説明

原子炉隔離時冷却系

【課題】原子炉の崩壊熱による蒸気を利用して原子炉を長期にわたって冷却できる原子炉隔離時冷却系を提供する。
【解決手段】原子炉隔離時冷却系は、原子炉隔離時に原子炉の崩壊熱によって発生する蒸気で蒸気タービンである隔離時冷却タービン13を駆動することによって原子炉隔離時冷却ポンプ12を駆動する。原子炉隔離時冷却系の真空ポンプ14と復水ポンプ15は、原子炉の崩壊熱によって発生する蒸気で駆動する第2の蒸気タービン15及び第3の蒸気タービン17によってそれぞれ駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主蒸気隔離弁が作動され原子炉が隔離・閉鎖された場合(原子炉隔離時)に原子炉に冷却水を送り、炉心の冷却並びに炉水位を維持する原子炉隔離時冷却系(RCIC系)に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所においては、外部交流電源以外に、非常時に動作する非常用交流電源がある。これらのすべての交流電源が喪失する事態が発生した場合にも原子炉(炉心)を冷却できるようにするために、RCIC系は原子炉の崩壊熱による蒸気で駆動するRCICタービンによりRCICポンプを駆動するようになっている。RCIC系にはRCICポンプ以外に、少なくとも真空ポンプ、復水ポンプ及び電動弁があり、すべての交流電源が喪失した場合に、これらは蓄電池(バッテリ)で駆動するようになっている。例えば、原子炉の崩壊熱による蒸気で駆動するRCICタービンに発電機を設置し、発電機の出力電圧を利用して上記蓄電池を充電させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−66897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
真空ポンプ、復水ポンプの駆動源である蓄電池の容量が枯渇する、つまり放電しきってしまうと、原子炉の崩壊熱による蒸気が発生していても真空ポンプや復水ポンプが停止することにより、原子炉への冷却水注入機能が停止し、冷却機能が喪失してしまう可能性がある。特許文献1に記載のものでは、RCICタービンに発電機を設置し、発電機の出力電圧を利用して上記蓄電池を充電させている。つまり、発電機は外部交流電源及び非常用交流電源の補助電源になっている。蓄電池に高電圧遮断機、中電圧遮断機、初期励磁機、照明、制御電源、制御機器等が接続されており、原子炉スクラム後の原子炉の崩壊熱では、これら負荷を駆動するための十分な充電ができない可能性がある。万一、外部交流電源及び非常用交流電源が喪失する様な事象が発生する場合には、このことが顕著になる。このため、原子炉を長期にわたって冷却することができなくなるという問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、原子炉の崩壊熱による蒸気を利用して原子炉を長期にわたって冷却できる原子炉隔離時冷却系を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するために、本発明の原子炉隔離時冷却系は、原子炉隔離時に原子炉の崩壊熱によって発生する蒸気で蒸気タービンを駆動することによって原子炉隔離時冷却ポンプを駆動するようにした原子炉隔離時冷却系であって、原子炉隔離時冷却系の真空ポンプと復水ポンプは原子炉の崩壊熱によって発生する蒸気で駆動する第2及び第3の蒸気タービンによってそれぞれ駆動されるようにしたものである。
かかる構成により、原子炉の崩壊熱による蒸気を利用して原子炉を長期にわたって冷却できるものとなる。
【0007】
(2)また、本発明の原子炉隔離時冷却系は、原子炉隔離時に原子炉の崩壊熱によって発生する蒸気で蒸気タービンを駆動することによって原子炉隔離時冷却ポンプを駆動するようにした原子炉隔離時冷却系であって、該原子炉隔離時冷却ポンプに真空ポンプと復水ポンプを直結し、前記蒸気タービンによって真空ポンプと復水ポンプを駆動するようにしたものである。
かかる構成により、原子炉の崩壊熱による蒸気を利用して原子炉を長期にわたって冷却できるものとなる。
【0008】
(3)また、本発明の原子炉隔離時冷却系は、原子炉隔離時に原子炉の崩壊熱によって発生する蒸気で蒸気タービンを駆動することによって原子炉隔離時冷却ポンプを駆動するようにした原子炉隔離時冷却系であって、前記蒸気タービンに直結した発電機からの出力電圧を直流電圧に変換する電力変換機を備え、該電力変換機の出力である直流電圧によって原子炉隔離時冷却系の真空ポンプと復水ポンプを駆動するようにしたものである。
かかる構成により、原子炉の崩壊熱による蒸気を利用して原子炉を長期にわたって冷却できるものとなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、原子炉の崩壊熱による蒸気を利用して原子炉隔離時冷却系の真空ポンプと復水ポンプを駆動することが可能になり、原子炉の崩壊熱によって蒸気が発生している間は原子炉を冷却し続けることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第一の実施形態である原子炉隔離時冷却系の一構成図である。
【図2】本発明の第一の実施形態の変形例である。
【図3】本発明の第二の実施形態である原子炉隔離時冷却系の一構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して本発明の各実施形態を説明する。以下に説明する本発明の実施形態は、
(1)原子炉隔離時に原子炉の崩壊熱によって発生する蒸気で蒸気タービンを駆動することによって原子炉隔離時冷却ポンプを駆動するようにした原子炉隔離時冷却系において、原子炉隔離時冷却系の真空ポンプと復水ポンプは原子炉の崩壊熱によって発生する蒸気で駆動する第2及び第3の蒸気タービンによってそれぞれ駆動されることを特徴とする第一の実施形態と、
(2)原子炉隔離時に原子炉の崩壊熱によって発生する蒸気で蒸気タービンを駆動することによって原子炉隔離時冷却ポンプを駆動するようにした原子炉隔離時冷却系において、前記蒸気タービンに直結した発電機からの出力電圧を直流電圧に変換する電力変換機を備え、該電力変換機の出力である直流電圧によって原子炉隔離時冷却系の真空ポンプと復水ポンプを駆動することを特徴とする第二の実施形態に大別して説明する。
〔第一の実施形態〕
図1は第一の実施形態であり、原子炉隔離時冷却系の主要構成を示す。
【0012】
原子炉格納容器1内に原子炉圧力容器2とサプレッションプール3が設置され、原子炉隔離時にはタービン(図示していない)に接続される主蒸気ライン21が内側主蒸気隔離弁4及び外側主蒸気隔離弁5によって遮断される。原子炉隔離時には内側電動弁6及び外側電動弁7が開き、原子炉の崩壊熱によって発生する蒸気がRCICタービン13、復水ポンプ用タービン15、真空ポンプ用タービン17に供給される。これら13、15、17は蒸気タービンである。動弁11、20も開状態になる。原子炉の崩壊熱によって発生する蒸気によってRCICタービン13が駆動されことにより、RCICタービン13に直結されているRCICポンプ12が駆動さる。これにより初期水源として復水タンク10の水がRCICポンプ12によって原子炉圧力容器2内に供給され、原子炉が冷却される。
【0013】
復水タンク10の水がなくなる場合には、最終水源として電動弁9が開きサプレッションプール3内の水が、RCICポンプ12によって原子炉圧力容器2内に供給され、原子炉が冷却される。復水ポンプ用タービン15も原子炉の崩壊熱によって発生する蒸気で駆動され、復水ポンプ用タービン15に直結されている復水ポンプ14が駆動さる。これにより真空タンク19の水がRCICポンプ12に供給され、さらにRCICポンプ12によって原子炉圧力容器2内に供給され、原子炉が冷却される。なお、8は取水口である。
【0014】
真空ポンプ用タービン17も原子炉の崩壊熱によって発生する蒸気で駆動され、真空ポンプ用タービン17に直結されている真空ポンプ16が駆動さる。真空ポンプ16はRCICタービン13、復水ポンプ用タービン15、真空ポンプ用タービン17から排出される蒸気はコンデンサー18により回収、凝縮する。コンデンサー18は蒸気我漏出しないように負圧に保持する。真空ポンプ16はコンデンサー18の真空保持を図っており、非凝縮性ガスをサプレッションプール3に排気する。
【0015】
外部交流電源22、非常用交流電源28が機能している間は、電動弁6、7、9、11、20はこれら電源の出力電圧を駆動源として起動されるが、これら電源が喪失した場合は蓄電池27の出力電圧を駆動源として起動される。なお、23、29は遮断機、24,30は変圧器である。25,31は直流変換器であり、交流電圧を直流電圧に変換する。外部交流電源22、非常用交流電源28が機能している間は、電動弁6、7、9、11、20及びその他負荷に該直流電圧が供給されると共に蓄電池27が充電される。
【0016】
原子炉隔離時には電動弁6、7、9、11、20が起動され、閉状態から開状態になるが、閉操作をするまでは開状態を維持するタイプの電動弁である。このため、電動弁6、7、9、11、20が開状態後に外部交流電源22、非常用交流電源28が喪失し、さらに蓄電池の容量が枯渇しても、その状態は維持され、原子炉の崩壊熱によって蒸気が発生している間は、RCICタービン13、復水ポンプ用タービン15、真空ポンプ用タービン17に蒸気が供給され続けるため、RCICポンプ12、復水ポンプ14及び真空ポンプ16の働きにより原子炉を冷却し続けることが可能になる。復水ポンプ14及び真空ポンプ16が蓄電池27の負荷にならないように構成しており、蓄電池27から負荷への電力供給をより一層長くできるようになる。
【0017】
原子炉の冷却が進んで原子炉の崩壊熱が低くなって蒸気発生がなくなると、RCICタービン13、復水ポンプ用タービン15、真空ポンプ用タービン17が停止して原子炉冷却が停止するが、その後何らかの要因で再度原子炉の崩壊熱によって蒸気が発生すると、これによってRCICタービン13、復水ポンプ用タービン15、真空ポンプ用タービン17が再度駆動される。この結果、RCICポンプ12、復水ポンプ14及び真空ポンプ16が再度駆動され原子炉冷却を再開することが可能になる。このように、原子炉の崩壊熱によって発生する蒸気を利用して蒸気タービンでポンプを駆動して原子炉冷却を原子炉の崩壊熱に応じて原子炉を冷却することができる。つまり、原子炉の崩壊熱が高くなれば発生する蒸気を利用して自動的に原子炉を冷却することが可能になる。
【0018】
図2は、図1に変形例であり、RCICポンプ12、復水ポンプ14及び真空ポンプ16をRCICタービン13に直結して、RCICタービン13の駆動によってこれらのポンプが駆動される。図1の実施例と同様な効果があるが、さらに図1の実施例と比べ、蒸気タービンの台数を1台にでき、工事コストを低減できるというメリットがある。この場合にも、原子炉の崩壊熱によって発生する蒸気を利用して蒸気タービンでポンプを駆動して原子炉冷却を原子炉の崩壊熱に応じて原子炉を冷却することができる。つまり、原子炉の崩壊熱が高くなれば発生する蒸気を利用して自動的に原子炉を冷却することが可能になる。
〔第二の実施形態〕
以上の発明は原子炉の崩壊熱によって発生する蒸気を利用して蒸気タービンでポンプを駆動して原子炉冷却する場合について説明したが、上記蒸気タービンに発電機を取り付けて発電機の出力電圧を利用してポンプを起動して原子炉冷却する場合について、図3を用いて説明する。図3において、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0019】
原子炉隔離時に原子炉の崩壊熱によって発生する蒸気で蒸気タービンであるRCICタービン13が駆動される。RCICポンプ12はRCICタービン13に直結されており、RCICタービン13が駆動されることで、RCICポンプ12も駆動する。さらに、RCICタービン13には発電機33が取り付けられているため、原子炉隔離時に原子炉の崩壊熱によって蒸気が発生している間は発電機33によって交流電圧が出力される。この交流電圧は変圧器34を介し、直流変換器35によってする直流電圧に変換される。この直流電圧は電動駆動の復水ポンプ36及び真空ポンプ37に供給される。つまり、発電機33、変圧器34、直流変換器35は、復水ポンプ36及び真空ポンプ37の駆動電源確保として専用に備えられることになる。復水ポンプ36及び真空ポンプ37の働きは、図1と同様であり、RCICポンプ12、復水ポンプ36及び真空ポンプ37の働きにより原子炉を冷却し続けることが可能になる。復水ポンプ14及び真空ポンプ16が蓄電池27の負荷にならないように構成しており、蓄電池27から負荷への電力供給をより一層長くできるようになる。復水ポンプ14及び真空ポンプ16の電気容量が大きいために、この効果は大である。
【0020】
原子炉の冷却が進んで原子炉の崩壊熱が低くなって蒸気発生がなくなると、RCICタービン13が停止して発電機33の出力電圧もなくなる。これによって原子炉冷却が停止するが、その後何らかの要因で再度原子炉の崩壊熱によって蒸気が発生すると、これによってRCICタービン13が再度駆動され、発電機33の出力である交流電圧も得られる。この結果、RCICポンプ12、復水ポンプ36及び真空ポンプ37が再度駆動され原子炉冷却を再開することが可能になる。このように、原子炉の崩壊熱によって発生する蒸気を利用して原子炉冷却を原子炉の崩壊熱に応じて原子炉を冷却することができる。つまり、原子炉の崩壊熱が高くなれば自動的に原子炉を冷却することが可能になる。本実施例では、復水ポンプ36及び真空ポンプ37を電動駆動のポンプとすることで、図1の実施例と比べ、蒸気タービンの台数を1台にでき、かつ蒸気タービンとポンプの直結もRCICポンプ12とRCICタービン13のみになるため、工事時に発生する軸調整が不要になると共に、工事コストを低減できるというメリットがある。さらに、復水ポンプ36及び真空ポンプ37は蓄電池27の負荷としていないために、たとえ蓄電池27の容量が枯渇したとしても、原子炉の崩壊熱によって蒸気が発生する限り原子炉の崩壊熱に応じて原子炉を冷却することができる。
【符号の説明】
【0021】
1…原子炉格納容器
2…原子炉圧力容器
3…サプレッションプール
6、7、9、11、20…電動弁
13…RCICタービン
15…復水ポンプ用タービン
17…真空ポンプ用タービン
12…RCICポンプ
14、36…復水ポンプ
16、37…真空ポンプ
34…変圧器
35…直流変換器
27…蓄電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉隔離時に原子炉の崩壊熱によって発生する蒸気で蒸気タービンを駆動することによって原子炉隔離時冷却ポンプを駆動するようにした原子炉隔離時冷却系であって、
該原子炉隔離時冷却系の真空ポンプと復水ポンプは、原子炉の崩壊熱によって発生する蒸気で駆動する第2及び第3の蒸気タービンによってそれぞれ駆動することを特徴とする原子炉隔離時冷却系。
【請求項2】
原子炉隔離時に原子炉の崩壊熱によって発生する蒸気で蒸気タービンを駆動することによって原子炉隔離時冷却ポンプを駆動するようにした原子炉隔離時冷却系であって、
該原子炉隔離時冷却ポンプに真空ポンプと復水ポンプを直結し、
前記蒸気タービンによって真空ポンプと復水ポンプを駆動することを特徴とする原子炉隔離時冷却系。
【請求項3】
原子炉隔離時に原子炉の崩壊熱によって発生する蒸気で蒸気タービンを駆動することによって原子炉隔離時冷却ポンプを駆動するようにした原子炉隔離時冷却系であって、
前記蒸気タービンに直結した発電機からの出力電圧を直流電圧に変換する電力変換機を備え、
該電力変換機の出力である直流電圧によって原子炉隔離時冷却系の真空ポンプと復水ポンプを駆動することを特徴とする原子炉隔離時冷却系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−233724(P2012−233724A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100777(P2011−100777)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)