説明

即席パスタ類の製造法

【課題】パスタ同士の付着や変形が少なく、かつ、短時間でムラなく復元することができ、湯戻しのみならず水戻しも可能であり、復元時のほぐれがよく、復元後の食味、食感、外観が良好である即席パスタ類を製造し得る即席パスタ類の製造法を提供すること。
【解決手段】生パスタを水または温水と接触させて水分含量を調整する工程、水分含量を調整した生パスタを蒸煮処理する工程、および蒸煮処理した生パスタを乾燥処理する工程を有し、少なくとも生パスタの乾燥処理工程前のいずれかの工程前または工程中において、生パスタをパスタ同士が互いに接触しないように配列する工程を有することを特徴とする即席パスタ類の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パスタ同士の付着や変形が少なく、かつ復元性に優れ、復元後の食味、食感の良好な即席パスタ類を製造し得る即席パスタ類の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
即席パスタ類としては、短時間で復元すること、復元ムラがないこと、復元時のほぐれがよいこと、復元後の食味、食感、外観が良好であること、パスタ同士の付着や変形がないこと等が求められている。
このような要求を満たすために、種々の即席パスタ類の製造方法が提案されている。例えば、特許文献1には、押出し成型直後のパスタ生地を1〜10分間蒸す工程、蒸した生地を1〜20分間浸水させる工程、パスタから余分な水分を除去する工程、およびパスタを82〜177℃で2〜30分間トーストする工程を含む即席パスタの製造方法が提案されており、この製造方法によれば、復元後の食感および復元性に優れる即席パスタが得られることが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、押出し成型した麺線を茹で処理する工程、茹で処理した麺線を蒸煮処理し、水分含量を50〜64重量%に調整する工程、蒸煮処理した麺線を乾燥する工程を備えた、スパゲティ、マカロニ等の洋風即席麺の製法が提案されており、この製法によれば、復元後の食感および復元性に優れる洋風即席麺が得られ、また製造時における麺線相互の結着を防止できることが記載されている。
【0004】
特許文献3には、(1) 強力粉および/または中力粉からなる小麦粉と前記小麦粉に対して20〜40重量%の澱粉または加工澱粉とを主原料とする原料に、全粉体原料に対し25〜45重量%の水を加えて混練する工程、(2) 肉厚が0.9mm以下となるように成形する工程、(3) 0.1〜3kg/cm2 、0.5〜10分間の条件で蒸煮する工程、(4) 5〜40℃の水と接触させ、水分含量を40〜80%に調整する工程、(5) 0.1〜3kg/cm2 の条件で蒸煮し、α化度を50%以上にする工程、(6) 70〜90℃、20〜40%RHの条件で乾燥し、水分含量を5〜15%に調整する工程、からなる早戻りパスタの製造方法が提案されており、この製造方法によれば、湯戻り時間が短く、湯戻り後の食感および製品の透明感が良好な高品質のパスタが得られることが記載されている。
【0005】
特許文献4には、常法により製麺された生麺線を60〜100℃の湯に浸漬、シャワーおよび/または噴霧をする湯処理をし、これを蒸煮した後で蒸煮麺の品温を0〜40℃に水で冷却処理をし、次いで熱風乾燥する即席麺類の製造方法が提案されており、この製造方法によれば、復元性に優れ、復元時の麺のほぐれがよい即席麺類が得られることが記載されている。
【0006】
特許文献5には、茹で麺を緻密な麺線で嵩高な麺塊に乾燥してなるノンフライ乾燥即席麺が提案されており、この即席麺は、保存安定性、復元性、復元時の麺のほぐれ性に優れ、復元後の食味食感がよく、茹で伸びが遅いことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2004−514455号公報
【特許文献2】特開平6−237720号公報
【特許文献3】特開平8−38085号公報
【特許文献4】特開平11−276105号公報
【特許文献5】特開2003−153660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の特許文献1〜5に記載された製造方法で得られる即席パスタ類は、十分に満足し得るものではなく、特に、パスタ同士の付着や変形の点で満足し得るものではない。
従って、本発明の目的は、パスタ同士の付着や変形が少なく、かつ、短時間でムラなく復元することができ、湯戻しのみならず水戻しも可能であり、復元時のほぐれがよく、復元後の食味、食感、外観が良好である即席パスタ類を製造し得る即席パスタ類の製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、種々検討した結果、即席パスタ類の製造工程のいずれかの段階において、生パスタをパスタ同士が互いに接触しないように配列することにより、上記目的を達成する高品質の即席パスタ類が得られることを知見した。
【0010】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、生パスタを水または温水と接触させて水分含量を調整する工程、水分含量を調整した生パスタを蒸煮処理する工程、および蒸煮処理した生パスタを乾燥処理する工程を有し、少なくとも生パスタの乾燥処理工程前のいずれかの工程前または工程中において、生パスタをパスタ同士が互いに接触しないように配列する工程を有することを特徴とする即席パスタ類の製造法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の即席パスタ類の製造法によれば、パスタ同士の付着や変形が少なく、かつ、短時間でムラなく復元することができ、湯戻しのみならず水戻しも可能であり、復元時のほぐれがよく、復元後の食味、食感、外観が良好である即席パスタ類が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の即席パスタ類の製造法が適用されるパスタ類としては、特に制限されるものではなく、スパゲッティなどのロングパスタ、マカロニなどのショートパスタのいずれにも適用することができるが、特に、マカロニなどのショートパスタに適用することが好ましい。
【0013】
本発明で用いられる生パスタは、常法に従って製造されたものでよく、特に制限されるものではない。例えば、公知の押出し成型の方法などにより、小麦粉(強力、中力、薄力、デュラム)、米粉、トウモロコシ粉、そば粉などの穀粉類、水、およびその他の材料(澱粉類、蛋白類、油脂類、食物繊維、乳化剤、増粘剤など)を用いて製造されたものである。
また、生パスタの水分含量も、特に制限されるものではなく、通常の生パスタの水分含量と同様に28〜33質量%程度でよい。
【0014】
本発明において、生パスタの配列工程(生パスタをパスタ同士が互いに接触しないように配列する工程)は、水分含量調整工程(生パスタを水または温水と接触させて水分含量を調整する工程)、または蒸煮処理工程(水分含量を調整した生パスタを蒸煮処理する工程)のいずれかの工程前または工程中に行えばよく、特に、付着抑制や変形抑の観点から、蒸煮処理工程前に行うのが好ましい。
以下、本発明の即席パスタ類の製造法をその好ましい工程順に説明する。
【0015】
〔生パスタの配列工程〕
この工程では、生パスタをパスタ同士が互いに接触しないように配列する。配列方法および配列装置は、生パスタ同士が互いに接触しないように配列することができる方法および装置であれば特に制限されるものではない。例えば、振動コンベア上に生パスタを供給し、生パスタに振動コンベアの振動を与えることにより、生パスタをパスタ同士が互いに接触しないように配列することができる。振動コンベアの稼動条件は、生パスタの形状、大きさや供給量などによっても異なり一概にはいえないが、例えばマカロニなどのショートパスタの場合は、通常、コンベアの移動スピードが1.5〜6.0m/minが好ましく、2.0〜5.0m/minがより好ましく、振動の振幅が0.5〜5.0mmが好ましく、1.0〜3.0mmがより好ましく、振動の周波数が10〜100Hzが好ましく、40〜60Hzがより好ましい。
また、振動コンベア上への生パスタの供給方法としては、生パスタが重ならないように、例えば、供給装置の供給口を左右に首振り運動をさせながら生パスタを振動コンベア上に、供給することが好ましい。その際の生パスタの供給密度は1000〜5000g/mが好ましく、1500〜3500g/mがより好ましい。
【0016】
〔水分含量調整工程〕
この工程では、生パスタを水または温水と接触させて水分含量を調整する。生パスタと水または温水との接触方法としては、シャワー、噴霧、浸漬などによる方法があげられる。生パスタと水または温水との接触時間は、20〜90秒程度が好ましく、30〜60秒程度がより好ましい。接触時間が10秒未満では、吸水が不足し、蒸煮処理工程でのパスタのα化が不充分となる。また 90秒超では、吸水が多すぎて、蒸煮処理工程以降でのパスタの付着が増大する。この水分調整工程により、最終的に、生パスタの水分含量を好ましくは40〜65質量%、より好ましくは45〜55質量%に調整する。生パスタ中の水分含量が40質量%未満では、蒸煮処理工程でのパスタのα化が不充分となり、また65質量%超では、蒸煮処理工程以降でのパスタの付着が増大する。
【0017】
〔蒸煮処理工程〕
この工程では、水分含量を調整した生パスタを蒸煮処理する。蒸煮処理としては、飽和水蒸気を使用する方法、過熱水蒸気を使用する方法などがあげられるが、中でも、常圧の飽和水蒸気により、好ましくは5〜30分間、より好ましくは10〜20分間蒸煮処理する方法が好ましい。飽和水蒸気による蒸煮時間が5分未満では、パスタのα化が不充分となる。また30分超では、パスタ表面が硬くなり、喫食時の復元が悪くなる。
【0018】
〔乾燥処理工程〕
この工程では、蒸煮処理した生パスタを乾燥処理して、水分含量を特定のレベルに調整する。乾燥方法としては、熱風乾燥、調湿乾燥、真空凍結乾燥、マイクロウェーブ乾燥等、従来知られている乾燥方法を適宜1種もしくは組み合わせて行えばよい。熱風乾燥条件としては、好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜80℃の温度で、生パスタの水分含量が好ましくは8〜14質量%、より好ましくは10〜12質量%になるまで乾燥する。この場合、温度が50℃未満では、乾燥に時間がかかり、また100℃超では、パスタが膨化するために好ましくない。さらに乾燥パスタの水分含量が8%未満では、パスタの復元性が悪く、また14%超では、パスタの保存性が悪くなる。
【0019】
以上、本発明の即席パスタ類の製造法について説明したが、特に好ましい実施形態の一例をあげると以下の通りである。
先ず、振動コンベアを用いて生パスタをパスタ同士が互いに接触しないように配列し、次に生パスタの水分含量の調整および蒸煮処理を並行して行う。水分含量調整および蒸煮処理は、具体的には、常圧の飽和水蒸気により5〜15分間蒸煮処理を行いながら、20〜60℃の水または温水を生パスタに20〜90秒間シャワーして、生パスタの水分含量を40〜65質量%に調整する。次いでこの生パスタを乾燥処理する。
【0020】
本発明の製造法により得られる即席パスタ類は、従来の即席パスタと同様の方法および条件により、保存、流通、喫食することができる。特に本発明の製造法により製造される即席パスタ類は、湯戻しだけでなく水戻しが可能である。また湯戻しする場合、湯戻し時間が格段に短く、短時間(2〜3分程度)で復元することが可能である。また水戻しした場合も、20〜30分程度で復元することが可能である。
【実施例】
【0021】
次に本発明をさらに具体的に説明するために実施例を挙げるが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0022】
実施例1
常法により製造した生マカロニを、振動コンベアー(日本エリーズマグネティックス製)上に、2500g/mの供給密度で供給し、生マカロニに振動を与えることにより、生パスタをパスタ同士が互いに接触しないように配列した。振動コンベアの稼動条件は、コンベアの移動スピードを3.5m/min、振動の振幅を2mm、振動の周波数を50Hzとした。
次に、この生マカロニを、常圧の飽和水蒸気により10分間蒸煮処理を行いながら、50℃の温水を生マカロニに40秒間シャワーして、生マカロニの水分含量を50質量%に調整した。
次いで、この生マカロニを、70℃、30分間乾燥処理を行うことで、水分含量が12質量%である即席マカロニを製造した。
得られた即席マカロニについて、付着性、復元性、復元後の食味、食感及び外観を、10名のパネラーにより、下記に示す評価基準にしたがって評価試験を行った。得られた評点の平均値を下記の表1に示す。尚、即席マカロニの復元は、次のようにして行った。
〔即席マカロニの復元方法〕
即席マカロニ25gを磁器製の容器に入れ、200mlの熱湯(95℃)を注ぎ、3分間復元させ、その後お湯を切り、評価に供した。
【0023】
〔評価基準〕
・付着性
評点 5 パスタ同士の付着が全く無い。
4 パスタ同士の付着が少し見られるが、復元後は付着なし。
3 パスタ同士の付着が少し見られるが、復元はほぼ付着なし。
2 パスタ同士の付着が少し見られ、復元後もやや付着あり。
1 パスタ同士の付着がかなり見られ、復元後もやや付着あり。
・復元性
評点 5 パスタ全体が完全に復元している。
4 パスタ全体がほぼ完全に復元している。
3 パスタの一部で復元がやや悪いが、喫食には問題ない。
2 パスタの一部で復元がやや悪く、やや喫食し難い。
1 パスタの一部で復元が悪く、喫食し難い。
・復元後の食味
評点 5 完全に復元しており、非常に美味しい。
4 ほぼ完全に復元しており、美味しい。
3 一部で復元がやや悪いが、普通の美味しさ。
2 一部で復元がやや悪く、やや美味しくない。
1 一部で復元が悪く、美味しくない。
・食感
評点 5 パスタ全体が非常に滑らかで、弾力のある食感
4 パスタ全体が滑らかで、弾力のある食感
3 パスタのほぼ全体が全体が滑らかで、弾力のある食感
2 パスタの一部がやや硬く、ネチャつく食感
1 パスタの一部が硬く、ネチャつく食感
・外観
評点 5 パスタ全体の形状が整っている。
4 パスタほぼ全体の形状が整っている。
3 パスタの一部に付着やつぶれが見られるが、問題ない。
2 パスタの一部に付着やつぶれが見られ、やや目立つ。
1 パスタのかなりの部分に付着やつぶれが見られ、目立つ。
【0024】
比較例1
生マカロニの振動コンベアによる配列工程を行わない以外は実施例1と同様にして、即席マカロニを製造した。得られた即席マカロニについて、実施例1と同様にして評価試験を行った。得られた評点の平均値を下記の表1に併せて示す。
【0025】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生パスタを水または温水と接触させて水分含量を調整する工程、水分含量を調整した生パスタを蒸煮処理する工程、および蒸煮処理した生パスタを乾燥処理する工程を有し、少なくとも生パスタの乾燥処理工程前のいずれかの工程前または工程中において、生パスタをパスタ同士が互いに接触しないように配列する工程を有することを特徴とする即席パスタ類の製造法。
【請求項2】
生パスタをパスタ同士が互いに接触しないように配列した後、常圧の飽和水蒸気により5〜30分間蒸煮処理を行いながら、水または温水を生パスタにシャワーして、生パスタの水分含量を40〜65質量%に調整し、次いでこの生パスタを乾燥処理する、請求項1記載の即席パスタ類の製造法。
【請求項3】
振動コンベアを用いて、生パスタをパスタ同士が互いに接触しないように配列する、請求項1または2記載の即席パスタ類の製造法。