説明

印字方法

【課題】吐出手段の小型化と印字速度の高速化とを図ることが可能な印字方法を提供すること。
【解決手段】記録媒体4に向けてインク滴3を吐出することにより、記録媒体4に印字を行う印字方法であって、インク吐出手段1によって吐出方向zの中心軸Oに沿って吐出された導電成分を含むインク滴3を、それぞれが中心軸Oを挟んで吐出方向z前方に位置する電磁石21a,22a,23a,24aと吐出方向z後方に位置する電磁石21b,22b,23b,24bとを含む複数対の電磁石を有する偏向手段2を通過させ、インク滴3が偏向手段2を通過する際に、複数対の電磁石21a,21b,22a,22b,23a,23b,24a,24bのうち選択された対の電磁石を用いて磁界を発生させておくことにより、インク滴3の進行方向を中心軸Oから偏向させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に対してインク滴を吐出することにより印字を行う印字方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来の印字方法の一例を示している。同図に示された印字方法においては、吐出手段91によってインク滴92を記録媒体93に向けて吐出することにより印字がなされる。吐出手段91は、方向yにおいて等ピッチで配列された複数のノズルを有しており、複数のインク滴92を吐出方向zに吐出可能に構成されている。インク滴92が記録媒体93に到達すると、記録媒体93の表面にインク滴92の大きさに応じた点が印される。吐出手段91からは、方向yに並べられた複数のノズルから複数のインク滴92を同時に吐出することができる。記録媒体93は、図外の紙送り機構などによって方向xに沿って一定速度で送り出される。方向xに送り出される記録媒体93に対して、方向yに沿って並ぶ複数のインク滴92の吐出を等間隔で行うことにより、記録媒体93に任意の文字や記号などを印字することができる。
【0003】
しかしながら、印字しようとする文字や記号は方向x,yについての2次元形状を有する。このため、文字や記号を印字するには、記録媒体93を送り出しながら、複数のインク滴92の吐出を複数回おこなう必要がある。たとえば、複数のノズルを有する吐出手段91は、方向y寸法が比較的大となる。これは、この印字方法を実現するプリンタなどの小型化を阻害する要因となる。また、ある吐出を終えた後には、記録媒体93が定められた距離だけ送り出されるまで、次の吐出が待たされることとなる。これは、印字速度の向上を妨げる要因となる。これらの問題は、印字しようとする文字や記号の解像度を高めるほど顕著となっていた。
【0004】
【特許文献1】特開平10−119290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、吐出手段の小型化と印字速度の高速化とを図ることが可能な印字方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供される印字方法は、記録媒体に向けてインク滴を吐出することにより、上記記録媒体に印字を行う印字方法であって、インク吐出手段によって吐出方向中心軸に沿って吐出された導電成分を含むインク滴を、それぞれが上記吐出方向中心軸を挟んで上記吐出方向前方に位置する電磁石と上記吐出方向後方に位置する電磁石とを含む複数対の電磁石を有する偏向手段を通過させ、上記インク滴が上記偏向手段を通過する際に、上記複数対の電磁石のうち選択された対の電磁石を用いて磁界を発生させておくことにより、上記インク滴の進行方向を上記吐出方向中心軸から偏向させることを特徴としている。
【0007】
このような構成によれば、上記吐出手段として上記インク滴を吐出するたとえばノズルを1つだけ備えればよい。これは、上記印字方法を実現するためのたとえばプリンタの小型化に適している。また、上記偏向手段によって上記インク滴の進行方向を上記吐出方向中心軸に対して直角である方向に2次元的に偏向させることが可能である。このため、上記記録媒体を一定方向に送り出す必要が軽減される。さらに、上記電磁石の作動状態を切り替えることは、制御回路などによって瞬時になされる。したがって、印字速度の向上を図るのに適している。
【0008】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0010】
図1および図2は、本発明に係る印字方法の一例を示している。本実施形態の印字方法は、吐出手段1および偏向手段2を用いてインク滴3を連続的に吐出することにより紙などの記録媒体4に印字する方法である。
【0011】
吐出手段1は、インク滴3を吐出するものであり、たとえばインクタンク11およびノズル12を備えている。インクタンク11には、インク滴3の元となるインクが貯蔵されている。このインクは、導電性の液体に顔料などを混入させたものである。ノズル12は、インクタンク11とパイプを介して接続されている。図外の圧力付与手段などを駆動源として、ノズル12からインク滴3が吐出される。吐出されたインク滴3は、吐出方向zに延びる中心軸Oに沿って進行する。上記圧力付与手段を断続的に動作させることにより、吐出手段1は、複数のインク滴3をごく短い時間をおいて連続して吐出することができる。
【0012】
偏向手段2は、中心軸Oに沿って進行してきたインク滴3の進行方向を任意に偏向させるためのものであり、本実施形態においては、4対の電磁石21a,21b,22a,22b,23a,23b,24a,24bを備えている。1対の電磁石21a,21bは、図2によくあらわれているように、吐出方向zと直角である方向xにおいて中心軸Oを挟んで配置されている。電磁石21aは、吐出方向z前方に位置しており、電磁石21bは、吐出方向z後方に位置している。1対の電磁石22a,22bは、1対の電磁石21a,21bに対して吐出方向zおよび方向yを含む平面について鏡面対称となる配置とされている。図1に示すように、2対の電磁石23a,23b,24a,24bは、2対の電磁石21a,21b,22a,22bを中心軸O周りに90度回転させたものに相当する。
【0013】
偏向手段2によるインク滴3の進行方向の偏向について、1対の電磁石21a,21bを作動させた場合を例に図2を参照しつつ説明する。電磁石21bがN極、電磁石21aがS極となるように通電すると、磁場Mが生じる。磁場Mは、比較的磁力が強い部分を中心軸Oが貫通する格好となっている。また、磁場Mは、方向x,zの双方に対して傾き、かつ方向yに対して直角である方向を向いている。
【0014】
中心軸Oに沿って進行してきたインク滴3が磁場Mにさしかかると、電磁誘導によってインク滴3に渦電流が生じる。この渦電流が生じると同時に、インク滴3は磁場Mからローレンツ力Fを受ける。このローレンツ力Fは、吐出方向zの後方側を向き、磁場Mに対して直角である方向に作用する。この結果、インク滴3の進行方向は中心軸Oから方向xに若干偏向されることとなる。進行方向が偏向されたインク滴3は、磁場Mを通過した後に記録媒体4に到達する。この到達地点は、中心軸Oと記録媒体4との交点よりも方向xにシフトした位置となる。
【0015】
このように、方向xにおいて中心軸Oを挟む1対の電磁石21a,21bによって、インク滴3の進行方向を方向xに偏向させることができる。同様に、1対の電磁石22a,22bを用いれば、インク滴3の進行方向を方向xに、かつ1対の電磁石21a,21bを用いた場合とは逆側に偏向させることができる。さらに、方向yにおいて中心軸Oを挟む1対の電磁石23a,23bおよび1対の電磁石24a,2bによって、インク滴3の進行方向を方向yに偏向させることができる。
【0016】
1つのインク滴3が偏向手段2を通過する間に、4対の電磁石21a,21b,22a,22b,23a,23b,24a,24bから選択された複数対を作動させれば、インク滴3の進行方向を方向xおよび方向yの双方について偏向させることができる。ただし、選択された複数対の電磁石による磁場は、各対による磁場を線形的に重ねあわせたものとはならない。このため、実際の印字に先立って、4対の電磁石21a,21b,22a,22b,23a,23b,24a,24bをあらゆる組み合わせで作動させた場合のインク滴3の偏向方向およびその大きさを図外の記憶手段などに記憶させておく。これから得られたマッピングデータに基づいて、インク滴3を進行させたい方向に応じて4対の電磁石21a,21b,22a,22b,23a,23b,24a,24bの作動状態を適宜制御する。この制御を各インク滴3について行うことにより、所望の文字や記号を記録媒体4に印字することができる。
【0017】
次に、本実施形態の印字方法の作用について説明する。
【0018】
本実施形態によれば、吐出手段1としては、1つのノズル12を備えれば足りる。このため、吐出手段1は方向xおよび方向yに嵩張るものとはならない。これは、本発明に係る印字方法を実現するためのたとえばプリンタの小型化を図るのに適している。
【0019】
また、複数のインク滴3を方向xおよび方向yについて適宜偏向させることにより方向x,yに広がる2次元的な形状を有する文字や記号を印字することができる。このため、文字や記号を印字する際に記録媒体4をたとえば方向xに送り出す必要が無い。この結果、記録媒体4の送り出しが完了するまで次の吐出を待つことが強いられない。個々のインク滴3を偏向させたい方向および大きさに応じて、4対の電磁石21a,21b,22a,22b,23a,23b,24a,24bの作動状態を順次切り替えることは、たとえば制御回路を用いて瞬時に行うことができる。これにより、複数のインク滴3を極めて短時間のうちに吐出することが可能である。したがって、印字速度の向上を図ることができる。
【0020】
本発明に係る印字方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る印字方法の各部の具体的な構成は、種々に設計偏向自在である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る印字方法の一例を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】従来の印字方法の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
O 中心軸
z 吐出方向
1 吐出手段
2 偏向手段
3 インク滴
4 記録媒体
11 インクタンク
12 ノズル
21a,21b,22a,22b,23a,23b,24a,24b 電磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に向けてインク滴を吐出することにより、上記記録媒体に印字を行う印字方法であって、
インク吐出手段によって吐出方向中心軸に沿って吐出された導電成分を含むインク滴を、
それぞれが上記吐出方向中心軸を挟んで上記吐出方向前方に位置する電磁石と上記吐出方向後方に位置する電磁石とを含む複数対の電磁石を有する偏向手段を通過させ、
上記インク滴が上記偏向手段を通過する際に、上記複数対の電磁石のうち選択された対の電磁石を用いて磁界を発生させておくことにより、上記インク滴の進行方向を上記吐出方向中心軸から偏向させることを特徴とする、印字方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−897(P2009−897A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163586(P2007−163586)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】