説明

卵白ペプチド粉末の製造方法

【課題】
卵白ペプチド由来の硫黄臭、硫化水素臭といった卵白特有の臭気が、粉末の状態や飲食品に添加した状態であっても、また、加熱殺菌、保存、光等にさらされた経時保存後においても発生しない、安心、安全で優れた抑制方法の提供。
【解決手段】
卵白を加水分解して得られるペプチド1重量部、トレハロースを0.1〜40重量部および水を含有する混合物を乾燥することを特徴とする卵白ペプチド粉末の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光および熱に対して安定で、かつ、実質的に卵白ペプチド特有の不快臭を有さないことを特徴とする卵白ペプチド粉末の製造方法、該製法により得られた卵白ペプチド粉末および該ペプチド粉末を含有する飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
卵白は良質な蛋白質として知られるが、水に溶けにくく、加熱により凝固してしまうため、機能性素材としての利用は進んでいなかった。そこで、卵白を酵素的に加水分解し、水への溶解性を高め、摂取しやすい形態とした、卵白ペプチドが開発され、注目されている(特許文献1)。
【0003】
卵白ペプチドは良質な蛋白源であるだけでなく、血中乳酸値上昇抑制作用による筋肉疲労抑制・緩和、運動パフォーマンスの低下防止等の効果(特許文献2)、血流改善効果(特許文献3)、グラム陽性菌、グラム陰性菌および真菌類に対する優れた抗菌性(特許文献4)、呈味改善効果(特許文献1)等の機能性を持ち合わせた優れた機能性素材である。
【0004】
卵白ペプチドは、卵白の構成蛋白質中における含硫アミノ酸の割合が高いため、硫黄臭、硫化水素臭があり、さらに、加熱、保存による経時変化により独特の分解臭が発生し、そのまま飲食品等に添加しても摂食しにくいという欠点があった。
【0005】
従来、卵白由来の味や臭いの抑制方法としてはシスチンを添加する方法(特許文献5)、亜硫酸ナトリウムを添加する方法(特許文献6)等が提案されていたが、近年消費者の健康・自然志向に伴い、添加物を使用する方法が敬遠される傾向にあり、安全で安心なマスキング方法の開発が求められていた。
【0006】
また、ペプチドは、一般的に、加熱殺菌により不快臭を発生することがあり、さらにまた、苦味を有することも多く、そのことにより摂食しづらいという欠点もあった。これらの改善方法についてもいくつかの方法が提案されている。例えば、アミノ酸やペプチドを含有する酸性飲料の殺菌時に、糖質としてトレハロース、エリスリトール、マルチトール、パラチノースまたはキシリトール等を含有させることによる、殺菌による獣臭のマスキング方法(特許文献7)、蛋白質を、一旦、トレハロースを使用して粉末化した後、飲料に添加することによる、苦味の抑制方法(特許文献8)等が挙げられる。しかしながら、特許文献7の発明は、アミノ酸等の殺菌における獣臭のマスキングに関する発明であり、また特許文献8の発明は、タンパク質の苦味の抑制に関する発明である。
【0007】
したがって、卵白ペプチド由来の硫黄臭、硫化水素臭といった卵白特有の臭気の抑制方法において、安全、安心で、さらに、飲食品の経時的保存においても卵白特有の異臭・劣化臭を発生しない、優れた抑制方法はいまだに開発されてはいないのが現状である。
【0008】
【特許文献1】特開2005−336067号公報
【特許文献2】特開2006−273850号公報
【特許文献3】特開2007−51090号公報
【特許文献4】特開2005−133号公報
【特許文献5】特開平8−308535号公報
【特許文献6】特開平8−322512号公報
【特許文献7】特許第2971855号公報
【特許文献8】特表2006−526418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、卵白ペプチド由来の硫黄臭、硫化水素臭などの卵白特有の臭気が、粉末の状態や飲食品に添加した状態であっても、また、加熱殺菌、保存、光等の影響による経時変化後においても発生しない、安心、安全で優れた抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等はこのような実情に鑑み、卵白ペプチドの臭気抑制に関し、鋭意研究を行ったところ、卵白ペプチドとトレハロースを特定の割合で混合し、脱水乾燥させて粉末化することにより、卵白ペプチドが粉末の状態や飲食品に添加した状態であっても、加熱殺菌、保存、光等の影響による経時変化後においても発生しないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
したがって、本発明は、卵白を加水分解して得られるペプチド1重量部、トレハロースを0.1〜40重量部および水を含有する混合物を乾燥することを特徴とする卵白ペプチド粉末の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、光および熱に対して安定で、かつ、実質的に卵白ペプチド特有の不快臭を有さないことを特徴とする前記の卵白ペプチド粉末の製造方法を提供する。
さらに、本発明は前記の製造方法により得られる卵白ペプチド粉末も提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の卵白ペプチド粉末は、粉末の状態において、卵白ペプチド由来の硫黄臭、硫化水素臭などの卵白特有の臭気が無い。また、飲料や食品に添加し、加熱殺菌を行った後でも卵白ペプチド特有の硫黄臭、硫化水素臭、分解臭が発生しない。さらに、本発明の卵白ペプチド粉末が添加された飲料や食品は光虐待や、熱虐待等を行った後でも、卵白ペプチド特有の硫黄臭、硫化水素臭、分解臭が発生しないという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明をその実施の形態に即して詳細に説明する。
本発明で使用される卵白ペプチドは、卵白を酸やプロテアーゼにより加水分解して得られるペプチドである。原料として使用する卵白は鳥類の卵に含まれる卵白であればいずれでもよく、例えば、鶏、うずら、アヒル、ガチョウなどの卵が例示でき、好ましくは、凍結卵白液や卵白粉末などとして、容易に大量入手できる鶏卵の卵白が挙げられる。卵白ペプチドは、上記卵白を酸またはプロテアーゼ等の酵素により分解することにより得ることができるが、酵素加水分解により得られたものが、より好ましい。
【0014】
酸加水分解する場合は、卵白1〜80重量部を、1000重量部の水に溶解し、酸濃度0.1N以下、90〜120℃で1時間〜12時間加水分解する方法が例示できる。なお、過度の加水分解は呈味性の低下や消失を招くことから、少なくとも100℃以上の加熱の場合、6時間以内となるようにする必要がある。酸としては、塩酸、硫酸等の無機酸や酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸等の有機酸のいずれであっても使用することができる。
【0015】
また、酵素により加水分解する場合はタンパク質加水分解酵素としては、プロテアーゼ活性またはカルボキシペプチダーゼ活性を持ち食品製造に使用可能な、パパイン、フィシン、ブロメライン、アスペルギルス属麹菌由来プロテアーゼ(商品名「オリエンターゼ」株式会社エイチビイアイ社製や商品名「フレバザイム」ノボザイム社製等)などが挙げられる。これらはいずれか単独、あるい、いくつかを組み合わせで使用することができる。プロテアーゼの濃度は、使用する酵素に応じて適宜変動するが、卵白乾燥粉末と酵素の質量比で20対1〜5000対1程度の範囲内が好ましい。酵素反応における水の量や反応温度、反応時間は使用する酵素により異なるが、乾燥卵白1〜300重量部を1000重量部の水に分散し、pH7〜10、40〜70℃で30分間〜24時間加水分解を行うことが好ましい。
【0016】
上記の卵白加水分解物は、適宜脱塩して用いることができる。また、限外ろ過膜、ゲルろ過や各種カラムクロマトグラフィー、メンブランフィルターなどで精製や分画して用いてもよい。
このような卵白ペプチドの市販品としては「ランペップ(登録商標)」(株式会社ファーマーフーズ社製)が挙げられる。
【0017】
トレハロースは、グルコースがα−1,1で結合した非還元性の天然糖質で、酵母、キノコ、エビなどに多く含まれており、これらの動植物にとって、エネルギー貯蔵物質としての役割を果たしている。トレハロースは蛋白質の凍結や乾燥に対する保護作用などのほか多くの特長を有しており、甘味料、調味料として利用される他、和・洋菓子、ペースト類、ビン・缶詰類、清涼飲料、冷凍食品、乾燥食品等で利用されている。本発明に用いるトレハロースの製法は特に限定されないが、例えば、ブドウ糖溶液中で酵母を培養して、酵母菌体中でトレハロースをつくらせ、このトレハロースを菌体から分離する方法、ブドウ糖溶液中でバクテリアを培養することにより培養液中にトレハロースを産生させ、このトレハロースを培養液から分離回収する方法などの公知のトレハロースの製造法により得られるものが使用できる。このようなトレハロースの市販品としては「トレハ(登録商標)」(株式会社林原生物化学研究所社製)が挙げられる。
【0018】
本発明における卵白ペプチドとトレハロースの混合割合は卵白を加水分解して得られるペプチド1重量部に対し、トレハロースを0.1〜40重量部、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部とすることが必要である。トレハロースがこの範囲より少ない場合、卵白ペプチド特有の硫黄臭、硫化水素臭などの不快臭が十分マスキングされず効果が発揮されない。また、トレハロースがこの範囲を超えて多い場合、飲食品中に配合した場合に、卵白ペプチドの有効量を添加しようとすると、トレハロースの添加量が多くなりすぎてしまい、トレハロースによる呈味の変化、粘度等の物性変化等が起こり好ましくない。
【0019】
本発明では卵白ペプチドとトレハロースを水溶液中に溶解または懸濁して混合し、乾燥法により粉末化する。この乾燥工程を経ることにより卵白ペプチド特有の硫黄臭、硫化水素臭などの不快臭が低減し、さらに飲食品等に添加した後も不快臭が発生しないペプチド粉末となる。
使用する水の量は卵白ペプチドおよびトレハロースを混合または懸濁することができる量であれば特に制限はなく、一般には、卵白ペプチドおよびトレハロースの合計重量に基づいて約0.5〜約80重量部、好ましくは、約1〜約20重量部の範囲内が適当である。
【0020】
また、乾燥に際しては必要に応じて上記混合物に、他の賦形剤として、砂糖、乳糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴等の糖類;糖アルコール類;デキストリン等の各種デンプン分解物およびデンプン誘導体、水溶性ヘミセルロース、デンプン、ゼラチン、アラビアガム等の天然ガム類などを適宜配合することもできる。これらの配合量は粉末状混合物に望まれる特性等に応じて適宜に選択することができる。
乾燥方法は水分を乾燥・除去できる方法であればいかなる方法でも良く、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の乾燥手段を用いることにより、硫黄臭、硫化水素臭などの不快臭が低減し、さらに飲食品等に添加した後も不快臭が発生しないペプチド粉末を得ることができる。
【0021】
かくして得られる卵白ペプチド粉末は、例えば、飲料、粉末飲料、チューインガム、錠菓、スナック類、水産加工食品、畜肉加工食品、レトルト食品、冷凍品、インスタントラーメン、健康食品などの飲食品類に適当量を配合することができる。これら飲食品類に配合される粉末状混合物の使用量は、飲食品の種類、形態などにより異なるが、一般的には、飲食品1重量部に対して約0.001〜約0.1重量部、好ましくは約0.005〜約0.05重量部の範囲内で使用することができる。
以下、本発明を実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【実施例】
【0022】
実施例1
水1400gにランペップ(中性タイプ)(株式会社ファーマーフーズ社製の卵白ペプチド)100g、トレハロース400gおよびDE4のデキストリンであるパインデックスNo.100(松谷化学工業株式会社製、商品名)500gを加えて溶解し、85℃で1分間加熱殺菌した。これを40℃に冷却し、モービルマイナー型スプレードライヤー(ニロ社製、商品名)を使用して、入口温度150℃、出口温度80℃にて噴霧乾燥し、卵白ペプチド粉末950g(本発明品1)を得た。
【0023】
比較例1
実施例1においてトレハロースを全量パインデックスNo.1に置き換える以外は実施例1と全く同様の操作を行い、卵白ペプチド粉末950g(比較品1)を得た。
【0024】
実施例2
下記表1の処方に従って、卵白ペプチドを0.1%含有する中性飲料とし、UHT殺菌機にて136℃で30秒間殺菌を行い、89℃に冷却後500mlペットボトルに充填した。充填後2分間保持した後、水冷により30℃まで冷却した。
【0025】
【表1】

【0026】
それぞれの飲料は、光および熱安定性試験を行った。光安定性試験における光虐待条件は12500Lx、10℃、1週間、熱安定性試験における熱虐待条件は暗所、50℃、1週間とした。保存後の飲料を10名のよく訓練された専門パネラーにより官能評価を行った。評価基準は卵白ペプチド特有の硫黄臭、硫化水素臭等が全く感じられない場合を10、きわめて異臭が強い場合を0とする11段階とし、その風味についても記載した。10名のパネラーの平均点を表2に示す。
【0027】
【表2】

【0028】
表2に示した通り、本発明品2は飲料製造直後、光虐待後、熱虐待後のいずれにおいても異臭はほとんど感じられなかったが、デキストリンのみを賦形剤とした比較品2は飲料製造直後、光虐待後、熱虐待後のいずれの条件においても卵白特有の硫黄臭、硫化水素臭が発生した。また、賦形剤を全く使用しない比較品3は硫黄臭、硫化水素臭が強く、また光劣化試験後においては髪の毛を焦がしたような異臭も強く感じられた。
一方、比較品4は卵白ペプチド、トレハロース、デキストリンを本発明による粉末化を行わずにそれぞれ直接飲料に添加したものであり、飲料中においては本発明品2と同一の組成となっているが、本発明品2と比べ硫黄臭、硫化水素臭等の異臭が強く出ていた。
【0029】
しかしながら、トレハロースを使用せず、卵白ペプチドとデキストリンを使用した比較品2と比較品5を比較した場合、粉末化の効果はトレハロースを使用した場合ほどは大きくは出ておらず、いずれも卵白特有の硫黄臭、硫化水素臭が発生した。
したがって、上記結果より、卵白ペプチドをトレハロースと共に粉末化することにより、飲料に添加した場合において、飲料の製造直後のみならず、光虐待後、熱虐待後でも異臭発生が抑えられることが確認された。
【0030】
実施例3
表3に示す処方量にて水にランペップ(中性タイプ)(株式会社ファーマーフーズ社製の卵白ペプチド)、トレハロースおよびDE4のデキストリンであるパインデックスNo.100(松谷化学工業株式会社製、商品名)を溶解し、85℃で1分間加熱殺菌した。これを40℃に冷却し、モービルマイナー型スプレードライヤー(ニロ社製、商品名)を使用して、入口温度150℃、出口温度80℃にて噴霧乾燥し、卵白ペプチド乾燥粉末(本発明品3〜6、比較品6、比較品7)を得た。
【0031】
【表3】

【0032】
表3の処方に従って得られたそれぞれの粉末を、卵白ペプチドとして0.1%含有するように水に溶解し、UHT殺菌機にて136℃で30秒間殺菌を行い、89℃に冷却後500mlペットボトルに充填した。充填後2分間保持した後、水冷により30℃まで冷却した。
それぞれの飲料は、光および熱安定性試験を行った。光安定性試験における光虐待条件は12500Lx、10℃、1週間、熱安定性試験における熱虐待条件は暗所、50℃、1週間とした。保存後の飲料を10名のよく訓練された専門パネラーにより官能評価を行った。評価基準は実施例2と同じ基準で行った。10名のパネラーの平均点を表4に示す。
【0033】
【表4】

【0034】
表4の結果より、卵白ペプチド:トレハロースの重量比が1:0.05である比較品6を添加した飲料は、製造直後においては卵白特有の硫黄臭や硫化水素臭がやや感じられる程度であったが、虐待後は硫黄臭や硫化水素臭がやや強くなり、特に、光虐待後においては髪の毛を焦がしたような異臭が感じられた。
一方、卵白ペプチド:トレハロースの重量比が1:0.5である本発明品3および卵白ペプチド:トレハロースの重量比が1:2である本発明品4は硫黄臭、硫化水素臭がわずかに感じられる程度であり、卵白ペプチド:トレハロースの重量比が1:10である本発明品5、卵白ペプチド:トレハロースの重量比が1:20である本発明品6は硫黄臭、硫化水素臭は虐待後においてもほとんど感じられなかった。
しかしながら、卵白ペプチド:トレハロースの重量比が1:80である比較品7を添加した飲料は硫黄臭、硫化水素臭等の異臭は全く感じられなかったが、飲料自体が粘度と甘味が出てしまい飲みにくいものとなってしまった。
【0035】
実施例4
水1400gにランペップ(酸性タイプ)(株式会社ファーマーフーズ社製の卵白ペプチド)100g、トレハロース400gおよびDE4のデキストリンであるパインデックスNo.100(松谷化学工業株式会社製、商品名)500gを加えて溶解し、85℃で1分間加熱殺菌した。これを40℃に冷却し、モービルマイナー型スプレードライヤー(ニロ社製、商品名)を使用して、入口温度150℃、出口温度80℃にて噴霧乾燥し、卵白ペプチド粉末950g(本発明品7)を得た。
【0036】
比較例2
実施例4においてトレハロースを全量パインデックスNo.100に置き換える以外は実施例4と全く同様の操作を行い、卵白ペプチド粉末950g(比較品8)を得た。
【0037】
実施例5
下記表5の処方に従って、卵白ペプチドを0.1%含有する酸性飲料とし、UHT殺菌機にて92℃で30秒間殺菌を行い、88℃に冷却後500mlペットボトルに充填した。充填後2分間保持した後、水冷により30℃まで冷却した。
【0038】
【表5】

【0039】
それぞれの飲料は、光および熱安定性試験を行った。光安定性試験における光虐待条件は12500Lx、10℃、1週間、熱安定性試験における熱虐待条件は暗所、50℃、1週間とした。保存後の飲料を10名のよく訓練された専門パネラーにより官能評価を行った。評価基準は実施例2と同じ基準で行った。10名のパネラーの平均点を表6に示す。
【0040】
【表6】

【0041】
表6に示した通り、酸性飲料においても、中性飲料とほとんど同じ結果が得られた。すなわち本発明品8は飲料製造直後、光虐待後、熱虐待後のいずれにおいても異臭はほとんど感じられなかったが、デキストリンのみを賦形剤とした比較品9は飲料製造直後、光虐待後、熱虐待後のいずれの条件においても卵白特有の硫黄臭、硫化水素臭が発生した。また、賦形剤を全く使用しない比較品10は硫黄臭、硫化水素臭が強く、また光劣化試験後においては髪の毛を焦がしたような異臭も強く感じられた。
一方、比較品11は卵白ペプチド、トレハロース、デキストリンを粉末化せずにそれぞれ直接飲料に添加したものであり、飲料中においては本発明品8と同一の組成となっているが、本発明品8と比べ硫黄臭、硫化水素臭等の異臭が強く出ていた。
しかしながら、トレハロースを使用せず、卵白ペプチドとデキストリンを使用した比較品9と比較品12を比較した場合、両者は飲料中においては同一の組成となっているが、粉末化の効果はトレハロースを使用した場合ほどは大きくは出ておらず、いずれも卵白特有の硫黄臭、硫化水素臭が発生した。
したがって、上記結果より、卵白ペプチドをトレハロースと共に粉末化することにより、酸性飲料に添加した場合においても、飲料の製造直後のみならず、光虐待後、熱虐待後でも異臭発生が抑えられることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵白を加水分解して得られるペプチド1重量部、トレハロースを0.1〜40重量部および水を含有する混合物を乾燥することを特徴とする卵白ペプチド粉末の製造方法。
【請求項2】
光および熱に対して安定で、かつ、実質的に卵白ペプチド特有の不快臭を有さないことを特徴とする請求項1に記載の卵白ペプチド粉末の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の製造方法により得られる卵白ペプチド粉末。