説明

原子炉冷却装置

【課題】非常時に原子炉における蒸気の発生量が低下しても、原子炉の冷却機能が失われることがなく、またタービンにおけるエネルギーロスを最小限に抑えることが可能な原子炉冷却装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る原子炉冷却装置10は、原子炉2から導入される蒸気によって駆動される複数の蓄電用タービン222と、これら蓄電用タービン222の駆動によって蓄電される蓄電部21と、蓄電部21の電力によって駆動されることで原子炉2に冷却水を供給する冷却系ポンプ26と、蓄電用タービン222に導入される蒸気の流量Rを検出する流量検出部16と、流量検出部16の検出値に基づいて、複数の蓄電用タービン222の駆動台数を制御する制御部19と、を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンでポンプを駆動することによって原子炉に冷却水を供給する原子炉冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電を目的として広く用いられる沸騰水型原子炉は、核分裂反応によって生じた熱エネルギーで軽水を沸騰させ、高温且つ高圧の蒸気として取り出す原子炉である。この沸騰水型原子炉では、原子炉を冷やす冷却系統の配管が破損等して冷却水が喪失した場合でも原子炉が溶解することのないよう、原子炉の冷却を維持する必要がある。そこで、この沸騰水型原子炉には、原子炉隔離時冷却系(RCIC:Reactor Core Isolation Cooling System)と呼ばれる原子炉冷却装置が設けられる。
【0003】
この原子炉隔離時冷却系では、原子炉で取り出された蒸気がタービンに導入される。そして、タービンによって得られた動力でポンプが駆動されることにより、原子炉に対して冷却水が供給される(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−226783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の原子炉冷却装置としての原子炉隔離時冷却系では、前述のように冷却水を供給するポンプを駆動するのはタービンであって、このタービンは原子炉で発生した蒸気によって駆動される。従って、非常時に原子炉における蒸気の発生量が一定値以下になると、タービンが停止することによってポンプも停止し、これにより原子炉の冷却機能が失われるという問題が生じる。
【0006】
また、従来の原子炉冷却装置としての原子炉隔離時冷却系では、非常時に原子炉における蒸気の発生量が減少すると、タービンが熱効率の悪い領域で動作することによってエネルギーロスが大きくなるという問題がある。特に、原子炉隔離時冷却系のタービンとして大型の発電用タービンを流用している場合、タービンの熱効率が特に悪くなるため、上記エネルギーロスの問題が顕著となる。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、非常時に原子炉における蒸気の発生量が低下しても、原子炉の冷却機能が失われることがなく、またタービンにおけるエネルギーロスを最小限に抑えることが可能な原子炉冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。すなわち、本発明に係る原子炉冷却装置は、原子炉から導入される蒸気によって駆動される複数の蓄電用タービンと、これら蓄電用タービンの駆動によって蓄電される蓄電部と、前記蓄電部の電力によって駆動されることで、前記原子炉に冷却水を供給する冷却系ポンプと、前記蓄電用タービンに導入される蒸気の状態量を検出する検出部と、前記検出部の検出値に基づいて、複数の前記蓄電用タービンの駆動台数を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、通常運転時に原子炉で一定量の蒸気が発生している間に、蓄電用タービンの駆動に使用されなかった余剰の電力が蓄電部に蓄電される。そして、異常発生時に原子炉で発生する蒸気量が減少して一定量以下になると、蓄電部に蓄電された電力によって冷却系ポンプが駆動される。これにより、異常発生時においても、冷却系ポンプによって原子炉に冷却水が供給されるため、原子炉の冷却機能を維持することができる。また、蒸気の状態量に応じて制御部が蓄電用タービンの駆動台数を適切に制御するため、蓄電用タービンにおけるエネルギーのロスを最小限に抑えることができる。
【0010】
また、本発明に係る原子炉冷却装置は、前記制御部は、最大の熱効率で前記蓄電用タービンそれぞれを駆動し、且つ、残余の蒸気を廃棄するように、前記蓄電用タービンの駆動台数を制御することを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、駆動する全ての蓄電用タービンが最大の熱効率で駆動される。従って、蓄電用タービンにおけるエネルギーロスを最小限に抑えることができる。
【0012】
また、本発明に係る原子炉冷却装置は、前記制御部は、最大の熱効率で前記蓄電用タービンをそれぞれ駆動し、且つ、残余の蒸気で1台の前記蓄電用タービンを駆動するように、前記蓄電用タービンの駆動台数を制御することを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、蓄電用タービンが最大の熱効率で駆動されるため、蓄電用タービンにおけるエネルギーのロスを最小限に抑えることができる。また、残余の蒸気で1台の蓄電用タービンを駆動するので、蒸気に無駄が生じることもない。
【0014】
また、本発明に係る原子炉冷却装置は、前記制御部は、前記蓄電部への蓄電が最も早く完了するように、前記蓄電用タービンの駆動台数を制御することを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、蓄電部への蓄電中に異常が発生した場合、蓄電部にはその時点における最大の電力が蓄電されている。従って、異常が発生してから最も長い時間に亘り、冷却系ポンプを駆動して原子炉に冷却水を供給することができる。
【0016】
また、本発明に係る原子炉冷却装置は、前記蓄電用タービンそれぞれに対する蒸気の導入量を調節する流量調整弁が設けられ、前記制御部は、前記流量調整弁の動作を制御することにより前記蓄電用タービンの駆動台数を制御することを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、流量調整弁を広く開いて蒸気を多量に導入することで蓄電用タービンを駆動させる一方、流量調整弁を狭く絞って蒸気の導入量を減少させることで蓄電用タービンを停止させることができる。これにより、流量調整弁の開度を制御するのみにより、蓄電用タービンの駆動台数を容易に制御することができる。
【0018】
また、本発明に係る原子炉冷却装置は、前記蓄電用タービンそれぞれに対する蒸気の導入又は導入停止を切り替える開閉弁が設けられ、前記制御部は、前記開閉弁の動作を制御することにより前記蓄電用タービンの駆動台数を制御することを特徴とする。
【0019】
このような構成によれば、開閉弁を開放して蒸気を導入することで蓄電用タービンを駆動させる一方、開閉弁を閉止して蒸気の導入を停止することで蓄電用タービンを停止させることができる。これにより、開閉弁の開閉を制御するのみにより、蓄電用タービンの駆動台数を容易に制御することができる。
【0020】
また、本発明に係る原子炉冷却装置は、蒸気の前記状態量が、蒸気の流量であることを特徴とする。
【0021】
このような構成によれば、蒸気の状態量を容易且つ正確に計測することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る原子炉冷却装置によれば、非常時に原子炉における蒸気の発生量が低下しても、原子炉の冷却機能が失われることがなく、またタービンにおけるエネルギーロスを最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る原子炉冷却装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る制御部の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るデータベースに記憶された蓄電用タービンの特性カーブの一例を示すグラフである。
【図4】本発明の実施形態に係る制御部における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。まず、本発明の実施形態に係る原子炉冷却装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る原子炉冷却装置10を備えた原子力発電プラント1の全体構成を示す模式図である。
【0025】
原子力発電プラント1は、図1に示すように、沸騰水型原子炉2(以下、単に「原子炉2」と呼ぶ)と、主蒸気管3を介して原子炉2に接続されたメインタービン4と、原子炉2を冷却する原子炉冷却装置10とを備えるものである。
【0026】
(原子炉)
原子炉2は、図1に示すように、原子炉圧力容器5と、一対の圧力抑制室6と、これらを格納する原子炉格納容器7とを有している。
【0027】
原子炉圧力容器5は、燃料の核反応により蒸気を発生させる役割を果たすものである。この原子炉圧力容器5は、図1に詳細は示さないが、高い圧力に耐え得る鋼鉄製の容器であって、その内部には、燃料、制御棒、ジェットポンプ、気水分離器、蒸気乾燥器等が収容されている。そして、図1に示すように、この原子炉圧力容器5には、前記主蒸気管3の一端部が接続されている。
【0028】
圧力抑制室6は、異常発生時に原子炉格納容器7の内部の圧力が上昇するのを抑制する役割を果たすものである。すなわち、これら圧力抑制室6には、図1に詳細は示さないが、その内部に常時水が貯蔵されている。そして、主蒸気管3が破損等した場合、主蒸気管3から漏れ出した水蒸気が圧力抑制室6に冷却されることによって凝縮する。これにより、原子炉格納容器7の内部に水蒸気が充満することによって内部の圧力が上昇することが防止されている。
【0029】
原子炉格納容器7は、原子炉圧力容器5や各種配管等が破損した場合に放出される放射性物質を閉じ込める役割を果たすものである。この原子炉格納容器7は、図1に示すように、常時その底部に水Wが貯留した状態となっている。
【0030】
(メインタービン)
メインタービン4は、主蒸気管3を介して原子炉2から導入される蒸気によって駆動される。そして、このメインタービン4が不図示の発電機を駆動することにより、電力が得られるようになっている。
【0031】
(原子炉冷却装置)
原子炉冷却装置10は、原子炉2から全ての電力が失われたような非常時に、炉心の崩壊熱による蒸気を利用して原子炉2を冷却する役割を果たすものである。この原子炉冷却装置10は、図1に示すように、蒸気が流通する分岐蒸気管11と、この分岐蒸気管11に沿って設けられた分岐蒸気管ユニット12と、冷却水が流通する冷却水供給管13と、この冷却水供給管13ユニットに沿って設けられた冷却水供給管ユニット14とを有している。
【0032】
分岐蒸気管11は、図1に示すように、主蒸気管3から分岐して延び、その下流側端部は原子炉格納容器7の内部に導入されている。また、分岐蒸気管11は、その中間部において更に3つに分岐することにより、第一分岐蒸気管11A、第二分岐蒸気管11B、及び第三分岐蒸気管11Cを有している。一方、冷却水供給管13は、その上流側端部が復水貯蔵槽15に接続されるとともに、下流側端部は原子炉圧力容器5の内部に導入されている。
【0033】
分岐蒸気管ユニット12は、図1に示すように、分岐蒸気管11を流通する蒸気の流量(状態量)を計測する流量検出部16と、その下流側に設けられて蒸気の流量を制御する複数の蒸気制御弁17と、更にその下流側に設けられたポンプ駆動手段18と、流量検出部16の検出結果に応じてポンプ駆動手段18の動作を制御する制御部19とを有している。
【0034】
ポンプ駆動手段18は、図1に示すように、分岐蒸気管11に対して並列に接続された3個の発電部20と、発電部20それぞれが接続された1個の蓄電部21とを備えている。発電部20は、第一分岐蒸気管11Aに配置された第一発電部22と、第二分岐蒸気管11Bに配置された第二発電部23と、第三分岐蒸気管11Cに配置された第三発電部24とを備えている。
【0035】
第一発電部22は、図1に示すように、第一分岐蒸気管11Aの開度を調整する流量調整弁221と、蒸気が導入されることで駆動する蓄電用タービン222と、蓄電用タービン222によって駆動される発電機223とを有している。また、第二発電部23及び第三発電部24も同様に、流量調整弁221と、蓄電用タービン222と、発電機223とをそれぞれ有している。そして、図1に示す制御部19が、第一発電部22、第二発電部23、及び第三発電部24の流量調整弁221の動作をそれぞれ制御している。尚、図に詳細は示さないが、本実施形態の流量調整弁221に代えて、分岐蒸気管11を開放し又は閉止する開閉弁を用いることも可能である。
【0036】
このように構成されるポンプ駆動手段18によれば、第一発電部22、第二発電部23、及び第三発電部24によって発電された電力が、蓄電部21にそれぞれ蓄電される。そして、この蓄電部21の電力が供給されることにより、後述する冷却水供給管ユニット14を構成する冷却系ポンプ26が駆動するようになっている。
【0037】
冷却水供給管ユニット14は、図1に示すように、前記復水貯蔵槽15と、冷却水の流量を制御する冷却水制御弁25と、その下流側に設けられた冷却系ポンプ26とを有している。ここで、復水貯蔵槽15には、メインタービン4を駆動させた後の蒸気を冷却して水に戻した復水が、原子炉2の冷却水として貯蔵されている。また、冷却系ポンプ26は、前記ポンプ駆動手段18を構成する蓄電部21によって駆動される。これにより、この冷却系ポンプ26が、冷却水供給管13を介して復水貯蔵槽15から冷却水を汲み上げ、原子炉圧力容器5の内部へ冷却水を注入する。
【0038】
(制御部)
制御部19は、複数の蓄電用タービン222の駆動台数を制御する役割を果たすものである。この制御部19は、図1に示すように、流量検出部16に対して電気的に接続されている。また、制御部19は、第一発電部22から第三発電部24を構成する流量調整弁221に対しても、それぞれ電気的に接続されている。これにより、制御部19は、流量検出部16から入力された検出結果に基づいて、第一発電部22から第三発電部24の流量調整弁221に対してその動作を制御する電気信号をそれぞれ出力する。すなわち、制御部19は、駆動しようとする蓄電用タービン222については、流量調整弁221の開度を上げて蒸気の導入量を増加させる。一方、制御部19は、駆動を停止させようとする蓄電用タービン222については、流量調整弁221の開度を下げて蒸気の導入量を減少させる。これにより、制御部19は、分岐蒸気管11における蒸気の流量に応じて、蓄電用タービン222の駆動台数を任意に制御することが可能となっている。
【0039】
次に、本発明の実施形態に係る原子炉冷却装置10の機能構成について説明する。図2は、制御部19の機能構成を示す機能ブロック図である。制御部19は、流量検出部16から検出結果を受け付ける入力受付部191と、受け付けた検出結果をデータベース192に予め記憶した閾値と比較してその大小を判断する判断部193と、判断結果に応じて第一発電部22から第三発電部24の流量調整弁221に対して動作を制御する信号をそれぞれ出力する出力部194とを有している。
【0040】
ここで、データベース192には、蓄電用タービン222の熱効率の特性が予め記憶されている。図3は、データベース192に記憶された蓄電用タービン222の特性カーブの一例を示すグラフであって、横軸が蓄電用タービン222に導入される蒸気の流量を、縦軸が蓄電用タービン222の熱効率をそれぞれ示している。この図によれば、蓄電用タービン222は、蒸気の流量が閾値Xの時に熱効率が最大となる、すなわちエネルギーロスが最小となる。そして、蓄電用タービン222は、蒸気の流量が閾値Xより小さくなるに連れて熱効率が徐々に低下する。同様に、蓄電用タービン222は、蒸気の流量が閾値Xより大きくなるに連れて熱効率が徐々に低下する。
【0041】
次に、本発明の実施形態に係る原子炉冷却装置10の処理の流れについて説明する。図4は、制御部19における処理の流れを示すフローチャートである。まず制御部19は、流量検出部16を制御することにより、分岐蒸気管11における蒸気の流量Rを取得する(S1)。そして制御部19は、取得した蒸気の流量Rと、データベース192に予め記憶した閾値X(図3に示す)との大小関係を比較する(S2)。
【0042】
その結果、流量Rが閾値Xの2倍より小さい場合(R<2X)、制御部19は、3台の蓄電用タービン222のうち1台だけを駆動する(S3)。すなわち制御部19は、1台の蓄電用タービン222に対応する流量調整弁221の開度を上げることにより、この蓄電用タービン222に対して閾値Xの流量で蒸気を導入する。一方、制御部19は、残りの2台の蓄電用タービン222に対応する流量調整弁221の開度をそれぞれ下げることにより、これら蓄電用タービン222に対する蒸気の導入をそれぞれ停止する。これにより、1台の蓄電用タービン222が最大の熱効率で駆動し、残りの2台の蓄電用タービン222が停止する。
【0043】
また、S2における比較の結果、蒸気の流量Rが閾値Xの2倍以上であって3倍より小さい場合(2X≦R<3X)、制御部19は、3台の蓄電用タービン222のうち2台だけを駆動する(S4)。すなわち制御部19は、2台の蓄電用タービン222に対応する流量調整弁221の開度を上げることにより、これら蓄電用タービン222に対して閾値Xの流量で蒸気をそれぞれ導入する。一方、制御部19は、残りの1台の蓄電用タービン222に対応する流量調整弁221の開度を下げることにより、この蓄電用タービン222に対する蒸気の導入を停止する。これにより、2台の蓄電用タービン222が最大の熱効率でそれぞれ駆動し、残りの1台の蓄電用タービン222が停止する。
【0044】
また、S2における比較の結果、蒸気の流量Rが閾値Xの3倍より大きい場合(R>3X)、制御部19は、3台の蓄電用タービン222を全て駆動する(S5)。すなわち制御部19は、3台全ての蓄電用タービン222に対応する流量調整弁221の開度をそれぞれ上げることにより、これら蓄電用タービン222に対して閾値Xの流量で蒸気をそれぞれ導入する。これにより、3台全ての蓄電用タービン222が最大の熱効率でそれぞれ駆動する。
【0045】
最後に、制御部19は、蓄電用タービン222に導入した蒸気以外の残余の蒸気を廃棄する(S6)。以上により、制御部19による処理が終了する。尚、本実施形態のように残余の蒸気を廃棄することに代えて、残余の蒸気を用いて他の蓄電用タービン222を駆動してもよい。この場合、残余の蒸気で駆動する蓄電用タービン222では熱効率が最大とならないためエネルギーロスが生じるが、残余の蒸気を廃棄することなく利用するので蒸気に無駄が生じないという利点がある。
【0046】
このような制御部19による処理によれば、駆動する全ての蓄電用タービン222が最大の熱効率で駆動される。従って、蓄電用タービン222におけるエネルギーロスを最小限に抑えることができる。また、蓄電部21に電力を供給する発電部20が冗長化されているため、何れかの発電部20で故障等が発生した場合には当該発電部20だけを停止させ、他の発電部20を用いて蓄電部21に対する蓄電を継続することができる。これにより、原子炉冷却装置10の信頼性を向上させることができる。尚、前述のように流量調整弁221に代えて開閉弁を用いる場合には、開閉弁を開放した時に閾値Xの流量で蓄電用タービン222に蒸気が導入されるようにすればよい。
【0047】
尚、本実施形態では、蓄電用タービン222がそれぞれ最大の熱効率で駆動するように、蓄電用タービン222の駆動台数を決定した。しかし、これに代えて、例えば蓄電部21への蓄電が最も早く完了するように蓄電用タービン222の駆動台数を決定してもよい。すなわち、第一発電部22、第二発電部23、及び第三発電部24による単位時間当たりの発電量の合計が最大となるように、蓄電用タービン222の駆動台数を決定してもよい。このようにすれば、蓄電部21への蓄電中に異常が発生した場合、蓄電部21にはその時点における最大の電力が蓄電されている。従って、異常が発生してから最も長い時間に亘り、冷却系ポンプ26を駆動して原子炉2に冷却水を供給することができる。
【0048】
また、蓄電用タービン222の駆動台数を決定する他の手段としては、原子炉2で発生する蒸気を全ての蓄電用タービン222に対して均等に導入するように駆動代数を決定してもよい。このようにすれば、制御部19による流量調整弁221の制御を簡略化することができるという利点がある。
【0049】
(変形例)
尚、以上説明した本実施形態では、蓄電用タービン222を駆動するための作動流体として、非常時に原子炉2で発生する水蒸気を用いたが、これに代えて、水より沸点の低い低沸点媒体を作動流体として用いることも可能である。この低沸点媒体としては、例えば沸点が36℃程度であるペンタンを用いることができる。これによれば、作動流体として水蒸気を用いる場合と比較して低温でも蒸気量が減少しにくいため、より低い温度まで蓄電用タービン222を駆動することができる。具体的には、作動流体が水蒸気の場合よりも60℃程度低い温度領域まで、原子炉冷却装置10の運転が可能となる。
【0050】
また、本実施形態では、ポンプ駆動手段18を3個の発電部20で構成したが、発電部20の数はこれに限られず任意に変更が可能である。また、本実施形態では3個の発電部20に対して共通の蓄電部21を1個だけ設けたが、蓄電部21の数はこれに限られず、発電部20ごとに蓄電部21を別々に設けてもよい。また、本実施形態では蒸気の流量に応じて蓄電用タービン222の駆動台数を決定した。しかし、本発明に係る蒸気の状態量としては、蒸気の流量に限定されず、蒸気の圧力等を採用してもよい。
【0051】
尚、上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ、或いは動作手順等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 原子力発電プラント
2 原子炉
3 主蒸気管
4 メインタービン
5 原子炉圧力容器
6 圧力抑制室
7 原子炉格納容器
10 原子炉冷却装置
11 分岐蒸気管
11A 第一分岐蒸気管
11B 第二分岐蒸気管
11C 第三分岐蒸気管
12 分岐蒸気管ユニット
13 冷却水供給管
14 冷却水供給管ユニット
15 復水貯蔵槽
16 流量検出部
17 蒸気制御弁
18 ポンプ駆動手段
19 制御部
191 入力受付部
192 データベース
193 判断部
194 出力部
20 発電部
21 蓄電部
22 第一発電部
221 流量調整弁
222 蓄電用タービン
223 発電機
23 第二発電部
24 第三発電部
25 冷却水制御弁
26 冷却系ポンプ
R 流量
W 水
X 閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉から導入される蒸気によって駆動される複数の蓄電用タービンと、
これら蓄電用タービンの駆動によって蓄電される蓄電部と、
前記蓄電部の電力によって駆動されることで、前記原子炉に冷却水を供給する冷却系ポンプと、
前記蓄電用タービンに導入される蒸気の状態量を検出する検出部と、
前記検出部の検出値に基づいて、複数の前記蓄電用タービンの駆動台数を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする原子炉冷却装置。
【請求項2】
前記制御部は、最大の熱効率で前記蓄電用タービンそれぞれを駆動し、且つ、残余の蒸気を廃棄するように、前記蓄電用タービンの駆動台数を制御することを特徴とする請求項1に記載の原子炉冷却装置。
【請求項3】
前記制御部は、最大の熱効率で前記蓄電用タービンをそれぞれ駆動し、且つ、残余の蒸気で1台の前記蓄電用タービンを駆動するように、前記蓄電用タービンの駆動台数を制御することを特徴とする請求項1に記載の原子炉冷却装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記蓄電部への蓄電が最も早く完了するように、前記蓄電用タービンの駆動台数を制御することを特徴とする請求項1に記載の原子炉冷却装置。
【請求項5】
前記蓄電用タービンそれぞれに対する蒸気の導入量を調節する流量調整弁が設けられ、前記制御部は、前記流量調整弁の動作を制御することにより前記蓄電用タービンの駆動台数を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の原子炉冷却装置。
【請求項6】
前記蓄電用タービンそれぞれに対する蒸気の導入又は導入停止を切り替える開閉弁が設けられ、前記制御部は、前記開閉弁の動作を制御することにより前記蓄電用タービンの駆動台数を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の原子炉冷却装置。
【請求項7】
蒸気の前記状態量が、蒸気の流量であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の原子炉冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−113772(P2013−113772A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261891(P2011−261891)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)