説明

印刷装置

【課題】本発明は、ハサミやカッターで証明写真を切り取る際に利用される切り取り基準線を、視認しやすく容易な方法で作成し、且つ切り取り時に誤差が生じた場合でも目立たなくする印刷装置を提供する。
【解決手段】四角形の印画領域を有する印刷物にオーバーコートを転写する転写手段を備える印刷装置において、転写手段は、印画領域を所定のサイズで切り取るための切り取り基準線としてオーバーコートの非転写領域を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関し、特に、証明写真の印刷時に切り取り基準線をオーバーコートの非転写領域で形成する昇華型プリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、証明写真の作成方法としては、人物をデジタルカメラで撮影し、その画像データを昇華型プリンタから印刷することが一般的である。例えば、街角に設置されているボックス型の自動証明写真撮影機では、機械の指示に沿ってユーザーが操作を行うと、デジタルカメラによる写真撮影と昇華型プリンタによる印刷が自動的に行われる。また、デジタルカメラと昇華型プリンタの普及に伴い、家庭でも手軽に証明写真を作成することが可能となっている。
【0003】
自動証明写真撮影機や家庭で作成された証明写真には、運転免許書、パスポート等の各種証明書で指定されたサイズにユーザーがカッターやハサミ等で切り取る作業が必要になる。通常は、白地の用紙に被写体が印刷されるので、印刷の境界を目印に切り取ることも可能であるが、証明写真の場合は、背景が白地なので境界が不明瞭で切り取り難い場合がある。
【0004】
例えば、図14(a)に示すように、印画領域と非印画領域の境界を切り取り基準線として証明写真の切り取りを行うケースがある。このケースだと写真背景が薄めの色だと印画領域と非印画領域の境界が分かりづらく、定規を正確に当て難く、結果、切り取り後に非印画領域が白く残って見栄えを損なうおそれがある。
【0005】
このような白地の用紙と白地の背景との境界が不明瞭になる問題を解決するために、人物の顔写真の印画領域の外側に切り取り基準線を印刷で作成する技術や、予め印刷用紙に切り取り基準線を作成しておく技術がある。
【0006】
例えば、特許文献1では、証明書写真シートに焼き付けられた写真パターンの欄外に所定サイズのカットマークを設けることで、ユーザーがカットマークに定規を当て、ガイドとしてカッターで切るサポートを行う点が開示されている。また、特許文献2では、証明写真を印刷する用紙の裏面に予め切り取り基準線を作成しておき、その切り取り基準線に合わせて人物の顔写真を印刷し、ユーザーが用紙裏面から切り取りを行う点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−27897号公報
【特許文献2】特開2004−90584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載された、写真パターンの欄外にカットマークを設ける方法は、定規を当ててカッターで切り取る場合には有効だが、ハサミを用いて切り取る場合には有効な技術ではない。また、定規を当てる基準となるカットマークが2点しかないので、定規を当てる際にズレが発生しやすい。その結果、切り取り後の証明写真の周辺部に非印画領域の白い部分が残ったり、切り取り後の証明写真の上下、左右のバランスが崩れ所望のサイズの証明写真が得られないと云う問題がある。
【0009】
例えば、図14(b)に示すように切り取り基準線を印刷で形成する場合、切り取り基準線は印刷で形成されているので、見やすく定規を正しく当てることが可能である。だが、切り取り中にカッターがずれる等によって、結果、切り取り後に切り取り基準線が残って見栄えを損なうことがある。
【0010】
また、上記特許文献2に開示された先行技術では、様々なサイズの証明写真に対応するために、印刷用紙の裏面に予め所定サイズの切り取り基準線が形成された印刷用紙が必要となると云う問題がある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、ハサミやカッターで証明写真を切り取る際に利用される切り取り基準線を、視認しやすく容易な方法で作成し、且つ切り取り時に誤差が生じた場合でも目立たなくする印刷装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の印刷装置は、四角形の印画領域を有する印刷物にオーバーコートを転写する転写手段を備える印刷装置において、前記転写手段は、前記印画領域を所定のサイズで切り取るための切り取り基準線として前記オーバーコートの非転写領域を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ハサミやカッターで証明写真を切り取る際に利用される切り取り基準線を、視認しやすく容易な方法で作成し、且つ切り取り時に誤差が生じた場合でも目立たなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る印刷装置の外観構成を示す図である。
【図2】カートリッジが装着された印刷装置を側面から見た場合の概略断面図である。
【図3】図1の印刷装置の機能構成の概略を示すブロック図である。
【図4】印刷装置における画像処理と印画処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】通常のオーバーコート転写の概念図であり、(a)は印刷完了後の写真、(b)は一様なオーバーコート転写用データ、(c)は印画領域全面を覆うようにオーバーコートが転写された写真である。
【図6】証明写真の切り取り基準線をオーバーコートの非転写領域で形成する場合のオーバーコート転写の概念図であり、(a)は印刷完了後の写真、(b)は切り取り基準線を非転写領域とするためのオーバーコート転写用データ、(c)はオーバーコート非転写領域で切り取り基準線が形成された写真である。
【図7】証明写真の切り取り基準線の形成方法の一例を示す図であり、(a)は証明写真上の所望の完成サイズ、(b)は証明写真上に形成された切り取り基準線、(c)は切り取り後の証明写真である。
【図8】オーバーコートの非転写領域で形成された切り取り基準線の視認性を説明するための図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る印刷装置のオーバーコート転写方法を説明するための図であり、(a)は写真部が光沢の場合、(b)は写真部が梨地の場合である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る印刷装置のオーバーコート転写方法を説明するための図である。
【図11】切り取り基準線のパターン例を示す図である。
【図12】切り取り基準線のパターン例を示す図である。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る印刷装置のオーバーコート方法を説明するための図である。
【図14】従来の証明写真の切り取り方法を示す図であり、(a)は印画領域と非印画領域との境界を切り取り線とする場合、(b)は印刷で形成した切り取り基準線(カットマーク)を切り取り線とする場合である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る印刷装置の外観構成を示す図である。
【0017】
印刷装置200は昇華型プリンタの一例である。印刷装置200は、図示のように、開閉可能に取り付けられた側面パネル206と、カートリッジ210を矢印220の方向に着脱可能(装着可能/取り出し可能)に構成されたハウジング201とを備える。ハウジング201の上部には、表示部202と操作部203が配置されている。
【0018】
表示部202はLCD等で構成され、印刷される画像データを表示したり、印刷に必要な設定データを入力するためのメニューを表示したりする。操作部203は、印刷装置200の電源のON/OFFを行うための電源スイッチ204と、表示部202に表示された各種メニューを選択するための選択スイッチ205とを備える。
【0019】
カートリッジ210には、インクが塗布されているインクリボン(不図示)と、印画紙としてのロール紙(ローラに巻かれた帯状の記録媒体)(不図示)とが収納されている。カートリッジ210を印刷装置200に装着する前の状態では、ロール紙はハウジング211により密閉された状態にあり、ユーザーがロール紙に直接触れることがないように構成されている。カートリッジ210を印刷装置200に装着された状態において、印刷時にはロール紙がカートリッジ210から引き出され、インクリボンに塗布されたインクが印刷装置200内のサーマルヘッド321(図2参照)によりロール紙に転写されて印画が行われる。
【0020】
次に、図2を用いて、印刷装置200が印刷処理を行う際に動作する各部の構成について簡単に説明する。
【0021】
図2は、カートリッジ210が装着された印刷装置200を側面から見た場合の概略断面図である。
【0022】
カートリッジ210に内包されたロール紙313bはローラ313aに巻き回されている。ロール紙313bは、印画時には、分離部材314により引き剥がされ、カートリッジ出口302からカートリッジ210の外部に引き出され、搬送路301を通過して印画位置311まで引き出される。
【0023】
カール取りローラ303a及びカール取り従動ローラ303bは、ロール紙313bの巻き癖を矯正する部品である。グリップローラ304aとピンチローラ304bは、ロール紙313bを介して対向する位置に配され、ロール紙313bの表裏面を挟持する。グリップローラ304aが紙面に向かって左回りに回転することで、カートリッジ210から引き出されたロール紙313bが、印画位置311に向かって搬送される。ロール紙313bの先端は、光学センサー323によって検知される。また、光学センサー323は、ロール紙313bの終端付近に設けられた穴を検出することで用紙を使い終ったことを判定する機能も兼ねている。
【0024】
なお、カートリッジ210が印刷装置200に装着された状態では、印画位置311に対応する位置においてインクリボン315を覆っていたカートリッジ210のハウジングは取り除かれている。そして、インクリボン315がカートリッジ210の外部に露出した状態となっている。
【0025】
プラテンローラ305は、印画位置311において、サーマルヘッド321との間で、インクリボン315とロール紙313bとを重畳させた状態を維持する。排紙ローラ306は、ロール紙313bを排紙方向に搬送する。排紙蹴りだしローラ307は、凹凸部を備えており、印画され切断されたロール紙313bを不図示の排紙ボックスに蹴りだす。排紙ローラ306と排紙蹴りだしローラ307は、ロール紙313bを介して対向する位置に配され、ロール紙313bの表裏面を挟持する。
【0026】
ギア列308は、カッターモータ322の動作を、カッター刃309とカッター受け刃310で構成されるカッターユニットに伝達するギア列である。カッター刃309とカッター受け刃310は、ロール紙313bの搬送路を挟んで、対向した位置に配置されている。また、カッター刃309とカッター受け刃310は、ギア列308により駆動され、はさみ状に上下の刃がすりあわされることにより、ロール紙313bを切断する。
【0027】
図3は、図1の印刷装置200の機能構成の概略を示すブロック図である。
【0028】
CPU410は、装置全体を制御したり、デジタル画像の処理を行ったり、USB通信の制御やLCDの制御を行う。フラッシュメモリ(Flash Memory)411は、本装置を制御するためのプログラムやLCDモニタ417に表示するGUI用のアイコンデータや画像合成を行うためのフレームデータ等を格納するメモリーである。SDRAM412は、プログラム動作時や画像処理時に使用したり、LCDモニタに表示するデータを格納するためのワークメモリーである。
【0029】
ヘッド・モータ制御IC413は、サーマルヘッド321や、LFモータ、UDモータを制御するICである。サーマルヘッド321は、印刷装置200のプリントヘッドである。このサーマルヘッド321には、1536個の発熱体が一列に配列されている。モータドライバ415は、LFモータ、UDモータを駆動するためのモータドライバである。
【0030】
LCDドライバ416は、LCDモニタ417を駆動するためのLCDドライバである。LCDモニタ417は、デジタル画像や本装置の操作を行うためのグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)を表示するためのLCDモニタである。
【0031】
USB_HUB418は、USBのプロトコルデータを振り分けるためのハブであり、カードメモリコントローラとUSB_Aコネクタに接続されている。カードメモリコントローラ419は、USBインターフェイスを有し、複合カードスロットに接続されている。
【0032】
次に、印刷装置200における画像処理と印画処理の流れについて図4を参照して説明する。
【0033】
図4は、印刷装置200における画像処理と印画処理の流れを示すフローチャートである。
【0034】
まず、印刷装置200内のフラッシュメモリ411上に画像データ(JPGデータ)が読み込まれる(ステップS101)。次に、CPU410は、読み込まれたJPGデータを伸張し、ユーザーが指定した所定の用紙サイズに対応した画像サイズにリサイズする(ステップS102)。この時点で画像データはYUVデータ形式に変換されている。
【0035】
次に、CPU410は、画像データに対して、エッジ強調、自動レベル補正等の画像補正を行う(ステップS103)。つづいて、CPU410は、YUVデータ形式から、昇華型プリンタでの印画データ形式であるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)への画像データ変換を行う(ステップS104)。ここまでが画像処理工程である。
【0036】
次に、CPU410は、順番に、イエロー(Y)の印画(ステップS105)、マゼンタ(M)の印画(ステップS106)、シアン(C)の印画(ステップS107)を行う。3色の印画工程では、各色の画像データの階調数に応じて昇華型プリンタのサーマルヘッド321の直線状に配列された発熱体への通電が行われ、その結果発生する熱によって、インクリボンから用紙受容層への染料の遷移が行われる。このとき、各色の染料が塗布されたインクリボンと用紙をサーマルヘッド321とプラテンローラ305で狭持し、インクリボンと用紙を合わせて一定速度で走行させることで1色分の印刷工程が終了する。その後、CPU410は、耐水性、耐光性、耐指紋性を向上させるためにオーバーコート転写処理を行う(ステップS108)。
【0037】
印刷物にオーバーコートを転写する技術は、インクジェット方式やレーザー・ビームプリント方式等には無い、昇華型方式の特有の技術である。そのオーバーコート転写処理された印刷物は、耐水性、耐光性、耐指紋性に優れており、公的機関の各種証明書用の証明写真として認められている。
【0038】
通常は、オーバーコート転写処理において、印刷領域を全面覆うように一様にオーバーコートが転写される。通常のオーバーコート転写の概念図を図5(a)〜図5(c)に示す。
【0039】
オーバーコート転写は、オーバーコート転写用データに基づき、サーマルヘッド321への通電によって行われる。このオーバーコート転写用データは、イエロー、マゼンタ、シアンの各色の画像データと同じ形式である。従って、印刷領域の全面を覆うように一様にオーバーコートを転写する際には、オーバーコート転写用データは、図2(b)に示すような全面一定階調のデータになる。通常は、例えば、256階調中の180階調とするオーバーコート転写用データが作成される。
【0040】
一方、本実施形態では、ステップS108において、オーバーコート転写用データに透明なオーバーコートの非転写領域を形成し、この非転写領域を証明写真の切り取り基準線とする。オーバーコートの非転写領域は、例えば、四角形の印画領域内部にあって、印画領域の各辺にそれぞれ平行な4本の直線で構成される。印画領域は、印刷物において、撮影により得られた画像が印画された領域である。切り取り基準線が透明ゆえに顔写真の印画領域内部に切り取り基準線を設けることができる。
【0041】
また、切り取り後の証明写真に切り取り基準線が切り取り誤差として残ったとしても、切り取り基準線の切り残しが目立たない出来上がりとなる。証明写真の切り取り基準線をオーバーコートの非転写領域で形成する場合の概念図を図6(a)〜図6(c)に示す。
【0042】
図6(b)に示すように、切り取り基準線となる非転写領域の階調値を0とし、オーバーコートを転写する転写領域の階調値を、例えば最大256階調中の180階調とするオーバーコート転写用データを作成する。
【0043】
次に、図6(a)に示すイエロー、マゼンタ、シアンの印画が完了した画像上に、そのオーバーコート転写用データに基づいてサーマルヘッドへの通電を行い、オーバーコートを転写する。これにより、図6(c)のような、切り取り基準線をオーバーコートの非転写領域で形成した証明写真が完成する。オーバーコートの非転写領域で形成される切り取り基準線には実線、破線、一点鎖線、二点鎖線が含まれる。また、切り取り基準線の4本の直線のうちの2本の直線が交わる交点には十字形状、直角形状が含まれる。
【0044】
顔写真に対する切り取り基準線の形成方法を図7(a)〜図7(c)を用いて説明する。
【0045】
顔写真の印刷に関しては、図7(a)に示すように、切り取り後の所望のサイズよりも上下左右にマージンを持った少し広範囲の顔写真が印刷される。オーバーコートの非転写領域で形成する切り取り基準線は、切り取り完了後の完成サイズを基に図7(a)に示す印刷した顔写真の内側に形成される(図7(b))。
【0046】
このように、所望の完成サイズに対して切り取り基準線を設けた場合、切り取り基準線の外側の切り捨て部分には顔写真の印画部分が残ることになる。だが、完成物としての証明写真は、図7(c)に示すように、周辺部分に白い切り残しや、切り取り基準線の切り残しが無くなり、見栄えが良くなる。
【0047】
オーバーコートの非転写領域で形成された切り取り基準線の視認性に関して図8を用いて説明する。
【0048】
写真に転写されたオーバーコート自体は数ミクロンの厚みを持っている。図8のように写真の断面図を見てみると、オーバーコート転写領域と非転写領域とでは、オーバーコートの厚み分段差が生じていることが分かる。この段差は、真上から見ると分かり難いが、斜めからある角度を持って見ると視認が可能である。また、オーバーコートの非転写領域の両隣にオーバーコート転写領域がある構造であることも切り取り時に視認性をアップさせている要因である。
【0049】
切り取り後の証明写真に切り取り基準線が切り取り誤差として残った場合には、このオーバーコートの転写領域−非転写領域−転写領域と云うサンドイッチ構造が、非転写領域−転写領域となり、片側の転写領域が無い構造になる。この非サンドイッチ構造だと人間の目には視認し難く、切り取り基準線が切り取り誤差として残っても目立たないメリットがある。
【0050】
第1の実施形態によれば、ハサミやカッターで証明写真を切り取る際に利用される切り取り基準線を、視認しやすく容易な方法で作成することが可能となる。さらに、証明写真の切り取り後に周辺部分に白い切り残しや、切り取り基準線の切り残しが発生することなく見栄えの良い切り取り完成物が得られる。また、様々なサイズの証明写真に対応した切り取り基準線を形成した証明写真の印刷が可能になる。
【0051】
本実施形態では、切り取り基準線をオーバーコートの非転写領域により印画しているが、このようなオーバーコートの転写方法は、ユーザーに非転写領域の印画が設定された場合にのみ行ってもよい。
【0052】
また、印刷装置が複数の印画モードを有しており、その中に照明写真を印画するための印画モードを有している場合は、ユーザーにより照明写真印画モードが設定されたときに、オーバーコートの非転写領域により切り取り基準線を印画するとよい。このとき、複数の印画モードの中に、照明写真印画モードのほかに複数の印画領域を有するモードがあったとしても、ただ単に複数の画像をレイアウトして印刷しているだけである可能性がある。そのため、照明写真印画モードのように、必ず切断することが想定されている印画モードのときにのみ、オーバーコートの非転写領域により切り取り基準線を印画し、他の印画モードのときは、複数の印画領域を有していても切断線を印画しない。
【0053】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る印刷装置のオーバーコート転写方法について図9(a)及び図9(b)を用いて説明する。なお、本発明の第2の実施の形態では、図1〜図4で説明した内容が上記第1の実施の形態と同じであり、第1の実施の形態と同様の部分については、同一の符号を用いてその説明を省略する。以下に、上記第1の実施の形態と異なる点のみを説明する。
【0054】
オーバーコートを一定の適切な熱エネルギーで転写させると転写後の表面が一様な光沢性のある仕上がりになる(第1の転写方法)。そのため、一般的に、昇華型プリンタで印刷された印刷物には、この光沢仕上げが取られている。
【0055】
一方、オーバーコートに過度の熱エネルギーをかけると表面が一様でなく荒れた状態となり、いわゆるマッド調の仕上がりとなる(第2の転写方法)。この状態の印刷物を完成とする製品も一部に存在する。この表面状態は、梨地とも呼ばれることがある。
【0056】
そこで、第2の実施形態では、図9(a)に示すように、切り取り後に証明写真として利用する部分には、光沢仕上げとなるように一定の適切な熱エネルギーをかけ、切り取り基準線をオーバーコートの非転写領域とする。切り取り後に証明写真として利用する部分は、オーバーコートの非転写領域で囲まれた部分となる。
【0057】
一方、切り取り後に捨ててしまう部分には、梨地仕上げとなるように過度の熱エネルギーをかける。切り取り後に捨ててしまう部分は、オーバーコートの非転写領域で囲まれた部分以外の部分となる。
【0058】
上述した転写処理を行って完成された印刷物は、オーバーコート転写(梨地)−オーバーコート非転写−オーバーコート転写(光沢)が隣り合った構造となり、写真切り取り時の視認性を更に向上させることが可能となる。
【0059】
また、図9(a)とは逆に、図9(b)に示すように、切り取り後に証明写真として利用する部分には、梨地仕上げとなるように過度の熱エネルギーをかけ、切り取り基準線をオーバーコートの非転写領域としてもよい。切り取り後に証明写真として利用する部分は、オーバーコートの非転写領域で囲まれた部分となる。一方、切り取り後に捨てる部分には、光沢仕上げとなるように一定の適切な熱エネルギーをかける。切り取り後に捨ててしまう部分は、オーバーコートの非転写領域で囲まれた部分以外の部分となる。
【0060】
上述した転写処理を行って完成された印刷物は、オーバーコート転写(光沢)−オーバーコート非転写−オーバーコート転写(梨地)が隣り合った構造となり、写真切り取り時の視認性を更に向上させることが可能となる。
【0061】
図4のステップS108のオーバーコート転写工程で部分的に熱エネルギーの投入量を変えるには、CPU410がオーバーコート転写用データの階調データを適切に変えることで実現可能である。
【0062】
第2の実施形態によれば、オーバーコート非転写領域で形成した切り取り基準線の切り取り時の視認性を向上させることができる。
【0063】
切り取り後に証明写真として利用する、オーバーコートの非転写領域で囲まれた部分を、光沢仕上げとなるようにオーバーコートを転写する(図9(a))か、梨地仕上げとなるように転写する(図9(b))かは、ユーザーが選択可能なように構成してもよい。ユーザーの選択に応じて、CPU410がオーバーコート転写用データの階調データを適切に変える。
【0064】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る印刷装置のオーバーコート転写方法について図10を用いて説明する。なお、本発明の第3の実施の形態では、図1〜図4で説明した内容が上記第1の実施の形態と同じであり、第1の実施の形態と同様の部分については、同一の符号を用いてその説明を省略する。以下に、上記第1の実施の形態と異なる点のみを説明する。
【0065】
本実施形態における印刷装置200では、図10に示すように、オーバーコートの非転写領域である切り取り基準線の異なるパターンを複数表示する。印刷装置200には、表示部202としてLCDモニタ417が搭載されている。このLCDモニタ417は、画像を選択したり、印刷装置200を操作するためのGUIを備える。第3の実施形態では、そのGUIを利用して切り取り基準線の複数のパターンの中から、ユーザーが操作部203を用いて所望の切り取り基準線を選択可能に構成されている。オーバーコートの非転写領域で形成される切り取り基準線には実線、破線、一点鎖線、二点鎖線が含まれる。また、切り取り基準線の4本の直線のうちの2本の直線が交わる交点には十字形状、直角形状が含まれる。
【0066】
切り取り基準線のパターンとしては、図11(a)、図11(b)、図12(a)、図12(b)、図12(c)に示すようなものが考えられる。ユーザーは、写真切り取り時にカッターと定規を用いるか、ハサミを用いるかで自分の使いやすい切り取り基準線を選択することが可能である。
【0067】
第3の実施形態によれば、複数の切り取り基準線の中から、ユーザーが所望の切り取り基準線を容易に選択することができる。
【0068】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係る印刷装置のオーバーコート方法について図13を用いて説明する。なお、本発明の第4の実施の形態では、図1〜図4で説明した内容が上記第1の実施の形態と同じであり、第1の実施の形態と同様の部分については、同一の符号を用いてその説明を省略する。以下に、上記第1の実施の形態と異なる点のみを説明する。
【0069】
本実施形態における印刷装置200では、図14に示すように、オーバーコートの非転写領域である切り取り基準線の幅を設定可能に構成されている。印刷装置200には、表示部202としてLCDモニタ417が搭載されている。このLCDモニタ417では、画像を選択したり、印刷装置200を操作するためのGUIを備える。第4の実施形態では、そのGUIを利用して、切り取り基準線の幅を設定することが可能に構成されている。
【0070】
証明写真の切り取りに用いるカッターやハサミは、大きさや種類により切り取りに要する幅が異なる。ユーザーが、利用するアイテムに応じて切り取り基準線の幅を設定することで切り過ぎや切り残し等の誤差を最小限に抑えることが可能となる。
【0071】
なお、上記第3と第4の実施形態を組み合わせた実施形態でも本発明の効果が得られることが云うまでもなく、第1と第3の実施形態を組み合わせた実施形態、第1と第4の実施形態を組み合わせた実施形態も本発明の適用範囲である。
【0072】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0073】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0074】
200 印刷装置
202 表示部
203 操作部
321 サーマルヘッド
410 CPU
411 フラッシュメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四角形の印画領域を有する印刷物にオーバーコートを転写する転写手段を備える印刷装置において、
前記転写手段は、前記印画領域を所定のサイズで切り取るための切り取り基準線として前記オーバーコートの非転写領域を設けることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記オーバーコートの非転写領域は、前記印画領域内にあって、前記印画領域の各辺にそれぞれ平行な4本の直線で構成されることを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記転写手段は、前記オーバーコートを転写する方法として、
前記オーバーコートが転写された後の表面が一様な光沢性のある仕上がりになるように一定の熱エネルギーをかけて前記オーバーコートを転写する第1の転写方法と、
前記オーバーコートが転写された後の表面が一様でなく荒れた状態になるように、前記一定の熱エネルギーよりも大きい熱エネルギーをかけて前記オーバーコートを転写する第2の転写方法と、を有しており、
前記オーバーコートの非転写領域で囲まれた部分が前記第1の転写方法により転写処理された場合は、前記オーバーコートの非転写領域で囲まれた部分以外の部分を前記第2の転写方法により転写処理し、
前記オーバーコートの非転写領域で囲まれた部分が前記第2の転写方法により転写処理された場合は、前記オーバーコートの非転写領域で囲まれた部分以外の部分を前記第1の転写方法により転写処理することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記オーバーコートの非転写領域で形成される前記切り取り基準線の異なるパターンを複数表示する表示手段と、
前記表示手段に表示された切り取り基準線を複数のパターンから選択可能にする操作手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記オーバーコートの非転写領域で形成される前記切り取り基準線の幅を設定可能にする操作手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記印画領域の各辺にそれぞれ平行な4本の直線には実線、破線、一点鎖線、二点鎖線が含まれ、当該4本の直線のうちの2本の直線が交わる交点には十字形状、直角形状が含まれることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記オーバーコートの非転写領域で囲まれた部分を、前記オーバーコートが転写された後の表面が一様な光沢性のある仕上がりになるように前記オーバーコートを転写するか、前記オーバーコートが転写された後の表面が一様でなく荒れた状態になるように前記オーバーコートを転写するかを選択する選択手段を有することを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記転写手段は、前記オーバーコートの非転写領域で囲まれた部分を、前記オーバーコートが転写された後の表面が一様な光沢性のある仕上がりになるように一定の熱エネルギーをかけて前記オーバーコートを転写し、前記オーバーコートの非転写領域で囲まれた部分の外側の部分を、前記オーバーコートが転写された後の表面が一様でなく荒れた状態になるように、前記一定の熱エネルギーよりも大きい熱エネルギーをかけて前記オーバーコートを転写することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記転写手段は、前記オーバーコートの非転写領域で囲まれた部分の外側の部分を、前記オーバーコートが転写された後の表面が一様な光沢性のある仕上がりになるように一定の熱エネルギーをかけて前記オーバーコートを転写し、前記オーバーコートの非転写領域で囲まれた部分を、前記オーバーコートが転写された後の表面が一様でなく荒れた状態になるように、前記一定の熱エネルギーよりも大きい熱エネルギーをかけて前記オーバーコートを転写することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項10】
複数の印画モードの中から印画モードを設定するための設定手段を有し、証明写真を印画するための印画モードが選択された場合に、前記転写手段は、前記基準線として前記オーバーコートの非転写領域を設けることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−232530(P2012−232530A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103709(P2011−103709)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】