説明

原子炉の計装管において放射性同位体を生成する装置及び方法

【課題】医療の分野に適用される放射性同位体及び原子炉においてそのような放射性同位体を生成する装置及び方法を提供する。
【解決手段】商用原子炉10の動作中、照射ターゲット250は、計装管50に挿入され、照射終了後計装管50から取り出される。中性子束により、照射ターゲットの中で短期間放射性同位体が生成される。その後、原子炉の動作を停止することなく又は化学的抽出処理の必要なく、計装管及び原子炉格納容器から照射ターゲットを取り出すことにより、短期間に放射性同位体が相対的に迅速且つ簡単に生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、医療の分野に適用される放射性同位体、並びに原子炉においてそのような放射性同位体を生成する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性同位体は、個別の量及び個別の種類の電離放射線を放出する能力があるため、多様な医療分野に適用されている。この能力により、放射性同位体は、癌関連の治療、医療用撮像技術及び標識付け技術、癌及び他の疾病の診断、並びに医療滅菌において有用である。
【0003】
数日又は数時間程度の半減期を有する短期間放射性同位体は、独特な放射プロファイルを生成でき、しかも、特定の用途において放射線量が供給された後に人体から排出される無害で安定した同位体に急速に崩壊することが可能であるので、癌治療及び他の疾病の治療において特に重要である。しかし、それらの短期間放射性同位体の半減期が短いことは、放射性同位体の入手及び取り扱いを困難にもしている。従来、短期間放射性同位体は、医療施設又は付近の生成施設の現場で加速装置又は低出力原子炉において安定した親同位体に中性子によって衝撃を加えることにより生成されていた。それらの放射性同位体の崩壊時間が相対的に短く且つ特定の用途において厳密な量の放射性同位体が必要とされるため、放射性同位体は迅速に搬送される。更に、医療用短期間放射性同位体の生成には、煩雑で高価な照射抽出機器が一般に必要であるため、医療施設においては、費用、スペース及び/又は安全性の点で、そのような機器の使用は抑制されるであろう。
【0004】
医療の分野に適用されるいくつかの短期間放射性同位体は、核分裂を経て生成されてもよく、従って、原子力発電所において大量に生成される。例えば、核燃料におけるウラニウム‐235の核分裂は、多くの撮像及び癌診断の用途において有用であるテクネチウム‐99を大量に生成できる。しかし、核燃料から生成される短期間放射性同位体は、多様な他の核分裂副産物と混ざり合ってしまう場合がある。有用な短期間放射性同位体の抽出には、許容できない放射線暴露及び化学的暴露の危険があり且つ/又は長い時間が必要であり、抽出時間中に、短期間放射性同位体は使用不可能な量まで崩壊する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0076957号
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0031811号
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0297554号
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0133734号
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0133731号
【特許文献6】米国特許出願公開第2006/0126774号
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/0062342号
【特許文献8】米国特許出願公開第2005/0105666号
【特許文献9】米国特許出願公開第2005/0118098号
【特許文献10】米国特許出願公開第2004/0091421号
【特許文献11】米国特許出願公開第2004/0196942号
【特許文献12】米国特許出願公開第2004/0196943号
【特許文献13】米国特許出願公開第2004/0105520号
【特許文献14】米国特許出願公開第2003/0179844号
【特許文献15】米国特許出願公開第2003/0012325号
【特許文献16】米国特許出願公開第2003/0016775号
【特許文献17】米国特許出願公開第2003/0103896号
【特許文献18】米国特許出願公開第2002/0034275号
【特許文献19】米国特許第6,233,299号公報
【特許文献20】米国特許第6,192,095号公報
【特許文献21】米国特許第4,493,813号公報
【特許文献22】米国特許第5,867,546号公報
【特許文献23】米国特許第4,663,111号公報
【特許文献24】米国特許第4,617,985号公報
【特許文献25】米国特許第3,940,318号公報
【特許文献26】米国特許第4,462,956号公報
【特許文献27】米国特許第4,196,047号公報
【特許文献28】米国特許第4,859,431号公報
【特許文献29】米国特許第5,682,409号公報
【特許文献30】米国特許第5,355,394号公報
【特許文献31】米国特許第4,475,948号公報
【特許文献32】米国特許第4,532,102号公報
【特許文献33】米国特許第5,596,611号公報
【特許文献34】米国特許第6,456,680号公報
【特許文献35】米国特許第5,513,226号公報
【特許文献36】米国特許第6,056,929号公報
【特許文献37】米国特許第6,804,319号公報
【特許文献38】米国特許第6,751,280号公報
【特許文献39】米国特許第6,895,064号公報
【特許文献40】米国特許第5,910,971号公報
【特許文献41】米国特許第5,758,254号公報
【特許文献42】米国特許第5,633,900号公報
【特許文献43】米国特許第5,145,636号公報
【特許文献44】米国特許第5,053,186号公報
【特許文献45】米国特許第4,729,903号公報
【特許文献46】米国特許第6,896,716号公報
【特許文献47】米国特許第6,678,344号公報
【特許文献48】米国特許第6,160,862号公報
【特許文献49】米国特許第5,615,238号公報
【特許文献50】米国特許第5,400,375号公報
【特許文献51】米国特許第4,284,472号公報
【特許文献52】米国特許第3,998,691号公報
【特許文献53】米国特許第4,597,936号公報
【特許文献54】米国特許第7,235,216号公報
【特許文献55】米国特許第5,871,708号公報
【特許文献56】米国特許第7,157,061号公報
【特許文献57】米国特許第4,782,231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
短期間放射性同位体の生成及び寿命には困難な問題があるため、そのような放射性同位体、特に癌などの永続性疾病の領域における医療への適用に重要である放射性同位体に対する需要は、供給をはるかに上回っている。有効な短期間放射性同位体の価格は、癌などの疾病の通常の医療費と比較して法外に高い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、医療の分野に適用する場合に使用可能な放射性同位体を商用原子炉において生成する方法及び関連する装置に関する。本発明の方法は、動作中の原子炉において見られる中性子束に照射ターゲットを暴露するために、原子炉圧力容器において従来見られる計装管を利用してもよい。中性子束により、照射ターゲットの中で短期間放射性同位体が生成されてもよい。その後、原子炉の動作を停止することなく又は化学的抽出処理の必要なく、計装管及び原子炉格納容器から照射ターゲットを取り出すことにより、短期間放射性同位体は、相対的に迅速且つ簡単に生成されてもよい。その後、例えば癌治療に使用するために、短期間放射性同位体は、医療施設へ直ちに搬送されてもよい。
【0008】
本発明は、原子炉及びその計装管において放射性同位体を生成する装置を含んでもよい。本発明は、動作中の商用原子炉の計装管に照射ターゲットを挿入し且つ計装管から照射ターゲットを取り出すように構成された1つ以上のサブシステムを含んでもよい。本発明は、計装管に照射ターゲットを挿入し且つ計装管から照射ターゲットを取り出すために、計装管サブシステム、照射ターゲット送り出しサブシステム及び/又は照射ターゲット格納・取り出しサブシステムを含んでもよい。本発明の照射ターゲットにおいて生成される放射性同位体の追跡及び測定を可能にするために、本発明は、使用される照射ターゲットの直線配列順序を維持してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
添付の図面を詳細に説明することにより、本発明は更に明らかになるであろう。図中、同じ要素は同じ図中符号により示される。添付の図面は、単に例として提示されるものであるので、本発明を限定しない。
【図1】計装管を有する従来の原子炉を示した図である。
【図2】原子炉において短期間放射性同位体を生成するシステムの一実施形態を示した図である。
【図3】実施形態のシステムの計装管サブシステムの一実施形態を示した図である。
【図4】実施形態のシステムと共に使用可能なスリーブの実施形態を示した図である。
【図5】実施形態のシステムと共に使用可能な照射ターゲット送り出しサブシステムの一実施形態を示した図である。
【図6】実施形態のシステムと共に使用可能な照射ターゲット格納サブシステムの一実施形態を示した図である。
【図7】実施形態のシステムと共に使用可能な取り出し機構の一実施形態を示した図である。
【図8】照射ターゲットの実施形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態の詳細な例示的実施形態を本明細書において開示する。しかし、本明細書において開示する特定の構造及び機能の詳細は、実施形態を説明するための代表例にすぎない。実施形態は、多くの代替形態で実施されてもよく、本明細書で示される実施形態にのみ限定されるものとして解釈されるべきではない。
【0011】
第1、第2などの用語が種々の要素を説明するために本明細書において使用されるが、それら要素はそれら用語により限定されるべきではないことが理解されるだろう。それらの用語は、ある要素を別の要素と区別するために使用されるにすぎない。例えば、実施形態の範囲から逸脱せずに、第1の要素を第2の要素と呼んでもよく、同様に、第2の要素を第1の要素と呼んでもよい。本明細書において使用されるように、用語「及び/又は」は、列挙される1つ以上の関連する項目の任意の組み合わせ及び全ての組み合わせを含む。
【0012】
要素が別の要素に「接続」、「結合」、「係合」、「装着」又は「固着」されるものとして示される場合、その要素はその別の要素に直接接続又は直接結合されるか、あるいは仲介する要素が存在してもよいことが理解されるだろう。それに対して、要素が別の要素に「直接接続」又は「直接結合」されるものとして示される場合、仲介する要素は存在しない。要素間の関係を説明するために使用される他の用語は、同様の方法で解釈されるべきである(例えば、「〜の間」と「〜の間に直接」、「隣接する」と「直接隣接する」など)。
【0013】
本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、実施形態を限定することを意図しない。本明細書において使用されるように、特に指示のない限り、単数形は複数形も含むことを意図する。用語「具備する」及び/又は「含む」は、本明細書において使用される場合、記載される特徴、数字、工程、動作、要素及び/又は構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、数字、工程、動作、要素、構成要素及び/又はそれらの集合の存在又は追加を除外しないことが更に理解されるだろう。
【0014】
尚、別のいくつかの実現例において、図示される機能/動作は、図面に示される順序と異なる順序で行われてもよい。例えば、連続して示される2つの図面は、実際には関係する機能性/動作に依存して、ほぼ同時に実行されてもよく又は逆の順序で実行されてもよい。
【0015】
図1は、本発明の実施形態及び方法と共に使用可能な従来の原子炉圧力容器10を示した図である。原子炉圧力容器10は、世界中で発電のために従来使用されている少なくとも100MWeの商用軽水炉において使用されてもよい。原子炉圧力容器10は、事故発生時に放射能を封じ込め且つ原子炉10の動作中に原子炉10への接近を防止する働きをする格納容器構造411の内部に配置されてもよい。ドライウェル20として知られる原子炉圧力容器10の下方の空洞部は、ポンプ、ドレン、計装管及び/又は制御棒駆動装置などの容器を補助する機器類を収納する働きをする。図1に示されるように、少なくとも1つの計装管50は、容器10内部へ垂直に炉心15の中まで又は炉心15を貫通して延出する。炉心15は核燃料を含み、炉心15の動作中に相対的に大量の中性子束を発生する。計装管50は、ほぼ円筒形であり、容器10の高さに伴って幅広になっていてもよいが、業界においては、他の形状の計装管も一般に見られる。計装管50は、例えば約1インチの内径及び/又は隙間を有してもよい。
【0016】
計装管50は、原子炉圧力容器10の下方のドライウェル20の中で終端してもよい。従来、ドライウェル20の下端部にある開口部を通して中性子検出器及び他の種類の検出器が計装管50に挿入されてもよい。それらの検出器は、計装管50に沿って上方へ延出し、炉心15内部の状態を監視してもよい。従来のモニタの種類の例には、ワイドレンジ検出器(WRNM)、中性子源料域モニタ(SRM)、中間領域モニタ(IRM)及び/又は局部出力領域モニタ(LPRM)などがある。封じ込めのため及び放射線被害の危険があるため、動作停止に至るまで、計装管50及びその内部に挿入された全ての監視装置に対する接近は従来制限されている。
【0017】
容器10は、商用沸騰水型軽水炉において一般に見られる構成要素と共に示されるが、本発明の実施形態及び方法は、原子炉の中まで延出する計装管50又は他の進入管を有するいくつかの異なる種類の原子炉と共に使用可能であろう。例えば、10MWe以下〜数GWeの出力定格を有し且つ図1に示される位置とは異なるいくつかの位置に計装管を有する加圧水型軽水炉、重水炉、黒鉛減速原子炉などは、本発明の実施形態及び方法と共に使用可能であろう。従って、本発明の方法において使用可能な計装管は、種々の原子炉の炉心の線束に対して封じ込め状態での接近を可能にする炉心の周囲の任意の構造の任意の突出した形状であってもよい。
【0018】
化学的分離又は同位体分離の必要なく及び/又は商用原子炉の原子炉動作停止を待つ必要なく、迅速且つ連続的に大規模に短期間放射性同位体を生成するために、計装管50を使用可能であることを本出願人は認識した。本発明の方法は、計装管50の中に照射ターゲットを挿入することと、動作中の炉心15に照射ターゲットを暴露し、それにより、動作中の炉心15において一般に出現する中性子束に照射ターゲットを暴露することとを含んでもよい。炉心束は、照射ターゲットの大部分を、医療の用途で使用可能な短期間放射性同位体を含む有用な放射性同位体に変換してもよい。その後、炉心15の動作が継続している間であっても、照射ターゲットは、計装管50から引き抜かれ、医療用及び/又は産業用に使用するために取り出されてもよい。本発明の方法を可能にする実施形態を、本実施形態により可能になる本発明の方法の更なる詳細を含めて、以下に説明する。
【0019】
図2は、原子炉において放射性同位体を生成するシステムの一実施形態を示した図である。図2に示されるように、本実施形態の放射性同位体生成システム100は、原子炉圧力容器10の下方のドライウェル20の中の計装管50の下方に配置される。本実施形態の放射性同位体生成システム100は、動作中の容器10の中で照射するために照射ターゲット250を計装管50に挿入し且つ照射ターゲット250を計装管50から取り出してもよい。本実施形態の放射性同位体生成システム100は、以下にそれぞれ説明される3つの異なるサブシステム、すなわち計装管サブシステム200、照射ターゲット送り出しサブシステム300及び/又は照射ターゲット格納取り出しサブシステム400を含んでもよい。本発明の実施形態及び方法における照射ターゲット250及びその使用に関しては、最後に説明する。
計装管サブシステム
図3は、計装管サブシステム200の一実施形態を示した図である。図3に示されるように、計装管50は、図1及び図2にも示される通り、ドライウェル20中の下方位置から原子炉圧力容器10及び核燃料を含む炉心15の中まで延出する。照射ターゲット250は、計装管開口部51を経て照射ターゲット送り出しサブシステム300(図5)により直線的に計装管50の中へ押し込まれ且つ計装管50から取り出されてもよい。
【0020】
計装管50は、炉心15の最上部16の付近まで延出してもよい。従って、照射ターゲット250は、計装管50において炉心15の垂直長さに沿って直線的に位置決めされ且つ保持されてもよい。炉心15における中性子束は周知であり、管50の内部の照射ターゲット250のうち相当な量を有用な短期間放射性同位体に変換するのに十分な高いレベルであってもよい。図8A及び図8Bを参照して以下に説明するように、ターゲット250の種類及び炉心15における垂直位置により、放射性同位体の生成及び放射能を最大限にするための正確な暴露時間及び放射性同位体生成速度を計算できる。
【0021】
照射ターゲット250の更なる封じ込め、遮蔽及び形状整合を実現するために、計装管50にスリーブ260が挿入されてもよい。スリーブ260は、通常剛性であり、動作中の炉心15に暴露された場合に物理的特性をほぼ維持する材料から製造されてもよい。スリーブ260は、例えばステンレス鋼、アルミニウム、ジルコニウム合金、インコネル、ニッケル、チタンなどから製造されてもよい。
【0022】
計装管50を越えて案内及び整列を実現するために、スリーブ260は、計装管50の開口部51を越えて延出してもよい。例えば、開口部51より更に容器10の下方に配置されてもよい照射ターゲット送り出しサブシステム300の内部及び外部に照射ターゲット250を適切に案内するために、スリーブ260は下方へ延出し、照射ターゲット送り出しサブシステム300に近接する場所で終端してもよい。
【0023】
照射ターゲット250の計装管50への挿入及び計装管50からの取り出しを助長するために、スリーブ260は、滑らかで均一な内面を形成してもよい。前述のように、計装管50は、多様な形状を有し且つ/又は容器10に進入する垂直距離に従って幅を変えてもよい。計装管50の形状を考慮するために、スリーブ260の外径は可変であってもよいが、照射ターゲット250の大きさと関連する均一な内径を有してもよい。例えば、照射ターゲットの順序を維持するため、順序に基づく識別を可能にするためなどの理由により、スリーブ260は、計装管50に沿った1列に並んだ照射ターゲット250の位置のずれ又は変位を防止するような充分に小さな内径を有してもよい。
【0024】
一実施形態において、スリーブ260はモジュール構造であってもよく、組み立て及び計装管50への挿入を可能にするいくつかの部材から構成されてもよい。図4A及び図4Bに示されるように、いくつかの異なる構成要素が1つのモジュールスリーブ260を形成してもよい。図4Aには、スリーブ260のセグメント261が示される。各セグメント261は、係合要素264及び/又は265を含んでもよい。係合要素は、各セグメント261を別のセグメント261に接合し且つ中空であることにより照射ターゲット250がセグメント261を通過できるようにしてもよい。係合要素264及び265は、例えば中空のねじ端部及び穴、あるいは中空の突出端部及び受け入れ凹部を含んでもよい。セグメント261は、計装管50の形状に適合又は類似するが開口部51を通れるほどには十分に小さいそれぞれ異なる外径262を有してもよい。セグメント261は、相対的に一定であり且つ照射ターゲット250を受け入れるのに適合する幅を有する内径263を含んでもよい。従って、セグメント261が個々に計装管50に挿入された場合、計装管50及びスリーブ260に挿入された照射ターゲット250に対して連続した直線的な内径を規定するように、セグメント261は、計装管50の内側で組み立てられてもよい。
【0025】
あるいは、図4Bに示されるように、スリーブ260は、ほぼ一定の内径及び外径を有してもよく、1つ以上のモジュールコレット266がスリーブ260に結合されることにより、計装管50とスリーブ260/コレット266との嵌合が実現されてもよい。従って、計装管50及びモジュールコレット266により取り囲まれたスリーブ260に挿入された照射ターゲット250に対して連続する内径を規定するように、コレット266は、計装管50の中でスリーブ260の周囲に挿入され且つ組み立てられてもよい。
照射ターゲット送り出しサブシステム
図5は、照射ターゲット送り出しサブシステム300の一実施形態を示した図である。図5に示されるように、2つの駆動歯車310a及び310bは、照射ターゲット250を受け入れ且つ/又は計装管50のスリーブ260又は開口部51との間で照射ターゲット250を搬送してもよい。駆動歯車310a及び310bは、互いに対向して位置決めされてもよい。駆動歯車310a及び310bは、容器10の下方のドライウェル20の中で計装管50の両側且つ計装管50の下方に位置するように配置されてもよい。容器10の下方のドライウェル20における空間の広さに基づいて駆動歯車310a及び310b、並びにターゲット送り出しサブシステム300の大きさ及び位置を規定することにより、放射性同位体生成システム100は、世界中の現在稼働中の多くの原子炉のドライウェル20に完全に嵌合してもよい。
【0026】
駆動歯車310a及び310bの間に進んで来る照射ターゲット250を確実に把持し且つ保持又は嵌合するように、駆動歯車310a及び310bは、照射ターゲット250の形状に対して相補形を成す特殊な形状の円周面又は側面311a及び/又は311bを有してもよい。例えば、図5に示されるように、面311a及び311bは、球形の照射ターゲット250とかみ合うためにスカラップ形状を有してもよい。計装管50に出入りする際の照射ターゲット250の直線配列順序を同一に維持しつつ、駆動歯車310a及び311bの間に進んで来る照射ターゲット250を確実に保持し且つ移動するために、面311a及び311bのスカラップは、照射ターゲット250の半径とほぼ同様の半径を有してもよい。あるいは、図示される照射ターゲットの形状に代わり当業者により使用されるような代替形状の照射ターゲットと整合し且つ/又はかみ合うために、面311a及び311bは、別の形状を有してもよい。
【0027】
駆動歯車310a及び310bの間を通過する照射ターゲット250を上下動させるように、駆動歯車は、計装管50に対して垂直な平行軸に関して互いに逆方向に回転してもよい。例えば、図5に示されるように、駆動歯車310aが時計回り方向に回転し且つ駆動歯車310bが反時計回り方向に回転する場合、駆動歯車310a及び310bの回転軸の間及び下方にある照射ターゲット250は、格納取り出しサブシステム400から計装管サブシステム200の中へ引き上げられてもよい。駆動歯車310a及び310bがそれとは逆の方向に回転する場合、すなわち駆動歯車310aが反時計回り方向に回転し且つ駆動歯車310bが時計回り方向に回転する場合、照射ターゲット250は、計装管サブシステム200から取り出しサブシステム400の中へ降下されてもよい。
【0028】
照射ターゲット送り出しサブシステム300において使用可能な駆動歯車310a及び310b、並びに他の例の駆動機構は、計装管サブシステム200と照射ターゲット格納取り出しサブシステム400との間を通過する照射ターゲット250の直線配列順序を維持してもよい。このように、実施形態のシステム100を通して照射ターゲット250の直線配列順序全体が維持されてもよく、計装管50内部における照射ターゲット250の垂直方向順序に従った照射ターゲットの監視は、いずれも適切に実行される。
【0029】
図5に示されるように、駆動歯車310a及び310bは、駆動歯車310a及び310bの同期運動を可能にする駆動力サブシステム390により駆動されてもよい。図5に示される実施形態は、動力駆動軸325から駆動歯車310a及び310bへ運動を伝達する複数の個別の歯車を示す。動力駆動軸325は、下部伝動歯車391a及び391bに結合してもよい。下部伝動歯車391a及び391bは、上部伝動歯車392a及び392bの歯付き領域と歯合するので、上部伝動歯車392a及び392は、動力駆動軸325の回転により回転されてもよい。上部伝動歯車392a及び392bは、ねじ端部又は連動端部393a及び393bをそれぞれ含んでもよく、それらの端部は、駆動歯車310a及び310bとそれぞれかみ合うか又はその他の方法により連動する。このように、双方の駆動歯車310a及び310bは、動力駆動軸325の回転により回転されてもよい。
【0030】
図5に示される通り、駆動歯車310a及び310bを前述のように逆方向に回転するように、下部伝動歯車391a及び391bは、駆動歯車310b及び310aと逆の向きでそれぞれかみ合ってもよい。駆動歯車310a及び310bに対称な角運動を与えるように(駆動歯車310a及び310bは、互いに負の角運動を有してもよい)、上部伝動歯車392a及び392bは、同様の半径を有し且つ同様の半径で駆動歯車310b及び310aとかみ合ってもよい。従って、駆動歯車310a及び310bの面311a及び311bが同様の外径を有する場合、照射ターゲット250は、面311a及び311bの中に一定の周囲方向位置で嵌合するので、前述のように、駆動歯車310a及び310bを介して照射ターゲット250を保持し且つ嵌合することが可能になる。
【0031】
本実施形態において、歯車を配列し且つ/又は駆動歯車310a及び310bに動力を供給するに際して任意の周知の方法が使用されてもよいことは理解される。例えば、駆動歯車310a及び310bを駆動するために、上部伝動歯車392a及び392bにおいてウォーム歯車系が示されるが、従来の歯車及び/又は摩擦板境界面を含む他の境界面が使用されてもよい。あるいは、例えば、駆動力サブシステム390及び動力駆動軸325を必要とせずに、電動機により駆動歯車310a及び310bに動力が直接供給されてもよい。
【0032】
動力駆動軸325は、モータ921を含む多様な手段により、一次循環ポンプから外れた伝動装置から局所的に動力を供給されてもよく、あるいは遠隔場所から動力を供給されてもよい。図5に示されるように、動力駆動軸325は、動力駆動軸325を回転可能なモータ921に結合されてもよい。動力駆動軸325の位置、回転数及び/又は角速度を検出するために、動力駆動軸325にデジタルカウンタ911が更に接続されてもよい。デジタルカウンタ911及びモータ921の双方は、コンピュータ900に通信可能に接続されてもよい。
【0033】
コンピュータ900は、例えば、本実施形態のシステム100において使用される歯車の半径及びそれらの結合関係、他のサブシステム200及び400における歯車及び照射ターゲットの位置、原子炉軸方向束プロファイル、照射ターゲットの寸法、組成及び直線配列順序及び/又はデジタルカウンタ911及びモータ921からの情報を含む関連システム情報によって適切にプログラムされるか、そのような情報を入力されるか又はそのような情報にアクセス可能であってもよい。この情報に基づき、コンピュータ900は、モータ921を自動的に動作させ且つ本実施形態のシステム100を通して照射ターゲット250を移動してもよい。そのような自動動作は、オンライン状態を含む既知のシステム情報及び原子炉情報に基づいてもよい。このように、本実施形態のシステム100全体を通して同期動作を可能にするように、コンピュータ900は、以下に説明する照射ターゲット格納取り出しサブシステム400を含む他のサブシステムと接続し且つそれらのサブシステムを調整してもよい。
【0034】
照射ターゲット送り出しサブシステム300は、駆動歯車310a及び310bの回転速度及び駆動歯車310a及び310bの半径に応じて、所望の速度で計装管サブシステム200に照射ターゲット250を挿入し且つ計装管サブシステム200から照射ターゲット250を取り出してもよい。更に、駆動歯車310a及び310bは、計装管サブシステム200内での照射ターゲット250の軸方向位置を維持する働きをしてもよい。例えば、上部伝動歯車392a及び392bのねじ端部393a及び393b、並びに駆動歯車310a及び310bで使用されるウォーム歯車系により、駆動歯車310a及び310bは所定の場所に保持されるので、ロックされた駆動歯車310a及び310bと計装管50及び/又はスリーブ260との間から照射ターゲット250が抜け出す余地なく、照射ターゲット250の軸方向位置は保持される。すなわち、ねじ端部又は連動端部393a及び393bは、駆動歯車310a及び310bに運動を伝達し且つ駆動歯車を回転するが、駆動歯車310a及び310bが駆動力サブシステム390を駆動するのは阻止するように駆動歯車310a及び310bと協働するねじを含んでもよい。
【0035】
計装管50内部における照射ターゲット250の軸方向順序及び炉心15に挿入された照射ターゲット250又は炉心15から取り出される照射ターゲット250の順序の双方を維持することにより、照射ターゲット送り出しサブシステム300を通過する照射ターゲット250の追跡及び識別が可能になる。
【0036】
図5において、照射ターゲット送り出しサブシステムは、一連の歯車として示されるが、当業者には理解されるように、サブシステム200及び400の間で照射ターゲット250を上昇及び/又は降下させる他の機構が使用されてもよい。例えば、サブシステム200及び400の間のアクチュエータ又は空気圧駆動装置により、それらのサブシステムの間で照射ターゲット250を移動し且つ保持してもよい。このように、照射ターゲットを動作中の原子炉の計装管50に挿入し且つ計装管50から取り出す場合の本実施形態の放射性同位体生成システム100の機能を維持したまま、ターゲット送り出しサブシステム300に他の機構が使用されてもよい。
照射ターゲット格納取り出しサブシステム
図6は、照射ターゲット格納取り出しサブシステム400の一実施形態を示した図である。図6に示されるように、照射ターゲット250は、格納取り出しサブシステム400の最上部付近で照射ターゲット送り出しサブシステム300に入るか又はサブシステム300から出てもよい。照射ターゲット250は、照射ターゲット送り出しサブシステム300の出口からドライウェル20の中の下部位置まで下降する保持管420から、格納サブシステム300に出入りしてもよい。保持管420は、動作中の原子炉の付近に存在する放射線に暴露された場合に物理的特性をほぼ維持するように設計された材料、例えばステンレス鋼、ニッケル系合金、チタンなどの材料から製造された剛性の管であってもよい。
【0037】
未照射(未使用)の照射ターゲット250は、保持管420に沿って上昇し、照射ターゲット送り出しサブシステム300に装填されてもよく且つ/又は照射済み照射ターゲット250(短期間放射性同位体を炉心の中性子束に暴露されないように格納している)は、照射ターゲット送り出しサブシステム300により動作中の原子炉から取り出された後、保持管420に沿って降下し、保持管420の中に格納されてもよい。保持管420は、保持管420の空隙の付近に配置された排出管410及び取り出し機構415を含んでもよい。取り出し機構415に関しては、以下に図7を参照して説明する。
【0038】
取り出し機構415は、保持管420から排出管410の中へ照射ターゲット250を押し出してもよい。排出管410は、格納容器411を貫通して外部の保持領域412まで延出してもよい。保持領域412において、照射ターゲット250は、放射性同位体として使用するために得られてもよい。排出管410は、格納容器411から出るドライウェル20内の周知の配管及び/又は蓋付き出入り口を通す方法及び/又は格納容器411を貫通する特別に設計された通路を通す方法を含む多様な方法で、格納容器411を貫通してもよい。そのような通路は、格納容器の加圧及び/又は安全性を維持するように特別に設計されてもよい。
【0039】
図7は、取り出し機構415の一実施形態を示した図である。図7に示されるように、本実施形態の取り出し機構415は、ピストン/ホイール構成で軸417及び駆動ホイール416に結合された押し棒418を含んでもよい。照射ターゲット250を回転し、保持管420から排出管410の中へ押し出すために、駆動ホイール416は、取り出し伝動装置414により駆動されてもよい。
【0040】
取り出し伝動装置414は、駆動ホイール416に結合された従来のはめ歯であってもよく又は図7に示されるようなねじ及びウォーム歯車構成であってもよい。照射ターゲットが照射ターゲット送り出しサブシステム300により移動される間に照射ターゲットを同期して取り出すために、取り出し伝動装置414は、所望の時点で駆動力サブシステム390及び/又は動力駆動軸325(図5)に結合されてもよい。このように、照射ターゲット250の順序を維持し且つ/又は本実施形態の放射性同位体生成システム100を通してターゲット250を同期移動することにより、サブシステム間において、厳密な場所及び照射ターゲット250の識別が可能になる。あるいは、コンピュータ900に回転場所及びタイミングを提供するために、モータ922及び/又はデジタルカウンタ912が駆動軸325に装着されてもよい。そのようなシステムは、先に図5において説明されたモータ921/デジタルカウンタ911の組み合わせに類似してもよく、照射ターゲット250の移動と本実施形態のシステム100内部の/からの取り出しとの同期を容易にするために、共用コンピュータ900へ同様の情報を中継してもよい。
【0041】
本実施形態の取り出し機構415はピストン/ホイール構成として示されるが、本実施形態と共に、他の種類の取り出し機構も使用可能であろう。例えば、取り出し機構415は、起動時に照射ターゲット250を排出管410の中まで単純に押し出す遠隔操作アクチュエータを含んでもよい。当業者には周知であろうが、当該技術において周知である他の種類の取り出し機構が取り出し機構415の代わりに使用されてもよい。
【0042】
図6に示されるように、照射ターゲット250は、下方の流れ制御機構450に至るまで保持管420に充満してもよい。補給管460は、サブシステム400及び/又は300の周囲で螺旋状に上方へ延出し、照射ターゲット貯蔵部419に至る。このように、重力によって、照射ターゲット250は、補給管460を通り、流れ制御機構450まで押し流されてもよい。補給管460は螺旋として示されるが、照射ターゲットを流れ制御機構450まで押し出すための追加駆動系により補助された貯蔵部419から出る直線状の経路又は上向き経路を含む任意の数の構成が使用されてもよい。
【0043】
流れ制御機構450は、照射ターゲット送り出しサブシステム300(図5)の駆動歯車310a及び310bに類似する一組の歯車及び/又は特殊な面形状を有する歯車であってもよく、重複する部分の説明は省略される。流れ制御機構は、駆動歯車310a及び310bのように縦に配置されるのではなく、水平に配置された1対の歯車を含んでもよい。歯車310a及び310bと同様に、流れ制御機構450は、結合歯車により駆動軸に結合されたウォーム歯車により動かされてもよい。駆動軸は、共にコンピュータ900に接続されるモータ及び/又はカウンタに接続されてもよい。コンピュータ900は、流れ制御機構450による照射ターゲット250の移動を更に調整し且つ制御してもよい。
【0044】
流れ制御機構450は、補給管460と保持管420との間で照射ターゲットを保持し且つ/又は移動してもよい。補給管460及び保持管420は、共に、流れ制御機構450の付近に開口部を有してもよい。照射ターゲットは、重力によって貯蔵部490から押し出されるので、流れ制御機構450は、望ましくない時点で照射ターゲットが保持管420の中へ押し上げられるのを阻止する働きをしてもよい。本実施形態の放射性同位体生成システム100を単純化し且つその同期性を維持するように、流れ制御機構450は、照射ターゲット送り出しサブシステム300(図5)と同一の歯車群320及び/又は動力駆動軸325により駆動されてもよい。流れ制御機構450を制御するコンピュータ900のソフトウェアは、全てのサブシステム200、300及び400の間の同期性を維持してもよい。
【0045】
流れ制御機構450は、1組の歯車として示されるが、補給管460と保持管420との間の照射ターゲットの移動を制御するために、アクチュエータ、弁などのいくつかの異なる種類のブロック装置が使用されてもよい。
【0046】
本実施形態の格納取り出しサブシステム400の構成により、本実施形態の放射性同位体生成システム100への挿入から取り出しに至るまで、照射ターゲット250の順序及び直線性は維持される。例えば、炉心において照射された後、照射ターゲット250が照射ターゲット送り出しサブシステム300から保持管420の中へ送り込まれる場合、全ての照射ターゲットが計装管サブシステム200から取り出されるまで、ターゲットは停滞し且つ/又は補給管460の中へ押し出されてもよい。補給管460は重力によってターゲットを押し出す構成であるので、流れ制御機構450は、照射済み照射ターゲット250を取り出し機構415に戻すことができ、取り出し機構450は、待機中の照射済み照射ターゲット250を排出管410へ同期して取り出す。このように、照射済み照射ターゲット250が格納容器411の外側へ搬送される間、計装管50の最上部から最下部に至るまで、照射ターゲットの厳密な垂直方向順序を維持できる。
【0047】
炉心15の内部の中性子束は、当業者には通常周知であるか又は当業者により判定可能である。炉心内での照射ターゲットの直線配列順序を維持することにより、本実施形態のシステム100は、照射ターゲット250の最大比放射能を提供してもよい。このように、医療用途及び/又は産業用途に使用するために要求される照射ターゲット250の比放射能を生成するために、中性子束を導通する状態で軸方向位置に排出可能なターゲットを配置させることにより、照射ターゲット250の比放射能を最大限にできる。
【0048】
更に、図6に示される構成により、補給管460は、計装管50の長さとほぼ等しい長さを有してもよいので、照射ターゲットのカウントミス又は照射ターゲットの照射ターゲット送り出しサブシステム300又は計装管サブシステム200への溢れ出しを防止できる。貯蔵部419は、追加の照射ターゲットを格納してもよく、先の照射済み照射ターゲット250が全て保持管420へ送り出された後、それらの追加照射ターゲットは、補給管460の中へ放出されてもよい。このように、貯蔵部419は、本実施形態の放射性同位体生成システム100に照射ターゲット250を提供し続け、放射性同位体の生成を最大限にできる。
【0049】
貯蔵部419は、ターゲット補給用格納庫及び積み重ねループ460から出たターゲット250を配置するための格納庫の双方の機能を果たしてもよい。サブシステム300及び/又は流れ制御機構450がターゲットを炉心の中へ送り出している場合、重力によって、新たなターゲット250が貯蔵部419から出て、補給管460に入ってもよい。ターゲットが炉心から取り出される場合、ターゲットは、貯蔵部419に戻るように移動されてもよい。貯蔵部419は、例えば漏斗形貯蔵部を含めて、そのような照射ターゲットの移動を可能にする多様な形状であってもよい。
【0050】
図6に示される本実施形態の照射ターゲット格納取り出しサブシステム400は、医療用途及び産業用途において使用可能な短期間放射性同位体を含む照射ターゲット250の順序正しい取り出し及び/又は格納を容易にしてもよい。しかし、他の実施形態のサブシステムは、放射性同位体生成システム100からの照射済み照射ターゲット250の取り出しを適切に実行してもよい。例えば、照射ターゲット250が照射ターゲット送り出しサブシステムから容器10を直接出るように及び/又は照射ターゲット250が容器10内部に直接装填されるように、取り出しサブシステム400の全体が、格納容器の外側に向けられた排出管から構成されてもよい。
放射性同位体生成システムの動作
以上、本発明の放射性同位体生成システムの実施形態を説明したので、本発明の方法を実現するためのそのような実施形態の動作を要約することが可能である。未使用の照射ターゲット250は、貯蔵部419(図6)に格納され且つ/又は流れ制御機構450により補給管460に保持されてもよい。流れ制御機構450が解除又は起動されると、貯蔵部419が保持管420より上に位置しているために、重力によって又は流れ制御機構により、照射ターゲット250は、保持管420に沿って上昇してもよい。
【0051】
十分な量の照射ターゲット250が保持管420の中へ送り込まれた後、照射ターゲット250は、駆動歯車310a及び310b(図5)の付近で保持管420から出てもよい。駆動歯車310a及び310bは、保持管420から出て来る照射ターゲット250とかみ合うように回転されてもよい。駆動歯車310a及び310bは、照射ターゲット250の順序を維持しつつ、照射ターゲット250をスリーブ260(図3)の中へ順次移動してもよい。照射ターゲット250は、開口部51を通って計装管50に進入し、炉心15まで上昇するように、スリーブ260の中へ連続して押し込まれてもよい。計装管50及びスリーブ260が照射ターゲットで充満された状態になると、駆動歯車310a及び310bは、照射ターゲットを計装管50内の所定の場所に保持してもよい。
【0052】
計装管50及び炉心15に照射ターゲットが保持されている間に、任意の時点で炉心15は動作されてもよい。炉心15の軸方向束プロファイル及び照射ターゲット250の組成は周知であるので、照射ターゲット250を所望の放射性同位体にほぼ変換するための時間だけ、照射ターゲットは、炉心15内部に保持されてもよい。
【0053】
所望の時間が終了した時点で、照射ターゲット250をスリーブ260から保持管420の中へ送り戻すために、駆動歯車310a及び310bは、計装管50及びスリーブ260の中にターゲット250を保持することを停止し且つ/又は方向を反転してもよい。このような照射ターゲット250の押し下げは、保持管420又は補給管460内の他の照射ターゲットを更に補給管460に戻すのを助長する。保持機構450は、照射ターゲットを補給管460に戻すのを更に補助してもよいし、あるいは任意の照射ターゲットが保持管に侵入するのを阻止するか又は保持管に侵入した照射ターゲット250を取り除いてもよい。その結果、照射済み照射ターゲット250が保持管420まで降下した場合、保持管420は空の状態になっている。
【0054】
全ての照射済み照射ターゲット250がスリーブ260から保持管420の中へ排出された後、保持機構450の動作又は重力の作用によって、照射済み照射ターゲット250は、排出管410(図7)の中へ押し出されてもよい。取り出し機構415は、保持機構450による照射ターゲット250の移動と同期して、照射ターゲット250を排出管410の中へ押し出してもよい。
【0055】
排出管410を経て、照射済み照射ターゲット250は、格納容器411から取り出され、医療用又は産業用として得られてもよい。本実施形態のシステムの動作全体を通して、照射ターゲット250は、直線配列順序を維持する。前述の処理過程全体は、遠隔場所のユーザにより又は先に各サブシステムに関して説明したように種々のサブシステムを駆動する遠隔コンピュータ900により自動化されてもよい。例えば、遠隔コンピュータ900は、炉心15へのターゲット250の挿入を開始し、炉心15の軸方向束プロファイル及び炉心15に挿入されるべき照射ターゲット250の中性子特性を計算してもよい。炉心における照射ターゲットの直線配列順序、従ってターゲットの軸方向配置関係がわかれば、コンピュータは、所望の暴露時間を計算できる。暴露時間が経過した後、コンピュータは、炉心からのターゲット250の取り出しを開始してもよく、全てのターゲット250が炉心15から取り出された後、コンピュータ900は、本実施形態のシステム及び格納容器411からのターゲット250の取り出しを開始してもよい。各照射ターゲット250の厳密な放射能及び放射特性は、取り出しの時点で直線配列順序に従って計算されるので、照射済み照射ターゲット250に存在する放射性同位体を生成し且つ使用することが可能になる。
照射ターゲット
図8A及び図8Bは、照射ターゲット250a及び250bの実施形態を示した図である。図8Aに示されるように、回転でき且つ本発明の装置を通過しながら転がることができるように、照射ターゲット250aは、ほぼ球形であってもよい。しかし、前述のように、照射ターゲットは、他の形状であってもよい。例えば、任意の方向又は全方向への転がりを阻止するために、あるいは異なる計装管50の形状及び/又は場所に対応するために、照射ターゲット250として六面体及び/又は円筒が使用可能であろう。異なる照射ターゲットの形状に適合するように、駆動歯車の面及び管の形状が変更されてもよい。
【0056】
図8Aに示されるように、照射ターゲット250aは、ほぼ中実であってもよく、動作中の商用原子炉に存在する中性子束に暴露された場合に有用な放射性同位体に変換する材料から製造されてもよい。あるいは、照射ターゲット250aの取り扱い及び照射ターゲット250からの放射性同位体の生成を更に容易にするために、照射ターゲット250上にそれぞれ異なる半径で異なる材料がめっき又は積層されてもよい。
【0057】
あるいは、図8Bに示されるように、照射ターゲット250bは、ほぼ中空であってもよく、動作中の商用原子炉に存在する中性子束に暴露された場合に有用な気体放射性同位体、液体放射性同位体及び/又は固体放射性同位体に変換する液体材料、気体材料及び/又は固体材料を含んでもよい。固体、液体又は気体のターゲット材料252をシェル251が取り囲み且つ封じ込めていてもよく、シェル251は、中性子束に暴露された場合に無視できるほどの物理的変化しか示さない。これは、例えば、ステンレス鋼及び/又はアルミニウムを含む。照射ターゲット250bにおいて生成された放射性同位体を生成するために、シェル251を貫通する取り出し口253が設けられてもよい。例えば、気体/液体/固体ターゲット材料252及び生成された放射性同位体に対してシールを形成するように、取り出し口253は、シェル251に溶接又はねじ止めされてもよい。取り出し口253は、気体/液体/固体放射性同位体を生成できる状態になった場合に外側からの適切な力にさらされると容易に破損するか、容易に穴をあけられるような脆い領域255を含んでもよい。
【0058】
本実施形態の放射性同位体生成システム100は、短期間同位体を生成し且つ生成する本発明の方法を実行するために使用可能な装置として詳細に説明されたが、本発明の方法を実行するために他の装置が使用されてもよいことは理解される。例えば、使用可能な短期間放射性同位体を生成するのに十分なように照射ターゲットを中性子束に適正に暴露するために、照射ターゲットを格納する密閉スリーブが、「カートリッジ」のように、動作中の商用原子炉の計装管に種々の間隔で挿入され且つ計装管から取り出されてもよい。
【0059】
本実施形態及び本発明の方法において、いくつかの異なる放射性同位体が生成されてもよい。本実施形態及び本発明の方法は、商用原子炉の動作を停止せずに、費用がかさむと思われる処理なしに且つ危険で長時間を要する同位体抽出処理及び/又は化学的抽出処理なしに、生成される放射性同位体の半減期と比較して相対的に短い時間の中で短期間放射性同位体を生成し且つ生成できるという点で特に有利である。本発明の装置及び方法によって、診断及び/又は治療に適用可能な短期間放射性同位体を生成できるが、産業用途に適用される放射性同位体及び/又は半減期が長い放射性同位体が生成されてもよい。
【0060】
本発明の方法及び装置において、生成される放射性同位体の種類及び濃度を判定するために、照射ターゲット250及び計装管50における暴露時間の長さが選択されてもよい。すなわち、前述のように、動作中の原子炉の中で軸方向束レベルは周知であり且つ本実施形態の装置及び方法において使用される照射ターゲット250の軸方向位置を精密に制御できるので、照射ターゲット250の種類及び大きさ、並びに暴露時間は、生成後の放射性同位体及びその濃度を判定するために使用されてもよい。従来の崩壊図及び横断面図を参照することにより、ある特定の量の中性子束に暴露された場合に、どの種類の照射ターゲット250が所望の放射性同位体を生成するかは当業者には周知である。更に、動作中の商用原子炉の炉心において起こる核分裂連鎖反応を実質的に妨害しないように、照射ターゲット250は、相対的に小さな中性子横断面に基づいて選択されてもよい。
【0061】
例えば、ある特定の量の中性子束に暴露された場合、モリブデン‐99が約6時間の半減期を有するテクネチウム‐99mに変換されることは周知である。テクネチウム‐99mは、医療用撮像及び癌診断を含むいくつかの特殊な医療分野に使用され、短い半減期を有する。モリブデン‐99から製造された照射ターゲット250を使用し、ターゲット250の大きさに基づいて動作中の原子炉において中性子束に暴露する場合、本発明の装置及び方法において、Mo‐99を含む照射ターゲットの大きさ、動作中の原子炉におけるターゲットの軸方向位置、動作中の原子炉の軸方向プロファイル及び照射ターゲットの暴露時間の長さを判定することにより、テクネチウム‐99mが生成され且つ生成される。
【0062】
以下の表1は、適切な照射ターゲット250を使用して、本発明の方法において生成できるいくつかの短期間放射性同位体を示す。表に挙げられている短期間放射性同位体の最長の半減期は、約75日である。原子炉の動作停止及び使用済み燃料の抜き取りが2年程度の長い間隔で実行されるとすれば、放射性同位体の燃料からの取り出し及び生成は、非常に長い処理時間及び冷却時間を必要とするので、以下に挙げられる放射性同位体を従来の使用済み核燃料から生成し且つ生成することは実行不可能であろう。
【0063】
【表1】

表1は、本発明の実施形態及び方法において生成できる放射性同位体の全てを網羅したリストではなく、癌治療を含む医療と組み合わせて使用可能ないくつかの放射性同位体を例示する。適正にターゲットを選択すれば、本発明の実施形態及び方法によって、ほぼ全ての短期間放射性同位体を生成でき且つ生成できるであろう。
【0064】
以上、本発明を説明したが、定期的実験を通して、更なる発明活動なしに実施形態を変形できることは当業者には理解されるであろう。変形は、本発明の趣旨の範囲からの逸脱とみなされるべきではなく、当業者には明らかであろうと考えられるそのような全ての変形は、添付の請求の範囲の範囲内に含まれることを意図する。
【符号の説明】
【0065】
10 原子炉格納容器
15 炉心
50 計装管
100 放射性同位体生成システム
200 計装管サブシステム
250 照射ターゲット
260 スリーブ
266 コレット
300 照射ターゲット送り出しサブシステム
310a 駆動歯車
310b 駆動歯車
400 照射ターゲット格納取り出しサブシステム
411 格納容器構造
410 排出管
415 取り出し機構
420 保持管
460 補給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性同位体を生成する方法において、
動作中の原子炉(10)に出現する中性子束に暴露された場合に実質的に放射性同位体に変換する性質の少なくとも1つの照射ターゲット(250)を、動作中の前記原子炉(10)に出現する中性子束に暴露するために、前記照射ターゲット(250)を前記原子炉(10)の計装管(50)の中に挿入する工程と;
前記照射ターゲット(250)及び生成された放射性同位体を前記計装管(50)から取り出す工程、とから成る方法。
【請求項2】
前記原子炉(10)は、100+メガワットの電気原子炉であり、前記挿入する工程及び前記取り出す工程は、前記原子炉(10)の動作中に実行される請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記生成された放射性同位体は、75日以下の半減期を有する請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記暴露する工程は、
既知の中性子横断面を有する照射ターゲット(250)を選択する工程と;
前記計装管(50)内部の軸方向位置に、動作中の前記原子炉(10)の軸方向中性子束プロファイルに基づく前記軸方向位置に対応する束レベルで前記照射ターゲット(250)のほぼ全てを放射性同位体に変換するために必要とされる時間の長さに対応する時間の長さだけ、前記照射ターゲット(250)を位置決めする工程とを含む請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記原子炉(10)を取り囲む格納容器構造(411)から前記照射ターゲット(250)及び生成された放射性同位体を取り出す工程を更に含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
原子炉(10)の計装管(50)への少なくとも1つの照射ターゲット(250)の挿入及び前記計装管(50)からの前記照射ターゲット(250)の取り出しが可能であるように構成された管サブシステム(200)と;
前記原子炉(10)の前記計装管(50)に対する前記少なくとも1つの照射ターゲット(250)の挿入及び取り出しを実行するように構成された照射ターゲット送り出しサブシステム(300)と;
前記少なくとも1つの照射ターゲット(250)を格納するように構成された照射ターゲット格納取り出しサブシステム(400)とを具備する放射性同位体生成システム。
【請求項7】
前記管サブシステム(200)は、前記計装管(50)の中に挿入されたスリーブを含み、前記スリーブ(260)は、ほぼ一定の内径を有し、前記管サブシステム(200)は、前記スリーブ(260)及び前記計装管(50)の可変内面と結合するような形状に形成された少なくとも1つのコレット(266)を更に含む請求項6記載のシステム。
【請求項8】
前記スリーブ(260)は、前記計装管(50)の開口部を越えて前記照射ターゲット送り出しサブシステム(300)まで延出する請求項6記載のシステム。
【請求項9】
前記照射ターゲット送り出しサブシステム(300)は、各々が前記少なくとも1つの照射ターゲット(250)と嵌合するように位置決めされ且つ前記少なくとも1つの照射ターゲット(250)と嵌合するような形状に形成された面を有する複数の歯車(310)を含み、前記複数の歯車(310)は、第1の歯車(310a)及び第2の歯車(310b)を含み、前記第1の歯車及び第2の歯車(310)は、共用歯車装置により逆方向に同期して回転するように構成される請求項6記載のシステム。
【請求項10】
前記照射ターゲット格納取り出しサブシステム(400)は、保持管(420)と、補給管(460)と、前記計装管(50)から取り出された前記照射ターゲット(250)を前記システムから取り出すように構成された取り出し機構(415)とを含む請求項6記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−198500(P2009−198500A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29234(P2009−29234)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(508177046)ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナージー・アメリカズ・エルエルシー (101)
【氏名又は名称原語表記】GE−HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC