説明

原子炉炉心をモデル化する方法及び対応するコンピュータプログラム製品

【課題】本発明は、より高い収束精度、よりよい計算エラー強さ及びより高い計算効率を示す原子炉モデル化方法を提供する。
【解決手段】原子炉炉心をモデル化するための方法であって、コンピュータで実行される計算のための格子(12)のノードを構成するために炉心を立方体(10)に分割するステップと、中性子束を、少なくとも1つの固有系の反復解手順を用いることによって計算するステップとを含み、固有系の反復の成分は、計算されるべきそれぞれの立方体(10)についての、中性子束、中性子アウトカレント或るいは中性子インカレントのいずれかに対応する。制御パラメータは、中性子固有値μを摂動界面カレント方程式によって影響を与え且つ中性子固有値μを1に向って推進させるように変えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉の炉心をモデル化する方法、特に炉心内の中性子束を計算する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのようなモデル化方法の結果は、原子炉を建設し且つ始動する前に安全解析レポートを準備するために用いることができる。
【0003】
これらの結果は、また、既存の原子炉に及び特に原子炉に装填された核燃料を管理するために有用である。特に、これらの結果は、いったい炉心設計がどのように発展すべきか又、炉心内の燃料集合体の位置、特に炉心内に導入されるべき新しい燃料集合体の位置をどのように決定すべきかを評価するために用いることが出来る。
【0004】
そのようなモデル化方法は、コンピュータ計算によって実行される。この目的のために、炉心は、立方体に分割され、各立方体はデジタル計算を実行するための格子のノードを構成する。
【0005】
通常、そのようなデジタル計算中に解かれるべき定常状態拡散方程式は、
【数1】

(1)
【数2】

(2)
になる。
【0006】
ここに、λは第1中性子固有値であり、mは、ノードインデックスとも呼ばれる、立方体インデックスであり、Gは中性子エネルギー群の数であり、g、g’は中性子エネルギー群インデックスであり、uは立方体のデカルト軸インデックスであり、Σagm は、立方体mとエネルギー群gの巨視的吸収断面積を表し、Σfg'mは、立方体mとエネルギー群g’の巨視的分裂断面積を表し、Σgg'mは立方体mとエネルギー群gの巨視的減速断面積を表し、Φgmは中性子束を表し、ΣRgm,Φgmは対応する核反応(吸収、分裂)の反応率を表し、νは分裂毎に生ずる中性子の数であり、Xg は分裂から現れ、中性子エネルギーgでの分裂から出てくる中性子の関数であり、aumはデカルト軸uに沿う立方体mの幅であり、中性子アウトカレントjgul-mと jgur+m、中性子束Φgm及び中性子インカレントjgul+m と jgur-mの間の関係は、次式によって定義される。
【数3】

(3)
【0007】
i=1, 2, 3で係数 cigumは、立方体mの特徴であり、且つノードの次元と巨視的断面積Σmに基づいている。
【0008】
図1は、u=x,y及びzについて中性子インカレント jgul+mとjgur-m;u=x,y及びzについて中性子アウトカレントjgul-mと jgur+m;及び中性子束Φgmを示す立方体mの2次元での概略図である。インデックスlは、それぞれのデカルト軸線x,yについて立方体mの各左界面を、又rはそれぞれの各右界面を示す。インデックス+は、それぞれのデカルト軸線x,yについて左から右の向きを、又インデックス-は、それぞれに右から左への向きを表す。
【0009】
定常状態拡散方程式(1)は、また、ノード展開法方程式に関してNEM方程式と名づけられる。
【0010】
従来技術の方法では、計算努力のほとんどは、定常状態拡散方程式(1)に対応する大きな固有系の反復解にささげる部分に集中されている。
【0011】
これらの計算努力をより少なくし、従って、固有系の解を加速させるために、粗メッシュ再平衡(Coarse Mesh Rebalancing :CMR)手順が用いられる。これらの手順では、与えられた反復のための中性子束及びカレントに、続く計算的に費用のかかる反復を追及する前に、補正因子を乗じる。乗法的補正は、正確な値λexactに近い第1中性子固有値λを有する固有スペクトルの非基本波長部分の存在を抑制するのに役立つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、このやり方で実現される加速効果は、全炉心拡散レベルまで多レベル階層内のもっとも高い粗いメッシュレベルの数値近接に依存する。従って、そのようなCMR手順は、大変ゆっくりな収束又は収束のよどみすらもたらし、かくして、計算努力を増大させる。
【0013】
本発明の目標は、より高い収束精度、よりよい計算エラー強さ及びより高い計算効率を提供する原子炉モデル化方法を提供することによって上述の問題を解決することであり、そのため、関係する中性子束計算を、短い計算時間内に且つとてもよい収束精度で得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的のために、本発明は、請求項1に記載の方法に関する。
【0015】
特定の実施形態では、本方法は、単独で又は組合せて取られる請求項2乃至10の特徴を含むのがよい。
【0016】
本発明は、また、請求項11に記載のコンピュータープログラム製品に関する。
【0017】
本発明は、単に例示によって与えられ且つ添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むときによりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】モデル化された原子炉炉心内のマクロ断面積、中性子インカレント、中性子束、中性子アウトカレントの間の関係の古典的表示である。
【図2】本発明の1つの側面による、原子炉炉心の分割及び立方体の界面と推進因子の関連を示す概略図である。
【図3】図2の立方体を出る中性子アウトカレントの等方性及び異方性部分の分解概略図である。
【図4】本発明の他の側面による反復解法処理からの多レベルVサイクルの概略図である。
【図5】図4のボックスVの詳細な図である。
【図6】本発明の他の側面による原子炉炉心の分割を示す概略図である。
【図7】従来技術方法及び本発明による方法の異なる側面毎に1組の固有系反復解処理の1組の収束曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の説明では、加圧水型原子炉(PWR)の場合が考えられるが、本発明を他のタイプの原子炉に適用することも心に留めておくべきである。
【0020】
本発明によるコンピュータ実行モデル化方法の第1ステップでは、原子炉の炉心が、従来技術の状態におけるように(図2に示す)立方体10に分割される。各立方体10は、数値計算がコンピュータにより実行される格子或いはネットワーク12のノードに対応する。
【0021】
表示を簡単にするために、実際には、3次元であることを心に留めておくべきである。
【0022】
(図2の中心の)立方体インデックスmを有する立方体10の隣りは、それぞれの立方体インデックス m’1(m)、m’2(m)、m’3(m)及びm’4(m)をつけた立方体10である。以下の詳細な説明では、立方体10を、立方体のそれぞれの立方体インデックスによって直接示す。
【0023】
本発明によるコンピュータ実行モデル化方法の第2ステップでは、炉心内の中性子束Φgm は、定常状態拡散方程式(1)に対応する固有系の解によって計算される。この目的のために、反復解手順が用いられる。
【0024】
除去演算子


非散乱演算子

、生成演算子

、インカレント演算子

が方程式(1)から、
【数4】

(4)
によって、定義される。
【0025】
等方性アウトカレント世代演算子

及び単方向性カレント貫流演算子

は、
【数5】

(5)
によって定義される。
【0026】
結合演算子

は、隣接する立方体10についてアウトカレントをインカレントに結合し、
【数6】

(6)
によって定義される。
【0027】
この結合演算子

は、例えば、立方体mについて、u方向左向きアウトカレントが、デカルト軸uの方向における左隣りのu方向左向きインカレントと等しく、又同様の等式が他の方向及び向きについて確かめられている事実を用いる。例えば、図2に示す隣りm’1(m)、m’2(m)、m’3(m)、m’4(m)が、それぞれ、方程式(6)のデカルト軸yの隣り(m+1)、デカルト軸xの隣り(m-1)、デカルト軸xの隣り(m+1)、デカルト軸yの隣り(m-1)であるとき、それぞれの隣りm’1(m)、m’2(m)、m’3(m)、m’4(m)から立方体mに至る中性子アウトカレントは、立方体mに向かう中性子インカレントである。
【0028】
上記の演算子を用いると、方程式(1)及び(2)は
【数7】

(7)
と書かれ、
又は解かれるべき固有系である、
【数8】

と書かれる。
【0029】
方程式(8)では、Φは中性子束縦ベクトルであり、各要素は、それぞれの立方体mに対し且つそれぞれのエネルギー群gに対する中性子束Φgmである(図1)。かくして、中性子束縦ベクトルΦの次元は、(GxM, 1)に等しく、ここに、Gはエネルギー群の数、Mは立方体10の数である。 j(out) は、中性子アウトカレント縦ベクトルであり、各要素は、それぞれの立方体m、エネルギー群g及びuがx, y或いはzに等しいデカルト軸uについての、それぞれの中性子アウトカレント jgul-m, jgur+m,である。 j(in)は、中性子インカレント縦ベクトルであり、各要素は、それぞれの立方体m、エネルギー群g、デカルト軸uについての、それぞれの中性子インカレント jgul+m, jgur-mである。かくして、中性子アウトカレント縦ベクトル j(out)及び中性子インカレント縦ベクトルj(in)の次元は(6xGxM, 1)に等しい。以下の説明では、中性子アウトカレント縦ベクトル j(out) は、また、 joutと記載される。
【0030】
かくして、式(8)によって定義される固有系の反復 (Φ, j(out), j(in))の成分は、立方体m毎に及びエネルギー群g毎に計算されるべき中性子束Φgm、中性子アウトカレント jgul-m, jgur+m、及び中性子インカレント jgul+m, jgur-mに対応し、これは、中性子束縦ベクトルΦ、中性子アウトカレント縦ベクトルj(out)及び中性子インカレント縦ベクトル j(in)のそれぞれの要素である。
【0031】
反復解処理は、固有系を予備の固有系に調節するサブステップを含み、予備の固有系の反復の成分(j(out), j(in))は、中性子アウトカレント縦ベクトルj(out)及び中性子インカレント縦ベクトル j(in)のそれぞれの要素である、それぞれの立方体mに至る中性子インカレント jgul+m, jgur-m、或いはそれぞれの立方体mから来る中性子アウトカレント jgul-m, jgur+mの何れかにのみ対応する。
【0032】
予備の固有系への固有系の調整は
【数9】

と書かれる方程式(8)の第1部分を変形することから始まる。
【0033】
シンボリック演算子

を定義すると、中性子束縦ベクトルΦは、中性子インカレント縦ベクトル j(in) の関数で
【数10】

(10)
と表される。
【0034】
この式を式7のアウトカレント平衡部分に、すなわち方程式8の第2部分に代入することによって、カレントのみの関係が得られる。
【数11】

(11)
【0035】
次の演算子記号を定義した後に
【数12】

(12)
及び
【数13】

(13)
【0036】
カレントのみの関係は、スペア固有系である、
【数14】

(14)
と書かれる。
【0037】
中性子アウトカレント縦ベクトルj(out)と中性子インカレント縦ベクトルj(in)の間の関係

(ここに

は結合演算子である。)を用いると、スペア固有系が、スペア固有系の反復の成分(j(out)) が、中性子アウトカレント縦ベクトル j(out)の要素である、それぞれの立方体mから来る中性子アウトカレントjgul-m, jgur+m にのみ対応する。このスペア固有系は、
【数15】

に対応する。
【0038】
演算子

は、最初はちょうど1に等しくなく、 j(out)が正確な解 j(out)exactに収束するときのみ1に等しくなるので、もし同時に第1中性子固有値λが正確な値λexactに収束するならば、方程式15は
【数16】

(16)
になる。
【0039】
もし第1中性子固有値λが正確な値λexactに収束するならば、第2中性子固有値μは、1に向かって収束する。
【0040】
数値最適化のために、方程式16は、演算子Π-1を用いて前からの乗法により変形され、以下の方程式が得られる。
【数17】

(17)
【0041】

項は、デカルト方向uに依存しない等方性の項である。
【0042】
立方体インデックスm、デカルト軸u、u’、デカルト軸u、u’に沿うそれぞれの向きs、s’の方程式17からそれぞれの項の式が、
〔数18〕〔数19〕〔数20〕

(18)(19)(20)
によって与えられる。
【0043】
G、G’は、エネルギー群の組である。



は、それぞれの因子



を有する単一エネルギー演算子である。

は、スペクトル演算子

の因子である。
【0044】
各組み合わせそれぞれ {u, s}、 {u’, s’}は、u、u’がx、y或いはzに等しく、s、s’がl或いはrに等しい立方体mの界面を定義することに気づくべきである。例えば、{x, l} は、デカルト軸xに沿う立方体mの左界面を定義する。
【0045】
個々の項は
【数21】

(21)
【数22】


【数23】

(23)
によって与えられる。
【0046】
次に、方程式17は、例えば、普通の反復解手順をガウス-ザイデル処理として用いることによって解かれる。
【0047】
かくして、解は中性子アウトカレント縦ベクトルj(out)の要素 j(out)mgusについて計算される。これは、式14による中性子インカレント縦ベクトル j(in)の解を決定でき、且つ最後に式10による中性子束縦ベクトルΦの解を決定できる。
【0048】
本モデル化方法によって得られた、計算された中性子束縦ベクトルΦは、例えば、核燃料を管理するために既存の原子炉炉心を制御するために用いられ、或いは新しい炉心を建設するために用いることができる。
【0049】
モデル化方法は並列プロセッサで実行されてもよいし或いは単一プロセッサで実行されてもよい。上述のモデル化方法は、よりよい収束精度、よりよいコンピュータエラー強さ及びよりよい計算効率をもたらすことが証明されている。これは、その反復の成分のみが中性子アウトカレント j(out)に対応し、中性子束に依存しない、予備固有系の解に関連する。
【0050】
さらに、本発明によるモデル化方法の収束精度は、1E-12まで改善され、これに対して、古典的なモデル化方法で得られる収束精度は1E-6に制限される。
【0051】
他の実施形態では、解かれるべきスペア固有系の反復の成分は、中性子インカレント j(in)にのみ対応する。
【0052】
計算エラー強さ及び計算効率をさらに改善するために、本発明の第2側面によれば、固有系は、先ず、いくつかの中性子エネルギー群の選択のための、固有系に対応する制限固有系で調整される。この選択は、また、いくつかのエネルギー群へのスペクトル制限と呼ばれる。次いで、制限固有系は、本発明の第1側面により解かれてもよい。
最後に、制限固有系の解は、固有系を解くために用いられる。
【0053】
選択されたエネルギー群の数NGCは、エネルギー群の全数ngよりも小さい。NGCは、より少数の粗エネルギー群に併合される細かいエネルギー群の集合である
粗くされたスペクトル帯の数であってもよい。
【0054】
ngは、例えば、8に等しく、NGCは、例えば、4、3、2又は1に等しくてもよい。
【0055】
この第2の側面によると、それぞれの項が方程式18乃至20によって与えられて、推進因子

の方程式17は、
【数24】

(24)
と表される。
ここに、G、G’は粗い中性子エネルギー群インデックスである。
【0056】
等方性項

はデカルト軸u及び向きsによって特定される出て行くカレント方向と無関係であり、非等方性項とも呼ばれる貫流項

は、同じデカルト軸uに沿う同じ粗中性子エネルギー群G内で定義される。
【0057】
立方体mを出るアウトカレントの等方性項及び非等方性項の分解を、図3に示す。
【0058】
等方性項は全ての方向に同じであり、非等方性項は、立方体mの界面の間で変化する。
【0059】
最初に、等方性項が容易に計算されるアウトカレントの分解とともに、いくつかのエネルギー群へのスペクトル制限について固有系を解くことは、よりよい計算エラー強さ及びよりよい計算効率をもたらす。これは、本発明の第2の側面によるスペクトル制限から生じる固有系の次元の減少に関連する。
【0060】
エラー強さ及び計算効率をさらに改善するために、本発明の第3の側面によれば、複数のエネルギー群のための反復解処理は、図4に示されるように、頂レベル21、第1中間レベル22、4つの第2中間レベル24、26、28、30及び3つの底レベル32、34、36を含む、多レベルVサイクル20の形態であるのがよい。
【0061】
Vサイクルの頂レベル21は、複数の中性子エネルギー群について、定常状態拡散方程式1、すなわちNEM方程式、に対応する固有系のための反復計算と、本発明の第2の側面によるいくつかのエネルギー群へのスペクトル制限のために制限固有系への固有系の調整を含む。頂レベル21から生じる制限固有系は、次いで、頂レベル21のすぐ下の第1中間レベル22に送り込まれる。
【0062】
第1中間レベル22は、制限固有系を本発明の第1の側面によるスペア固有系に調整することを含み、スペア固有系の反復(j(out), j(in))の成分は、立方体mに入る中性子インカレントjgul+m, jgur-m或いは立方体mから去る、j(out)mgusとも記述される中性子アウトカレント jgul-m, jgur+m、のいずれかにのみ対応する。方程式18乃至20によって与えられる演算子

,

及び

の因子は、第1中間レベル22のために陽関数表示で計算される。
【0063】
各第2中間レベル24、26、28、30は、中性子エネルギー群の前の選択についての前のスペア固有系の、中性子エネルギー群の後の選択についての後のスペア固有系への調整を含み、後の選択での中性子エネルギー群の数は、前の選択での中性子エネルギー群の数より少ない。多レベルVサイクル20の下方向きで、第1中間レベル22に続く第2中間レベル24の前のスペア固有系は、第1中間レベル22から生じるスペア固有系である。第1中間レベル22に続かない各第2中間レベル26、28、30の前のスペア固有系は、先行する第2中間レベル24、26、28から生じる後のスペア固有系に対応する。言い換えれば、中性子エネルギー群の数は、第2中間レベルから次の第2中間レベルに下向きに減少する。最後の第2中間レベル30では、中性子エネルギー群の数は、1に等しい。第2中間レベル24、26、28、30の中性子エネルギー群の数のこの制限は、後述するスペクトル圧縮代数によって、行われ、本発明の第2の側面によらなくてもよいことに気づくべきである。
【0064】
底レベル32、34、36は、Vサイクルの下方向きでは、最後の第2中間レベル30で決定された単エネルギー群についての最後のスペア固有系の、従来技術手順の状態による解を含む。底レベル34、36は、立方体が先行する底レベル32、34の立方体よりも大きいそれぞれの粗い格子の、先行する底レベル32、34から生じる固有系の空間制限に対応する。
【0065】
Vサイクルの底レベル36では、単一エネルギー群についての固有系の解がコンピュータで計算される。
【0066】
次いで、この解は、上方向きのVサイクルの上レベルに再び導入される、そのため、それぞれのスペア固有系のために解が計算される。
【0067】
上方向きのVサイクルの頂レベル21では、複数のエネルギー群についてNEM方程式の解が計算される。
【0068】
図4の例示実施形態では、頂レベル21でのNEM方程式について中性子エネルギー群の数ngは8に等しい。中間レベル22、24、26、28、30について、それぞれの選択での中性子エネルギー群の数は、4、3、2及び1にそれぞれに等しい。図4に示すVサイクルの3つの底レベル32、34、36は、CMR手順により1つのエネルギー群のための最後のスペア固有系の解を含む。
【0069】
それぞれのスペア固有系の解に対応する4つの中間レベル22、24、26、28は、また、それぞれの参照記号SR4、SR3、SR2及びSR1(図5)によって示す。
【0070】
SR4レベルの単一エネルギー演算子

の因子を陽関数表示的に計算する。引き続いて、SR3レベルの単一エネルギー演算子

の因子を、図5に示すように、レベルSR4の単一エネルギー演算子の因子から導き出す、ここに各ボックス37は、中性子エネルギー群を
【数25】

(25)
により表す。
【0071】
式25を、レベル22と24の間の矢印38によって図5に示す。
【0072】
引き続いて、SR2レベルの単一エネルギー演算子

の因子を、
【数26】

(26)
によりSR3レベルの単一エネルギー演算子の因子から導かれる。
【0073】
式26を、レベル24と26の間の矢印40によって図5に示す。最後に、SR1レベルの単一エネルギー演算子

の因子を、
【数27】

(27)
によりSR2レベルの単一エネルギー演算子の因子から導き出す。
【0074】
式27を、レベル26と28の間の矢印42によって図5に示す。
【0075】
方程式25乃至27は、図5に示すスペクトル格子分割戦略に対応する単一エネルギー演算子

のスペクトル圧縮代数を定義する。異なる式にあっては単エネルギー演算子

の他のスペクトル凝縮代数を、他のスペクトル格子分割戦略を用いて、すなわちボックス37の異なる配置を用いて定義してもよいことに気づくべきである。
【0076】
単一エネルギー演算子

の因子を、下方向きにSR4レベルからSR1レベルまで単一エネルギー演算子

の因子について同様の方法で導き出す。SR4レベルのスペクトル演算子

の因子を、明確に計算する。引き続いて、SR3レベルのスペクトル演算子

の因子を、
【数28】

(28)
によってSR4レベルのスペクトル演算子

の因子から導き出す。
【0077】
引き続いて、SR2レベルのスペクトル演算子

の因子を、
【数29】

(29)
によってSR3レベルのスペクトル演算子の因子から導き出す。
【0078】
最後に、SR1レベルのスペクトル演算子

の因子を、
【数30】

(30)
によってSR2レベルのスペクトル演算子の因子から導き出す。
【0079】
方程式28乃至30は、単一エネルギー演算子

及び

の、図示しないスペクトル格子分割戦略に対応し、図5に示すスペクトル格子分割戦略と同様のスペクトル演算子

のスペクトル凝縮代数を定義する。スペクトル演算子

の他のスペクトル凝縮代数は、他のスペクトル格子分割戦略を用いて定義してもよいことを気づくべきである。
【0080】
かくして、上方向きでのVサイクルの頂レベル21で中性子アウトカレント縦ベクトル j(out) の要素 j(out)mgus の解を計算する。この計算の解により、式14による中性子インカレント縦ベクトル j(in) の解を決定することができ、最後に式10による中性子束縦ベクトルΦの解を決定することができる。
【0081】
次いで、原子炉炉心を、計算された中性子束縦ベクトルΦに基づいて建設し或いは運転する。
【0082】
それぞれのSR3、SR2及びSR1レベルでの演算子

,

及び

について、複雑な算術演算を伴わない、スペクトル圧縮代数を用いることによって、演算子

,

及び

をとても安価に計算でき、かくして、モデル化方法のよりよい計算エラー強さ及びよりよい計算効率に至る。
【0083】
本発明の第4の側面により、エラー強さ及び計算効率をさらに改善するために、立方体10を第1カテゴリーと第2カテゴリーに分割する。
【0084】
以下の説明では、図6に示すように、第1カテゴリーの立方体10Rは、赤立方体と呼ばれ、第2カテゴリーの立方体10Bは黒立方体と呼ばれるが、特別の限定的な意味を用語”黒”及び”赤”と関連させるべきではない。各赤立方体10Rは、すぐ隣の立方体として黒立方体10Bのみを有する。かくして、赤立方体10Rのほとんどは、6つのすぐ隣りの黒立方体10Bを有する。これは、立方体が考慮される立方体と共通の面を共有している、”すぐ”隣りによって理解されるべきである。
【0085】
その結果、図6により例示されるように、格子12は2次元表現の市松模様の暗い領域と明るい領域に関して視覚的に類似している。
【0086】
次いで、立方体には例えば赤立方体10Rによって始め、黒立方体10Bによって終わる番号が付けられる。
【0087】
以下の説明では、2つのカテゴリーでの立方体のこのような分割及びカテゴリーの次々の番号付けは、赤−黒順序付けと称される。
【0088】
当該技術の辞書式順序付けの状態と比較して立方体の赤−黒順序付けの利点は、赤立方体10Rについて、そのすぐ隣りの立方体が全て黒であって、逆の場合も同じである。
【0089】
コンピュータが炉心内の中性子束を計算するために解かねばならない式24は行列ベクトル形式で式数31と書くことができ、
【数31】

(31)
【0090】
典型的には0.9乃至0.95の値からなり、そのため、積 yμがシフトを形成する、可変のパラメータyを用いると、式31の反復は次のシフト逆数陰関数形式で書かされる。
【数32】

(32)
【0091】
ここに、s(n-1)
【数33】

(33)
によって与えられる源である。
【0092】
スペクトル演算子

及び単一エネルギー演算子

は希薄であり、赤立方体10Rをすぐ隣りの黒立方体10Bにのみ結合し、又その逆に結合する。かくして、赤黒順序付けは、赤の部分と黒の部分との間に次の便利な関係を可能にする。
【数34】

(34)
【0093】
方程式34が、解の赤の部分のみについて次の等式に変換される。
【数35】

【0094】
計算の観点から、赤黒順序付けの使用は、反復解手順中、もし、反復の最初の半分で、反復 d の、赤成分 dred が更新されるならば、次いで、反復のもう一つの部分中、全ての黒成分 dblackは、それらの隣りの赤成分dred に基づいて更新されることを意味する。換言すれば、各黒立方体10Bの値は、全てのすぐ隣りの赤立方体10Rの値に基づいて計算される。
【0095】
赤黒順序付けを用いることによって、本発明の第1、第2又は第3の側面で記載された演算子

,

及び

の計算を改善する。かくして、赤黒順序付けは、計算効率を改善するために本発明の第1、第2或いは第3の側面を補完に用いられてもよい。
【0096】
そのような赤黒順序付けは、本発明の第5側面を構成する特定の解手順と一緒に用いられるとき特に有用であることがわかる。
【0097】
この手順は、特に高いエラー強さ安定化双共役勾配安定化(Bi-CGStab)手順である。この手順の適当な前置きの記載は、次の引用文献に見られる。
Y. Saad, "スパース線形システム反復法 (Iterative Methods for Sparse Linear Systems)", 第2版, 工業・応用数学会 (SIAM) (2003;)、
H.A. van der Vorst, "Bi-CGSTAB: 非対称の線形システムの解のためのBi-CGの高速且つ円滑な収束バリアント (a Fast and Smoothly Converging Variant of Bi-CG for the solution of nonsymmetric linear systems)", 日本応用数理学会 SIAM J. Sci. Stat. Comput. 13(2), pp.631-644 (1992)。
【0098】
双共役勾配安定化(Bi-CGStab)手順は、与えられたΘとsにより、dの関数のための最小化原理から導かれ、そのために定常を方程式35によって与えられる線形系をちょうど満たす特定の最適なdを中心とした小さな変分δdに関して適用し、且つ汎関数が最小値を仮定する。
【0099】
かくして、式35の効率的な解き方について、より直接的な考察によってではなく汎関数の最小化によって動かされる解手順を定義することが可能である。Bi-CGStab手順は、そのような最小原理から続き、反復での連続変化は、(Galerkin加重積分剰余のようである)関数の各変化が先の変化の全てに関して直交するように配列される。
【0100】
本発明の第5側面による特殊なBi-CGStab手順が、解ベクトルd、解誤差 r ( r = s - Θ d)及び補助ベクトル r*, s及び p、で及び初期解推定値d0で下に与えられる。
【数36】

(36)
【0101】
上記Bi-CGStab数列は、普通N<3のNステップ後に打ち切られる。
【0102】
Bi-CGStab手順のために、予備調整が式32のシフト逆陰関数形式に基づいており、ただし、典型的に0.9<y<0.95である。
【0103】
シフトyμのためのこの選択で、解処理中、yμが、系の最も小さい可能な固有値のy倍まで収束するので、演算子sは、非特異のままにするように保証される。
【0104】
方程式32を解くことは、高等予備調整Krylov手順を展開するための完全なシナリオである、中性子源を有するわずかに臨界未満系の中性子束分布を決定することに数値的に等しい。
【0105】
赤黒順序付けを用いると、方程式32は、上で説明したように、方程式35に変換される。方程式35によって与えられる予備調整系は、本発明の第6の側面を構成する。
【0106】
いったん方程式35が、Bi-CGStab手順を介して解かれると、解黒部分が方程式34の黒部分から計算される。
【0107】
格子上に投影されるように、隣りの(赤対黒)ノードの間の直接の中性子相互作用を意味する、この特定の予備調整法の使用は、解かれるべき系に予め含まれ、
【数37】

(37)
は、
【数38】

(38)
により与えられるゆえに、方程式35の単位演算子をより支配的に形成する。
【0108】
この予備調整法は、空間結合、それ故に式の解を決定するノードの間の物理的な相互作用に関して、重要な情報、又は、その情報の大部分を、低計算コストで、うまく予め含める。
【0109】
他の実施形態では、反復解手順は、一般化した最小剰余法、また短縮GMRES、或いは平面ヤコビ法のようなザイデル処理、或いはクリロフ部分空間での反復手順である。
【0110】
本発明の第7側面によれば、改善された固有値計算のための変分の原理を次の説明に記載する。
【0111】
本発明の第1、第2或いは第3の側面について上述されたスペア固有系に対応する式(16)は、第2中性子固有値μ及び中性子アウトカレント縦ベクトルjoutによって、次の形に書かされる。
【数39】

(39)
【0112】
ここに、c1は、立方体の特性により演算子

のための他の記号である。
【0113】
何が続くかにおいて、我々は、第1中性子固有値λがスカラー制御パラメータの役割を満たすと仮定する。もし全体の解が収束し、かくして安定化するならば、第2中性子固有値μが、1に近づく特性を用いると、変分原理又は摂動アプローチは、第1中性子固有値λを変化させて、第2中性子固有値μを1に向かわせ且つスペア固有系解の収束を加速することを含む。
【0114】
第1中性子固有値λのこの変分は、スペア固有系の各反復前に、すなわちスペア固有系の各第2、第3、第4或いは第5の反復前に、なされるのがよい。第1中性子固有値λの変分は、λがλ+δλにされるように偏差δλのλへの適用であり、これは摂動を起こした界面カレント方程式、
【数40】

(40)
ただし、演算子偏微分
【数41】

(41)
により第2中性子固有値μに影響を与える。
【0115】
摂動

が反復手順中ますます小さくなると期待されるので、摂動は方程式(40)では都合よく無視され、任意の付加した重み関数

での積分は次式を得る。
【数42】

(42)
【0116】
第1中性子固有値λの変分が、第2中性子固有値μが1に向かって推進され、すなわちμ+δμが1に向かって推進されるようなものであるとき、近似

が置かれる。
この近似値及び方程式(42)で、次の方程式が得られる。
【数43】

(43)
【0117】
等式

を用いると、δλが
【数44】

(44)
で与えられる。
【0118】
ここに、rout は、第2中性子固有値μのために置かれた目標値が1に等しいとき、界面アウトカレント平衡方程式、すなわち方程式(39)の剰余を表す。剰余rout は、いかなる場合の各NEM反復ステップ毎に計算される必要がある。
【0119】
この側面でスカラー制御パラメータと考慮される、第1中性子固有値λは、次いで、次式のように更新される。
【数45】

(45)
【0120】
ここに、

及び

は、それぞれ、第1中性子固有値λの先の値及び更新された値である。
【0121】
部分的な演算子微分係数

を決定し且つ式7を使うために、例えば中性子束Φは、
【数46】

(46)
と書かれる。
上式から:
【数47】

が続く。
【0122】
次いで、近似導関数

は、

のような非散乱演算子

に対する行列の上対角部分を無視することによって、すなわち上方散乱、
【数48】

(48)
を無視することによって計算される。
【0123】
多くの計算の場合に、これは近似でもないが、もし上方散乱がモデル化されなければ、数学的に正確であることに気づくべきである。
【0124】
変分原理の好結果の適用にとって十分である
【数49】

(49)
を仮定する。
【0125】

を計算するために、それを先ず、
【数50】

(50)
と書き、
上式から:
【数51】

(51)
が続く。
【0126】
次いで、
【数52】

(52)
で演算子記号

を定義し、

を陰関数的に計算するために、テーラー式を

に適用して次式が得られる。
【数53】

(53)
【0127】
テーラー展開が、
【数54】

(54)
と並べ換える。
【0128】
方程式(54)への連鎖律の適用により、導関数

が、
【数55】

(55)
によって与えられ、
これは
【数56】

(56)
を得る。
【0129】
導関数

を決定するのに効率的な反復スキームを可能にする最後の式は、

で方程式(56)の前もっての乗法によって得られ、これは
【数57】

(57)
を与える。
【0130】

と書くことによって、

の計算が
【数58】

(58)
から得られる。
源の項sは、
【数59】

(59)
によって定義される。
【0131】
2つのエネルギー群の場合には、方程式(58)は直接的に及び解析的に解かれる。
【0132】
2つ以上のエネルギー群の場合には、方程式(58)は、
【数60】

(60)
の適用により、正確さが早期反復段階で要求されることなく、反復的に解かれる。
ここに、

及び

は、それぞれ、近似導関数

の以前の及び更新された値である。
【0133】
早期のとは、反復ステップの全必要数の最初の半分までの約3分の1を意味する。
【0134】
この変分アプローチは、有用である

の近似値のみを必要とするので、

の計算からの反復を、少し早く打ち切れることができることに気づくべきである。
【0135】
かくして、本発明のこの第7側面による変分原理は、方程式(45)の分子

が収束のときますます小さくなり、分母

は適当な値にむしろ急速に収束するので、大変効果的である。この第7の側面では、分子は、それがゼロに向かって収束するので、推進原理を定義する。
【0136】
方程式(45)による第1中性子固有値λを変えることは、第2中性子固有値μを1に向かって推進し、且つスペア固有系解の収束を加速させる。第1中性子固有値λのこの変分は、スペア固有系の各反復の前に、すなわちスペア固有系の各第2、第3、第4又は第5反復の前に行われてもよい。
【0137】
かくして、第1中性子固有値λの変分原理は、計算効率を改善するために本発明の第1、第2或いは第3の側面の補完に用いられてもよい。
【0138】
第7の側面の全ての上述した結果を、方法における計算効率を失うことなしに、格子12の黒部分に減少させることができ、そのために、本発明の第4の側面で上述した赤黒順序付けがこの第7の側面の補完に用いられる。
【0139】
本発明の第8の側面により、固有値計算のための上述の変分原理は、典型的に、方程式(4)によって与えられる除去演算子

を変形させ、

と記される制御パラメータの計算のために一般化でき、変形除去演算子は

と記される。
【0140】
全ての位置での変形の例では、制御パラメータ

とは、硼素濃度である。選択された位置での変形の例では、制御パラメータ

は、一群の選択された制御棒の棒挿入深さを制御するためのパラメータである。
【0141】

と仮定する。
【0142】
すると、方程式(16)は、第2中性子固有値μを用いて、次の形に書かれる:
【数61】

(61)
シンボリックスペクトル演算子


【数62】

(62)
によって定義される。
【0143】
もし制御パラメータ

との補正値を含む全体の解が収束し、かくして安定するならば、第2中性子固有値μが、1つに近づく性質を用いると、変分原理、又は摂動アプローチは、第2中性子固有値μを1に向かって推進させるためにこと制御パラメータ

を変化させることを含む。
【0144】
制御パラメータ

の変分は、



に推進させるように変分




への適用であり、これは、摂動界面カレント方程式
【数63】

(63)
部分演算子導関数:
【数64】

(64)
により第2中性子固有値μに影響を与える。
【0145】
摂動

が反復手順中だんだん小さくなると期待されるので、これらは方程式(63)で都合よく無視され、任意の随伴重み関数

での積分は次の式を得る。
【数65】

(65)
【0146】
制御パラメータ

の変分で、第2中性子固有値μが1に向かって推進され、すなわち、そのμ+δμは1に向かって推進されるので、近似

が置かれる。この近似及び式(65)を用いて、次の方程式が得られる。
【数66】

(66)
【0147】
等式

を用いると、

は、
【数67】

(67)
によって与えられる。
ここに、routは、界面アウトカレント平衡方程式、すなわち、方程式(39)の残差を表し、第2中性子固有値μのために課された目標値は1に等しい。
【0148】
制御パラメータ

は次のように更新される:
【数68】

(68)

ここで



は、それぞれ、制御パラメータ

の以前の値及び更新された値である。
【0149】
変分原理の制御パラメータ

へのうまい適用にとって十分である、

が仮定される。
【0150】

を計算するために、テーラー公式の適用による上述の調整が、また、同じ方法で用いられる。
【0151】
本発明のこれら第8の側面は、本発明の上述の第7の側面と同じ利点を示し、計算効率を改善するために、本発明の上述の第7側面のためのものと同様の方法で、本発明の第1、第2或いは第3の側面の補完に用いられてもよい。
【0152】
図7は、追求したNEM反復ステップの数を横座標に、高速中性子エネルギー群の中性子束の最大の解の誤差である、高速中性子束誤差を縦座標にした、異なる固有系反復解手順の1組の収束曲線を表す。全てのエネルギー群がスペクトル的に結合されるので、他のエネルギー群の中性子束の最大の解の誤差は、高速中性子束誤差と全く同様である。かくして、異なる固有系反復解手順の間の比較がこれらの収束曲線によって可能である。
【0153】
曲線50は、単一精度を用いた古典的な粗メッシュ再平衡(CMR)手順用の収束曲線であり、曲線51は、二重精度を用いた古典的なCMR手順の収束曲線である。単一及び二重の精度は、コンピュータプログラム製品における浮動小数点数を表すために用いられる古典的な精度である。
【0154】
曲線52は、単一の精度を用いた単一エネルギー群のための、本発明の第1及び第7の側面による反復手順の収束曲線であり、曲線53は、二重精度を用いた、本発明の同じ側面による反復手順の収束曲線である。
【0155】
曲線54は、単一精度手順を用いた4つの粗エネルギー群のための、本発明の第1及び第2の側面による反復手順用の収束曲線であり、曲線55は、二重精度を用いた、本発明の同じ側面による反復手順用の収束曲線である。
【0156】
曲線56は、単一精度を用いた4つの粗エネルギー群のための、本発明の第1、第2及び第7の側面による反復手順用の収束曲線であり、曲線57は、二重精度を用いた、本発明の同じ側面による反復手順用の収束曲線である。
【0157】
二重精度を用いた4つの粗エネルギー群のための、第1、第2及び第7の側面による手順(曲線57)は、曲線57について最大である収束曲線の勾配によって示されているように、50回の追求NEM反復ステップについての値が実質的に10-13に等しい最も小さい誤差ともっとも良い計算効率の両方を有する手順である。
【0158】
二重精度を用いた単一エネルギー群のための、第1及び第7の側面による手順(曲線53)は、130回の追求値がNEM反復ステップについて実質的に10-9に等しい小さい誤差を出す。さらに、この手順(曲線53)の計算効率は、曲線55の勾配が曲線53の勾配よりも大きいので、二重精度を用いた4つの粗エネルギー群のための、第1及び第2の側面による手順の計算効率(曲線55)よりも価値が高い。
【0159】
二重精度を用いた4つの粗エネルギー群のための、第1及び第2の側面による手順は、40回の追求NEM反復ステップについて実質的に10-7に等しい誤差を出す。
【0160】
かくして、二重精度は、高速中性子束誤差の値に大きな影響を及ぼすが、モデル化方法の計算効率に影響を与えることがない。
【0161】
本発明の第7側面は、また、計算効率に影響を与えるよりも、高速中性子束誤差の値に大きな影響を及ぼす。
【0162】
4つの粗エネルギー群のための、第1及び第2の側面は、最良の計算効率を提供し、図7は、100と10-5の間に含まれる誤差値に関する最も大きい勾配が、第1及び第2の側面に対応する曲線54乃至57の全てに関して得られることを示す。
【0163】
前述に開示されるように、本発明の第1乃至第8の側面は、よりよい計算効率を提供するエラー強さモデル化方法を達成するのを助け、そのため、関連する炉心シミュレーションを短い計算時間内に得ることができる。
【0164】
第1側面は、それ自体で、この目的を達成する上で役に立ち、かくして第2側面から第8側面まで別々に用いることができることを心に留めておくべきである。また、第2、第3、第7及び第8の側面は、第1の側面で或いは第4乃至第6側面のいずれかで必ずしも実行されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉炉心をモデル化するための方法であって、
コンピュータで実行される計算のための格子(12)のノードを構成するために前記炉心を立方体(10)に分割するステップと、
中性子束を、少なくとも1つの固有系の反復解手順を用いることによって計算するステップとを含み、固有系の反復の成分は、計算されるべきそれぞれの立方体(10)についての、中性子束、中性子アウトカレント或るいは中性子インカレントのいずれかに対応し、
制御パラメータは、摂動界面カレント方程式によって中性子固有値μに影響を与え且つ中性子固有値μを1に向って推進させるように変えられる、ことを特徴とする前記方法。
【請求項2】

と記載される制御パラメータは、


によって与えられ、
ここに、

は、重み関数であり、Φは中性子束を示し、
rout

によって与えられ、

は、結合演算子であり、 jout は中性子アウトカレントを示し、

は単方向性カレント貫流演算子であり、
c1は、立方体の特性に依存する演算子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】

と記載される制御パラメータは、硼素濃度である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】

と記載される制御パラメータは、選択された制御棒のグループについての棒挿入深さを制御するためのパラメータである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
制御パラメータは、中性子固有値λであり、反復解手順中、中性子固有値λは中性子固有値μを1に向かって推進させるように変化し、中性子固有値λの変分は、λが、摂動界面カレント方程式によって中性子固有値μに影響を与えるλ+δλに推進されるように変分δλのλへの適用である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記中性子固有値λは、

による固有系解手順を反復する前に、予備調整され、
ここに、

は、重み関数であり、Φは中性子束を示し、
rout

によって与えられ、

は、結合演算子であり、 joutは中性子アウトカレントを示し、

は単方向性カレント貫流演算子であり、
c1 は、立方体の特性に依存する演算子である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
演算子偏微分

は、

の適用により反復的に解かれ、
ここで、




であり、

は、除去演算子を示し、

は、非散乱演算子

の下対角部分であり、

は生成演算子であり、

は、インカレント演算子である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
方法は、計算された中性子束に基づいて原子炉炉心を建設するステップを含む、請求項1乃至7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
方法は、計算された中性子束に基づいて原子炉炉心を運転するステップを含む、請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
方法は、コンピュータで実行される方法である、請求項1乃至9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
コンピュータプログラム製品はコンピュータ読み出し可能な媒体上に在り且つコンピュータで実行するためのコンピュータプログラム手段を含む、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−60284(P2011−60284A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−197107(P2010−197107)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(509104562)アレヴァ エヌペ (28)
【Fターム(参考)】