説明

印刷装置

【課題】記録媒体の搬送ずれを補正し、画像品質を向上させる。
【解決手段】記録媒体Pの駆動ローラ10と、記録媒体Pの搬送方向の可変機構を有するステアリング部20と、駆動ローラ10とステアリング部20との間の記録媒体Pに向けて機能液を塗布するヘッド部30と、ヘッド部30とステアリング部20との間の記録媒体搬送部35と、ステアリング部20と記録媒体搬送部35との間で、ステアリング部20を介して搬送された記録媒体Pの第1基準点に対する第1搬送ずれ量を検出する第1検出部41と、記録媒体搬送部35とヘッド部30との間で、記録媒体搬送部35を介して搬送された記録媒体Pの第2基準点に対する第2搬送ずれ量を検出する第2検出部42と、制御部50と、を備え、前記第1搬送ずれ量と前記第2搬送ずれ量とに基づいて、前記第1基準点の位置を変更し、前記第1搬送ずれ量に基づき前記ステアリング部20を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置では、記録媒体を搬送する際に、その搬送を行う搬送装置の製造誤差や、印刷装置に対する取り付け精度のばらつき等の理由により、搬送される記録媒体の位置ずれが生じる場合がある。そこで、センサーにより記録媒体の端部の位置を測定し、測定結果に基づいて記録媒体の位置ずれを補正するステアリング装置を備えた印刷装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−30187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、印刷装置のレイアウト等によりステアリング装置と吐出ヘッドとの間に、例えば、搬送ローラー等の搬送部がある場合、ステアリング装置により記録媒体の位置ずれを補正しているにも関わらず、搬送部の製造誤差や動作誤差等により、搬送部を通った記録媒体の位置がずれ、画像品質が低下してしまう、という課題があった。ここでセンサーを搬送部と吐出ヘッドとの間に配置することで、搬送部の製造誤差や動作誤差等による影響を吸収して位置ずれ補正することが可能になるが、この場合ステアリング装置とセンサーとの距離が離れてしまうため、発振状態になりやすく制御が難しくなるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係る印刷装置は、記録媒体を搬送方向に搬送させる駆動ローラーと、前記記録媒体の前記搬送方向を可変する可変機構を有するステアリング部と、前記駆動ローラーと前記ステアリング部との間に配置され、前記記録媒体に向けて機能液を塗布するヘッド部と、前記ヘッド部と前記ステアリング部との間に配置された記録媒体搬送部と、前記ステアリング部と前記記録媒体搬送部との間に配置され、前記ステアリング部を介して搬送された前記記録媒体の第1基準点に対する第1搬送ずれ量を検出する第1検出部と、前記記録媒体搬送部と前記ヘッド部との間に配置され、前記記録媒体搬送部を介して搬送された前記記録媒体の第2基準点に対する第2搬送ずれ量を検出する第2検出部と、制御部と、を備え、前記制御部では、前記第1検出部の前記第1搬送ずれ量と前記第2検出部の前記第2搬送ずれ量とに基づいて、前記第1基準点の位置を変更し、かつ、前記第1基準点の位置が変更された後に、前記第1検出部の前記第1搬送ずれ量に基づき前記ステアリング部を制御することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第1検出部の前記第1搬送ずれ量と第2検出部の第2搬送ずれ量とに基づいて、第1検出部における第1搬送ずれ量の基準値が変更される。そして、変更された基準値を満足するようにステアリング部が制御される。すなわち、ヘッド部に対する記録媒体の位置ずれが補正され、画像品質を高めることができる。
【0008】
[適用例2]前記ステアリング部は、前記搬送方向と交差する方向における前記記録媒体の位置を可変とし、前記第1搬送ずれ量は前記搬送方向と交差する方向における前記記録媒体の前記第1基準点からのずれ量であり、前記第2搬送ずれ量は前記搬送方向と交差する方向における前記記録媒体の前記第2基準点からのずれ量であることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、第1検出部の前記第1搬送ずれ量と第2検出部の第2搬送ずれ量とに基づいて、ヘッド部に対する記録媒体の位置ずれが補正され、画像品質を高めることができる。
【0010】
[適用例3]前記第1基準点の位置情報を保持する記憶部を備え、前記第1基準点の変更は、前記記憶部に記憶された前記第1基準点の位置情報を変更することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、ヘッド部に対する記録媒体の位置ずれが補正され、画像品質を高めることができる。
【0012】
[適用例4]記録媒体を搬送方向に搬送させる駆動ローラーと、前記記録媒体の前記搬送方向を可変する可変機構を有するステアリング部と、前記駆動ローラーと前記ステアリング部との間に配置され、前記記録媒体に向けて機能液を塗布するヘッド部と、前記ヘッド部と前記ステアリング部との間に配置された記録媒体搬送部と、前記ステアリング部と前記記録媒体搬送部との間に配置され、前記ステアリング部を介して搬送された前記記録媒体の第1基準点に対する第1搬送ずれ量を検出する第1検出部と、前記記録媒体搬送部と前記ヘッド部との間に配置され、前記記録媒体搬送部を介して搬送された前記記録媒体の第2基準点に対する第2搬送ずれ量を検出する第2検出部と、を備えた印刷装置の制御方法であって、前記第1検出部の前記第1搬送ずれ量と前記第2検出部の前記第2搬送ずれ量とに基づいて、前記第1基準点の位置を変更し、かつ、前記第1基準点の位置が変更された後に、前記第1検出部の前記第1搬送ずれ量に基づき前記ステアリング部を制御することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、第1検出部の前記第1搬送ずれ量と第2検出部の第2搬送ずれ量とに基づいて、第1検出部における第1搬送ずれ量の基準値が変更される。そして、変更された基準値を満足するようにステアリング部が制御される。すなわち、ヘッド部に対する記録媒体の位置ずれが補正され、画像品質を高めるように印刷装置を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】印刷装置の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材ごとに縮尺を異ならせて図示している。
【0016】
図1は、印刷装置の構成を示す概略図である。図1に示すように、印刷装置1は、記録媒体Pを搬送方向に搬送させる駆動ローラー10と、記録媒体Pの搬送方向と交差する方向における位置を可変する可変機構を有するステアリング部20と、駆動ローラー10とステアリング部20との間に配置され、記録媒体Pに向けて機能液を塗布するヘッド部30と、ヘッド部30とステアリング部20との間に配置された記録媒体搬送部35と、ステアリング部20と記録媒体搬送部35との間に配置され、ステアリング部20を介して搬送された記録媒体Pの搬送方向と交差する方向における第1搬送ずれ量を検出する第1検出部41と、記録媒体搬送部35とヘッド部30との間に配置され、記録媒体搬送部35を介して搬送された記録媒体Pの搬送方向と交差する方向における第2搬送ずれ量を検出する第2検出部42と、制御部50等を備えている。
【0017】
駆動ローラー10は、図1に示すように、Y軸方向に対して平行に配置され、記録媒体Pを搬送方向(X軸方向)に搬送させるものである。駆動ローラー10には、図示しないモーター等が接続され、当該モーターを駆動させることにより、駆動ローラー10が回転動作する。そして、記録媒体Pは、駆動ローラー10に巻き付けられながら、X軸方向に移動される。
【0018】
ステアリング部20は、記録媒体Pの搬送方向(X軸方向)と交差する方向における記録媒体Pの位置を可変する可変機構を有する。具体的には、ステアリング部20は、Y軸方向に対して平行に配置されたステアリングローラー21と、ステアリングローラー21に接続されたモーター22等を備える。そして、モーター22を駆動させることにより、ステアリングローラー21がX軸を中心とした回転方向(S方向)に回転移動する。そうすると、記録媒体Pの搬送方向(X軸方向)にY軸方向成分を持たせた方向に搬送させることができる。この結果記録媒体Pの搬送方向と交差する方向における位置が可変される。
【0019】
ヘッド部30は、記録媒体Pに対して機能液を塗布し、記録媒体P上に画像を成形するものである。ヘッド部30は、例えば、色別に複数の吐出ヘッドを備えており、所定の吐出プログラムに基づいて、機能液を液滴として吐出し、記録媒体P上に画像を形成する。
【0020】
記録媒体搬送部35は、ヘッド部30とステアリング部20との間に配置されている。記録媒体搬送部35は、例えば、搬送ローラーであり、ステアリング部20とヘッド部30との距離延長を考慮して、ヘッド部30とステアリング部20の中間位置に配置される。
【0021】
第1検出部41は、ステアリング部20と記録媒体搬送部35との間に配置され、ステアリング部20を介して搬送された記録媒体Pの第1基準点に対する第1搬送ずれ量を検出するものである。本実施形態では、第1基準点に対して搬送方向と交差する方向(Y軸方向)において記録媒体Pがずれた第1搬送ずれ量を検出する。
【0022】
第2検出部42は、記録媒体搬送部35とヘッド部30との間に配置され、記録媒体搬送部35を介して搬送された記録媒体Pの第2基準点に対する第2搬送ずれ量を検出するものである。本実施形態では、第2基準点に対して搬送方向と交差する方向(Y軸方向)において記録媒体Pがずれた第2搬送ずれ量を検出する。
第1基準点と第2基準点とは、印刷装置に備えられた記憶部(図示せず)に記憶されている。記憶部としては、例えばRAMを用いることができる。また、第1基準点、第2基準点としては、X軸、Y軸を基準としたXY平面におけるXY座標や、第1検出部41、第2検出部42におけるセンシング位置からのY軸方向における距離などを用いることができる。
【0023】
制御部50は、第1および第2検出部41,42、モーター22に電気的に接続されており、第1検出部41の第1搬送ずれ量および第2検出部42の第2搬送ずれ量に基づいて、記録媒体搬送部35の製造誤差や動作誤差によるずれ量を演算し、第1検出部41の第1基準点を変更させるものである。さらに、第1基準点が変更された後に、第1検出部41によって検出された第1搬送ずれ量に基づいて、ステアリング部20を制御するものである。
【0024】
次に、印刷装置1の制御方法について説明する。まず、第1検出部41では、あらかじめ設定された第1基準点に基づいて第1搬送ずれ量が検出され、検出された第1搬送ずれ量が制御部50に送信される。また、第2検出部42では、記録媒体搬送部35とヘッド部30との間において、搬送方向と交差する方向(Y軸方向)における記録媒体Pの第2搬送ずれ量が検出され、検出された第2搬送ずれ量が制御部50に送信される。制御部50では、検出された第1搬送ずれ量および第2搬送ずれ量に基づいて、記録媒体搬送部35の製造誤差や動作誤差によるずれ量を演算し、演算結果に基づいて第1基準点を変更する。ここで、第1基準点の位置の変更は、第1基準点としてXY座標を記憶している場合には、記憶部に記憶されたXY座標を演算結果に基づいて新たなXY座標に書き換える。第1基準点としてセンシング位置からのY軸方向における距離を記憶している場合には、演算結果に基づいて新たな距離に書き換える。また、第1基準点の変更は、少なくとも1回実施する必要があり、その後は所定のタイミングまたは任意のタイミングで実施しても良い。例えば、印刷装置1を停止状態から稼動状態へ移行する際に、第1基準点の変更を実施しても良い。定期的に第1基準点の変更を実施することにより、記録媒体搬送部35に起因する経時的なずれの影響を防ぐことが可能になる。
【0025】
次に、第1検出部41では、変更後の第1基準点に基づいて第1搬送ずれ量が検出され、検出された第1搬送ずれ量が制御部50に送信される。制御部50では、検出された第1搬送ずれ量に基づいて、基準値の範囲内であるか否かが判断される。そして、基準値の範囲外と判断された場合には、第1搬送ずれ量に基づいて、ステアリングローラー21の角度が演算されるとともに、モーター22に対する制御信号が生成される。そして、制御信号が、モーター22に送信され、制御信号に基づきモーター22が駆動し、ステアリングローラー21が所定の角度(S方向)まで異動する。このようにして、記録媒体Pの搬送方向が補正される。
【0026】
従って、上記実施形態によれば、以下に示す効果がある。
【0027】
ステアリング部20とヘッド部30との間に配置された記録媒体搬送部35の製造誤差や動作誤差等による記録媒体Pの搬送ずれが発生したとしても、ステアリング部20と記録媒体搬送部35との間に配置された第1検出部41によって検出された第1搬送ずれ量と、記録媒体搬送部35とヘッド部30との間に配置された第2検出部42によって検出された第2搬送ずれ量とに基づいて、第1検出部41の第1基準点を変更することで、記録媒体搬送部35の製造誤差や動作誤差等による影響を排除しつつ、ステアリング部20に近い位置に配置された第1検出部41の検出結果を用いてステアリング部20が制御されるので、ステアリング部20による搬送ずれの制御を行う際に発振状態に陥るのを防ぎ、画像形成の品質を向上させることができる。
【符号の説明】
【0028】
1…印刷装置、10…駆動ローラー、20…ステアリング部、21…ステアリングローラー、22…モーター、30…ヘッド部、35…記録媒体搬送部、41…第1検出部、42…第2検出部、50…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送方向に搬送させる駆動ローラーと、
前記記録媒体の前記搬送方向を可変する可変機構を有するステアリング部と、
前記駆動ローラーと前記ステアリング部との間に配置され、前記記録媒体に向けて機能液を塗布するヘッド部と、
前記ヘッド部と前記ステアリング部との間に配置された記録媒体搬送部と、
前記ステアリング部と前記記録媒体搬送部との間に配置され、前記ステアリング部を介して搬送された前記記録媒体の第1基準点に対する第1搬送ずれ量を検出する第1検出部と、
前記記録媒体搬送部と前記ヘッド部との間に配置され、前記記録媒体搬送部を介して搬送された前記記録媒体の第2基準点に対する第2搬送ずれ量を検出する第2検出部と、
制御部と、を備え、
前記制御部では、
前記第1検出部の前記第1搬送ずれ量と前記第2検出部の前記第2搬送ずれ量とに基づいて、前記第1基準点の位置を変更し、かつ、前記第1基準点の位置が変更された後に、前記第1検出部の前記第1搬送ずれ量に基づき前記ステアリング部を制御することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記ステアリング部は、前記搬送方向と交差する方向における前記記録媒体の位置を可変とし、
前記第1搬送ずれ量は前記搬送方向と交差する方向における前記記録媒体の前記第1基準点からのずれ量であり、前記第2搬送ずれ量は前記搬送方向と交差する方向における前記記録媒体の前記第2基準点からのずれ量であることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第1基準点の位置情報を保持する記憶部を備え、前記第1基準点の変更は、前記記憶部に記憶された前記第1基準点の位置情報を変更することを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
記録媒体を搬送方向に搬送させる駆動ローラーと、
前記記録媒体の前記搬送方向を可変する可変機構を有するステアリング部と、
前記駆動ローラーと前記ステアリング部との間に配置され、前記記録媒体に向けて機能液を塗布するヘッド部と、
前記ヘッド部と前記ステアリング部との間に配置された記録媒体搬送部と、
前記ステアリング部と前記記録媒体搬送部との間に配置され、前記ステアリング部を介して搬送された前記記録媒体の第1基準点に対する第1搬送ずれ量を検出する第1検出部と、
前記記録媒体搬送部と前記ヘッド部との間に配置され、前記記録媒体搬送部を介して搬送された前記記録媒体の第2基準点に対する第2搬送ずれ量を検出する第2検出部と、
を備えた印刷装置の制御方法であって、
前記第1検出部の前記第1搬送ずれ量と前記第2検出部の前記第2搬送ずれ量とに基づいて、前記第1基準点の位置を変更し、かつ、前記第1基準点の位置が変更された後に、前記第1検出部の前記第1搬送ずれ量に基づき前記ステアリング部を制御することを特徴とする印刷装置の制御方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−192655(P2012−192655A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59042(P2011−59042)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】