原子炉用制御棒設計方法および原子炉用制御棒評価方法
【課題】沸騰水型原子炉用制御棒の設計方法またはその評価方法において、容易に反応度価値と核的寿命を求めることができるようにする。
【解決手段】原子炉用制御棒は、ハフニウム中性子吸収材からなる2枚の板状の翼片17を離間配置し、両翼片17の間で挿抜軸方向の先端側から少なくとも全有効長の1/4の長さにわたって板状の中性子吸収材スペ−サ18を用いることにより各翼11を構成し、4枚の翼11を十字形に結合して構成される。反応度価値を、翼片17におけるハフニウムの実効厚さの関数、吸収材スペ−サ幅xの関数、軸心部水領域幅wの関数、翼片内部に設ける場合の非吸収材部幅vの関数、および翼厚Bの関数のうち、少なくとも翼片におけるハフニウムの実効厚さと吸収材スペ−サ幅xの関数として表す。
【解決手段】原子炉用制御棒は、ハフニウム中性子吸収材からなる2枚の板状の翼片17を離間配置し、両翼片17の間で挿抜軸方向の先端側から少なくとも全有効長の1/4の長さにわたって板状の中性子吸収材スペ−サ18を用いることにより各翼11を構成し、4枚の翼11を十字形に結合して構成される。反応度価値を、翼片17におけるハフニウムの実効厚さの関数、吸収材スペ−サ幅xの関数、軸心部水領域幅wの関数、翼片内部に設ける場合の非吸収材部幅vの関数、および翼厚Bの関数のうち、少なくとも翼片におけるハフニウムの実効厚さと吸収材スペ−サ幅xの関数として表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰水型原子炉用制御棒の設計方法および評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉に用いられる原子炉用制御棒は、原子炉運転サイクルの大部分の期間にわたって炉心に挿入された状態となる運転用制御棒と、原子炉運転中は炉心から引き抜かれていて原子炉停止に際して炉心に挿入される停止用制御棒とに分類できる。停止用制御棒は全制御棒の略70%以上を占めるので、運転用制御棒はその核的寿命を全うして交換に至るまで停止使用制御棒と同等の反応度価値を維持することが望ましい。
【0003】
したがって、原子炉用制御棒の核的寿命を「反応度価値が初期値から10%低下した時点」と定義する従来からの習慣に従えば、運転用制御棒の反応度価値は、中性子照射をわずかしか受けない停止用制御棒と比較して寿命期間(耐用期間)初期において5%高くなり、寿命期間末期に5%低くなるのが理想的モデルと言える。
【0004】
停止用制御棒には安価で反応度価値が比較的高いかあるいは高くなるように設計できるボロンカ−バイド(B4C)を主要な中性子吸収材とした「従来型の制御棒」が多用されているので、運転用制御棒は核的寿命が格段に長く、その反応度価値は炉心装荷の初期においてほぼ5%高く、使用済みとなって炉心から取り出される時点においてほぼ5%低くなるのが理想的なモデルと言える。もちろん、この条件から多少ずれても普通は実用上著しい問題は生じない。
【0005】
ステンレス鋼製シ−スの内部に2枚のハフニウム板を間隙を介して対向させる本発明者らに成る従来の「トラップ型」の制御棒(特許文献1、非特許文献1)では、ボロンカ−バイドを用いる従来の制御棒から核的寿命を大幅に拡大できたが、前記間隙が狭かったため、反応度価値を十分満足に確保することが困難であった。一方、前記シ−スを排除した改良型の「トラップ型」制御棒では、ハフニウムを主吸収材とする板状の2枚の翼片を間隙を挟んで対向させ、比較的広い間隙に炉水を導入することができるので、反応度価値および核的寿命を上述の理想モデルに近い条件を達成できることが、本発明者らが行なった詳細計算によって明らかになった。また、上記対向する翼片の間にさらにハフニウムを主吸収材とする板状の吸収材スペ−サを挿入し、その幅を調節することによって、高価で比重が大きいハフニウムの量を節約しながら、核的寿命を効果的に調節できることが明らかになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−235595号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】M. Ueda, T. Tanzawa, R. Yoshioka: "Critical Experiment on a Flux-Trap-Type Hafnium Control Rod for BWRs", Transactions of the American Nuclear society, vol. 55, p. 616 (1987)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のハフニウム系の運転用制御棒では、トラップ間隙の厚み(翼厚み方向のサイズ)を大きく設定するほど、中性子減速効果が高められてハフニウム板に中性子が効率よく吸収されるようになり、比重が大きく且つ高価なハフニウムをより削減できるようになる。しかしながら、沸騰水型原子炉用制御棒は、4体1組の燃料集合体相互間に設けられる間隙が狭いことから、その翼(ウイング)の厚みは通常8mm(一部の原子炉では6〜7mm)程度に制限される。そして翼はステンレス鋼製シ−スの中にハフニウム板を間隙を置いて対向させる構成であったため、間隙が狭く、反応度価値を満足に高めることができなかった。
【0009】
ここで対象とする制御棒ではシ−スを用いない構成であるため、この間隙を比較的広く設けることができる。それにより、反応度価値と核的寿命の調節幅が格段に広くできる。さらに異種金属の間に炉水が介入する間隙も設けないので、電気・水化学的な問題もほとんど生じない。
【0010】
ハフニウムを主吸収材とする板状の2枚の翼片を間隙を挟んで対向させ、間隙に炉水を導入する「トラップ型」の制御棒では反応度価値および核的寿命を上述の理想モデルに近い条件を達成できることが、本発明者らが行なった詳細な計算によって明らかになった。また、詳細な計算によって、上記対向する翼片の間にハフニウムを主吸収材とする板状の吸収材スペ−サを挿入し、その幅を調節することによって、高価で比重が大きいハフニウムの量を節約しながら、核的寿命を効果的に調節できることが明らかになった。
【0011】
しかしながら、このような設計はモンテカルロ法による燃焼計算と反応度価値の計算を行なわなければならないため、注意深い作業と高度の知識が必要であり、現在でも計算における十分な統計精度を確保するには長時間の計算時間が必要である。
【0012】
本発明はかかる課題を解決するものであって、沸騰水型原子炉用制御棒の設計方法およびその評価方法において、容易に反応度価値と核的寿命を求めることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る原子炉用制御棒設計方法は、ハフニウムを主要な中性子吸収材とする2枚の板状の翼片を離間配置し、両翼片の間で挿抜軸方向の先端側から少なくとも全有効長の1/4の長さにわたってハフニウムを主吸収材とした板状の中性子吸収板をスペ−サとして用いることにより各翼を構成し、4枚の翼を軸方向に局所的にまたは全長にわたって配置された十字形の結合部材を用いて十字形に結合して構成された沸騰水型原子炉用制御棒を設計する設計方法であって、反応度価値を、翼片におけるハフニウムの実効厚さの関数、吸収材スペ−サ幅の関数、軸心部水領域幅の関数、翼片内部に設ける場合の非吸収材部幅の関数、および翼厚の関数のうち、少なくとも翼片におけるハフニウムの実効厚さと吸収材スペ−サ幅の関数として表すことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る原子炉用制御棒評価方法は、ハフニウムを主要な中性子吸収材とする2枚の板状の翼片を離間配置し、両翼片の間で挿抜軸方向の先端側から少なくとも全有効長の1/4の長さにわたってハフニウムを主吸収材とした板状の中性子吸収板をスペ−サとして用いることにより各翼を構成し、4枚の翼を軸方向に局所的にまたは全長にわたって配置された十字形の結合部材を用いて十字形に結合して構成された沸騰水型原子炉用制御棒を評価する評価方法であって、反応度価値を、翼片におけるハフニウムの実効厚さの関数、吸収材スペ−サ幅の関数、軸心部水領域幅の関数、翼片内部に設ける場合の非吸収材部幅の関数、および翼厚の関数のうち、少なくとも翼片におけるハフニウムの実効厚さと吸収材スペ−サ幅の関数として表すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、専門家以外でも容易に反応度価値と核的寿命を求めることができる。その結果、思い描いた制御棒構成の妥当性を簡単に判定し、その構成を修正することができる。詳細計算は、必要な場合でも、簡易方法に用いる関数の特性を頼りに、ごく少数のケ−スに対して行なえば良い。したがって制御棒の核的特性を中心とした設計を容易かつ短時間で行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る沸騰水型原子炉用制御棒設計方法の実施形態で設計される沸騰水型原子炉用制御棒の構成例を示す部分断面立面図であって、図2のI−I線矢視立面図である。
【図2】図1のII−II線矢視平断面図である。
【図3】図2のIII部拡大平断面図である。
【図4】沸騰水型原子炉用制御棒において必要な反応度価値と中性子照射量の軸方向分布概念の例を示すグラフである。
【図5】本発明に係る原子炉用制御棒の実施形態の翼片のハフニウム板の厚さによる反応度価値の変化特性の例を示すグラフである。
【図6】本発明に係る原子炉用制御棒の実施形態の翼片のハフニウム板の厚さによる核的寿命の変化特性の例を示すグラフである。
【図7】本発明に係る原子炉用制御棒の実施形態の翼片の間に挟む吸収材スペ−サの幅による反応度価値の変化の近似特性の例を示すグラフである。
【図8】図7の係数aおよび定数bの翼片板厚による変化の近似特性の例を示すグラフである。
【図9】本発明に係る原子炉用制御棒の実施形態の軸心部水領域幅wによる反応度価値への影響因子(Fw)の例を示すグラフである。
【図10】本発明に係る原子炉用制御棒の実施形態の吸収材領域(翼片内部)における非吸収材領域幅(v)の影響因子(Fv)の例を示すグラフである。
【図11】図10の破線Aに対応する水窓の位置を示す翼の平断面図である。
【図12】図10の実線Bに対応する水窓の位置を示す翼の平断面図である。
【図13】本発明に係る原子炉用制御棒の実施形態の翼片ハフニウム板厚と吸収材スペ−サ幅の核的寿命への影響因子(LS)の例を示すグラフである。
【図14】本発明に係る原子炉用制御棒設計方法の実施形態により計算された反応度価値と核的寿命の関係の例を示すグラフである。
【図15】図14に対応する領域区分の例を示す模式図である。
【図16】図14に対応する入力条件の例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る原子炉用制御棒設計方法およびその評価方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
はじめに、この実施形態の設計方法で設計される沸騰水型原子炉用制御棒の構成例について、図1ないし図3を参照して説明する。図1は、本発明に係る原子炉用制御棒設計方法の実施形態で設計される沸騰水型原子炉用制御棒の構成例を示す部分断面立面図であって、図2のI−I線矢視立面図である。図2は図1のII−II線矢視平断面図であり、図3は図2のIII部拡大平断面図である。
【0019】
この制御棒は、長寿命型の運転用制御棒であって、上下に延びる4枚の翼11が複数個の短尺十字状結合部材(タイクロス)12(または長尺結合部材(タイロッド))によって互いに結合されて十字状に形成されている。4枚の翼11の上端部には一つの先端構造材13が取り付けられ、4枚の翼11の下端部には一つの末端構造材14が取り付けられていて一体的に結合されている。末端構造材14の下方には図示しない制御棒駆動機構が取り付けられて、制御棒を上方に押し上げて炉心内に挿入したり、炉心から下方に引き抜いたりすることができるように構成されている。
【0020】
十字状制御棒の上下方向中心軸に沿って、典型的な例にあっては軸心水領域(CWR)15を形成するように、各翼11同士が間隔をおいて設けられている。
【0021】
各翼11には、炉水が介在するトラップ間隙16を挟んで対向するように中性子吸収板(ハフニウム製の板)から成る2枚の翼片17が配置されている。トラップ間隙16は複数の吸収材スペ−サ18と複数の非吸収材スペーサ19によって保持されている。吸収材スペ−サ18は、挿入先端側(上端側)において挿抜方向と直交する方向の幅xが広く、挿入末端側(下端側)に向かって狭くなるように配置されている。非吸収材スペーサ19は吸収材スペ−サ18よりも下方に配置されている。
【0022】
翼片17および吸収材スペ−サ18は、ハフニウム板20の両面にジルコニウム合金(ジルカロイ(商品名))の薄板21を配置したものである。翼片17には縦長の非吸収部を形成する複数の水窓22が上下方向に配列されている。
【0023】
各部の具体的寸法は、たとえば、翼幅X1=124mm、軸心部水領域幅w=26mm、翼厚B=8.3mm、ハフニウム板20の板厚t=1.5mm、ジルコニウム合金の薄板21の薄板厚t0=0.4mmである。吸収材スペ−サ18の幅xは、たとえば、挿入先端側から60mm、40mm、および20mmとする。吸収材スペ−サ18の厚さは原子炉に依存する。末端側(下端側)1/4では吸収材スペ−サは使用せず、小さなジルカロイ製の非吸収材スペ−サ19を局所的に用いて2枚の翼片間の間隙(トラップ間隙)を確保している。挿入先端側(上端側)から1/4の範囲では核的寿命を大きくしながら反応度価値を従来制御棒の値より5%以内で大きくなるように抑制するために幅v(=v1=v2)=約10mmの水窓22を設けている。
【0024】
なお、上述のような制御棒では、適切な製造性、適切な機械的強度、ハフニウムの有効利用、炉内長期使用による放射化された核種(代表的にはHf−181)の炉水溶け出し抑制、照射周辺燃料に対する熱的インパクトの軽減などを狙っているが、設計手法としては上述の事項に限定されるものではない。
【0025】
図4は、BWRの制御棒の場合を例にとり、必要な反応度価値(破線)と中性子照射量(実線)の軸方向分布概念を示したものである。BWRでは停止時に炉心上部に位置する特に先端の特定の範囲(X0:通常15cm程度以内)を除き、挿入先端側(上端側)1/4区分(Y−X0)に対応する部分の未臨界度が浅くなるため、高い反応度価値が要求される。この特性は主に運転中の高いボイド率による燃焼の遅れとプルトニウムの生成によるものである。図4に示す中性子照射量分布(実線)は、高出力運転中に炉心に挿入されている運転用制御棒の場合である。なお、停止用制御棒の場合にも挿入先端付近(X0)ではこの図が示す程ではないにしても中性子照射量が高い値となる。それ以外の区分(Y−X0)の中性子照射量は、この図の場合より大幅に小さくなる。
【0026】
この図から、挿入先端の少なくとも前記特定の範囲では、反応度価値への要求はあまり高くなく、照射による機械的寿命の短縮を避ける構成が特に必要であることがわかる。反応度価値は上記特定範囲を除く挿入先端側の約半分の区分(Y−X0)で高い値が要求される。運転用制御棒の場合にはさらに高い照射量のため、照射に伴う機械的寿命の低下を防止する構成が要求される。
【0027】
図5は、本発明の実施形態の原子炉用制御棒の翼片のハフニウム板の厚さtによる反応度価値の変化特性の例を示すグラフである。この図で、縦軸は、従来型の主として原子炉停止の際に炉心に挿入される「停止用制御棒」であるB4C制御棒の反応度価値との比(相対値)として示している。軸心部水領域幅wは反応度価値が過大あるいは過小とならないように、26mmとした。また翼の内部に縦長の非吸収材部(水窓)22を設け、その横幅vは8mmとした。翼端には、横幅xが14mmの吸収材スペ−サ18を配置した。翼の厚さBは8.3mmとした。ハフニウム板18は、ジルカロイ薄板21でサンドイッチされているものとし、ジルカロイ薄板21の厚さt0は0.4mmとした。翼幅X1は124mmとした。
【0028】
図5の曲線は、翼片のハフニウム板厚tの2次関数で満足な近似ができた。ハフニウム板の板厚tが1mmより薄いと反応度価値や核的寿命の値として満足な結果が得られないし、2.5mmより厚いと構造的な設計に支障を生じる可能性やハフニウムの無駄な使用になる可能性が高いので対象外とした。
【0029】
図6は、本発明の実施形態の原子炉用制御棒の翼片のハフニウム板の板厚tによる核的寿命の変化特性の例を示すグラフである。縦軸は、図5と同様に、従来型の「停止用制御棒」であるB4C制御棒の核的寿命との比(相対値)として示している。解析条件は図5の場合と同様である。この図により、ハフニウム板厚tが約1.1mm以上で、直線になっていることがわかる。
【0030】
図7は、本発明の実施形態の原子炉用制御棒の翼片17の間に挟む吸収材スペ−サ18の幅xによる反応度価値の変化の近似特性の例を示すグラフである。また、図8は、図7の係数aおよび定数bの翼片板厚による変化の近似特性の例を示すグラフである。図7および図8に示す例では、2枚の翼片17の間で翼端側から幅xに渡って吸収材スペ−サ18が挿入されているものとする。翼片17も吸収材スペ−サ18も共に、ハフニウム板20をジルカロイ薄板21でサンドイッチしたものであり、ジルカロイ薄板21の厚さt0は0.4mmである。ここでは、翼内部の非吸収材部(水窓)22は設けていない。その他の解析条件は、図5および図6の場合と同様である。
【0031】
図7は、本発明の実施形態の原子炉用制御棒の翼片17のハフニウム板厚tが1.5mmで吸収材スペ−サを設けないときの反応度価値に対して規格化した反応度価値Rsの吸収材スペ−サ幅xへの依存性を近似的に直線として示したものであり、翼片17のハフニウム板厚tをパラメ−タとしている。図8は図7の各直線の係数aと定数bのt依存性を示したもので、各直線の係数aと定数bはtに対して緩やかな2次関数で近似できる。
【0032】
図9は、図7および図8の場合とほぼ同じ横断面を有する翼(ただし翼幅X1=124mmに固定)において軸心部水領域の幅wを変えた場合の反応度価値の変化を調べたものであり、軸心部水領域幅w=26mmにおいて規格化した相対値である。翼内部の非吸収材部(水窓)22は設けていない。w≦12mmでは他の翼との干渉現象によりほぼ一定となっているが、w≧12mmではwのほぼ2次関数で近似できる。w≧40mmとなると一般に反応度価値が不足するようになるため、w≧40mmの範囲は対象外とした。
【0033】
図10は、本発明の実施形態の原子炉用制御棒の吸収材領域(翼片内部)における非吸収材部(水窓)22の幅(v)の影響因子(Fv)の例を示すグラフである。図11は図10の破線Aに対応する水窓22の位置を示す翼の平断面図であり、図12は図10の実線Bに対応する水窓22の位置を示す翼の平断面図である。図10は、図5および図6の場合とほぼ同じ横断面を有する翼(ただし翼幅X1=124mm、軸心部水領域幅w=26mmに固定)として解析した結果を示す。図11に示す構成では、非吸収材部(水窓)22が両翼片17で対向して設けられており、図12に示す構成では、水窓22が両翼片17でずらして(段違いに)設けてある。図10は、図11および図12の構成で、水窓22が翼の内部(ただし両端部から20mm以上離れた部分)に幅vの水窓22を設けた場合の反応度価値の変化特性を調べたものであり、v=0で規格化している。水窓22を適切に設けると周辺燃料への熱的インパクト(ブレードヒストリー問題とも言う)低減やハフニウム材の効果的な削減に寄与できる場合がある。
【0034】
図10で、破線Aは図11の構成に対応する結果を示し、実線Bは図12の構成に対応する結果を示している。実線Bに示す段違い方式の方が、反応度価値の減少割合は30〜40%程度抑制できることがわかる。
【0035】
図13は、本発明の実施形態の原子炉用制御棒の翼片ハフニウム板厚tと吸収材スペ−サ幅xの核的寿命への影響因子(LS)の例を示すグラフであって、図7の反応度価値Rsの代わりに核的寿命の変化特性を示したものである。図13で、縦軸は、従来型の「停止用制御棒」であるB4C制御棒の反応度価値との比(相対値)として示している。吸収材スペ−サ幅xの値が小さい場合と大きい場合に若干ずれるが、おおよそ直線で近似できる。直線の係数と定数は近似的に翼片厚さtに対して直線で近似できる。
【0036】
つぎに、この実施形態によって沸騰水型原子炉用制御棒の簡易設計法を行なう式と手順を説明する。対象とする制御棒の構造は、図1ないし図3に示すものを想定している。
【0037】
ここで、以下に示す符号を用いる。
【0038】
t……翼片ハフニウム板厚
w……軸心部水領域幅
2w……軸心部水領域全幅
v……翼内水窓幅(非吸収材部幅)
x……吸収材スペ−サ幅
B……翼厚
RN……基準制御棒の反応度価値
LN……基準制御棒の核的寿命
t0……ジルカロイ薄板厚
基準寸法として、w=26mm、B=83mm、t0=0.4mm、v=0とする。
【0039】
反応度価値は次式で求められる。ここで、RAは制御棒の反応度価値の絶対値、RNは比較基準とする制御棒の反応度価値で入力値、RSは基準制御棒の反応度価値相対値である。諸係数および定数はパラメ−タの値を変えて計算で求められる。
【0040】
RA=RS・FW・FV・FB・RN
RS=R1・x+R0
R1=S12・t2+S11・t+S10
R0=S02・t2+S01・t+S00
FW=W2・w2+W1・w+W0
FV=V2・v2+V1・v+V0
FB=b1・B+b0
FVの値は、水窓22を、図12のように両翼片で対向しないように段違いにするか、図11のように対向するようにするかで変化し、係数や定数が変化するので、入力条件(Iv)で選択する。図10に示したように、段違いにする方が水窓による反応度損失は30〜40%程度抑制できる。
【0041】
核的寿命(絶対値:LA)は次の近似式で求められる。LSは基準制御棒(w=26mm、v=0)に対する核的寿命相対値である。LNは比較基準とする制御棒の反応度価値で入力値として与える。
【0042】
LA=LS・LN
LS=L1・x+L0
L1=L11・t+L10
L0=L01・t+L00
つぎに、上述の諸式により数値計算した例を、図14ないし図16を参照しながら説明する。図14は、この実施形態により計算された反応度価値と核的寿命の関係の例を示すグラフである。図15は図14に対応する領域区分の例を示す模式図であり、図16は図14に対応する入力条件の例を示す表である。対象とする制御棒の構造は、図1ないし図3に示すものを想定している。ここでは、翼厚B=8.3mm、ジルカロイ薄板厚t0=0.4mmとする。
【0043】
図14および図15の番号(1)、(2)、(3)、(4)は挿入先端側(上端側)から4分割して番号を付したものである。この設計例では軸心水領域の幅wは26mmで一定とした。燃焼前の反応度価値は比較基準の制御棒のそれの+5%程度以内が理想であるとして、幅v=10mmの水窓を設けて、意識的に抑制している。翼片のハフニウム板厚tは1.5mmとし、核的寿命と反応度価値を吸収材スペ−サの幅xで調節した。
【0044】
ここで、翼片等におけるハフニウムの「実効厚さ」について簡単に説明しておく。
【0045】
製造上、軸方向全体のハフニウム板20あるいは翼片17の厚さは一様であることが最も容易かつ健全性確保の面でも望ましいと考えられる。ハフニウム板はこの場合、挿入末端側で必要な厚さを基準とし、先端側では吸収材スペ−サの幅xを調節して核的寿命と反応度価値の値を調節するのが好適である。ハフニウム板の厚さtは現実的には1.2〜1.8mmとなろう。仮にt=1.5mmとし、サンドイッチとして使用するジルカロイ薄板の厚さt0を十分な健全性を確保するとして0.4mmと想定する。
【0046】
今、ジルカロイ薄板21の厚さt0を薄めの0.2mmとすると、ハフニウムの密度は13、ジルカロイの密度は6.5であるため、ハフニウム板厚t=1.2mm、ジルカロイ薄板厚t0=0.2mmでは、単位面積当たりの重量は、0.12×13+2×0.02×6.5=1.82(g/cm2)、ハフニウムだけの場合は、(0.12+2×0.02)×13=2.08(g/cm2)、したがって両者の比は0.88となる。ハフニウム板厚tを厚めの2mm、ジルカロイ薄板厚t0も厚めの0.5mmとすると、0.2×13+2×0.05×6.5=3.25(g/cm2)、ハフニウムだけの場合には(0.2+2×0.05)×13=3.9(g/cm2)、両者の比は0.83となる。またハフニウム板厚t=1.5mm、ジルカロイ薄板厚t0=0.4mmとすると、サンドイッチの場合0.15×13+2×0.04×6.5=2.47(g/cm2)、ハフニウムだけの場合、(0.15+2×0.04)×13=2.99(g/cm2)、両者の比は0.83となる。したがって、サンドイッチ方式の代わりに合金とすると、(ハフニウム+ジルコニウム)合金におけるハフニウムの重量比は80wt%程度以上となる。
【0047】
本実施形態では、合金の場合も考慮して、密度13となるハフニウムの厚さのことを実効厚さと定義している。ハフニウムがジルコニウムとの合金として希釈されているか、合金でないかによって、本実施形態が対象としている制御棒では核特性上の差異は認められない。ハフニウム割合が低いと反応度価値や核的寿命が十分確保できなくなる恐れがある。したがって合金の場合にはハフニウムの重量割合は80wt%程度以上が望ましいことがわかる。
【0048】
ところで、簡易計算の結果は詳細計算の結果から若干ずれるはずであり、必要あれば簡易計算の結果を詳細計算により確認する。サ−ベイ的に詳細計算を繰り返す必要はない。簡易設計に修正を加える必要がある場合には、簡易計算法の式を用いて、修正の程度や方策を容易に探すことができる。
【0049】
以上本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
11 翼
12 短尺十字状結合部材(タイクロス)
13 先端構造材
14 末端構造材
15 軸心水領域(CWR)
16 トラップ間隙
17 翼片
18 吸収材スペ−サ
19 非吸収材スペーサ
20 ハフニウム板
21 薄板
22 水窓
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰水型原子炉用制御棒の設計方法および評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉に用いられる原子炉用制御棒は、原子炉運転サイクルの大部分の期間にわたって炉心に挿入された状態となる運転用制御棒と、原子炉運転中は炉心から引き抜かれていて原子炉停止に際して炉心に挿入される停止用制御棒とに分類できる。停止用制御棒は全制御棒の略70%以上を占めるので、運転用制御棒はその核的寿命を全うして交換に至るまで停止使用制御棒と同等の反応度価値を維持することが望ましい。
【0003】
したがって、原子炉用制御棒の核的寿命を「反応度価値が初期値から10%低下した時点」と定義する従来からの習慣に従えば、運転用制御棒の反応度価値は、中性子照射をわずかしか受けない停止用制御棒と比較して寿命期間(耐用期間)初期において5%高くなり、寿命期間末期に5%低くなるのが理想的モデルと言える。
【0004】
停止用制御棒には安価で反応度価値が比較的高いかあるいは高くなるように設計できるボロンカ−バイド(B4C)を主要な中性子吸収材とした「従来型の制御棒」が多用されているので、運転用制御棒は核的寿命が格段に長く、その反応度価値は炉心装荷の初期においてほぼ5%高く、使用済みとなって炉心から取り出される時点においてほぼ5%低くなるのが理想的なモデルと言える。もちろん、この条件から多少ずれても普通は実用上著しい問題は生じない。
【0005】
ステンレス鋼製シ−スの内部に2枚のハフニウム板を間隙を介して対向させる本発明者らに成る従来の「トラップ型」の制御棒(特許文献1、非特許文献1)では、ボロンカ−バイドを用いる従来の制御棒から核的寿命を大幅に拡大できたが、前記間隙が狭かったため、反応度価値を十分満足に確保することが困難であった。一方、前記シ−スを排除した改良型の「トラップ型」制御棒では、ハフニウムを主吸収材とする板状の2枚の翼片を間隙を挟んで対向させ、比較的広い間隙に炉水を導入することができるので、反応度価値および核的寿命を上述の理想モデルに近い条件を達成できることが、本発明者らが行なった詳細計算によって明らかになった。また、上記対向する翼片の間にさらにハフニウムを主吸収材とする板状の吸収材スペ−サを挿入し、その幅を調節することによって、高価で比重が大きいハフニウムの量を節約しながら、核的寿命を効果的に調節できることが明らかになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−235595号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】M. Ueda, T. Tanzawa, R. Yoshioka: "Critical Experiment on a Flux-Trap-Type Hafnium Control Rod for BWRs", Transactions of the American Nuclear society, vol. 55, p. 616 (1987)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のハフニウム系の運転用制御棒では、トラップ間隙の厚み(翼厚み方向のサイズ)を大きく設定するほど、中性子減速効果が高められてハフニウム板に中性子が効率よく吸収されるようになり、比重が大きく且つ高価なハフニウムをより削減できるようになる。しかしながら、沸騰水型原子炉用制御棒は、4体1組の燃料集合体相互間に設けられる間隙が狭いことから、その翼(ウイング)の厚みは通常8mm(一部の原子炉では6〜7mm)程度に制限される。そして翼はステンレス鋼製シ−スの中にハフニウム板を間隙を置いて対向させる構成であったため、間隙が狭く、反応度価値を満足に高めることができなかった。
【0009】
ここで対象とする制御棒ではシ−スを用いない構成であるため、この間隙を比較的広く設けることができる。それにより、反応度価値と核的寿命の調節幅が格段に広くできる。さらに異種金属の間に炉水が介入する間隙も設けないので、電気・水化学的な問題もほとんど生じない。
【0010】
ハフニウムを主吸収材とする板状の2枚の翼片を間隙を挟んで対向させ、間隙に炉水を導入する「トラップ型」の制御棒では反応度価値および核的寿命を上述の理想モデルに近い条件を達成できることが、本発明者らが行なった詳細な計算によって明らかになった。また、詳細な計算によって、上記対向する翼片の間にハフニウムを主吸収材とする板状の吸収材スペ−サを挿入し、その幅を調節することによって、高価で比重が大きいハフニウムの量を節約しながら、核的寿命を効果的に調節できることが明らかになった。
【0011】
しかしながら、このような設計はモンテカルロ法による燃焼計算と反応度価値の計算を行なわなければならないため、注意深い作業と高度の知識が必要であり、現在でも計算における十分な統計精度を確保するには長時間の計算時間が必要である。
【0012】
本発明はかかる課題を解決するものであって、沸騰水型原子炉用制御棒の設計方法およびその評価方法において、容易に反応度価値と核的寿命を求めることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る原子炉用制御棒設計方法は、ハフニウムを主要な中性子吸収材とする2枚の板状の翼片を離間配置し、両翼片の間で挿抜軸方向の先端側から少なくとも全有効長の1/4の長さにわたってハフニウムを主吸収材とした板状の中性子吸収板をスペ−サとして用いることにより各翼を構成し、4枚の翼を軸方向に局所的にまたは全長にわたって配置された十字形の結合部材を用いて十字形に結合して構成された沸騰水型原子炉用制御棒を設計する設計方法であって、反応度価値を、翼片におけるハフニウムの実効厚さの関数、吸収材スペ−サ幅の関数、軸心部水領域幅の関数、翼片内部に設ける場合の非吸収材部幅の関数、および翼厚の関数のうち、少なくとも翼片におけるハフニウムの実効厚さと吸収材スペ−サ幅の関数として表すことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る原子炉用制御棒評価方法は、ハフニウムを主要な中性子吸収材とする2枚の板状の翼片を離間配置し、両翼片の間で挿抜軸方向の先端側から少なくとも全有効長の1/4の長さにわたってハフニウムを主吸収材とした板状の中性子吸収板をスペ−サとして用いることにより各翼を構成し、4枚の翼を軸方向に局所的にまたは全長にわたって配置された十字形の結合部材を用いて十字形に結合して構成された沸騰水型原子炉用制御棒を評価する評価方法であって、反応度価値を、翼片におけるハフニウムの実効厚さの関数、吸収材スペ−サ幅の関数、軸心部水領域幅の関数、翼片内部に設ける場合の非吸収材部幅の関数、および翼厚の関数のうち、少なくとも翼片におけるハフニウムの実効厚さと吸収材スペ−サ幅の関数として表すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、専門家以外でも容易に反応度価値と核的寿命を求めることができる。その結果、思い描いた制御棒構成の妥当性を簡単に判定し、その構成を修正することができる。詳細計算は、必要な場合でも、簡易方法に用いる関数の特性を頼りに、ごく少数のケ−スに対して行なえば良い。したがって制御棒の核的特性を中心とした設計を容易かつ短時間で行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る沸騰水型原子炉用制御棒設計方法の実施形態で設計される沸騰水型原子炉用制御棒の構成例を示す部分断面立面図であって、図2のI−I線矢視立面図である。
【図2】図1のII−II線矢視平断面図である。
【図3】図2のIII部拡大平断面図である。
【図4】沸騰水型原子炉用制御棒において必要な反応度価値と中性子照射量の軸方向分布概念の例を示すグラフである。
【図5】本発明に係る原子炉用制御棒の実施形態の翼片のハフニウム板の厚さによる反応度価値の変化特性の例を示すグラフである。
【図6】本発明に係る原子炉用制御棒の実施形態の翼片のハフニウム板の厚さによる核的寿命の変化特性の例を示すグラフである。
【図7】本発明に係る原子炉用制御棒の実施形態の翼片の間に挟む吸収材スペ−サの幅による反応度価値の変化の近似特性の例を示すグラフである。
【図8】図7の係数aおよび定数bの翼片板厚による変化の近似特性の例を示すグラフである。
【図9】本発明に係る原子炉用制御棒の実施形態の軸心部水領域幅wによる反応度価値への影響因子(Fw)の例を示すグラフである。
【図10】本発明に係る原子炉用制御棒の実施形態の吸収材領域(翼片内部)における非吸収材領域幅(v)の影響因子(Fv)の例を示すグラフである。
【図11】図10の破線Aに対応する水窓の位置を示す翼の平断面図である。
【図12】図10の実線Bに対応する水窓の位置を示す翼の平断面図である。
【図13】本発明に係る原子炉用制御棒の実施形態の翼片ハフニウム板厚と吸収材スペ−サ幅の核的寿命への影響因子(LS)の例を示すグラフである。
【図14】本発明に係る原子炉用制御棒設計方法の実施形態により計算された反応度価値と核的寿命の関係の例を示すグラフである。
【図15】図14に対応する領域区分の例を示す模式図である。
【図16】図14に対応する入力条件の例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る原子炉用制御棒設計方法およびその評価方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
はじめに、この実施形態の設計方法で設計される沸騰水型原子炉用制御棒の構成例について、図1ないし図3を参照して説明する。図1は、本発明に係る原子炉用制御棒設計方法の実施形態で設計される沸騰水型原子炉用制御棒の構成例を示す部分断面立面図であって、図2のI−I線矢視立面図である。図2は図1のII−II線矢視平断面図であり、図3は図2のIII部拡大平断面図である。
【0019】
この制御棒は、長寿命型の運転用制御棒であって、上下に延びる4枚の翼11が複数個の短尺十字状結合部材(タイクロス)12(または長尺結合部材(タイロッド))によって互いに結合されて十字状に形成されている。4枚の翼11の上端部には一つの先端構造材13が取り付けられ、4枚の翼11の下端部には一つの末端構造材14が取り付けられていて一体的に結合されている。末端構造材14の下方には図示しない制御棒駆動機構が取り付けられて、制御棒を上方に押し上げて炉心内に挿入したり、炉心から下方に引き抜いたりすることができるように構成されている。
【0020】
十字状制御棒の上下方向中心軸に沿って、典型的な例にあっては軸心水領域(CWR)15を形成するように、各翼11同士が間隔をおいて設けられている。
【0021】
各翼11には、炉水が介在するトラップ間隙16を挟んで対向するように中性子吸収板(ハフニウム製の板)から成る2枚の翼片17が配置されている。トラップ間隙16は複数の吸収材スペ−サ18と複数の非吸収材スペーサ19によって保持されている。吸収材スペ−サ18は、挿入先端側(上端側)において挿抜方向と直交する方向の幅xが広く、挿入末端側(下端側)に向かって狭くなるように配置されている。非吸収材スペーサ19は吸収材スペ−サ18よりも下方に配置されている。
【0022】
翼片17および吸収材スペ−サ18は、ハフニウム板20の両面にジルコニウム合金(ジルカロイ(商品名))の薄板21を配置したものである。翼片17には縦長の非吸収部を形成する複数の水窓22が上下方向に配列されている。
【0023】
各部の具体的寸法は、たとえば、翼幅X1=124mm、軸心部水領域幅w=26mm、翼厚B=8.3mm、ハフニウム板20の板厚t=1.5mm、ジルコニウム合金の薄板21の薄板厚t0=0.4mmである。吸収材スペ−サ18の幅xは、たとえば、挿入先端側から60mm、40mm、および20mmとする。吸収材スペ−サ18の厚さは原子炉に依存する。末端側(下端側)1/4では吸収材スペ−サは使用せず、小さなジルカロイ製の非吸収材スペ−サ19を局所的に用いて2枚の翼片間の間隙(トラップ間隙)を確保している。挿入先端側(上端側)から1/4の範囲では核的寿命を大きくしながら反応度価値を従来制御棒の値より5%以内で大きくなるように抑制するために幅v(=v1=v2)=約10mmの水窓22を設けている。
【0024】
なお、上述のような制御棒では、適切な製造性、適切な機械的強度、ハフニウムの有効利用、炉内長期使用による放射化された核種(代表的にはHf−181)の炉水溶け出し抑制、照射周辺燃料に対する熱的インパクトの軽減などを狙っているが、設計手法としては上述の事項に限定されるものではない。
【0025】
図4は、BWRの制御棒の場合を例にとり、必要な反応度価値(破線)と中性子照射量(実線)の軸方向分布概念を示したものである。BWRでは停止時に炉心上部に位置する特に先端の特定の範囲(X0:通常15cm程度以内)を除き、挿入先端側(上端側)1/4区分(Y−X0)に対応する部分の未臨界度が浅くなるため、高い反応度価値が要求される。この特性は主に運転中の高いボイド率による燃焼の遅れとプルトニウムの生成によるものである。図4に示す中性子照射量分布(実線)は、高出力運転中に炉心に挿入されている運転用制御棒の場合である。なお、停止用制御棒の場合にも挿入先端付近(X0)ではこの図が示す程ではないにしても中性子照射量が高い値となる。それ以外の区分(Y−X0)の中性子照射量は、この図の場合より大幅に小さくなる。
【0026】
この図から、挿入先端の少なくとも前記特定の範囲では、反応度価値への要求はあまり高くなく、照射による機械的寿命の短縮を避ける構成が特に必要であることがわかる。反応度価値は上記特定範囲を除く挿入先端側の約半分の区分(Y−X0)で高い値が要求される。運転用制御棒の場合にはさらに高い照射量のため、照射に伴う機械的寿命の低下を防止する構成が要求される。
【0027】
図5は、本発明の実施形態の原子炉用制御棒の翼片のハフニウム板の厚さtによる反応度価値の変化特性の例を示すグラフである。この図で、縦軸は、従来型の主として原子炉停止の際に炉心に挿入される「停止用制御棒」であるB4C制御棒の反応度価値との比(相対値)として示している。軸心部水領域幅wは反応度価値が過大あるいは過小とならないように、26mmとした。また翼の内部に縦長の非吸収材部(水窓)22を設け、その横幅vは8mmとした。翼端には、横幅xが14mmの吸収材スペ−サ18を配置した。翼の厚さBは8.3mmとした。ハフニウム板18は、ジルカロイ薄板21でサンドイッチされているものとし、ジルカロイ薄板21の厚さt0は0.4mmとした。翼幅X1は124mmとした。
【0028】
図5の曲線は、翼片のハフニウム板厚tの2次関数で満足な近似ができた。ハフニウム板の板厚tが1mmより薄いと反応度価値や核的寿命の値として満足な結果が得られないし、2.5mmより厚いと構造的な設計に支障を生じる可能性やハフニウムの無駄な使用になる可能性が高いので対象外とした。
【0029】
図6は、本発明の実施形態の原子炉用制御棒の翼片のハフニウム板の板厚tによる核的寿命の変化特性の例を示すグラフである。縦軸は、図5と同様に、従来型の「停止用制御棒」であるB4C制御棒の核的寿命との比(相対値)として示している。解析条件は図5の場合と同様である。この図により、ハフニウム板厚tが約1.1mm以上で、直線になっていることがわかる。
【0030】
図7は、本発明の実施形態の原子炉用制御棒の翼片17の間に挟む吸収材スペ−サ18の幅xによる反応度価値の変化の近似特性の例を示すグラフである。また、図8は、図7の係数aおよび定数bの翼片板厚による変化の近似特性の例を示すグラフである。図7および図8に示す例では、2枚の翼片17の間で翼端側から幅xに渡って吸収材スペ−サ18が挿入されているものとする。翼片17も吸収材スペ−サ18も共に、ハフニウム板20をジルカロイ薄板21でサンドイッチしたものであり、ジルカロイ薄板21の厚さt0は0.4mmである。ここでは、翼内部の非吸収材部(水窓)22は設けていない。その他の解析条件は、図5および図6の場合と同様である。
【0031】
図7は、本発明の実施形態の原子炉用制御棒の翼片17のハフニウム板厚tが1.5mmで吸収材スペ−サを設けないときの反応度価値に対して規格化した反応度価値Rsの吸収材スペ−サ幅xへの依存性を近似的に直線として示したものであり、翼片17のハフニウム板厚tをパラメ−タとしている。図8は図7の各直線の係数aと定数bのt依存性を示したもので、各直線の係数aと定数bはtに対して緩やかな2次関数で近似できる。
【0032】
図9は、図7および図8の場合とほぼ同じ横断面を有する翼(ただし翼幅X1=124mmに固定)において軸心部水領域の幅wを変えた場合の反応度価値の変化を調べたものであり、軸心部水領域幅w=26mmにおいて規格化した相対値である。翼内部の非吸収材部(水窓)22は設けていない。w≦12mmでは他の翼との干渉現象によりほぼ一定となっているが、w≧12mmではwのほぼ2次関数で近似できる。w≧40mmとなると一般に反応度価値が不足するようになるため、w≧40mmの範囲は対象外とした。
【0033】
図10は、本発明の実施形態の原子炉用制御棒の吸収材領域(翼片内部)における非吸収材部(水窓)22の幅(v)の影響因子(Fv)の例を示すグラフである。図11は図10の破線Aに対応する水窓22の位置を示す翼の平断面図であり、図12は図10の実線Bに対応する水窓22の位置を示す翼の平断面図である。図10は、図5および図6の場合とほぼ同じ横断面を有する翼(ただし翼幅X1=124mm、軸心部水領域幅w=26mmに固定)として解析した結果を示す。図11に示す構成では、非吸収材部(水窓)22が両翼片17で対向して設けられており、図12に示す構成では、水窓22が両翼片17でずらして(段違いに)設けてある。図10は、図11および図12の構成で、水窓22が翼の内部(ただし両端部から20mm以上離れた部分)に幅vの水窓22を設けた場合の反応度価値の変化特性を調べたものであり、v=0で規格化している。水窓22を適切に設けると周辺燃料への熱的インパクト(ブレードヒストリー問題とも言う)低減やハフニウム材の効果的な削減に寄与できる場合がある。
【0034】
図10で、破線Aは図11の構成に対応する結果を示し、実線Bは図12の構成に対応する結果を示している。実線Bに示す段違い方式の方が、反応度価値の減少割合は30〜40%程度抑制できることがわかる。
【0035】
図13は、本発明の実施形態の原子炉用制御棒の翼片ハフニウム板厚tと吸収材スペ−サ幅xの核的寿命への影響因子(LS)の例を示すグラフであって、図7の反応度価値Rsの代わりに核的寿命の変化特性を示したものである。図13で、縦軸は、従来型の「停止用制御棒」であるB4C制御棒の反応度価値との比(相対値)として示している。吸収材スペ−サ幅xの値が小さい場合と大きい場合に若干ずれるが、おおよそ直線で近似できる。直線の係数と定数は近似的に翼片厚さtに対して直線で近似できる。
【0036】
つぎに、この実施形態によって沸騰水型原子炉用制御棒の簡易設計法を行なう式と手順を説明する。対象とする制御棒の構造は、図1ないし図3に示すものを想定している。
【0037】
ここで、以下に示す符号を用いる。
【0038】
t……翼片ハフニウム板厚
w……軸心部水領域幅
2w……軸心部水領域全幅
v……翼内水窓幅(非吸収材部幅)
x……吸収材スペ−サ幅
B……翼厚
RN……基準制御棒の反応度価値
LN……基準制御棒の核的寿命
t0……ジルカロイ薄板厚
基準寸法として、w=26mm、B=83mm、t0=0.4mm、v=0とする。
【0039】
反応度価値は次式で求められる。ここで、RAは制御棒の反応度価値の絶対値、RNは比較基準とする制御棒の反応度価値で入力値、RSは基準制御棒の反応度価値相対値である。諸係数および定数はパラメ−タの値を変えて計算で求められる。
【0040】
RA=RS・FW・FV・FB・RN
RS=R1・x+R0
R1=S12・t2+S11・t+S10
R0=S02・t2+S01・t+S00
FW=W2・w2+W1・w+W0
FV=V2・v2+V1・v+V0
FB=b1・B+b0
FVの値は、水窓22を、図12のように両翼片で対向しないように段違いにするか、図11のように対向するようにするかで変化し、係数や定数が変化するので、入力条件(Iv)で選択する。図10に示したように、段違いにする方が水窓による反応度損失は30〜40%程度抑制できる。
【0041】
核的寿命(絶対値:LA)は次の近似式で求められる。LSは基準制御棒(w=26mm、v=0)に対する核的寿命相対値である。LNは比較基準とする制御棒の反応度価値で入力値として与える。
【0042】
LA=LS・LN
LS=L1・x+L0
L1=L11・t+L10
L0=L01・t+L00
つぎに、上述の諸式により数値計算した例を、図14ないし図16を参照しながら説明する。図14は、この実施形態により計算された反応度価値と核的寿命の関係の例を示すグラフである。図15は図14に対応する領域区分の例を示す模式図であり、図16は図14に対応する入力条件の例を示す表である。対象とする制御棒の構造は、図1ないし図3に示すものを想定している。ここでは、翼厚B=8.3mm、ジルカロイ薄板厚t0=0.4mmとする。
【0043】
図14および図15の番号(1)、(2)、(3)、(4)は挿入先端側(上端側)から4分割して番号を付したものである。この設計例では軸心水領域の幅wは26mmで一定とした。燃焼前の反応度価値は比較基準の制御棒のそれの+5%程度以内が理想であるとして、幅v=10mmの水窓を設けて、意識的に抑制している。翼片のハフニウム板厚tは1.5mmとし、核的寿命と反応度価値を吸収材スペ−サの幅xで調節した。
【0044】
ここで、翼片等におけるハフニウムの「実効厚さ」について簡単に説明しておく。
【0045】
製造上、軸方向全体のハフニウム板20あるいは翼片17の厚さは一様であることが最も容易かつ健全性確保の面でも望ましいと考えられる。ハフニウム板はこの場合、挿入末端側で必要な厚さを基準とし、先端側では吸収材スペ−サの幅xを調節して核的寿命と反応度価値の値を調節するのが好適である。ハフニウム板の厚さtは現実的には1.2〜1.8mmとなろう。仮にt=1.5mmとし、サンドイッチとして使用するジルカロイ薄板の厚さt0を十分な健全性を確保するとして0.4mmと想定する。
【0046】
今、ジルカロイ薄板21の厚さt0を薄めの0.2mmとすると、ハフニウムの密度は13、ジルカロイの密度は6.5であるため、ハフニウム板厚t=1.2mm、ジルカロイ薄板厚t0=0.2mmでは、単位面積当たりの重量は、0.12×13+2×0.02×6.5=1.82(g/cm2)、ハフニウムだけの場合は、(0.12+2×0.02)×13=2.08(g/cm2)、したがって両者の比は0.88となる。ハフニウム板厚tを厚めの2mm、ジルカロイ薄板厚t0も厚めの0.5mmとすると、0.2×13+2×0.05×6.5=3.25(g/cm2)、ハフニウムだけの場合には(0.2+2×0.05)×13=3.9(g/cm2)、両者の比は0.83となる。またハフニウム板厚t=1.5mm、ジルカロイ薄板厚t0=0.4mmとすると、サンドイッチの場合0.15×13+2×0.04×6.5=2.47(g/cm2)、ハフニウムだけの場合、(0.15+2×0.04)×13=2.99(g/cm2)、両者の比は0.83となる。したがって、サンドイッチ方式の代わりに合金とすると、(ハフニウム+ジルコニウム)合金におけるハフニウムの重量比は80wt%程度以上となる。
【0047】
本実施形態では、合金の場合も考慮して、密度13となるハフニウムの厚さのことを実効厚さと定義している。ハフニウムがジルコニウムとの合金として希釈されているか、合金でないかによって、本実施形態が対象としている制御棒では核特性上の差異は認められない。ハフニウム割合が低いと反応度価値や核的寿命が十分確保できなくなる恐れがある。したがって合金の場合にはハフニウムの重量割合は80wt%程度以上が望ましいことがわかる。
【0048】
ところで、簡易計算の結果は詳細計算の結果から若干ずれるはずであり、必要あれば簡易計算の結果を詳細計算により確認する。サ−ベイ的に詳細計算を繰り返す必要はない。簡易設計に修正を加える必要がある場合には、簡易計算法の式を用いて、修正の程度や方策を容易に探すことができる。
【0049】
以上本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
11 翼
12 短尺十字状結合部材(タイクロス)
13 先端構造材
14 末端構造材
15 軸心水領域(CWR)
16 トラップ間隙
17 翼片
18 吸収材スペ−サ
19 非吸収材スペーサ
20 ハフニウム板
21 薄板
22 水窓
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハフニウムを主要な中性子吸収材とする2枚の板状の翼片を離間配置し、両翼片の間で挿抜軸方向の先端側から少なくとも全有効長の1/4の長さにわたってハフニウムを主吸収材とした板状の中性子吸収板をスペ−サとして用いることにより各翼を構成し、4枚の翼を軸方向に局所的にまたは全長にわたって配置された十字形の結合部材を用いて十字形に結合して構成された沸騰水型原子炉用制御棒を設計する設計方法であって、
反応度価値を、翼片におけるハフニウムの実効厚さの関数、吸収材スペ−サ幅の関数、軸心部水領域幅の関数、翼片内部に設ける場合の非吸収材部幅の関数、および翼厚の関数のうち、少なくとも翼片におけるハフニウムの実効厚さと吸収材スペ−サ幅の関数として表すことを特徴とする原子炉用制御棒設計方法。
【請求項2】
反応度価値を吸収材スペ−サ幅の1次関数で表わし、その1次関数の係数および定数を翼片におけるハフニウムの実効厚さの関数で表すことを特徴とする請求項1に記載の原子炉用制御棒設計方法。
【請求項3】
前記ハフニウムの実効厚さの関数は2次式であることを特徴とする請求項2に記載の原子炉用制御棒設計方法。
【請求項4】
平面状に対向する翼の間に局所的に配置された十字形の前記結合部材によって形成される軸心部間隙の全幅(2w)によって変化する反応度価値の相対変化特性を、w≧1.2cmにおいて、該幅の2次関数として表すことを特徴とする請求項1に記載の原子炉用制御棒設計方法。
【請求項5】
翼幅のうち、翼片内部に吸収材を排除した部分を設ける場合、その吸収材排除部分の非吸収材部幅によって変化する反応度価値の相対変化特性を、該非吸収材部幅の2次関数として表すことを特徴とする請求項1に記載の原子炉用制御棒設計方法。
【請求項6】
翼厚が変化する場合、その翼厚によって変化する反応度価値の相対変化特性を、翼厚の1次関数として表すことを特徴とする請求項1に記載の原子炉用制御棒設計方法。
【請求項7】
核的寿命を吸収材スペ−サ幅の1次関数で表わし、その1次関数の係数および定数を翼片におけるハフニウムの実効厚さの関数で表すことを特徴とする請求項1に記載の原子炉用制御棒設計方法。
【請求項8】
前記1次関数の係数および定数を翼片におけるハフニウムの実効厚さの1次関数で表すことを特徴とする請求項7に記載の原子炉用制御棒設計方法。
【請求項9】
制御棒の軸方向反応度価値分布を、翼片におけるハフニウムの実効厚さ、吸収材スペ−サ幅、十字形の前記結合部材によって形成される間隙の全幅、および、翼片内部に吸収材を排除した部分を設ける非吸収材部幅によって調整して、目的の分布を達成することを特徴とする請求項1に記載の原子炉用制御棒設計方法。
【請求項10】
翼片におけるハフニウムの実効厚さを軸方向に一定とし、吸収材スペ−サ幅、十字形の前記結合部材によって形成される間隙の全幅、および、翼片内部に吸収材を排除した部分を設ける非吸収材部幅によって調整して、目的の軸方向反応度価値分布を達成することを特徴とする請求項9に記載の原子炉用制御棒設計方法。
【請求項11】
制御棒の軸方向核的寿命分布を、翼片におけるハフニウムの実効厚さを一定とし、その厚さと吸収材スペ−サ幅を調節することによって、目的の核的寿命分布を達成することを特徴とする請求項1に記載の原子炉用制御棒設計方法。
【請求項12】
ハフニウムを主要な中性子吸収材とする2枚の板状の翼片を離間配置し、両翼片の間で挿抜軸方向の先端側から少なくとも全有効長の1/4の長さにわたってハフニウムを主吸収材とした板状の中性子吸収板をスペ−サとして用いることにより各翼を構成し、4枚の翼を軸方向に局所的にまたは全長にわたって配置された十字形の結合部材を用いて十字形に結合して構成された沸騰水型原子炉用制御棒を評価する評価方法であって、
反応度価値を、翼片におけるハフニウムの実効厚さの関数、吸収材スペ−サ幅の関数、軸心部水領域幅の関数、翼片内部に設ける場合の非吸収材部幅の関数、および翼厚の関数のうち、少なくとも翼片におけるハフニウムの実効厚さと吸収材スペ−サ幅の関数として表すことを特徴とする原子炉用制御棒評価方法。
【請求項1】
ハフニウムを主要な中性子吸収材とする2枚の板状の翼片を離間配置し、両翼片の間で挿抜軸方向の先端側から少なくとも全有効長の1/4の長さにわたってハフニウムを主吸収材とした板状の中性子吸収板をスペ−サとして用いることにより各翼を構成し、4枚の翼を軸方向に局所的にまたは全長にわたって配置された十字形の結合部材を用いて十字形に結合して構成された沸騰水型原子炉用制御棒を設計する設計方法であって、
反応度価値を、翼片におけるハフニウムの実効厚さの関数、吸収材スペ−サ幅の関数、軸心部水領域幅の関数、翼片内部に設ける場合の非吸収材部幅の関数、および翼厚の関数のうち、少なくとも翼片におけるハフニウムの実効厚さと吸収材スペ−サ幅の関数として表すことを特徴とする原子炉用制御棒設計方法。
【請求項2】
反応度価値を吸収材スペ−サ幅の1次関数で表わし、その1次関数の係数および定数を翼片におけるハフニウムの実効厚さの関数で表すことを特徴とする請求項1に記載の原子炉用制御棒設計方法。
【請求項3】
前記ハフニウムの実効厚さの関数は2次式であることを特徴とする請求項2に記載の原子炉用制御棒設計方法。
【請求項4】
平面状に対向する翼の間に局所的に配置された十字形の前記結合部材によって形成される軸心部間隙の全幅(2w)によって変化する反応度価値の相対変化特性を、w≧1.2cmにおいて、該幅の2次関数として表すことを特徴とする請求項1に記載の原子炉用制御棒設計方法。
【請求項5】
翼幅のうち、翼片内部に吸収材を排除した部分を設ける場合、その吸収材排除部分の非吸収材部幅によって変化する反応度価値の相対変化特性を、該非吸収材部幅の2次関数として表すことを特徴とする請求項1に記載の原子炉用制御棒設計方法。
【請求項6】
翼厚が変化する場合、その翼厚によって変化する反応度価値の相対変化特性を、翼厚の1次関数として表すことを特徴とする請求項1に記載の原子炉用制御棒設計方法。
【請求項7】
核的寿命を吸収材スペ−サ幅の1次関数で表わし、その1次関数の係数および定数を翼片におけるハフニウムの実効厚さの関数で表すことを特徴とする請求項1に記載の原子炉用制御棒設計方法。
【請求項8】
前記1次関数の係数および定数を翼片におけるハフニウムの実効厚さの1次関数で表すことを特徴とする請求項7に記載の原子炉用制御棒設計方法。
【請求項9】
制御棒の軸方向反応度価値分布を、翼片におけるハフニウムの実効厚さ、吸収材スペ−サ幅、十字形の前記結合部材によって形成される間隙の全幅、および、翼片内部に吸収材を排除した部分を設ける非吸収材部幅によって調整して、目的の分布を達成することを特徴とする請求項1に記載の原子炉用制御棒設計方法。
【請求項10】
翼片におけるハフニウムの実効厚さを軸方向に一定とし、吸収材スペ−サ幅、十字形の前記結合部材によって形成される間隙の全幅、および、翼片内部に吸収材を排除した部分を設ける非吸収材部幅によって調整して、目的の軸方向反応度価値分布を達成することを特徴とする請求項9に記載の原子炉用制御棒設計方法。
【請求項11】
制御棒の軸方向核的寿命分布を、翼片におけるハフニウムの実効厚さを一定とし、その厚さと吸収材スペ−サ幅を調節することによって、目的の核的寿命分布を達成することを特徴とする請求項1に記載の原子炉用制御棒設計方法。
【請求項12】
ハフニウムを主要な中性子吸収材とする2枚の板状の翼片を離間配置し、両翼片の間で挿抜軸方向の先端側から少なくとも全有効長の1/4の長さにわたってハフニウムを主吸収材とした板状の中性子吸収板をスペ−サとして用いることにより各翼を構成し、4枚の翼を軸方向に局所的にまたは全長にわたって配置された十字形の結合部材を用いて十字形に結合して構成された沸騰水型原子炉用制御棒を評価する評価方法であって、
反応度価値を、翼片におけるハフニウムの実効厚さの関数、吸収材スペ−サ幅の関数、軸心部水領域幅の関数、翼片内部に設ける場合の非吸収材部幅の関数、および翼厚の関数のうち、少なくとも翼片におけるハフニウムの実効厚さと吸収材スペ−サ幅の関数として表すことを特徴とする原子炉用制御棒評価方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−220299(P2012−220299A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85287(P2011−85287)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
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