説明

原子力プラントの監視制御システム

【課題】緊急時に電源の残量に応じた省電力化を図り、全交流電源喪失後に原子炉の監視操作不能を防止する。
【解決手段】中央制御室内に入出力装置に接続された第一の通信装置と監視制御装置を備え、中央制御室外に第一の通信装置と通信する第二の通信装置と表示装置と操作信号を入力する入力装置とを含む遠隔監視制御盤を備え、通常運転時には中央制御室内設備と中央制御室外設備に所内電源を接続して中央制御室外からプラントの監視制御を行い、所内電源喪失時に中央制御室内設備と中央制御室外設備にバッテリー供給し中央制御室内の設備に開閉装置を介して電源接続する電源供給線を備え、入出力装置は、原子力プラントに直接接続された第一の入出力装置と、監視制御装置に接続された第二の入出力装置を含み、所内電源喪失によりバッテリーに切替え、中央制御室外の入力装置から中央制御室内設備の一部に対する電源供給を選択停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力プラントの監視制御システムに係り、特に、プラント緊急時において遠隔操作によりプラント監視制御盤の稼働を管理するための原子力プラントの監視制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントにおいて、天災などにより全交流電源が喪失したことを想定してみると、原子力プラントの電源は容量の限られた蓄電池のみとなる。このため、蓄電池容量で定まる一定時間が経過した後には、中央制御室での監視・操作が不可能となる。原子炉はスクラム等で核反応を停止した後にも、炉心が持つ崩壊熱により発熱が継続するため、全交流電源が喪失した後も、より長い時間にわたって監視・操作システムの機能を維持できればプラントの安全性をさらに高めることができる。
【0003】
従来、原子力プラントには、中央制御室が使用できなくなった場合の対応策として、最低限の機器の操作・監視を中央制御室以外からでも行えるように、原子炉遠隔停止装置(RSS)が設置されている。この原子炉遠隔停止装置は、中央制御室が使用できなくなった後に、原子炉遠隔停止装置に設けられたスイッチにより原子炉の制御を中央制御室から原子炉遠隔停止装置に切り換えることで使用可能となる。
【0004】
特許文献1には、制御切り換え時に、原子炉遠隔停止装置の操作スイッチが適切な位置にあることを確認してから制御を切り換えるために、制御と監視を同時に切り換えるのではなく、監視のみを原子炉遠隔停止装置側とする切り換え位置を新たに設け、段階的に切り換える原子炉遠隔停止装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−333195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1の原子炉遠隔停止装置は、中央制御室で火災などが発生して制御盤からの操作が不可能になった場合に使用することを目的としたものである。そのため、原子炉遠隔停止装置の電源は、中央制御室の制御盤と同じ外部電源、非常用ディーゼル発電機および蓄電池で構成されている。
【0007】
然るに、本発明では、天災などにより全交流電源喪失が発生することを想定している。この想定では、外部電源、非常用ディーゼル発電機といった全交流電源が喪失しており、その後に非常用の蓄電池が使用できなくなる。そして、蓄電池が使用できなくなった場合には、中央制御室の制御盤と同様に原子炉遠隔停止装置も使用できなくなる。このような状態では、蓄電池電源が頼りであり、電源の喪失を防止するには、電源の多様化と省電力化を図る必要がある。
【0008】
本発明の課題は、緊急時において主に後者の電源省電力化を図ることにより、全交流電源が喪失した後にも原子炉の監視や操作が不能となることを防止するのに有効な原子力プラントの監視制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、原子力プラント内に複数の検出器と複数の操作機器を備え、中央制御室内に、検出器からのプラント情報を取得し、操作機器に操作信号を出力する入出力装置と、入出力装置に接続された第一の通信装置とプラント情報を集約して処理し制御信号を操作機器へ出力する監視制御装置を備え、中央制御室外に、第一の通信装置と通信を行う第二の通信装置と、プラント情報を表示する表示装置と、操作信号を入力するための入力装置とを含む遠隔監視制御盤を備え、通常運転時には中央制御室内設備と中央制御室外設備に所内電源を接続して中央制御室外からプラントの監視と制御を行う原子力プラントの監視制御システムにおいて、所内電源喪失時に、中央制御室内設備と中央制御室外設備に電源供給するバッテリーと、中央制御室内の設備に開閉装置を介して電源接続する電源供給線を備え、入出力装置は、原子力プラント内の検出器や操作機器と直接接続された第一の入出力装置と、プラント情報を集約して処理し制御信号を操作機器へ出力する監視制御装置に接続された第二の入出力装置を含み、所内電源喪失によりバッテリーによる電源供給に切替え、かつその後に、中央制御室外の入力装置からの指示により、開閉装置を開放操作し、中央制御室内設備の一部に対する電源供給を選択停止する。
【0010】
また、所内電源喪失によりバッテリーによる電源供給に切替え、かつその後に、中央制御室外の入力装置からの指示により、開閉装置を開放操作し、中央制御室内の監視制御装置とこれに接続された第二の入出力装置に対する電源供給を選択停止する。
【0011】
また、監視制御装置は、プラント情報を集約して処理するプロセス計算機と、制御信号を操作機器へ出力する制御装置とを備え、プロセス計算機は盤やサーバ単位で分割され、分割単位で前記開閉装置を介してバッテリーによる電源供給を受けており、中央制御室外の入力装置からの指示により、分割単位ごとに開閉装置を開放操作し、電源供給を選択停止する。
【0012】
また、監視制御装置は、プラント情報を集約して処理するプロセス計算機と、制御信号を操作機器へ出力する制御装置とを備え、プロセス計算機の一部である入出力盤について、これを構成する回路基板単位で開閉装置を介してバッテリーによる電源供給を受けており、中央制御室外の入力装置からの指示により、回路基板単位ごとに開閉装置を開放操作し、電源供給を選択停止する。
【0013】
また、選択停止されなかった中央制御室内設備により運転継続すると共に、運転継続される設備によりプラントを冷温停止するために必要な前記検出器および操作機器が維持されている。
【0014】
また、原子力プラントを冷温停止するために必要な前記検出器として、中性子束検出器、制御棒位置検出器、原子炉及び格納容器内の圧力、温度、水位、流量検出器、原子力プラント内の放射線検出器、弁開閉検出器のうちの1つまたは複数を含む。
【0015】
また、原子力プラントを冷温停止するために必要な操作機器として、制御棒駆動装置、ホウ酸水注入装置、非常用炉心冷却装置、原子炉逃がし安全弁装置、原子炉格納容器にそなえられた弁のうちの1つまたは複数を含む。
【0016】
また、中央制御室内に、原子力プラントのプロセス値や操作機器状態が制限条件に当てはまらない場合に警報信号を発生する警報装置と、警報装置の出力を第一の通信装置に伝達する第三の入出力装置を備え、所内電源喪失によりバッテリーによる電源供給に切替え、かつその後に、中央制御室外の入力装置からの指示により、開閉装置を開放操作し、中央制御室内の第三の入出力装置に対する電源供給を選択停止する。
【0017】
また、中央制御室内設備と中央制御室外設備に接続する電源が、原子力プラントの所内電源と原子力プラント内に設置した第一の非常用電源で構成されている。
【0018】
また、中央制御室外施設に第二の非常用電源を備え、所内電源喪失時に、中央制御室内設備に開閉装置を介して電源供給し、入力装置からの開閉指令に基づいて開閉装置の開閉を行う。
【0019】
また、バッテリーの残量あるいは、第二の非常用電源の燃料残量を中央制御室外の表示装置に表示する。
【0020】
また、第一の通信装置と第二の通信装置には、予備通信用端子が夫々取り付けられており、異なる通信設備を予備通信用端子に取り付け可能とした。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、原子力プラントの外部電源が喪失した後も、限られた容量の電源を、プラント状態と電源残量とに基づいて、最小限の検出器および機器に選択供給することにより、監視操作の継続時間を伸長させることができる。電源を供給する検出器および機器の選択操作は、中央制御室外に設置した入力装置から実施できるため、火災や放射線の影響により運転員が中央制御室に入室できない場合にも前述の機能が保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の原子力プラント監視制御システムの構成を示す図。
【図2】警報信号を用いて電源供給を管理する構成を示す図。
【図3】畜電池の残量などの検知機能を備えた構成を示す図。
【図4】残量管理を行うときの電源残量情報の表示画面例を示す図。
【図5】通信装置に予備端子を備え通信路を確保する構成を示す図。
【図6】プロセス計算機を複数の部分に分割し電源供給を管理する図。
【図7】プロセス計算機を基板単位で電源管理する図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0024】
本実施例では、中央制御室外からバッテリーによる電源供給先を選択するための基本的なシステム構成例を示す。
【0025】
図1は、本実施例の原子力プラント監視制御システムの構成を示した概念図である。本発明のシステムは、原子力プラントRと、中央制御室100と、中央制御室外施設200で構成されている。このうち、原子力プラントRは圧力容器PVの外側に格納容器CVを備えている。中央制御室100内には、プロセス計算機4、制御装置5、入出力・電源管理装置10などを備え、中央制御室外施設200内には遠隔監視制御装置20を備えている。係る原子力プラント監視制御システムの中央制御室100と中央制御室外施設200には、所内電源50から電力供給されている。
【0026】
さらに、原子力プラント内の圧力容器や配管、格納容器には中性子束や冷却材の圧力、温度、水位、流量などのプロセス値および弁開閉などの機器状態を検出するための種々の検出器1(図では代表して2つのみ記載)が設置されている。また、配管等には弁2などの操作機器が取り付けられるとともにその駆動機構3が設置されている。
【0027】
原子力プラントの監視制御装置は、中央制御室100内の制御装置5とプロセス計算機4から構成されている。制御装置5は、これらの検出器1から原子力プラント内のプロセス量などを入力してプラントを監視し、駆動機構3を介して弁2などの操作機器を操作する。プロセス計算機4は、種々の検出器1からの信号を直接または制御装置5を経由して取得し、プラント情報を集約して処理し、表示する。
【0028】
プロセス計算機4および制御装置5は、通常時には所内電源50(非常用ディーゼル発電機によるバックアップ機能を備える)から電源供給線L2により交流電源を供給されるが、全交流電源喪失時に備え、非常用のバッテリー6が電源供給線L1により接続されている。
【0029】
さらに本実施例では中央制御室100内に、入出力・電源管理装置10を備える。入出力・電源管理装置10は、検出器1および駆動機構3に直接接続された第一の入出力装置11、プロセス計算機4および制御装置5に接続された第二の入出力装置12、一時メモリ13、第一の演算装置14、第一の通信装置15を備える。
【0030】
中央制御室外施設200内の遠隔監視制御装置20には、遠隔監視制御盤20を備える。遠隔監視制御盤20は、表示装置21、演算装置22、入力装置23、第二の通信装置24を備えている。なお、この図で電源7は必要に応じて設置されるものであり、図1の以後の説明では設置されていないものとする。電源7を設置するほうがよい場合については、別途説明する。
【0031】
これらの原子力プラントの制御のための複数の装置には、所内電源50(非常用ディーゼル発電機によるバックアップ機能を備える)から、交流電源が供給される。なお、交流電源50の供給ラインは図示を省略している。全交流電源50喪失時には、非常用のバッテリー6が電源供給線L1により中央制御室100と、中央制御室外施設200に接続される。本発明では、非常用のバッテリー6に切替後の運転状態に応じて、電源7を適宜切替運用するために開閉装置30−35を備えている。以下、通常運転時と全交流電源喪失時のそれぞれでの制御並びにこれらの開閉装置30−35を使用した電源供給の考え方について説明する。
【0032】
まず、通常運転時においては、中央制御室100と、中央制御室外施設200内の全ての装置に所内電源50による電源供給が行われている。なお、非常用のバッテリー6の出口の開閉装置31は開放されているので、中央制御室100と、中央制御室外施設200内の全ての装置に非常用のバッテリー6からの電源供給は行われていない。
【0033】
またこれらの装置間では、情報の共有がされている。このため、普段の監視制御は中央制御室100内の制御装置5とプロセス計算機4で構成される監視制御装置により行われているが、情報を共有する中央制御室外の遠隔監視制御盤21からも監視操作を行うことが可能である。
【0034】
まず情報の共有について、原子力プラントRの側から順次説明する。検出器1等により取得されたプラント情報は、プロセス計算機4により集約して処理、表示される。また、弁2などの操作機器および駆動機構3は、検出器1からの信号および図示しない運転員の操作により制御装置5を介して制御される。
【0035】
そして、第二の入出力装置12は、接続されたプロセス計算機4および制御装置5から取得可能な全てのプラント情報を取込み、一時メモリ13を介して第一の演算装置14に出力する。第一の演算装置14は、出力されたプラント情報を第一の通信装置、および中央制御室外に設置された第二の通信装置24を介して第二の演算装置22に送信する。これにより、中央制御室100と、中央制御室外施設200内の全ての装置の間で、情報の共有化が行われている。
【0036】
第二の演算装置22は、受信したプラント情報を処理し表示装置21に表示する。中央制御室外施設からは、表示された情報に基づき、入力装置23から操作信号を入力することが可能であり、この場合操作信号が第二の通信装置24、第一の通信装置15、第一の演算装置14、一時メモリ13、第二の入出力装置12を介して制御装置5に伝送される。この操作信号に基づいて制御装置5が駆動機構3に制御信号を出力することで遠隔監視制御盤20から機器を操作することも可能である。
【0037】
このように、通常時においては、最大限のプラント情報を中央制御室外の遠隔監視制御盤21に提供することが可能であり、同時に制御装置5を介した操作のすべてが遠隔監視制御盤21から実施できる。また、各装置への電源はバッテリー6からではなく、すべて所内電源50から供給されている。
【0038】
次に電源50を含む全交流電源喪失時の動作について説明する。全交流電源喪失時には、プロセス計算機4、制御装置5、第一の入出力装置11、第二の入出力装置12、第一の演算装置14、第一の通信装置15、遠隔監視制御盤21への電源はバッテリー6により供給される。すなわち、第一の演算装置14から開閉操作信号が自動的に送信され、電源供給線L1上に設置された開閉装置31が閉に変化する。なお、開閉装置32、33、34、35は閉状態のままである。この状態では、図1の複数装置間での情報の共有化は継続して実行されている。
【0039】
中央制御室外に設置された遠隔監視制御盤20では、バッテリー6からの電源供給により、初めは通常時と同様のプラント情報表示とプラント機器の操作が可能であるが、バッテリー6の容量により長時間の運転継続は行えない。
【0040】
このため本発明においては、バッテリー6による電源供給が長時間に及ぶ可能性が生じた場合、運転員は遠隔監視制御盤20の入力装置23から、開閉装置33、34、35の開操作信号を入力する。この入力操作により、プロセス計算機4、制御装置5、第二の入出力装置12への電源供給が停止し、この分バッテリー6の消費量は低下する。なお、この一部装置停止状態では、第一の入出力装置11、一時メモリ13、第一の演算装置14、第一の通信装置、および遠隔監視制御盤20が、バッテリー6からの電力供給を受けて稼動状態にある。
【0041】
ところで、第一の入出力装置11には、種々の検出器1および機器の駆動機構3のうち、プラントを冷温停止するために必要な最小限のもののみが直接接続されている。第一の演算装置14は、第一の入出力装置11で取得されたプラント情報のみを通信装置を介して第二の演算装置22に送信する。そのため、遠隔監視制御盤20内の表示装置21に表示されるプラント情報は減少する。また、入力装置23を介して操作できる機器は、駆動機構3が第一の入出力装置11に直接接続されたものに限定される。
【0042】
なお、プラントを冷温停止するために必要な検出器として、中性子束検出器、制御棒位置検出器、原子炉及び格納容器内の圧力、温度、水位、流量検出器、原子力プラント内の放射線検出器、弁開閉検出器のうちの1つまたは複数を含むのがよい。また、プラントを冷温停止するために必要な操作機器として、制御棒駆動装置、ホウ酸水注入装置、非常用炉心冷却装置、原子炉逃がし安全弁装置、原子炉格納容器にそなえられた弁のうちの1つまたは複数を含むのがよい。
【0043】
このように本発明によれば、全交流電源50喪失時においては、表示されるプラント情報や操作可能な機器を必要最小限に限定する代わりに、バッテリーの使用可能時間が伸長することが可能となる。
以上の説明は、遠隔監視制御盤20に電源を供給する電源7が備えられていないことを前提に説明したが、遠隔監視制御盤20に電源7を設置することもできる。係る対応は、バッテリー6の容量が小さく、バッテリー6からの長時間電源供給継続が困難な状況に有効である。この場合においては、入力装置23を介して第一の演算装置14から操作信号を出力し、開閉装置30を閉、31を開とすることにより、この電源7から中央制御室内の第一の入出力装置11、第一の演算装置14、第一の通信装置15に電源を供給してプラントの監視・操作を維持することも可能な構成とすることができる。なお、この対応を可能にするには、電源7を所内電源50とは別系統に構成し、所内電源50喪失時にも稼動可能である必要がある。
【実施例2】
【0044】
次に図2を用いて、警報信号に基づいてバッテリーからの電源供給を管理するときの原子力プラント監視制御システムの構成を説明する。
【0045】
図2では図1の構成に、警報装置8および第三の入出力装置16が付加されている。なお、これら装置に対しても通常運転時には所内電源50から、全交流電源喪失時にはバッテリー6から電源供給されている。警報装置8は制御装置5に接続され、プロセス値や機器状態が制限条件に当てはまらない場合に警報信号を発生する。この警報信号は、プロセス計算機4において集約して処理および表示される。
【0046】
係る構成において、通常時は、警報装置8から出力される警報信号が第三の入出力装置16に取り込まれ、第1の演算装置14、第1の通信装置を経由して、遠隔監視制御盤20に伝送される。これにより、警報信号は図2の他のプラント信号と同じように表示装置21に表示される。これにより、遠隔監視制御盤20では警報信号も含めたより豊富なプラント情報に基づく監視・操作が可能となる。
【0047】
また、プラント緊急時には、第一の入出力装置11、第二の入出力装置12から出力されるプロセス値および第三の入出力装置16から出力される警報情報を第一の演算装置14が取り込み、予め内蔵したルールに従って、開閉装置30、31、32、33、34、35、36の開閉信号を出力する。つまり、全交流電源50の喪失を受けて、第一段階では全ての開閉装置30―36を閉じて、中央制御室100と中央制御室外施設200内の全ての装置に電力供給する。
【0048】
バッテリー6による電源供給が長時間に及ぶ可能性が生じた第二段階においては、開閉装置33、34、35、36の開操作信号を入力する。この入力操作により、プロセス計算機4、制御装置5、第二の入出力装置12、第三の入出力装置16への電源供給が停止し、この分バッテリー6の消費量は低下する。
【0049】
これにより、プラント緊急時に自動的にバッテリー6の消費量を管理することが可能となり、何らかの理由で遠隔監視制御装置20からの操作信号が入力されなかった場合にも、必要最小限のプラント情報表示と機器操作を維持しつつ、バッテリーの使用可能時間を伸長することができる。
【0050】
特に、開閉信号の出力を決定するのに用いる警報信号として、外部電源喪失や非常用発電機動作不能の警報を用いることにより、効果的な電源管理を可能とする。例えば、外部電源喪失や非常用発電機動作不能の警報とこの警報が発報してからの経過時間等を組合せることにより、バッテリー残量に応じた電源管理が実現できる。
【実施例3】
【0051】
次に図3において、畜電池の残量および非常用ディーゼル発電機の燃料残量の検知機能を備えた原子力プラント監視制御システムの構成を説明する。
【0052】
図3では、図1のバッテリー6に設置された残量検出器17と、非常用ディーゼル発電機9に設置された燃料残量検出器18が付加されている。通常運転状態、および外部電源喪失時に、第一の演算装置14は、残量検出器17と燃料残量検出器18の検出信号を取込み、電源残量情報を生成する。生成した電源残量情報は第一の通信装置15および第二の通信装置24を介して第二の演算装置22に送信され、表示装置21に表示される。
【0053】
これにより、外部電源が喪失する事象が発生した場合、運転員は遠隔監視制御盤21から電源残量情報を参照することができ、残量に応じて入力装置23から開閉装置30、31、32、33、34、35を操作することにより、より細かく消費電力を管理することができる。
【0054】
図4は、図3の残量管理を行うときの、電源残量情報の表示画面例を示したものである。遠隔監視制御装置20内の表示装置21の画面90に、バッテリー残量と非常用ディーゼル発電機の燃料残量の百分率をバーチャートで表示することにより、残量を視覚的に把握しやすくしている。
【実施例4】
【0055】
全交流電源が喪失するような大規模災害の場合、停電等の影響により第一の通信装置15と第二の通信装置24との間の通信経路が使用できなくなる可能性がある。このことから、次に図5において、通信装置に予備端子を備え通信路を確保することについて説明する。
【0056】
このため、図1の構成に加えて、第一の通信装置15と第二の通信装置24の夫々に別な通信装置61,62を接続するための予備端子25,26を備える。予備端子25,26は例えばイーサネット(登録商標)コネクタを用いることができる。通信情報はコネクタに接続した別な通信装置61,62にイーサネット(登録商標)プロトコルを用いて送信される。
【0057】
図5に、この場合の通信方法を示す。通常は、中央制御室100内の入出力・電源管理装置10内の第一の通信装置15と、中央制御室外施設200内の遠隔監視制御盤20内の第二の通信装置24の間で通信を行っている。本発明では、第一の通信装置15に予備端子25を備え、第二の通信装置15に予備端子26を備えておく。
【0058】
本発明では、通常は上記構成としておき、全交流電源が喪失したような場合には、外部から中央制御室100内に予備の通信装置61を,中央制御室外施設200内に予備の通信装置62を搬入し、これらをそれぞれ予備端子61,62に接続する。予備の通信装置61、62は、人工衛星71、航空機72、携帯電話の移動基地局車73を介して通信を行う機能を備えている。
【0059】
これにより、第一の演算装置14から第一の通信装置15を介して送信されたプロセス情報は、図5の予備端子25、予備通信装置61に受信され、この通信装置61から人工衛星71、航空機72、携帯電話の移動基地局73を経由して予備通信装置62、予備端子26から第二の通信装置24に送信される。
【0060】
本実施例によれば、予備端子25,26から別な通信装置61,62を接続して通信を迂回させることができ、原子力プラント監視制御システムの信頼性を向上できる。
【実施例5】
【0061】
図6の実施例では、プロセス計算機4または制御装置5またはその双方を、複数の部分に分割し、部分ごとに電源の供給を管理する。図6の例では、プロセス計算機4を分割した例を示しており、サーバや盤ごとに分割している。例えば、入出力盤41、監視サーバ42、自動化サーバ43、記録サーバ44、表示装置45に分割し、全交流電流喪失後は、それぞれ電源6から開閉装置341,342,343,344,345を介して電源供給する。
【0062】
係る構成において、通常時は、可能な限り豊富な情報に基づいてプラントの監視制御をすることがプラントの安全および運転効率の観点から重要であるため、これらのサーバや、盤などを全て稼働しておく。
【0063】
これに対し、全交流電流喪失が発生した直後の第一段階ではこれらのサーバや、盤などを全て稼働しておくことが有効であるが、時間経過と共に電源残量が低下するので、サーバや、盤などの機能のうち、重要なものと、そうでないものとを適宜選択し、一部機能に縮退しながら、監視・操作を長時間維持するために、必要最小限の機能に絞り込むことが重要となる。
【0064】
そのため、入力装置23からの操作に基づき、開閉装置341,342,343,344,345を適宜選択操作する。係る機能縮退においては、全停止の直前の状態では、入出力盤41および監視サーバ42のみを稼働し、他の機能を停止して、必要なプラント情報を第二の入出力装置12に出力するようにすることが望ましい。
【0065】
この構成によれば、プロセス計算機4を介さなければ入手できないプラント情報を、全交流電流喪失が発生した後においても遠隔監視制御盤20で参照でき、かつ、自動化サーバ43や表示装置45などへの電源供給を停止することにより、バッテリーの消費量を抑制することができる。
【0066】
図7は、さらにプロセス計算機4の入出力盤41を対象に電源管理し、機能縮退させる事例を示している、この場合には、実装されている入出力ユニットの回路基板(411−414)毎に、電源供給線に開閉装置(3411−3414)を備えた例を示したものである。
【0067】
図7に示すように、入出力盤41には、複数の回路基板が挿入されており、このうち、データ伝送などの共通機能を担う回路基板と必要最小限のプロセス情報を入力するための回路基板のみに電源を供給するよう、第一の演算装置14から開閉信号を送信する。この例では、図6に比べてさらに細かい単位での電源管理が可能となり、効率よく消費電力を抑えることができる。
【符号の説明】
【0068】
1:検出器
2:弁
3:駆動機構
4:プロセス計算機
5:制御装置
6:バッテリー
7:電源
8:警報装置
9:非常用ディーゼル発電機
10:入出力・電源管理装置
11:入出力装置
12:入出力装置
13:一時メモリ
14:演算装置
15:通信装置
16:入出力装置
17:バッテリー残量検出器
18:燃料残量検出器
20:遠隔監視制御盤
21:表示装置
22:演算装置
23:入力装置
24:通信装置
25:予備通信端子
26:予備通信端子
30−36:開閉装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力プラント内に複数の検出器と複数の操作機器を備え、
中央制御室内に、前記検出器からのプラント情報を取得し、前記操作機器に操作信号を出力する入出力装置と、該入出力装置に接続された第一の通信装置とプラント情報を集約して処理し制御信号を操作機器へ出力する監視制御装置を備え、
中央制御室外に、前記第一の通信装置と通信を行う第二の通信装置と、プラント情報を表示する表示装置と、前記操作信号を入力するための入力装置とを含む遠隔監視制御盤を備え、
通常運転時には中央制御室内設備と中央制御室外設備に所内電源を接続して中央制御室外からプラントの監視と制御を行う原子力プラントの監視制御システムにおいて、
前記所内電源喪失時に、中央制御室内設備と中央制御室外設備に電源供給するバッテリーと、前記中央制御室内の設備に開閉装置を介して電源接続する電源供給線を備え、
前記入出力装置は、前記原子力プラント内の検出器や操作機器と直接接続された第一の入出力装置と、プラント情報を集約して処理し制御信号を操作機器へ出力する前記監視制御装置に接続された第二の入出力装置を含み、
前記所内電源喪失により前記バッテリーによる電源供給に切替え、かつその後に、中央制御室外の入力装置からの指示により、前記開閉装置を開放操作し、中央制御室内設備の一部に対する電源供給を選択停止することを特徴とする原子力プラントの監視制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の原子力プラントの監視制御システムにおいて、
前記所内電源喪失により前記バッテリーによる電源供給に切替え、かつその後に、中央制御室外の入力装置からの指示により、前記開閉装置を開放操作し、中央制御室内の前記監視制御装置とこれに接続された第二の入出力装置に対する電源供給を選択停止することを特徴とする原子力プラントの監視制御システム。
【請求項3】
請求項1記載の原子力プラントの監視制御システムにおいて、
前記監視制御装置は、プラント情報を集約して処理するプロセス計算機と、制御信号を操作機器へ出力する制御装置とを備え、プロセス計算機は盤やサーバ単位で分割され、分割単位で前記開閉装置を介して前記バッテリーによる電源供給を受けており、中央制御室外の入力装置からの指示により、分割単位ごとに前記開閉装置を開放操作し、電源供給を選択停止することを特徴とする原子力プラントの監視制御システム。
【請求項4】
請求項1記載の原子力プラントの監視制御システムにおいて、
前記監視制御装置は、プラント情報を集約して処理するプロセス計算機と、制御信号を操作機器へ出力する制御装置とを備え、プロセス計算機の一部である入出力盤について、これを構成する回路基板単位で前記開閉装置を介して前記バッテリーによる電源供給を受けており、中央制御室外の入力装置からの指示により、回路基板単位ごとに前記開閉装置を開放操作し、電源供給を選択停止することを特徴とする原子力プラントの監視制御システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の原子力プラントの監視制御システムにおいて、
選択停止されなかった中央制御室内設備により運転継続すると共に、運転継続される設備によりプラントを冷温停止するために必要な前記検出器および操作機器が維持されていることを特徴とする原子力プラントの監視制御システム。
【請求項6】
請求項5に記載の原子力プラントの監視制御システムにおいて、
前記原子力プラントを冷温停止するために必要な前記検出器として、中性子束検出器、制御棒位置検出器、原子炉及び格納容器内の圧力、温度、水位、流量検出器、原子力プラント内の放射線検出器、弁開閉検出器のうちの1つまたは複数を含むことを特徴とした原子力プラント監視制御装置。
【請求項7】
請求項5に記載の原子力プラントの監視制御システムにおいて、
前記原子力プラントを冷温停止するために必要な操作機器として、制御棒駆動装置、ホウ酸水注入装置、非常用炉心冷却装置、原子炉逃がし安全弁装置、原子炉格納容器にそなえられた弁のうちの1つまたは複数を含むことを特徴とした原子力プラントの監視制御システム。
【請求項8】
請求項1記載の原子力プラントの監視制御システムにおいて、
中央制御室以内に、前記原子力プラントのプロセス値や操作機器状態が制限条件に当てはまらない場合に警報信号を発生する警報装置と、警報装置の出力を第一の通信装置に伝達する第三の入出力装置を備え、
前記所内電源喪失により前記バッテリーによる電源供給に切替え、かつその後に、中央制御室外の入力装置からの指示により、前記開閉装置を開放操作し、中央制御室内の前記第三の入出力装置に対する電源供給を選択停止することを特徴とする原子力プラントの監視制御システム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の原子力プラントの監視制御システムにおいて、
前記中央制御室内設備と中央制御室外設備に接続する電源が、原子力プラントの所内電源と原子力プラント内に設置した第一の非常用電源で構成されていることを特徴とする原子力プラントの監視制御システム。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の原子力プラントの監視制御システムにおいて、
中央制御室外施設に第二の非常用電源を備え、前記所内電源喪失時に、中央制御室内設備に開閉装置を介して電源供給し、前記入力装置からの開閉指令に基づいて前記開閉装置の開閉を行うことを特徴とした原子力プラントの監視制御システム。
【請求項11】
請求項10に記載の原子力プラントの監視制御システムにおいて、
前記バッテリーの残量あるいは、前記第二の非常用電源の燃料残量を前記中央制御室外の表示装置に表示することを特徴とする原子力プラントの監視制御システム。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかにに記載の原子力プラントの監視制御システムにおいて、
前記第一の通信装置と第二の通信装置には、予備通信用端子が夫々取り付けられており、異なる通信設備を前記予備通信用端子に取り付け可能としたことを特徴とする原子力プラントの監視制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−233705(P2012−233705A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100332(P2011−100332)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)