説明

印画装置および印画方法

【課題】受像紙の両面に対して濃度ムラ無く印画する印画装置を提供する。
【解決手段】印画装置10は、受像紙12を供給する受像紙供給部11と、受像紙供給部11の下流側に位置し、受像紙12を搬送する第1搬送部20および第2搬送部25と、第1搬送部20および第2搬送部25の下流側に設けられ、受像紙12の両面に対して印画可能なサーマルヘッド30と、を備えている。印画装置10の第1搬送部20は、受像紙12の幅方向全域にわたって延び、受像紙12の一面12aに当接する第1グリップローラー21と、第1グリップローラー21に受像紙12を介して対向するよう設けられた第1ニップローラー22と、を有している。また第2搬送部25は、受像紙12の幅方向全域にわたって延びる第2グリップローラー26と、第2グリップローラーに対向するよう設けられた第2ニップローラー27と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受像紙の両面に対して印画する印画装置および印画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
受像層を有する受像紙に対して、サーマルヘッドと、染料層および保護層を含むインクリボンとを用いて印画する印画装置が知られている。このような印画装置においては、一般に、その外周面に多数の突起部が設けられたグリップローラーが、受像紙をサーマルヘッドへ向けて精度良く搬送するために用いられる。
【0003】
例えば特許文献1において、受像紙の一面側に配置されたピンチローラーと、当該ピンチローラーに受像紙を介して対向するよう、受像紙の他面側に配置されたグリップローラーと、ピンチローラーおよびグリップローラーの下流側であって、受像紙の一面側に配置されたサーマルヘッドと、を備えた印画装置が提案されている。この場合、グリップローラーを通った後の受像紙の他面には、グリップローラーの多数の突起部により、多数の凹部が形成される。また、受像紙の一面には、サーマルヘッドにおいてインクリボンの染料層および保護層が転写される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−137709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、主にフォトブックなどの写真集用途として、受像紙の両面(一面および他面)に対して印画を実施することが求められる場合がある。この場合、一般に、はじめに、受像紙の他面側に配置された一のグリップローラーを用いて受像紙をサーマルヘッドへ搬送し、その後、サーマルヘッドにより受像紙の一面にインクリボンの染料層および保護層を転写させる。次に、受像紙の一面側に配置されたその他のグリップローラーを用いて受像紙をサーマルヘッドへ搬送し、その後、サーマルヘッドにより受像紙の他面にインクリボンの染料層および保護層を転写させる。このようにして、受像紙の両面に対して印画が実施される。
【0006】
しかしながら、上述のようにして受像紙の両面に対して印画を実施する場合、受像紙の一面に転写された保護層には、その他のグリップローラーの突起部によって多数の凹部が形成される。この場合、多数の凹部によって保護層の耐久性が劣化し、これによって、両面印画された受像紙の画質が早期に劣化することが考えられる。
【0007】
また、一般に、グリップローラーの突起部は、その外周面の一部分にのみ設けられている。このため、受像紙のうちグリップローラーの突起部により凹部が形成されている領域と凹部が形成されていない領域との間で、印画された画像の濃度の差が生じることが考えられる。
【0008】
本発明は、このような課題を効果的に解決し得る印画装置および印画方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、両面に受像層を有する受像紙を供給する受像紙供給部と、受像紙供給部の下流側に位置し、前記受像紙を搬送する第1搬送部および第2搬送部と、前記第1搬送部および前記第2搬送部の下流側に設けられ、受像紙の両面に対して印画可能なサーマルヘッドと、前記受像紙と前記サーマルヘッドとの間に染料層と保護層とを含むインクリボンを供給するインクリボン供給部と、を備え、前記第1搬送部は、前記受像紙の幅方向全域にわたって延び、その外周面に均一に配置された多数の突起部を有し、前記受像紙の一面に当接する第1グリップローラーと、当該第1グリップローラーに受像紙を介して対向するよう設けられた第1ニップローラーと、を有し、前記第2搬送部は、前記受像紙の幅方向全域にわたって延び、その外周面に均一に配置された多数の突起部を有し、前記受像紙の他面に当接する第2グリップローラーと、当該第2グリップローラーに受像紙を介して対向するよう設けられた第2ニップローラーと、を有し、前記サーマルヘッドにより前記インクリボンの染料層および保護層を前記受像紙の一面に転写させる場合、受像紙が、前記受像紙供給部から前記第1グリップローラーおよび前記第1ニップローラーを介してサーマルヘッドへ搬送され、前記サーマルヘッドにより前記インクリボンの染料層および保護層を前記受像紙の他面に転写させる場合、受像紙が、前記受像紙供給部から第2グリップローラーおよび第2ニップローラーを介してサーマルヘッドへ搬送されることを特徴とする印画装置である。
【0010】
本発明による印画装置において、前記第1グリップローラーの多数の突起部または前記第2グリップローラーの多数の突起部により、前記受像紙の一面または他面に多数の凹部が形成され、好ましくは、各凹部の断面積の平均値が0.5×10−3〜2.5×10−3mmの範囲内となっており、隣接する凹部間の距離の平均値が0.3〜0.6mmの範囲内となっている。
【0011】
本発明による印画装置において、前記サーマルヘッドにより前記インクリボンの染料層および保護層を前記受像紙の一面または他面に転写させる場合、はじめに、インクリボンの染料層が受像紙の一面または他面に転写され、その後、インクリボンの保護層が受像紙の一面または他面に転写されてもよい。
【0012】
本発明による印画装置において、好ましくは、前記インクリボンの保護層が、アクリル系樹脂材料からなっている。
【0013】
本発明は、両面に受像層を有する受像紙を送り出す工程と、前記受像紙の幅方向全域にわたって延び、その外周面に均一に配置された多数の突起部を有し、前記受像紙の一面に当接する第1グリップローラーと、当該第1グリップローラーに受像紙を介して対向するよう設けられた第1ニップローラーとにより、前記受像紙をサーマルヘッドへ搬送する工程と、サーマルヘッドによりインクリボンの染料層および保護層を前記受像紙の一面に転写させる工程と、前記受像紙の幅方向全域にわたって延び、その外周面に均一に配置された多数の突起部を有し、前記受像紙の他面に当接する第2グリップローラーと、当該第2グリップローラーに受像紙を介して対向するよう設けられた第2ニップローラーとにより、前記受像紙をサーマルヘッドへ搬送する工程と、サーマルヘッドによりインクリボンの染料層および保護層を前記受像紙の他面に転写させる工程と、を備えたことを特徴とする印画方法である。
【0014】
本発明による印画方法において、前記第1グリップローラーの多数の突起部または前記第2グリップローラーの多数の突起部により、前記受像紙の一面または他面に多数の凹部が形成され、好ましくは、各凹部の断面積の平均値が0.5×10−3〜2.5×10−3mmの範囲内となっており、隣接する凹部間の距離の平均値が0.3〜0.6mmの範囲内となっている。
【0015】
本発明による印画方法において、前記サーマルヘッドにより前記インクリボンの染料層および保護層を前記受像紙の一面または他面に転写させる場合、はじめに、インクリボンの染料層が受像紙の一面または他面に転写され、その後、インクリボンの保護層が受像紙の一面または他面に転写されてもよい。
【0016】
本発明による印画方法において、好ましくは、前記インクリボンの保護層が、アクリル系樹脂材料からなっている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、サーマルヘッドによりインクリボンの染料層および保護層を受像紙の一面に転写させる場合、受像紙は、受像紙の幅方向全域にわたって延び、その外周面に均一に配置された多数の突起部を有し、受像紙の一面に当接する第1グリップローラーと、当該第1グリップローラーに受像紙を介して対向するよう設けられた第1ニップローラーとを介してサーマルヘッドへ搬送される。一方、サーマルヘッドによりインクリボンの染料層および保護層を受像紙の他面に転写させる場合、受像紙は、受像紙の幅方向全域にわたって延び、その外周面に均一に配置された多数の突起部を有し、受像紙の他面に当接する第2グリップローラーと、当該第2グリップローラーに受像紙を介して対向するよう設けられた第2ニップローラーとを介してサーマルヘッドへ搬送される。このため、受像紙に転写された保護層に凹部が形成されることはなく、このことにより、両面印画された受像紙の画質を長期にわたって良好に保つことができる。また、各グリップローラーの突起部をその外周面に均一に配置することにより、受像紙に印画された画像に濃度ムラが生じるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態における印画装置を示す図。
【図2】図2は、図1に示す印画装置のグリップローラーを示す斜視図。
【図3】図3は、図1に示す印画装置の受像紙供給部から供給される受像紙を示す断面図。
【図4】図4は、図1に示す印画装置のインクリボン供給部から供給されるインクリボンを示す図。
【図5A】図5Aは、本発明の第1の実施の形態において、受像紙の一面への印画が実施される様子を示す図。
【図5B】図5Bは、図5Aに示す受像紙のVB−VB線に沿った断面図。
【図5C】図5Cは、図5Aに示す受像紙のVC−VC線に沿った断面図。
【図6A】図6Aは、本発明の第1の実施の形態において、受像紙の他面への印画が実施される様子を示す図。
【図6B】図6Bは、図6Aに示す受像紙のVIB−VIB線に沿った断面図。
【図6C】図6Cは、図6Aに示す受像紙のVIC−VIC線に沿った断面図。
【図7A】図7Aは、第1の比較の形態において、受像紙の一面への印画が実施される様子を示す図。
【図7B】図7Bは、図7Aに示す受像紙のVIIB−VIIB線に沿った断面図。
【図7C】図7Cは、図7Aに示す受像紙のVIIC−VIIC線に沿った断面図。
【図8A】図8Aは、第1の比較の形態において、受像紙の他面への印画が実施される様子を示す図。
【図8B】図8Bは、図8Aに示す受像紙のVIIIB−VIIIB線に沿った断面図。
【図8C】図8Cは、図8Aに示す受像紙のVIIIC−VIIIC線に沿った断面図。
【図9A】図9Aは、第2の比較の形態におけるグリップローラーを示す図。
【図9B】図9Bは、第2の比較の形態において、印画後の受像紙を示す断面図。
【図10】図10は、本発明の第1の実施の形態の変形例における印画装置を示す図。
【図11】図11は、本発明の第2の実施の形態における印画装置を示す図。
【図12】図12は、本発明の第2の実施の形態の変形例における印画装置を示す図。
【図13】図13は、本発明の第2の実施の形態のその他の変形例における印画装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1乃至図10を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。はじめに図1を参照して、本実施の形態による印画装置10全体について説明する。
【0020】
印画装置
図1に示すように、印画装置10は、両面に受像層16,17(後述)を有する受像紙12を供給する受像紙供給部11と、受像紙供給部11の下流側に位置し、受像紙12を搬送する第1搬送部20および第2搬送部25と、第1搬送部20および第2搬送部25の下流側に設けられ、受像紙12の両面に対して印画可能なサーマルヘッド30と、受像紙12とサーマルヘッド30との間にインクリボン35を供給するインクリボン供給部31と、を備えている。
【0021】
図1に示すように、サーマルヘッド30の近傍には、受像紙12およびインクリボン35を介してサーマルヘッド30に対向するプラテンローラー33が設けられている。また、サーマルヘッド30には、サーマルヘッド30をプラテンローラー33に向かって駆動するサーマルヘッド駆動機構(図示せず)が取り付けられており、このサーマルヘッド駆動機構によりサーマルヘッド30を駆動することによって、インクリボン35のインクを所定パターンで受像紙12に転写することができる。転写後のインクリボン35は、図1に示すインクリボン巻取部32により巻き取られる。
【0022】
(第1搬送部)
図1に示すように、印画装置10の第1搬送部20は、受像紙12の幅方向全域にわたって延び、受像紙12の一面12aに当接する第1グリップローラー21と、第1グリップローラー21に受像紙12を介して対向するよう設けられた第1ニップローラー22と、を有している。なお、受像紙12の幅方向とは、受像紙12の搬送方向(図1において矢印Dで示される方向)に直交する方向であって、後述する図3において矢印Dで示される方向のことである。
【0023】
(第2搬送部)
第1搬送部20と同様に、第2搬送部25は、図1に示すように、受像紙12の幅方向全域にわたって延びる第2グリップローラー26と、第2グリップローラーに対向するよう設けられた第2ニップローラー27と、を有している。第2グリップローラー26は、後に図6Aを参照して詳細に説明するように、受像紙12の他面12bへの印画を実施する際に、受像紙12の他面12bに当接するグリップローラーである。また、第2ニップローラーは、受像紙12の他面12bへの印画を実施する際に、第2グリップローラーに受像紙12を介して対向するよう設けられたニップローラーである。
【0024】
(グリップローラー)
次に図2を参照して、上述の第1グリップローラー21および第2グリップローラー26について詳細に説明する。なお各グリップローラー21,26は略同一の構成となっている。
【0025】
グリップローラー21,26は、上述のように、受像紙12の幅方向全域にわたって延びる形状を有している。また図2に示すように、グリップローラー21,26は、その外周面21a,26aに均一に配置された多数の突起部21b,26bを有している。より具体的には、各グリップローラー21,26の幅方向全域および回転方向全域にわたって、外周面21a,26a上に均一に多数の突起部21b,26bが設けられている。これら突起部21b,26bは、図2に示すように円錐状の形状を有している。このため突起部21b,26bは、受像紙12を搬送する際に受像紙12の面12a,12bに刺さり、これによって、受像紙12を確実に精度良く搬送することが可能となっている。
【0026】
次に、多数の突起部21b,26bの配置について詳細に説明する。上述のように、突起部21b,26bは、外周面21a,26a上において均一に配置されている。なお後述するように、受像紙12に形成される印画画像の濃度は、突起部21b,26bで刺されることにより受像紙12の面12a,12bに形成される凹部16b,17bの密度が高いほど低下する。そして、上述の「均一に配置」とは、受像紙12における印画画像の濃度低下の程度が領域により異なる場合であっても、領域ごとの濃度低下の程度の差異が人の目では認識できない程度の差異であるよう、突起部21b,26bが外周面21a,26a上で適度に分散配置されていることを意味している。
【0027】
例えば、隣接する突起部21b,26b間の距離をそれぞれd,dとした場合、距離d,dの平均値は0.3〜0.6mmの範囲内となっており、距離d,dのばらつき(標準偏差)は0.003〜0.02mmの範囲内となっている。より具体的には、突起部21b間の距離dを10点で測定した結果がx〜x10となっている場合に、x〜x10の平均値が例えば0.4〜0.45mmの範囲内となっており、x〜x10の標準偏差が例えば0.005〜0.01mmの範囲内となっている。
【0028】
グリップローラー21,26を構成する材料は、突起部21b,26bが適切に受像紙12の面12a,12bに刺さることができるよう、受像紙12の材料や望まれるグリップ力などに応じて適宜選択される。なお各突起部21b,26bの形状が円錐状である例を示したが、これに限られることはなく、各突起部21b,26bの形状は受像紙12の材料や望まれるグリップ力に応じて適宜設計される。
【0029】
受像紙
次に図3を参照して、印画装置10によりその両面に対して印画が実施される受像紙12について詳細に説明する。図3に示すように、受像紙12は、基材層15と、基材層15の一面15a上に設けられた第1受像層16と、基材層15の他面15b上に設けられた第2受像層17と、を含んでいる。このうち受像層16,17は、インクリボン35の後述する染料層36から移行してくる昇華染料を受容し、形成された画像を維持するためのものである。受像層16,17の厚みは、例えば1〜10μmの範囲内となっている。
【0030】
受像層16,17を形成する樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0031】
インクリボン
次に図4を参照して、インクリボン35について詳細に説明する。図4に示すように、インクリボン35は、染料層36と保護層37とを含んでおり、これら染料層36および保護層37は支持層38により支持されている。
【0032】
図4に示すように、染料層36は、イエローの染料からなるY層36a、マゼンダの染料からなるM層36b、またはシアンの染料からなるC層36cのいずれかからなっている。また図4に示すように、インクリボン35の支持層38上には、Y層36a、M層36b、C層36cおよび保護層37が順次形成されている。このため後述するように、1つのインクリボン35により、受像紙12上にY層36a、M層36b、C層36cおよび保護層37の各層を順次転写させることができる。
【0033】
Y層36a、M層36bおよびC層36cの材料としては、バインダ樹脂に、昇華性染料を溶融あるいは分散させた材料が望ましい。また保護層37の材料としては、透明で、接着性、耐光性を有する材料が望ましく、例えばアクリル系樹脂材料が用いられる。
【0034】
インクリボン35の各層の厚みが特に限られることはなく、受像紙12に形成される画像の仕様に応じて適宜設定されるが、例えば、染料層36の厚みは0.1〜3.0μmの範囲内となっており、保護層37の厚みは0.5〜5.0μmの範囲内となっている。
【0035】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、はじめに、印画装置10により受像紙12の一面12aへの印画を実施する方法について説明する。次に、印画装置10により受像紙12の他面12bへの印画を実施する方法について説明する。
【0036】
はじめに図5A乃至図5Cを参照して、印画装置10により受像紙12の一面12aへの印画を実施する方法について説明する。図5Aは、受像紙12が、第1グリップローラー21と第1ニップローラー22とを介してサーマルヘッド30へ搬送される様子を示す図である。
【0037】
まず図5Aに示すように、第1グリップローラー21と第1ニップローラー22との間に向けて、受像紙供給部11から受像紙12を送り出す。受像紙12が第1グリップローラー21と第1ニップローラー22との間に到達すると、受像紙12の一面12aに第1グリップローラー21の突起部21bが刺し込まれ、そして、第1グリップローラー21の回転に応じて受像紙12が搬送される。
【0038】
図5Bは、図5Aに示す受像紙12のVB−VB線に沿った断面図である。図5Bに示すように、受像紙12の一面12aにある第1受像層16には、第1グリップローラー21の多数の突起部21bにより多数の凹部16bが形成される。ここで上述のように、第1グリップローラー21の多数の突起部21bは、その外周面21aに均一に配置されており、このため多数の凹部16bも、第1受像層16の全面にわたって均一に形成される。
【0039】
例えば、隣接する凹部16b間の距離(中心間距離)をtとした場合、距離tの平均値は0.3〜0.6mmの範囲内となっており、距離tのばらつき(標準偏差)は0.003〜0.02mmの範囲内となっている。より具体的には、凹部16b間の距離tを10点で測定した結果がy〜y10となっている場合に、y〜y10の平均値が例えば0.4〜0.45mmの範囲内となっており、y〜y10の標準偏差が例えば0.005〜0.01mmの範囲内となっている。
【0040】
また、各凹部16bの断面積をsとした場合、断面積sの平均値は0.5×10−3〜2.5×10−3mmの範囲内となっており、距離sのばらつき(標準偏差)は0.05×10−3〜0.25×10−3mmの範囲内となっている。より具体的には、各凹部16bの断面積sを10点で測定した結果がz〜z10となっている場合に、z〜z10の平均値が例えば1.0×10−3〜1.5×10−3mmの範囲内となっており、z〜z10の標準偏差が例えば0.1×10−3〜0.2×10−3mmの範囲内となっている。なお凹部16bの断面積sとは、第1受像層16の表面16aを通る平面上における凹部16bの面積のことである。
【0041】
次に、図5Aに示すように、第1グリップローラー21と第1ニップローラー22とにより、受像紙12をサーマルヘッド30とプラテンローラー33との間へ搬送する。受像紙12がサーマルヘッド30とプラテンローラー33との間に到達すると、インクリボン35の染料層36および保護層37が受像紙12の一面12aに所定パターンで転写され、これによって、受像紙12の一面12aに画像が形成される。
【0042】
受像紙12の一面12aに画像を印画する方法の一例について説明する。ここで図5Cは、図5Aに示す受像紙12のVC−VC線に沿った断面図である。はじめに、サーマルヘッド30によりインクリボン35を支持層38側からプラテンローラー側33へ加熱しながら押圧し、これによって、インクリボン35の染料層36(Y層36a、M層36bまたはC層36c)のいずれかを受像紙12の一面12aに当接させる。ここで、サーマルヘッド30の温度は、インクリボン35から受像紙12への染料層36の転写の態様が昇華転写となるよう制御されており、このため図5Cに示すように、受像紙12の第1受像層16のうち凹部16bが形成されていない部分にのみ染料層36が転写される。一方、受像紙12の第1受像層16のうち凹部16bが形成されている部分には染料層36が転写されず、図5Cに示すように空孔16cが形成される。
【0043】
同様にして、Y層36a、M層36bおよびC層36cを順次、受像紙12の第1受像層16のうち凹部16bが形成されていない部分に転写する。この場合、インクリボン35は、矢印Dで示す方向で一方向に搬送されており、一方、受像紙12は、第1グリップローラー21の回転方向を周期的に反転させることにより、矢印Dで示す方向で双方向に搬送される。例えば、受像紙12の一面12aの所定領域上にY層36aが転写されると、第1グリップローラー21の回転方向が反転されて受像紙12が受像紙供給部11側に巻き戻され、その後、第1グリップローラー21の回転方向が再度反転されて、受像紙12の一面12aの所定領域上にM層36bが転写される、というように受像紙12が搬送される。これによって、受像紙12の一面12aの所定領域上に、インクリボン35のY層36a、M層36bおよびC層36cを順次転写させることができる。
【0044】
その後、サーマルヘッド30によりインクリボン35を支持層38側からプラテンローラー側33へ加熱しながら押圧し、インクリボン35の保護層37を受像紙12の一面12aに当接させる。これによって、図5Cに示すように、受像紙12の一面12aに転写された染料層36上に保護層37が転写される。ここで、サーマルヘッド30の温度は、インクリボン35から受像紙12への保護層37の転写の態様が溶融転写となるよう制御されており、このため、図5Cに示すように、受像紙12の一面12aの全域にわたって保護層37が転写される。
【0045】
このようにして、受像紙12の一面12aにインクリボン35の染料層36および保護層37が転写され、このことにより、受像紙12の一面12aに印画画像が形成される。ここで上述のように、染料層36は、受像紙12の第1受像層16のうち凹部16bが形成されていない部分にのみ転写されている。このため、第1受像層16の全域にわたって染料層36が転写されている場合(すなわち、第1受像層16に凹部16bが形成されていない場合)に比べて、印画画像の濃度が低下している。しかしながら、上述のように、第1グリップローラー21の突起部21bは、第1グリップローラー21の幅方向全域(すなわち受像紙12の幅方向全域)および回転方向全域にわたって、外周面21a上において均一に配置されている。このため、第1受像層16の多数の凹部16bは、第1受像層16の幅方向および搬送方向の全面にわたって均一に形成されている。従って、受像紙12の一面12a側の印画画像が視認される場合、その濃度が一様な印画画像として認識される。すなわち、第1受像層16の多数の凹部16bに起因して印画画像の濃度ムラが生じることはない。
【0046】
一面12aにインクリボン35の染料層36および保護層37が転写された受像紙12は、その後、受像紙供給部11に巻き戻される。この際、第1グリップローラー21の突起部21bが受像紙12の一面12a側の保護層37に当接しないよう、第1グリップローラー21は受像紙12から離れる方向へ移動されており、このため、受像紙12の一面12a側の保護層37に凹部が形成されることはない。
【0047】
次に図6A乃至図6Cを参照して、印画装置10により受像紙12の他面12bへの印画を実施する方法について説明する。図6Aは、受像紙12が、第2グリップローラー26と第2ニップローラー27とを介してサーマルヘッド30へ搬送される様子を示す図である。
【0048】
まず図6Aに示すように、第2グリップローラー26と第2ニップローラー27との間に向けて、受像紙供給部11から受像紙12を送り出す。受像紙12が第2グリップローラー26と第2ニップローラー27との間に到達すると、受像紙12の他面12bに第2グリップローラー26の突起部26bが刺し込まれ、そして、第2グリップローラー26の回転に応じて受像紙12が搬送される。
【0049】
図6Bは、図6Aに示す受像紙12のVIB−VIB線に沿った断面図である。図6Bに示すように、受像紙12の他面12bにある第2受像層17には、第2グリップローラー26の多数の突起部26bにより多数の凹部17bが形成される。ここで上述のように、第2グリップローラー26の多数の突起部26bは、その外周面26aに均一に配置されており、このため多数の凹部17bも、第2受像層17の全面にわたって均一に形成される。なお、各凹部17b間の距離tやそのばらつき、および、各凹部17b断面積sやそのばらつきは、上述の第1受像層16における各凹部16b間の距離tやそのばらつき、および各凹部16bの断面積sやそのばらつきと略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0050】
次に、図6Aに示すように、第2グリップローラー26と第2ニップローラー27とにより、受像紙12をサーマルヘッド30とプラテンローラー33との間へ搬送する。受像紙12がサーマルヘッド30とプラテンローラー33との間に到達すると、インクリボン35の染料層36および保護層37が受像紙12の他面12bに所定パターンで転写され、これによって、受像紙12の他面12bに画像が形成される。
【0051】
図6Cは、図6Aに示す受像紙12のVIC−VIC線に沿った断面図である。図5A乃至図5Cに示す受像紙12の一面12aへの染料層36の転写の場合と同様に、インクリボン35の染料層36が昇華転写によって受像紙12の他面12bに転写される。このため、図6Cに示すように、受像紙12の第2受像層17のうち凹部17bが形成されていない部分にのみ染料層36が転写される。一方、受像紙12の第2受像層17のうち凹部17bが形成されている部分には染料層36が転写されず、図6Cに示すように空孔17cが形成される。
【0052】
また、図5A乃至図5Cに示す受像紙12の一面12aへの保護層37の転写の場合と同様に、インクリボン35の保護層37が溶融転写によって受像紙12の他面12bに転写される。このため、図6Cに示すように、受像紙12の他面12bの全域にわたって保護層37が転写される。
【0053】
このようにして、受像紙12の他面12bにインクリボン35の染料層36および保護層37が転写され、このことにより、受像紙12の他面12bに印画画像が形成される。ここで上述のように、染料層36は、受像紙12の第2受像層17のうち凹部17bが形成されていない部分にのみ転写されている。このため、第2受像層17の全域にわたって染料層36が転写されている場合(すなわち、第2受像層17に凹部17bが形成されていない場合)に比べて、印画画像の濃度が低下している。しかしながら、上述のように、第2グリップローラー26の突起部26bは、第2グリップローラー26の幅方向全域(すなわち受像紙12の幅方向全域)および回転方向全域にわたって、外周面26a上において均一に配置されている。このため、第2受像層17の多数の凹部17bは、第2受像層17の幅方向および搬送方向の全面にわたって均一に形成されている。従って、受像紙12の他面12b側の印画画像が視認される場合、その濃度が一様な印画画像として認識される。すなわち、第2受像層17の多数の凹部17bに起因して印画画像の濃度ムラが生じることはない。
【0054】
また上述のように、受像紙12の一面12a側においても、染料層36が、受像紙12の第1受像層16のうち凹部16bが形成されていない部分にのみ転写されている。さらに上述のように、受像紙12の他面12b側における各凹部17b間の距離tやそのばらつき、および、各凹部17b断面積sやそのばらつきは、受像紙12の一面12a側における各凹部16b間の距離tやそのばらつき、および各凹部16bの断面積sやそのばらつきと略同一になっている。このため、受像紙12の一面12a側における印画画像の濃度と、受像紙12の他面12b側における印画画像の濃度とは略同一になっている。すなわち本実施の形態によれば、各グリップローラー21,26の突起部21b,26bにより形成される凹部16b,17bに起因して受像紙12の一面12aと他面12bとの間での印画画像の濃度差が生じるのが防がれている。
【0055】
このように本実施の形態によれば、サーマルヘッド30によりインクリボン35の染料層36および保護層37を受像紙12の一面12aに転写させる場合、受像紙12は、受像紙12の幅方向全域にわたって延び、その外周面21aに均一に配置された多数の突起部21bを有し、受像紙12の一面12aに当接する第1グリップローラー21と、当該第1グリップローラー21に受像紙12を介して対向するよう設けられた第1ニップローラー22とを介してサーマルヘッド30へ搬送される。一方、サーマルヘッド30によりインクリボン35の染料層36および保護層37を受像紙12の他面12bに転写させる場合、受像紙12は、受像紙12の幅方向全域にわたって延び、その外周面26aに均一に配置された多数の突起部26bを有し、受像紙12の他面12bに当接する第2グリップローラー26と、当該第2グリップローラー26に受像紙12を介して対向するよう設けられた第2ニップローラー27とを介してサーマルヘッド30へ搬送される。このため、各グリップローラー21,26の突起部21b,26bが、受像紙12に転写された保護層37に刺しこまれることはなく、このことにより、両面印画された受像紙12の画質を長期にわたって良好に保つことができる。
【0056】
また本実施の形態によれば、各グリップローラー21,26の突起部21b,26bをその外周面21a,26aに均一に配置することにより、受像紙12の各受像層16,17上に均一に凹部16b,17bを形成することができる。例えば、隣接する凹部16b,17b間の距離(中心間距離)をt,tとした場合、距離t,tの平均値は0.3〜0.6mmの範囲内となっており、距離t,tのばらつき(標準偏差)は0.003〜0.02mmの範囲内となっている。また、各凹部16b,17bの断面積をs,sとした場合、断面積s,sの平均値は0.5×10−3〜2.5×10−3mmの範囲内となっており、距離s,sのばらつき(標準偏差)は0.05×10−3〜0.25×10−3mmの範囲内となっている。このため、受像紙12の各面12a,12bにおいて、印画された画像に濃度ムラが生じるのを防ぐことができ、加えて、一面12aと他面12bとの間で印画画像の濃度差が生じるのを防ぐことができる。
【0057】
第1の比較の形態
次に、図7A乃至図8Cを参照して、本実施の形態の効果を、第1の比較の形態と比較して説明する。図7A乃至図7Cは、第1の比較の形態において、受像紙の一面への印画が実施される様子を示す図であり、図8A乃至図8Cは、第1の比較の形態において、受像紙の他面への印画が実施される様子を示す図である。
【0058】
図7A乃至図8Cに示す第1の比較の形態は、第1グリップローラー21、第1ニップローラー22、第2グリップローラー26、および第2ニップローラー27の配置が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図6Cに示す第1の実施の形態と略同一である。図7A乃至図8Cに示す第1の比較の形態において、図1乃至図6Cに示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0059】
はじめに図7A乃至図7Cを参照して、第1の比較の形態における印画装置100により受像紙12の一面12aへの印画を実施する方法について説明する。まず図7Aに示すように、第1グリップローラー21と第1ニップローラー22との間に向けて、受像紙供給部11から受像紙12を送り出す。受像紙12が第1グリップローラー21と第1ニップローラー22との間に到達すると、受像紙12の他面12bに第1グリップローラー21の突起部21bが刺し込まれ、そして、第1グリップローラー21の回転に応じて受像紙12が搬送される。
【0060】
図7Bは、図7Aに示す受像紙12のVIIB−VIIB線に沿った断面図である。図7Bに示すように、受像紙12の他面12bにある第2受像層17には、第1グリップローラー21の多数の突起部21bにより多数の凹部17bが形成される。
【0061】
次に、図7Aに示すように、第1グリップローラー21と第1ニップローラー22とにより、受像紙12をサーマルヘッド30とプラテンローラー33との間へ搬送する。受像紙12がサーマルヘッド30とプラテンローラー33との間に到達すると、インクリボン35の染料層36および保護層37が受像紙12の一面12aに転写され、これによって、図7Cに示すように、受像紙12の一面12aに画像が形成される。
【0062】
次に図8A乃至図8Cを参照して、第1の比較の形態における印画装置100により受像紙12の他面12bへの印画を実施する方法について説明する。まず図8Aに示すように、第2グリップローラー26と第2ニップローラー27との間に向けて、受像紙供給部11から受像紙12を送り出す。受像紙12が第2グリップローラー26と第2ニップローラー27との間に到達すると、受像紙12の一面12aに第2グリップローラー26の突起部26bが刺し込まれ、そして、第2グリップローラー26の回転に応じて受像紙12が搬送される。
【0063】
図8Bは、図8Aに示す受像紙12のVIIIB−VIIIB線に沿った断面図である。図8Bに示すように、受像紙12の一面12aに転写された保護層37には、第2グリップローラー26の多数の突起部26bにより多数の凹部37aが形成される。
【0064】
次に、図8Aに示すように、第2グリップローラー26と第2ニップローラー27とにより、受像紙12をサーマルヘッド30とプラテンローラー33との間へ搬送する。受像紙12がサーマルヘッド30とプラテンローラー33との間に到達すると、インクリボン35の染料層36および保護層37が受像紙12の他面12bに転写され、これによって、図8Cに示すように、受像紙12の他面12bに画像が形成される。
【0065】
図8Cは、図8Aに示す受像紙12のVIIIC−VIIIC線に沿った断面図である。この場合、上述の第1の実施の形態の場合と同様に、インクリボン35の染料層36は昇華転写によって受像紙12の他面12bに転写される。このため、図8Cに示すように、受像紙12の第2受像層17のうち凹部17bが形成されていない部分にのみ染料層36が転写される。一方、受像紙12の第2受像層17のうち凹部17bが形成されている部分には染料層36が転写されず、図8Cに示すように空孔17cが形成される。
【0066】
一方、図8Cに示すように、受像紙の第1受像層16には凹部が形成されておらず、このため、受像紙12の一面12aにおいては、インクリボン35の染料層36が全域にわたって転写されている。このため、受像紙12の他面12bに形成された印画画像の濃度は、受像紙12の一面12aに形成された印画画像の濃度よりも低くなっている。このように第1の比較の形態によれば、受像紙12の一面12aと他面12bとの間での濃度差が生じている。
【0067】
また第1の比較の形態によれば、上述のように、受像紙12の一面12aに転写された保護層37には、第2グリップローラー26の多数の突起部26bにより多数の凹部37aが形成されている。また一般に、保護層37はアクリル性樹脂材料から構成されており、このため、保護層37に第2グリップローラー26の突起部26bが差し込まれた場合、凹部37aが形成されるだけでなく、保護層37が割れてしまうことも考えられる。従って、保護層37の耐久性が劣化し、これによって、受像紙12の一面12aに形成された画像の画質が早期に劣化すると考えられる。
【0068】
これに対して上述の第1の実施の形態によれば、サーマルヘッド30によりインクリボン35の染料層36および保護層37を受像紙12の一面12aに転写させる場合、受像紙12は、受像紙12の一面12aに当接する第1グリップローラー21と、当該第1グリップローラー21に受像紙12を介して対向するよう設けられた第1ニップローラー22とを介してサーマルヘッド30へ搬送される。一方、サーマルヘッド30によりインクリボン35の染料層36および保護層37を受像紙12の他面12bに転写させる場合、受像紙12は、受像紙12の他面12bに当接する第2グリップローラー26と、当該第2グリップローラー26に受像紙12を介して対向するよう設けられた第2ニップローラー27とを介してサーマルヘッド30へ搬送される。このため、各グリップローラー21,26の突起部21b,26bが、受像紙12に転写された保護層37に刺しこまれることはなく、このことにより、両面印画された受像紙12の画質を長期にわたって良好に保つことができる。また、受像紙12の一面12aと他面12bとの間で印画画像の濃度差が生じるのを防ぐことができる。
【0069】
第2の比較の形態
次に、図9Aおよび図9Bを参照して、本実施の形態の効果を、第2の比較の形態と比較して説明する。図9Aは、第2の比較の形態におけるグリップローラーを示す図であり、図9Bは、第2の比較の形態において、印画後の受像紙を示す断面図である。
【0070】
図9Aおよび図9Bに示す第2の比較の形態は、幅方向の一部にのみ突起部21b,26bが配置されたグリップローラー121,126が用いられる点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図6Cに示す第1の実施の形態と略同一である。図9Aおよび図9Bに示す第2の比較の形態において、図1乃至図6Cに示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0071】
図9Aに示すように、第2の比較の形態においては、各グリップローラー121,126の幅方向の端部近傍にのみ突起部21b,26bが設けられている。このため、図9Bに示すように、印画が実施された受像紙12においては、各受像層16,17の幅方向の端部近傍にのみ凹部16b,17bが形成される。この場合、上述のように、染料層36は、凹部16b,17bが形成されていない部分にのみ転写される。このため、受像紙12の幅方向において、中央部の濃度が、端部近傍の濃度よりも高くなっている。すなわち、印画された画像に濃度ムラが生じている。
【0072】
これに対して上述の第1の実施の形態によれば、各グリップローラー21,26の突起部21b,26bは、その外周面21a,26aに均一に配置されている。このため、受像紙12の各受像層16,17上に均一に凹部16b,17bを形成することができる。このことにより、受像紙12の各面12a,12bにおいて、印画された画像に濃度ムラが生じるのを防ぐことができる。
【0073】
変形例
なお本実施の形態において、受像紙12の搬送経路の内側(受像紙供給部11側)にプラテンローラー33が配置され、外側にサーマルヘッド30が配置されている例を示した(図1参照)。しかしながら、これに限られることはなく、図10に示すように、受像紙12の搬送経路の内側にサーマルヘッド30が配置され、外側にプラテンローラー33が配置されていてもよい。この場合、図10に示すように、受像紙12の両面のうち一方の面に印画を実施するために受像紙12を搬送する際、サーマルヘッド30による印画が実施される面に各グリップローラー21,26が当接するよう、各グリップローラー21,26および各ニップローラー22,27の配置が適宜設定される。
【0074】
第2の実施の形態
次に、図11乃至図13を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図11乃至図13に示す第2の実施の形態は、第1サーマルヘッドによりインクリボンの染料層および保護層が受像紙の一面に転写され、第2サーマルヘッドによりインクリボンの染料層および保護層が受像紙の他面に転写される点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図6Cおよび図10に示す第1の実施の形態と略同一である。図11乃至図13に示す第2の実施の形態において、図1乃至図6Cおよび図10に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0075】
図11に示すように、印画装置10は、両面に受像紙12を供給する受像紙供給部11と、受像紙供給部11の下流側に位置し、受像紙12を搬送する第1搬送部20と、第1搬送部20の下流側に位置する第2搬送部25と、第1搬送部20および第2搬送部25の下流側に設けられ、受像紙12の一面12aに対する印画を実施する第1サーマルヘッド40と、第1搬送部20および第2搬送部25の下流側に設けられ、受像紙12の他面12bに対する印画を実施する第2サーマルヘッド45と、を備えている。
【0076】
図11に示すように、第1サーマルヘッド40の近傍には、第1サーマルヘッド40と受像紙12との間にインクリボン35を供給する第1インクリボン供給部41と、受像紙12およびインクリボン35を介して第1サーマルヘッド40に対向する第1プラテンローラー43と、インクリボン35を巻き取る第1インクリボン巻取部42と、が設けられている。同様に、第2サーマルヘッド45の近傍には、第2サーマルヘッド45と受像紙12との間にインクリボン35を供給する第2インクリボン供給部46と、受像紙12およびインクリボン35を介して第2サーマルヘッド45に対向する第2プラテンローラー48と、インクリボン35を巻き取る第2インクリボン巻取部47と、が設けられている。
【0077】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0078】
まず図11に示すように、第1グリップローラー21と第1ニップローラー22との間に向けて、受像紙供給部11から受像紙12を送り出す。受像紙12が第1グリップローラー21と第1ニップローラー22との間に到達すると、受像紙12の一面12aに第1グリップローラー21の突起部21bが刺し込まれ、これによって、受像紙12の一面12aにある第1受像層16に多数の凹部16bが形成される。
【0079】
その後、受像紙12が、第1グリップローラー21と第1ニップローラー22との間から、第2グリップローラー26と第2ニップローラー27との間に送られる。受像紙12が第2グリップローラー26と第2ニップローラー27との間に到達すると、受像紙12の他面12bに第2グリップローラー26の突起部26bが刺し込まれ、これによって、受像紙12の他面12bにある第2受像層17に多数の凹部17bが形成される。
【0080】
次に、受像紙12が第1サーマルヘッド40と第1プラテンローラー43との間に到達すると、インクリボン35の染料層36および保護層37が受像紙12の一面12aに所定パターンで転写され、これによって、受像紙12の一面12aに画像が形成される。この場合、図5Cに示す第1の実施の形態の場合と同様に、受像紙12の第1受像層16のうち凹部16bが形成されていない部分にのみ染料層36が転写される。
【0081】
その後、受像紙12が第2サーマルヘッド45と第2プラテンローラー48との間に到達すると、インクリボン35の染料層36および保護層37が受像紙12の他面12bに所定パターンで転写され、これによって、受像紙12の他面12bに画像が形成される。この場合、図6Cに示す第1の実施の形態の場合と同様に、受像紙12の第2受像層17のうち凹部17bが形成されていない部分にのみ染料層36が転写される。
【0082】
このように本実施の形態によれば、第1サーマルヘッド40によりインクリボン35の染料層36および保護層37を受像紙12の一面12aに転写させる前に、受像紙12の一面12aにある第1受像層16に多数の凹部16bが形成される。また、第2サーマルヘッド40によりインクリボン35の染料層36および保護層37を受像紙12の他面12bに転写させる前に、受像紙12の他面12bにある第2受像層17に多数の凹部17bが形成される。このため、各グリップローラー21,26により受像紙12を精度良く搬送することができ、また各グリップローラー21,26の突起部21b,26bが、受像紙12に転写された保護層37に刺しこまれることがない。加えて、受像紙12の一面12aと他面12bとの間での印画画像の濃度差が生じるのを防ぐことができる。
【0083】
変形例
なお本実施の形態において、第1サーマルヘッド40が第2搬送部25の下流側に設けられている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図12に示すように、第1サーマルヘッド40を第1搬送部20と第2搬送部25との間に設けてもよい。
【0084】
その他の変形例
また図13に示すように、第1サーマルヘッド40と第2搬送部25との間に、受像紙12を切断する切断手段51が設けられていてもよい。この場合、一面12aに画像が印画された受像紙12は、切断手段51により切断されて個別受像紙12cとなる。個別受像紙12cは、その後、第2搬送部25により搬送されて移送手段52上に載置される。移送手段52は、個別受像紙12cが載置される移送コンベア52aと、移送コンベア52aを駆動する駆動部52bとからなっており、この移送手段52により、個別受像紙12cが第2サーマルヘッド45近傍まで搬送される。次に、第2サーマルヘッド45によりインクリボン35の染料層36および保護層37が個別受像紙12cの他面12bに転写され、このようにして、両面に画像が印画された個別受像紙12cが作製される。
【0085】
また上記各実施の形態において、インクリボン35の染料層36が、受像紙12の一面12aおよび他面12bに昇華転写される例を示した。しかしながら、転写の態様が昇華転写に限られることはなく、様々な態様によりインクリボン35の染料層36を受像紙12の一面12aおよび他面12bに転写させることができる。
【0086】
また上記各実施の形態において、インクリボン35の保護層37が、受像紙12の一面12aおよび他面12bに溶融転写される例を示した。しかしながら、転写の態様が溶融転写に限られることはなく、様々な態様によりインクリボン35の保護層37を受像紙12の一面12aおよび他面12bに転写させることができる。
【0087】
また上記各実施の形態において、インクリボン35の支持層38上に、Y層36a、M層36b、C層36cおよび保護層37が順次形成されている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、Y層36aを有するインクリボンと、M層36bを有するインクリボンと、C層36cを有するインクリボンと、保護層37を有するインクリボンとをそれぞれ別個に準備してもよい。
【符号の説明】
【0088】
10 印画装置
11 受像紙供給部
12 受像紙
12a 受像紙の一面
12b 受像紙の他面
12c 個別受像紙
15 基材層
15a 基材層の一面
15b 基材層の他面
16 第1受像層
16a 表面
16b 凹部
16c 空孔部
17 第2受像層
17a 表面
17b 凹部
17c 空孔部
20 第1搬送部
21 第1グリップローラー
21a 外周面
21b 突起部
22 第1ニップローラー
25 第2搬送部
26 第2グリップローラー
26a 外周面
26b 突起部
27 第2ニップローラー
30 サーマルヘッド
31 インクリボン供給部
32 インクリボン巻取部
33 プラテンローラー
35 インクリボン
36 染料層
36a Y層
36b M層
36c C層
37 保護層
38 支持層
40 第1サーマルヘッド
41 第1インクリボン供給部
42 第1インクリボン巻取部
43 第1プラテンローラー
45 第2サーマルヘッド
46 第2インクリボン供給部
47 第2インクリボン巻取部
48 第2プラテンローラー
51 切断手段
52 移送手段
52a 移送コンベア
52b 駆動部
100 印画装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面に受像層を有する受像紙を供給する受像紙供給部と、
受像紙供給部の下流側に位置し、前記受像紙を搬送する第1搬送部および第2搬送部と、
前記第1搬送部および前記第2搬送部の下流側に設けられ、受像紙の両面に対して印画可能なサーマルヘッドと、
前記受像紙と前記サーマルヘッドとの間に染料層と保護層とを含むインクリボンを供給するインクリボン供給部と、を備え、
前記第1搬送部は、前記受像紙の幅方向全域にわたって延び、その外周面に均一に配置された多数の突起部を有し、前記受像紙の一面に当接する第1グリップローラーと、当該第1グリップローラーに受像紙を介して対向するよう設けられた第1ニップローラーと、を有し、
前記第2搬送部は、前記受像紙の幅方向全域にわたって延び、その外周面に均一に配置された多数の突起部を有し、前記受像紙の他面に当接する第2グリップローラーと、当該第2グリップローラーに受像紙を介して対向するよう設けられた第2ニップローラーと、を有し、
前記サーマルヘッドにより前記インクリボンの染料層および保護層を前記受像紙の一面に転写させる場合、受像紙が、前記受像紙供給部から前記第1グリップローラーおよび前記第1ニップローラーを介してサーマルヘッドへ搬送され、
前記サーマルヘッドにより前記インクリボンの染料層および保護層を前記受像紙の他面に転写させる場合、受像紙が、前記受像紙供給部から第2グリップローラーおよび第2ニップローラーを介してサーマルヘッドへ搬送されることを特徴とする印画装置。
【請求項2】
前記第1グリップローラーの多数の突起部または前記第2グリップローラーの多数の突起部により、前記受像紙の一面または他面に多数の凹部が形成され、
各凹部の断面積の平均値が0.5×10−3〜2.5×10−3mmの範囲内となっており、隣接する凹部間の距離の平均値が0.3〜0.6mmの範囲内となっていることを特徴とする請求項1に記載の印画装置。
【請求項3】
前記サーマルヘッドにより前記インクリボンの染料層および保護層を前記受像紙の一面または他面に転写させる場合、はじめに、インクリボンの染料層が受像紙の一面または他面に転写され、その後、インクリボンの保護層が受像紙の一面または他面に転写されることを特徴とする請求項1に記載の印画装置。
【請求項4】
前記インクリボンの保護層が、アクリル系樹脂材料からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の印画装置。
【請求項5】
両面に受像層を有する受像紙を送り出す工程と、
前記受像紙の幅方向全域にわたって延び、その外周面に均一に配置された多数の突起部を有し、前記受像紙の一面に当接する第1グリップローラーと、当該第1グリップローラーに受像紙を介して対向するよう設けられた第1ニップローラーとにより、前記受像紙をサーマルヘッドへ搬送する工程と、
サーマルヘッドによりインクリボンの染料層および保護層を前記受像紙の一面に転写させる工程と、
前記受像紙の幅方向全域にわたって延び、その外周面に均一に配置された多数の突起部を有し、前記受像紙の他面に当接する第2グリップローラーと、当該第2グリップローラーに受像紙を介して対向するよう設けられた第2ニップローラーとにより、前記受像紙をサーマルヘッドへ搬送する工程と、
サーマルヘッドによりインクリボンの染料層および保護層を前記受像紙の他面に転写させる工程と、を備えたことを特徴とする印画方法。
【請求項6】
前記第1グリップローラーの多数の突起部または前記第2グリップローラーの多数の突起部により、前記受像紙の一面または他面に多数の凹部が形成され、
各凹部の断面積の平均値が0.5×10−3〜2.5×10−3mmの範囲内となっており、隣接する凹部間の距離の平均値が0.3〜0.6mmの範囲内となっていることを特徴とする請求項5に記載の印画方法。
【請求項7】
前記サーマルヘッドにより前記インクリボンの染料層および保護層を前記受像紙の一面または他面に転写させる場合、はじめに、インクリボンの染料層が受像紙の一面または他面に転写され、その後、インクリボンの保護層が受像紙の一面または他面に転写されることを特徴とする請求項5に記載の印画方法。
【請求項8】
前記インクリボンの保護層が、アクリル系樹脂材料からなることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の印画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−56139(P2012−56139A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200062(P2010−200062)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】