説明

印字装置

【目的】各特定処理機能プログラム等を記憶させるメモリ容量を増大させることなくある特定処理機能に対する対応処理機能を選択実行可能でかつ取扱容易で適用性の広い印字装置を提供する。
【構成】本装置は、対応処理機能データ記憶手段23Dと,判別手段(21,22)と,優先実行制御手段(21,22)とを設け、特定キー入力信号が発生されると、判別手段(21,22)は対応処理機能データ記憶手段23Dを検索して対応処理機能データが記憶されているか否かを判別する。対応処理機能データが記憶されていると判別された場合には、優先実行制御手段(21,22)がメモリ22Pに記憶された特定処理機能データに代えて当該対応処理機能データを優先使用しかつ特定処理機能プログラムに基づき対応処理機能を実行させかつ対応処理機能データが記憶されていないと判別された場合には特定処理機能データを実行可能に構成してある。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特定キー入力信号が発生された場合に特定処理機能プログラムに基づき特定処理機能データを使用した特定処理機能を実行可能に形成された印字装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図3において、印字装置10は、制御部20,キーボード30,印字部40,印字駆動部50,用紙駆動部60を含み、データ通信回線1で接続された上位機器(ホストコンピュータ…図示省略)から伝送された印字データに基づき印字処理可能に形成されている。
【0003】しかし、印字データが伝送されて来るものと形成されていても、印字装置自体で各種処理機能(例えば、パワーON/OFF,Hex Dump,セットアップ,テストパターンプリント,用紙改行等々)を設けなければならず、かつこれら各機能をキーボード20上の機能キーの押下操作によって選択的に実行可能に形成しなければならない。
【0004】一方において、印字装置10も例外でなく一層の小型軽量化が強く要請されることから、キーボード20に配設可能な機能キーの数は益々減少傾向にある。図3の場合は、3つのFFキー31,CCキー32,PWRキー33である。なお、35はエラー表示ランプ、36はオンライン表示ランプである。
【0005】したがって、1つの機能キーを押下操作することによって単独出力されるキー入力信号で1つの機能を選択実行させる1対1出力方式では全機能を選択実行できなくなってしまうので、例えば任意の組合せによる2つの機能キーを同時に押下操作した場合に単独出力の場合と異なるキー入力信号を出力する複数同時操作出力方式や、1つの機能キーを押下操作した後の所定時間経過前に他の機能キーを押下操作したことを条件に異なるキー入力信号を出力する時間差操作出力方式等を採用しているのが実状である。
【0006】例えば、図4では、CCキー32とPWRキー33とを同時に押下操作(ON)した時から所定時間経過前(ST20のNO)に、FFキー31を押下操作(ON)した場合(ST21のYES)にはHex Dump処理機能を選択実行(ST22)させ、CCキー32をONした場合(ST23のYES)にはテストパターンプリント処理機能を選択実行(ST24)させ、またPWRキー33をONした場合(ST25のYES)にはセットアップ処理機能を選択実行(ST26)させるように形成し、かついずれのキー(31,32,33)もONされない場合(ST20のYES)にはオンライン印字処理機能を選択実行(ST27)させるものと形成されている。
【0007】すなわち、機能キー31〜33を用いて各特定キー入力信号が発生された場合にメモリ(例えばROM22のプログラム格納部)22Pに記憶された当該各特定処理機能プログラムに基づき各特定処理機能データを使用した各特定処理機能を実行可能に構成されている。
【0008】そして、各処理機能の選択プログラム,各処理機能プログラムおよび各処理機能データは、メモリ22Pに固定化格納記憶される。また、キーボード30は3つの機能キー(31〜33)を配設可能な最小的寸法として設計製作される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、運用の実際において、ある特定処理機能に代えてこれに対応する使用者側の所望処理(対応処理)を実行させたいとの要求が成される場合がある。例えば、テストパターンによるプリント処理(特定処理)に対して使用者に都合の良い例えばデモパターンでプリント処理(対応処理)したいとの要求である。
【0010】しかし、この要求を満すには、少くともデータ変換を必要とするがテストパターンプリント処理機能データをデモパターンプリント処理機能データに変更することは非常に難しい。選択プログラム,各処理機能プログラムおよび他の処理機能データに影響を及ぼすからである。また、変更したとすると、本来的なテストパターンプリント処理機能を実行できなくなってしまう。これでは、製作・組立上、2種類のメモリ(ROM)を準備しかつ使用者ごとに選択組込みしなければならないので、コスト高等による不利益が大き過ぎる。また、汎用性や適用性が狭い。
【0011】これに対し、デモパターンプリント処理機能プログラムおよびデモパターンプリント処理機能データを追加することが考えられる。しかし、この方法では、上記選択プログラムを大幅変更しなければならずかつメモリ22Pも大容量化しなければならなくなる。しかも、キーボード20上の機能キーの数が限定されているので、テストパターン用とデモパターン用との各特定キー入力信号を区分することが複雑となる。すなわち、取扱いが非常に難しくなってしまう。
【0012】例えば、テストパターンプリント処理機能(特定処理機能)については図4のST20のNO,ST23のYESで選択実行可能としたままとし、かつデモパターンプリント処理機能(対応処理機能)については、例えば図5に示す如く、FFキー31とPWRキー33とを同時に押下操作(ON)したことを条件(ST30のYES)に選択実行させるものと形成した場合を考えると、PWRキー33と同時に押下操作する機能キーの選択ミスが生じ易いからである。
【0013】さらに、図5のST31が他の処理機能を実行させるものと決まっている場合には、デモパターンプリント処理機能を選択実行させるための特定キー入力信号を発生可能な機能キーの組合せを新たに創出しなければならない。この場合は、さらに取扱いが複雑となってしまう。
【0014】本発明の目的は、各特定処理機能プログラム等を記憶させるメモリ容量を増大させることなくある特定処理機能に対する対応処理機能を選択実行可能でかつ取扱容易で適用性の広い印字装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明に係る印字装置は、特定キー入力信号が発生された場合にメモリに記憶された特定処理機能プログラムに基づき特定処理機能データを使用した特定処理機能を実行可能に形成された印字装置において、前記特定処理機能データに対応する対応処理機能データを記憶する対応処理機能データ記憶手段と、前記特定キー入力信号が発生された場合に該対応処理機能データ記憶手段を検索して対応処理機能データが記憶されているか否かを判別する判別手段と、対応処理機能データが記憶されていると判別されたことを条件に前記特定処理機能データに代えて当該対応処理機能データを優先使用しかつ前記特定処理機能プログラムに基づき前記対応処理機能を実行させる優先実行制御手段と、を設けたことを特徴とする。
【0016】
【作用】上記構成による本発明では、特定キー入力信号が発生されると、判別手段は対応処理機能データ記憶手段を検索して対応処理機能データが記憶されているか否かを判別する。対応処理機能データが記憶されていると判別された場合には、優先実行制御手段がメモリに記憶された特定処理機能データに代えて当該対応処理機能データを優先使用しかつ特定処理機能プログラムに基づき対応処理機能を実行させる。
【0017】したがって、メモリに記憶された各特定処理機能プログラムや各特定処理機能データを変更させたりメモリの大容量化を必要としない。しかも、当該特定処理機能を選択実行させるための1つの特定キー入力信号を発生させればよいので、選択プログラムを変更したり新たな機能キーの増設を必要としない。よって、メモリ容量を増大させることなく特定処理機能に対する対応処理機能を選択実行可能でかつ取扱容易で適用性を拡大できる。
【0018】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。本印字装置10は、図1に示す如く、基本的構成(20,30,40,50,60)が従来例(図3)の場合と同じとされ、かつ対応処理機能データ記憶手段23Dと,判別手段(21,22)と,優先実行制御手段(21,22)とを設け、1つの特定キー入力信号により当該特定処理機能に対する対応処理機能を選択的に実行可能に構成されている。
【0019】また、特定処理機能がテストパターンプリント処理機能とされ、かつ対応処理機能がデモパターンプリント処理機能とされている。
【0020】また、この実施例の場合、特定処理機能を選択実行させるための特定キー入力信号は、図2に示す如く、FFキー31とPWRキー33とを同時に押下操作(ST30のYES)した場合に発生されるものと形成してある。したがって、従来例(図4)の場合と同じ一部の選択プログラム(ST20〜27)のうちのST24については、他の処理機能(例えば、用紙改行処理機能)に使用可能である。
【0021】図1において、制御部20は、CPU21と,ROM22と,RAM23と,データ通信回線1で接続された上位機器(図示省略)とのインターフェイス(I/F)24と,入出力ポート(I/O)25とを含み、装置全体を駆動制御する。
【0022】ここに、対応処理機能データ記憶手段は、メモリ22Pに記憶された特定処理機能データ(テストパターンプリント処理データ)に対応する対応処理機能データ(デモパターンプリント処理データ)を記憶する手段で、バッテリーバックアップされたRAM23の一部記憶エリア23Dから形成されている。
【0023】対応処理機能データは、制御部20に着脱可能とされたキーボードを用いて設定入力可能かつデータ通信回線1を介して上位機器からダウンロード可能とされている。
【0024】なお、この対応処理機能データ記憶手段は、フラッシュメモリやROM(22)等から形成してもよい。また、対応処理機能プログラムは、メモリ22Pに記憶された特定処理機能プログラムをそのまま兼用するものと形成されている。
【0025】判別手段は、当該特定キー入力信号が発生された場合(図2のST10のYES)に対応処理機能データ記憶手段23Dを検索して対応処理機能データが記憶されているか否かを判別する手段で、判別プログラムを格納させたROM22とCPU21とから形成され、図2のST12で実行される。
【0026】優先実行制御手段は、対応処理機能データが記憶されていると判別されたことを条件(ST12のYES)に特定処理機能データに代えて当該対応処理データを優先使用しかつメモリ22Pに記憶された特定処理機能プログラムに基づき対応処理機能を実行させる手段で、優先実行制御プログラムを格納させたメモリ22PとCPU21とから形成され、図2のST13,ST15で実行される。
【0027】したがって、対応処理機能データが記憶されていない場合(ST12のNO)は、優先実行制御手段(21,22P)が働かないので、FFキー31とPWRキー33とを同時に押下操作(ON)した場合に発生(ST10のYES)される特定キー入力信号は、本来的な特定処理機能データを使用した特定処理機能を選択実行するものとなる(ST14,ST15)。
【0028】なお、PWRキー33のみが押下操作(ST10のNO)された場合の特定キー入力信号は、パワーON処理機能を選択実行(ST16)するものである。2回目にPWRキー33と押下操作(ST10のNO)した場合は、パワーOFF処理機能を選択実行(ST16)するものとなる。
【0029】かかる構成の実施例によれば、特定処理機能(テストパターンプリント処理機能)に対する対応処理機能(デモパターンプリント処理機能)を実行させたい旨の要求がある場合には、対応処理機能データ記憶手段23Dに所望のデモパターンプリント処理機能データを設定記憶する。着脱可能なキーボードを用いて設定記憶しあるいは上位機器からダウンロードすればよい。
【0030】なお、対応処理機能データ記憶手段をROM(22)から形成した場合は、製作時に記憶しておく。
【0031】ここに、特定処理機能(テストパターンプリント処理機能)を選択実行させるための特定キー入力信号を、キーボード30上のFFキー31とPWRキー33とを同時に押上操作(ON)して発生させる(図2のST10のYES)。
【0032】すると、判別手段(21,22)が対応処理機能データ記憶手段23Dを検索(ST11)して対応処理機能データが記憶されているか否かを判別する(ST12)。
【0033】記憶されていると判別(ST12のYES)されると、優先実行制御手段(21,22)が働きメモリ22Pに記憶されている特定処理機能データ(テストパターンプリント処理機能データ)に代え対応処理機能データ(デモパターンプリント処理機能データ)を優先使用(ST13)しかつメモリ22Pに記憶されている特定処理機能プログラム(テストパターンプリント処理機能プログラム)に基づき特定処理機能すなわち対応処理機能を実行させる(ST15)。
【0034】すなわち、CPU21は、印字部40,印字駆動部50および用紙駆動部60を駆動制御してデモパターンによるセルフプリントを実行する(ST15)。したがって、使用者等は所望のパターンにつきその評価を迅速かつ正確に行う。
【0035】しかして、この実施例によれば、対応処理機能データ記憶手段23Dと,判別手段(21,22)と,優先実行制御手段(21,22)とを設け、1つの特定キー入力信号により当該特定処理機能に対する対応処理機能を選択的に実行可能に構成されているので、コスト高を招く各特定処理機能プログラム等を記憶させるメモリ22Pの容量を増大させたりプログラム変更をする必要がなく、ある特定処理機能(テストパターンプリント処理機能)に対する対応処理機能(デモパターンプリント処理機能)を選択実行可能で取扱いも非常に容易であるとともに、対応処理機能の実行が所望された場合に対応処理機能データ記憶手段23Dに対応処理機能データを記憶するだけでよく、かつ所望されない場合は記憶しなければよいので適用性が広く汎用性に富む。
【0036】また、対応処理機能データ記憶手段23DをRAM23を用いて構築してあるので、選択プログラム,各特定処理機能プログラムおよび各特定処理機能データを格納させたメモリ22P(ROM22)に改変等を一切加えないから、この点からもコスト高を招かずかつ汎用性が広い。
【0037】また、対応処理機能データ記憶手段23Dへの対応処理機能データの設定記憶が、制御部20に着脱可能なキーボードを用いて行え、かつ上位機器からダウンロード可能に形成されているので、所定の対応処理機能データを迅速かつ正確に設定記憶できるとともに設置場所でも簡単に記憶できる。
【0038】また、対応処理機能を選択実行させる特定キー入力信号は、当該特定処理機能を選択実行させる特定キー入力信号と同じ、つまりいずれの場合もキーボード30上のFFキー31とPWRキー33とを同時に押下操作(ON)すればよいので、取扱が容易であるばかりか、キーボード30の機能キーの増大やメモリ22Pに格納された選択プログラムを変更しなくともよい。したがって、本装置10の小型軽量化および低コスト化をいささかも妨げることがない。
【0039】
【発明の効果】本発明によれば、対応処理機能データ記憶手段と,判別手段と,優先実行制御手段とを設け、1つの特定キー入力信号により当該特定処理機能に対する対応処理機能を選択的に実行可能に構成されているので、コスト高を招く各特定処理機能プログラム等を記憶させるメモリの容量を増大させたりプログラム変更をする必要がなく、ある特定処理機能(テストパターンプリント処理機能)に対する対応処理機能(デモパターンプリント処理機能)を選択実行可能で取扱いも非常に容易であるとともに、対応処理機能の実行が所望された場合に対応処理機能データ記憶手段に対応処理機能データを記憶するだけでよく、かつ所望されない場合は記憶しなければよいので適用性が広く汎用性に富む。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示すブロック図である。
【図2】同じく、動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】従来例を説明するためのブロック図である。
【図4】同じく、動作を説明するためのフローチャート(1)である。
【図5】同じく、動作を説明するためのフローチャート(2)である。
【符号の説明】
1 データ通信回線
10 印字装置
20 制御部
21 CPU(判別手段,優先実行制御手段)
22 ROM(判別手段,優先実行制御手段)
22P メモリ
23 RAM
23D 対応処理機能データ記憶手段
24 インターフェイス
25 入出力ポート
30 キーボード
31 FFキー
32 CCキー
33 PWRキー
40 印字部
50 印字駆動部
60 用紙駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 特定キー入力信号が発生された場合にメモリに記憶された特定処理機能プログラムに基づき特定処理機能データを使用した特定処理機能を実行可能に形成された印字装置において、前記特定処理機能データに対応する対応処理機能データを記憶する対応処理機能データ記憶手段と、前記特定キー入力信号が発生された場合に該対応処理機能データ記憶手段を検索して対応処理機能データが記憶されているか否かを判別する判別手段と、対応処理機能データが記憶されていると判別されたことを条件に前記特定処理機能データに代えて当該対応処理機能データを優先使用しかつ前記特定処理機能プログラムに基づき前記対応処理機能を実行させる優先実行制御手段と、を設けたことを特徴とする印字装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平8−11387
【公開日】平成8年(1996)1月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−146757
【出願日】平成6年(1994)6月28日
【出願人】(000003562)株式会社テック (5,631)