説明

印刷設定受付プログラム、装置および方法

【課題】印刷設定を現在設定からユーザー設定へ変更した場合の設定内容の変化を容易に認識可能にする。
【解決手段】基準の濃度あるいは前記基準の濃度よりも薄い低濃度を選択するユーザーインターフェースによって印刷濃度の設定を受け付け、受け付けた前記印刷濃度の設定が前記低濃度である場合、特定の色を印刷する際の前記印刷濃度を前記低濃度よりも濃くするか否かを選択するための選択部を前記ユーザーインターフェースにおいて選択可能に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷設定受付プログラム、装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像の濃度を基準の濃度よりも薄くして印刷する技術(例えば、特許文献1)や、基準のインク密度から間引きした状態で印刷を行う技術(例えば、特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−66629号公報
【特許文献2】特開平7−125226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術においては、印刷濃度を基準の濃度より薄くして印刷を行うことが可能であるが、濃度を薄くすることによって特定の色の画像の判読が困難となることがあった。すなわち、印刷濃度を薄くする際には、印刷品質が低下することを許容するのが通常であるが、印刷濃度を薄くすることが印刷品質に与える影響や、印刷品質の低下が許容される程度は印刷対象の色毎に著しく異なる。例えば、通常、文字は黒で表現され、原稿内での強調部分を赤等の強調色で示されているが、これらの黒や赤を薄くしてしまうと、原稿の文字が判読不可能になり、また、印刷対象の作成者の強調意図等が現れない印刷結果が得られることがある。従って、印刷対象の全体において印刷濃度を薄くすると、著しく印刷品質を低下させてしまうことがある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、印刷濃度を薄くする場合の印刷品質の低下を抑制するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては、印刷濃度の設定として基準の濃度よりも薄い低濃度が選択された場合、特定の色については印刷濃度を低濃度よりも濃くする状態を選択できるようにユーザーインターフェースを構成する。従って、ユーザーは、当該ユーザーインターフェースにより、特定の色を印刷する際の印刷濃度として低濃度よりも濃い濃度とするか否かを選択することができる。この結果、ユーザーは、特定の色を低濃度で印刷することによって印刷品質が著しく低下する場合に、当該印刷品質の低下を抑制するか否かを選択することが可能になる。
【0006】
ここで、基準の濃度は、濃度を相対比較する際の基準となる濃度であれば良く、予め決められた基準の着色剤の使用量で印刷を行う場合の印刷濃度の設定である。低濃度は当該基準の濃度よりも薄い濃度であれば良く、低濃度として複数の選択肢を提供しても良い。例えば、基準の濃度よりも薄い「薄い濃度」とさらに薄い「より薄い濃度」とを選択可能としても良い。また、印刷濃度を調整するためには種々の技術を採用可能であり、例えば、単位面積あたりの着色剤の記録密度や単位記録回数あたりの着色剤の記録量を調整するなど、着色剤の使用量を調整する構成を採用可能である。
【0007】
また、具体的に印刷濃度を調整するための処理手法としても種々の手法を採用可能であり、印刷対象の画像データが示す色成分を着色剤の色毎の色成分に変換する際に参照する色変換テーブルとして、基準の濃度に対応する色変換テーブルと低濃度に対応する色変換テーブルとを用意する構成を採用可能である。さらに、単位記録面積当たりの着色剤の記録量を調整可能な構成(例えば、複数の量のインク滴を吐出可能なインクジェットプリンター)において、基準の濃度の設定において単位記録面積当たりに記録される着色剤の量と低濃度の設定において単位記録面積当たりに記録される着色剤の量とを変化させる構成としても良い。むろん、特定の色について印刷濃度を低濃度よりも濃くする場合にも、色変換テーブルや単位記録面積当たりに記録される着色剤の量を変化させる構成としても良い。なお、色を特定する階調値によって濃度は異なるため、基準の濃度と低濃度とにおける濃度は同じ階調値についての印刷結果について比較すればよい。
【0008】
ユーザーインターフェース制御機能においては、印刷濃度の設定が基準の濃度あるいは低濃度のいずれであるのかに応じてユーザーインターフェースの選択部による選択が可能であるか否かを切り替えることができればよい。すなわち、低濃度がユーザーに選択された場合に、特定の色を印刷するための印刷濃度を低濃度よりも濃くする状態と、特定の色についても低濃度で印刷する状態とを選択部によって選択可能に構成する。また、基準の濃度がユーザーに選択された場合には、選択部による選択は実行できない状態とする構成を採用可能である。
【0009】
特定の色は、印刷濃度を薄くすることが印刷品質に与える影響が他の色と比較して相対的に大きい色や、印刷品質の低下が許容される程度が他の色と比較して相対的に小さい色であればよい。従って、文字を表現するための黒や強調表示をするための赤等を特定の色とすることができる。むろん、特定の色は、予め決められていても良いし、ユーザーが選択可能であっても良いし、原稿の内容や種類、重要度等に応じて決められてもよい。
【0010】
さらに、印刷濃度の設定が低濃度である場合に、特定の色を印刷するための印刷濃度が低濃度よりも濃くなるように補助する構成としても良い。例えば、特定の色について低濃度よりも濃くするための選択がなされた状態を、選択部の初期設定とする構成を採用しても良い。この構成によれば、ユーザーが選択部における選択操作を行わなければ特定の色を印刷する際の印刷濃度として低濃度よりも濃い濃度で確定される。従って、ほぼ自動的に特定の色の印刷濃度として低濃度よりも濃い濃度が選択されるように構成することが可能である。
【0011】
むろん、ここでは、ユーザーインターフェースを表示することなく自動的に設定しても良い。例えば、基準の濃度あるいは前記基準の濃度よりも薄い低濃度を選択するユーザーインターフェースによって印刷濃度の設定を受け付ける印刷濃度受付機能と、受け付けた前記印刷濃度の設定が前記低濃度である場合、特定の色を印刷する際の前記印刷濃度を前記低濃度よりも濃くするように設定する特定色濃度決定機能とをコンピューターに実現させる印刷設定受付プログラムを構成してもよい。この構成によれば、特定の色を印刷するための印刷濃度が低濃度よりも濃くなるように自動的に設定することができる。
【0012】
さらに、設定された印刷濃度に応じた印刷処理を行うための構成として、単位記録面積当たりの着色剤の記録量を調整することによって印刷濃度を調整する構成としても良い。例えば、印刷対象の画像を示す画像データに基づいて単位記録面積あたりの着色剤の基準記録量を特定する構成を想定する。この構成において、印刷濃度の設定が低濃度であり、かつ、特定の色は当該低濃度よりも濃い濃度とする設定がなされている場合、基準記録量で特定の色を印刷し、基準記録量より少量の記録量で特定の色以外の色を印刷する構成とする。この結果、特定の色については低濃度よりも濃く印刷し、特定の色以外の色については低濃度で印刷することが可能になる。
【0013】
さらに、印刷対象の内容に応じて印刷濃度を調整しても良い。例えば、文字とグラフィックスとのいずれかまたは双方について基準記録量で印刷を行う構成としても良い。すなわち、アウトラインデータやベクトルデータ等の描画データで構成される文字やグラフィックスは原稿内で重要な情報を担う場合が多く、また、ラスターデータで画像を表現する写真等と比較して着色剤の減量による影響を受けやすい。そこで、印刷濃度として低濃度が設定された場合であっても、文字やグラフィックスについては低濃度とせず、低濃度よりも濃い濃度とすれば、印刷品質の低下を効果的に抑制することが可能になる。
【0014】
さらに、本発明のように、基準の濃度よりも薄い低濃度を印刷濃度として設定した場合に、特定の色を印刷するための印刷濃度を低濃度よりも濃くするか否かを選択するユーザーインターフェースを表示部に表示する手法は、装置や方法としても適用可能である。また、以上のようなプログラム、装置、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、複数の装置を組み合わせることによって実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、コンピューターと印刷装置が協働することによって本発明にかかるプログラム、装置、方法を提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、印刷装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】印刷設定受付装置の構成を示すブロック図である。
【図2】印刷処理を示すフローチャートである。
【図3】ユーザーインターフェースを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)印刷設定受付装置の構成:
(2)他の実施形態:
【0017】
(1)印刷設定受付装置の構成:
図1は、本発明の一実施形態にかかるコンピューター10の構成を示すブロック図である。コンピューター10は、図示しないRAM,ROM,CPU等を備える制御部20と記録媒体30とを備えており、制御部20はROMや記録媒体30に記録されたプログラムを実行することができる。本実施形態においては、このプログラムとしてプリンタードライバー21やアプリケーションプログラム等を実行可能である。
【0018】
また、コンピューター10は、図示しないインターフェースを備えており、コンピューター10には当該インターフェースを介して入力部50と表示部51とプリンター52とが接続される。入力部50はユーザーの入力内容に対応した信号を出力するマウスやキーボード等の装置であり、制御部20は当該信号に基づいてユーザーの入力内容を特定する。表示部51は制御部20が出力する信号に応じて任意の画像を表示するディスプレイ等の装置であり、本実施形態においてはプリンタードライバー21やアプリケーションプログラムの機能を利用するためのユーザーインターフェースが当該表示部51に表示される。プリンター52は制御部20が出力する印刷データに基づいて印刷データが示す画像を印刷する印刷装置である。
【0019】
なお、記録媒体30には、印刷対象を印刷する際に単位面積当たりに記録するインクの記録量を特定するための色変換テーブル31が記録されている。本実施形態にかかるプリンター52は、インクジェットプリンターであり、単位記録面積に対して記録するインクの量を複数段階で調整することが可能である。すなわち、一回当たりのインク滴の吐出量を複数段階で調整可能である。色変換テーブル31は、印刷対象を示す画像データから当該印刷対象を印刷する際に一回当たりのインク滴の吐出量を示すデータを生成する際に参照されるデータである。例えば、256階調のRGBデータをインク色毎の256階調のCMYKデータに変換する際に参照される色変換テーブルや、256階調のCMYKデータをインク滴の大きさ毎の階調値に変換する色変換テーブル、これらの色変換テーブルの組み合わせによって色変換テーブル31が構成される。なお、ここでは、プリンター52によって3段階のインク滴を吐出可能であって一回のインク吐出回数あたりに4段階の階調表現が可能な構成例を想定し、3段階のインク滴をインク量が多い順に大中小と呼ぶ。
【0020】
プリンタードライバー21は、印刷対象を示す画像データから印刷データを生成してプリンター52に対して出力することによって印刷を実行するモジュールである。アプリケーションプログラム等によって印刷対象となる文章や画像等が作成されて印刷が実行されると、プリンタードライバー21が起動されて印刷処理が実行される。本実施形態において、プリンタードライバー21は印刷設定受付プログラムおよび印刷制御プログラムを含んでおり、制御部20がプリンタードライバー21による処理を実行することで、コンピューター10が印刷設定受付装置および印刷制御装置として機能する。
【0021】
プリンタードライバー21は、印刷処理の過程で印刷設定受付処理を実行するために印刷濃度受付部21aとUI(ユーザーインターフェース)制御部21bとを備え、印刷制御処理を実行するために基準記録量特定部21cと印刷制御部21dとを備えている。図2は、プリンタードライバー21による印刷処理を示すフローチャートである。制御部20は、アプリケーションプログラム等によって印刷対象の印刷開始指示がなされるとプリンタードライバー21を起動して図2に示す印刷処理を開始する。印刷処理が開始されると、制御部20は、プリンタードライバー21の処理により、表示部51に印刷設定を受け付けるためのユーザーインターフェースを表示する(ステップS100)。当該ユーザーインターフェースにおいて、制御部20は、ユーザーの入力内容を受け付けている。すなわち、入力部50からユーザーの選択内容に応じた信号が出力されると、制御部20は、当該信号に基づいてユーザーの選択を受け付ける。
【0022】
印刷濃度受付部21aは、ユーザーインターフェースを介して印刷濃度の設定を受け付ける機能を制御部20に実現させるモジュールである。印刷濃度は、基準の濃度と当該基準の濃度より薄い低濃度とに分類され、制御部20は、ユーザーが低濃度を選択したか否かを判定する(ステップS105)。なお、本実施形態において、基準の濃度はプリンター52においてデフォルト設定された基準のインク使用量で印刷を行う場合の印刷濃度である。また、低濃度は当該基準の濃度より薄い濃度である。
【0023】
ステップS105において、制御部20は、印刷濃度受付部21aの処理により、表示部51に制御信号を出力して印刷濃度を選択するためのユーザーインターフェースを表示する。図3A,3Bは、表示部51に表示されるユーザーインターフェースの一例を示す図である。同図3A,3Bにおいては、印刷設定の設定内容を特定するためのウィンドウWにおいて、印刷設定をタブ表示している。ユーザーはマウス等で所望のタブを選択した後に、各タブに分類された印刷設定項目の設定内容を選択することができる。本例において印刷濃度についての印刷設定項目は「基本設定」タブに分類されており、プルダウンリストによって「基準濃度」「低濃度」のいずれかを選択することが可能である。すなわち、制御部20は、印刷濃度受付部21aの処理により、入力部50の出力信号に基づいて、ユーザーが選択した印刷濃度が「基準濃度」「低濃度」のいずれであるのかを特定する。
【0024】
UI制御部21bは、ステップS105において受け付けた内容に応じてユーザーインターフェースの表示内容を変更させる機能を制御部20に実現させるモジュールである。ステップS105において受け付けた印刷濃度が低濃度である場合、制御部20は、ユーザーインターフェースにおいて特定の色を印刷する際の印刷濃度を低濃度よりも濃くするか否かを選択するための選択部をユーザーインターフェース上でアクティブ表示する(ステップS110)。すなわち、ステップS105において受け付けた印刷濃度が低濃度である場合、制御部20は選択部を表示するとともに、入力部50の出力信号に基づいて当該選択部において特定の色を濃くするか否かの選択を受け付ける。
【0025】
なお、本実施形態においては、ステップS110にてユーザーインターフェースをアクティブ表示する際に、特定の色を印刷する際の印刷濃度を低濃度よりも濃くするための選択がなされた状態を選択部における初期設定としてユーザーインターフェースを表示する。従って、ステップS110にてアクティブ表示されたユーザーインターフェースの初期設定を変更することなくユーザーが設定を確定させると、黒が濃い状態となる。このため、基準濃度よりも薄い低濃度がユーザーによって選択されている場合であっても、ほぼ自動的に黒を濃い状態となるように設定することができる。
【0026】
一方、ステップS105において受け付けた印刷濃度が低濃度でない場合、制御部20は、特定の色を濃くする状態と濃くしない状態とのいずれかを選択するユーザーインターフェースをグレーアウトさせて表示する(非アクティブ状態で表示する)。この場合、制御部20は、特定の色を濃くするか否かの選択を受け付けない。なお、図3Aは、黒を特定の色とし、黒を濃くするか否かを選択する選択部S(チェックボックス)がアクティブ表示されている状態を示している。また、図3Bは、黒を濃くするか否かを選択する選択部Sがグレーアウト表示されていることを点線で示している。この状態においては、黒を濃くするか否かを選択することはできない。
【0027】
制御部20においては、図3A,3Bに示すユーザーインターフェースを利用したユーザーの入力操作を受け付けており、印刷濃度や黒を濃くするか否かの選択の他、用紙サイズなど他の印刷設定項目の設定内容や、印刷開始指示を受け付けることが可能である。そして、制御部20は、ユーザーインターフェースに表示された印刷開始ボタンによって印刷開始指示がなされたか否かを判定し(ステップS115)、ステップS115にて印刷開始指示がなされたと判定されなければステップS105以降の処理を繰り返す。ステップS115にて印刷開始指示がなされたと判定された場合、制御部20は、その時点でユーザーインターフェースにて入力されている印刷設定項目の設定内容を印刷時の設定内容として確定する。この後、制御部20は、ステップS120以降にて印刷制御処理を実行する。
【0028】
基準記録量特定部21cは、印刷対象の画像を示す画像データに基づいて単位記録面積あたりの着色剤の基準記録量を特定する機能を制御部20に実現させるモジュールである。すなわち、制御部20は、画像データを取得し、色変換テーブル31を参照して当該画像データから一回のインク吐出当たりのインク滴の大きさを特定する(ステップS120)。より具体的には、制御部20は、色変換テーブル31を参照して画像データにおける256階調のRGB値をインク色毎の256階調のCMYK値に変換する。さらに、色変換テーブル31を参照して、当該CMYK値を大中小のインク滴毎の階調値に変換し、大中小のインク滴毎の階調値に基づいてハーフトーン処理を行って、インク吐出可能タイミング毎に大中小のインク滴を記録するか否かを示すデータを作成する。すなわち、単位記録面積あたりに大中小のインク滴を記録するか否かを特定したデータを作成する。本実施形態においては、当該データによって記録されるインク量が基準記録量となる。
【0029】
次に、制御部20は、印刷制御部21dの処理により、当該データに基づいてプリンター52を制御して印刷対象を印刷する。本実施形態において、制御部20は、印刷制御部21dの処理において、ユーザーインターフェースによって設定された印刷濃度に応じて基準記録量を補正する。このために、制御部20は、ステップS100〜S115にて設定された印刷濃度が基準の濃度と低濃度とのいずれであったかを判定する(ステップS125)。設定された印刷濃度が基準の濃度である場合、制御部20はステップS130〜S140をスキップする。そして、制御部20は、ステップS145において印刷処理を実行し、ステップS120にて生成されたデータに基づいてプリンター52を制御して、印刷対象を印刷させる。すなわち、基準記録量の状態で印刷対象を印刷させる。
【0030】
一方、ステップS125にて、設定された印刷濃度が低濃度であったと判定された場合、さらに、制御部20は、選択部において「黒を濃くする」設定が選択されていたか否かを判定する(ステップS130)。ステップS130にて、「黒を濃くする」設定が選択されていたと判定された場合、制御部20は、黒以外の色についてインクの記録量を基準記録量から減量する(ステップS135)。すなわち、黒以外の色については、ユーザーインターフェースで設定された印刷濃度である低濃度を適用するため、黒以外の色について基準記録量を減量する補正を行う。本実施形態においては、基準記録量を減量するため、元の画像データ(ステップS120の変換前の画像データ)において黒(RGBの階調値が全て0)以外の色であった画素について基準記録量を減量する。例えば、大インクを中インク、中インクを小インク、小インクをインクを記録しない状態で印刷するように、ステップS120にて生成されたデータを変換する。
【0031】
一方、ステップS130にて、「黒を濃くする」設定が選択されていたと判定されない場合、制御部20は、インクの記録量を減量する(ステップS140)。すなわち、黒および黒以外の色の双方について、ユーザーインターフェースで設定された印刷濃度である低濃度を適用するため、全色について基準記録量を減量する。表1は、印刷濃度が基準の濃度である場合と低濃度である場合のインク滴の大きさを黒と黒以外の色について示した表である。なお、印刷濃度が低濃度である場合には、さらに、黒を濃くする設定がなされている場合と黒を濃くする設定がなされていない場合とについて示している。
【0032】
以上の処理によれば、表1に示すように、印刷濃度として基準の濃度が設定されている場合、全ての色についてインク滴は大中小のいずれかが使用され、画像データの階調値に応じて適宜大中小のインク滴が選択されて印刷される。一方、印刷濃度として低濃度が設定されている場合、黒および黒以外の色の少なくとも一方を印刷する際に大インクが使用されない。従って、基準の濃度と比較してインクの使用量を抑制することができる。さらに、低濃度かつ黒を濃くするように印刷濃度が設定されている場合、黒は大中小のインク滴のいずれかで印刷され、黒以外の色は中小インクのいずれかで印刷される。従って、印刷に使用されるインク量を抑制しながらも、文字など、重要な情報を担うことが多い黒のオブジェクトについては印刷品質を低下させることなく印刷を行うことが可能になる。
【表1】

【0033】
(2)他の実施形態
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、基準の濃度よりも薄い低濃度を印刷濃度として設定した場合に、特定の色を印刷するための印刷濃度を低濃度よりも濃くするか否かを選択するユーザーインターフェースを表示部に表示することができる限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。
【0034】
印刷濃度を調整するための構成は、基準記録量を減量する構成以外にも各種の構成を採用可能である。例えば、印刷濃度の設定を低濃度とし、特定の色を低濃度よりも濃くする設定がなされている場合に、基準記録量で特定の色を印刷し、基準記録量を増量して特定の色以外の色を印刷する構成としても良い。また、印刷濃度毎に異なる色変換テーブル31を予め用意しておき、印刷濃度に応じた色変換テーブルを参照して色変換を行う構成としても良い。むろん、RGBデータをCMYKデータに変換する際に印刷濃度に応じた差が生じるように構成してもよいし、256階調のCMYKデータからインク滴の大きさ毎の階調値に変換する際に印刷濃度に応じた差が生じるように構成してもよい。さらに、ハーフトーン処理を行う過程において印刷濃度に応じた差が生じるように構成してもよい。
【0035】
さらに、印刷濃度を3段階以上に調整できるように構成してもよい。例えば、3段階以上に印刷濃度を選択可能に構成し、印刷濃度のいずれか一つを基準の濃度とする。そして、当該基準の濃度よりも薄い濃度を低濃度とみなす。低濃度に分類される濃度は2段階以上であっても良い。例えば、低濃度に分類される濃度が2段階ある場合、「基準濃度」、「薄い濃度」、「より薄い濃度」を印刷濃度の選択肢として提供する構成を採用可能である。
【0036】
さらに、特定の色のオブジェクトのうち、属性によって印刷濃度を変動する構成としても良い。例えば、印刷濃度が低濃度に設定され、かつ、特定の色の印刷濃度を低濃度よりも濃くする設定がなされている場合に、特定の色の文字については印刷濃度を濃くするが、特定の色であっても文字以外のオブジェクトについては低濃度で印刷する構成を採用しても良い。また、特定の色のグラフィックスについては印刷濃度を濃くするが、特定の色であっても文字以外のオブジェクトについては低濃度で印刷する構成を採用しても良い。この構成によれば、文字やグラフィックスにおいて印刷濃度を低濃度にすることによって印刷品質が著しく低下することを防止することが可能である。
【0037】
なお、上述の実施形態においては、印刷濃度の設定内容に応じて特定の色を濃くするか否かを選択する選択部がアクティブ表示される構成としたが、選択部を表示することなく自動的に設定を行っても良い。例えば、図3A,3Bに示す選択部Sに関連する表示を省略し、印刷濃度が低濃度に設定された場合には自動的に黒を濃くする設定にする構成を採用しても良い。すなわち、図2に示すフローチャートにおいて、ステップS105,S110,S130,140を省略し、ステップS125にて低濃度と判定された場合にステップS135を実行する構成としてもよい。
【0038】
さらに、上述の実施形態においては、選択部において、特定の色について印刷濃度を低濃度よりも濃くするか否かを選択する構成としたが、色以外の要素によって低濃度よりも濃くする対象を指定しても良い。例えば、印刷濃度を低濃度よりも濃くする画像内の位置を指定する構成としても良い。
【符号の説明】
【0039】
10…コンピューター、20…制御部、21…プリンタードライバー、21a…印刷濃度受付部、21b…UI制御部、21c…基準記録量特定部、21d…印刷制御部、30…記録媒体、31…色変換テーブル、50…入力部、51…表示部、52…プリンター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準の濃度あるいは前記基準の濃度よりも薄い低濃度を選択するユーザーインターフェースによって印刷濃度の設定を受け付ける印刷濃度受付機能と、
受け付けた前記印刷濃度の設定が前記低濃度である場合、
特定の色を印刷する際の前記印刷濃度を前記低濃度よりも濃くするか否かを選択するための選択部を前記ユーザーインターフェースにおいて選択可能に表示するユーザーインターフェース制御機能と、
をコンピューターに実現させる印刷設定受付プログラム。
【請求項2】
前記ユーザーインターフェース制御機能は、受け付けた前記印刷濃度の設定が前記低濃度である場合、
前記特定の色を印刷する際の前記印刷濃度を前記低濃度よりも濃くするための選択がなされた状態を前記選択部の初期設定として前記ユーザーインターフェースを表示する、
請求項1に記載の印刷設定受付プログラム。
【請求項3】
前記請求項1または請求項2のいずれかに記載の印刷設定受付プログラムによって受け付けた印刷設定に従って印刷装置を制御する印刷制御プログラムであって、
印刷対象の画像を示す画像データに基づいて単位記録面積あたりの前記着色剤の基準記録量を特定する基準記録量特定機能と、
前記印刷濃度の設定が前記低濃度であり、前記ユーザーインターフェースによって前記特定の色を印刷する際の前記印刷濃度を前記低濃度よりも濃くする設定がなされている場合、
前記画像における特定の色については前記基準記録量、
前記画像における特定の色以外の色については前記基準記録量より少量の記録量で印刷を行うように前記印刷装置を制御する印刷制御機能と、
を備える印刷制御プログラム。
【請求項4】
前記印刷制御機能は、前記画像における特定の色の文字とグラフィックスとのいずれかまたは双方については前記基準記録量で印刷を行うように前記印刷装置を制御する、
請求項3に記載の印刷制御プログラム。
【請求項5】
基準の濃度あるいは前記基準の濃度よりも薄い低濃度を選択するユーザーインターフェースによって印刷濃度の設定を受け付ける印刷濃度受付工程と、
受け付けた前記印刷濃度の設定が前記低濃度である場合、
特定の色を印刷する際の前記印刷濃度を前記低濃度よりも濃くするか否かを選択するための選択部を前記ユーザーインターフェースにおいて選択可能に表示するユーザーインターフェース制御工程と、
を含む印刷設定受付方法。
【請求項6】
基準の濃度あるいは前記基準の濃度よりも薄い低濃度を選択するユーザーインターフェースによって印刷濃度の設定を受け付ける印刷濃度受付手段と、
受け付けた前記印刷濃度の設定が前記低濃度である場合、
特定の色を印刷する際の前記印刷濃度を前記低濃度よりも濃くするか否かを選択するための選択部を前記ユーザーインターフェースにおいて選択可能に表示するユーザーインターフェース制御手段と、
を備える印刷設定受付装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−272045(P2010−272045A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125005(P2009−125005)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】