説明

印字媒体

【課題】印字の際にインクリボンに皺が発生することなく高い印字品質での印字が可能であるインクリボンと記録材とを積層してなる記録媒体を提供する。
【解決手段】ロールシート3Aにおいて、インクリボン3Gのインク層3Cと常圧では微小粘着力を有する記録材3Hの微粘着層3Dとを、所定の高圧にて圧接することにより、相互に全面で接着するように構成する。ベースフィルム3B側から加熱印字された際、インク層3Cとベースフィルム3Bの接着力はインク層3Cと微粘着層3Dとの粘着力よりも小さくなり、インクリボン3Gが記録材3Hから剥離されると、加熱印字されたインク層3Cの部分は記録材3H側に転写されるとともに、加熱印字されなかったインク層3Cの部分はベースフィルム3G側に残存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクリボンと記録材とを一体に構成した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1では、ラベル用テープの幅方向両端部近傍の印字領域外に微弱粘着材層を形成しておき、テーププリンタにセットして印字を行う際に、圧接ローラを介してラベル用テープとインクリボンとを接着してずれないようにするとともに、その接着状態でサーマルヘッドによりインクリボンを介してラベル用テープに文字等の印字を行うテープカセットが記載されている。
【特許文献1】特開2005−280008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来のテープカセットにおけるラベル用テープは、その幅方向両端部近傍の印字領域外に形成した微弱粘着材層によりインクリボンと接着一体化されており、サーマルヘッドによる印字時にインクリボンがずれることなく印字を行うことが可能なものである。しかしながら、インクリボンはラベル用テープの両端部で接着されているだけであるから、ラベル用テープの幅が広くなると、インクリボンにサーマルヘッドを当接して印字を行う際に、インクリボンに皺が発生し易くなる。かかる皺部分で印字が行われると、印字品質は極端に低下してしまう。それは、インクリボンの皺部分では、インクリボン同士が重なりあって均一に熱が伝わらなかったり、インクリボンの加熱部分とラベル用テープの加熱部分とが加熱の際にずれて加熱部分が非加熱部分と接触し加熱部分の温度低下が起きたりするからである。あるいは、溶融したインクがラベル用テープの目的の場所に転写されなかったり、転写済みでインク層のないインクリボンの部分を加熱することになったりもする。
【0004】
本発明は、前記従来における問題点を解消するために為されたものであり、記録材に形成した微粘着層を介して記録材の全面にインクリボンを接着することにより、印字の際にインクリボンに皺を発生することなく高い印字品質で文字等の印字を行うことが可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため請求項1に係る印字媒体は、ベースフィルムの一面にインク層が接着されたインクリボンと、記録シートにおける一面の全面に渡って常圧では微小粘着力を有する透明な微粘着層が塗布形成された記録材とを備え、前記インクリボンのインク層と前記記録材の微粘着層とは、所定の高圧にて圧接され、インク層とベースフィルムとの接着力よりも小さい粘着力を介して相互に接着されており、前記ベースフィルム側から加熱印字された際、前記インク層とベースフィルムの接着力はインク層と微粘着層の粘着力よりも小さくなり、前記ベースフィルム側から加熱印字された後、前記インクリボンが前記記録材から剥離されたとき、前記インク層の内、加熱印字された部分は記録材側に転写され、加熱印字されなかった部分は、ベースフィルム側に残存することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に係る印字媒体では、インクリボンのインク層と常圧では微小粘着力を有する記録材の微粘着層とが、所定の高圧にて圧接され、インク層とベースフィルムの接着力よりも小さい粘着力により、相互の全面で接着されているので、印字の際にインクリボンに皺を発生することなく高い印字品質で文字等の印字を行うことが可能となる。
また、ベースフィルム側から加熱印字された際、加熱された部分のインク層とベースフィルムの接着力はインク層と微粘着層との粘着力よりも小さくなるので、総じて印字後に記録材からインクリボンを剥がすことが容易となる。
更に、インクリボンが記録材から剥離されると、加熱印字されたインク層の部分が記録材側に転写されるとともに、加熱印字されなかったインク層の部分はベースフィルム側に残存するように構成されているので、記録材の微粘着層上にインク層からなる明確な印字像を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明に係る印字装置について、本発明を具体化した実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、本実施形態に係る印字装置の概略構成について図1に基づき説明する。図1は本実施形態に係る印字装置の前側からの外観斜視図である。
【0008】
図1に示すように、印字装置1は、本体筐体2と、後側上端縁部に開閉自在に取り付けられた透明樹脂製の上カバー5によって上部が覆われている。また、上カバー5の前側にフロントカバー6が形成されている。
【0009】
このフロントカバー6の上端部(図1の中央部)には、押下することによりロールシート3A(図2を参照)を一定量搬送方向に排出するフィードボタン7B、押下することによってフロントカバー6で覆われるカッタユニット8(図4参照)を駆動させてロールシート3Aを切断するカットボタン7C、電源ボタン7A等が配置されている。また、フロントカバー6の前端部には、印字されたロールシート3Aを外部に排出するシート排出口6Aが形成されている。
【0010】
次に、本実施形態に係る印字装置の内部構成について図2乃至図4に基づき説明する。
まず、図2に基づいて、印字装置にロールシートが装着された状態の内部構成について説明する。図2は本実施形態に係る印字装置にロールシートが装着された状態で上カバーを開けて示す右側上方からの斜視図である。
【0011】
図2に示すように、本体筐体2には、ロールシートホルダ収納部4が設けられている。このロールシートホルダ収納部4には、ロールシート3Aが巻回されたロールシートホルダ3が収納されている。
【0012】
また、図2に示すように、ロールシートホルダ3は位置決め保持部材12を備えている。かかる位置決め保持部材12の外側方向に断面略矩形状の取付部材13が突設されている。印字装置1は、ロールシートホルダ収納部4の搬送方向に対して略垂直方向の一方の側端縁部(図2中、右側側端縁部)に、ロールシートホルダ3を支持するホルダ支持部材15が設けられている。このホルダ支持部材15には、上方に開口すると共に幅方向両側に開口する正面視略縦長コの字状の第1位置決め溝部16が形成されている。
【0013】
また、図2及び図3に示すように、ロールシート収納部4の前側の左右側壁部には、内側に弾性変形可能に形成された各弾性係止片14、14が設けられている。また、各弾性係止片14、14には、外側方向に突出する側断面三角形の係止突起14Aが形成され、上カバー5の開口部側端縁部に形成された各係合凹部17、17(図2では、一方の係合凹部17が図示されている。図3に他方の係合凹部17が図示されている。)に係合可能に構成されている。
【0014】
上カバー5を閉じる際、上カバー5を前側方向に回動させることにより、各弾性係止片14と各係合凹部17とが係合し、上カバー5が閉じられた状態で保持される。また、上カバー5の前端中央部に形成される凹み部5Aに指を掛けて後側方向に回動させることによって、各弾性係止片14と各係合凹部17との係合が外れ、上カバー5を開くことが可能となる。
【0015】
次に、印字装置にロールシートが外された状態での内部構成について図3に基づいて説明する。図3は本実施形態に係る印字装置にロールシートが外された状態で上カバーを開けて示す上方からの斜視図である。
【0016】
図3に示すように、ロールシートホルダ収納部4の底面部には、ホルダ支持部材15の内側基端部から対向する側面部基端部まで搬送方向に対して略垂直に平面視横長四角形の位置決め凹部4Aが所定深さ(本実施形態では、約1.5〜3mmの深さである。)で形成されている。また、位置決め凹部4Aのホルダ支持部材15の内側基端部には、位置決め保持部材12の下端縁部から略直角内側方向に延出される不図示のシート判別部に対向する部分が、位置決め凹部4Aよりもさらに所定深さ(本実施形態では、約1.5〜3mmの深さである。)だけ深くなるように形成された搬送方向に縦長の平面視長四角形の判別凹部4Bが形成されている。
【0017】
また、判別凹部4Bには、プッシュ式のマイクロスイッチ等から構成される。6個のシート判別センサP1、P2、P3、P4、P5、P6がL字状に設けられている。これにより、ロールシートホルダ3に装着されたロールシート3Aの種別、ロールシート幅等を検出する。
【0018】
また、図3に示すように、ロールシートホルダ収納部4におけるホルダ支持部材15の他方側端縁部には、本体筐体2の側端縁部(図3中、左側端縁部)に連結しつつ、上カバー5を支持するスライド部材29が設けられている。かかるスライド部材29はスライドしながら上カバー5を支持するとともに、後述するサーマルヘッド31(図4を参照)の上下動操作等を行う。
【0019】
次に、印字装置の印字機構について図4に基づき説明する。図4はロールシートホルダを本実施形態に係る印字装置に装着した状態を示す側断面図である。
図4に示すように、ロールシートホルダ収納部4の下側には、外部のパーソナルコンピュータ等からの指令により各機構部を駆動制御する制御回路部が形成された制御基板36が設けられている。また、サーマルヘッド31の下側には、電源回路部が形成された電源基板37が設けられている。
【0020】
また、フロントカバー6の前端部下側には、図4に示すように、プラテンローラ26が回転自在に軸支されている。このプラテンローラ26の下側にサーマルヘッド31が設けられている。ロールシート3Aはプラテンローラ26とサーマルヘッド31の間で印字されている。
【0021】
前述したように、サーマルヘッド31は、スライド部材29により上下動操作等が行われる。スライド部材29をスライドさせて上カバー5を閉じることにより、サーマルヘッド31が上方に移動され、ロールシート3Aをプラテンローラ26に押圧付勢して印字可能な状態になる。一方、スライド部材29によって上カバー5を開くことに連動して、サーマルヘッド31が下方に移動し、プラテンローラ26から離間する。
【0022】
図4に示すように、上カバー5を閉じることによって、挿入口18から挿入されたロールシート3Aはプラテンローラ26とサーマルヘッド31の間にある印刷位置まで送り出される。また、サーマルヘッド31が上方に移動されることにより、ロールシート3Aがプラテンローラ26に押圧付勢されて印字を行う。
即ち、サーマルヘッド31がロールシート3Aのインクリボン3Gの印字面に当接し、インクリボン3Gを加熱することにより文字等の印字が行われる。また、印字されたロールシート3Aは、サーマルヘッド31の下流側に設けられているカッタユニット8まで搬送され、カッタユニット8で切断されることになる。切断されたロールシート3Aは、シート排出口6Aから印字装置1の外部に排出される。
【0023】
次に、ロールシート3Aの構成について図5に基づいて説明する。図5は、本実施形態に係る印字装置に用いられるロールシートの構成を模式的に示す説明図である。ここでは、熱転写ラベルロールシートを例として説明する。
【0024】
図5に示すように、ロールシート3Aは、インクリボン3Gと、インクリボン3Gのインク層3Cの裏面側に透明の微粘着層3Dを介して記録材3Hが貼り合わされて構成されている。
インクリボン3Gは、ベースフィルム3Bの一面に剥離可能なインク層3Cが塗布されて構成される。記録材3Hは、記録シート3Eにおける一面の全面に渡って透明な微粘着層3Dが塗布形成され、他面には粘着剤付きの剥離紙3Fが貼り付けされて構成されている。
【0025】
透明の微粘着層3Dは、主原料は水性の高分子樹脂からなり、常圧では微粘着性を有している。尚、常圧とは1気圧程度のことをいう。
また、インクリボン3Gのインク層3Cと記録材3Hの微粘着層3Dとは、約2トンの高圧によって圧着されおり、微粘着層3Dの粘着力により相互に全面接着されている。インク層3Cと微粘着層3Dの粘着力は、ベースフィルム3Bとインク層3Cとの接着力より弱い。
尚、約2トンという高圧下で圧着されたインクリボン3Gと記録材3Hとは比較的強固に接着されている。しかしながら、一旦記録材3Hからインクリボン3Gを剥がした後は、微粘着層3Dの常圧における粘着力はほとんどないため、記録材3Hとインクリボン3Gとが再び接着することはない。また、インクリボン3Gを剥がした後の微粘着層3Dに対し、常圧において微粘着層3D自体の粘着性によって何か別の物が貼り付くことは無い。
また、ロールシート3Aは、印字する際、サーマルヘッド31がインクリボン3Gのベースフィルム3B側から当たるように、インクリボン3Gのベースフィルム3Bが内側になるように巻回されている(図4を参照)。
【0026】
次に、ロールシート用いて文字等の印字を行う過程について図6に基づいて説明する。図6は、本実施形態におけるロールシート用いて文字等の印字を行う過程を模式的に示す説明図である。
図6に示すように、インクリボン3Gと記録材3Hとが貼り合わされたロールシート3Aに対しては、サーマルヘッド31を使用して文字等の印字が行われる。まず、サーマルヘッド31は、インクリボン3Gのベースフィルム3B側に当接され、加熱印字される。
【0027】
具体的には、ロールシート3Aのインク層3Cは、サーマルヘッド31によって加熱され、インク層3Cのインクが溶融する。この際、インク層3Cとベースフィルム3Bの接着力は、サーマルヘッド31の加熱により、インク層3Cと透明な微粘着層3Dとの粘着力より小さくなるため、インク層3Cは記録シート3Eに転写される。
また、インク層3Cは、透明な微粘着層3Dの粘着力に基づき記録シート3Eに転写される。インク層3Cが転写される際、ロールシート3Aのベースフィルム3B側から見て正像として視認できるように転写されている。
【0028】
図6に示すように、インクリボン3Gのインク層3Cが記録シート3Eに転写された後、インクリボン3Gは使用者の手により記録材3Hから剥がされる。この場合、図6の示すように、インクリボン3Gのインク層3Cにおいて、サーマルヘッド31により加熱印字された部分は記録材3Hに転写するが、サーマルヘッド31により加熱印字されなかった部分は、ベースフィルム3Bとの接着力の方が大きいので、ベースフィルム3B側に残存し、ベースフィルム3Bと同様に記録材3Hから剥離される。
また、印字されたロールシート3Aは、カッタユニット8で切断された後、熱転写ラベルとしてシート排出口6Aから外部に排出される(図4を参照)。この熱転写ラベルは、剥離紙3Fを剥がすことにより、剥離紙3Fから転着した粘着剤を介して対象物に貼り付けることができる。
【0029】
ロールシート3Aは、熱転写ラベルロールシートを用いても良く、熱転写ラベルカードロールシートを用いても良い。熱転写カードロールの場合、粘着剤付きの剥離紙が貼り付けされていないが、他の部分の構成は熱転写ラベルロールの場合と同じである。
【0030】
以上詳細に説明したように、本実施形態に係るロールシート3Aでは、インクリボン3Gのインク層3Cと常圧では微小粘着力を有する記録材の微粘着層3Dとが、インク層3Cとベースフィルム3Bの接着力よりも小さい粘着力により、相互の全面で接着されているので、印字の際にサーマルヘッド31に摺接してインクリボン3Gに皺を発生することなく高い印字品質で文字等の印字を行うことが可能となる。
また、ベースフィルム3B側から加熱印字された際、加熱された部分のインク層3Cとベースフィルム3Bの接着力はインク層3Cと微粘着層3Dとの粘着力よりも小さくなるので、総じて印字後に記録材3Hからインクリボン3Gを剥がすことが容易となる。
更に、インクリボン3Gが記録材3Hから剥離されると、加熱印字されたインク層3Cの部分が記録材3H側に転写されるとともに、加熱印字されなかったインク層3Cの部分はベースフィルム3B側に残存するように構成されているので、記録材3Hの微粘着層3D上にインク層3Cからなる明確な印字像を形成することができる。
インクリボン3Gを剥がした後の記録材3Hの微粘着層3Dには粘着力は殆どないため、何か他の物が貼り付くことはなく、通常の印刷物として扱うことができる。
【0031】
尚、本発明は前記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、インクリボンを剥がしやすくするために、記録材の幅より狭い幅のインクリボンを用い、前記したように記録材とインクリボンとを微粘着剤を介して高圧にて圧着する方式で全面接着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態に係る印字装置の前側からの外観斜視図である。
【図2】印字装置にロールシートが装着された状態で上カバーを開けて示す右側上方からの斜視図である。
【図3】印字装置にロールシートが外された状態で上カバーを開けて示す左側上方からの斜視図である。
【図4】ロールシートホルダを印字装置に装着した状態を示す側断面図である。
【図5】印字装置に用いられるロールシートの構成を模式的に示す説明図である。
【図6】本実施形態におけるロールシート用いて文字等の印字を行う過程を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
3A ロールシート
3B ベースフィルム
3C インク層
3D 微粘着層
3E 記録シート
3F 剥離紙
3G インクリボン
3H 記録材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルムの一面にインク層が接着されたインクリボンと、
記録シートにおける一面の全面に渡って常圧では微小粘着力を有する透明な微粘着層が塗布形成された記録材とを備え、
前記インクリボンのインク層と前記記録材の微粘着層とは、所定の高圧にて圧接され、インク層とベースフィルムとの接着力よりも小さい粘着力を介して相互に接着されており、
前記ベースフィルム側から加熱印字された際、前記インク層とベースフィルムの接着力はインク層と微粘着層の粘着力よりも小さくなり、
前記ベースフィルム側から加熱印字された後、前記インクリボンが前記記録材から剥離されたとき、前記インク層の内、加熱印字された部分は記録材側に転写され、加熱印字されなかった部分は、ベースフィルム側に残存することを特徴とする印字媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−226606(P2009−226606A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71268(P2008−71268)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】