説明

原子炉撤去工法

【課題】本発明は、原子炉建屋内で解体された解体物を、原子炉建屋から保管施設に効率よく移送することができる原子炉撤去工法を提供する。
【解決手段】本発明によれば、原子力発電所設備に建設された原子炉建屋100とタービン建屋9とは、既存のメインスチームトンネル(トンネル)10によって直結されており、このメインスチームトンネル10を、原子炉建屋100に格納された原子炉圧力容器2の解体時の搬出用通路として利用し、メインスチームトンネル10を介して解体物をタービン建屋9に移送して保管する。このように、既存のメインスチームトンネル10を解体物の搬出用通路として利用することにより、作業者は第1クルーの作業者のみで足りるので、作業者人員を大幅に削減することができる。また、搬出作業、搬送作業、保管作業という一連の作業も第1クルーの作業者のみで実施できるため、原子炉建屋100からタービン建屋9に解体物を効率よく移送することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原子炉撤去工法に係り、特に原子炉建屋内で解体された解体物を保管施設に効率よく移送するための原子炉撤去工法に関する。
【背景技術】
【0002】
図4には、沸騰水(Boiling Water Reactor )型原子力発電所設備の概略構造図が示されている。沸騰水型の原子炉格納容器1は、発電用軽水型原子炉の工学的安全施設の一つである原子炉格納施設の一部であり、原子炉圧力容器2、主蒸気系配管3、給水系配管4及びサプレッションプール5等の関連設備を格納する気密性の高い建屋である。この原子炉格納容器1は、原子炉冷却材喪失事故等に起因して原子炉内の燃料から放射性物質の放散が生じた場合、環境に対する圧力障壁及び放射性物質の放散に対する障壁の役目を果たし、発電所周辺の一般公衆及び発電所従業員の安全を確保する。同設備において、符号6は主蒸気系配管3からの蒸気によって回転されるタービン、符号7はタービン6とともに回転するロータを備えた発電機、符号8は復水器であり、この復水器8によって気液処理された水が給水系配管4を介して原子炉圧力容器2に戻される。タービン6、発電機7、及び復水器8はタービン建屋9に格納されており、このタービン建屋9も原子炉格納容器1と同様に気密性の高い建屋である。また、主蒸気系配管3、及び給水系配管4は、原子炉建屋100とタービン建屋9とを接続する気密性の高いメインスチームトンネル10に配設されている。
【0003】
沸騰水型の原子炉格納容器1の形式としては、Mark−I型とMark−II型及びこれらの改良型があるが、いずれも流出した原子炉冷却水を原子炉格納容器1内のサプレッションプール5に流出させて凝縮させる圧力抑制方式が採用されている。また、Mark−II型の改良型原子炉格納容器1は、原子炉圧力容器2及び給水系配管4を取り込む鋼製のドライウェル11と圧力抑制室12とがダイヤフラムフロア13を介して区画構成されている。また、圧力抑制室12はサプレッションプール5とドライウェル11とを連結する多数本のベント管14から構成される。図4の原子炉格納容器1は模式的に示したものであり、実際のMark−II型の改良型原子炉格納容器とは構造が若干異なる。
【0004】
ところで、原子力発電所等の原子炉設備では、運転の使命を終了すると廃止措置がとられる。この廃止措置は系統除染、安全貯蔵、解体撤去の順で行われる。安全貯蔵では、設備の放射線レベルが所定の値に減衰するまで(約5年〜10年)貯蔵され、この後、配管や機器類を解体するとともに、重量物である原子炉圧力容器を解体しこれを細分化して原子炉建屋から撤去する解体撤去作業が行われる。解体物の撤去作業においては、原子炉建屋内で解体物を放射線遮蔽容器に収納し、これを例えば、タービン建屋、又は放射線管理建屋等の保管設備に移送して一時保管する。この後、放射線遮蔽容器を、船舶により所定の場所に運搬して地中に埋設処理する。
【0005】
原子炉撤去工法としては、特許文献1に開示されているように、原子炉圧力容器を複数の部分に分割し、各分割体に遮蔽密閉処理を施した後、天井クレーン等の揚重装置を用いて各分割体を原子炉建屋外に順次搬出することが従来から知られている。
【0006】
解体した各分割体を原子炉建屋外に搬出する特許文献1において、各分割体を保管施設である例えばタービン建屋に保管する場合、図5に示すような作業が行われる。すなわち、原子炉建屋100内には、放射線防護服をまとった第1クルーの作業者(監視員、作業管理員、放射線管理員、誘導員、運転手等)20、20…が原子炉圧力容器の解体作業に従事し、また、原子炉建屋100の外には、搬出された各分割体21、21…をタービン建屋9の入口22まで移送する第2クルーの作業者(原子炉建屋内の作業者と同様)23、23…が従事し、更に、タービン建屋9内には、各分割体21、21…をタービン建屋9内に保管する第3クルーの作業者(原子炉建屋内の作業者と同様)24、24…が従事している。
【0007】
原子炉建屋100内の第1クルーの作業者20、20…は、各分割体21、21…をトラック25に乗載し、これを原子炉建屋100の負圧管理された二重扉構造の出口26を介して原子炉建屋100外まで搬出する。ここで作業が第2クルーの作業者23、23…に交代し、第2クルーの作業者23、23…が、周囲を監視しながらトラック25を施設構内で走行させてタービン建屋9の入口22に移送する。そして、ここで作業が第3クルーの作業者24、24…に交代し、第3クルーの作業者24、24…が分割体21、21…をタービン建屋9内の保管位置にクレーン27等で移送して保管する。このように、特許文献1の原子炉撤去工法では、第1〜第3クルーの多数の作業者を必要とする。
【特許文献1】特開2004−77148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の如く、上述の従来の原子炉撤去工法では、多数の作業者を要し、かつ、搬出作業、移送作業、保管作業という一連の作業の流れにおいて、作業者がその都度交代するため、撤去作業に時間がかかり効率が悪いという欠点があった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、原子炉建屋内で解体された解体物を、原子炉建屋から保管施設に効率よく移送することができる原子炉撤去工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、前記目的を達成するために、原子力発電所設備に建設された原子炉建屋とタービン建屋とを直結するトンネルを、前記原子炉建屋に格納された原子炉圧力容器の解体時の搬出用通路として利用し、前記トンネルを介して解体物を前記タービン建屋に移送して保管することを特徴としている。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、原子炉建屋とタービン建屋とを直結する既存のトンネルを、原子炉圧力容器の解体時の搬出用通路として利用し、このトンネルを介して解体物をタービン建屋に移送して保管する。このように、既存のトンネルを解体物の搬出用通路として利用することにより、作業者は第1クルーの作業者のみで足りるので、作業者人員を大幅に削減でき、また、搬出作業、移送作業、保管作業という一連の作業も第1クルーの作業者のみで実施できるため、原子炉建屋から保管施設に解体物を効率よく移送し保管することができる。
【0012】
請求項2に記載の方法発明は、請求項1において、前記トンネルは、前記原子炉建屋内の原子炉圧力容器と前記タービン建屋のタービンとに接続された主蒸気系配管及び給水系配管が配設されるメインスチームトンネルであることを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、原子炉建屋内の原子炉圧力容器とタービン建屋のタービンとに接続された主蒸気系配管及び給水系配管が配設される既存のメインスチームトンネルを、前記トンネルとして利用することが好ましい。このメインスチームトンネルは、原子炉建屋、タービン建屋と同様に気密性の高い建造物であるので、原子炉の解体物搬出用トンネルとして好適である。
【0014】
請求項3に記載の方法発明は、請求項2において、前記メインスチームトンネルは、該メインスチームトンネル内の開口部が形成された隔壁を撤去するとともに、該メインスチームトンネル内の床の高さを、高さ調整部材によって原子炉建屋の床高さに合わせた後、該床にレールを敷設することにより前記搬出用通路として使用されることを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、メインスチームトンネルを解体物搬送用のトンネルとして使用する場合には、まず、主蒸気系配管及び給水系配管が配設される開口部が形成された隔壁を撤去して、トンネルを搬出用として十分な広さ、長さに拡張し、次に、メインスチームトンネル内の床の高さを、高さ調整部材により原子炉建屋の床高さに合わせ、この床にレールを敷設して、解体物搬出用通路として使用することが好ましい。レール上で搬出用台車を走行させることにより、解体物をより効率よく移送することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記目的を達成するために、原子力発電所設備に建設された原子炉建屋と保管施設とをトンネルで直結し、前記原子炉建屋に格納された原子炉圧力容器の解体時の搬出用通路として前記トンネルを利用し、該トンネルを介して解体物を前記保管施設に移送して保管することを特徴としている。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、原子炉建屋と保管施設とをトンネルで直結し、このトンネルを解体物の搬出用通路として使用する。これにより、作業者は第1クルーの作業者のみで足りるので、作業者人員を大幅に削減でき、また、搬出作業、移送作業、保管作業という一連の作業も第1クルーの作業者のみで実施できるため、原子炉建屋から保管施設に解体物を効率よく移送し保管することができる。請求項4のトンネルは、メインスチームトンネル以外の既存のトンネルでもよく、また、新たに建設したトンネルでもよい。また、保管施設としては、タービン建屋以外の例えば放射線管理建屋を例示できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る原子炉撤去工法によれば、原子炉建屋とタービン建屋とを直結するトンネルを、原子炉圧力容器の解体時の搬出用通路として利用し、このトンネルを介して解体物をタービン建屋に移送して保管するようにした。これにより、本発明によれば、作業者は第1クルーの作業者のみで足りるので、作業者人員を大幅に削減でき、また、搬出作業、移送作業、保管作業という一連の作業も第1クルーの作業者のみで実施できるので、原子炉建屋からタービン建屋等の保管施設に解体物を効率よく移送し保管することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下添付図面に従って、本発明に係る原子炉撤去工法の好ましい実施の形態について詳説する。
【0020】
図1は、沸騰水型原子力発電所設備の要部拡大断面図、図2は図1に示した沸騰水型原子力発電所設備の平面図であり、図4、図5に示した図と同一又は類似の部材については同一の符号を付して説明する。
【0021】
図1の如く、原子力発電所設備に建設された原子炉建屋100とタービン建屋9とは、既存のメインスチームトンネル(トンネル)10によって直結されている。本発明では、このメインスチームトンネル10を、原子炉建屋100に格納された原子炉圧力容器の解体時の搬出用通路として利用し、メインスチームトンネル10を介して解体物をタービン建屋9に移送して保管する。このように、既存のメインスチームトンネル10を解体物の搬出用通路として利用することにより、作業者は第1クルーの作業者(図5参照)のみで足りるので、作業者人員を大幅に削減することができる。また、搬出作業、移送作業、保管作業という一連の作業も第1クルーの作業者のみで実施できるため、原子炉建屋100からタービン建屋9に解体物を効率よく移送(図2の矢印A方向)し保管することができる。
【0022】
メインスチームトンネル10は、原子炉建屋100内の原子炉圧力容器2とタービン建屋9のタービンとに接続された主蒸気系配管3及び給水系配管4が配設される既存のトンネルであり、このメインスチームトンネル10は、原子炉建屋100、タービン建屋9と同様に気密性の高い建造物であるので、原子炉の解体物搬出用トンネルとして好適である。
【0023】
一方で、メインスチームトンネル10を解体物搬出用のトンネルとして使用する場合には、まず、メインスチームトンネル10内において、主蒸気系配管3及び給水系配管4が配設される開口部30、32が形成された隔壁34を撤去して、メインスチームトンネル10を搬出用として十分な広さ、長さに拡張する。次に、図3の如くメインスチームトンネル10内の床の高さL1を、高さ調整部材36により原子炉建屋100の床高さL2に合わせ、高さが等しくなった床上にレール38を敷設することが好ましい。このレール38は、原子炉建屋100内からメインスチームトンネル10を介してタービン建屋9内の保管場所まで配設されており、レール38上で搬出用台車40を走行させることにより、解体物を収容した遮蔽容器42を搬出用台車40によって効率よくタービン建屋9の保管場所まで移送することができる。なお、メインスチームトンネル10内で搬送用台車40を走行させる場合には、タービン建屋9の天井にモノレール44を敷設するとともに、モノレール44を走行する滑車46、46を取り付け、この滑車46と遮蔽容器42とをチェーンブロック48によって連結した状態で搬送することが好ましい。
【0024】
前述した実施の形態では、解体物搬出用通路として既存のメインスチームトンネル10を利用した例について説明したが、これに限定されるものではなく、図2の二点鎖線で示すように、原子炉建屋100とタービン建屋9とをトンネル50で直結し、このトンネル50を解体物の搬出用通路して使用してもよい。これにより、作業者は第1クルーの作業者のみで足りるので、作業者人員を大幅に削減でき、また、搬出作業、移送作業、保管作業という一連の作業も第1クルーの作業者のみで実施できるため、原子炉建屋100から保管施設に解体物(遮蔽容器42)を効率よく移送し保管することができる。このトンネル50は、メインスチームトンネル10以外のトンネルであり、既存のものでもよく、また、新たに建設したトンネルでもよい。また、メインスチームトンネル10に接続される新たなトンネルBを図2の如く建設してもよい。更に、保管施設としては、タービン建屋9以外の例えば放射線管理建屋であってもよいので、原子炉建屋100と放射線管理建屋とをトンネル50によって直結し、放射線管理建屋を解体物(遮蔽容器42)の保管用施設として利用してもよい。
【0025】
また、実施の形態では、沸騰水型原子力発電所設備について説明したが、加圧水型原子力発電所設備においても同様であり、この設備においてもメインスチームトンネルを解体物搬出用のトンネルとして利用すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】沸騰水型原子力発電所設備の構造を示した要部拡大断面図
【図2】図1に示した沸騰水型原子力発電所設備の概略平面図
【図3】メインスチームトンネルを解体物搬出用通路として使用した説明図
【図4】原子炉建屋を模式的に示した説明図
【図5】原子炉分割体を保管施設であるタービン建屋に保管する場合の作業状況を示した説明図
【符号の説明】
【0027】
1…沸騰水型の原子炉格納容器、2…原子炉圧力容器、3…主蒸気系配管、4…給水系配管、5…サプレッションプール、6…タービン、7…発電機、8…復水器、9…タービン建屋、10…メインスチームトンネル、11…ドライウェル、12…圧力抑制室、13…ダイヤフラムフロア、14…ベント管、20…第1クルーの作業者、21…分割体、22…タービン建屋の入口、23…第2のクルーの作業者、24…第3クルーの作業者、25…トラック、26…原子炉建屋の出口、27…クレーン、30、32…開口部、34…隔壁、36…高さ調整部材、38…レール、40…搬出用台車、42…遮蔽容器、44…モノレール、46…滑車、48…チェーンブロック、50…トンネル、100…原子炉建屋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電所設備に建設された原子炉建屋とタービン建屋とを直結するトンネルを、前記原子炉建屋に格納された原子炉圧力容器の解体時の搬出用通路として利用し、前記トンネルを介して解体物を前記タービン建屋に移送して保管することを特徴とする原子炉撤去工法。
【請求項2】
前記トンネルは、前記原子炉建屋内の原子炉圧力容器と前記タービン建屋のタービンとに接続された主蒸気系配管及び給水系配管が配設されるメインスチームトンネルであることを特徴とする請求項1に記載の原子炉撤去工法。
【請求項3】
前記メインスチームトンネルは、該メインスチームトンネル内の開口部が形成された隔壁を撤去するとともに、該メインスチームトンネル内の床の高さを、高さ調整部材によって原子炉建屋の床高さに合わせた後、該床にレールを敷設することにより前記搬出用通路として使用されることを特徴とする請求項2に記載の原子炉撤去工法。
【請求項4】
原子力発電所設備に建設された原子炉建屋と保管施設とをトンネルで直結し、前記原子炉建屋に格納された原子炉圧力容器の解体時の搬出用通路として前記トンネルを利用し、該トンネルを介して解体物を前記保管施設に移送して保管することを特徴とする原子炉撤去工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−309703(P2008−309703A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159035(P2007−159035)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000230940)日本原子力発電株式会社 (130)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三