説明

印字装置

【課題】被印字物に対して適切な圧力で印字を行うことができる印字装置を提供する。
【解決手段】押圧部材11の印字面21に形成されている凸部22の形状に応じて、押圧部材11における弾性部材15との接触面23の形状を異ならせる。これにより、押圧部材11ごとに異なる圧力を弾性部材15に作用させることができる。弾性部材15に作用する圧力が押圧部材11ごとに異なる場合には、弾性部材15の変形量が押圧部材11ごとに異なるため、被印字物に作用する圧力も押圧部材11ごとに異なることとなる。したがって、押圧部材11における弾性部材15との接触面23を適切な形状とすることにより、被印字物に対して適切な圧力で印字を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被印字物に対する押圧操作によって印字を行うための印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の印字装置は、例えば食料品などを包装している包装フィルムを被印字物として、当該包装フィルムに製造年月日を印字する際などに用いることができる。当該印字装置には、印字内容に対応する形状の凸部が形成された印字面を有する押圧部材(活字体)が取り付けられ、印字面を介して押圧部材を被印字物に押圧することにより、印字を行うことができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
押圧部材は印字内容に対応して複数用意され、各押圧部材の印字面には、例えば「0」〜「9」などの数字、スラッシュ「/」、ピリオド「.」、ハイフン「‐」、プラス「+」などの記号の他、平仮名、片仮名、漢字などの各種印字内容に対応する形状の凸部がそれぞれ形成される。このような押圧部材を複数組み合わせて、印字装置の保持部材(印版装着部)に並べて取り付けることにより、所望の文字列(記号などを含む。)を被印字物に印字することができる。
【0004】
押圧部材と保持部材との間には、押圧部材を被印字物に対して押圧する際に変形可能な弾性部材が設けられる場合がある。特に、折り返し部を有する包装袋(いわゆるガゼット袋)のように段差のある被印字物などの場合には、押圧部材と保持部材との間に弾性部材を設けることにより、各押圧部材と被印字物との接触圧力にバラツキが生じるのを防止して、より良好に印字を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭62−90129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、押圧部材ごとに印刷面に形成された凸部の形状が異なる場合には、その凸部の端面の面積が押圧部材ごとに異なる。そのため、各押圧部材を同一の力で被印字物に押圧した場合には、押圧部材ごとに異なる圧力が被印字物に作用することとなる。
【0007】
この場合、押圧部材の印字面に形成された凸部が、例えば「0」〜「9」の数字に対応する形状である場合などには、被印字物に対して適切な圧力で押圧部材を押圧することができたとしても、例えばピリオド「.」、ハイフン「‐」、プラス「+」などの記号に対応する形状である場合などには、凸部の端面の面積が比較的小さいため、被印字物に対する押圧部材の圧力が高くなりすぎるおそれがある。
【0008】
図7は、被印字物102に対して押圧部材111が押圧される際の態様の一例を示した斜視図である。図7に示すように、押圧部材111の下面には凸部122を有する印字面121が形成されており、当該押圧部材111の凸部122の端面(下端面)が被印字物102に対して上方から押圧されるようになっている。この図7の例では、端面の面積が比較的小さいピリオド「.」に対応する形状の凸部122が印字面121に形成されており、被印字物102に対する押圧部材111の圧力が高すぎるため、その押圧箇所が窪んで、裏面に突出部100が形成されている。このように、被印字物102に対する押圧部材111の圧力が高くなりすぎた場合には、被印字物102の押圧箇所が大きく変形してしまったり、場合によっては、押圧箇所に穴が開いてしまったりする可能性もある。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、被印字物に対して適切な圧力で印字を行うことができる印字装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る印字装置は、被印字物に対する押圧操作によって印字を行うための印字装置であって、印字内容に対応する形状の凸部が形成された印字面を有し、当該印字面を介して被印字物に押圧される押圧部材と、前記押圧部材を保持するための保持部材と、前記押圧部材と前記保持部材との間に設けられ、前記押圧部材を被印字物に対して押圧する際に変形可能な弾性部材とを備え、前記押圧部材の印字面に形成されている凸部の形状に応じて、当該押圧部材における前記弾性部材との接触面の形状が異なることを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、押圧部材の印字面に形成されている凸部の形状に応じて、当該押圧部材における弾性部材との接触面の形状が異なるので、押圧部材ごとに異なる圧力を弾性部材に作用させることができる。弾性部材に作用する圧力が押圧部材ごとに異なる場合には、弾性部材の変形量が押圧部材ごとに異なるため、被印字物に作用する圧力も押圧部材ごとに異なることとなる。したがって、押圧部材における弾性部材との接触面を適切な形状とすることにより、被印字物に対して適切な圧力で印字を行うことができる。
【0012】
前記押圧部材の印字面に形成されている凸部の端面の面積が小さいほど、当該押圧部材における前記弾性部材との接触面の面積が小さいことが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、印字面に形成されている凸部の端面の面積が小さく、同一の力で押圧した場合の被印字物に作用する圧力が大きい押圧部材ほど、弾性部材との接触面の面積が小さく、押圧部材から弾性部材に作用する圧力が大きくなるため、弾性部材の変形量が大きくなる。これにより、被印字物に対する押圧部材の圧力が高くなりすぎるのを防止することができるので、被印字物に対してより適切な圧力で印字を行うことができる。
【0014】
前記押圧部材における前記弾性部材との接触面の面積が、前記押圧部材の印字面に形成されている凸部の端面の面積の5倍以上であることが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、押圧部材における弾性部材との接触面が小さすぎて、押圧部材から弾性部材に作用する圧力が大きくなりすぎるのを防止することができる。押圧部材から弾性部材に作用する圧力が大きくなりすぎると、押圧部材が弾性部材に突き刺さるなどの問題が生じるため、押圧部材における弾性部材との接触面の面積を、押圧部材の印字面に形成されている凸部の端面の面積の5倍以上で適切な値とすることにより、良好に印字を行うことができる。
【0016】
前記押圧部材を加熱するための加熱装置を備え、前記弾性部材が、前記加熱装置の加熱温度において耐熱性を有する材料により形成されていてもよい。
【0017】
このような構成によれば、押圧部材を加熱して印字を行う印字装置において、耐熱性を有する弾性部材を用いて適切な圧力で印字を行うことができる。押圧部材を加熱して印字を行う印字装置では、被印字物が押圧部材からの熱の影響を受けやすいため、被印字物に対する押圧部材の圧力が高くなりすぎると、その押圧箇所が窪んだり、穴が開いてしまったりする可能性が高い。このような印字装置において、上記のように被印字物に対して適切な圧力で印字を行うことができるような構成とすることにより、押圧箇所が窪んだり、穴が開いてしまったりするのを効果的に防止することができる。
【0018】
前記保持部材は、前記押圧部材を複数保持することができ、複数の前記押圧部材を被印字物に対して押圧する際に、各押圧部材の前記接触面が前記弾性部材に接触するような構成であってもよい。
【0019】
このような構成によれば、複数の押圧部材を被印字物に対して押圧する際に、押圧部材ごとに異なる圧力が弾性部材に作用するため、弾性部材における各押圧部材との接触領域が、押圧部材ごとに異なる変形量で変形する。したがって、各押圧部材から被印字物に作用する圧力を押圧部材ごとに異ならせて、被印字物に対して適切な圧力で印字を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る印字装置の一例を示した斜視図である。
【図2】印字部の内部構成の一例を示した断面図である。
【図3】印字部の要部分解斜視図である。
【図4】押圧部材の組み合わせの一例を示した斜視図である。
【図5】押圧部材の一例を示した斜視図である。
【図6】接触面の形状の変形例を示した図である。
【図7】被印字物に対して押圧部材が押圧される際の態様の一例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る印字装置1の一例を示した斜視図である。この印字装置1は、被印字物2を載置するための基台3と、基台3に対して回転軸6を中心に回動可能に取り付けられた印字部4と、印字部4を回動させて被印字物2に対する押圧操作を行なうための操作レバー5とを備えている。
【0022】
被印字物2としては、例えば食料品を包装している包装フィルムなどを挙げることができるが、これに限らず、食料品以外の物を包装している包装フィルムや、包装用以外のフィルムなどであってもよいし、フィルム以外の物であってもよい。ユーザは、被印字物2を基台3上の所定の位置に載置した後、操作レバー5を押し下げて、回転軸6を中心に印字部4を下方に回動させることにより、基台3と印字部4の間に被印字物2を挟み込んで印字を行うことができる。
【0023】
図2は、印字部4の内部構成の一例を示した断面図である。図3は、印字部4の要部分解斜視図である。印字部4には、被印字物2に対して押圧される押圧部材11と、押圧部材11を保持するための保持部材12と、押圧部材11を加熱するための加熱装置13と、印字テープ140(インクリボン)を搬送するための印字テープ搬送機構14とが備えられている。
【0024】
押圧部材11は、例えば真鍮などの金属により形成された柱状体からなり、上下方向に延びるように保持部材12に取り付けられる。この例では、保持部材12に押圧部材11を複数保持することができるようになっている。より具体的には、複数の押圧部材11を幅方向L1に並べて、前後方向L2に2列で保持することができるようになっている。なお、図3では、押圧部材11を1列のみ示している。押圧部材11は、前後方向L2に2列で保持されるような構成に限らず、1列のみであってもよいし、3列以上で保持されるような構成であってもよい。
【0025】
押圧部材11の下端面は、被印字物2に対向する印字面21を構成しており、当該印字面21を介して押圧部材11が被印字物2に押圧される。図3に示すように、印字面21には印字内容に対応する形状の凸部22が形成されている。押圧部材11は印字内容に対応して複数用意され、各押圧部材11の印字面21には、例えば「0」〜「9」などの数字、スラッシュ「/」、ピリオド「.」、ハイフン「‐」、プラス「+」などの記号の他、平仮名、片仮名、漢字などの各種印字内容に対応する形状の凸部22がそれぞれ形成される。このような押圧部材11を複数組み合わせて、保持部材12に並べて取り付けることにより、所望の文字列(記号などを含む。)を被印字物2に印字することができる。
【0026】
印字テープ搬送機構14には、送出ローラ141、巻取ローラ142、駆動ローラ143及び押えローラ144などが備えられている。送出ローラ141は、ロール状に巻回された印字テープ140を回転可能に保持しており、当該送出ローラ141の回転に伴って印字テープ140が送り出されるようになっている。送出ローラ141から送り出される印字テープ140は、押圧部材11の印字面21に掛け回されるようにして搬送され、回転可能な巻取ローラ142によって巻き取られる。
【0027】
駆動ローラ143は、例えばワンウェイクラッチ(図示せず)を介して連結されたスライド軸145のスライド変位に基づいて回転駆動されるようになっている。スライド軸145は、上下方向に延びるように取り付けられ、上下方向にスライド可能な状態で保持されている。操作レバー5を押し下げて、回転軸6を中心に印字部4を下方に回動させた場合には、スライド軸145の下端部が基台3に当接し、当該スライド軸145が上方に向かってスライド変位する。このとき、上記ワンウェイクラッチの作用により、スライド軸145のスライド量に応じた分だけ駆動ローラ143が回転するようになっている。
【0028】
駆動ローラ143及び押えローラ144は、互いの外周面が対向するように設けられており、送出ローラ141から送り出される印字テープ140は、駆動ローラ143と押えローラ144の間を通って巻取ローラ142へと搬送される。上述のような駆動ローラ143の回転駆動により、印字テープ140を送出ローラ141から自動的に送り出し、巻取ローラ142に巻き取ることができる。このとき、押えローラ144が印字テープ140を駆動ローラ143側に押えることにより、印字テープ140を良好に搬送することができるようになっている。
【0029】
印字テープ140が押圧部材11の印字面21に掛け回されているため、操作レバー5を押し下げて印字部4を被印字物2側に回動させた場合には、押圧部材11の印字面21が印字テープ140を介して被印字物2に押圧されることとなる。これにより、印字テープ140に含まれるインクを被印字物2に転写して、押圧部材11の印字面21に形成されている凸部22の形状に対応する印字内容を印字することができる。本実施形態では、加熱装置13により押圧部材11が加熱されることにより、印字テープ140に含まれるインクを被印字物2に対してより良好に転写することができるようになっている。
【0030】
保持部材12は、上下方向にスライド可能に保持されるとともに、付勢手段の一例である圧縮ばね16により下方に向かって付勢されている。したがって、操作レバー5が押し下げられることにより、押圧部材11の印字面21が印字テープ140を介して被印字物2に押圧された場合には、圧縮ばね16の付勢力に抗して保持部材12が上方にスライドし、押圧時の衝撃が和らげられるようになっている。
【0031】
図3に示すように、押圧部材11と保持部材12の間には、例えばシリコンゴムからなる弾性部材15が設けられている。押圧部材11における印字面21とは反対側の面は、弾性部材15との接触面23を形成している。弾性部材15は、幅方向L1に沿って延びる長尺形状を有しており、幅方向L1に並べて配置された複数の押圧部材11の接触面23に接触するようになっている。図2に例示されるように、押圧部材11を前後方向L2に複数列で配置する場合には、各列に対応付けて弾性部材15が設けられていてもよい。ただし、上記のような構成に限らず、例えば弾性部材15が全ての押圧部材11の接触面23に接触するような構成であってもよいし、所定数の押圧部材11ごとに弾性部材15が設けられた構成などであってもよい。
【0032】
操作レバー5が押し下げられることにより、押圧部材11の印字面21が印字テープ140を介して被印字物2に押圧された場合には、押圧部材11の接触面23から弾性部材15に圧力が作用するため、弾性部材15が変形することとなる。本実施形態では、1つの弾性部材15に対して、複数の押圧部材11の接触面23が接触している。そのため、弾性部材15における各押圧部材11の接触面23との接触領域が、各接触面23からの圧力に応じて変形するようになっている。
【0033】
保持部材12は、押圧部材11及び弾性部材15を収容可能な箱状に形成されている。保持部材12は金属製であり、当該保持部材12を外部から加熱装置13で加熱することにより、保持部材12の内部に設けられている押圧部材11を加熱することができるようになっている。加熱装置13の加熱温度は、例えば100℃〜180℃である。弾性部材15は、加熱装置13の加熱温度において耐熱性を有する材料であれば、シリコンゴムに限らず、他の材料により形成されていてもよい。本実施形態では、押圧部材11と保持部材12との間に弾性部材15が設けられているため、例えば折り返し部を有する包装袋(いわゆるガゼット袋)のように段差のある被印字物2に対して印字を行う場合であっても、各押圧部材11と被印字物2との接触圧力にバラツキが生じるのを防止して、より良好に印字を行うことができる。
【0034】
図4は、押圧部材11の組み合わせの一例を示した斜視図である。この例では、数字やピリオド「.」に対応する凸部22が印字面21に形成された押圧部材11の組み合わせにより、「2010.11.20」という年月日(例えば製造年月日)を表す文字列を被印字物2に印字することができる。
【0035】
図4の例において、ピリオド「.」に対応する凸部22は、数字に対応する凸部22と比べて端面の面積が小さい。そのため、各押圧部材11を同一の力で被印字物2に押圧した場合には、ピリオド「.」に対応する凸部22の端面から被印字物2に作用する圧力が高くなりすぎて、その押圧箇所が窪み、裏面に突出部が形成されてしまったり、押圧箇所に穴が開いてしまったりするおそれがある。このような問題は、ピリオド「.」に対応する凸部22を有する押圧部材11に限らず、例えばハイフン「‐」やプラス「+」など、凸部22の端面の面積が比較的小さい押圧部材11には同様に生じる。
【0036】
そこで、本実施形態では、押圧部材11の印字面21に形成されている凸部22の形状に応じて、押圧部材11における弾性部材15との接触面23の形状を異ならせることにより、押圧部材11ごとに異なる圧力を弾性部材15に作用させることができるようになっている。弾性部材15に作用する圧力が押圧部材11ごとに異なる場合には、弾性部材15の変形量が押圧部材11ごとに異なるため、被印字物2に作用する圧力も押圧部材11ごとに異なることとなる。したがって、押圧部材11における弾性部材15との接触面23を適切な形状とすることにより、被印字物2に対して適切な圧力で印字を行うことができる。
【0037】
図5は、押圧部材11の一例を示した斜視図である。この例では、ピリオド「.」に対応する凸部22が印字面21に形成された押圧部材11が示されている。この押圧部材11における印字面21とは反対側の面には、切削工具を用いた切削加工により、もともとの端面よりも面積が小さい接触面23が形成されている。この例における接触面23は、短辺が1mm、長辺が2mmの長方形状に形成されており、0.3〜0.5mmの高さで突出している。なお、切削前のもともとの端面は、短辺が2.4mm、長辺が4.8mmの長方形状である。
【0038】
図4に示した例では、ピリオド「.」に対応する凸部22が印字面21に形成された押圧部材11についてのみ、印字面21とは反対側の端面が切削されており、数字に対応する凸部22が印字面21に形成された他の押圧部材11については、切削が行われていない。これにより、押圧部材11の印字面21に形成されている凸部22の端面の面積が小さいほど、押圧部材11における弾性部材15との接触面23の面積が小さくなるように構成されている。
【0039】
図3に示すように、凸部22の端面の面積が小さい押圧部材11(例えばピリオド「.」に対応する凸部22が形成された押圧部材11)の接触面231と、凸部22の端面の面積が大きい押圧部材11(例えば数字に対応する凸部22が形成された押圧部材11)の接触面232とでは、接触面231の方が接触面232よりも面積が小さい。そのため、接触面231から弾性部材15に作用する圧力F1の方が、接触面232から弾性部材15に作用する圧力F2よりも大きくなる。
【0040】
このように、印字面21に形成されている凸部22の端面の面積が小さく、同一の力で押圧した場合の被印字物2に作用する圧力が大きい押圧部材11(例えばピリオド「.」に対応する凸部22が形成された押圧部材11)ほど、弾性部材15との接触面23(図3の例では接触面231)の面積が小さく、押圧部材11から弾性部材15に作用する圧力(図3の例では圧力F1)が大きくなるため、弾性部材15の変形量が大きくなる。これにより、被印字物2に対する押圧部材11の圧力が高くなりすぎるのを防止することができるので、被印字物2に対してより適切な圧力で印字を行うことができる。
【0041】
特に、本実施形態のように、複数の押圧部材11を被印字物2に対して押圧する際に、各押圧部材11の接触面23が弾性部材15に接触するような構成の場合には、押圧部材11ごとに異なる圧力が弾性部材15に作用するため、弾性部材15における各押圧部材11との接触領域が、押圧部材11ごとに異なる変形量で変形する。したがって、各押圧部材11から被印字物2に作用する圧力を押圧部材11ごとに異ならせて、被印字物2に対して適切な圧力で印字を行うことができる。
【0042】
また、本実施形態のように押圧部材11を加熱して印字を行う印字装置1では、被印字物2が押圧部材11からの熱の影響を受けやすいため、被印字物2に対する押圧部材11の圧力が高くなりすぎると、その押圧箇所が窪んだり、穴が開いてしまったりする可能性が高い。このような印字装置1において、上記のように被印字物2に対して適切な圧力で印字を行うことができるような構成とすることにより、押圧箇所が窪んだり、穴が開いてしまったりするのを効果的に防止することができる。
【0043】
接触面23の形状は、長方形状に限らず、正方形状であってもよいし、他の任意の形状であってもよいが、接触面23の面積が凸部22の端面の面積の5倍以上であることが好ましく、15倍程度であればより好ましい。これにより、押圧部材11における弾性部材15との接触面23が小さすぎて、押圧部材11から弾性部材15に作用する圧力が大きくなりすぎるのを防止することができる。押圧部材11から弾性部材15に作用する圧力が大きくなりすぎると、押圧部材11が弾性部材15に突き刺さるなどの問題が生じるため、押圧部材11における弾性部材15との接触面23の面積を、押圧部材11の印字面21に形成されている凸部22の端面の面積の5倍以上で適切な値とすることにより、良好に印字を行うことができる。
【0044】
図6は、接触面23の形状の変形例を示した図である。接触面23は、図5の例のように1つの面からなる構成に限らず、図6(a)の例のように2つ以上の面からなる構成であってもよい。この図6(a)の例では、接触面23が押圧部材11の端面の一端から他端まで延びている。そのため、接触面23を形成するための切削加工を1回の工程で行うことができるので、図5の例のように複数回の工程で切削加工を行わなければならない構成と比べて、押圧部材11の加工が容易である。
【0045】
図6(b)の例は、接触面23が1つの面からなる構成であるが、接触面23が押圧部材11の端面の一端から他端まで延びている。この例においても、図5の例と比べて、接触面23を形成するための切削加工の工程数を減らすことができるので、押圧部材11の加工が容易である。
【0046】
図6の例では、接触面23が、押圧部材11の端面の長辺に対して平行に延びるような構成が示されているが、このような構成に限らず、押圧部材11の端面の短辺に対して平行に延びるような構成であってもよい。また、接触面23は、一直線状に延びるような構成に限らず、湾曲線状や屈曲線状の他、特殊な形状に形成することもできる。
【0047】
押圧部材11は、真鍮を切削することにより形成されたものに限らず、他の各種材料を用いて任意の加工方法により形成することができる。例えば、鉛を用いて鋳造により押圧部材11を形成することも可能である。ただし、切削加工により押圧部材11を形成する場合には、印字面21に形成される凸部22の端縁部が鋭利になりやすく、当該凸部22を介して押圧部材11が被印字物2に押圧された場合に、被印字物2が変形したり、穴が開いたりする可能性が高い。したがって、本発明は、押圧部材11が切削加工により形成される場合に特に有効である。
【符号の説明】
【0048】
1 印字装置
2 被印字物
3 基台
4 印字部
5 操作レバー
6 回転軸
11 押圧部材
12 保持部材
13 加熱装置
14 印字テープ搬送機構
15 弾性部材
21 印字面
22 凸部
23 接触面
140 印字テープ
141 送出ローラ
142 巻取ローラ
143 駆動ローラ
144 ローラ
145 スライド軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印字物に対する押圧操作によって印字を行うための印字装置であって、
印字内容に対応する形状の凸部が形成された印字面を有し、当該印字面を介して被印字物に押圧される押圧部材と、
前記押圧部材を保持するための保持部材と、
前記押圧部材と前記保持部材との間に設けられ、前記押圧部材を被印字物に対して押圧する際に変形可能な弾性部材とを備え、
前記押圧部材の印字面に形成されている凸部の形状に応じて、当該押圧部材における前記弾性部材との接触面の形状が異なることを特徴とする印字装置。
【請求項2】
前記押圧部材の印字面に形成されている凸部の端面の面積が小さいほど、当該押圧部材における前記弾性部材との接触面の面積が小さいことを特徴とする請求項1に記載の印字装置。
【請求項3】
前記押圧部材における前記弾性部材との接触面の面積が、前記押圧部材の印字面に形成されている凸部の端面の面積の5倍以上であることを特徴とする請求項2に記載の印字装置。
【請求項4】
前記押圧部材を加熱するための加熱装置を備え、
前記弾性部材が、前記加熱装置の加熱温度において耐熱性を有する材料により形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の印字装置。
【請求項5】
前記保持部材は、前記押圧部材を複数保持することができ、
複数の前記押圧部材を被印字物に対して押圧する際に、各押圧部材の前記接触面が前記弾性部材に接触することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の印字装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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