版胴駆動モータ12へ指令を送り、ホームポジションで停止している版胴7を、ドグ25が機密モード位置センサ27に検知されるまで(図2において距離Lだけ)回動させる。以後、ユーザによって印刷スタートキー71または試し刷りキー72が押されると、操作パネル69よりCPU85に印刷起動信号または試し刷りキー72からの試し刷り起動信号が送られるが、CPU85はこれを受付せず、RAM86に機密保持モードプログラムが書き込まれていることを認識し、主駆動回路へ指令を出力しないため、孔版印刷装置1は印刷動作と試し刷り動作とを行わない。また、CPU85は、印刷スタートキー71または試し刷りキー72が押され、その信号が入力されると、操作パネル69に信号を送り、画面操作部77のLCD表示部に「印刷不可」のメッセージを表示させる。
【0076】
この機密保持モード状態は、製版スタートキー70が押されるまで継続される。製版スタートキー70が押されると、CPU85は、RAM86に書き込まれた機密保持モードプログラムを消去すると共に排版駆動回路と製版駆動回路とに指令を送り、孔版印刷装置1に、排版動作に続いて製版動作を実行させて孔版印刷装置1を印刷待機状態とさせる。
【0077】
上述のように、従来の機密保持モードでは、印刷動作と試し刷り動作とを禁止することに加え、版胴7をホームポジションから回動させることにより、フランジ部17bの切り欠き部とフランジ部18bの切り欠き部との位置を違え、孔版印刷装置1筺体からの版胴7の離脱を禁止しているため、孔版印刷装置1より版胴7を外し、他の同種の孔版印刷装置によって印刷を行うことで機密が漏洩する事態や、版胴7より製版済みのマスタを剥離させ、マスタそのものを解読することで機密が漏洩する事態をも防止することができるものであった。
【0078】
上述の従来の機密保持モードに加えて、本出願人が上記特許文献2で提案した機密保持モードの構成および動作を付加することがより好ましい。すなわち、図1の孔版印刷装置1ではその説明を省略したが、ユニット化された版胴7が装置本体としての筐体より離脱する際に、孔版印刷装置1の前面側にロック機構を具備した開閉自在な前ドアカバーや、ロック機構を具備した排版ボックス55をそれぞれ筐体より離脱させないように、各ロック機構を制御するよう構成することが望ましい。これは、同公報に開示されているように、版胴上の製版済みのマスタを見ることができる全ての状態を不可とすべく、メイン電源オフ後も各ロック状態が維持される。ユニット化されたプロッタ(製版給版部)があれば、その離脱禁止・ロックも同様である。
【0079】
一方、図8のステップS2および図9において、機密保持モード設定者がイエスキー90aをタッチしてこれを白黒反転表示させたときには、ステップS4に進み、図10に示す画面操作部77に自動的に切り換わり、「1.氏名、2.所属、3.電話番号、4.設定期間」等が入力できるLCD表示画面に変わる。
この際、機密保持モード設定者が図10の画面操作部77に表示された「1.氏名」のタッチキー部分をタッチすると、図11に示す画面操作部77に自動的に切り換わるので、その画面操作部77のタッチパネルとLCDを使用してひらがな50音等の文字入力を行うことができる。これは、「2.所属」の入力も同様である。
次いで、「3.電話番号」のタッチキー部分をタッチすると、図12に示す画面操作部77に自動的に切り換わるので、その画面操作部77のタッチパネルとLCDを使用して英数字等の文字・数値入力を行うことができる。これは、「4.設定期間」の入力も同様である。
これにより、機密関連情報として「1.氏名」、「2.所属」および「3.電話番号」の機密保持モード設定者に関する情報、「4.設定期間」の機密保持モード設定時間、機密保持モード解除可能時間等の情報・データが入力されたら、このデータはバックアップRAM88に記憶・保存される(ステップS5)。
【0080】
次いで、ステップS6に進んで、図13に示す画面操作部77に自動的に切り換わり、「製版外エリアに製版しますか?」「イエス(はい)」、「ノー(いいえ)」という選択画面に変わる。ここで、機密保持モード設定者がイエスキー90aをタッチすると、ステップS9に進んで、「製版外エリア製版モード」が自動的に設定される。
この「製版外エリア製版モード」は、従来の機密保持モードとは異なり、図5に示した製版外エリア34bとして先端部または後端部の情報製版部34c,34dの何れか一方にのみ、ステップS4で入力した機密関連情報に応じた製版を許可し、かつ、その情報製版部34cまたは34dに応じた部位だけの印刷を許可するモードであり、「4.設定期間」で入力・設定された機密保持モード設定時間、機密保持モード解除可能時間が経過しないと製版はおろか、印刷もできないモード(状態)となる。
【0081】
すなわち、従来の機密保持モードでは、CPU85が製版スタートキー70からの排版動作起動信号および製版動作起動信号を有効化して受付していたが、本実施形態に特有の「製版外エリア製版モード」が設定されると、CPU85は印刷スタートキー71または試し刷りキー72からの各起動信号は元より、製版スタートキー70からの上記各起動信号を無効化して受付せず、「4.設定期間」で入力・設定された機密保持モード設定時間、機密保持モード解除可能時間が経過するまでそのモード状態を維持することとなる。
【0082】
機密を要する画像データに応じての製版動作が上述と同様に通常の製版エリア34aになされると共に、この際、バックアップRAM88に記憶された機密保持モード設定者情報等に基づいて、製版外エリア34bの情報製版部34c(または34d)に製版される。
すなわち、マスタ34の情報製版部34cへの上記製版は、通常の製版エリア34aに製版する場合と比べてサーマルヘッド37での製版開始タイミングを早めると共に、マスタ搬送モータ35へ付与するパルス数を上記製版開始タイミングに合わせて、CPU85によって適正に制御される。マスタ34の情報製版部34dへの上記製版は、通常の製版エリア34aに製版する場合と比べてサーマルヘッド37での製版駆動時間を長めにすればよい。
【0083】
次いで、ステップS10に進んで、「製版禁止モード」の設定が自動的になされる。この際、画面操作部77のLCD表示部に、「現在、機密保持モード製版禁止状態です。」というメッセージが表示されるので、他のユーザが孔版印刷装置1を使用しようとした場合、機密保持モード設定者が機密保持モードを設定中であることを理解して、印刷スタートキー71を押下すると、製版済みのマスタ34の情報製版部34cに製版された機密保持モード設定者に関する情報等、すなわち「1.氏名」、「2.所属」、「3.電話番号」、「4.設定期間」だけが印刷される。
この際、CPU85は、機密保持モード設定者が機密関連情報を設定し、かつ、機密関連情報が製版されたマスタ34の製版外エリア34bの情報製版部34c(または情報製版部34d)部位だけを印刷可能に設定したとき、製版スタートキー70からの製版起動信号の入力を無効化して受付しないように機能する。また、印刷スタートキー71は、機密関連情報が製版されたマスタ34の情報製版部34c(または34d)だけを印刷すべく設定する機密関連情報印刷設定手段として機能する。
【0084】
これにより、他のユーザは製版済みのマスタ34の情報製版部34cだけの印刷物内容を確認することが可能となり、機密保持モードの「4.設定時間」が経過してから孔版印刷装置1を使用する等しなければならないことを認識できる。必要によっては、機密保持モード設定者への連絡によって解除してもらうことも勿論可能である。この際、CPU85は、機密保持モード設定者が設定した「4.設定時間」を超えたとき、製版スタートキー70からの製版起動信号の入力のみ有効化するよう機能する。
なお、上述の状態は孔版印刷装置1のメイン電源がオフされてもパックアップRAM88にて記憶していて、図示しないバックアップタイマにて時間計測しているので問題が生じることはない。
【0085】
説明が前後するが、ここで図1、図3〜図5を参照して、製版済みのマスタ34の情報製版部34cだけを印刷するときのプレスローラ接離機構155、印刷部2および給紙部4の動作を補説する。
上述した特有の製版動作、給版動作に引き続き、特有の給紙、印刷動作が行われる。版胴7がホームポジションで停止すると、CPU85からの指令によって図4のステッピングモータ152が作動して段差カム149が回転されると共に図示しないプレスローラ係止手段が作動され、カム部149aをカムフォロア148cに当接させる。これにより移動アーム148が支軸148aを中心に揺動されてカム軸144がカム板143Bをカムフォロア141に対して当接可能となる位置に移動された後、図示しないプレスローラ係止手段の作動が解除される。
【0086】
その後、図示しないステッピングモータが所定のタイミングで作動することにより、給紙ローラ47、駆動ローラ48aがそれぞれ回転駆動されると共に、駆動ローラ65、吸引ファン67がそれぞれ駆動される。そして、版胴7が印刷速度設定キー76で設定された印刷速度で図1の矢印A方向に回転駆動され、給紙トレイ46上から1枚の印刷用紙Pが分離・給送されてその先端をレジストローラ対49のニップ部に突き当て一時的に停止される。その後、版胴7上に巻装された図5の製版済みのマスタ34の矢印A方向における情報製版部34cの製版画像領域先端部がプレスローラ9と対応する位置に到達する所定のタイミングで、レジストモータ50が作動されることによりレジストローラ対49が回転駆動されることで、一時的に停止されていた印刷用紙Pは版胴7とプレスローラ9との間に向けて給送される。
【0087】
上記所定のタイミングにおいて、カムフォロア141と当接可能である位置に移動されたカム板143Bはその大径部をカムフォロア141から離脱させ、プレスローラ9が印圧ばね142の付勢力によってその周面を版胴7の外周面に圧接させる。これによりプレスローラ9と印刷用紙Pと製版済みのマスタ34における情報製版部34cの製版画像形成部と版胴7とが圧接し、インキローラ14によって版胴7の内周面に供給されたインキが版胴7の開口部より滲出し、版胴7に巻装された図示しないメッシュスクリーン、および製版済みのマスタ34における情報製版部34cの製版画像穿孔部を通過して印刷用紙Pに転移され、製版済みのマスタ34における情報製版部34cの製版画像形成部分のみが印刷されることとなる。
なお、製版済みのマスタ34における情報製版部34dの製版画像形成部分のみに対する給紙および印刷動作は、上述した情報製版部34cのみに対する給紙および印刷動作と比較して、情報製版部34dの製版画像領域先端部がプレスローラ9と対応する位置に到達する所定のタイミングで、レジストモータ50が作動される点、プレスローラ接離機構155のカム板143Cが選択されて用いられる点が主に相違するだけであり、上述した内容から当業者であれば容易に理解し実施できるからその説明を省略する。
【0088】
説明が前後するが、図8のステップS6および図13の画面操作部77のLCD選択画面に表示された「製版外エリアに製版しますか?」において、ノーキー90bをタッチすると、ステップS7に進んで、図14に示すように「製版スタートキー許可されます。よろしいですか?」「イエス(はい)」、「ノー(いいえ)」という画面操作部77のLCD選択画面が自動的に表示される。
【0089】
ここで、イエスキー90aをタッチすると、ステップS11に進んで、上述したと同様の従来の機密保持モードが設定される。この際、製版スタートキー70およびイエスキー90aは、機密保持モードの設定を解除する機密保持モード解除手段として機能する。そして、CPU85は、製版スタートキー70からの製版起動信号に基づいて、機密保持モードの設定を解除すると共に、機密保持モード設定者に関する情報を自動的に取り消すようバックアップRAM88を制御する。
また、ノーキー90bをタッチすると、ステップS8に進んで、ステップS6および図13に示したと同様の表示が画面操作部77のLCD表示部になされる。ステップS8および図13に示したと同様の「製版外エリアに製版しますか?」「イエス(はい)」、「ノー(いいえ)」という選択画面において、機密保持モード設定者がイエスキー90aをタッチすると、ステップS9に進み、ノーキー90bをタッチすると、ステップS11の上述したと同様の従来の機密保持モードが設定される。
【0090】
以上説明したとり、本実施形態によれば、上記発明の効果の欄に記載した効果を奏することは元より、機密保持モード設定者等の機密関連情報を安易に操作パネル69における画面操作部77のLCD表示部に表示しないことにより、孔版印刷装置1を本当に使用したい他のユーザにのみ知らしめることが可能となり、機密保持モード設定者の個人情報漏洩も防止できる。
【0091】
本発明に係る印刷装置は、上記実施形態の孔版印刷装置に限らず、例えば、特開平7−17013号公報(特許第2790963号公報)に開示されているような印刷ドラムの外側からインキを供給する構成のもの、つまり印刷ドラム上のマスタにインキを供給して、印刷画像を用紙上に形成するいわば凹版印刷装置とも呼べるような構成の印刷装置にも準用できる。すなわち、所定の印刷終了後、あるいは印刷途中で印刷ドラム上に機密保持を要する製版済みの版や使用済みの版を残しておく虞のある印刷装置であればどのようなタイプの装置にも適用ないしは準用可能である。
以上述べたとおり、本発明を特定の実施例を含む実施形態等について説明したが、本発明が開示する技術的範囲は、上述した実施形態等に例示されているものに限定されるものではなく、それらを適宜組み合わせて構成してもよく、本発明の範囲内において、その必要性および目的・用途等に応じて種々の実施形態や変形例あるいは実施例を構成し得ることは当業者ならば明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の一実施形態を示す孔版印刷装置全体の概略的な正断面図である。
【図2】図1の孔版印刷装置に用いられる版胴の離脱防止機構を示す斜視図である。
【図3】図1の孔版印刷装置に用いられるプレスローラ接離機構の一部断面正面図である。
【図4】図3のプレスローラ接離機構の要部の側面図である。
【図5】図1の孔版印刷装置において、マスタに形成される通常製版エリア、製版外エリア、情報製版部を展開して説明する図である。
【図6】図1の孔版印刷装置に用いられる操作パネルを示す図である。
【図7】図1の孔版印刷装置の制御構成を示すブロック図である。
【図8】図1の孔版印刷装置において、機密保持モード設定された場合の主な動作フローを示すフローチャートである。
【図9】操作パネルの画面操作部に表示される内容を説明する図である。
【図10】操作パネルの画面操作部に順次表示される内容を説明する図である。
【図11】操作パネルの画面操作部に表示されるひらがな等の文字入力の一例を示す図である。
【図12】操作パネルの画面操作部に表示される英数字等の文字入力の一例を示す図である。
【図13】操作パネルの画面操作部に順次表示される内容を説明する図である。
【図14】操作パネルの画面操作部に順次表示される内容を説明する図である。
【符号の説明】
【0093】
1 孔版印刷装置
2 印刷部
3 製版給版部
5 排版部
7 版胴
34 マスタ
34a 通常の製版エリア
34b 製版外エリア
34c,34d 製版外エリアの情報製版部
35 マスタ搬送モータ (マスタ搬送駆動手段)
37 サーマルヘッド(製版手段)
49 レジストローラ対(レジスト手段)
50 レジストモータ(レジスト駆動手段)
69 操作パネル(操作部)
70 製版スタートキー(製版起動手段、機密保持モード解除手段)
71 印刷スタートキー(印刷起動手段、機密関連情報印刷設定手段)
77 画面操作部
78 機密保持キー(機密保持モード設定手段)
80 制御手段
85 CPU
87 RAM
88 バックアップRAM
155 プレスローラ接離機構(印圧範囲可変手段)
A 版胴の回転方向
P 印刷用紙(シート・被印刷媒体)
X マスタ搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製版済みのマスタを外周面上に巻装する版胴を有する印刷部と、マスタを製版し該製版済みのマスタを前記版胴に巻装する製版給版部と、前記版胴の外周面上より使用済みのマスタを剥離、廃棄する排版部と、前記印刷部をして印刷動作を起動させる印刷起動信号を生成する印刷起動手段と、前記排版部をして排版動作を起動させる排版起動信号および前記製版給版部をして製版給版動作を起動させる製版起動信号を生成する製版起動手段とを具備し、前記印刷起動信号に基づいて前記印刷部を作動させて印刷を行い、前記排版起動信号および前記製版起動信号に基づいて、前記排版部によって前記版胴の外周面上より使用済みのマスタを除去した後、前記製版給版部によって前記版胴の外周面上に新しい製版済みのマスタを巻装する印刷装置において、
印刷を行う者以外にその印刷物およびその製版済みのマスタの内容を知られたくない場合に機密保持モードを設定する機密保持モード設定手段を有し、
前記機密保持モード設定手段により前記機密保持モードが設定されている場合、マスタの製版外エリアに前記機密保持モードに関連する機密関連情報を製版可能にすると共に、該機密関連情報が製版されたマスタの前記製版外エリア部位だけを印刷可能にしたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の印刷装置において、
前記機密関連情報は、機密保持モード設定者に関する情報であることを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2記載の印刷装置において、
前記機密関連情報は、前記機密保持モード設定者が設定する機密保持モード設定時間および機密保持モード解除可能時間であることを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の印刷装置において、
前記機密保持モード設定者が、前記機密関連情報を設定し、かつ、前記機密関連情報が製版されたマスタの前記製版外エリア部位だけを印刷可能に設定したとき、前記製版起動信号の入力を無効とすることを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一つに記載の印刷装置において、
前記機密関連情報が製版されたマスタの前記製版外エリア部位だけを印刷すべく設定する機密関連情報印刷設定手段を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項2記載の印刷装置において、
前記機密保持モードの設定を解除する機密保持モード解除手段が、前記製版起動手段からなり、
前記製版起動手段からの前記製版起動信号によって前記機密保持モードの設定が解除されたとき、前記機密保持モード設定者に関する情報を自動的に取り消すことを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項3記載の印刷装置において、
前記機密保持モードの設定を解除する機密保持モード解除手段が、前記製版起動手段からなり、
前記機密保持モード設定者が設定した前記機密保持モード設定時間を超えたとき、前記製版起動手段からの前記製版起動信号の入力のみ有効とすることを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−137523(P2010−137523A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318856(P2008−318856)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)