卵母細胞の成熟のためのIL−6−型サイトカインの使用
哺乳動物の卵母細胞のin vitroでの成熟に対するいくつかのIL−6型サイトカインの使用について説明する。in vivoでの受精プロトコル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物の卵母細胞のin vitroでの成熟方法に関する。
【背景技術】
【0002】
a.卵巣
哺乳動物の卵巣は、生殖細胞からの成熟卵母細胞の産生、並びに二次性徴の発達及び妊娠の正常な完了を可能にするホルモンの産生に関与している。卵巣は、外側皮質及び内側の脈管髄質(vascular medulla)に大きく分けられる。卵巣の間質は、発達の様々な段階において卵胞を含む皮質と髄質領域の両方におよぶ。
【0003】
成熟卵胞は、いくつかの特徴ある細胞型を有する高度に複雑なユニットであり、卵胞液に浸された1つの卵母細胞が存在する流動体で満たされた腔「胞(antrum)」を囲む体細胞のいくつかの層から成る。卵胞は、卵母細胞の成長と成熟に必要な栄養及び調節シグナルを提供する。
【0004】
成人の卵巣に存在する卵母細胞は、性腺外部位から性腺隆起に移動して胎児育成期に初期の卵巣を形成する一定数の始原生殖細胞(PGC)から発達する。発達中の卵巣内でいったん確立されると、増殖性PGCは卵原細胞へと分化し始める。卵原細胞は、卵巣中の全ての卵母細胞を生み出す幹細胞である。卵原細胞の集団は、卵原細胞が減数分裂前期に入り卵母細胞になるまで、所定の種特異的な数の有糸分裂周期を経る。減数分裂は前期の複糸期で停止し、そして思春期において卵胞形成が始まるまでその段階にとどまる。減数分裂の停止した一次卵母細胞は、原始卵胞内に含まれている。
【0005】
b.原始卵胞
原始卵胞は、哺乳動物の卵巣の基本的な発達ユニットである。原始卵胞の数は若年期の間に決定され、それらのほとんどは休止状態にとどまっている。原始卵胞の貯蔵は再生可能でなく、成人の全ての生殖可能寿命を供給する。女性の生殖可能年齢の前及びその間、多くのこれらの原始卵胞は休止状態を離れ、成長を開始する(最初の動員(recruitment))。卵胞は、ほとんどが閉鎖を経る胞段階へと発達する;しかし、これらの卵胞のいくつかは救助され、排卵前期へ到達する(周期的な動員)。休止している原始卵胞のプールが使い果たされた時に、正常な生殖可能年齢が終結する。
【0006】
c.卵胞形成
卵胞形成は、排卵卵胞の発達、及び女性の生殖可能年齢における定期的な1又は複数の成熟卵母細胞の放出に関連するプロセスである。卵胞形成は、長い沈静期の後に再開し、卵胞の様々な成分による、逐次的な細胞内変化及び分子的変化を伴う。出生以後の生活において、卵胞は成長、成熟及び排卵若しくは退行(regress)し続ける。卵胞は、最初の貯蔵が使い果たされるまで、継続的に動員される。
【0007】
原始卵胞は活性化され一次卵胞になる。原始卵胞及び一次卵胞と卵母細胞の大きさは顕著に違わないが、一次卵胞の段階で重要な変化が起きている。放線冠は卵母細胞とギャップ結合を発達させ、透明帯が2つの細胞型の間に形成し始める。卵胞が前胞(preantral)段階に達するまで、透明帯は完全には卵母細胞の周りを覆わないだろう。一次卵胞の卵胞細胞が集中的な有糸分裂を経る時に、二次卵胞が出現し始める。二次卵胞は、基底膜の外側に確認される莢膜細胞と共に、顆粒膜細胞の少なくとも2つの層を含み、卵胞は優れた毛細血管網を含む。三次卵胞及び胞状(antral)卵胞は、胞(antrum)として知られている空洞の存在により特徴付けられており、卵胞液で満たされている。最初の胞状卵胞は、卵母細胞と顆粒膜細胞との間の栄養及び調節シグナルを移行させることを可能とする、ギャップ結合の広範囲な血管網を有している。胞状卵胞は、それらが排卵前の大きさになるまで発達する。胞状卵胞の中では、卵丘細胞が卵母細胞を覆う。in vivoでは、卵母細胞の受精に備えた排卵の終点におけるLH上昇の後に、卵丘−卵母細胞複合体(COC)の拡張が誘導される。
【0008】
d.卵母細胞の成熟
卵母細胞の成熟は、排卵性LH上昇に応答して卵母細胞が複糸期から中期第II期(核の成熟)へと進行する複雑な現象である。いったん中期第II期に到達すると、卵母細胞は受精が起こるまで停滞し、そして卵母細胞は減数分裂を完了し、前核を形成する。卵母細胞の成熟は、受精及び早期胚発生(細胞質の成熟)の援助のために細胞を準備する細胞質レベルの変化も伴う。卵母細胞成熟の最後の段階は、さらなる発達に必要な機能特性の獲得に対して重要である。
【0009】
e.in vitroでの受精
ヒト卵母細胞のin vitroでの受精(IVF)は、女性及び男性の様々な形態の不妊症を克服するのに用いられる広く実用化された医療技術であり、それにより不妊夫婦に対する研究及び処置の膨大な新たな領域が切り開かれている。IVFの成功にも関わらず、現在のIVF処置を利用しても5組の夫婦のうち約1組は妊娠を成功させることができないため、不妊処置の改善方法が強く求められている。
【0010】
IVFが最初に行われたとき、1つの成熟した未受精卵母細胞が、排卵の直前に卵巣から取り除かれた。成熟卵母細胞は実験室の培養皿(in vitro)で受精され、得られた胚は女性の子宮に戻された。しかし、もしより多くの卵母細胞が受精に利用できれば、子宮への移植に利用可能なより多くの胚を得ることができ、そしてこれにより妊娠率が顕著に増加するということが見出された。従って、現在の臨床診療は、およそ20個の卵母細胞の成熟を誘導するために患者へのホルモン注射を伴う。
【0011】
標準的なIVF処置は、女性患者の長期間(例えば、30日)のホルモン刺激を伴う。この処置は、患者自身の卵胞刺激ホルモン(FSH)及び黄体形成ホルモン(LH)を抑制するために、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト又はアンタゴニストを投与することにより開始される。この処置は、多数の排卵前卵胞の発達を確実にするために、外因性ゴナドトロピン(例えば、FSH及び/又はLH)の注射へと続く。排卵の直前に、多数のin vivoで成熟した卵母細胞を卵巣から取り除く。単離された成熟卵母細胞は、その後in vitroで受精され、そして4〜8細胞期に発達した胚を子宮に移植する前に、典型的に3〜6日間の間培養される。
【0012】
現在の約25%〜35%の全体的な妊娠率を向上させることを目的として、IVF処置を最適化及び単純化するために持続的な努力がなされてきた。妊娠率が低いため、妊娠率を上昇させるために2〜5個の胚を移植するのが一般的である。
【0013】
同時に、多くの卵母細胞の成熟を誘導するためのホルモン注射投与が、排卵誘発(COH)として知られている。COHの利点は、受精のための多くのより成熟した卵母細胞が利用可能であるということであり、これは妊娠の機会を増加させる。しかし、COHを経た女性は、毎日の子宮超音波検査及び血液ホルモン測定により入念に観察されなければならない。なぜなら、過剰の卵巣刺激は卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を引き起こす可能性があり、これは重篤な状態であり致命的状態になる可能性がある。COHは多くの女性に対して効果的ではなく、一部は多嚢胞性卵巣疾患を伴う。
【0014】
f.卵母細胞のin vitroでの成熟
未成熟卵母細胞が卵母細胞から取り除かれ、in vitroで成熟させることができれば、COHに関連した副作用は避けられる。哺乳動物の卵母細胞は卵胞から取り除かれると自発的成熟を経る。in vitroで成熟させた卵母細胞は、in vivoで成熟させた卵母細胞と同じ核成熟率、受精率及び分裂率を有するが、in vitroで成熟させた卵母細胞は、顕著に低い胚盤胞率及び発達能力を有する。
【0015】
各月経周期の初期に、成熟を経る準備のため及び発生能力(例えば、受精する能力及び健康な胎児に発生する能力)のある状態へ向けて、いくつかの卵母細胞は成長し始める。その周期のおよそ5日目〜7日目までに、1つの卵母細胞が支配的になり成長し続け、一方他の卵母細胞は退化するよう誘導される。いったん1つの卵母細胞が支配的になると、排卵の時点で成熟する前のおよそ一週間の間、それは成長し、代謝性変化を経る。この成長期を経ない卵母細胞は、in vitroで成熟させ、受精させることができるが、発生能力のある可能性は低い。従って、最も多い数の未成熟卵母細胞を得るための最適な時期は、任意の卵母細胞が退化し始める前のその周期の初期である。しかし、月経周期の初期に取り除きin vitroで成熟させた卵母細胞は、発生能力のある可能性が低い。
【0016】
胞状卵胞内の多くの事象は、卵母細胞の成熟及び発生能力の獲得に影響を与え、以下を含む:(i)卵胞の体細胞(特に、卵丘細胞)と卵母細胞の間の相互作用;(ii)卵胞液の組成;及び(iii)卵胞環境の温度及び血管分布。これらの因子の多くは、卵胞の大きさ及び卵母細胞の成長とともに変化する。対照的に、IVMのための培養条件は、卵胞環境にほとんど影響を与えない体細胞に基づいており、そして/或いは、複雑な組成物又は事実上不確定な高分子サプリメントとしての添加物を有する。グルコース、ピルビン酸塩、酸素及びアミノ酸などの典型的にIVM培地に含まれる代謝物は、卵母細胞の成熟及び能力に特異な影響を与えることが示されてきた。これらの因子の取り扱い及びin vivoにおける環境に関して得られた知識の適用は、改善されたin vitroでの卵母細胞の成熟及び全体的なin vitroでの胚の産生をもたらすことができる。
【0017】
g.IL−6−型サイトカイン
IL(インターロイキン)−6−型のサイトカイン(IL−6、IL−11、LIF(白血病阻害因子)、OSM(オンコスタチンM)、CNTF(毛様体神経栄養因子)、CT−1(カルジオトロフィン−1)及びCLC(カルジオトロフィン様サイトカイン)を含む)は、分化、生存、アポトーシス及び増殖に関与する標的遺伝子を活性化する。IL−6−型サイトカインは、一般的なシグナル伝達レセプター鎖gp130(糖タンパク質 130)を含む原形質膜レセプター複合体に結合する。シグナル伝達は、JAK(Janusキナーゼ)チロシンキナーゼファミリーメンバーの活性化を伴い、STAT(転写のシグナルトランスデューサ及びアクチベータ)ファミリーの転写因子の活性化を導く。IL−6−型サイトカインのための別の主なシグナル経路は、MAPK(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ)カスケードである。
【0018】
IL−6−型サイトカインの認識に関与するレセプターは、非シグナル伝達α−レセプター及びシグナル伝達レセプターに細分化することができる。非シグナル伝達α−レセプターとしては、IL−6Rα、IL−11Rα、及びCNTFRα(ここでRはレセプターを指す)が挙げられるが、これらに限定されない。シグナル伝達レセプターとしては、gp130、LIFR、及びOSMRが挙げられるが、これらに限定されない。シグナル伝達レセプターはJAKと会合し、サイトカインの刺激に応答してチロシンがリン酸化される。IL−6−型サイトカインのそれぞれは、全ての場合においてgp130の少なくとも1つの分子を伴うレセプター動員の、あるプロファイルにより特徴付けられる。
【0019】
IL−6、IL−11及びCNTFは、最初にそれらの各α−レセプターサブユニットに特異的に結合する。ここで、サイトカイン及びα−レセプターの複合体だけが、効率的にシグナル伝達レセプターサブユニットを動員する。IL−6及びIL−11はgp130ホモダイマーによりシグナルを伝達する。ほとんどの他のIL−6型サイトカインは、gp130とLIFR(LIF、CNTF、CT−1及びCLC)又はgp130とOSMR(OSM)のいずれかのヘテロダイマーによりシグナルを伝達する。OSMは2つの異なるレセプター複合体を動員することができる:LIFR−gp130及びOSMR−gp130ヘテロダイマーの両方。LIF及びOSMは、追加のα−レセプターサブユニットを必要としないで、直接的にそれらのシグナル伝達レセプターサブユニットに関与する。
【0020】
1) LIF
LIFは多くの細胞型(胚幹細胞、始原生殖細胞、ニューロン、含脂肪細胞、肝細胞、及び骨芽細胞を含む)において様々な生物学的効果を引き出す。LIFは、様々な内分泌細胞型(子宮−胎盤ユニット、骨代謝、副腎、卵巣、及び睾丸)に影響を及ぼす。生物活性における多様性は、LIFの様々な同義物に反映され、それらは幹細胞刺激因子III(HSF III;Baumann及びWong,J.Immunol.143:1163,1989);コリン作用性神経分化因子(CNDF;Yamamori他, Science 246:1412,1990);メラノーマ由来リポタンパク質リパーゼ阻害因子(MLPLI;Mori他,Biochem.Biophys Res.Comm.160:1085,1989);DA細胞のためのヒトインターロイキン(HILDA;Moreau他,Nature 336:690,1988);分化因子(D−因子;Tomida他,J.Biol.Chem.259:10978,1984);分化阻害因子(DIF;Abe他,J.Biol.Chem.264:8941,1989);分化阻害活性(DIA;Smith及びHooper,Devel.Biol.121:1,1987);及び分化遅延因子(DRF;Koopman及びCotton,Exp.Cell.Res.154:233,1984)を含む。
【0021】
LIFは様々な成人及び胚の系の調節において中心的な役割を果たしている。生殖系においては、LIFは初期の妊娠において重要なサイトカインである。事実、雌性のLIFノックアウトマウスは、胚の着床のプロセスに欠陥があるため不妊である。LIFはヒト卵胞液中に存在し、そのレベルは胞状卵胞の発達段階に従って調節される。卵胞液中のLIFレベルは、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)に対しても反応する。未成熟卵胞からではなく成熟卵胞からの培養顆粒膜細胞は、βhCG(β−ヒトCG)による処理後LIF産生の増加を示し、これはLIFが排卵及び最終的な卵母細胞の発達に関与している可能性を示唆している。さらに、LIFがラットにおいて原始卵胞から一次卵胞への移行を促進することが示された。
【0022】
LIFは、in vitroでの胚幹(EC)細胞及び胚生殖(EG)細胞の培養において重要な因子でもある。EG細胞又はES細胞は、線維芽細胞の支持細胞層において培養した場合、いくつかの細胞により又はLIFの外からの添加により条件培地中で培養した場合に、in vitroで幹細胞の表現型を保つ。支持細胞の不在下において、条件培地又は外からのLIF、ES又はEG細胞は様々な細胞型へと自発的に分化する。
【0023】
2) CT−1
CT−1は心筋細胞の肥大を引き起こし、様々な他の細胞型において多面的な効果を有する。Pennica他(J Biol Chem.1995 May 5;270(18):10915−22)は、CT−1がマウスの胚幹細胞の分化を阻害したことを開示する。in vitroでの生物学的アッセイは、LIFが活性であるアッセイにおいてCT−1が活性であり、逆もまた同じであることを示した。これらのデータは、CT−1が多種多様の造血活性、ニューロン活性、及び発生活性を有し、そしてCT−1がLIFレセプター及びgp130シグナル伝達サブユニットにより作動できることを示した。Pennica他は、CT−1が多くのin vitro及びin vivoでのLIFの効果を模倣するはずであると予測する。
【0024】
国際公開第97/30146号は、哺乳動物に胚を導入する前にCT−1を含む培地中で胚を培養することにより、哺乳動物において妊娠の維持を強化する方法を開示いる。国際公開第97/30146号は、in vitroでの受精、胚分割及び核移植などの胚の生存率が低い卵母細胞/胚における初期の操作手順に対して、CT−1を含む培地が適しているかもしれないことを示唆している。
【0025】
3) OSM
オンコスタチンM(OSM)は、T細胞及びマクロファージの活性化周期の後期に産生される多面的サイトカインであり、その活性化周期はそれに寄与する多くの活性と共に広範囲に特徴付けられている。OSMは、ヒトメラノーマ細胞株の成長又は発達を阻害する能力に基づいて、ホルボールエステルで処理した組織急性リンパ腫細胞株U937の調節された培地から初めて単離された。
【0026】
OSMは3つの細胞表面レセプターに結合する。OSMはgp130ポリペプチドに結合し、IL−6のシグナル伝達サブユニット(低い親和性を有する)としても知られている。2つ目は、中親和性相互作用であり、OSM及びLIFは、低親和性のLIFレセプター及びgp130から構成されるレセプターへの結合に対して競合する。この中親和性レセプター複合体は、シグナル伝達及びin vitroでの生物学的効果の発揮が可能である。このレセプター複合体は2つのサイトカインにより共有されるが、相互作用の親和性及び各サイトカインにより送達される生物学的シグナルは異なる。OSMにより認識される3つ目のレセプターは、他のサイトカインと結合することが知られていない高親和性レセプターである。この高親和性OSMレセプターは、gp130並びに高親和性及び機能的リガンド−レセプター結合に必要な親和性を変換するサブユニットから構成される。
【0027】
4) IL−6
インターロイキン−6(IL−6)は、B細胞、T細胞、単球、線維芽細胞及び内皮細胞などの様々な細胞により産生される多機能性サイトカインである。IL−6は、造血前駆細胞の増殖及び/又は分化に関連するいくつかの活性を示す。これらの活性は、IL−6単独の作用、又はIL−3及びIL−4などの他のサイトカインとの組み合わせにおいてもたらされる。IL−6のいくつかの具体的な生物学的効果としては、B細胞の最終分化、T細胞の増殖及び分化、急性期反応の調節、上皮細胞の成長調節、巨核球の分化、並びに血小板産生が挙げられる。これらの活性及び効果に従って、IL−6に対する標的細胞としては、B細胞、T細胞、骨髄腫細胞、巨核球、単球、初期の幹細胞及び肝細胞が挙げられる。
【0028】
IL−6は多機能性サイトカインであるが、それが発揮する様々な生物学的効果は、細胞上の2つの異なるレセプターサブユニットとIL−6との段階的な相互作用により開始されると信じられている。IL−6は最初に80kDaのレセプターサブユニットとの複合体を形成する。この複合体は非リガンドサブユニットと結合する。この非リガンドサブユニットはgp130と呼ばれる膜糖タンパク質である。IL−6−80kDaレセプター複合体のgp130との結合は、シグナル伝達をもたらす。
【0029】
5) sIL−6Rα
2つの機能的に異なる鎖を含んで成るIL−6に対するレセプター系:リガンド結合鎖(IL−6R)及びシグナル伝達以外の非リガンド結合鎖(gp130)。gp130鎖はIL−6R/IL−6複合体と会合し、高親和性IL−6結合部位及びシグナル伝達の形成をもたらす。インターロイキン−6レセプター(sIL−6R)の細胞外の可溶形態は、膜に固定されたgp130を通してIL−6シグナルを仲介することが示された。
【0030】
6) IL−6/sIL−6Rαキメラ
sIL−6R及びIL−6(IL−6/sIL−6Rαキメラ)の複合体は、IL−6R−ネガティブ及びIL−6R−ポジティブ細胞の両方において発現したgp130と会合することができる。この会合は、gp130のホモ二量体化及びJAK−STAT経路の活性化を誘導し、それにより細胞応答を導く。
【発明の開示】
【0031】
発明の概要
本発明は、in vitroでの卵母細胞の成熟の方法に関し、IL−6−型サイトカインを含んだ生理学的に許容される培地において未成熟卵母細胞をインキュベートすることを含んで成る。卵母細胞は、初期の胞状又は胞状卵胞の段階に存在することができる。IL−6−型サイトカインは、LIFR−gp130ヘテロダイマー、OSMR−gp130へテロダイマー、及びgp130ホモダイマーを含むレセプターと結合することができるが、そのレセプターはこれらに限定されない。IL−6−型サイトカインは、IL−11Rα及びCNTFRαを含むレセプターと結合することができないが、そのレセプターはこれらに限定されない。IL−6−型サイトカインは、LIF、CT−1、OSM、IL−6又はIL−6/sIL−6Rαであることができる。本発明の実施において使用される培地は、さらにFSH、hCG、又はそれらの組み合わせを含んで成ることができる。或いは、培地はFSH、hCG、又はそれらの組み合わせを含まないことができる。
【0032】
本発明はまた、IL−6−型サイトカインを含んだ生理学的に許容される培地において未成熟卵母細胞をインキュベートすることを含んで成る方法により産生される、成熟卵母細胞にも関する。
【0033】
本発明はまた、成熟卵母細胞と共に精子をインキュベートすることを含んで成るin vitroでの受精の方法にも関する。ここで、この成熟卵母細胞は、IL−6−型サイトカインを含んだ生理学的に許容される培地において未成熟卵母細胞をインキュベートすることを含んで成る方法により産生される。
【0034】
本発明はまた、in vitroで成熟卵母細胞と共に精子をインキュベートすることを含んで成る方法により産生される胚にも関する。ここで、この成熟卵母細胞は、IL−6−型サイトカインを含んだ生理学的に許容される培地において未成熟卵母細胞をインキュベートすることを含んで成る方法により産生される。
【0035】
本発明はまた、in vitroで成熟卵母細胞と共に精子をインキュベートすることを含んで成る方法により産生される胚を移植することを含んで成る不妊症を処置する方法にも関する。ここで、この成熟卵母細胞は、IL−6−型サイトカインを含んだ生理学的に許容される培地において未成熟卵母細胞をインキュベートすることを含んで成る方法により産生される。
【0036】
発明の詳細な説明
上記のように、卵形成のプロセスは、胚の構成のための資源の大きく且つ複雑な資質を含む卵母細胞の構成に関する、極めて複雑なプロセスである。
【0037】
1.in vitroでの成熟
本発明は、卵母細胞のin vitroでの成熟のためのいくつかのIL−6−型サイトカインの使用に関する。
【0038】
a.卵母細胞
卵母細胞が発達の段階である間に、本発明の実施において使用する未成熟卵母細胞は雌性から取り出される。発達の段階としては、初期の胞状卵胞及び胞状卵胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
未成熟卵母細胞は、外部ホルモン治療を経ていない雌性から取り出すことができる。或いは、未成熟卵母細胞は、外部ホルモン治療を経た雌性から取り出すことができる。雌性にホルモンを注射することができ、そのホルモンとしてはGnRH、FSH、LH又はhCGが挙げられるが、これらに限定されない。ホルモンは組み合わせて投与することができ、又は任意の順序で逐次的に投与することができる。
【0040】
未成熟卵母細胞は、超音波検査及び吸引を含む方法により雌性から取り出すことができるが、方法はこれらに限定されない。未成熟卵母細胞は、単離後低温保存することができ、in vitroでの成熟の後に温めることができる。
【0041】
b.成熟
単離し未成熟卵母細胞を、いくつかのIL−6−型サイトカインを含む培地中でインキュベートする。培地は、任意の生理学的に許容される培地であることができる。生理学的に許容される培地としては、TCM199、aMEM及びHam's F10が挙げられるが、これらに限定されない。培地は、さらに他の因子を含むことができる。他の因子としては、FSH、hCG、エストラジオール、システアミン、ピルビン酸ナトリウム、グルタミン、及びオートログア(autologour)の加熱不活性化血清又は卵胞液が挙げられるが、これらに限定されない。培地は、FSH、hCG、エストラジオール、システアミン、ピルビン酸ナトリウム、グルタミン、及びオートログア(autologour)の加熱不活性化血清又は卵胞液又はそれらの組み合わせとともに、IL−6−型サイトカインを含むことができる。培地は、いくつかのIL−6−型サイトカインを含むこともでき、そしてFSH及び/又はhCGを欠くこともできる。
【0042】
未成熟卵母細胞を、培地中において、約37℃〜約39℃を含む(これに限定されない)温度で、約6、12、18、24、30、36、42、48、54、60、66又は72時間を含む(これらに限定されない)時間の間インキュベートする。成熟が起こって、卵核胞崩壊(GVBD)、卵丘拡張(cumulus expansion)、分裂中期IIプレート(plate)形成(MII)、極体放出の顕微鏡での目視検査を含む(これらに限定されない)方法によって明らかとなるまで、又はin vitroでの受精及び胚産生により機能的に試験されて成熟が起こるまで、卵母細胞をインキュベートする。
【0043】
c.胚産生
標準的なin vitroでの受精方法を用いて、成熟卵母細胞をin vitroで精子とともにインキュベートし、哺乳動物の胚を産生することができる(Textbook of Assisted Reproductive Techniques Laboratory & Clinical Perspectives(Gardner他編,2001年 Martin Ldunetz Ltd,ロンドン)を参照されたい)。胚を、予定日まで胚をはらませておくことのできる雌性の子宮に移植することができる。
【0044】
2.IL−6サイトカイン
本発明の実施において使用されるIL−6−型サイトカインとしては、LIFR−gp130ヘテロダイマー、OSMR−gp130ヘテロダイマー、及びgp130ホモダイマーに結合するサイトカインが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の実施に使用されるIL−6−型サイトカインとしては、IL−11Rα、及びCNTFRαに結合しないサイトカインも挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
IL−6−型サイトカインは、A、B、C及びDと呼ばれる4つの長いa−へリックスを含んで成るヘリックス束サイトカインのサブファミリーである。このA、B、C及びDは、上−上−下−下のトポロジーに導く方法で配置されている。全てのヘリクスが直線であるIL−6そして恐らくIL−11とも対照的に(in contract with)、LIF、OSM及びCNTFのAヘリックスはねじれている。直線のサイトカインはgp130ホモダイマーによってシグナル伝達をすることができるのに対して、ねじれたサイトカインはLIFR−gp130又はOSMR−gp130ヘテロダイマーによってシグナル伝達をすることができる。本発明の実施において使用されるIL−6−型サイトカインとしては、IL−6、LIF、OSM、CT−1及びIL−6/sIL−6Raキメラ、並びにIL−6−型サイトカインの生物活性を保持するそれらのフラグメント、アナログ、ホモログ、変異形及び誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書中で用いられているように、「アナログ」という用語は、IL−6−型サイトカインとの関係で用いられる場合、1又は複数の非標準的アミノ酸又は他の慣用的な一連のアミノ酸の構造変異形を含む、ペプチド又はポリペプチド意味する。
【0047】
本明細書中で用いられているように、「誘導体」という用語は、IL−6−型サイトカインとの関係で用いられる場合、一次構造以外が異なるペプチド又はポリペプチドを意味する(アミノ酸及びアミノ酸アナログ)。例として、誘導体は、翻訳後修飾の1つの形態であるグリコシル化により異なり得る。例えば、ペプチド又はポリペプチドは、異種系での発現によりグリコシル化パターンを示し得る。少なくとも1つの生物活性が保持されていれば、これらのペプチド又はポリペプチドは本発明の誘導体である。他の誘導体としては、共有結合的に修飾されたN−末端若しくはC−末端を有する融合ペプチド又は融合ポリペプチド、PEG化ペプチド又はポリペプチド、脂質部分と会合したペプチド又はポリペプチド、アルキル化ペプチド又はポリペプチド、アミノ酸側鎖官能基を介して他のペプチド、ポリペプチド若しくは化学物質と結合したペプチド又はポリペプチド、及び当業界で理解されるだろう付加的修飾体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
本明細書中で用いられているように、「フラグメント」という用語は、IL−6−型サイトカインとの関係で用いられる場合、約8〜約50アミノ酸長のペプチドを意味する。フラグメントは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50アミノ酸長であることができる。
【0049】
本明細書中で用いられているように、「ホモログ」という用語は、IL−6−型サイトカインとの関係で用いられる場合、共通の進化論的原種(evolutionary ancestor)を共有するペプチド又はポリペプチドを意味する。
【0050】
本明細書中で用いられているように、「変異形」という用語は、IL−6−型サイトカインとの関係で用いられる場合、アミノ酸の挿入、欠失、又は保存的置換によりアミノ酸配列が異なる(しかし、少なくとも1つの生物活性を保持する)ペプチド又はポリペプチドを意味する。本発明の目的に対しては、「生物活性」としては、特異的抗体により結合される能力が挙げられるが、これに限定されない。
【0051】
アミノ酸の保存的置換、すなわちアミノ酸を類似の特性(例えば、親水性、荷電領域の程度及び分布)の異なるアミノ酸と置換することは、当業界では典型的に小さな変化を伴うものとして認識されている。当業界で理解されているように、アミノ酸のハイドロパシックインデックスを考慮することにより、これらの小さな変化は部分的に同一視され得る。Kyte他,J.Mol.Biol.157:105−132(1982)。アミノ酸のハイドロパシックインデックスは、その疎水性及び電荷の考慮に基づいている。当業界では、類似のハイドロパシックインデックスのアミノ酸は置換することができ、タンパク質の機能をなお維持できることが知られている。1つの側面において、∀2のハイドロパシックインデックスを有するアミノ酸が置換される。アミノ酸の親水性は、生物学的機能を保持するタンパク質が生じるであろう置換を明らかにするのに利用することもできる。ペプチド中のアミノ酸の親水性を考慮することにより、そのペプチドの最大の局所的平均親水性の計算が可能である。局所的平均親水性は、抗原性及び免疫原性と関連すると報告されている有用な尺度である。米国特許第4,554,101号が本明細書中で引用文献として組み込まれている。当業界で理解されているように、類似の親水性値を有するアミノ酸の置換は、例えば免疫原性などの生物活性を保持するペプチドを生じさせることができる。1つの実施態様において、互いに±2以内の親水性値を有するアミノ酸を用いて置換を行う。アミノ酸の疎水性指数及び親水性値は両者とも、アミノ酸の特定の側鎖により影響される。その観察と一致して、生物学的機能に適合するアミノ酸置換は、アミノ酸、特にアミノ酸の側鎖の相対的な類似性に依存することが理解される。その類似性は、疎水性、親水性、電荷、大きさ、及び他の特性により明らかにされる。
【0052】
さらに、コンピューターアルゴリズムは、水性溶媒が接近できそうなアミノ酸配列ドメインの予測を補助するのに利用できる。これらのドメインは、しばしばペプチドの外側に向かって配置されることが当業界において知られており、それにより抗原決定基を含む結合決定基に寄与し得る。
【0053】
本発明は多数の側面を有しており、以下の非制限的な実施例により明らかにされる。
【実施例】
【0054】
実施例1
卵丘−卵母細胞複合体のin vitroでの卵丘拡張におけるLIFの効果
in vitroにおけるマウスCOCの卵丘拡張を誘導するLIFの能力について試験した。7〜8週齢のCD−1雌性マウス(Charles River)を、PMSG(5 IU/雌性、Calbiochem)で刺激した。これらの雌性を、進行性の低酸素症により48時間後に屠殺した。動物の腹部を消毒し、そしてまた髪によるサンプルの汚染を減少させるために、アルコール(70%)をその部分に適用した。腹腔を曝露させるために、腹部の切開を行った。卵管と連結している卵巣を子宮角及び内臓の脂肪組織から切り離した。10個の卵巣を、3mlのL−15培地(Gibco)と10%のウシ胎仔血清(FCS)を含むチューブ(Corning)に加え、37℃で保存した。
【0055】
各チューブの中身をその後60×15mmのペトリ皿(Falcon)に移した。サーモプレート加熱ステージを用いて、立体顕微鏡(Nikon SM2−800)の下で、ハサミ又は27ゲージの注射針を用いて、卵巣から脂肪パッド(fatty pad)及び卵管を取り除いた。次に、取り除いた卵巣を2〜3mlの新たな培地(L15+10%FCS)で満たした新たなペトリ皿の中に置いた。
【0056】
針を用いた各卵巣の機械的な破裂により、COCを回収し、新たな培地(L15+10%FCS)で満たした新たな35×10mmのペトリ皿に置いた。低倍率(20〜30×)の立体顕微鏡を用いて、細胞質が均質であることを基に、卵丘が無傷の卵母細胞を選択した。ミネラルオイルを含まない90μlの培地(10%FCS及びPenStrep−Antibiotics[Invitrogen]を含む、αMEM[Gibco])を含んだ96−ウエルプレートの各ウエルに、2つのCOCをマウスガラスピペット(mouth glass pipet)により移した。96−ウエルプレートへのCOCの添加の前に、プレート中の培地を、5%のCO2を含む加湿インキュベーター中において37℃で1時間の間予め平衡化した。各ウエルへのCOCの添加後に、体積が10μlの異なるロットのLIFを添加し、各ウエルの最終体積を100μlとした。各96−ウエルプレートは、αMEM及びFCSを含む4つのウエルの「ネガティブコントロール」と、αMEM、FCS及び5ng/mlのEGF(Sigma)を含む4つのウエルの「ポジティブコントロール」を含んでいた。アッセイごとに、2つのプレート(複製)を走らせた(run)。5%のCO2を含む加湿インキュベーター中において37℃で18時間、そのプレートをインキュベートした。
【0057】
次に、Nikon製の倒立顕微鏡を用いて各COCの目視検査を行い、卵丘細胞による粘液状細胞外マトリクスの形成を同定した。粘液状細胞外マトリクスは、卵丘拡張の指標である。卵丘拡張の割合は、各処理群において用いた総COCに対する拡張したCOCの数として規定した。任意のロットのLIFが50%超のCOC拡張を誘導した場合に、それをポジティブとみなし、そして、再確認のアッセイにおいて全ての形態のLIFについて再試験をした。次に、確認されたポジティブロットのLIFを、用量応答試験において評価した。説明されているように用量応答試験を行ったが、ウエルごとに4〜5個のCOCを有する3つのウエルを各濃度のLIFに対して割り当てた。
【0058】
異なった形態及びロットのLIFに対する、in vitroでの成熟の比率を表1に示す。試験したほとんどのLIFの形態及びロットは卵丘拡張を誘導した(20〜100%の拡張)。試験した濃度でAS900227−1だけが卵丘拡張を誘導しなかった。
【表1】
【0059】
IVM 一次スクリーン(Primary Screen)におけるポッジティブの再確認として、2つのLIF製剤(AS900230−1及びAS900227−4)を、2つの商業的形態のLIF(Antigenix及びCalbiochem)に対して評価した。再確認IVMアッセイの結果を表2に示す。
【表2】
【0060】
IVM一次スクリーン及び再確認IVMアッセイにおけるポジティブな結果に基づいて、AS900230−7(図1)、AS900230−1(図2)、AS900227−1(図3)及びAntigenixからのLIF(図4)に対して、用量応答解析を行った。AS900227−1はIVM一次スクリーニングにおいて唯一卵丘拡張を誘導できなかったLIFであったが、用量応答様式における用量応答試験においては卵丘拡張を誘導することができた。AS900227−1による一次スクリーンにおいて50%拡張におよばなかったのは、希釈に関連する問題に原因があったのかもしれない。
【0061】
実施例2
卵丘−卵母細胞複合体のin vitroでの成熟におけるCT−1及びOSMの効果
COCのin vitroでの卵丘拡張を誘導するCT−1及びOSMの能力を、実施例1に記載の様式でアッセイした。表3に示すように、マウスCT−1(Preprotech、カタログ#250−25、ロット021203)及びヒトOSM AS901165−1(Calbiochem、カタログ#496260、ロットB30866)は、1μg/ml及び500ng/mlで100%の卵丘拡張を誘導した。マウスCT−1及びヒトOSMに対するポジティブな結果に基づいて、様々な濃度でIVMアッセイを繰り返し、ヒトCT−1(AS900915−1)(図5)及びOSM(AS901165−1;図6)の用量応答を判断した。
【表3】
【0062】
実施例3
ヒトCT−1及びマウスCT−1の比較
マウスCT−1とヒトCT−1の用量応答を比較するために、別のIVMアッセイを行った。表4の結果は、ヒトCT−1及びマウスCT−1が両方ともCOCのin vitroでの卵丘拡張を誘導することを示す。
【表4】
【0063】
実施例4
卵丘−卵母細胞複合体のin vitroでの成熟におけるIL−6及びsIL−6Rαの効果
実施例1〜3において示すin vitroでのCOCの卵丘拡張を誘導するLIF、CT−1及びOSMの能力に基づいて、IL−6及びsIL−6Rαについても試験した。表5の結果は、IL−6及びsIL−6Rαがin vitroでの卵丘拡張も誘導することを示す。
【表5】
【0064】
上記の結果に基づいて、追加のIVMアッセイを行い、異なる形態のIL−6の用量応答を判断した(表6)。図7〜8は、比較的高い量のIL−6で緩やかな卵丘拡張が生じることを示している。図9〜10は、異なる形態のsIL−6Rαに対する用量応答を示している。
【表6】
【0065】
実施例5
卵丘−卵母細胞複合体のin vitroでの成熟におけるIL−6/sIL−6Rαの効果
実施例4に示すCOCのin vitroでの卵丘拡張を個々に誘導するIL−6及びsIL−6Rαの能力に基づいて、IL−6/sIL−6Rαキメラのin vitroでの卵丘拡張を誘導する能力を試験した。表7は、IL−6/sIL−6RαキメラがCOCのin vitroでの卵丘拡張を誘導できたことを示している。図11のIL−6/sIL−6Rαキメラの用量応答は、このキメラがin vitroでの卵丘拡張の誘導において、IL−6又はsIL−6Rαよりも有力であることを示唆している。さらに、このIL−6/sIL−6Rαによる誘導は、より変わりにくい。
【表7】
【0066】
実施例6
in vitroで成熟させた卵母細胞の質におけるLIFの効果
実施例1〜5で示すように、IL−6−型サイトカインは卵母細胞のin vitroでの成熟を誘導し、用量に依存する様式で卵丘拡張を刺激する。次に、受精率、胚盤胞率及び出産率を測定することにより、in vitroで成熟させた卵母細胞の質におけるIL−6−型サイトカインの効果を試験した。
【0067】
実施例1に記載のように、7〜8週齢のB6CBAF1/J雌性マウス(Jackson研究所)からマウスCOCを単離した。上記のように、回収したCOCを、1.5IU/mlのrhCG(組み換えヒト絨毛性ゴナドトロピン)を含有するIVMにおいてin vitroで成熟させた。異なった日に異なったバッチの卵母細胞を用いて、実験を反復して行った。0.2IUのrFSH(組み換えヒト卵胞刺激ホルモン)を含む又は含まない、1000、1又は0.1ng/mlのLIF(Antigenix アメリカ、HC88832)の存在下で、卵母細胞を成熟させた。ネガティブコントロール群(LIF及びFSHを含まないIVM培地)及びポジティブコントロール群(in vivoで成熟させた卵母細胞=排卵された卵母細胞)が含まれた。PMSGをマウスに投与し、続いて48時間後に5IUのhCG(ip)を投与することにより、in vitroで成熟させた卵母細胞を調製した。hCGで刺激した18時間後に(in vitroでの受精の日)、その雌性を屠殺し、卵巣及び卵管を取り除いた。機械的な破裂により、拡張したCOCを得た。
【0068】
in vitro及びin vivoで成熟させたCOCをin vitro受精(IVF)培地(3%のBSA Fraction V[Sigma]を添加したKSOM)中で洗い、次にミネラルオイルの下の50μlのマイクロドロップ中に置いた。次に、2×106/mlの濃度で精子を添加した。成体雄性マウスから精巣上体精子懸濁液を調製し、IVF培地中で2時間プリインキュベートして受精能獲得を確実にした。精子と卵母細胞を4〜5時間インキュベートし、その後COCを取り除き、洗い、卵丘細胞をとって裸にし、ミネラルオイルの下でin vitro胚培養(IVC)培地(0.5%のFraction V結晶性BSA[Calbiochem]を添加したKSOM)の30μlのマイクロドロップ中に置き、37℃の加湿させた5%O2、5%CO2及び90%N2のインキュベーター中に置いた。
【0069】
in vitroでの受精の比率を、2細胞胚の割合に基づいて1日目に測定した。図12に示すように、FSH−IVM群と比較して、(1000ng/mlのLIF+FSH)−IVM群及びin vivoで成熟させた群において受精率が顕著に増加した。同様の受精率の増加が、2000ng/mlのLIF+FSHで見られた(図13)。ネガティブコントロール(FSHを含まないIVM培地)と比較して、LIF(1000又は1ng/ml)単独でも、受精率が顕著に増加した(図12)。
【0070】
胚盤胞の割合に基づいて4日目に胚発生の比率を測定した。in vitroでの受精率の結果と同様に、FSH−IVM群と比較して、(1000ng/mlのLIF+FSH)−IVM群及びin vivoで成熟させた群は胚盤胞率の顕著な増加を示した(図14)。同様の胚盤胞率の増加が、2000ng/mlのLIF+FSHで見られた(図15)。さらに、ネガティブコントロール(FSHを含まないIVM培地)と比較して、LIF(1000又は1ng/ml)単独でも、胚盤胞率が顕著に増加した(図14)。
【0071】
2細胞胚ごとの胚盤胞の総数を決定することによっても、胚発生の比率を測定した。図16で示されるように、LIF及びFSHの存在下で成熟させた卵母細胞を有する全ての群に対して並びにin vivoで成熟させた群において、およそ80%の2細胞胚が胚盤胞へと発達した。LIFだけを用いて成熟させた卵母細胞を用いた群は、同様の結果であった。ネガティブコントロール(−FSH)では胚盤胞は存在しなかった。その比率は、FSH及び0.1ng/mlのLIFを用いた群に対して非常に変わりやすかった。
【0072】
8〜12週齢のCD1 2.5日偽妊娠雌性(Charles River)の子宮角へ4日目の胚を外科的に移植することにより、異なる実験群に対する出産率を測定した。FSH及び1000ng/mlのLIFを含む培地中においてin vitroで成熟させた卵母細胞から産生した胚は、コントロール群(FSH単独)よりも高い出産率(0.05<p<0.07)を有し、in vivoで成熟させた群と同じであった(p>0.05)(図17)。同様の出産率の増加が、2000ng/mlのLIF+FSHで見られた(図18)。さらに、妊娠率はFSH+1000ng/mlLIFで若干高かった(図17)。
【0073】
受精率、胚盤胞率及び出産率の増加は、標準的マウスIVM培地へのLIFの添加が卵母細胞の質を増大させることを示唆している。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、卵丘拡張における AS900230−7 LIFの用量応答効果を表す;
【図2】図2は、卵丘拡張におけるAS900230−1 LIFの用量応答効果を表す;
【図3】図3は、卵丘拡張におけるA900227−1 LIFの用量応答効果を表す;
【図4】図4は、卵丘拡張におけるLIFの用量応答効果を表す;
【図5】図5は、卵丘拡張におけるAS900915−1 CT−1の用量応答効果を表す;
【図6】図6は、卵丘拡張におけるAS901a65−1オンコスタチンの用量応答効果を表す;
【図7】図7は、卵丘拡張におけるAS901167−1ヒトIL−6の用量応答効果を表す;
【図8】図8は、卵丘拡張におけるAS900038−7ヒトIL−6の用量応答効果を表す;
【図9】図9は、卵丘拡張におけるsIL−6Rαの用量応答効果を表す;
【図10】図10は、卵丘拡張におけるAS900419 IL−6Rα(1−339)−6Hisの用量応答効果を表す;及び
【図11】図11は、卵丘拡張におけるAS901166 IL−6/sIL−6Rαキメラの用量応答効果を表す。
【図12】図12は、in vitroでの受精した卵母細胞の比率におけるLIFの効果について実証する。
【図13】図13は、in vitroでの受精した卵母細胞の比率におけるLIFの効果について実証する。
【図14】図14は、胚盤胞形成の総比率におけるLIFの効果について実証する。
【図15】図15は、胚盤胞形成の総比率におけるLIFの効果について実証する。
【図16】図16は、2細胞胚からの胚盤胞形成の比率におけるLIFの効果について実証する。
【図17】図17は、出産率におけるLIFの効果について実証する。
【図18】図18は、出産率におけるLIFの効果について実証する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物の卵母細胞のin vitroでの成熟方法に関する。
【背景技術】
【0002】
a.卵巣
哺乳動物の卵巣は、生殖細胞からの成熟卵母細胞の産生、並びに二次性徴の発達及び妊娠の正常な完了を可能にするホルモンの産生に関与している。卵巣は、外側皮質及び内側の脈管髄質(vascular medulla)に大きく分けられる。卵巣の間質は、発達の様々な段階において卵胞を含む皮質と髄質領域の両方におよぶ。
【0003】
成熟卵胞は、いくつかの特徴ある細胞型を有する高度に複雑なユニットであり、卵胞液に浸された1つの卵母細胞が存在する流動体で満たされた腔「胞(antrum)」を囲む体細胞のいくつかの層から成る。卵胞は、卵母細胞の成長と成熟に必要な栄養及び調節シグナルを提供する。
【0004】
成人の卵巣に存在する卵母細胞は、性腺外部位から性腺隆起に移動して胎児育成期に初期の卵巣を形成する一定数の始原生殖細胞(PGC)から発達する。発達中の卵巣内でいったん確立されると、増殖性PGCは卵原細胞へと分化し始める。卵原細胞は、卵巣中の全ての卵母細胞を生み出す幹細胞である。卵原細胞の集団は、卵原細胞が減数分裂前期に入り卵母細胞になるまで、所定の種特異的な数の有糸分裂周期を経る。減数分裂は前期の複糸期で停止し、そして思春期において卵胞形成が始まるまでその段階にとどまる。減数分裂の停止した一次卵母細胞は、原始卵胞内に含まれている。
【0005】
b.原始卵胞
原始卵胞は、哺乳動物の卵巣の基本的な発達ユニットである。原始卵胞の数は若年期の間に決定され、それらのほとんどは休止状態にとどまっている。原始卵胞の貯蔵は再生可能でなく、成人の全ての生殖可能寿命を供給する。女性の生殖可能年齢の前及びその間、多くのこれらの原始卵胞は休止状態を離れ、成長を開始する(最初の動員(recruitment))。卵胞は、ほとんどが閉鎖を経る胞段階へと発達する;しかし、これらの卵胞のいくつかは救助され、排卵前期へ到達する(周期的な動員)。休止している原始卵胞のプールが使い果たされた時に、正常な生殖可能年齢が終結する。
【0006】
c.卵胞形成
卵胞形成は、排卵卵胞の発達、及び女性の生殖可能年齢における定期的な1又は複数の成熟卵母細胞の放出に関連するプロセスである。卵胞形成は、長い沈静期の後に再開し、卵胞の様々な成分による、逐次的な細胞内変化及び分子的変化を伴う。出生以後の生活において、卵胞は成長、成熟及び排卵若しくは退行(regress)し続ける。卵胞は、最初の貯蔵が使い果たされるまで、継続的に動員される。
【0007】
原始卵胞は活性化され一次卵胞になる。原始卵胞及び一次卵胞と卵母細胞の大きさは顕著に違わないが、一次卵胞の段階で重要な変化が起きている。放線冠は卵母細胞とギャップ結合を発達させ、透明帯が2つの細胞型の間に形成し始める。卵胞が前胞(preantral)段階に達するまで、透明帯は完全には卵母細胞の周りを覆わないだろう。一次卵胞の卵胞細胞が集中的な有糸分裂を経る時に、二次卵胞が出現し始める。二次卵胞は、基底膜の外側に確認される莢膜細胞と共に、顆粒膜細胞の少なくとも2つの層を含み、卵胞は優れた毛細血管網を含む。三次卵胞及び胞状(antral)卵胞は、胞(antrum)として知られている空洞の存在により特徴付けられており、卵胞液で満たされている。最初の胞状卵胞は、卵母細胞と顆粒膜細胞との間の栄養及び調節シグナルを移行させることを可能とする、ギャップ結合の広範囲な血管網を有している。胞状卵胞は、それらが排卵前の大きさになるまで発達する。胞状卵胞の中では、卵丘細胞が卵母細胞を覆う。in vivoでは、卵母細胞の受精に備えた排卵の終点におけるLH上昇の後に、卵丘−卵母細胞複合体(COC)の拡張が誘導される。
【0008】
d.卵母細胞の成熟
卵母細胞の成熟は、排卵性LH上昇に応答して卵母細胞が複糸期から中期第II期(核の成熟)へと進行する複雑な現象である。いったん中期第II期に到達すると、卵母細胞は受精が起こるまで停滞し、そして卵母細胞は減数分裂を完了し、前核を形成する。卵母細胞の成熟は、受精及び早期胚発生(細胞質の成熟)の援助のために細胞を準備する細胞質レベルの変化も伴う。卵母細胞成熟の最後の段階は、さらなる発達に必要な機能特性の獲得に対して重要である。
【0009】
e.in vitroでの受精
ヒト卵母細胞のin vitroでの受精(IVF)は、女性及び男性の様々な形態の不妊症を克服するのに用いられる広く実用化された医療技術であり、それにより不妊夫婦に対する研究及び処置の膨大な新たな領域が切り開かれている。IVFの成功にも関わらず、現在のIVF処置を利用しても5組の夫婦のうち約1組は妊娠を成功させることができないため、不妊処置の改善方法が強く求められている。
【0010】
IVFが最初に行われたとき、1つの成熟した未受精卵母細胞が、排卵の直前に卵巣から取り除かれた。成熟卵母細胞は実験室の培養皿(in vitro)で受精され、得られた胚は女性の子宮に戻された。しかし、もしより多くの卵母細胞が受精に利用できれば、子宮への移植に利用可能なより多くの胚を得ることができ、そしてこれにより妊娠率が顕著に増加するということが見出された。従って、現在の臨床診療は、およそ20個の卵母細胞の成熟を誘導するために患者へのホルモン注射を伴う。
【0011】
標準的なIVF処置は、女性患者の長期間(例えば、30日)のホルモン刺激を伴う。この処置は、患者自身の卵胞刺激ホルモン(FSH)及び黄体形成ホルモン(LH)を抑制するために、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト又はアンタゴニストを投与することにより開始される。この処置は、多数の排卵前卵胞の発達を確実にするために、外因性ゴナドトロピン(例えば、FSH及び/又はLH)の注射へと続く。排卵の直前に、多数のin vivoで成熟した卵母細胞を卵巣から取り除く。単離された成熟卵母細胞は、その後in vitroで受精され、そして4〜8細胞期に発達した胚を子宮に移植する前に、典型的に3〜6日間の間培養される。
【0012】
現在の約25%〜35%の全体的な妊娠率を向上させることを目的として、IVF処置を最適化及び単純化するために持続的な努力がなされてきた。妊娠率が低いため、妊娠率を上昇させるために2〜5個の胚を移植するのが一般的である。
【0013】
同時に、多くの卵母細胞の成熟を誘導するためのホルモン注射投与が、排卵誘発(COH)として知られている。COHの利点は、受精のための多くのより成熟した卵母細胞が利用可能であるということであり、これは妊娠の機会を増加させる。しかし、COHを経た女性は、毎日の子宮超音波検査及び血液ホルモン測定により入念に観察されなければならない。なぜなら、過剰の卵巣刺激は卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を引き起こす可能性があり、これは重篤な状態であり致命的状態になる可能性がある。COHは多くの女性に対して効果的ではなく、一部は多嚢胞性卵巣疾患を伴う。
【0014】
f.卵母細胞のin vitroでの成熟
未成熟卵母細胞が卵母細胞から取り除かれ、in vitroで成熟させることができれば、COHに関連した副作用は避けられる。哺乳動物の卵母細胞は卵胞から取り除かれると自発的成熟を経る。in vitroで成熟させた卵母細胞は、in vivoで成熟させた卵母細胞と同じ核成熟率、受精率及び分裂率を有するが、in vitroで成熟させた卵母細胞は、顕著に低い胚盤胞率及び発達能力を有する。
【0015】
各月経周期の初期に、成熟を経る準備のため及び発生能力(例えば、受精する能力及び健康な胎児に発生する能力)のある状態へ向けて、いくつかの卵母細胞は成長し始める。その周期のおよそ5日目〜7日目までに、1つの卵母細胞が支配的になり成長し続け、一方他の卵母細胞は退化するよう誘導される。いったん1つの卵母細胞が支配的になると、排卵の時点で成熟する前のおよそ一週間の間、それは成長し、代謝性変化を経る。この成長期を経ない卵母細胞は、in vitroで成熟させ、受精させることができるが、発生能力のある可能性は低い。従って、最も多い数の未成熟卵母細胞を得るための最適な時期は、任意の卵母細胞が退化し始める前のその周期の初期である。しかし、月経周期の初期に取り除きin vitroで成熟させた卵母細胞は、発生能力のある可能性が低い。
【0016】
胞状卵胞内の多くの事象は、卵母細胞の成熟及び発生能力の獲得に影響を与え、以下を含む:(i)卵胞の体細胞(特に、卵丘細胞)と卵母細胞の間の相互作用;(ii)卵胞液の組成;及び(iii)卵胞環境の温度及び血管分布。これらの因子の多くは、卵胞の大きさ及び卵母細胞の成長とともに変化する。対照的に、IVMのための培養条件は、卵胞環境にほとんど影響を与えない体細胞に基づいており、そして/或いは、複雑な組成物又は事実上不確定な高分子サプリメントとしての添加物を有する。グルコース、ピルビン酸塩、酸素及びアミノ酸などの典型的にIVM培地に含まれる代謝物は、卵母細胞の成熟及び能力に特異な影響を与えることが示されてきた。これらの因子の取り扱い及びin vivoにおける環境に関して得られた知識の適用は、改善されたin vitroでの卵母細胞の成熟及び全体的なin vitroでの胚の産生をもたらすことができる。
【0017】
g.IL−6−型サイトカイン
IL(インターロイキン)−6−型のサイトカイン(IL−6、IL−11、LIF(白血病阻害因子)、OSM(オンコスタチンM)、CNTF(毛様体神経栄養因子)、CT−1(カルジオトロフィン−1)及びCLC(カルジオトロフィン様サイトカイン)を含む)は、分化、生存、アポトーシス及び増殖に関与する標的遺伝子を活性化する。IL−6−型サイトカインは、一般的なシグナル伝達レセプター鎖gp130(糖タンパク質 130)を含む原形質膜レセプター複合体に結合する。シグナル伝達は、JAK(Janusキナーゼ)チロシンキナーゼファミリーメンバーの活性化を伴い、STAT(転写のシグナルトランスデューサ及びアクチベータ)ファミリーの転写因子の活性化を導く。IL−6−型サイトカインのための別の主なシグナル経路は、MAPK(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ)カスケードである。
【0018】
IL−6−型サイトカインの認識に関与するレセプターは、非シグナル伝達α−レセプター及びシグナル伝達レセプターに細分化することができる。非シグナル伝達α−レセプターとしては、IL−6Rα、IL−11Rα、及びCNTFRα(ここでRはレセプターを指す)が挙げられるが、これらに限定されない。シグナル伝達レセプターとしては、gp130、LIFR、及びOSMRが挙げられるが、これらに限定されない。シグナル伝達レセプターはJAKと会合し、サイトカインの刺激に応答してチロシンがリン酸化される。IL−6−型サイトカインのそれぞれは、全ての場合においてgp130の少なくとも1つの分子を伴うレセプター動員の、あるプロファイルにより特徴付けられる。
【0019】
IL−6、IL−11及びCNTFは、最初にそれらの各α−レセプターサブユニットに特異的に結合する。ここで、サイトカイン及びα−レセプターの複合体だけが、効率的にシグナル伝達レセプターサブユニットを動員する。IL−6及びIL−11はgp130ホモダイマーによりシグナルを伝達する。ほとんどの他のIL−6型サイトカインは、gp130とLIFR(LIF、CNTF、CT−1及びCLC)又はgp130とOSMR(OSM)のいずれかのヘテロダイマーによりシグナルを伝達する。OSMは2つの異なるレセプター複合体を動員することができる:LIFR−gp130及びOSMR−gp130ヘテロダイマーの両方。LIF及びOSMは、追加のα−レセプターサブユニットを必要としないで、直接的にそれらのシグナル伝達レセプターサブユニットに関与する。
【0020】
1) LIF
LIFは多くの細胞型(胚幹細胞、始原生殖細胞、ニューロン、含脂肪細胞、肝細胞、及び骨芽細胞を含む)において様々な生物学的効果を引き出す。LIFは、様々な内分泌細胞型(子宮−胎盤ユニット、骨代謝、副腎、卵巣、及び睾丸)に影響を及ぼす。生物活性における多様性は、LIFの様々な同義物に反映され、それらは幹細胞刺激因子III(HSF III;Baumann及びWong,J.Immunol.143:1163,1989);コリン作用性神経分化因子(CNDF;Yamamori他, Science 246:1412,1990);メラノーマ由来リポタンパク質リパーゼ阻害因子(MLPLI;Mori他,Biochem.Biophys Res.Comm.160:1085,1989);DA細胞のためのヒトインターロイキン(HILDA;Moreau他,Nature 336:690,1988);分化因子(D−因子;Tomida他,J.Biol.Chem.259:10978,1984);分化阻害因子(DIF;Abe他,J.Biol.Chem.264:8941,1989);分化阻害活性(DIA;Smith及びHooper,Devel.Biol.121:1,1987);及び分化遅延因子(DRF;Koopman及びCotton,Exp.Cell.Res.154:233,1984)を含む。
【0021】
LIFは様々な成人及び胚の系の調節において中心的な役割を果たしている。生殖系においては、LIFは初期の妊娠において重要なサイトカインである。事実、雌性のLIFノックアウトマウスは、胚の着床のプロセスに欠陥があるため不妊である。LIFはヒト卵胞液中に存在し、そのレベルは胞状卵胞の発達段階に従って調節される。卵胞液中のLIFレベルは、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)に対しても反応する。未成熟卵胞からではなく成熟卵胞からの培養顆粒膜細胞は、βhCG(β−ヒトCG)による処理後LIF産生の増加を示し、これはLIFが排卵及び最終的な卵母細胞の発達に関与している可能性を示唆している。さらに、LIFがラットにおいて原始卵胞から一次卵胞への移行を促進することが示された。
【0022】
LIFは、in vitroでの胚幹(EC)細胞及び胚生殖(EG)細胞の培養において重要な因子でもある。EG細胞又はES細胞は、線維芽細胞の支持細胞層において培養した場合、いくつかの細胞により又はLIFの外からの添加により条件培地中で培養した場合に、in vitroで幹細胞の表現型を保つ。支持細胞の不在下において、条件培地又は外からのLIF、ES又はEG細胞は様々な細胞型へと自発的に分化する。
【0023】
2) CT−1
CT−1は心筋細胞の肥大を引き起こし、様々な他の細胞型において多面的な効果を有する。Pennica他(J Biol Chem.1995 May 5;270(18):10915−22)は、CT−1がマウスの胚幹細胞の分化を阻害したことを開示する。in vitroでの生物学的アッセイは、LIFが活性であるアッセイにおいてCT−1が活性であり、逆もまた同じであることを示した。これらのデータは、CT−1が多種多様の造血活性、ニューロン活性、及び発生活性を有し、そしてCT−1がLIFレセプター及びgp130シグナル伝達サブユニットにより作動できることを示した。Pennica他は、CT−1が多くのin vitro及びin vivoでのLIFの効果を模倣するはずであると予測する。
【0024】
国際公開第97/30146号は、哺乳動物に胚を導入する前にCT−1を含む培地中で胚を培養することにより、哺乳動物において妊娠の維持を強化する方法を開示いる。国際公開第97/30146号は、in vitroでの受精、胚分割及び核移植などの胚の生存率が低い卵母細胞/胚における初期の操作手順に対して、CT−1を含む培地が適しているかもしれないことを示唆している。
【0025】
3) OSM
オンコスタチンM(OSM)は、T細胞及びマクロファージの活性化周期の後期に産生される多面的サイトカインであり、その活性化周期はそれに寄与する多くの活性と共に広範囲に特徴付けられている。OSMは、ヒトメラノーマ細胞株の成長又は発達を阻害する能力に基づいて、ホルボールエステルで処理した組織急性リンパ腫細胞株U937の調節された培地から初めて単離された。
【0026】
OSMは3つの細胞表面レセプターに結合する。OSMはgp130ポリペプチドに結合し、IL−6のシグナル伝達サブユニット(低い親和性を有する)としても知られている。2つ目は、中親和性相互作用であり、OSM及びLIFは、低親和性のLIFレセプター及びgp130から構成されるレセプターへの結合に対して競合する。この中親和性レセプター複合体は、シグナル伝達及びin vitroでの生物学的効果の発揮が可能である。このレセプター複合体は2つのサイトカインにより共有されるが、相互作用の親和性及び各サイトカインにより送達される生物学的シグナルは異なる。OSMにより認識される3つ目のレセプターは、他のサイトカインと結合することが知られていない高親和性レセプターである。この高親和性OSMレセプターは、gp130並びに高親和性及び機能的リガンド−レセプター結合に必要な親和性を変換するサブユニットから構成される。
【0027】
4) IL−6
インターロイキン−6(IL−6)は、B細胞、T細胞、単球、線維芽細胞及び内皮細胞などの様々な細胞により産生される多機能性サイトカインである。IL−6は、造血前駆細胞の増殖及び/又は分化に関連するいくつかの活性を示す。これらの活性は、IL−6単独の作用、又はIL−3及びIL−4などの他のサイトカインとの組み合わせにおいてもたらされる。IL−6のいくつかの具体的な生物学的効果としては、B細胞の最終分化、T細胞の増殖及び分化、急性期反応の調節、上皮細胞の成長調節、巨核球の分化、並びに血小板産生が挙げられる。これらの活性及び効果に従って、IL−6に対する標的細胞としては、B細胞、T細胞、骨髄腫細胞、巨核球、単球、初期の幹細胞及び肝細胞が挙げられる。
【0028】
IL−6は多機能性サイトカインであるが、それが発揮する様々な生物学的効果は、細胞上の2つの異なるレセプターサブユニットとIL−6との段階的な相互作用により開始されると信じられている。IL−6は最初に80kDaのレセプターサブユニットとの複合体を形成する。この複合体は非リガンドサブユニットと結合する。この非リガンドサブユニットはgp130と呼ばれる膜糖タンパク質である。IL−6−80kDaレセプター複合体のgp130との結合は、シグナル伝達をもたらす。
【0029】
5) sIL−6Rα
2つの機能的に異なる鎖を含んで成るIL−6に対するレセプター系:リガンド結合鎖(IL−6R)及びシグナル伝達以外の非リガンド結合鎖(gp130)。gp130鎖はIL−6R/IL−6複合体と会合し、高親和性IL−6結合部位及びシグナル伝達の形成をもたらす。インターロイキン−6レセプター(sIL−6R)の細胞外の可溶形態は、膜に固定されたgp130を通してIL−6シグナルを仲介することが示された。
【0030】
6) IL−6/sIL−6Rαキメラ
sIL−6R及びIL−6(IL−6/sIL−6Rαキメラ)の複合体は、IL−6R−ネガティブ及びIL−6R−ポジティブ細胞の両方において発現したgp130と会合することができる。この会合は、gp130のホモ二量体化及びJAK−STAT経路の活性化を誘導し、それにより細胞応答を導く。
【発明の開示】
【0031】
発明の概要
本発明は、in vitroでの卵母細胞の成熟の方法に関し、IL−6−型サイトカインを含んだ生理学的に許容される培地において未成熟卵母細胞をインキュベートすることを含んで成る。卵母細胞は、初期の胞状又は胞状卵胞の段階に存在することができる。IL−6−型サイトカインは、LIFR−gp130ヘテロダイマー、OSMR−gp130へテロダイマー、及びgp130ホモダイマーを含むレセプターと結合することができるが、そのレセプターはこれらに限定されない。IL−6−型サイトカインは、IL−11Rα及びCNTFRαを含むレセプターと結合することができないが、そのレセプターはこれらに限定されない。IL−6−型サイトカインは、LIF、CT−1、OSM、IL−6又はIL−6/sIL−6Rαであることができる。本発明の実施において使用される培地は、さらにFSH、hCG、又はそれらの組み合わせを含んで成ることができる。或いは、培地はFSH、hCG、又はそれらの組み合わせを含まないことができる。
【0032】
本発明はまた、IL−6−型サイトカインを含んだ生理学的に許容される培地において未成熟卵母細胞をインキュベートすることを含んで成る方法により産生される、成熟卵母細胞にも関する。
【0033】
本発明はまた、成熟卵母細胞と共に精子をインキュベートすることを含んで成るin vitroでの受精の方法にも関する。ここで、この成熟卵母細胞は、IL−6−型サイトカインを含んだ生理学的に許容される培地において未成熟卵母細胞をインキュベートすることを含んで成る方法により産生される。
【0034】
本発明はまた、in vitroで成熟卵母細胞と共に精子をインキュベートすることを含んで成る方法により産生される胚にも関する。ここで、この成熟卵母細胞は、IL−6−型サイトカインを含んだ生理学的に許容される培地において未成熟卵母細胞をインキュベートすることを含んで成る方法により産生される。
【0035】
本発明はまた、in vitroで成熟卵母細胞と共に精子をインキュベートすることを含んで成る方法により産生される胚を移植することを含んで成る不妊症を処置する方法にも関する。ここで、この成熟卵母細胞は、IL−6−型サイトカインを含んだ生理学的に許容される培地において未成熟卵母細胞をインキュベートすることを含んで成る方法により産生される。
【0036】
発明の詳細な説明
上記のように、卵形成のプロセスは、胚の構成のための資源の大きく且つ複雑な資質を含む卵母細胞の構成に関する、極めて複雑なプロセスである。
【0037】
1.in vitroでの成熟
本発明は、卵母細胞のin vitroでの成熟のためのいくつかのIL−6−型サイトカインの使用に関する。
【0038】
a.卵母細胞
卵母細胞が発達の段階である間に、本発明の実施において使用する未成熟卵母細胞は雌性から取り出される。発達の段階としては、初期の胞状卵胞及び胞状卵胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
未成熟卵母細胞は、外部ホルモン治療を経ていない雌性から取り出すことができる。或いは、未成熟卵母細胞は、外部ホルモン治療を経た雌性から取り出すことができる。雌性にホルモンを注射することができ、そのホルモンとしてはGnRH、FSH、LH又はhCGが挙げられるが、これらに限定されない。ホルモンは組み合わせて投与することができ、又は任意の順序で逐次的に投与することができる。
【0040】
未成熟卵母細胞は、超音波検査及び吸引を含む方法により雌性から取り出すことができるが、方法はこれらに限定されない。未成熟卵母細胞は、単離後低温保存することができ、in vitroでの成熟の後に温めることができる。
【0041】
b.成熟
単離し未成熟卵母細胞を、いくつかのIL−6−型サイトカインを含む培地中でインキュベートする。培地は、任意の生理学的に許容される培地であることができる。生理学的に許容される培地としては、TCM199、aMEM及びHam's F10が挙げられるが、これらに限定されない。培地は、さらに他の因子を含むことができる。他の因子としては、FSH、hCG、エストラジオール、システアミン、ピルビン酸ナトリウム、グルタミン、及びオートログア(autologour)の加熱不活性化血清又は卵胞液が挙げられるが、これらに限定されない。培地は、FSH、hCG、エストラジオール、システアミン、ピルビン酸ナトリウム、グルタミン、及びオートログア(autologour)の加熱不活性化血清又は卵胞液又はそれらの組み合わせとともに、IL−6−型サイトカインを含むことができる。培地は、いくつかのIL−6−型サイトカインを含むこともでき、そしてFSH及び/又はhCGを欠くこともできる。
【0042】
未成熟卵母細胞を、培地中において、約37℃〜約39℃を含む(これに限定されない)温度で、約6、12、18、24、30、36、42、48、54、60、66又は72時間を含む(これらに限定されない)時間の間インキュベートする。成熟が起こって、卵核胞崩壊(GVBD)、卵丘拡張(cumulus expansion)、分裂中期IIプレート(plate)形成(MII)、極体放出の顕微鏡での目視検査を含む(これらに限定されない)方法によって明らかとなるまで、又はin vitroでの受精及び胚産生により機能的に試験されて成熟が起こるまで、卵母細胞をインキュベートする。
【0043】
c.胚産生
標準的なin vitroでの受精方法を用いて、成熟卵母細胞をin vitroで精子とともにインキュベートし、哺乳動物の胚を産生することができる(Textbook of Assisted Reproductive Techniques Laboratory & Clinical Perspectives(Gardner他編,2001年 Martin Ldunetz Ltd,ロンドン)を参照されたい)。胚を、予定日まで胚をはらませておくことのできる雌性の子宮に移植することができる。
【0044】
2.IL−6サイトカイン
本発明の実施において使用されるIL−6−型サイトカインとしては、LIFR−gp130ヘテロダイマー、OSMR−gp130ヘテロダイマー、及びgp130ホモダイマーに結合するサイトカインが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の実施に使用されるIL−6−型サイトカインとしては、IL−11Rα、及びCNTFRαに結合しないサイトカインも挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
IL−6−型サイトカインは、A、B、C及びDと呼ばれる4つの長いa−へリックスを含んで成るヘリックス束サイトカインのサブファミリーである。このA、B、C及びDは、上−上−下−下のトポロジーに導く方法で配置されている。全てのヘリクスが直線であるIL−6そして恐らくIL−11とも対照的に(in contract with)、LIF、OSM及びCNTFのAヘリックスはねじれている。直線のサイトカインはgp130ホモダイマーによってシグナル伝達をすることができるのに対して、ねじれたサイトカインはLIFR−gp130又はOSMR−gp130ヘテロダイマーによってシグナル伝達をすることができる。本発明の実施において使用されるIL−6−型サイトカインとしては、IL−6、LIF、OSM、CT−1及びIL−6/sIL−6Raキメラ、並びにIL−6−型サイトカインの生物活性を保持するそれらのフラグメント、アナログ、ホモログ、変異形及び誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書中で用いられているように、「アナログ」という用語は、IL−6−型サイトカインとの関係で用いられる場合、1又は複数の非標準的アミノ酸又は他の慣用的な一連のアミノ酸の構造変異形を含む、ペプチド又はポリペプチド意味する。
【0047】
本明細書中で用いられているように、「誘導体」という用語は、IL−6−型サイトカインとの関係で用いられる場合、一次構造以外が異なるペプチド又はポリペプチドを意味する(アミノ酸及びアミノ酸アナログ)。例として、誘導体は、翻訳後修飾の1つの形態であるグリコシル化により異なり得る。例えば、ペプチド又はポリペプチドは、異種系での発現によりグリコシル化パターンを示し得る。少なくとも1つの生物活性が保持されていれば、これらのペプチド又はポリペプチドは本発明の誘導体である。他の誘導体としては、共有結合的に修飾されたN−末端若しくはC−末端を有する融合ペプチド又は融合ポリペプチド、PEG化ペプチド又はポリペプチド、脂質部分と会合したペプチド又はポリペプチド、アルキル化ペプチド又はポリペプチド、アミノ酸側鎖官能基を介して他のペプチド、ポリペプチド若しくは化学物質と結合したペプチド又はポリペプチド、及び当業界で理解されるだろう付加的修飾体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
本明細書中で用いられているように、「フラグメント」という用語は、IL−6−型サイトカインとの関係で用いられる場合、約8〜約50アミノ酸長のペプチドを意味する。フラグメントは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50アミノ酸長であることができる。
【0049】
本明細書中で用いられているように、「ホモログ」という用語は、IL−6−型サイトカインとの関係で用いられる場合、共通の進化論的原種(evolutionary ancestor)を共有するペプチド又はポリペプチドを意味する。
【0050】
本明細書中で用いられているように、「変異形」という用語は、IL−6−型サイトカインとの関係で用いられる場合、アミノ酸の挿入、欠失、又は保存的置換によりアミノ酸配列が異なる(しかし、少なくとも1つの生物活性を保持する)ペプチド又はポリペプチドを意味する。本発明の目的に対しては、「生物活性」としては、特異的抗体により結合される能力が挙げられるが、これに限定されない。
【0051】
アミノ酸の保存的置換、すなわちアミノ酸を類似の特性(例えば、親水性、荷電領域の程度及び分布)の異なるアミノ酸と置換することは、当業界では典型的に小さな変化を伴うものとして認識されている。当業界で理解されているように、アミノ酸のハイドロパシックインデックスを考慮することにより、これらの小さな変化は部分的に同一視され得る。Kyte他,J.Mol.Biol.157:105−132(1982)。アミノ酸のハイドロパシックインデックスは、その疎水性及び電荷の考慮に基づいている。当業界では、類似のハイドロパシックインデックスのアミノ酸は置換することができ、タンパク質の機能をなお維持できることが知られている。1つの側面において、∀2のハイドロパシックインデックスを有するアミノ酸が置換される。アミノ酸の親水性は、生物学的機能を保持するタンパク質が生じるであろう置換を明らかにするのに利用することもできる。ペプチド中のアミノ酸の親水性を考慮することにより、そのペプチドの最大の局所的平均親水性の計算が可能である。局所的平均親水性は、抗原性及び免疫原性と関連すると報告されている有用な尺度である。米国特許第4,554,101号が本明細書中で引用文献として組み込まれている。当業界で理解されているように、類似の親水性値を有するアミノ酸の置換は、例えば免疫原性などの生物活性を保持するペプチドを生じさせることができる。1つの実施態様において、互いに±2以内の親水性値を有するアミノ酸を用いて置換を行う。アミノ酸の疎水性指数及び親水性値は両者とも、アミノ酸の特定の側鎖により影響される。その観察と一致して、生物学的機能に適合するアミノ酸置換は、アミノ酸、特にアミノ酸の側鎖の相対的な類似性に依存することが理解される。その類似性は、疎水性、親水性、電荷、大きさ、及び他の特性により明らかにされる。
【0052】
さらに、コンピューターアルゴリズムは、水性溶媒が接近できそうなアミノ酸配列ドメインの予測を補助するのに利用できる。これらのドメインは、しばしばペプチドの外側に向かって配置されることが当業界において知られており、それにより抗原決定基を含む結合決定基に寄与し得る。
【0053】
本発明は多数の側面を有しており、以下の非制限的な実施例により明らかにされる。
【実施例】
【0054】
実施例1
卵丘−卵母細胞複合体のin vitroでの卵丘拡張におけるLIFの効果
in vitroにおけるマウスCOCの卵丘拡張を誘導するLIFの能力について試験した。7〜8週齢のCD−1雌性マウス(Charles River)を、PMSG(5 IU/雌性、Calbiochem)で刺激した。これらの雌性を、進行性の低酸素症により48時間後に屠殺した。動物の腹部を消毒し、そしてまた髪によるサンプルの汚染を減少させるために、アルコール(70%)をその部分に適用した。腹腔を曝露させるために、腹部の切開を行った。卵管と連結している卵巣を子宮角及び内臓の脂肪組織から切り離した。10個の卵巣を、3mlのL−15培地(Gibco)と10%のウシ胎仔血清(FCS)を含むチューブ(Corning)に加え、37℃で保存した。
【0055】
各チューブの中身をその後60×15mmのペトリ皿(Falcon)に移した。サーモプレート加熱ステージを用いて、立体顕微鏡(Nikon SM2−800)の下で、ハサミ又は27ゲージの注射針を用いて、卵巣から脂肪パッド(fatty pad)及び卵管を取り除いた。次に、取り除いた卵巣を2〜3mlの新たな培地(L15+10%FCS)で満たした新たなペトリ皿の中に置いた。
【0056】
針を用いた各卵巣の機械的な破裂により、COCを回収し、新たな培地(L15+10%FCS)で満たした新たな35×10mmのペトリ皿に置いた。低倍率(20〜30×)の立体顕微鏡を用いて、細胞質が均質であることを基に、卵丘が無傷の卵母細胞を選択した。ミネラルオイルを含まない90μlの培地(10%FCS及びPenStrep−Antibiotics[Invitrogen]を含む、αMEM[Gibco])を含んだ96−ウエルプレートの各ウエルに、2つのCOCをマウスガラスピペット(mouth glass pipet)により移した。96−ウエルプレートへのCOCの添加の前に、プレート中の培地を、5%のCO2を含む加湿インキュベーター中において37℃で1時間の間予め平衡化した。各ウエルへのCOCの添加後に、体積が10μlの異なるロットのLIFを添加し、各ウエルの最終体積を100μlとした。各96−ウエルプレートは、αMEM及びFCSを含む4つのウエルの「ネガティブコントロール」と、αMEM、FCS及び5ng/mlのEGF(Sigma)を含む4つのウエルの「ポジティブコントロール」を含んでいた。アッセイごとに、2つのプレート(複製)を走らせた(run)。5%のCO2を含む加湿インキュベーター中において37℃で18時間、そのプレートをインキュベートした。
【0057】
次に、Nikon製の倒立顕微鏡を用いて各COCの目視検査を行い、卵丘細胞による粘液状細胞外マトリクスの形成を同定した。粘液状細胞外マトリクスは、卵丘拡張の指標である。卵丘拡張の割合は、各処理群において用いた総COCに対する拡張したCOCの数として規定した。任意のロットのLIFが50%超のCOC拡張を誘導した場合に、それをポジティブとみなし、そして、再確認のアッセイにおいて全ての形態のLIFについて再試験をした。次に、確認されたポジティブロットのLIFを、用量応答試験において評価した。説明されているように用量応答試験を行ったが、ウエルごとに4〜5個のCOCを有する3つのウエルを各濃度のLIFに対して割り当てた。
【0058】
異なった形態及びロットのLIFに対する、in vitroでの成熟の比率を表1に示す。試験したほとんどのLIFの形態及びロットは卵丘拡張を誘導した(20〜100%の拡張)。試験した濃度でAS900227−1だけが卵丘拡張を誘導しなかった。
【表1】
【0059】
IVM 一次スクリーン(Primary Screen)におけるポッジティブの再確認として、2つのLIF製剤(AS900230−1及びAS900227−4)を、2つの商業的形態のLIF(Antigenix及びCalbiochem)に対して評価した。再確認IVMアッセイの結果を表2に示す。
【表2】
【0060】
IVM一次スクリーン及び再確認IVMアッセイにおけるポジティブな結果に基づいて、AS900230−7(図1)、AS900230−1(図2)、AS900227−1(図3)及びAntigenixからのLIF(図4)に対して、用量応答解析を行った。AS900227−1はIVM一次スクリーニングにおいて唯一卵丘拡張を誘導できなかったLIFであったが、用量応答様式における用量応答試験においては卵丘拡張を誘導することができた。AS900227−1による一次スクリーンにおいて50%拡張におよばなかったのは、希釈に関連する問題に原因があったのかもしれない。
【0061】
実施例2
卵丘−卵母細胞複合体のin vitroでの成熟におけるCT−1及びOSMの効果
COCのin vitroでの卵丘拡張を誘導するCT−1及びOSMの能力を、実施例1に記載の様式でアッセイした。表3に示すように、マウスCT−1(Preprotech、カタログ#250−25、ロット021203)及びヒトOSM AS901165−1(Calbiochem、カタログ#496260、ロットB30866)は、1μg/ml及び500ng/mlで100%の卵丘拡張を誘導した。マウスCT−1及びヒトOSMに対するポジティブな結果に基づいて、様々な濃度でIVMアッセイを繰り返し、ヒトCT−1(AS900915−1)(図5)及びOSM(AS901165−1;図6)の用量応答を判断した。
【表3】
【0062】
実施例3
ヒトCT−1及びマウスCT−1の比較
マウスCT−1とヒトCT−1の用量応答を比較するために、別のIVMアッセイを行った。表4の結果は、ヒトCT−1及びマウスCT−1が両方ともCOCのin vitroでの卵丘拡張を誘導することを示す。
【表4】
【0063】
実施例4
卵丘−卵母細胞複合体のin vitroでの成熟におけるIL−6及びsIL−6Rαの効果
実施例1〜3において示すin vitroでのCOCの卵丘拡張を誘導するLIF、CT−1及びOSMの能力に基づいて、IL−6及びsIL−6Rαについても試験した。表5の結果は、IL−6及びsIL−6Rαがin vitroでの卵丘拡張も誘導することを示す。
【表5】
【0064】
上記の結果に基づいて、追加のIVMアッセイを行い、異なる形態のIL−6の用量応答を判断した(表6)。図7〜8は、比較的高い量のIL−6で緩やかな卵丘拡張が生じることを示している。図9〜10は、異なる形態のsIL−6Rαに対する用量応答を示している。
【表6】
【0065】
実施例5
卵丘−卵母細胞複合体のin vitroでの成熟におけるIL−6/sIL−6Rαの効果
実施例4に示すCOCのin vitroでの卵丘拡張を個々に誘導するIL−6及びsIL−6Rαの能力に基づいて、IL−6/sIL−6Rαキメラのin vitroでの卵丘拡張を誘導する能力を試験した。表7は、IL−6/sIL−6RαキメラがCOCのin vitroでの卵丘拡張を誘導できたことを示している。図11のIL−6/sIL−6Rαキメラの用量応答は、このキメラがin vitroでの卵丘拡張の誘導において、IL−6又はsIL−6Rαよりも有力であることを示唆している。さらに、このIL−6/sIL−6Rαによる誘導は、より変わりにくい。
【表7】
【0066】
実施例6
in vitroで成熟させた卵母細胞の質におけるLIFの効果
実施例1〜5で示すように、IL−6−型サイトカインは卵母細胞のin vitroでの成熟を誘導し、用量に依存する様式で卵丘拡張を刺激する。次に、受精率、胚盤胞率及び出産率を測定することにより、in vitroで成熟させた卵母細胞の質におけるIL−6−型サイトカインの効果を試験した。
【0067】
実施例1に記載のように、7〜8週齢のB6CBAF1/J雌性マウス(Jackson研究所)からマウスCOCを単離した。上記のように、回収したCOCを、1.5IU/mlのrhCG(組み換えヒト絨毛性ゴナドトロピン)を含有するIVMにおいてin vitroで成熟させた。異なった日に異なったバッチの卵母細胞を用いて、実験を反復して行った。0.2IUのrFSH(組み換えヒト卵胞刺激ホルモン)を含む又は含まない、1000、1又は0.1ng/mlのLIF(Antigenix アメリカ、HC88832)の存在下で、卵母細胞を成熟させた。ネガティブコントロール群(LIF及びFSHを含まないIVM培地)及びポジティブコントロール群(in vivoで成熟させた卵母細胞=排卵された卵母細胞)が含まれた。PMSGをマウスに投与し、続いて48時間後に5IUのhCG(ip)を投与することにより、in vitroで成熟させた卵母細胞を調製した。hCGで刺激した18時間後に(in vitroでの受精の日)、その雌性を屠殺し、卵巣及び卵管を取り除いた。機械的な破裂により、拡張したCOCを得た。
【0068】
in vitro及びin vivoで成熟させたCOCをin vitro受精(IVF)培地(3%のBSA Fraction V[Sigma]を添加したKSOM)中で洗い、次にミネラルオイルの下の50μlのマイクロドロップ中に置いた。次に、2×106/mlの濃度で精子を添加した。成体雄性マウスから精巣上体精子懸濁液を調製し、IVF培地中で2時間プリインキュベートして受精能獲得を確実にした。精子と卵母細胞を4〜5時間インキュベートし、その後COCを取り除き、洗い、卵丘細胞をとって裸にし、ミネラルオイルの下でin vitro胚培養(IVC)培地(0.5%のFraction V結晶性BSA[Calbiochem]を添加したKSOM)の30μlのマイクロドロップ中に置き、37℃の加湿させた5%O2、5%CO2及び90%N2のインキュベーター中に置いた。
【0069】
in vitroでの受精の比率を、2細胞胚の割合に基づいて1日目に測定した。図12に示すように、FSH−IVM群と比較して、(1000ng/mlのLIF+FSH)−IVM群及びin vivoで成熟させた群において受精率が顕著に増加した。同様の受精率の増加が、2000ng/mlのLIF+FSHで見られた(図13)。ネガティブコントロール(FSHを含まないIVM培地)と比較して、LIF(1000又は1ng/ml)単独でも、受精率が顕著に増加した(図12)。
【0070】
胚盤胞の割合に基づいて4日目に胚発生の比率を測定した。in vitroでの受精率の結果と同様に、FSH−IVM群と比較して、(1000ng/mlのLIF+FSH)−IVM群及びin vivoで成熟させた群は胚盤胞率の顕著な増加を示した(図14)。同様の胚盤胞率の増加が、2000ng/mlのLIF+FSHで見られた(図15)。さらに、ネガティブコントロール(FSHを含まないIVM培地)と比較して、LIF(1000又は1ng/ml)単独でも、胚盤胞率が顕著に増加した(図14)。
【0071】
2細胞胚ごとの胚盤胞の総数を決定することによっても、胚発生の比率を測定した。図16で示されるように、LIF及びFSHの存在下で成熟させた卵母細胞を有する全ての群に対して並びにin vivoで成熟させた群において、およそ80%の2細胞胚が胚盤胞へと発達した。LIFだけを用いて成熟させた卵母細胞を用いた群は、同様の結果であった。ネガティブコントロール(−FSH)では胚盤胞は存在しなかった。その比率は、FSH及び0.1ng/mlのLIFを用いた群に対して非常に変わりやすかった。
【0072】
8〜12週齢のCD1 2.5日偽妊娠雌性(Charles River)の子宮角へ4日目の胚を外科的に移植することにより、異なる実験群に対する出産率を測定した。FSH及び1000ng/mlのLIFを含む培地中においてin vitroで成熟させた卵母細胞から産生した胚は、コントロール群(FSH単独)よりも高い出産率(0.05<p<0.07)を有し、in vivoで成熟させた群と同じであった(p>0.05)(図17)。同様の出産率の増加が、2000ng/mlのLIF+FSHで見られた(図18)。さらに、妊娠率はFSH+1000ng/mlLIFで若干高かった(図17)。
【0073】
受精率、胚盤胞率及び出産率の増加は、標準的マウスIVM培地へのLIFの添加が卵母細胞の質を増大させることを示唆している。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、卵丘拡張における AS900230−7 LIFの用量応答効果を表す;
【図2】図2は、卵丘拡張におけるAS900230−1 LIFの用量応答効果を表す;
【図3】図3は、卵丘拡張におけるA900227−1 LIFの用量応答効果を表す;
【図4】図4は、卵丘拡張におけるLIFの用量応答効果を表す;
【図5】図5は、卵丘拡張におけるAS900915−1 CT−1の用量応答効果を表す;
【図6】図6は、卵丘拡張におけるAS901a65−1オンコスタチンの用量応答効果を表す;
【図7】図7は、卵丘拡張におけるAS901167−1ヒトIL−6の用量応答効果を表す;
【図8】図8は、卵丘拡張におけるAS900038−7ヒトIL−6の用量応答効果を表す;
【図9】図9は、卵丘拡張におけるsIL−6Rαの用量応答効果を表す;
【図10】図10は、卵丘拡張におけるAS900419 IL−6Rα(1−339)−6Hisの用量応答効果を表す;及び
【図11】図11は、卵丘拡張におけるAS901166 IL−6/sIL−6Rαキメラの用量応答効果を表す。
【図12】図12は、in vitroでの受精した卵母細胞の比率におけるLIFの効果について実証する。
【図13】図13は、in vitroでの受精した卵母細胞の比率におけるLIFの効果について実証する。
【図14】図14は、胚盤胞形成の総比率におけるLIFの効果について実証する。
【図15】図15は、胚盤胞形成の総比率におけるLIFの効果について実証する。
【図16】図16は、2細胞胚からの胚盤胞形成の比率におけるLIFの効果について実証する。
【図17】図17は、出産率におけるLIFの効果について実証する。
【図18】図18は、出産率におけるLIFの効果について実証する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL−6−型サイトカインを含む生理学的に許容される培地中で未成熟卵母細胞をインキュベートすることを含んで成る、卵母細胞のin vitroでの成熟のための方法。
【請求項2】
前記卵母細胞が初期の胞状又は胞状卵胞の段階にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記IL−6型サイトカインが、LIFR−gp130ヘテロダイマー、OSMR−gp130ヘテロダイマー、及びgp130ホモダイマーから成る群から選択されるレセプターに結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記IL−6型サイトカインが、IL−11Rα及びCNTFRαから成る群から選択されるレセプターに結合しない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記IL−6型サイトカインがLIFである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記IL−6型サイトカインがCT−1である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記IL−6型サイトカインがIL−6である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記IL−6型サイトカインがsIL−6Rαである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記IL−6型サイトカインがIL−6/sIL−6Rαである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記培地がFSH、hCG、又はそれらの組み合わせをさらに含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記培地がFSH、hCG、又はそれらの組み合わせを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の方法により産生された成熟卵母細胞。
【請求項13】
請求項1に記載の方法により産生された成熟卵母細胞と精子をインキュベートすることを含んで成る、in vitroでの受精方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法により産生された胚。
【請求項15】
請求項14に記載の胚を雌性の子宮に移植することを含んで成る、不妊症を処置する方法。
【請求項1】
IL−6−型サイトカインを含む生理学的に許容される培地中で未成熟卵母細胞をインキュベートすることを含んで成る、卵母細胞のin vitroでの成熟のための方法。
【請求項2】
前記卵母細胞が初期の胞状又は胞状卵胞の段階にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記IL−6型サイトカインが、LIFR−gp130ヘテロダイマー、OSMR−gp130ヘテロダイマー、及びgp130ホモダイマーから成る群から選択されるレセプターに結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記IL−6型サイトカインが、IL−11Rα及びCNTFRαから成る群から選択されるレセプターに結合しない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記IL−6型サイトカインがLIFである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記IL−6型サイトカインがCT−1である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記IL−6型サイトカインがIL−6である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記IL−6型サイトカインがsIL−6Rαである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記IL−6型サイトカインがIL−6/sIL−6Rαである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記培地がFSH、hCG、又はそれらの組み合わせをさらに含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記培地がFSH、hCG、又はそれらの組み合わせを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の方法により産生された成熟卵母細胞。
【請求項13】
請求項1に記載の方法により産生された成熟卵母細胞と精子をインキュベートすることを含んで成る、in vitroでの受精方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法により産生された胚。
【請求項15】
請求項14に記載の胚を雌性の子宮に移植することを含んで成る、不妊症を処置する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2007−535303(P2007−535303A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541470(P2006−541470)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/039757
【国際公開番号】WO2005/054449
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(599177396)アプライド リサーチ システムズ エーアールエス ホールディング ナームロゼ フェンノートシャップ (70)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/039757
【国際公開番号】WO2005/054449
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(599177396)アプライド リサーチ システムズ エーアールエス ホールディング ナームロゼ フェンノートシャップ (70)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]