説明

印字装置及び印字方法

【課題】印字される画像の印字データのつなぎ目にヘッドの走査方向にスジが発生するのを防止することを目的とする。
【解決手段】副走査方向に沿って複数のドット形成要素が配列された印字ヘッドに多数のドット情報からる印字データが供給される。印字ヘッドと印字媒体は、互いに、主走査方向と副走査方向に相対移動し、印字媒体の表面に画像が印字される。印字ヘッドの主走査動作ごとに供給される印字データには、その副走査方向の端部のつなぎ目に、印字ヘッドの主走査方向に連続してドットが並ばないようにした、例えば波形の凹凸形状の変形データ部が形成される。この波形の凹凸形状輪郭は、あいまいな状態に設定され、該輪郭のあいまいな状態は、印字された輪郭を目で見たとき、連続した輪郭線とならない状態である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、副走査方向に沿って複数のドット形成要素が配列された印字ヘッドに多数のドット情報からなる印字データを供給し、印字ヘッドと印字媒体とを主走査方向と副走査方向に相対移動させ、印字媒体の表面に画像を印字するインクジェットプリンターにおいてヘッドを走査方向に移動させる方式の印字装置及び印字方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印字装置として、つなぎ目部分の印字ムラを目立たなくするために印字位置を複雑にする提案がある(例えば特許文献1参照)。また、黒スジなどの濃度むらを低減するために、インクの量を制御する方式が知られている(例えば特許文献2参照)。また、ドットの間引き処理や重ねて印字する処理を行うことでバンドとバンドの境界部におけるつなぎスジによる画質の低下を抑えるようにしたインクジェット記録装置が知られている(例えば特許文献3参照)。また、つなぎ目を目立たなくさせるため、ラインを重複させ、重複ラインの記録濃度を他の非重複ラインより低濃度で記録する記録方法が知られている(例えば特許文献4参照)。また、斜めに印字し、バンディングを防止するプリンターが知られている(例えば特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2003−34017号公報
【特許文献2】日本国特開2002−200745号公報
【特許文献3】日本国特開2000−238935号公報
【特許文献4】日本国特開平09−99550号公報
【特許文献5】日本国特開2000−52595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘッドの走査方向にスジ状に見えてしまう現象は、印字装置の用紙の搬送精度等の機械的誤差の問題やヘッドの取り付け位置の微妙なズレ、ヘッドから吐出されるインクの印字位置の僅かなズレ、印字データの問題などさまざまな複合的要因に影響されることが考えられる。しかしながら、ヘッドの走査方向にスジが出るということを考えると、用紙が搬送された後に印字ヘッドがヘッドの走査方向に移動しある印字幅分の印字を行っている点に一番大きな原因があると考えられる。また印字ヘッドによってはインク吐出ノズルがインクを連続的に吐出する場合に、これらノズル中、印字ノズルの中で多数の並んで吐出しているノズルがあるとすると、その端に位置するノズルからの印字位置の精度が出せない場合がある。この端のノズルとそれ以外のノズルのインク吐出制御は同じであるのだが、端のノズルから吐出されるインクの位置の精度が出せない場合があるので、これが横方向に繋がってしまうことで、スジ発生の要因の一つとなっている場合もある。
本発明は、印字ヘッドを走査方向に移動させても、つなぎ目の部分でヘッドの走査方向にスジ状に見えてしまう現象が走査方向に並んで出てこないようにすることで、ヘッドの走査方向のスジを目立たなくすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、副走査方向に沿って複数のドット形成要素が配列された印字ヘッドに多数のドット情報からなる印字データを供給し、印字ヘッドの印字媒体に対する主走査方向の相対移動による走査の後に印字媒体を印字ヘッドに対して所定搬送量副走査方向に相対移動させ、印字媒体の表面に画像を印字する印字装置であって、印字ヘッドの主走査動作ごとに供給される印字データの副走査方向の端部に印字ヘッドの主走査方向に連続してドットが並ばないようにした凹凸部を有する変形データ部を形成し、前記変形データ部の印字データの副走査方向の端部の輪郭を、あいまいな状態とし、該輪郭のあいまいな状態は、印字された前記輪郭を目で見たとき、連続した輪郭線とならない状態であることを特徴とする。
また本発明は、前記印字ヘッドの印字媒体に対する主走査方向の複数回の相対移動によって前記印字媒体の前記副走査方向の1回の搬送幅に相当する各領域への印字が完了するようにし、前記複数回の相対移動のうち、最初の印字ヘッドの主走査において前記印字媒体に前記変形データ部が形成された1番目の印字データが印字され、以後の主走査において、前回の印字済み領域に前回の印字済み領域と次の印字領域にまたがった印字データを順次印字し、その後の主走査において、前記1番目の印字データが印字された領域への所定回数の印字が完了すると、前記領域に隣接する次の領域への最後の主走査において、該次の領域への印字データに形成された変形データ部によって前記1番目の印字データの変形データ部のマスクされ間引きされた部分が補完され、隣接する各領域は、所定の回数の印字が完了すると、該印字が完了した領域に隣接する次の領域への最後の主走査において、該次の領域への印字データに形成された変形データ部によって、印字の完了した領域に接する変形データ部のマスクされ間引きされた部分が補完されるようにしたことを特徴とする。
また本発明は、前記変形データ部は、前記輪郭を基準として、外側領域と内側領域とから成り、前記外側領域は印字ドット情報がマスクされる領域とし、内側領域は印字ドット情報が印字される領域とし、前記変形データ部の前記内側領域の印字率を変化させたことを特徴とする。
また本発明は、前記内側領域の前記輪郭の部分に印字ドット情報が間引きされた輪郭あいまい状態生成領域を設けて、前記輪郭のあいまい状態を生成したことを特徴とする。
また本発明は、前記変形データ部の凹凸部の輪郭のドット配列が波形の形状を有することを特徴とする。
また本発明は、前記変形データ部の輪郭の、山状の部分では、その左右近傍において、下方において印字密度が高く、上方において印字密度が低く、中央に近づくにつれて印字密度の高い部分が上方に延びるように設定され、前記印字密度の変化によって前記輪郭をあいまいな状態としていることを特徴とする。
また本発明は、n(nは正数)ラインの印字データを印字単位として順次印字ヘッドの主走査方向の移動と印字媒体の副走査方向の搬送により印字媒体に印字する印字方法であって、前記印字データのつなぎ目側の所定数のラインを主走査方向に連続して並ばないように、つなぎ目側の端部のラインが凹凸形状を繰り返すようにするとともに、前記凹凸形状の前記副走査方向の端部の輪郭をあいまいな状態とし、該あいまいな状態は、印字された前記輪郭を目で見たとき、連続した輪郭線が顕れない状態としたことを特徴とする。
また本発明は、n(nは正数)ラインの印字データを印字単位として順次印字ヘッドの主走査方向の移動と印字媒体の副走査方向の搬送により印字媒体に印字する印字方法であって、前記印字データのつなぎ目側の所定数のラインを主走査方向に連続して並ばないように、つなぎ目側の端部のラインが凹凸形状を繰り返すようにするとともに、前記凹凸形状の前記副走査方向の端部の輪郭をあいまいな状態とし、該あいまいな状態は、印字された前記輪郭を目で見たとき、連続した輪郭線が顕れない状態とし、前記つなぎ目側の近傍の所定範囲の印字率を変化させたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、印字ヘッドを走査方向に移動させる方式の印字装置において、データを変更するだけで、ヘッドの走査方向にスジ状に見えてしまう現象が目立たない印字結果を簡単に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】印字装置の全体概略構成図である。
【図2】本発明の動作を示すフローチャートである。
【図3】印字ヘッドの説明図である。
【図4】本発明の説明図である。
【図5】本発明の説明図である。
【図6】本発明の説明図である。
【図7】本発明の説明図である。
【図8】本発明の説明図である。
【図9】本発明の説明図である。
【図10】本発明の説明図である。
【図11】本発明の説明図である。
【図12】本発明の説明図である。
【図13】本発明の説明図である。
【図14】本発明の説明図である。
【図15】本発明の説明図である。
【図16】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図17】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図18】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図19】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図20】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図21】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図22】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図23】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図24】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図25】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図26】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図27】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図28】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図29】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図30】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図31】印字ヘッドの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の構成を添付した図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る印字装置の概略全体構成を示している。インクジェットプリンター2は、コンピュータ回路を含むコントローラ4によって制御され、該コントローラ4はコネクタ6を介して外部のコンピュータ8に接続されている。コントローラ4には、印字用データの搬送方向前後の端部の変換処理を行うプログラムが組み込まれている。コンピュータ8は、プリンター2に実装されたコントローラ4に印字データを送信する。コントローラ4は、後述するように、受信したデータの解析を行い、プリンター2の駆動部を制御する。プリンター2は、紙送りモータによってロール紙などの印字媒体10を矢方向Bに搬送する副走査送り機構と、キャリッジモータによってキャリッジ12を、駆動ローラ14の軸方向に往復動させる主走査送り機構とを有している。
【0009】
ここで、副走査送り機構による印字媒体10の送り方向Bを副走査方向といい、主走査送り機構によるキャリッジ12の移動方向Aを主走査方向という。なお、印字という用語は、単なる文字を書くという意味ではなく、画像、記号等を含む広い概念で使用している。キャリッジ12には、複数個の印字ヘッドを備えた印字ユニット16が搭載されている。前記キャリッジ12は、ベルト駆動ローラ18,20に掛け渡されたヘッド駆動用ベルト22によって、Y軸レール(図示省略)に沿って主走査方向Aに往復駆動される。印字媒体10は、駆動ローラ14及びピンチローラ24によって副走査方向に駆動され、プラテン26上を摺動する。印字媒体10としては、通常ロール紙が使用される。キャリッジ12の位置は、印字ユニット16に設けられたセンサとこれに対向するように設けられたリニアスケール28とからなるリニアエンコーダからのタイミングフェンス信号によって検出される。
【0010】
上記した構成において、印字動作がスタートすると、コントローラ4の制御により、キャリッジ12は、Y軸レールに沿って主走査方向に往復駆動され、印字ユニット16に搭載された印字ヘッドのノズルからインク滴を吐出させる。印字ユニット16が主走査方向の末端に達すると、コントローラ4は、印字媒体10を副走査方向に所定ピッチだけ移動させて、次の主走査方向の印字動作を実行する。上記プリンター2、コントローラ4及びコンピュータ8は、全体として印字装置を構成する。
【0011】
次に図2を参照して、本発明に係る印字装置の印字動作について説明する。
コンピュータ8は、印刷出力すべき、サイン文字や図形、模様、画像などの印字データを生成する。コンピュータ8で生成された印字データは、コネクタ6を介して、コントローラ4に転送される(ステップ1,2)。コントローラ4は、メモリに格納されたプログラムに基づいて、コンピュータ8から印字データを受信し、この印字データを解析する(ステップ3)。コントローラ4のCMYK変換部は、各画素の色をプリンター2で出力可能なインク色に変換する。次に、印字データをインクジェット印字ヘッドに対応した印字用データに変換する(ステップ4)。図3に印字ヘッド30が示されている。
【0012】
印字ユニット16には、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のそれぞれの色のインクを吐出する複数個の印字ヘッドが装備されている。説明の便宜のため、これら複数個の印字ヘッドの中、1つの印字ヘッド30について説明する。他の印字ヘッドの構成と動作はこれから説明する印字ヘッド30と同一である。本実施形態では、印字ヘッド30は、副走査方向に256個のノズル32が配列されている。なお、図面では作図の都合上全てのノズルは図示していない。勿論、印字ヘッド30の解像度は、種々のものを採用することができ、特に256個のノズル数に限定されるものではない。前記256個のノズルの中、例えば4回の走査で印字を完成させていく場合においては、1回の用紙搬送距離を60ノズル分とした場合、60ノズルの4倍にあたる240ノズル分と端部データ印字用としての14ノズル分を印字に使用するノズルとして割り当て、その254ノズルを使用しながら印字を行っていく。そのため残りの2ノズル分は未使用となる。なお使用するノズルの数、搬送距離、走査回数などは必要に応じて変更が可能である。
【0013】
図4乃至図7には、印字ヘッド30の最初の4走査に対応する印字データA,B,C,Dが開示されている。図7に示すように、4回の印字ヘッド30の走査で、60ノズル分の走査領域33に相当する画像の印字が完了する。印字データAは、データの副走査方向の大きさが印字ヘッドの74ノズル分に対応し、印字媒体10の搬送方向を基準とすると、その主データ部の後端部34(つなぎ目)に、14ノズル分の波形の変形データ部36が形成されている。この変形データ部36は、印字データA,B,C,Dの全ての後端部34(つなぎ目)に形成される。
【0014】
図13に、変形データ部36の生成方法が示されている。コントローラ6は、予め変形データ部を作成するための基本マスクパターン38をメモリに格納している。基本マスクパターン38のオン(印字)ドットで形成される輪郭41は本実施形態では、波形であるが、図14に示すように、波形パターン(w)以外に、三角波形パターン(t)、凸型パターン(p)、のこぎり刃形パターン(s)等その他、主走査方向にドットが連続的に並ばない形状であればどのような凹凸形状でも良い。またこの波形パターンの高さ、長さなどは必要に応じて任意に設定すればよいものであり、特に図に限定されない。また波形パターンを多数設けておき、使用される印字解像度などにより使い分けるようにしてもよい。図13(B)(C)に示す基本マスクパターン38は、オン(印字)とオフ(削除)のドット(ビット)情報から成り、図中、オンドットは黒色で示され、オフドットは白色(無色)で示されている。図13(C)の基本マスクパターン38は、図13(B)の基本マスクパターンの位相を90度ずらして生成し、逆パターンの波形形状としたものである。オフドットは印字データのドットを削除するためのものであり、オンドットは印字データのドットをそのまま印字するためのものである。印字データAに変形データ部36を生成するには、印字データAの主データ部の後端部に隣接する14ノズル幅分のデータ40と主走査方向に繰り返して展開される基本マスクパターン38とで論理積演算が行われ、データ40からドットが削除あるいは間引かれ、変形データ部36に、波状の輪郭41があいまいな状態となっている輪郭あいまい状態生成部43が生成される。
【0015】
本実施形態では、図13(B)(C)に示すように、山状の部分では、その左右近傍において、下方においてオンドットの密度が高く、上方においてオンドットの密度が低く設定され、中央に近づくにつれてオンドット密度の高い部分が上方に伸びるように設定されている。この基本マスクパターン38により生成される変形データ部36は、図13(E)に示すように、山状の部分では、その左右近傍において、下方において印字の密度が高く、上方において印字密度が低く設定され、中央に近づくにつれて印字密度の高い部分が上方に伸びるように生成される。山状の輪郭41の外側領域はマスク部分42を構成するが、このマスク部分にも印字ドットがまばらな状態で生成される。この印字密度の変化によって、変形データ部36の波形の凹凸形状の輪郭41をあいまいな状態としている。この輪郭があいまいな状態とは、印字された変形データ部36を目視したとき、この変形データ部36に波状の輪郭が、連続した輪郭線として顕れない、図13(E)に示す状態のことであり、このあいまいな状態を生成するドットパターンは目視の印象を基準として実験的に求めるものである。このように、変形データ部36の輪郭41をあいまいな状態とすることで、印字時における横スジの発生を効果的に阻止することが可能となる。尚、変形データ部36の輪郭41をあいまいな状態とする基本マスクパターン38は種々のドットパターンが可能であり、特に図13(B)(C)に示すものに限定されるものではない。
【0016】
印字データAの変更部分40において、ドット情報が削除された部分42や、輪郭41の内側領域で間引きされたドット情報は、印字データAの補完分データA’としてメモリに保管され、後述するように、5回目の印字動作において、図8に示す、印字データEの前端部44に補足分として作成される。なお補足分データA’の作成は、基本マスクパターン38のオンオフドット(ビット)情報を白黒反転させ同様な手順で作成していけばよい。印字データの中、原画像の前端部分46即ち印字開始端を含む印字データA,B,C,Dには、搬送方向の後端部34に変形データ部36が形成され、原画像の後端部分48即ち印字終了端を含む印字データF,G,H,Iには、搬送方向の前端部44に変形データ部36が形成され、原画像の前後端部分を含まない中間部分の印字データEには、搬送方向の前後端部44,34に変形データ部36が形成される。変形データ部36が形成された各印字データA,B,C,D,E,F,G,H,Iのつなぎ目側は、あいまいな状態の輪郭を有する波形の形状となる。
【0017】
上記のように、印字データの搬送方向前後の端部の変更処理が実行されると(ステップ5)、次に、コントローラ4は、印字データを印字ヘッド30に転送し(ステップ6)、ヘッドユニット16による印字(ステップ7)、印字媒体10の搬送が行われ(ステップ8)、印字媒体10に原画像の印字が行われる。上記ステップ7と8の動作を図4乃至図12を参照して以下に説明する。
図4は、印字ヘッド30による1回目の走査を示している。印字ヘッド30の74ノズルのグループによる1回目の走査が完了すると、つなぎ目側が波形の印字データAが印字媒体10に印字される。次に、印字媒体10は、60ノズル分、搬送方向に搬送される。次に、図5に示すように、印字ヘッド30が主走査方向に移動して、2回目の印字が行われ、134ノズル分の長さを有する、つなぎ目側が波形の印字データBが印字される。印字ヘッド30による2回目の印字が完了すると、印字媒体10は、60ノズル分、搬送方向に搬送される。このようにして、図6,7に示すように、3回目、4回目の印字が行われる。
【0018】
4回目の印字が完了すると、印字媒体10の、60ノズル分の長さに相当する1番目の領域50の印字が完了する。この領域50は、図7にA+B+C+Dで示すように、印字データA,B,C,Dによって4回の走査が行われるが、変形データ部の削除部分52は、印字データB,C,Dによる3回分の印字しか行われていない。従って、この削除部分52を補完する必要がある。次に、図8に示すように、印字媒体10が60ノズル分、搬送方向に搬送され、印字ヘッド30が主走査方向に移動して、5回目の印字が行われ、原画像の中間部分の、254ノズル分の長さを有する、印字データEが印字される。このとき、1番目の領域50の波形変形部のデータ削除部分52と間引き部分が、上記した印字データAの補完分データA’によって補完される。即ち、印字データEの前端部44(つなぎ目側)は、印字データAの補完分データA’が変形データ部36として作成されている。
【0019】
このように、1枚の原画像の中間部分の、254ノズル分の長さを有する、印字データEは、その前端部分44に、隣接する領域50の変形データ部を補完する補完分データが、変形データ部36として作成される。印字データEの変形データ部36即ちつなぎ目側の波形凹凸形状は、印字データAのつなぎ目側の波形凹凸形状とぴったりと嵌合する。これにより、印字媒体10の1番目の領域50と2番目の領域54のつなぎ目(境界)に主走査方向に連続的に延びるラインが形成されることがなく、ヘッドの走査方向にスジ状に見えてしまう現象が発生しない。これは、印字媒体10の他の領域のつなぎ目も同様である。6回目の印字は、図9に示すように、原画像の後端部分48を含む254ノズル分の長さの印字データFによって実行される。印字データFには、その前端に、印字データBの変形データ部36を補完する変形データ部36が形成されている。
【0020】
印字データFのつなぎ目側の波形凹凸形状は、印字データBのつなぎ目側の波形凹凸形状とぴったりと嵌合する。7回目の印字は、図10に示すように、原画像の後端部分48を含む194ノズル分の長さの印字データGによって実行される。印字データGには、その前端に、印字データCの変形データ部36を補完する変形データ部36が形成されている。印字データGのつなぎ目側の波形凹凸形状は、印字データCのつなぎ目側の波形凹凸形状とぴったりと嵌合する。8回目の印字は、図11に示すように、原画像の後端部分48を含む134ノズル分の長さの印字データHによって実行される。印字データHには、その前端に、印字データDの変形データ部36を補完する変形データ部36が形成されている。印字データHのつなぎ目側の波形凹凸形状は、印字データDのつなぎ目側の波形凹凸形状とぴったりと嵌合する。
【0021】
9回目の印字は、原画像の後端部分48(印字終了端)を含む74ノズル分の長さの印字データHによって実行される。印字データIには、その前端部分44に、印字データEの変形データ部36を補完する変形データ部36が形成されている。印字データIのつなぎ目側の変形データ部36の波形凹凸形状は、印字データEのつなぎ目側の波形凹凸形状とぴったりと嵌合し、原画像の印字が完了する。なお本実施形態は説明として概念を説明しているだけであり、データが続いている場合にはEにあたるデータの部分が作成されていき(ステップ9)、最後にF以降のデータが作成される事はいうまでもない。
【0022】
本実施形態では、印字媒体の搬送は、上記した如く、60ノズル分ずつ等間隔に行われるように設定したが、搬送ごとに変更しても良い。これは、ノズルのピッチより細かい印字を行うときに、その間にドットを打つためのもので、等間隔は、60ノズル分であるが、例えば59ノズル分送ったり、61ノズル分送ったりというように、搬送毎に変更するようにしても良い。また、印字媒体(用紙)の搬送と印字ヘッドの走査の関係では、印字ヘッドの往動で印字、用紙送りして、復動で印字と紙送りをする場合もあるが、ヘッドの往動、復動で同じラインを印字する場合もあり、本発明の実施に際しては、ヘッドの走査、用紙の搬送は、特に図示する方式に限定されるものではない。
【0023】
コントローラ4は、ステップ9で印字データが終了したか否か判断し、肯定を判断すると、印字を終了する。尚、上記実施形態では、ピエゾ素子を用いてインクを吐出するヘッドを備えたインクジェットプリンターを用いたが、本発明は、ピエゾ素子を用いたインクジェットプリンターに特に限定されるものではなく、バブルによりインクを吐出する、横方向にヘッドユニットが移動するタイプのプリンターに用いることができる。
次に本発明の他の実施形態を図2及び図15乃至25を参照して説明する。
本実施形態で使用される印字装置の構成は、上記第1の実施形態における図1に示す印字装置と同一であり、印字動作も図2に示すフローチャートで述べた動作と同一である。
【0024】
本実施形態では、印字ヘッド30の前記256個のノズルの中、例えば4回の走査で印字を完成させていく場合においては、1回の用紙搬送距離を50ノズル分とした場合、50ノズルの4倍にあたる200ノズル分と端部データ印字用としての54ノズル分を印字に使用するノズルとして割り当て、その254ノズルを使用しながら印字を行っていく。そのため残りの2ノズル分は未使用となる。前記端部データ印字用としての54ノズルの中、図16に示すように18ノズルは後述する変形データ部36の印字率100%の波状部分wを含む領域aの印字用として使用され、残りの36ノズルは、凹凸部を有する印字率を変更した印字率変更領域bの印字用として使用される。なお使用するノズルの数、搬送距離、走査回数などは必要に応じて変更が可能である。
図16乃至図19には、印字ヘッド30の最初の4走査に対応する印字データA,B,C,Dが開示されている。図19に示すように、4回の印字ヘッド30の走査で、50ノズル分の走査領域33に相当する画像の印字が完了する。印字データAは、データの副走査方向の大きさが印字ヘッドの104ノズル分に対応し、印字媒体10の搬送方向を基準とすると、その主データ部eの後端部34に接して、54ノズル分の波形の変形データ部36が形成されている。この変形データ部36は、印字データA,B,C,Dの全ての主データ部の後端部34に形成される。ここで前端部あるいは後端部とは印字媒体の搬送方向即ち印字装置における副走査方向を基準にしている。
【0025】
変形データ部36は、図15(B)に示すように、本実施形態では、印字率(濃度)100%の波形領域wと、印字率50%の印字率変化領域cと印字率0%の波形領域dとから構成されている。これにより、各印字データに形成される変形データ部36は、図1(B)に示すように、副走査方向に印字率が変化する構成即ち印字率が0%,50%あるいは0%,50%,100%あるいは50%,100%と変化する構成となっている。尚、ここで印字率とは、1回の走査で印字される必要があるデータの印字の割合を言い、印字率100%とは、このデータを全て(100%)印字することを意味する。また、変形データ部36の波状の輪郭41の周辺には、輪郭41をあいまいな状態にする輪郭あいまい状態生成部が形成される。この輪郭あいまい状態生成部は、図13(D)に示す、変形データ部36の輪郭41の周辺部分のドット状態と同一である。
【0026】
図15に、変形データ部36の生成方法が示されている。コントローラ6は、予め変形データ部を作成するための基本マスクパターン38をメモリに格納している。基本マスクパターン38は、印字率0%の領域と、50%の領域と、100%の領域と、波状の輪郭41周辺の輪郭あいまい状態生成領域とから構成される。印字率0%と印字率50%の境界及び印字率50%と印字率100%の領域は波状に接している。印字率0%と印字率50%の境界に形成される上部凹凸輪郭L1と、印字率50%と印字率100%の境界に形成される下部凹凸ラインL2は、本実施形態では、波形であるが、波形パターン以外に、三角波形パターン、凸型パターン、のこぎり刃形パターン等その他、主走査方向にドットが連続的に並ばない形状であればどのような凹凸形状でも良い。上記上部凹凸輪郭L1の周辺には上記輪郭あいまい状態生成領域が形成されている。
【0027】
またこの波形パターンの高さ、長さなどは必要に応じて任意に設定すればよいものであり、特定の形状に限定されない。印字データAの端部に変形データ部36を生成するには、印字データAの主データ部eの後端部に隣接する54ノズル幅分のデータを変更部分のデータ40とし、このデータ40に、基本マスクパターン38が波形に接続するように、図15(B)の如く、展開し、変更部分のデータ40に、波状の輪郭41の外側領域に位置して、マスクされた部分即ちドットのほとんど存在しない部分dと、波状の輪郭41の内側領域に位置して、濃度が50%に変更している印字率変更部分cと、印字率が100%の部分wとを生成させる。上記輪郭41の周辺には上記輪郭あいまい状態生成領域が形成される。
【0028】
上記基本マスクパターンの印字率50%の印字率変化領域cは特に50%の印字率に限定されるものではなく、また、単一の印字率に限定されるものでもない。図25に示すように基本マスクパターン38に、複数の印字率0%,25%,50%,75%,100%の領域を設け、データ40を、複数の異なる印字率の領域例えば、0%,25%,50%,75%,100%というように、副走査方向に印字率が変化する領域により構成するようにしても良い。図25の基本マスクパターン38も、その上部輪郭L1上に及びその周辺に輪郭あいまい状態生成部が形成されている(図示省略)。各印字データの変形データ部36は、基本マスクパターンによって、図15に示すように、領域dのドット情報が削除され、領域cのドット情報が印字率に応じて間引かれる。この削除され間引かれたドット情報は、各印字データの変形データ部の印字が完了したときは補完される必要がある。
【0029】
そのためコントローラは、印字データの変形データ部の削除され間引かれたドット情報を補完するデータとして各変形データ部ごとに補完分データを生成しメモリに保管する。後述するように、5回目以降の印字動作において、変形データ部36には、その削除され間引かれたドット情報を備えた補完分データがオーバーラップして印字され、変形データ部36が補完される。例えば、変形データ部の50%印字率部分は、補完分データの50%の印字率の部分によって補完される。即ち、変形データ部36と、該変形データ部36を補完する補完分データの濃度の振り分けは、加算して100%となるように設定される。この場合、補完分データは、1回の印字で補完される構成に限定されるものではなく、複数回の印字によって補完される構成としても良い。例えば、50%の印字率(濃度)で印字した変形データ部36の濃度変更部分cを、濃度30%と20%の2つの補完分データで2回の印字動作により補完する構成としても良い。印字面のヒーターによるインクの乾燥という点を考慮した場合、最初に80%の濃度で印字し、後で、濃度20%の補完分データにより補完するという印字率の振り分けも効果的である。
【0030】
このような構成とすることで、ヒーターでインクを乾燥させる場合、最初にインク量を多めにしても乾燥時間に長く時間がかけられているため乾燥に余裕があるが、後の印字では乾燥にかける時間が短いため、インクが乾燥し難いという問題を解消できる。また、この時間の要因ではなく、最初に打った印字より後の印字の方がその場所にトータルで吐出されているインクの量が多くなるので乾きにくいため後の印字を少なくすると乾燥が容易になるという点もある。
【0031】
なお、変形データ部や補完分データの印字率を副走査方向に変化させる技術は、マスクパターンを使用する構成に特に限定されるものではなく、コントローラによって、単純に計算でドット情報を間引くなど再現性のある技術を利用するようにしても良い。又、変形データ部36や補完分データの印字率0%以外の印字率変更部分をグラデーション技術によって細かく連続的に変化させる構成を採用することもできる。印字データAの図16中、印字変更部分A’として示した変形データ部36の補完分データA”は、図15(A)に示す基本マスクパターン38のオン(印字)オフ(削除)ドット情報を反転したマスクパターン(図示省略)によって生成される。後述する他の補完分データB”,C”,D”,E”も同様である。
【0032】
図16乃至図19に示すように、印字データの中、原画像の前端部分46即ち印字開始端を含む印字データA,B,C,Dには、搬送方向の後端部34に変形データ部36即ちA’,B’,C’,D’が形成され、図21乃至図24に示すように、原画像の後端部分48即ち印字終了端を含む印字データF,G,H,Iには、搬送方向の前端部44に補完分データB”,C”,D”,E”が形成され、図20に示すように、原画像の前後端部分を含まない中間部分の印字データEには、搬送方向の前端部に補完分データA”が形成され、後端部に変形データ部E’が形成される。変形データ部及び補完分データが形成された各印字データA,B,C,D,E,F,G,H,Iのつなぎ目側は、輪郭があいまいな状態に生成された波形の形状となる。
上記のように、印字データの搬送方向前後の端部の変更処理が実行されると(ステップ5)、次に、コントローラ4は、印字データを印字ヘッド30に転送し(ステップ6)、ヘッドユニット16による印字(ステップ7)、印字媒体10の搬送が行われ(ステップ8)、印字媒体10に原画像の印字が行われる。上記ステップ7と8の動作を図16乃至図24を参照して以下に説明する。
【0033】
図16は、印字ヘッド30による1回目の走査を示している。印字ヘッド30の104ノズルのグループによる1回目の走査が完了すると、つなぎ目側が波形の印字データAが印字媒体10に印字される。次に、印字媒体10は、50ノズル分、搬送方向に搬送される。次に、図17に示すように、印字ヘッド30が主走査方向に移動して、2回目の印字が行われ、154ノズル分の長さを有する、つなぎ目側が波形の印字データBが印字される。印字ヘッド30による2回目の印字が完了すると、印字媒体10は、50ノズル分、搬送方向に搬送される。このようにして、図18,19に示すように、3回目、4回目の印字が行われる。
4回目の印字が完了すると、印字媒体10の、50ノズル分の長さに相当する1番目の領域50の印字が完了する。この領域50は、図8にA+B+C+Dで示すように、印字データA,B,C,Dによって4回の走査が行われ印字が完了する。印字媒体10の1番目の領域50に隣接する54ノズル分の領域52には、A’+B+C+Dで示すように、印字データAの変形データ部A’と、印字データB,C,Dの印字が行われ、まだこの領域は変形データ部A’で削除間引きされたドット情報の印字が補完されていない。従って、変形データ部A’を濃度50%の補完分データを含む補完分データA”で補完する必要がある。
【0034】
次に、図20に示すように、印字媒体10が50ノズル分、搬送方向に搬送され、印字ヘッド30が主走査方向に移動して、5回目の印字が行われ、原画像の中間部分の、254ノズル分の長さを有する、印字データEが印字される。このとき、領域52の変更データ部のデータ削除間引き部分が、上記した印字データAの補完分データA”によって補完される。即ち、印字データEの前端部44(つなぎ目側)には、印字データAの補完分データA”からなる補完分データA”が生成されている。
このように、1枚の原画像の中間部分の、254ノズル分の長さを有する、印字データEは、その前端部分44に、隣接する領域50の変形データ部A’を補完する補完分データA”が、補完分データ部A”として作成される。印字データEの補完分データA”即ちつなぎ目側の波形凹凸形状は、印字データAのつなぎ目側の波形凹凸形状とぴったりと嵌合する。これにより、印字媒体10の1番目の領域50と2番目の領域54のつなぎ目(境界)に主走査方向に連続的に延びるラインが形成されることがなく、ヘッドの走査方向にスジ状に見えてしまう現象が発生しない。これは、印字媒体10の他の領域のつなぎ目も同様である。6回目の印字は、図21に示すように、原画像の後端部分48を含む254ノズル分の長さの印字データFによって実行される。印字データFには、その前端に、印字データBの変形データ部36(B’)を補完する補完分データB”が形成されている。
【0035】
印字データFのつなぎ目側の波形凹凸形状は、印字データBのつなぎ目側の波形凹凸形状とぴったりと嵌合し、補完分データB”が変形データ部B’にオーバーラップして印字される。7回目の印字は、図22に示すように、原画像の後端部分48を含む204ノズル分の長さの印字データGによって実行される。印字データGには、その前端に、印字データCの変形データ部36(C’)を補完する補完分データC”が形成されている。印字データGのつなぎ目側の波形凹凸形状は、印字データCのつなぎ目側の波形凹凸形状とぴったりと嵌合し、補完分データC”が変形データ部C’にオーバーラップして印字され、印字データCの変形データ部C’が補完分データC”により補完される。
8回目の印字は、図23に示すように、原画像の後端部分48を含む154ノズル分の長さの印字データHによって実行される。印字データHには、その前端に、印字データDの変形データ部36(D’)を補完する補完分データD”が形成されている。印字データHのつなぎ目側の波形凹凸形状は、印字データDのつなぎ目側の波形凹凸形状とぴったりと嵌合する。
【0036】
9回目の印字は、原画像の後端部分48(印字終了端)を含む104ノズル分の長さの印字データIによって実行される。印字データIには、その前端部分44に、印字データEの変形データ部36(E’)を補完する補完分データ部E”が形成されている。
印字データIのつなぎ目側の変形データ部36の波形凹凸形状は、印字データEのつなぎ目側の波形凹凸形状とぴったりと嵌合し、印字データEの変形データ部36(E’)が補完分データE”により補完され、原画像の印字が完了する。なお本実施形態は説明として概念を説明しているだけであり、データが続いている場合にはEにあたるデータの部分が順次作成されていき(図2のステップ9参照)、最後にF以降のデータが作成される事はいうまでもない。
上記実施形態において、印字データのつなぎ目に印字率が変化した変形データ部と、輪郭あいまい状態生成部とを設けることで、印字データのつなぎ目に印字の規則性をなくしてランダム性を発生させ、これと変形データ部の凹凸形状のスジ発生防止効果との相乗効果により、つなぎ目におけるスジの発生を防止している。また、インクが吐出されているノズルが並んでいる場合の端部に位置する印字精度の悪いノズルからの印字が横方向に連続で続かない事も良い効果を与えている。
【0037】
本実施形態では、印字媒体の搬送は、上記した如く、50ノズル分ずつ等間隔に行われるように設定したが、搬送ごとに変更しても良い。これは、ノズルのピッチより細かい印字を行うときに、その間にドットを打つためのもので、等間隔は、50ノズル分であるが、例えば49ノズル分送ったり、51ノズル分送ったりというように、搬送毎に変更するようにしても良い。また、印字媒体(用紙)の搬送と印字ヘッドの走査の関係では、印字ヘッドの往動で印字、用紙送りして、復動で印字と紙送りをする場合もあるが、ヘッドの往動、復動で同じラインを印字する場合もあり、本発明の実施に際しては、ヘッドの走査、用紙の搬送は、特に図示する方式に限定されるものではない。
コントローラ4は、図2に示すステップ9で印字データが終了したか否か判断し、肯定を判断すると、印字を終了する。
【0038】
上記実施形態では、変形データ部の印字率を副走査方向に変化させているが、印字率が主走査方向に変化するマスクパターンを用いて、変形データ部の印字率を主走査方向に変化させるようにしても良い。この場合は、図26に示すように、基本マスクパターン38は、印字率0%の領域dと、印字率が主走査方向に変化する領域cと、印字率100%の領域wと、輪郭あいまい状態生成領域(図示省略)とから構成される。領域cは、更に、図27に示すように、印字率0〜25%の領域c1,印字率26〜50%の領域c2,c3,印字率51〜75%の領域c4,c5、印字率76〜100%の領域c6,c7に分割されている。各領域c1〜c7は、図27に示すように、左右端側が印字率が最も高く、徐々に中央に向けて印字率が低くなるように構成されている。波状輪郭L1上及びその周辺には輪郭あいまい状態生成領域(図示省略)が形成されている。
【0039】
尚、印字率が主走査方向に変化する基本マスクパターン38は、図27に示すように横方向(主走査方向)のみに印字率を変化させるものに限定されるものではなく、図28に示すように、印字率を縦方向(副走査方向)と横方向(主走査方向)の両方に沿って変化させた構成としても良い。図28において、基本マスクパターン38の領域cは、その中央の領域が下から上に向かって76〜100%の印字率から0〜25%の印字率に変化している。領域cの左右の領域は下から斜め中央上方に向かって、76〜100%の印字率から0〜25%の印字率に変化している。
図28の矢印y1は、領域cの中央部分が印字率が矢印の方向に縦方向(副走査方向)に沿って低くなる状態を示し、矢印y2,y3は、領域cの左右の領域が印字率が矢印の方向に、縦方向(副走査方向)と横方向(主走査方向)の両方に沿って低くなる状態を示している。印字率0%の領域dと領域cの境界及び領域cと印字率100%の領域wは波状に接している。印字率0%の領域dと領域cの境界に形成される凹凸形状の輪郭L1と、領域cと印字率100%の領域wとの境界に形成される凹凸ラインL2は、本実施形態では、波形であるが、波形パターン以外に、三角波形パターン、凸型パターン、のこぎり刃形パターン等その他、主走査方向にドットが連続的に並ばない形状であればどのような凹凸形状でも良い。
【0040】
次に本発明の他の実施形態を図2及び図16乃至24及び図29乃至31を参照して説明する。
本実施形態で使用される印字装置の構成は、上記第1の実施形態における図1及び図2で説明した構成と同一である。また、本実施形態で使用される印字装置の印字動作の原理は、上記第2の実施形態の印字動作と同一であるので、上記第2の実施形態の説明で用いた図16乃至24を利用して、本実施形態の印字動作を説明する。
コンピュータ8は、印刷出力すべき、サイン文字や図形、模様などの印字データを生成する。コンピュータ8で生成された印字データは、コネクタ6を介して、コントローラ4に転送される(ステップ1,2)。コントローラ4は、メモリに格納されたプログラムに基づいて、コンピュータ8から印字データを受信し、この印字データを解析する(ステップ3)。コントローラ4のCMYK変換部は、各画素の色をプリンタ2で出力可能なインク色に変換する。次に、印字データをインクジェット印字ヘッドに対応した印字用データに変換する(ステップ4)。図31に本実施形態で使用される印字ヘッド30が示されている。
印字ユニット16には、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、その他のそれぞれの色のインクを吐出する6個の印字ヘッド30が装備されている。説明の便宜のため、これら複数個の印字ヘッドの中、1つの印字ヘッド30について説明する。他の印字ヘッドの構成と動作はこれから説明する印字ヘッド30と同一である。本実施形態では、印字ヘッド30は、副走査方向に256個のノズル32が配列されている。なお、図面では作図の都合上全てのノズルは図示していない。勿論、印字ヘッド30の解像度は、種々のものを採用することができ、特に256個のノズル数に限定されるものではない。
【0041】
また、印字ヘッド30のノズル配列は1列状又は複数列状の構成を採用することができる。前記256個のノズルの中、例えば4回の走査で印字を完成させていく場合においては、1回の用紙搬送距離を50ノズル分とした場合、50ノズルの4倍にあたる200ノズル分と端部データ印字用としての54ノズル分を印字に使用するノズルとして割り当て、その254ノズルを使用しながら印字を行っていく。そのため残りの2ノズル分は未使用となる。前記端部データ印字用としての54ノズルの中、図16に示すように18ノズルは後述する変形データ部36の印字率100%の波状部分wを含む領域aの印字用として使用され、残りの36ノズルは、凹凸部を有する印字率を変更した印字率変更領域bの印字用として使用される。なお使用するノズルの数、搬送距離、走査回数などは必要に応じて変更が可能である。
【0042】
図16乃至図19には、印字ヘッド30の最初の4走査に対応する印字データA,B,C,Dが開示されている。図19に示すように、4回の印字ヘッド30の走査で、50ノズル分の走査領域33に相当する画像の印字が完了する。図6に示すように、印字データAは、データの副走査方向の大きさが印字ヘッドの104ノズル分に対応し、印字媒体10の搬送方向を基準とすると、その主データ部eの後端部34に接して、54ノズル分の波形の変形データ部36が形成されている。この変形データ部36は、印字データA,B,C,Dの全ての主データ部の後端部34に形成される。ここで前端部あるいは後端部とは印字媒体の搬送方向即ち印字装置における副走査方向を基準にしている。
変形データ部36は、図16に示すように、本実施形態では、印字率(濃度)100%の波形領域wと、印字率50%の印字率変化領域cと印字率0%の波形領域dと、輪郭あいまい状態生成領域(図示省略)とから構成されている。尚、印字率変化領域cの印字率は種々の印字率を採用することができ、特に50%の印字率に限定されない。また、印字率は0%から100%の間で、副走査方向又は主走査方向に段階的または連続的に変化させる構成としても良い。尚、ここで印字率とは、1回の走査で印字される必要があるデータの印字の割合を言い、印字率100%とは、このデータを全て(100%)印字することを意味する。
【0043】
図29に、変形データ部36の生成方法が示されている。コントローラ6は、予め変形データ部を作成するための基本マスクパターン38をメモリに格納している。基本マスクパターン38は、印字率0%の領域dと、印字率が主走査方向に変化する領域cと、印字率100%の領域wとから構成される。印字率0%の領域dと領域cの境界及び領域cと印字率100%の領域wは波状に接している。印字率0%の領域dと領域cの境界に形成される凹凸ラインL1と、領域cと印字率100%の領域wとの境界に形成される凹凸ラインL2は、本実施形態では、波形であるが、波形パターン以外に、三角波形パターン、凸型パターン、のこぎり刃形パターン等その他、主走査方向にドットが連続的に並ばない形状であればどのような凹凸形状でも良い。またこの波形パターンの高さ、長さなどは必要に応じて任意に設定すればよいものであり、特定の形状に限定されない。上記凹凸形状輪郭L1の周辺には上記輪郭あいまい状態生成領域が形成されている。
【0044】
印字データAの端部に変形データ部36を生成するには、印字データAの主データ部eの後端部に隣接する54ノズル幅分のデータを変更部分のデータ40とし、このデータ40に、基本マスクパターン38が波形に接続するように展開し、変更部分のデータ40に、マスクされた部分即ちドットの存在しない部分dと、濃度が変化している印字率変更部分cと、印字率が100%の部分wと、輪郭あいまい状態生成部分とを生成させる。上記基本マスクパターン38の印字率変化領域cは特定の印字率に限定されるものではない。各印字データの変形データ部36は、基本マスクパターン38によって、図16に示すように、領域dのドット情報が削除され、領域cのドット情報が印字率に応じて間引かれる。本実施形態では、上記基本マスクパターン38の基本形マスクパターンデータ38aによる変形データ部の生成以外に、図29に示す基本マスクパターン38の位相をずらして複数のマスクパターンデータ38b,38c,38dを作成し、これに基づいて、印字データに変形データ部36を生成している。この変形データ部36の波状の上部の輪郭41上及びその周辺には、輪郭41をあいまいな状態にする輪郭あいまい状態生成部が形成される。この輪郭あいまい状態生成部は、図13(D)に示す、変形データ部36の輪郭41の周辺部分のドット状態と同一である。
【0045】
基本マスクパターン38の横軸(位置)のa点を、ドット削除間引きパターン周期の始点とするマスクパターンデータ38aが基本形として図29(B)に示されている。基本マスクパターン38のa点より主走査方向に位相のずれたb点をパターン周期の始点とするマスクパターンデータ38bが、bの部分からの展開形として示されている。基本マスクパターン38のc点をパターン周期の始点とするマスクパターンデータ38cが、cの部分からの展開形として示されている。基本マスクパターン38のd点をパターン周期の始点とするマスクパターンデータ38dが、dの部分からの展開形として示されている。本実施形態では、マスクパターンデータ38aによって変形された変形データ部36を有する印字データはNo.1,3,5の印字ヘッド30に供給され、マスクパターンデータ38cによって変形された変形データ部36を有する印字データは、No.2,4,6に供給されるように構成されている。勿論、これらマスクパターンデータと印字ヘッドとの組み合わせはこの組み合わせに特に限定されるものではない。前記各印字データのデータ40の削除され間引かれたドット情報は、各印字データの変形データ部の印字が完了したときは補完される必要がある。
【0046】
そのためコントローラは、印字データの変形データ部の削除され間引かれたドット情報を補完するデータとして各変形データ部ごとに補完分データを生成しメモリに保管する。後述するように、5回目以降の印字動作において、変形データ部36には、その削除され間引かれたドット情報を備えた補完分データがオーバーラップして印字され、変形データ部36が補完される。変形データ部36と、該変形データ部36を補完する補完分データの濃度の振り分けは、加算して100%となるように設定される。この場合、補完分データは、1回の印字で補完される構成に限定されるものではなく、複数回の印字によって補完される構成としても良い。例えば、50%の印字率(濃度)で印字した変形データ部36の濃度変更部分cを、濃度30%と20%の2つの補完分データで2回の印字動作により補完する構成としても良い。また印字ヘッド30をNo.1,2、No.3,4、No.5、No.6とグループ分けを行えば、印字ヘッドの数より少ない4つのマスクパターンでも対応が可能である。
【0047】
印字面のヒーターによるインクの乾燥という点を考慮した場合、最初に80%や90%などの高濃度で印字し、後で、濃度20%や10%などの低濃度補完分データにより補完するという印字率の振り分けも効果的である。このような構成とすることで、ヒーターでインクを乾燥させる場合、最初にインク量を多めにしても乾燥時間に長く時間がかけられているため乾燥に余裕があるが、後の印字では乾燥にかける時間が短いため、インクが乾燥し難いという問題を解消できる。また、この時間の要因ではなく、最初に打った印字より後の印字の方がその場所にトータルで吐出されているインクの量が多くなるので乾きにくいため後の印字を少なくすると乾燥が容易になるという点もある。なお、変形データ部や補完分データの印字率を変化させる変形データ生成手段は、マスクパターンを使用する構成に特に限定されるものではなく、コントローラによって、単純に計算でドット情報を間引くなど再現性のある技術を利用するようにしても良い。
【0048】
又、変形データ部36や補完分データの印字率変更部分をグラデーション技術によって細かく連続的に変化させる構成を採用することもできる。本実施形態は、図31に示すように、印字ユニット16が6個のNo.1〜6の印字ヘッド30を用いて6色で印字を行う構成を採用している。図16乃至図24は、6個の印字ヘッド30の中の、No.1の印字ヘッド30の印字動作を示している。本実施形態ではこのNo.1の印字ヘッド30に、図29(B)に示すマスクパターンデータ38aにより変形データ部36が生成された印字データが入力される構成としている。他のNo.2〜6の印字ヘッド30の動作はNo.1の印字ヘッド30の動作と同一であり、その説明を省略する。
印字データAの、図16中、印字変更部分A’として示した変形データ部36の補完分データA”は、図29(A)に示すマスクパターン38のオン(印字)オフ(削除)ドット情報を反転したマスクパターン(図示省略)によって生成される。後述する他の補完分データB”,C”,D”,E”も同様である。
図16乃至図19に示すように、印字データの中、原画像の前端部分46即ち印字開始端を含む印字データA,B,C,Dには、搬送方向の後端部34に変形データ部36即ちA’,B’,C’,D’が形成され、図21乃至図24に示すように、原画像の後端部分48即ち印字終了端を含む印字データF,G,H,Iには、搬送方向の前端部44に補完分データB”,C”,D”,E”が形成され、図20に示すように、原画像の前後端部分を含まない中間部分の印字データEには、搬送方向の前端部に補完分データA”が形成され、後端部に変形データ部E’が形成される。
【0049】
変形データ部及び補完分データが形成された各印字データA,B,C,D,E,F,G,H,Iのつなぎ目側は、波形の形状となる。
上記のように、印字データの搬送方向前後の端部の変更処理が実行されると(ステップ5)、次に、コントローラ4は、印字データを印字ヘッド30に転送し(ステップ6)、ヘッドユニット16による印字(ステップ7)、印字媒体10の搬送が行われ(ステップ8)、印字媒体10に原画像の印字が行われる。上記ステップ7と8の動作を図16乃至図24を参照して以下に説明する。尚、図16乃至図24は、説明の便宜のため、位相のずれていないマスクパターンデータにより生成された変形データ部及び補完分データが形成された印字データをNo.1の印字ヘッド30によって印字する場合についてのみ図示し、他の印字ヘッドによる印字動作は図示省略している。
図16は、印字ヘッド30による1回目の走査を示している。印字ヘッド30の104ノズルのグループによる1回目の走査が完了すると、つなぎ目側が波形の印字データAが印字媒体10に印字される。次に、印字媒体10は、50ノズル分、搬送方向に搬送される。次に、図17に示すように、印字ヘッド30が主走査方向に移動して、2回目の印字が行われ、154ノズル分の長さを有する、つなぎ目側が波形の印字データBが印字される。印字ヘッド30による2回目の印字が完了すると、印字媒体10は、50ノズル分、搬送方向に搬送される。このようにして、図18,19に示すように、3回目、4回目の印字が行われる。
【0050】
4回目の印字が完了すると、印字媒体10の、50ノズル分の長さに相当する1番目の領域50の印字が完了する。この領域50は、図18にA+B+C+Dで示すように、印字データA,B,C,Dによって4回の走査が行われ印字が完了する。印字媒体10の1番目の領域50に隣接する54ノズル分の領域52には、A’+B+C+Dで示すように、印字データAの変形データ部A’と、印字データB,C,Dの印字が行われ、まだこの領域は変形データ部A’で削除間引きされたドット情報の印字が補完されていない。従って、変形データ部A’を濃度50%の補完分データを含む補完分データA”で補完する必要がある。
次に、図20に示すように、印字媒体10が50ノズル分、搬送方向に搬送され、印字ヘッド30が主走査方向に移動して、5回目の印字が行われ、原画像の中間部分の、254ノズル分の長さを有する、印字データEが印字される。このとき、領域52の変更データ部のデータ削除間引き部分が、上記した印字データAの補完分データA”によって補完される。即ち、印字データEの前端部44(つなぎ目側)には、印字データAの補完分データA”からなる補完分データA”が生成されている。
【0051】
このように、1枚の原画像の中間部分の、254ノズル分の長さを有する、印字データEは、その前端部分44に、隣接する領域50の変形データ部A’を補完する補完分データA”が、補完分データ部A”として作成される。印字データEの補完分データA”即ちつなぎ目側の波形凹凸形状は、印字データAのつなぎ目側の波形凹凸形状とぴったりと嵌合する。これにより、印字媒体10の1番目の領域50と2番目の領域54のつなぎ目(境界)に主走査方向に連続的に延びるラインが形成されることがなく、ヘッドの走査方向にスジ状に見えてしまう現象が発生しない。これは、印字媒体10の他の領域のつなぎ目も同様である。6回目の印字は、図22に示すように、原画像の後端部分48を含む254ノズル分の長さの印字データFによって実行される。印字データFには、その前端に、印字データBの変形データ部36(B’)を補完する補完分データB”が形成されている。
【0052】
印字データFのつなぎ目側の波形凹凸形状は、印字データBのつなぎ目側の波形凹凸形状とぴったりと嵌合し、補完分データB”が変形データ部B’にオーバーラップして印字される。7回目の印字は、図21に示すように、原画像の後端部分48を含む204ノズル分の長さの印字データGによって実行される。印字データGには、その前端に、印字データCの変形データ部36(C’)を補完する補完分データC”が形成されている。印字データGのつなぎ目側の波形凹凸形状は、印字データCのつなぎ目側の波形凹凸形状とぴったりと嵌合し、補完分データC”が変形データ部C’にオーバーラップして印字され、印字データCの変形データ部C’が補完分データC”により補完される。
8回目の印字は、図23に示すように、原画像の後端部分48を含む154ノズル分の長さの印字データHによって実行される。印字データHには、その前端に、印字データDの変形データ部36(D’)を補完する補完分データD”が形成されている。
【0053】
印字データHのつなぎ目側の波形凹凸形状は、印字データDのつなぎ目側の波形凹凸形状とぴったりと嵌合する。9回目の印字は、原画像の後端部分48(印字終了端)を含む104ノズル分の長さの印字データIによって実行される。印字データIには、その前端部分44に、印字データEの変形データ部36(E’)を補完する補完分データ部E”が形成されている。
印字データIのつなぎ目側の変形データ部36の波形凹凸形状は、印字データEのつなぎ目側の波形凹凸形状とぴったりと嵌合し、印字データEの変形データ部36(E’)が補完分データE”により補完され、原画像の印字が完了する。なお本実施形態は説明として概念を説明しているだけであり、データが続いている場合にはEにあたるデータの部分が順次作成されていき(ステップ9)、最後にF以降のデータが作成される事はいうまでもない。
【0054】
図30は、基本形のマスクパターンデータ38aにより生成された変形データ部36と、cの部分からの展開形のマスクパターンデータ38cにより生成された変形データ部36の印字結果を示している。基本形のマスクパターンデータ38aにより生成された変形データ部36を有する印字データは、No.1,3,5の印字ヘッド30に供給され、cの部分からの展開形のマスクパターンデータ38cにより生成された変形データ部36を有する印字データは、No.2,4,6の印字ヘッド30に供給される。
基本形のマスクパターンデータ38aにより生成された変形データ部36を有する印字データの変形データ部36はNo.1,3,5の印字ヘッド30によってそれぞれ図30(A)に示す如く印字される。また、cの部分からの展開形のマスクパターンデータ38cにより生成された変形データ部36を有する印字データの変形データ部36は、No.2,4,6の印字ヘッド30によってそれぞれ図30(B)に示す如く印字される。図30(C)の左側の図は、マスクパターンデータ38aと38cとが重なった状態を示し、図30(C)の右側の図は、No.1,2,3,4,5,6の印字ヘッド30による印字データの変形データ部の印字が複合的に重なった印字結果を示している。なお、本発明は、上記のように、印字ヘッド30のNo.1,3,5に同相の変形データ部36を供給し、印字ヘッド30のNo.2,4,6に同相の変形データ部を供給する構成に特に限定されるものではなく、各印字ヘッドごとに異なった位相のマスクパターンデータによって作成した変形データ部を有する印字データを供給する構成としても良い。
【0055】
各印字ヘッド30ごとに作成されたマスクパターンデータによって生成された変形データ部の削除され、間引きされたドット情報は、印字ヘッドごとに使用されたマスクパターンの補完分データにより補完される。
上記実施形態において、印字データのつなぎ目に主走査方向に印字率が変化した変形データ部を設けることで、印字データのつなぎ目に印字の規則性をなくしてランダム性を発生させ、これと変形データ部の凹凸形状によるスジ発生防止効果との相乗効果により、つなぎ目におけるスジの発生を防止している。また、インクが吐出されているノズルが並んでいる場合の端部に位置する印字精度の悪いノズルからの印字が横方向に連続で続かない事も良い効果を与えている。
【0056】
本実施形態では、印字媒体の搬送は、上記した如く、50ノズル分ずつ等間隔に行われるように設定したが、搬送ごとに変更しても良い。これは、ノズルのピッチより細かい印字を行うときに、その間にドットを打つためのもので、等間隔は、50ノズル分であるが、例えば49ノズル分送ったり、51ノズル分送ったりというように、搬送毎に変更するようにしても良い。また、印字媒体(用紙)の搬送と印字ヘッドの走査の関係では、印字ヘッドの往動で印字、用紙送りして、復動で印字と紙送りをする場合もあるが、ヘッドの往動、復動で同じラインを印字する場合もあり、本発明の実施に際しては、ヘッドの走査、用紙の搬送は、特に図示する方式に限定されるものではない。
コントローラ4は、図2のステップ9で印字データが終了したか否か判断し、肯定を判断すると、印字を終了する。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように本発明に係る印字装置及び印字方法は、プリンターで高品質の画像の印字を行う場合に特に有用であり、横方向にヘッドユニットが移動するタイプのインクジェットプリンターなどに用いるのに適している。
【符号の説明】
【0058】
2 プリンター
4 コントローラ
6 コネクタ
8 コンピュータ
10 印字媒体
12 キャリッジ
14 駆動ローラ
16 印字ユニット
18 ベルト駆動ローラ
20 ベルト駆動ローラ
22 ベルト
24 ピンチローラ
26 プラテン
28 リニアスケール
30 印字ヘッド
32 ノズル
34 後端部
36 変形データ部
38 基本マスクパターン
40 データ
42 部分
44 前端部分
46 前端部分
48 後端部分
50 領域
52 削除部分
54 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
副走査方向に沿って複数のドット形成要素が配列された印字ヘッドに多数のドット情報からなる印字データを供給し、印字ヘッドの印字媒体に対する主走査方向の相対移動による走査の後に印字媒体を印字ヘッドに対して所定搬送量副走査方向に相対移動させ、印字媒体の表面に画像を印字する印字装置であって、印字ヘッドの主走査動作ごとに供給される印字データの副走査方向の端部に印字ヘッドの主走査方向に連続してドットが並ばないようにした凹凸部を有する変形データ部を形成し、前記変形データ部の印字データの副走査方向の端部の輪郭を、あいまいな状態とし、該輪郭のあいまいな状態は、印字された前記輪郭を目で見たとき、連続した輪郭線とならない状態であることを特徴とする印字装置。
【請求項2】
前記印字ヘッドの印字媒体に対する主走査方向の複数回の相対移動によって前記印字媒体の前記副走査方向の1回の搬送幅に相当する各領域への印字が完了するようにし、前記複数回の相対移動のうち、最初の印字ヘッドの主走査において前記印字媒体に前記変形データ部が形成された1番目の印字データが印字され、以後の主走査において、前回の印字済み領域に前回の印字済み領域と次の印字領域にまたがった印字データを順次印字し、その後の主走査において、前記1番目の印字データが印字された領域への所定回数の印字が完了すると、前記領域に隣接する次の領域への最後の主走査において、該次の領域への印字データに形成された変形データ部によって前記1番目の印字データの変形データ部のマスクされ間引きされた部分が補完され、隣接する各領域は、所定の回数の印字が完了すると、該印字が完了した領域に隣接する次の領域への最後の主走査において、該次の領域への印字データに形成された変形データ部によって、印字の完了した領域に接する変形データ部のマスクされ間引きされた部分が補完されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の印字装置。
【請求項3】
前記変形データ部は、前記輪郭を基準として、外側領域と内側領域とから成り、前記外側領域は印字ドット情報がマスクされる領域とし、内側領域は印字ドット情報が印字される領域とし、前記変形データ部の前記内側領域の印字率を変化させたことを特徴とする請求項2に記載の印字装置。
【請求項4】
前記内側領域の前記輪郭の部分に印字ドット情報が間引きされた輪郭あいまい状態生成領域を設けて、前記輪郭のあいまい状態を生成したことを特徴とする請求項3に記載の印字装置。
【請求項5】
前記変形データ部の凹凸部の輪郭のドット配列が波形の形状を有することを特徴とする請求項1に記載の印字装置。
【請求項6】
前記変形データ部の輪郭の、山状の部分では、その左右近傍において、下方において印字密度が高く、上方において印字密度が低く、中央に近づくにつれて印字密度の高い部分が上方に延びるように設定され、前記印字密度の変化によって前記輪郭をあいまいな状態としていることを特徴とする請求項5に記載の印字装置。
【請求項7】
n(nは正数)ラインの印字データを印字単位として順次印字ヘッドの主走査方向の移動と印字媒体の副走査方向の搬送により印字媒体に印字する印字方法であって、前記印字データのつなぎ目側の所定数のラインを主走査方向に連続して並ばないように、つなぎ目側の端部のラインが凹凸形状を繰り返すようにするとともに、前記凹凸形状の前記副走査方向の端部の輪郭をあいまいな状態とし、該あいまいな状態は、印字された前記輪郭を目で見たとき、連続した輪郭線が顕れない状態としたことを特徴とする印字方法。
【請求項8】
n(nは正数)ラインの印字データを印字単位として順次印字ヘッドの主走査方向の移動と印字媒体の副走査方向の搬送により印字媒体に印字する印字方法であって、前記印字データのつなぎ目側の所定数のラインを主走査方向に連続して並ばないように、つなぎ目側の端部のラインが凹凸形状を繰り返すようにするとともに、前記凹凸形状の前記副走査方向の端部の輪郭をあいまいな状態とし、該あいまいな状態は、印字された前記輪郭を目で見たとき、連続した輪郭線が顕れない状態とし、前記つなぎ目側の近傍の所定範囲の印字率を変化させたことを特徴とする印字方法。
【請求項9】
前記印字ヘッドの印字媒体に対する主走査方向の複数回の相対移動によって前記印字媒体の前記副走査方向の1回の搬送幅に相当する各領域への印字が完了するようにし、前記複数回の相対移動のうち、最初の印字ヘッドの主走査において前記印字媒体に前記変形データ部が形成された1番目の印字データが印字され、以後の主走査において、前回の印字済み領域に前回の印字済み領域と次の印字領域にまたがった印字データを順次印字し、その後の主走査において、前記1番目の印字データが印字された領域への所定回数の印字が完了すると、前記領域に隣接する次の領域への最後の主走査において、該次の領域への印字データに形成された変形データ部によって前記1番目の印字データの変形データ部のマスクされ間引きされた部分が補完され、隣接する各領域は、所定の回数の印字が完了すると、該印字が完了した領域に隣接する次の領域への最後の主走査において、該次の領域への印字データに形成された変形データ部によって、印字の完了した領域に接する変形データ部のマスクされ間引きされた部分が補完されるようにしたことを特徴とする請求項7に記載の印字方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2011−79331(P2011−79331A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282505(P2010−282505)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【分割の表示】特願2007−73918(P2007−73918)の分割
【原出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(307015301)武藤工業株式会社 (27)
【Fターム(参考)】