説明

原子燃料用被覆管の梱包構造

【課題】 輸送中における異物の生成を防止する。
【解決手段】 多数本の原子燃料用被覆管10は、下部端栓側の溝をホルダー29の溝に係合させることにより、ホルダー29に取り付けられる。容器1の第1の凹部16に嵌合させた支持部材28にホルダー29を取り付けることにより、多数の原子燃料用被覆管10が水平方向に一列に容器1内に収納される。原子燃料用被覆管10は段積み用波板3を介して複数段に段積みされる。ベース部材23を第2の凹部19に嵌合させ、蓋25によってベース部材23の上部開口を覆うことにより、囲い部材22によって原子燃料用被覆管10の上部開口端13が空間を有して覆われる。梱包袋7によって原子燃料用被覆管10を覆うと、囲い部材22によって梱包袋7が原子燃料用被覆管10の上部開口端13に接触するようなことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子燃料用の下部端栓付き被覆管を輸送する際の梱包構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7ないし図9は従来の原子燃料用被覆管の梱包構造を説明するための図であって、図7は従来の梱包構造を分解して示す斜視図、図8は原子燃料用の下部端栓付き被覆管の全体を示す斜視図、図9は図7におけるIX部を拡大し側面側から視た断面図である。
【0003】
図7において符号1で示すものは、細長い箱状に形成された容器であって、上方が開口し、内壁全体は緩衝材2によって覆われている。3は段積み用波板であって、表面に後述する原子燃料用被覆管10の外周部が嵌合する断面円弧状の凹部が、矢印A−B方向に波状に連続して形成されている。4は細長い扁平状に形成された緩衝材、5は雲形状に形成された緩衝材、6は容器1の開口を閉塞する蓋、7は梱包袋である。図8において、10は原子燃料用被覆管であって、下部端栓11が溶着されており、この下部端栓11の略中央部に溝12が形成されている。
【0004】
このように構成されていることにより、原子燃料用被覆管10を容器1内に梱包するには、図9に示すように、先ず、容器1の内壁全体を緩衝材2によって覆い、梱包袋7を容器1内に入れてから、底部に複数の段積み用波板3を矢印C−D方向に略等間隔おいて載置し、この段積み用波板3上に、多数本の原子燃料用被覆管10を水平方向に一列に並べる。次いで、一列に並べた多数本の原子燃料被覆管10上に、複数個の段積み用波板3を略等間隔おいて載置し、これら段積み用波板3上に、さらに多数本の原子燃料用被覆管10を一列に水平方向に並べ、これを繰り返すことにより、複数段の原子燃料用被覆管10が段積み用波板3を介装した状態で段積みされる。これら複数段に段積みされた原子燃料用被覆管10の全体を梱包袋7によって覆い、梱包袋7内の空気を抜いたら、原子燃料用被覆管10上に緩衝材4,5を積み上げ、蓋6によって容器1の開口を閉塞する。このように、容器1内に収容した原子燃料用被覆管10と蓋6との間に緩衝材4,5を埋設したことにより、これら緩衝材4,5によって原子燃料用被覆管10の移動を規制している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の原子燃料用被覆管の梱包構造においては、原子燃料用被覆管10の核燃料用ペレットを装填するための上部開口端13が梱包袋7と接触した状態になっている。一方、この上部開口端13は上部端栓を溶接によって接合するという製造上の要因から、上部端栓の角部も鋭利なままの状態とし端面が直角となっている。このため、この上部開口端13の鋭利に形成された角部が、輸送中の振動により梱包袋7や緩衝材2を切削することにより切屑が生成される。生成された切屑が異物として上部開口端13から原子燃料用被覆管10内に侵入し残留した場合には、この原子燃料用被覆管10が長尺で小径に形成されているため、切屑が静電気によって原子燃料用被覆管10の内部に付着することもあり、これを除去するのに多くの労力を必要とするばかりではなく、品質の低下を招くという問題があった。一方で、輸送中に発生する振動を抑制しようとするには、多くの経費が必要になるため採算性から困難であった。また、仮に、上部開口端13と梱包袋7や緩衝材2との接触を回避した梱包を行ったとしても、輸送中の振動により、原子燃料用被覆管10自体が軸線方向に移動することがあり、この場合には上部開口端13が梱包袋7や緩衝材2と接触するために上記と同じ問題が発生する。
【0006】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、輸送中における異物の生成を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、箱状に形成された容器に多数の原子燃料用被覆管を水平方向に複数本並べるとともに上下方向に複数段に段積みして収納し、収納した原子燃料用被覆管と容器との間に梱包材を介装した原子燃料用被覆管の梱包構造において、原子燃料用被覆管の下部端栓側の溝に係合し原子燃料用被覆管の軸線方向への移動を規制する規制手段を備えたものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記規制手段は、前記原子燃料用被覆管を複数本水平方向に並べて保持するホルダーと、このホルダーを複数段に段積みした状態で支持する支持部材と、この支持部材の開口を閉塞する蓋とによって構成したものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記容器に、前記支持部材を案内して保持し、支持部材の容器内での移動を規制する第1の保持部を設けたものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明において、原子燃料用被覆管の上部開口端を囲い上部開口端への梱包材の接触を規制する囲い部材を備えたものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明において、前記容器に前記囲い部材を案内して保持し、囲い部材の容器内での移動を規制する第2の保持部を設けたものである。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1に係る発明において、段積みされた前記被覆管の上下間に介装する段積み用波板を備え、前記容器にこの段積み用波板を案内して保持し、段積み用波板の容器内での移動を規制する第3の保持部を設けたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、輸送中に原子燃料用被覆管の移動が規制されるため、原子燃料用被覆管と梱包材との接触が規制され異物の発生を抑制できるから、製造コストを上げることなく品質の向上を図ることができる。
【0014】
請求項4および5に係る発明によれば、原子燃料用被覆管の上部開口端と梱包材との接触が規制され異物の発生を抑制できるから、製造コストを上げることなく品質の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は本発明に係る原子燃料用被覆管の梱包構造を分解して示す斜視図、図2は図1におけるII部の拡大図で、同図(a)は平面図、同図(b)は正面図、同図(c)は側面図、図3は図1におけるIII 部の拡大図で、同図(a)は平面図、同図(b)は側面図、同図(c)は正面図、図4は同じくホルダーの斜視図、図5(a)は図3(b)における V(a)部の拡大図、同図(b)は図3(c)における V(b)部の拡大図、図6は図1におけるVI部を拡大して示す平面図である。これらの図において、上述した図7ないし図9に示す従来技術において説明した同一または同等の部材については、同一の符号を付し詳細な説明は適宜省略する。
【0016】
図1において、容器1の矢印C方向の端部には、容器1の内壁に取り付けられた案内柱15,15によって、上方が開口した第1の保持部としての第1の凹部16,16が、矢印A−B方向において互いに対向するように設けられている。また、容器1の矢印D方向の端部には、容器1の内壁に取り付けられた案内柱18,18によって、上方が開口した第2の保持部としての第2の凹部19,19が、矢印A−B方向において互いに対向するように設けられている。さらに、容器1の内壁には、矢印C−D方向に複数対の第3の保持部としての第3の凹部20が、矢印A−B方向において互いに対向するように設けられており、互いに対向する凹部20,20に段積み用波板3が嵌合するように形成されている。
【0017】
22は囲い部材であって、側面視コ字状に形成されたベース部材23と、このベース部材23の一方の側面を覆う側板24と、ベース部材23の上方を覆う上板25とによって構成されており、この囲い部材22は、第2の凹部19,19の上方から係入されることにより、これら凹部19,19によって矢印C−D方向への移動が規制される。
【0018】
27は規制手段であって、側面視コ字状に形成された支持部材28と、この支持部材28によって支持され複数本の原子燃料用被覆管10を水平方向に一列に並べて保持するホルダー29と、支持部材28の上部開口を閉塞する蓋30とによって構成されている。支持部材28の両側部の内側には、上方が開口し互いに対向する案内溝28a,28aが設けられており、この支持部材28は、容器1の第1の凹部16,16の上方から係入されることにより、これら第1の凹部16,16によって矢印C−D方向への移動が規制される。
【0019】
ホルダー29は、図4に示すように、矢印A−B方向に延在する支持壁29aが立設されており、この支持壁29aの上端部には、原子燃料用被覆管10の溝12が嵌合する多数のU字溝29bが矢印A−B方向に等間隔おいて設けられている。支持壁29aに対応して、ホルダー29の下端部には、矢印A−B方向に延在する嵌合溝29cが凹設され、ホルダー29の一方の端部には載置部29dが上方に一体に突設されている。支持壁29aの上端は、この載置部29dの上面よりも高さδだけ高く形成されている。このホルダー29は、支持部材28のガイド溝28a,28aの上方から係入されことにより、これらガイド溝28a,28aによって矢印C−D方向への移動が規制され、この支持部材28には、複数個のホルダー29が段積みされる。支持部材28に段積みされた複数個のホルダー29は、下方のホルダー29の支持壁29aの上端部が上方のホルダー29の溝29cに係合し、支持部材28の上部開口を閉塞する蓋30によって上方への抜けが規制される。
【0020】
このような構成において、原子燃料用被覆管10を容器1内に梱包する方法を説明する。先ず、容器1の内壁全体を緩衝材2によって覆い、梱包袋7を容器1内に入れてから、容器1の第1の凹部16,16に支持部材28を上方から係入することにより、支持部材28を第1の凹部16,16に取り付け、第2の凹部19,19にベース部材23を上方から係入することにより、ベース部材23を第2の凹部19,19に取り付ける。複数個の段積み用波板3の両端部を容器1の第3の凹部20,20に上方から係入することにより、第3の凹部20,20に取り付け、容器1の底部に載置する。次に、多数本の原子燃料用被覆管10の溝12を、1番目のホルダー29のそれぞれのU字溝29bに嵌合させて、多数本の原子燃料用被覆管10を水平方向に並べた状態でホルダー29に取り付ける。多数本の原子燃料用被覆管10が取り付けられたホルダー29を支持部材28のガイド溝28a,28aに係入し、水平方向に並んだ多数本の原子燃料用被覆管10を容器1内に収納し、しかる後、複数個の段積み用波板3の両端部を容器1の凹部20,20に上方から係入し、収納された多数本の原子燃料用被覆管10上に載置する。
【0021】
次いで、多数本の原子燃料用被覆管10の溝12を、2番目のホルダー29のそれぞれのU字溝29bに嵌合させて、多数本の原子燃料用被覆管10を水平方向に並べた状態でホルダー29に取り付ける。多数本の原子燃料用被覆管10が取り付けられた2番目のホルダー29を支持部材28のガイド溝28a,28aに係入し、水平方向に並んだ多数本の原子燃料用被覆管10を、既に容器1内に収納した最初の原子燃料用被覆管10上に段積み用波板3を介して載置する。複数個の段積み用波板3を容器1の凹部20,20に上方から係入させ、収納された2番目の多数本の原子燃料用被覆管10上に載置する。これらの作業を順次繰り返し、複数段の原子燃料用被覆管10を段積みする。
【0022】
所定段数の原子燃料用被覆管10を段積みしたら、蓋30を支持部材28の上部開口を覆うように取り付け、ホルダー29の支持部材28からの上方への抜けを規制する。このとき、ホルダー29の数量が充分でなく、蓋30との間に隙間が発生している場合には、原子燃料用被覆管10が取り付けられていない空のホルダー29をガイド溝28a,28aに係入し、蓋30との間に隙間が発生しないようにする。
【0023】
次いで、ベース部材23の上部開口を上板25によって閉塞することにより、図2(b)に示すように、原子燃料用被覆管10の上部開口端13が囲い部材22によって空間を有して囲まれる。この状態で、梱包袋7によって原子燃料被覆管10を覆い、原子燃料用被覆管10上に緩衝材4,5を積み上げ、蓋6によって容器1の開口を閉塞する。原子燃料用被覆管10の上部開口端13が囲い部材22によって空間を有して囲まれているために、梱包袋7が原子燃料用被覆管10の上部開口端13に接触するようなことがない。このため、輸送中の振動によって上部開口端13が梱包袋7や緩衝材2を切削するようなことがないから切屑の生成が防止される。
【0024】
また、原子燃料用被覆管10は、溝12がホルダー29のU字溝29bに嵌合しているため、輸送中に軸線方向(矢印C−D方向)への移動が規制されるから、上部開口端13の梱包袋7や緩衝材2への接触が規制されるので、接触による切屑の生成が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る原子燃料用被覆管の梱包構造を分解して示す斜視図である。
【図2】図1におけるII部の拡大図で、同図(a)は平面図、同図(b)は正面図、同図(c)は側面図である。
【図3】図1におけるIII 部の拡大図で、同図(a)は平面図、同図(b)は側面図、同図(c)は正面図である。
【図4】本発明に係る原子燃料用被覆管の梱包構造におけるホルダーの斜視図である。
【図5】同図(a)は図3(b)における V(a)部の拡大図、同図(b)は図3(c)における V(b)部の拡大図である。
【図6】図1におけるVI部を拡大して示す平面図である。
【図7】従来の原子燃料用被覆管の梱包構造を分解して示す斜視図である。
【図8】原子燃料用の下部端栓付き被覆管の斜視図である。
【図9】図7におけるIX部を拡大し側面側から視た断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1…容器、2,4,5…緩衝材、3…段積み用波板、6…蓋、7…梱包袋、10…原子燃料用被覆管、11…下部端栓、12…溝、13…上部開口端、16…凹部(第1の保持部)、19…凹部(第2の保持部)、20…凹部(第3の保持部)、22…囲い部材、27…規制手段、28…支持部材、29…ホルダー、30…蓋。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状に形成された容器に多数の原子燃料用被覆管を水平方向に複数本並べるとともに上下方向に複数段に段積みして収納し、収納した原子燃料用被覆管と容器との間に梱包材を介装した原子燃料用被覆管の梱包構造において、原子燃料用被覆管の下部端栓側の溝に係合し原子燃料用被覆管の軸線方向への移動を規制する規制手段を備えたことを特徴とする原子燃料用被覆管の梱包構造。
【請求項2】
請求項1記載の原子燃料用被覆管の梱包構造において、前記規制手段は、前記原子燃料用被覆管を複数本水平方向に並べて保持するホルダーと、このホルダーを複数段に段積みした状態で支持する支持部材と、この支持部材の開口を閉塞する蓋とによって構成したことを特徴とする原子燃料用被覆管の梱包構造。
【請求項3】
請求項2記載の原子燃料用被覆管の梱包構造において、前記容器に、前記支持部材を案内して保持し、支持部材の容器内での移動を規制する第1の保持部を設けたことを特徴とする原子燃料用被覆管の梱包構造。
【請求項4】
請求項1記載の原子燃料用被覆管の梱包構造において、原子燃料用被覆管の上部開口端を囲い上部開口端への梱包材の接触を規制する囲い部材を備えたことを特徴とする原子燃料用被覆管の梱包構造。
【請求項5】
請求項4記載の原子燃料用被覆管の梱包構造において、前記容器に前記囲い部材を案内して保持し、囲い部材の容器内での移動を規制する第2の保持部を設けたことを特徴とする原子燃料用被覆管の梱包構造。
【請求項6】
請求項1記載の原子燃料用被覆管の梱包構造において、段積みされた前記被覆管の上下間に介装する段積み用波板を備え、前記容器にこの段積み用波板を案内して保持し、段積み用波板の容器内での移動を規制する第3の保持部を設けたことを特徴とする原子燃料用被覆管の梱包構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−218835(P2007−218835A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−42196(P2006−42196)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(000229461)株式会社グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン (102)