説明

印字ヘッド及びその製造方法

【課題】製作時に印字ワイヤに直接、熱が加わることを防止し、熱脆性により該印字ワイヤが脆くなることを防止できるとともに、印字ワイヤをアーマチュアに固定する際の作業性を向上させることができるプリンタの印字ヘッド及びその製造方法を提供する。
【解決手段】アーマチュア8と印字ワイヤ9の起端部9Aとの間に介在されたパイプ20の内周面に、印字ワイヤ9を固定するための第1のロー材21を塗布し、かつ該パイプ20の外周面に、アーマチュア8に固定するための第2のロー材22を塗布することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーマチュアに支持される印字ワイヤにより印字処理を行う印字ヘッド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、印字ワイヤの先端をプラテン上の印字媒体に衝突させて印字を行うドットプリンタの印字ヘッドが知られている。
この印字ヘッドは、複数のコアを磁性材により一体に形成し、これらのコアのそれぞれにコイルを嵌合し、先端に印字ワイヤが固着された複数のアーマチュアを、バネ材を介してコアに対向配列した構成である。そして、特定のコイルを励磁することによりアーマチュアを駆動して、該印字ワイヤの先端をプラテン上の印字媒体に衝突させて印字を行うものである。
【0003】
ところで、最近、プリンタの高速化が進み、それに伴い搭載する印字ヘッドも小型化・精密化されてきた。ドットインパクトプリンタの場合、インクリボンを介し用紙を打点する印字ワイヤも軽量化・小径化傾向になっている。コア及びコイルを使用して磁気回路を形成する印字ヘッドの場合に、より良い品質を継続させるためには印字ワイヤとアーマチュアのロー付け方法が重要なポイントになる。ロー材を溶かすためには高温加熱が必要であり、印字ワイヤに熱がかかると熱脆化が生じ、折損の原因となる。特に小径化の印字ワイヤにおいてはロー付け時、細心の注意を要する。
【0004】
また、昨今プリンタ全体として価格競争が激しく、ドットプリンタ用印字ヘッドもコストダウンの要求が強かった。印字ヘッド1台に24個(それ以上の印字ヘッドもある)使用しているアーマチュアASSYについては特に注目される。ロー付け作業を実施する上で、重要なファクターは温度・時間及び照射位置である。大量生産であるが故にロー付け作業を失敗すると、ワイヤ折損が多発し、大問題に発展する。
一般的には、アーマチュアに印字ワイヤが直接、ロー付けされているため、ロー付け温度の管理・加熱焦点位置の設定が容易でなく、少しのバラツキでも印字ワイヤに直接限度以上の温度が加熱されると熱脆性を起こし、印字中にワイヤ折損になり、ドット抜け等の印字障害を発生させるという問題点があった。
【0005】
そして、このような問題を解決するために、印字ヘッドにおいてアーマチュアと印字ワイヤとをパイプ等を介在して固着する技術が、以下の特許文献1〜3に示されている。
特許文献1に示されるドットプリンタヘッドでは、コアと対向配置されるアーマチュアの先端に金属製のパイプをロー材により溶接した後に、該パイプの内周に印字ワイヤの後端を接着剤により接着した構成が示されている。
【0006】
特許文献2に示されるドットプリンタ用端子では、パイプ内に印字ワイヤとなる細線を挿入し、パイプから細線が突出する箇所に、互いを固着するためのロー材が設けられる構成である。
【0007】
特許文献3に示される印字ヘッドアーマチュア組立品の接合構造では、アーマチュアと印字ワイヤの間にレバーがあり、レバーにはロー材のたまり部を設け、レバーと印字ワイヤとのロー付け強度を向上させる構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−15848号公報
【特許文献2】特開昭57−142371号公報
【特許文献3】実開昭58−185446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記に示される特許文献の中で、特許文献1・2にはアーマチュアと印字ワイヤとの間にパイプが介在される構成が示されており、さらに特許文献1には、アーマチュアとパイプとをロー材により互いに溶接する構成が示されている。
そして、この特許文献1では、アーマチュアの先端に金属製のパイプをロー材により溶接した後に、該パイプの内周に印字ワイヤの後端を接着剤により接着するという2つの作業、すなわちアーマチュアとパイプとをロー材で固定する作業、該パイプと印字ワイヤとを接着剤で固定する作業が必要であり、これによってその取付作業性が悪いという問題があった。
また、特許文献3にも、アーマチュアと印字ワイヤの間のレバーにロー材のたまり部を設け、レバーと印字ワイヤとのロー付け強度を向上させる構成が示されているが、ロー材を溶融させる際の熱が、直接、印字ワイヤに加わるために、熱脆性により該印字ワイヤが脆くなるという問題が未だ解決されずにいた。
【0010】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、製作時に印字ワイヤに直接、熱が加わって熱脆性により該印字ワイヤが脆くなることを防止でき、かつ印字ワイヤをアーマチュアに固定する際の作業性を向上させることができるプリンタの印字ヘッド及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。すなわち、本発明の印字ヘッドは、アーマチュアに支持される印字ワイヤにより印字処理を行う印字ヘッドであって、前記アーマチュアと前記印字ワイヤの起端部との間にはパイプが介在され、該パイプの内周面と前記印字ワイヤの間に該印字ワイヤを固定するための第1のロー材が塗布され、かつ前記パイプの外周面に、前記アーマチュアに固定するための第2のロー材が塗布されていることを特徴としている。
また、本発明の印字ヘッドの製造方法は、アーマチュアに支持される印字ワイヤにより印字処理を行う印字ヘッドの製造方法であって、前記印字ワイヤの起端部または該印字ワイヤが挿入されるパイプの内周面に第1のロー材を塗布する工程と、前記パイプに前記印字ワイヤを挿入する工程と、前記アーマチュアと前記パイプの外周面の間に第2のロー材を塗布する工程と、前記第1のロー材及び前記第2のロー材に前記パイプの外側から加熱する工程とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、アーマチュアと印字ワイヤの起端部との間に介在されたパイプの内周面と印字ワイヤの間に、前記印字ワイヤを固定するための第1のロー材が塗布され、かつ該パイプの外周面に、前記アーマチュアに固定するための第2のロー材が塗布されているので、該パイプに印字ワイヤを通し、かつ該パイプをアーマチュアに取り付けた状態で、これらパイプの内周面と外周面にある第1・第2のロー材を共に加熱することで、これら印字ワイヤ、パイプ、アーマチュアが互いに固定される。
このとき、印字ワイヤに直接、熱が加わると、その熱により該印字ワイヤに熱脆化が生じるになることがあるが、本発明では、該印字ワイヤとアーマチュアとの間にパイプが介在されているので、該印字ワイヤに直接ピンポイントで加熱されることはなく、熱により該印字ワイヤが脆化することが防止される。
また、本発明では、パイプを介してパイプの内周面と外周面にある第1・第2のロー材を共に加熱することで、これら印字ワイヤ、パイプ、アーマチュアを同時に連結することができるので、該パイプを介在させたとしても、該印字ワイヤをアーマチュアに固定する際の作業性が低下することも防止される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係わる印字ワイヤとアーマチュアとの連結部分を示す断面図である。
【図2】図1をII−IIに沿って切断した平面図である。
【図3】印字ワイヤの起端部に形成されたロー材注入溝を示す正面図である。
【図4】本発明に係わる印字ヘッド100の全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の印字ヘッド100及びその製造方法に係る実施例について、図1〜図4を参照して説明する。
図4は本発明に係わる印字ヘッド100の全体図であって、符号1はアーマチュアASSY、符号2はアーマチュアASSY1の駆動源となる可動部である。
【0015】
可動部2は、磁路を構成するコア3と、該コア3に巻かれたコイル4と、吸引力を発生させるための永久磁石5と、コア3の端部位置にスペーサ6を挟んで設置されかつ内側に位置する可動端7Aが図中、矢印(イ)で示す上方(前方)に付勢されたばね部材7と、から構成される。
また、前記ばね部材7の内側に位置する可動端7A上には、アーマチュアASSY1が固定されている。アーマチュアASSY1は、アーマチュア8の図中上部位置にてパイプ20(後述する)を介して印字ワイヤ9が固定されることで構成される。
また、バネ部材7とアーマチュア8は溶接されており、永久磁石5の磁界でスペーサ6、バネ部材7、アーマチュア8、コア3を通る磁束回路が形成されている。
【0016】
そして、このような可動部2では、印字が行われない場合、永久磁石5の磁束によってばね部材7がコア3に吸引され、また、印字が行われる場合、図示しない印字回路からの制御信号により、永久磁石5の吸引力を打ち消す電流がコイル4に供給されることにより、ばね部材7の可動端7Aが開放されて、該ばね部材7の付勢力によってアーマチュアASSY1が図中上方(前方)に移動する。
【0017】
一方、可動部2の上方(前方)位置には、案内手段としてガイドフレーム10が固定されている。このガイドフレーム10は、中央部にアーマチュアASSY1の印字ワイヤ9が挿通されるガイド孔11が、ガイド通路として形成されるものである。このガイド孔11は、印字ワイヤ9を中間部で保持する中間ガイド12を有し、その上端に、印字ワイヤ9の先端部を外部に至らせるピンガイド13を形成している。そして、ピンガイド13の図中上方(前方)位置にて、該ピンガイド13から突出した印字ワイヤ9が、図示しないインクリボン、用紙を介してブラテンを打撃して印字が行われる。また、印字されている時点では、コイル4への通電は停止されていることから、打撃の際の反力と、永久磁石5の吸引力とによって、アーマチュアASSY1が引き戻されて、コア3に吸着される。
【0018】
次に、本発明に係るアーマチュア8と印字ワイヤ9との連結構造について図1〜図3を参照して説明する。
図1及び図2は、アーマチュア8と印字ワイヤ9との連結部分における断面図であって、この図において符号20で示すものはパイプである。このパイプ20は金属で形成された筒状体であって、その内周面には、前記印字ワイヤ9を固定するための第1のロー材21が塗布され、かつその外周面には、前記アーマチュア8に固定するための第2のロー材22が塗布されている。
【0019】
第1のロー材21は、図3に示すように、前記印字ワイヤ9の起端部9Aにて周方向に沿うように形成された凹状のロー材注入溝23内に塗布され、塗布後に加熱することで固化される。
第2のロー材22は、アーマチュア8の先端部とパイプ20の外周面との接合部上側に塗布されるものであって、塗布後に加熱することで固化される。また、このロー材22は、図2に示されるように上面視、半月状に形成される。
【0020】
そして、上記のようなアーマチュアASSY1では、パイプ20に印字ワイヤ9を通し、かつ該パイプ20をアーマチュア8に取り付けた状態で、これらパイプ20の内周面と外周面に塗布したロー材21・22を共に加熱することで、これら印字ワイヤ9、パイプ20、アーマチュア8が互いに結合される。このとき、印字ワイヤ9に直接、熱が加わると、その熱により該印字ワイヤ9が熱脆化することがあるが、本実施例では、該印字ワイヤ9とアーマチュア8との間にパイプ20が介在されているので、該印字ワイヤ9に直接、ピンポイントで加熱されることはなく、熱により該印字ワイヤ9が熱脆化することが防止される。
【0021】
次に、本発明に係るアーマチュア8と印字ワイヤ9との連結部分の組み立て手順について説明する。
まず、印字ワイヤ9の起端部9Aに形成されたロー材注入溝23内にロー材21を塗布した後で、その起端部9Aをパイプ20に通し、アーマチュア8と共にロー付け治具(図示略)にセットする。次に、アーマチュア8とパイプ20の間にロー材22を塗布した後、これらパイプ20の外側からロー材21・22を共に加熱してロー付けする。このとき、パイプ20が無い状態で印字ワイヤ9とアーマチュア8をロー付けする場合、ロー付け温度・加熱ポイントがばらつくと、ワイヤに高温がかかり、印字ワイヤ9に熱脆化が生じることとなる。しかし、本実施例の場合、パイプ20を被せてあるので、印字ワイヤ9に直接、ピンポイントで加熱されることはなく、印字ワイヤ9に熱脆化が生じることにはならない。
【0022】
その後、印字ワイヤ9が取り付けられたアーマチュア8と、バネ部材7とを溶接により固定した後、該印字ワイヤ9を中間ガイド12、ピンガイド13に通し、ガイドフレーム10に取り付ける。それをマグネットユニット(永久磁石5、コイル12、コア3等各部品を組み立てたもの)に搭載すれば、印字ヘッド100が完成する。
そして、印字ヘッド100では、永久磁石5の磁界により、スペーサ6、バネ部材7、アーマチュア8、コア3を通る磁束回路が形成され、印字の際に、逆磁界が形成するようにコイル12に電流が流れると、コア3に接触していたバネ部材7が図中、上方(前方)に移動することで、印字ワイヤ9がピンガイド13から飛び出し用紙への印字処理がなされる。
【0023】
以上詳細に説明したように本実施例に示される印字ヘッド100及びその製造方法によれば、アーマチュア8と印字ワイヤ9の起端部9Aとの間に介在されたパイプ20の内周面に、前記印字ワイヤ9を固定するための第1のロー材21を塗布し、かつ該パイプ20の外周面に、アーマチュア8に固定するための第2のロー材22を塗布するようにした。これにより、該パイプ20に印字ワイヤ9を通し、かつ該パイプ20をアーマチュア8に取り付けた状態で、これらパイプ20の内周面と外周面に注入した第1・第2のロー材21・22をパイプ20の外側から共に加熱することで、これら印字ワイヤ9、パイプ20、アーマチュア8が互いに固定される。
【0024】
このとき、印字ワイヤ9に直接、熱が加わると、その熱により該印字ワイヤ9に熱脆化が生じることがあるが、この印字ヘッド100では、該印字ワイヤ9とアーマチュア8との間にパイプ20が介在されているので、該印字ワイヤ9に直接ピンポイントで加熱されることはなく、熱により該印字ワイヤ9に熱脆化が生じることが防止される。
また、この印字ヘッド100では、パイプ20を介して該パイプ20の内周面と外周面にある第1・第2のロー材21を共に加熱することで、これら印字ワイヤ9、パイプ20、アーマチュア8を同時に連結することができるので、該パイプ20を介在させたとしても、該印字ワイヤ9をアーマチュア8に固定する際の作業性が低下することも防止される。
【0025】
なお、本実施例では、印字ワイヤ9の起端部9Aの外周面にはロー材注入溝23を形成したが、これに限定されず、パイプ8の内周面にロー材注入溝23を形成し、該ロー材注入溝23と印字ワイヤ9の起端部9Aとの間にロー材21を注入しても良い。また、これに限定されず、このようなロー材注入溝23を、印字ワイヤ9の起端部9Aの外周面及びパイプ8の内周面の双方に形成しかつ互いが対向するように配置しても良い。
【0026】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0027】
8 アーマチュア
9 印字ワイヤ
9A 起端部
20 パイプ
21 ロー材(第1のロー材)
22 ロー材(第2のロー材)
23 ロー材注入溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーマチュアに支持される印字ワイヤにより印字処理を行う印字ヘッドであって、
前記アーマチュアと前記印字ワイヤの起端部との間にはパイプが介在され、
該パイプの内周面と前記印字ワイヤの間に該印字ワイヤを固定するための第1のロー材が塗布され、かつ前記パイプの外周面に、前記アーマチュアに固定するための第2のロー材が塗布されていることを特徴とする印字ヘッド。
【請求項2】
前記印字ワイヤの起端部にはロー材注入溝が形成され、このロー材注入溝と前記パイプの内周面との間に前記第1のロー材が塗布されていることを特徴とする請求項1に記載の印字ヘッド。
【請求項3】
前記パイプの内周面にはロー材注入溝が形成され、このロー材注入溝と前記印字ワイヤの起端部との間に前記第1のロー材が塗布されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の印字ヘッド。
【請求項4】
アーマチュアに支持される印字ワイヤにより印字処理を行う印字ヘッドの製造方法であって、
前記印字ワイヤの起端部または該印字ワイヤが挿入されるパイプの内周面に第1のロー材を塗布する工程と、
前記パイプに前記印字ワイヤを挿入する工程と、
前記アーマチュアと前記パイプの外周面の間に第2のロー材を塗布する工程と、
前記第1のロー材及び前記第2のロー材に前記パイプの外側から加熱する工程とを備えることを特徴とする印字ヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記印字ワイヤの起端部にロー材注入溝が形成され、該ロー材注入溝と前記パイプの内周面との間に前記第1のロー材を塗布することを特徴とする請求項4に記載の印字ヘッドの製造方法。
【請求項6】
前記パイプの内周面にロー材注入溝が形成され、該ロー材注入溝と前記印字ワイヤの起端部との間に前記第1のロー材を塗布することを特徴とする請求項4又は5に記載の印字ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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