原子力プラント、燃料プール水冷却装置及び燃料プール水冷却方法
【課題】循環水系の作動不良時に無動力で機能して燃料プールの水位低下を抑制することができる原子力プラント、燃料プール水冷却装置及び燃料プール水冷却方法を提供する。
【解決手段】核燃料を含む炉心1を内包した原子炉圧力容器2と、この原子炉圧力容器2を格納する格納容器3と、使用済み燃料12を保管する燃料プール11と、原子炉圧力容器2、格納容器3及び燃料プール11を収容した原子炉建屋10と、燃料プール11の燃料プール水14を強制循環冷却する循環水系21と、燃料プール11の燃料プール水14の熱を搬送し大気中に放出する少なくとも1本のヒートパイプ13とを備えたことを特徴とする。
【解決手段】核燃料を含む炉心1を内包した原子炉圧力容器2と、この原子炉圧力容器2を格納する格納容器3と、使用済み燃料12を保管する燃料プール11と、原子炉圧力容器2、格納容器3及び燃料プール11を収容した原子炉建屋10と、燃料プール11の燃料プール水14を強制循環冷却する循環水系21と、燃料プール11の燃料プール水14の熱を搬送し大気中に放出する少なくとも1本のヒートパイプ13とを備えたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力プラント、燃料プール水冷却装置及び燃料プール水冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型軽水炉(以下、適宜BWRと略す)の原子炉建屋には、原子炉圧力容器内で使用中の炉心燃料のみならず、既に数サイクル運転経過した使用済み燃料が保管されている。使用済み燃料は、一般に、原子炉建屋内に設置した燃料プール(以下、適宜SFPと略す)の燃料プール水(冷却水)中に保管される(特許文献1等参照)。この種のBWRにおいては、一般に燃料プール水の水温を適正に維持するための循環水系が備わっており、燃料の崩壊熱を除去するために燃料プール水はポンプによって冷却水タンク等との間で強制循環され、例えば循環の途中で海水との熱交換によって冷却される等し、燃料プールの水温は40℃程度に維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−329684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
沸騰水型軽水炉(以下、適宜BWRと略す)の安全性を向上させる観点から、非常事態には原子炉安全確保の三原則(1.核分裂の停止、2.炉心燃料の冷却、3.放射性物質の閉じ込め)を確実に実行する必要がある。特に2.の炉心燃料の冷却に関しては、従来から緊急炉心冷却システム(ECCS)、残留熱除去系システム(RHR)、非常用復水器(IC)、静的格納容器冷却系設備(PCCS)等からなる多重安全保護系を設置して非常事態に備えている。
【0005】
しかし、不測の事態によって万一電源を失い循環水系が停止するようなことがあれば燃料プール水の冷却に支障をきたし、非常用電源が回復するまでの間、大気の飽和温度(100℃程度)まで水温が上昇してしまうと、燃料プールが蒸発して燃料プールの水位が低下し得る。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みなされたもので、循環水系の作動不良時に無動力で機能して燃料プールの水位低下を抑制することができる原子力プラント、燃料プール水冷却装置及び燃料プール水冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、燃料プールの熱をヒートパイプで搬送し大気に放出する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、燃料プール水を動的に冷却する循環水系が作動不良に陥った場合でも、ヒートパイプによって燃料プール水の熱を搬送して大気に放熱することによって、燃料プール水の沸騰・蒸発を抑制し、燃料プールの水位低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る原子力プラントの要部のシステム系統図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る原子力プラントに備えられたヒートパイプの一例の概略構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る原子力プラントに備えられたヒートパイプの他の例の概略構成図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る原子力プラントにおける使用済み燃料プール及びヒートパイプの各種温度の勾配を表す模式図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る原子力プラントにおける使用済み燃料プール内の燃料プール水の水面温度の経時変化を示した図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る原子力プラントに備えられたヒートパイプの一例の概略構成図である。
【図7】図6中のA−A線による断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る原子力プラントにおける使用済み燃料プール及びヒートパイプの各種温度の勾配を表す模式図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る原子力プラントの要部のシステム系統図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態に係る原子力プラントの要部のシステム系統図である。
【図11】本発明の第5の実施の形態に係る原子力プラントの要部の概略構成図である。
【図12】本発明の第6の実施の形態に係る原子力プラントの要部の概略構成図である。
【図13】本発明の第7の実施の形態に係る原子力プラントの要部の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る原子力プラントの要部のシステム系統図である。
【0012】
図1は使用済み燃料プール(以下、SFPと略す)を有する沸騰水型軽水炉(以下、BWRと略す)を示しており、以下の各実施の形態ではSFPを有するBWRのシステムに本発明を適用した場合を例に挙げて説明する。
【0013】
図1に示したBWR発電プラントにおいて、原子炉建屋10には、内圧調整の機能を果たす圧力抑制プール4を含む格納容器3、非常時の蒸気凝縮に使用する非常用復水器5、使用済み燃料12を保管するSFP11等が収容されている。格納容器3には、核燃料を含む炉心1を内包した原子炉圧力容器2が収納されている。このBWRでは、原子炉圧力容器2内において炉心1で水を沸騰させて発生させた蒸気を低圧タービン、高圧タービンに供給し、これらタービンによって発電機を駆動して電気を発生さる。タービンを駆動した蒸気は復水器で覆水した後、給水加熱器や給水ポンプ等を通って昇圧、加熱されて原子炉圧力容器に戻される。但し、図1では、高圧タービン、低圧タービン等のタービンや発電機、覆水器、給水加熱器、給水ポンプ等は図示省略してある。
【0014】
格納容器3の下部にはドーナツ型の上記圧力抑制プール4が連結されている。また、原子炉圧力容器2の上部には導管が接続しており、この導管は圧力抑制プール4内の液4a中まで延在していて、例えば原子炉圧力容器2内の圧力が高くなった場合等は、導管に設けた主蒸気逃し安全弁を開放することによって圧力抑制プール4内の液4a中へ蒸気を排出し凝縮させることができる。さらに、格納容器3内の圧力が高くなった場合には、格納容器(ドライウェル)ベント管7又は格納容器(ウェットウェル)ベント管8から格納容器3内の蒸気を排出し、放射性物質吸着フィルター60を通して放射性物質を回収した上で排気筒9からプラント外部の大気中に放出する。また、上記非常用復水器5は、原子炉建屋10内において格納容器3の上部と同レベルの高さに設置されている。
【0015】
上記SFP11は、原子炉建屋10内において格納容器3の上部と同レベルの高さに設置されている。使用済み燃料12はSFP11の下部に設置され、SFP11内には使用済み燃料12の集合体の高さ(例えば4m程度)の2倍程度又はそれ以上の水位の燃料プール水14が貯留されている。また、BWR発電プラントには、SFP11の燃料プール水14を動的に冷却する循環水系21が設けられており、SFP11は給水路21a及び排水路21bを介して別途設けたタンク等の水源(不図示)と接続していて、ポンプ22を駆動することによって給水路21a及び排水路21bを介してSFP11と水源との間で燃料プール水14が強制循環される。すなわち、SFP11内で使用済み燃料12の崩壊熱を受け取った燃料プール水14が排水路21bを介してSFP11から排出されるとともに、給水路21aを介して水源からの燃料プール水14がSFP11に流入し、SFP11内の燃料プール水14の温度が所定温度(例えば40℃程度)に維持されている。また、SFP11と水源との間を循環する燃料プール水14は、ポンプ25によって海から汲み上げられた海水24aと循環系(本実施の形態では排水路21b)の途中に設けた冷却水熱交換器23で熱交換され、燃料プール水14の熱が海水に移動するようになっている。冷却水熱交換器23で熱を受け取った海水24bは海に放出される。すなわち、海水が使用済み燃料12の崩壊熱の最終的なヒートシンクとなっている。
【0016】
なお、SFP11には、使用済み燃料12が保管される他、定期検査時に原子炉圧力容器2から取り出した使用中の燃料が一時保管される場合もある。
【0017】
ここで、SFP11には貯留した燃料プール水14に一の側(本実施の形態では下側)を浸漬したヒートパイプ13が少なくとも1本設置されていて、ヒートパイプ13の内部空間で生じる作動流体の蒸発及び凝縮による蒸発潜熱を利用して、使用済み燃料12から燃料プール水14に移動した崩壊熱がヒートパイプ13によってSFP11外に搬送されるようになっている。ヒートパイプ13の他の側(本実施の形態では上側)は、原子炉建屋10に設けた空気ダクト42の管路内に露出している。原子炉建屋10に対するヒートパイプ13の設置場所は必ずしも限定されないが、本実施の形態において、ヒートパイプ13は原子炉建屋10の側部外壁部10aに設置した場合を例示してある。空気ダクト42は、一方の開口よりも他方の開口が高位置となっており、本実施の形態では鉛直方向に延びる直管を例示してある。この場合、空気ダクト42内ではヒートパイプ13からの入熱によって空気が加熱されて上昇するため、自然循環によって原子炉建屋10外の空気18aが空気ダクト42の入口(下部開口)から流入し、加熱された空気18bが空気ダクト42の出口(上部開口)から流出し、崩壊熱が最終的に大気中に放出される。
【0018】
図2はヒートパイプ13の一例の概略構成図である。
【0019】
図2に示したヒートパイプ13は、管路の内壁部にウィック(毛細管構造)を持たない重力式ヒートパイプであり、上部側が作動流体の凝縮する放熱部33となっている。放熱部33の態様は限定されないが、本実施の形態ではヒートパイプ13の外周部に放熱手段34を設置してある。放熱手段34としては、複数の放熱フィンが例示できる。ヒートパイプ13は上端も下端も閉止された密閉管構造であり、下端部に作動流体である液体36がある。ヒートパイプ13における使用済み燃料プール14の燃料プール水11に浸った部分が加熱部31であり、液体36は加熱部31に存在する。
【0020】
図2のヒートパイプ13においては、加熱部31において燃料プール水14によって液体36が加熱され、それによって生じた蒸気流37がヒートパイプ13の管路の中央部を上昇し、蒸気流37の熱は放熱部33において空気ダクト42内で放出され、上昇する空気18bに伴って空気ダクト42から排出される。そして、空気18bとの熱交換により凝縮した凝縮液38がヒートパイプ13の内壁面に沿って流下して液体36に戻る。図2では1本のヒートパイプ13を設置した場合を例として図示しているが、要求される除熱量によってヒートパイプ13の数は適宜増やすことができる。
【0021】
図3はヒートパイプ13の他の例の概略構成図である。
【0022】
図3に示したヒートパイプ13は内壁部にウィック(毛細管構造)35を有する表面張力式ヒートパイプである。ウィック35を有する点以外は図2のヒートパイプ13と同様の構成である。
【0023】
図3のヒートパイプ13においても、加熱部31で発生した蒸気流37がヒートパイプ13の管路中央部を上昇し、放熱部33で放熱して凝縮するとともに、凝縮液38がヒートパイプ13の内壁面のウィック35に沿って流下する。図3のヒートパイプ13は、ウィックのない図2のヒートパイプ13に比べて凝縮液38が流下し易く熱輸送能力が高い。本例においても、要求される除熱量によってヒートパイプ13の数を適宜増やすことができる。
【0024】
図4はSFP11及びヒートパイプ13における各種温度の勾配を表す模式図である。
【0025】
図4においては、SFP11及びヒートパイプ13を抜き出した左側の概略構成図に対応させて、使用済み燃料12の表面温度、燃料プール水14の水温及びヒートパイプ13の温度の勾配を表すグラフを右側に示してある。
【0026】
ここで、電源喪失によってポンプ22による燃料プール水14の強制循環が停止するようなことがあっても、SFP11内の燃料プール水14が沸騰しないように、SFP11内のプール水温が60℃程度まで上昇したらヒートパイプ13による崩壊熱除去性能が急速に向上する必要がある。そこで、ヒートパイプ13内の作動流体として水を選定し、かつヒートパイプ13内の飽和圧力Pについて、
P≦20kPa ・・・(式1)
という条件を満足するようにする。
【0027】
ここで、ヒートパイプ13内の飽和圧力Pが20kPaの場合に作動流体は約60℃で沸騰する。作動媒体に水を用いた理由は、蒸発潜熱が大きく、また燃料プール水14と同じ成分であるため、万一ヒートパイプ13が損傷した場合でも流体混合による問題を生じない等の長所を有する点である。
【0028】
使用済み燃料12は運転中の熱出力の数%程度の崩壊熱を放出しており、SFP11の燃料プール水14がその崩壊熱によって加熱される。ヒートパイプ13は加熱部31において燃料プール水14によって加熱され、液体36の水温が約60℃まで上昇すると液体36から蒸気流37が発生し熱輸送が始まる。原子炉建屋10内においてはヒートパイプ13の燃料プール水14の水面から露出した断熱部32では、蒸気流37は保温されてヒートパイプ13中を上昇し続ける。そして、原子炉建屋10の外部に露出した放熱部33まで上昇すると、空気18bとの熱交換によって蒸気流37は例えば25℃程度に冷却される。いわゆる冷却強化温度Tcが60℃である場合、液体36がこの冷却強化温度Tcに到達して始めてヒートパイプ13の熱輸送能力が発揮される熱的ダイオードとして機能する。なお、ヒートパイプ13による冷却のスイッチング効果を発揮する上記冷却強化温度Tcは60℃より低い適当な値に設定しても何ら問題はない。
【0029】
図5はSFP11内の燃料プール水14の水面温度の経時変化を示した図である。
【0030】
図5において、時刻t=t0で電源が喪失したと仮定する。この時点では燃料プール水14の水面温度はまだTw(例えば40℃程度)に維持されている。時刻t=t0で強制冷却用のポンプ22が停止した場合、ヒートパイプ13を省略した比較例(破線)では、使用済み燃料12の崩壊熱がSFP11内の燃料プール水14へ移動し、時刻t=t2で燃料プール水14の水温が水の飽和温度Tb(沸点:100℃)となり、SFP11内において燃料プール水14が沸騰し蒸発する。
【0031】
それに対し、本実施の形態(実線)では、ポンプ22による強制循環冷却機能が低下しても、時刻t=t1(<t2)でヒートパイプ13内の作動流体(水)の蒸発・凝縮現象を生じさせる冷却強化温度Tc(=60℃程度)まで燃料プール水14の水温が上昇すると、ヒートパイプ13による冷却機能が急速に作用し始め、それ以降、SFP11内の燃料プール水14の水面温度がTc程度に維持される。この時、SFP11内の燃料プール水14では自然対流が生じている。したがって、SFP11内の燃料プール水14の蒸発が抑制され、燃料プール水14の初期(時間t=t0)の水位が維持され、SFP11の十分な水位を確保するとともに、燃料プール水14の温度もTc(=約60℃)程度に維持され得る。
【0032】
以上のように、本実施の形態の原子力プラントにおけるSFP11の燃料プール水14は、使用済み燃料の崩壊熱は循環水系21を強制循環する冷却水との熱交換の他、SFP11内に設置したヒートパイプ13による熱輸送で冷却されるようになっている。このヒートパイプ13による熱輸送には動力が必要ない。また、作動流体の沸騰・凝縮といった相変化現象を用いているため、この流体の大きな蒸発潜熱による熱輸送能力の高さは、作動流体が液体単相流の他の自然循環による放熱手段に比べても際立っている。そのため、万一電源喪失によりポンプ22が作動不能に陥っても、ヒートパイプ13によって燃料プール水14を自然循環によって静的に放熱させることができ、燃料プール水14の蒸発によりSFP11の水位が低下して使用済み燃料12が水面から露出することを抑制することができる。これによって使用済み燃料12の除熱を継続させることができ、燃料プール水14中に保管された使用済み燃料12の安全性及び健全性の向上が図られる。
【0033】
(第2の実施の形態)
図6は本発明の第2の実施の形態に係る原子力プラントに備えられたヒートパイプの一例の概略構成図、図7は図6中のA−A線による断面図である。
【0034】
本実施の形態が第1の実施の形態と相違する点は、第1の実施の形態ではヒートパイプ13の加熱部31が燃料プール水14中の使用済み燃料棒12まで達していなかったのに対し、本実施の形態のヒートパイプ13Aは燃料プール水14中の複数の使用済み燃料棒12の間に挿入されていることである。
【0035】
具体的には、図6及び図7に示したように、ヒートパイプ13Aの加熱部31は高さ方向に2つの部分に分かれていて、下端側が複数の使用済み燃料棒12の間に挿入する挿入部31aになっている。挿入部31aは、使用済み燃料棒12の長さをカバーし得る長さを有しており、例えば4m又はそれ以上である。この挿入部31aは上下に延びる4枚の吸熱板31aaを軸心部から放射状に延ばした構成をしており、その断面形状は中心部から吸熱板31aaを放射状に延ばした十字型になっている。図7に示したように、4本の使用済み燃料12の中心部に挿入部31aが差し込まれると、各吸熱板31aaが隣接する2つの使用済み燃料棒12の間に介在する。
【0036】
本実施の形態は、使用済み燃料12の高さ範囲の全体を吸熱板31aaでカバーするように、SFP11内に設置された使用済み燃料12の間に挿入部31aを挿入する。
【0037】
その他の構成は第1の実施の形態と同様であり、既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0038】
図8はSFP11及びヒートパイプ13aにおける各種温度の勾配を表す模式図であり、図4に対応する図である。
【0039】
温度勾配の傾向は第1の実施の形態と相違ないが、図4と比較して分かる通り使用済み燃料12の配置領域において燃料プール水14の温度が抑制される。これは、ヒートパイプ13Aが使用済み燃料12の間にまで挿入されていて、燃料プール水14が燃料表面でサブクール沸騰することがなく安定的に冷却されるためである。本実施の形態の構成は、第1の実施の形態と比較しても除熱効率を向上させることができる。崩壊熱を放出している使用済み燃料12に吸熱板31aaがより近接することに加え、挿入部31aが十字型で円筒型に比べて比表面積が大きいからである。
【0040】
(第3の実施の形態)
図9は本発明の第3の実施の形態に係る原子力プラントの要部のシステム系統図である。
【0041】
本実施の形態が第1の実施の形態と相違する点は、炉内構造物をプール水15a中に保管する炉内構造物保管用プール15を原子炉建屋10内に設け、この炉内構造物保管用プール15にも炉内構造物保管用プール用のヒートパイプ17を別途設置するとともに、炉内構造物保管用プール15とSFP11とを連通ヒートパイプ16で接続した点である。
【0042】
炉内構造物保管用プール15は、原子炉建屋10内において格納容器3の上部と同レベルの高さに設置されている。炉内構造物保管用プール用のヒートパイプ17、連通ヒートパイプ16の基本構成は、燃料プール用のヒートパイプ13と同じである。
【0043】
その他の構成は第1の実施の形態と同様であり、既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0044】
本実施の形態において、使用済み燃料12の崩壊熱は、循環水系21による除熱、SFP11用のヒートパイプ13による除熱に加え、連通ヒートパイプ16→炉内構造物保管用プール15→ヒートパイプ17の熱移動経路による除熱によって放熱される。そのため、第1の実施の形態と比べても静的冷却能力を向上させることができる。
【0045】
(第4の実施の形態)
図10は本発明の第4の実施の形態に係る原子力プラントの要部のシステム系統図である。
【0046】
本実施の形態が第1の実施の形態と相違する点は、ヒートパイプ13の放熱部に送風する送風ファン41を備えた点である。すなわち、ヒートパイプ13の放熱部33を自然放熱式から送風ファン41による強制空気冷却方式に切り換えた例である。本実施の形態では、送風ファン41は、空気ダクト42の内部に設置されていて、ヒートパイプ13の放熱部33に対して空気ダクト42内の空気の流れ方向の上流側(下側)に位置している。下流側に設ける構成でも良い。送風方向は上方向である。
【0047】
その他の構成は第1の実施の形態と同様であり、既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0048】
ヒートパイプ13の放熱部33には放熱面積を大きくするために多数の放熱フィン(放熱手段34、図2、図3等参照)を設置しているが、送風ファン41によって放熱フィンを強制冷却することができれば、放熱部33の伝熱面積を小さくすることができ、放熱フィンを小型化し、ひいてはヒートパイプ13をコンパクトに構成することができる。もちろん、本実施の形態は冷却フィンの強制冷却機構が付加されてはいるが、第1の実施の形態の構成を包含しているため、送風ファン41が駆動しなくてもヒートパイプ13そのものは機能する。
【0049】
本実施の形態によっても、使用済み燃料12の崩壊熱は、循環水系21による除熱及びヒートパイプ13による除熱の2種類で放出される。そして、送風ファン41を駆動した場合には、ヒートパイプ13の放熱効率が向上し、より冷却効果が高まる。
【0050】
(第5の実施の形態)
図11は本発明の第5の実施の形態に係る原子力プラントの要部の概略構成図である。
【0051】
本実施の形態が第1の実施の形態と相違する点は、通常時にはヒートパイプ13は燃料プール水14に浸漬しておらず、必要時にヒートパイプ13を燃料プール水14に浸漬させる点である。
【0052】
本実施の形態において、ヒートパイプ13には、放熱部33の下部側と下端部にそれぞれ係止部61,62が設けられている。ヒートパイプ13は係止部61,62及び放熱手段34によって複数本がまとめられてユニット化してあるが、必ずしも複数ほんのヒートパイプ13を要する訳ではない。また、本実施の形態では、ヒートパイプ13をSFP11の水面上方で支持するとともに、当該支持を解くことでヒートパイプ13をSFP11の燃料プール水14に投入可能なストッパー45を備えている。ストッパー45は、例えば原子炉建屋10の上部に設けられていて、通常時は上部側の係止部61を支持している。この状態では、ヒートパイプ13は全体が燃料プール水14の水面よりも上側に位置していて、燃料プール水14には浸かっていない。
【0053】
しかし、ストッパー45を外してストッパー45による係止部61の支持を解いた場合、下部側の係止部62がSFP11の内壁部に設けたストッパー46に支持される位置までヒートパイプ13は落下する(図11の状態)。この状態となると、ヒートパイプ13の加熱部31が燃料プール水14に浸漬する。なお、ストッパー46は燃料プール水14中であって使用済み燃料12よりも高位置に設置されており、ヒートパイプ13が落下して使用済み燃料12に接触することがないようにしてある。
【0054】
特に図示していないが、ヒートパイプ13がストッパー45よりも下側部分において原子炉建屋10の天井部を貫通する構成とした場合には、ヒートパイプ13が落下した図11の状態でも放熱部33が原子炉建屋10の外部に露出する構成とすることができる。
【0055】
その他の構成は第1の実施の形態と同様であり、既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0056】
本実施の形態においては、循環水系21の電源を失った場合等にストッパー45を外してヒートパイプ13を重力落下させ、ヒートパイプ13による燃料プール水14の冷却を可能としている。よって、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
(第6の実施の形態)
図12は本発明の第6の実施の形態に係る原子力プラントの要部の概略構成図である。
【0058】
本実施の形態が第1の実施の形態と相違する点は、SFP11内の燃料プール水14を密閉した点である。具体的には、SFP11に上蓋51を設置することで、SFP11内の燃料プール水14を密封し、崩壊熱除去による放射性物質を含んだ発生蒸気をSFP11内に閉じ込める構成としてある。ヒートパイプ13は上蓋51を貫通している。
【0059】
その他の構成は第1の実施の形態と同様であり、既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0060】
燃料プール14はヒートパイプ13によって沸騰しないように対策されているが、万一使用済み燃料12の崩壊熱によって燃料プール水14が沸騰して蒸発した場合、SFP11が開放されていると蒸気がSFP11外に流出し、SFP11の水位が低下する恐れがある。それに対し、本実施の形態ではSFP11に上蓋51を設置することにより、燃料プール水14の蒸気がSFP11外に逃げてSFP11の水位が低下することを抑制することができる。
【0061】
(第7の実施の形態)
図13は本発明の第7の実施の形態に係る原子力プラントの要部の概略構成図である。
【0062】
本実施の形態が第6の実施の形態と相違する点は、SFP11内の気相空間内の水素濃度を検出し、その水素濃度が水素可燃限界濃度を超えない範囲でSFP11内の水素ガスを大気中に放出する点である。
【0063】
本実施の形態においては、SFP11内の気相空間内の水素濃度を検出する水素濃度検出器52と、SFP11の気相空間と原子炉建屋11の外部空間とを接続する水素排出管路55と、この水素排出管路55の流路を開閉する制御弁54とを備えている。SFP11には、SFP11の気相空間に接続する検出口53が設けられており、この検出口53が水素濃度検出器52に接続している。特に図示していないが、水素濃度検出器52により検出される水素濃度を見て必要と判断された場合に、水素濃度が空気中の酸素と反応するための水素可燃限界の濃度以下の範囲であることを条件として、制御弁54に指令信号を出力することによって水素排出管路55を開放し、水素排出管路55を介して水素56を排出する。特に図示していないが、水素濃度検出器52の検出信号を基に制御弁54を開閉制御する制御装置を設置することも考えられる。
【0064】
その他の構成は第6の実施の形態と同様であり、既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0065】
本実施の形態によれば、第6の実施の形態と同様の効果が得られる他、SFP11内における水素燃焼の発生を抑制することができる。
【0066】
(その他)
以上においては、BWRに本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、BWRに限らず、燃料プールを有するプラントであれば本発明は適用可能である。例えば、加圧水型原子力プラントや高速増殖炉型原子力プラント等の他方式の原子力プラントに本発明を適用した場合においても、BWRに本発明を適用した場合と同様の効果が得られる。
【0067】
また、各実施の形態は適宜組み合わせ可能であり、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。
【符号の説明】
【0068】
1・・・炉心、2・・・原子炉圧力容器、3・・・格納容器3、4・・・圧力抑制プール、5・・・非常用復水器、7・・・格納容器(ドライウェル)ベント管、8・・・格納容器(ウェットウェル)ベント管、9・・・排気筒、10・・・原子炉建屋10、10a・・・側部外壁部、11・・・使用済み燃料プール(SFP)、12・・・使用済み燃料、13,13A・・・ヒートパイプ、4a・・・液、14・・・燃料プール水、15・・・炉内構造物保管用プール、15a・・・プール水、16・・・連通ヒートパイプ、17・・・ヒートパイプ、18a,b・・・空気、21・・・循環水系、21a・・・給水路、21b・・・排水路、22・・・ポンプ、23・・・冷却水熱交換器、24a,b・・・海水、25・・・ポンプ、31・・・加熱部、31a・・・挿入部31a、31aa・・・吸熱板、32・・・断熱部、33・・・放熱部、34・・・放熱手段、35・・・ウィック(毛細管構造)、36・・・液体、37・・・蒸気流、38・・・凝縮液、41・・・送風ファン、45,46・・・ストッパー、51・・・上蓋、52・・・水素濃度検出器、53・・・検出口、54・・・制御弁、55・・・水素排出管路、60・・・放射性物質吸着フィルター、61,62・・・係止部
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力プラント、燃料プール水冷却装置及び燃料プール水冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型軽水炉(以下、適宜BWRと略す)の原子炉建屋には、原子炉圧力容器内で使用中の炉心燃料のみならず、既に数サイクル運転経過した使用済み燃料が保管されている。使用済み燃料は、一般に、原子炉建屋内に設置した燃料プール(以下、適宜SFPと略す)の燃料プール水(冷却水)中に保管される(特許文献1等参照)。この種のBWRにおいては、一般に燃料プール水の水温を適正に維持するための循環水系が備わっており、燃料の崩壊熱を除去するために燃料プール水はポンプによって冷却水タンク等との間で強制循環され、例えば循環の途中で海水との熱交換によって冷却される等し、燃料プールの水温は40℃程度に維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−329684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
沸騰水型軽水炉(以下、適宜BWRと略す)の安全性を向上させる観点から、非常事態には原子炉安全確保の三原則(1.核分裂の停止、2.炉心燃料の冷却、3.放射性物質の閉じ込め)を確実に実行する必要がある。特に2.の炉心燃料の冷却に関しては、従来から緊急炉心冷却システム(ECCS)、残留熱除去系システム(RHR)、非常用復水器(IC)、静的格納容器冷却系設備(PCCS)等からなる多重安全保護系を設置して非常事態に備えている。
【0005】
しかし、不測の事態によって万一電源を失い循環水系が停止するようなことがあれば燃料プール水の冷却に支障をきたし、非常用電源が回復するまでの間、大気の飽和温度(100℃程度)まで水温が上昇してしまうと、燃料プールが蒸発して燃料プールの水位が低下し得る。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みなされたもので、循環水系の作動不良時に無動力で機能して燃料プールの水位低下を抑制することができる原子力プラント、燃料プール水冷却装置及び燃料プール水冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、燃料プールの熱をヒートパイプで搬送し大気に放出する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、燃料プール水を動的に冷却する循環水系が作動不良に陥った場合でも、ヒートパイプによって燃料プール水の熱を搬送して大気に放熱することによって、燃料プール水の沸騰・蒸発を抑制し、燃料プールの水位低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る原子力プラントの要部のシステム系統図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る原子力プラントに備えられたヒートパイプの一例の概略構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る原子力プラントに備えられたヒートパイプの他の例の概略構成図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る原子力プラントにおける使用済み燃料プール及びヒートパイプの各種温度の勾配を表す模式図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る原子力プラントにおける使用済み燃料プール内の燃料プール水の水面温度の経時変化を示した図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る原子力プラントに備えられたヒートパイプの一例の概略構成図である。
【図7】図6中のA−A線による断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る原子力プラントにおける使用済み燃料プール及びヒートパイプの各種温度の勾配を表す模式図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る原子力プラントの要部のシステム系統図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態に係る原子力プラントの要部のシステム系統図である。
【図11】本発明の第5の実施の形態に係る原子力プラントの要部の概略構成図である。
【図12】本発明の第6の実施の形態に係る原子力プラントの要部の概略構成図である。
【図13】本発明の第7の実施の形態に係る原子力プラントの要部の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る原子力プラントの要部のシステム系統図である。
【0012】
図1は使用済み燃料プール(以下、SFPと略す)を有する沸騰水型軽水炉(以下、BWRと略す)を示しており、以下の各実施の形態ではSFPを有するBWRのシステムに本発明を適用した場合を例に挙げて説明する。
【0013】
図1に示したBWR発電プラントにおいて、原子炉建屋10には、内圧調整の機能を果たす圧力抑制プール4を含む格納容器3、非常時の蒸気凝縮に使用する非常用復水器5、使用済み燃料12を保管するSFP11等が収容されている。格納容器3には、核燃料を含む炉心1を内包した原子炉圧力容器2が収納されている。このBWRでは、原子炉圧力容器2内において炉心1で水を沸騰させて発生させた蒸気を低圧タービン、高圧タービンに供給し、これらタービンによって発電機を駆動して電気を発生さる。タービンを駆動した蒸気は復水器で覆水した後、給水加熱器や給水ポンプ等を通って昇圧、加熱されて原子炉圧力容器に戻される。但し、図1では、高圧タービン、低圧タービン等のタービンや発電機、覆水器、給水加熱器、給水ポンプ等は図示省略してある。
【0014】
格納容器3の下部にはドーナツ型の上記圧力抑制プール4が連結されている。また、原子炉圧力容器2の上部には導管が接続しており、この導管は圧力抑制プール4内の液4a中まで延在していて、例えば原子炉圧力容器2内の圧力が高くなった場合等は、導管に設けた主蒸気逃し安全弁を開放することによって圧力抑制プール4内の液4a中へ蒸気を排出し凝縮させることができる。さらに、格納容器3内の圧力が高くなった場合には、格納容器(ドライウェル)ベント管7又は格納容器(ウェットウェル)ベント管8から格納容器3内の蒸気を排出し、放射性物質吸着フィルター60を通して放射性物質を回収した上で排気筒9からプラント外部の大気中に放出する。また、上記非常用復水器5は、原子炉建屋10内において格納容器3の上部と同レベルの高さに設置されている。
【0015】
上記SFP11は、原子炉建屋10内において格納容器3の上部と同レベルの高さに設置されている。使用済み燃料12はSFP11の下部に設置され、SFP11内には使用済み燃料12の集合体の高さ(例えば4m程度)の2倍程度又はそれ以上の水位の燃料プール水14が貯留されている。また、BWR発電プラントには、SFP11の燃料プール水14を動的に冷却する循環水系21が設けられており、SFP11は給水路21a及び排水路21bを介して別途設けたタンク等の水源(不図示)と接続していて、ポンプ22を駆動することによって給水路21a及び排水路21bを介してSFP11と水源との間で燃料プール水14が強制循環される。すなわち、SFP11内で使用済み燃料12の崩壊熱を受け取った燃料プール水14が排水路21bを介してSFP11から排出されるとともに、給水路21aを介して水源からの燃料プール水14がSFP11に流入し、SFP11内の燃料プール水14の温度が所定温度(例えば40℃程度)に維持されている。また、SFP11と水源との間を循環する燃料プール水14は、ポンプ25によって海から汲み上げられた海水24aと循環系(本実施の形態では排水路21b)の途中に設けた冷却水熱交換器23で熱交換され、燃料プール水14の熱が海水に移動するようになっている。冷却水熱交換器23で熱を受け取った海水24bは海に放出される。すなわち、海水が使用済み燃料12の崩壊熱の最終的なヒートシンクとなっている。
【0016】
なお、SFP11には、使用済み燃料12が保管される他、定期検査時に原子炉圧力容器2から取り出した使用中の燃料が一時保管される場合もある。
【0017】
ここで、SFP11には貯留した燃料プール水14に一の側(本実施の形態では下側)を浸漬したヒートパイプ13が少なくとも1本設置されていて、ヒートパイプ13の内部空間で生じる作動流体の蒸発及び凝縮による蒸発潜熱を利用して、使用済み燃料12から燃料プール水14に移動した崩壊熱がヒートパイプ13によってSFP11外に搬送されるようになっている。ヒートパイプ13の他の側(本実施の形態では上側)は、原子炉建屋10に設けた空気ダクト42の管路内に露出している。原子炉建屋10に対するヒートパイプ13の設置場所は必ずしも限定されないが、本実施の形態において、ヒートパイプ13は原子炉建屋10の側部外壁部10aに設置した場合を例示してある。空気ダクト42は、一方の開口よりも他方の開口が高位置となっており、本実施の形態では鉛直方向に延びる直管を例示してある。この場合、空気ダクト42内ではヒートパイプ13からの入熱によって空気が加熱されて上昇するため、自然循環によって原子炉建屋10外の空気18aが空気ダクト42の入口(下部開口)から流入し、加熱された空気18bが空気ダクト42の出口(上部開口)から流出し、崩壊熱が最終的に大気中に放出される。
【0018】
図2はヒートパイプ13の一例の概略構成図である。
【0019】
図2に示したヒートパイプ13は、管路の内壁部にウィック(毛細管構造)を持たない重力式ヒートパイプであり、上部側が作動流体の凝縮する放熱部33となっている。放熱部33の態様は限定されないが、本実施の形態ではヒートパイプ13の外周部に放熱手段34を設置してある。放熱手段34としては、複数の放熱フィンが例示できる。ヒートパイプ13は上端も下端も閉止された密閉管構造であり、下端部に作動流体である液体36がある。ヒートパイプ13における使用済み燃料プール14の燃料プール水11に浸った部分が加熱部31であり、液体36は加熱部31に存在する。
【0020】
図2のヒートパイプ13においては、加熱部31において燃料プール水14によって液体36が加熱され、それによって生じた蒸気流37がヒートパイプ13の管路の中央部を上昇し、蒸気流37の熱は放熱部33において空気ダクト42内で放出され、上昇する空気18bに伴って空気ダクト42から排出される。そして、空気18bとの熱交換により凝縮した凝縮液38がヒートパイプ13の内壁面に沿って流下して液体36に戻る。図2では1本のヒートパイプ13を設置した場合を例として図示しているが、要求される除熱量によってヒートパイプ13の数は適宜増やすことができる。
【0021】
図3はヒートパイプ13の他の例の概略構成図である。
【0022】
図3に示したヒートパイプ13は内壁部にウィック(毛細管構造)35を有する表面張力式ヒートパイプである。ウィック35を有する点以外は図2のヒートパイプ13と同様の構成である。
【0023】
図3のヒートパイプ13においても、加熱部31で発生した蒸気流37がヒートパイプ13の管路中央部を上昇し、放熱部33で放熱して凝縮するとともに、凝縮液38がヒートパイプ13の内壁面のウィック35に沿って流下する。図3のヒートパイプ13は、ウィックのない図2のヒートパイプ13に比べて凝縮液38が流下し易く熱輸送能力が高い。本例においても、要求される除熱量によってヒートパイプ13の数を適宜増やすことができる。
【0024】
図4はSFP11及びヒートパイプ13における各種温度の勾配を表す模式図である。
【0025】
図4においては、SFP11及びヒートパイプ13を抜き出した左側の概略構成図に対応させて、使用済み燃料12の表面温度、燃料プール水14の水温及びヒートパイプ13の温度の勾配を表すグラフを右側に示してある。
【0026】
ここで、電源喪失によってポンプ22による燃料プール水14の強制循環が停止するようなことがあっても、SFP11内の燃料プール水14が沸騰しないように、SFP11内のプール水温が60℃程度まで上昇したらヒートパイプ13による崩壊熱除去性能が急速に向上する必要がある。そこで、ヒートパイプ13内の作動流体として水を選定し、かつヒートパイプ13内の飽和圧力Pについて、
P≦20kPa ・・・(式1)
という条件を満足するようにする。
【0027】
ここで、ヒートパイプ13内の飽和圧力Pが20kPaの場合に作動流体は約60℃で沸騰する。作動媒体に水を用いた理由は、蒸発潜熱が大きく、また燃料プール水14と同じ成分であるため、万一ヒートパイプ13が損傷した場合でも流体混合による問題を生じない等の長所を有する点である。
【0028】
使用済み燃料12は運転中の熱出力の数%程度の崩壊熱を放出しており、SFP11の燃料プール水14がその崩壊熱によって加熱される。ヒートパイプ13は加熱部31において燃料プール水14によって加熱され、液体36の水温が約60℃まで上昇すると液体36から蒸気流37が発生し熱輸送が始まる。原子炉建屋10内においてはヒートパイプ13の燃料プール水14の水面から露出した断熱部32では、蒸気流37は保温されてヒートパイプ13中を上昇し続ける。そして、原子炉建屋10の外部に露出した放熱部33まで上昇すると、空気18bとの熱交換によって蒸気流37は例えば25℃程度に冷却される。いわゆる冷却強化温度Tcが60℃である場合、液体36がこの冷却強化温度Tcに到達して始めてヒートパイプ13の熱輸送能力が発揮される熱的ダイオードとして機能する。なお、ヒートパイプ13による冷却のスイッチング効果を発揮する上記冷却強化温度Tcは60℃より低い適当な値に設定しても何ら問題はない。
【0029】
図5はSFP11内の燃料プール水14の水面温度の経時変化を示した図である。
【0030】
図5において、時刻t=t0で電源が喪失したと仮定する。この時点では燃料プール水14の水面温度はまだTw(例えば40℃程度)に維持されている。時刻t=t0で強制冷却用のポンプ22が停止した場合、ヒートパイプ13を省略した比較例(破線)では、使用済み燃料12の崩壊熱がSFP11内の燃料プール水14へ移動し、時刻t=t2で燃料プール水14の水温が水の飽和温度Tb(沸点:100℃)となり、SFP11内において燃料プール水14が沸騰し蒸発する。
【0031】
それに対し、本実施の形態(実線)では、ポンプ22による強制循環冷却機能が低下しても、時刻t=t1(<t2)でヒートパイプ13内の作動流体(水)の蒸発・凝縮現象を生じさせる冷却強化温度Tc(=60℃程度)まで燃料プール水14の水温が上昇すると、ヒートパイプ13による冷却機能が急速に作用し始め、それ以降、SFP11内の燃料プール水14の水面温度がTc程度に維持される。この時、SFP11内の燃料プール水14では自然対流が生じている。したがって、SFP11内の燃料プール水14の蒸発が抑制され、燃料プール水14の初期(時間t=t0)の水位が維持され、SFP11の十分な水位を確保するとともに、燃料プール水14の温度もTc(=約60℃)程度に維持され得る。
【0032】
以上のように、本実施の形態の原子力プラントにおけるSFP11の燃料プール水14は、使用済み燃料の崩壊熱は循環水系21を強制循環する冷却水との熱交換の他、SFP11内に設置したヒートパイプ13による熱輸送で冷却されるようになっている。このヒートパイプ13による熱輸送には動力が必要ない。また、作動流体の沸騰・凝縮といった相変化現象を用いているため、この流体の大きな蒸発潜熱による熱輸送能力の高さは、作動流体が液体単相流の他の自然循環による放熱手段に比べても際立っている。そのため、万一電源喪失によりポンプ22が作動不能に陥っても、ヒートパイプ13によって燃料プール水14を自然循環によって静的に放熱させることができ、燃料プール水14の蒸発によりSFP11の水位が低下して使用済み燃料12が水面から露出することを抑制することができる。これによって使用済み燃料12の除熱を継続させることができ、燃料プール水14中に保管された使用済み燃料12の安全性及び健全性の向上が図られる。
【0033】
(第2の実施の形態)
図6は本発明の第2の実施の形態に係る原子力プラントに備えられたヒートパイプの一例の概略構成図、図7は図6中のA−A線による断面図である。
【0034】
本実施の形態が第1の実施の形態と相違する点は、第1の実施の形態ではヒートパイプ13の加熱部31が燃料プール水14中の使用済み燃料棒12まで達していなかったのに対し、本実施の形態のヒートパイプ13Aは燃料プール水14中の複数の使用済み燃料棒12の間に挿入されていることである。
【0035】
具体的には、図6及び図7に示したように、ヒートパイプ13Aの加熱部31は高さ方向に2つの部分に分かれていて、下端側が複数の使用済み燃料棒12の間に挿入する挿入部31aになっている。挿入部31aは、使用済み燃料棒12の長さをカバーし得る長さを有しており、例えば4m又はそれ以上である。この挿入部31aは上下に延びる4枚の吸熱板31aaを軸心部から放射状に延ばした構成をしており、その断面形状は中心部から吸熱板31aaを放射状に延ばした十字型になっている。図7に示したように、4本の使用済み燃料12の中心部に挿入部31aが差し込まれると、各吸熱板31aaが隣接する2つの使用済み燃料棒12の間に介在する。
【0036】
本実施の形態は、使用済み燃料12の高さ範囲の全体を吸熱板31aaでカバーするように、SFP11内に設置された使用済み燃料12の間に挿入部31aを挿入する。
【0037】
その他の構成は第1の実施の形態と同様であり、既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0038】
図8はSFP11及びヒートパイプ13aにおける各種温度の勾配を表す模式図であり、図4に対応する図である。
【0039】
温度勾配の傾向は第1の実施の形態と相違ないが、図4と比較して分かる通り使用済み燃料12の配置領域において燃料プール水14の温度が抑制される。これは、ヒートパイプ13Aが使用済み燃料12の間にまで挿入されていて、燃料プール水14が燃料表面でサブクール沸騰することがなく安定的に冷却されるためである。本実施の形態の構成は、第1の実施の形態と比較しても除熱効率を向上させることができる。崩壊熱を放出している使用済み燃料12に吸熱板31aaがより近接することに加え、挿入部31aが十字型で円筒型に比べて比表面積が大きいからである。
【0040】
(第3の実施の形態)
図9は本発明の第3の実施の形態に係る原子力プラントの要部のシステム系統図である。
【0041】
本実施の形態が第1の実施の形態と相違する点は、炉内構造物をプール水15a中に保管する炉内構造物保管用プール15を原子炉建屋10内に設け、この炉内構造物保管用プール15にも炉内構造物保管用プール用のヒートパイプ17を別途設置するとともに、炉内構造物保管用プール15とSFP11とを連通ヒートパイプ16で接続した点である。
【0042】
炉内構造物保管用プール15は、原子炉建屋10内において格納容器3の上部と同レベルの高さに設置されている。炉内構造物保管用プール用のヒートパイプ17、連通ヒートパイプ16の基本構成は、燃料プール用のヒートパイプ13と同じである。
【0043】
その他の構成は第1の実施の形態と同様であり、既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0044】
本実施の形態において、使用済み燃料12の崩壊熱は、循環水系21による除熱、SFP11用のヒートパイプ13による除熱に加え、連通ヒートパイプ16→炉内構造物保管用プール15→ヒートパイプ17の熱移動経路による除熱によって放熱される。そのため、第1の実施の形態と比べても静的冷却能力を向上させることができる。
【0045】
(第4の実施の形態)
図10は本発明の第4の実施の形態に係る原子力プラントの要部のシステム系統図である。
【0046】
本実施の形態が第1の実施の形態と相違する点は、ヒートパイプ13の放熱部に送風する送風ファン41を備えた点である。すなわち、ヒートパイプ13の放熱部33を自然放熱式から送風ファン41による強制空気冷却方式に切り換えた例である。本実施の形態では、送風ファン41は、空気ダクト42の内部に設置されていて、ヒートパイプ13の放熱部33に対して空気ダクト42内の空気の流れ方向の上流側(下側)に位置している。下流側に設ける構成でも良い。送風方向は上方向である。
【0047】
その他の構成は第1の実施の形態と同様であり、既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0048】
ヒートパイプ13の放熱部33には放熱面積を大きくするために多数の放熱フィン(放熱手段34、図2、図3等参照)を設置しているが、送風ファン41によって放熱フィンを強制冷却することができれば、放熱部33の伝熱面積を小さくすることができ、放熱フィンを小型化し、ひいてはヒートパイプ13をコンパクトに構成することができる。もちろん、本実施の形態は冷却フィンの強制冷却機構が付加されてはいるが、第1の実施の形態の構成を包含しているため、送風ファン41が駆動しなくてもヒートパイプ13そのものは機能する。
【0049】
本実施の形態によっても、使用済み燃料12の崩壊熱は、循環水系21による除熱及びヒートパイプ13による除熱の2種類で放出される。そして、送風ファン41を駆動した場合には、ヒートパイプ13の放熱効率が向上し、より冷却効果が高まる。
【0050】
(第5の実施の形態)
図11は本発明の第5の実施の形態に係る原子力プラントの要部の概略構成図である。
【0051】
本実施の形態が第1の実施の形態と相違する点は、通常時にはヒートパイプ13は燃料プール水14に浸漬しておらず、必要時にヒートパイプ13を燃料プール水14に浸漬させる点である。
【0052】
本実施の形態において、ヒートパイプ13には、放熱部33の下部側と下端部にそれぞれ係止部61,62が設けられている。ヒートパイプ13は係止部61,62及び放熱手段34によって複数本がまとめられてユニット化してあるが、必ずしも複数ほんのヒートパイプ13を要する訳ではない。また、本実施の形態では、ヒートパイプ13をSFP11の水面上方で支持するとともに、当該支持を解くことでヒートパイプ13をSFP11の燃料プール水14に投入可能なストッパー45を備えている。ストッパー45は、例えば原子炉建屋10の上部に設けられていて、通常時は上部側の係止部61を支持している。この状態では、ヒートパイプ13は全体が燃料プール水14の水面よりも上側に位置していて、燃料プール水14には浸かっていない。
【0053】
しかし、ストッパー45を外してストッパー45による係止部61の支持を解いた場合、下部側の係止部62がSFP11の内壁部に設けたストッパー46に支持される位置までヒートパイプ13は落下する(図11の状態)。この状態となると、ヒートパイプ13の加熱部31が燃料プール水14に浸漬する。なお、ストッパー46は燃料プール水14中であって使用済み燃料12よりも高位置に設置されており、ヒートパイプ13が落下して使用済み燃料12に接触することがないようにしてある。
【0054】
特に図示していないが、ヒートパイプ13がストッパー45よりも下側部分において原子炉建屋10の天井部を貫通する構成とした場合には、ヒートパイプ13が落下した図11の状態でも放熱部33が原子炉建屋10の外部に露出する構成とすることができる。
【0055】
その他の構成は第1の実施の形態と同様であり、既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0056】
本実施の形態においては、循環水系21の電源を失った場合等にストッパー45を外してヒートパイプ13を重力落下させ、ヒートパイプ13による燃料プール水14の冷却を可能としている。よって、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
(第6の実施の形態)
図12は本発明の第6の実施の形態に係る原子力プラントの要部の概略構成図である。
【0058】
本実施の形態が第1の実施の形態と相違する点は、SFP11内の燃料プール水14を密閉した点である。具体的には、SFP11に上蓋51を設置することで、SFP11内の燃料プール水14を密封し、崩壊熱除去による放射性物質を含んだ発生蒸気をSFP11内に閉じ込める構成としてある。ヒートパイプ13は上蓋51を貫通している。
【0059】
その他の構成は第1の実施の形態と同様であり、既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0060】
燃料プール14はヒートパイプ13によって沸騰しないように対策されているが、万一使用済み燃料12の崩壊熱によって燃料プール水14が沸騰して蒸発した場合、SFP11が開放されていると蒸気がSFP11外に流出し、SFP11の水位が低下する恐れがある。それに対し、本実施の形態ではSFP11に上蓋51を設置することにより、燃料プール水14の蒸気がSFP11外に逃げてSFP11の水位が低下することを抑制することができる。
【0061】
(第7の実施の形態)
図13は本発明の第7の実施の形態に係る原子力プラントの要部の概略構成図である。
【0062】
本実施の形態が第6の実施の形態と相違する点は、SFP11内の気相空間内の水素濃度を検出し、その水素濃度が水素可燃限界濃度を超えない範囲でSFP11内の水素ガスを大気中に放出する点である。
【0063】
本実施の形態においては、SFP11内の気相空間内の水素濃度を検出する水素濃度検出器52と、SFP11の気相空間と原子炉建屋11の外部空間とを接続する水素排出管路55と、この水素排出管路55の流路を開閉する制御弁54とを備えている。SFP11には、SFP11の気相空間に接続する検出口53が設けられており、この検出口53が水素濃度検出器52に接続している。特に図示していないが、水素濃度検出器52により検出される水素濃度を見て必要と判断された場合に、水素濃度が空気中の酸素と反応するための水素可燃限界の濃度以下の範囲であることを条件として、制御弁54に指令信号を出力することによって水素排出管路55を開放し、水素排出管路55を介して水素56を排出する。特に図示していないが、水素濃度検出器52の検出信号を基に制御弁54を開閉制御する制御装置を設置することも考えられる。
【0064】
その他の構成は第6の実施の形態と同様であり、既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0065】
本実施の形態によれば、第6の実施の形態と同様の効果が得られる他、SFP11内における水素燃焼の発生を抑制することができる。
【0066】
(その他)
以上においては、BWRに本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、BWRに限らず、燃料プールを有するプラントであれば本発明は適用可能である。例えば、加圧水型原子力プラントや高速増殖炉型原子力プラント等の他方式の原子力プラントに本発明を適用した場合においても、BWRに本発明を適用した場合と同様の効果が得られる。
【0067】
また、各実施の形態は適宜組み合わせ可能であり、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。
【符号の説明】
【0068】
1・・・炉心、2・・・原子炉圧力容器、3・・・格納容器3、4・・・圧力抑制プール、5・・・非常用復水器、7・・・格納容器(ドライウェル)ベント管、8・・・格納容器(ウェットウェル)ベント管、9・・・排気筒、10・・・原子炉建屋10、10a・・・側部外壁部、11・・・使用済み燃料プール(SFP)、12・・・使用済み燃料、13,13A・・・ヒートパイプ、4a・・・液、14・・・燃料プール水、15・・・炉内構造物保管用プール、15a・・・プール水、16・・・連通ヒートパイプ、17・・・ヒートパイプ、18a,b・・・空気、21・・・循環水系、21a・・・給水路、21b・・・排水路、22・・・ポンプ、23・・・冷却水熱交換器、24a,b・・・海水、25・・・ポンプ、31・・・加熱部、31a・・・挿入部31a、31aa・・・吸熱板、32・・・断熱部、33・・・放熱部、34・・・放熱手段、35・・・ウィック(毛細管構造)、36・・・液体、37・・・蒸気流、38・・・凝縮液、41・・・送風ファン、45,46・・・ストッパー、51・・・上蓋、52・・・水素濃度検出器、53・・・検出口、54・・・制御弁、55・・・水素排出管路、60・・・放射性物質吸着フィルター、61,62・・・係止部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核燃料を含む炉心を内包した原子炉圧力容器と、
この原子炉圧力容器を格納する格納容器と、
使用済み燃料を保管する燃料プールと、
前記原子炉圧力容器、前記格納容器及び前記燃料プールを収容した原子炉建屋と、
前記燃料プールの燃料プール水を強制循環冷却する循環水系と、
前記燃料プールの燃料プール水の熱を搬送し大気中に放出する少なくとも1本のヒートパイプと
を備えたことを特徴とする原子力プラント。
【請求項2】
請求項1の原子力プラントにおいて、
前記ヒートパイプは、一端が前記燃料プールの燃料プール水に浸漬し、他端が前記原子炉建屋の外部に露出していることを特徴とする原子力プラント。
【請求項3】
請求項1又は2の原子力プラントにおいて、
前記ヒートパイプの他端がその管路に臨む空気ダクトを備えたことを特徴とする原子力プラント。
【請求項4】
請求項1−3のいずれかの原子力プラントにおいて、
前記ヒートパイプの放熱部に送風するファンを備えたことを特徴とする原子力プラント。
【請求項5】
請求項1−4のいずれかの原子力プラントにおいて、
原子炉建屋内に設けた炉内構造物保管用プールと、
この炉内構造物保管用プールのプール水の熱を搬送し大気中に放出する炉内構造物保管用プール用のヒートパイプと、
前記炉内構造物保管用プール及び前記燃料プールを接続する連通ヒートパイプと
を備えたことを特徴とする原子力プラント。
【請求項6】
請求項1−5のいずれかの原子力プラントにおいて、
前記ヒートパイプは、前記燃料プールの燃料プール水中の複数の使用済み燃料棒の間に挿入する挿入部を備えていることを特徴とする原子力プラント。
【請求項7】
請求項6の原子力プラントにおいて、前記挿入部の断面形状は中心部から4枚の吸熱板を放射状に延ばした十字型になっていて、各吸熱板が隣接する2つの使用済み燃料棒の間に挿入されることを特徴とする原子力プラント。
【請求項8】
請求項1−7のいずれかの原子力プラントにおいて、
前記ヒートパイプの作動媒体を前記燃料プール水と同じ水とし、前記ヒートパイプ内の飽和圧力を20kPa以下としたことを特徴とする原子力プラント。
【請求項9】
請求項1−8のいずれかの原子力プラントにおいて、
前記ヒートパイプ内の内壁面にウィックを設けたことを特徴とする原子力プラント。
【請求項10】
請求項1−9のいずれかの原子力プラントにおいて、
前記ヒートパイプを前記燃料プールの水面上方で支持するとともに、当該支持を解くことで前記ヒートパイプを前記燃料プールの燃料プール水に投入可能なストッパーを備えたことを特徴とする原子力プラント。
【請求項11】
請求項1−10のいずれかの原子力プラントにおいて、
前記燃料プール内の燃料プール水を密閉したことを特徴とする原子力プラント。
【請求項12】
請求項11の原子力プラントにおいて、
前記燃料プール内の気相空間内の水素濃度を検出する水素濃度検出器と、
前記燃料プールと前記原子炉建屋外の空間とを接続する水素排出管路と、
この水素排出管路の流路を開閉する制御弁と
を備えたことを特徴とする原子力プラント。
【請求項13】
請求項1−12のいずれかの原子力プラントにおいて、
加圧水型原子力プラント、沸騰水型原子力プラント、又は高速増殖炉型原子力プラントであることを特徴とする原子力プラント。
【請求項14】
核燃料を含む炉心を内包した原子炉圧力容器と、
この原子炉圧力容器を格納する格納容器と、
使用済み燃料を保管する燃料プールと、
前記原子炉圧力容器、前記格納容器及び前記燃料プールを収容した原子炉建屋と、
前記燃料プールの燃料プール水を強制循環冷却する循環水系とを備えた原子力プラントに備えられ、
前記燃料プールの燃料プール水の熱を搬送し大気中に放出する少なくとも1本のヒートパイプを備えたことを特徴とする燃料プール水冷却装置。
【請求項15】
使用済み燃料を保管する燃料プールの冷却方法であって、
前記燃料プールの燃料プール水の熱を少なくとも1本のヒートパイプで搬送し大気中に放出することを特徴とする燃料プール水冷却方法。
【請求項1】
核燃料を含む炉心を内包した原子炉圧力容器と、
この原子炉圧力容器を格納する格納容器と、
使用済み燃料を保管する燃料プールと、
前記原子炉圧力容器、前記格納容器及び前記燃料プールを収容した原子炉建屋と、
前記燃料プールの燃料プール水を強制循環冷却する循環水系と、
前記燃料プールの燃料プール水の熱を搬送し大気中に放出する少なくとも1本のヒートパイプと
を備えたことを特徴とする原子力プラント。
【請求項2】
請求項1の原子力プラントにおいて、
前記ヒートパイプは、一端が前記燃料プールの燃料プール水に浸漬し、他端が前記原子炉建屋の外部に露出していることを特徴とする原子力プラント。
【請求項3】
請求項1又は2の原子力プラントにおいて、
前記ヒートパイプの他端がその管路に臨む空気ダクトを備えたことを特徴とする原子力プラント。
【請求項4】
請求項1−3のいずれかの原子力プラントにおいて、
前記ヒートパイプの放熱部に送風するファンを備えたことを特徴とする原子力プラント。
【請求項5】
請求項1−4のいずれかの原子力プラントにおいて、
原子炉建屋内に設けた炉内構造物保管用プールと、
この炉内構造物保管用プールのプール水の熱を搬送し大気中に放出する炉内構造物保管用プール用のヒートパイプと、
前記炉内構造物保管用プール及び前記燃料プールを接続する連通ヒートパイプと
を備えたことを特徴とする原子力プラント。
【請求項6】
請求項1−5のいずれかの原子力プラントにおいて、
前記ヒートパイプは、前記燃料プールの燃料プール水中の複数の使用済み燃料棒の間に挿入する挿入部を備えていることを特徴とする原子力プラント。
【請求項7】
請求項6の原子力プラントにおいて、前記挿入部の断面形状は中心部から4枚の吸熱板を放射状に延ばした十字型になっていて、各吸熱板が隣接する2つの使用済み燃料棒の間に挿入されることを特徴とする原子力プラント。
【請求項8】
請求項1−7のいずれかの原子力プラントにおいて、
前記ヒートパイプの作動媒体を前記燃料プール水と同じ水とし、前記ヒートパイプ内の飽和圧力を20kPa以下としたことを特徴とする原子力プラント。
【請求項9】
請求項1−8のいずれかの原子力プラントにおいて、
前記ヒートパイプ内の内壁面にウィックを設けたことを特徴とする原子力プラント。
【請求項10】
請求項1−9のいずれかの原子力プラントにおいて、
前記ヒートパイプを前記燃料プールの水面上方で支持するとともに、当該支持を解くことで前記ヒートパイプを前記燃料プールの燃料プール水に投入可能なストッパーを備えたことを特徴とする原子力プラント。
【請求項11】
請求項1−10のいずれかの原子力プラントにおいて、
前記燃料プール内の燃料プール水を密閉したことを特徴とする原子力プラント。
【請求項12】
請求項11の原子力プラントにおいて、
前記燃料プール内の気相空間内の水素濃度を検出する水素濃度検出器と、
前記燃料プールと前記原子炉建屋外の空間とを接続する水素排出管路と、
この水素排出管路の流路を開閉する制御弁と
を備えたことを特徴とする原子力プラント。
【請求項13】
請求項1−12のいずれかの原子力プラントにおいて、
加圧水型原子力プラント、沸騰水型原子力プラント、又は高速増殖炉型原子力プラントであることを特徴とする原子力プラント。
【請求項14】
核燃料を含む炉心を内包した原子炉圧力容器と、
この原子炉圧力容器を格納する格納容器と、
使用済み燃料を保管する燃料プールと、
前記原子炉圧力容器、前記格納容器及び前記燃料プールを収容した原子炉建屋と、
前記燃料プールの燃料プール水を強制循環冷却する循環水系とを備えた原子力プラントに備えられ、
前記燃料プールの燃料プール水の熱を搬送し大気中に放出する少なくとも1本のヒートパイプを備えたことを特徴とする燃料プール水冷却装置。
【請求項15】
使用済み燃料を保管する燃料プールの冷却方法であって、
前記燃料プールの燃料プール水の熱を少なくとも1本のヒートパイプで搬送し大気中に放出することを特徴とする燃料プール水冷却方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−230079(P2012−230079A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100002(P2011−100002)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
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