説明

原料の積み付け装置

【課題】パイルの長手方向への積み付け量を均一にする。
【解決手段】
貯留槽1から切り出された原料の重量をラインメリック11により計測し、計測信号に基づき単位時間ta当たりの搬送実績量平均値PVaveを演算し、これを目標搬送量SPで割り算した“PVave/SP”を補正量とし、搬送実績量平均値PVaveを演算した計測期間と対応付けて記憶する。原料がラインメリック11による計測位置を通過した時点から実際にブームベルトコンベヤ8から払い出されるまでの所要時間を、所要搬送時間としたとき、現時点から所要搬送時間だけ前の時点に対応する計測時間に対応付けられた補正量を獲得し、この補正量を、積み付けスタッカ7の基準走行速度Vに乗算しこれを現時点における目標走行速度Vtanとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料を積み付けてパイルを形成する、原料の積み付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粗鉱ヤードに仮置きされた鉄鋼石は、パイルの積み付け計画にしたがって、ローダで粗鉱ヤードから切り出され、搬送途中で破砕、篩分け分級され、塊鉱と粉鉱に分けてサージホッパーに一時貯留された後、定量切り出し装置で定量切り出しされ、ベッディングヤードに搬送されて積み付けスタッカで層状に積み付けられる。
この積み付けられて形成される山をパイルといい、パイルの積み付けが完了すると、下工程の操業に合わせて、パイルの長手方向の一方端面からリクレーマで切り出される。
【0003】
1つの積み付けパイルを作り上げるには数十種類の銘柄をパイルの長手方向に200〜300層の層状に積み上げていくが、積み付けられる銘柄は途中で荷切れするため長手方向には必ず成分の変動を生じる。
このため、この成分の変動を抑制する方法として、例えば、パイルの長手方向にある長さ単位で現時点での成分計算を行い、最終的なパイルの長手方向の成分分布が均一となるように、これから積み付ける銘柄の単位時間当たりの搬送量を算出し、定量切り出し装置にて定量切り出しを行なう方法などが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−100543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、定量切り出し装置においては、貯槽内の原料固着による切り出し量の異常な変化や原料の嵩比重の変化に対応する制御系の遅れ等により、単位時間当たりの搬送予定量と、単位時間当たりの搬送実績量との間に差が生じることがあり、この切り出し量の異常な変化や原料の嵩比重の変化に対応する制御系の遅れ等によっても、パイルの長手方向に成分変動を生じさせてしまうという問題がある。
そこで、この発明は、上記従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、パイルの積み付け量を均一にすることの可能な原料の積み付け装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1にかかる原料の積み付け装置は、原料の単位時間当たりの搬送量が目標搬送量となるように前記原料の切り出しを行なう切り出し手段と、前記切り出し手段で切り出された前記原料を払い出す積み付けスタッカと、前記積み付けスタッカを目標走行速度で走行させ、前記積み付けスタッカから払い出された前記原料を積み付けてパイルを形成する走行制御手段と、前記切り出し手段で切り出された単位時間当たりの実際の搬送量を検出する搬送実績量検出手段と、前記搬送実績量検出手段で検出した搬送実績量と前記目標搬送量とに基づいて前記目標走行速度を補正する目標走行速度補正手段と、を備えることを特徴としている。
【0007】
また、請求項2にかかる原料の積み付け装置は、前記原料が前記搬送実績量検出手段による前記搬送量の計測位置を通過した時点から前記積み付けスタッカから払い出される位置に到達するまでの所要時間を演算する所要搬送時間演算手段を備え、前記目標走行速度補正手段は、前記所要搬送時間演算手段で演算された前記所要時間相当前の時点における前記搬送実績量及び前記目標搬送量に基づいて、前記目標走行速度を補正することを特徴としている。
さらに、請求項3にかかる原料の積み付け装置は、前記切り出し手段は、種類の異なる複数の原料を切り出し可能に形成され、前記パイルとして種類の異なる複数の原料からなる配合原料のパイルを形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の原料の積み付け装置によれば、搬送実績量と目標搬送量とに基づいて積み付けスタッカの走行速度を制御するため、搬送実績量と目標搬送量とが一致せずパイルに積み付けられる原料の払い出し量が変動すると予測されるときには、払い出し量が一定となるように積み付けスタッカの走行速度を早める又は遅らせることにより、各地点における原料の払い出し量が一定となるようにすることができ、その結果、原料を均一に積み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明を適用した原料の積み付け装置の一例を示す構成図である。
【図2】本発明の動作説明に供する説明図である。
【図3】総括制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】補正量演算処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用した原料の積み付け装置の一例を示す概略構成図である。
図1において、1は貯留槽である。貯留槽1には、例えば図示しない粗鉱ヤードから切り出され、搬送途中で粉砕、篩分け分級等が行なわれた積み付け対象としてのある銘柄の原料が貯留される。この貯留槽1の底部には定量切り出しベルトコンベヤ3が設けられ、定量切り出しベルトコンベヤ3は、貯留槽1の下部に設けられた定量切り出しのための図示しないロータリバルブや弁等の切り出し機構により切り出された所定量の原料を、搬送ベルトコンベヤ5に搬送する。
【0011】
これにより、貯留槽1から切り出された原料は、定量切り出しベルトコンベヤ3、搬送ベルトコンベヤ5を乗り継ぎ、積み付けスタッカ7のブームベルトコンベヤ8のヘッドからベッディングヤードに積み込まれパイル10が形成される。また、前記搬送ベルトコンベヤ5の適所には、搬送ベルトコンベヤ5の定位置を通過する原料の重量を時々刻々と計測するラインメリック11が設けられている。
【0012】
前記パイル10を積むベッディングヤードの側部には図示しないレールが敷設され、前記積み付けスタッカ7は、前記レールの上を走行しつつパイル10を積み付けるように構成され、前記積み付けスタッカ7を所定速度で走行させることによって、ブームベルトコンベヤ8の先端位置がパイル10の積み付け領域において前後に移動しつつ原料が払い出されることによって、レールの長手方向に沿って原料が山積みされ且つレールの長手方向に長いパイル10が形成されるようになっている。
【0013】
前記定量切り出しベルトコンベヤ3は定量切り出し制御装置13により制御される。前記積み付けスタッカ7、ブームベルトコンベヤ8及び搬送ベルトコンベヤ5は、積み付けスタッカ制御装置15により制御される。そして、これら定量切り出し制御装置13及びスタッカ制御装置15は、総括制御装置17により制御される。
前記定量切り出し制御装置13は、総括制御装置17からの目標搬送量と前記ラインメリック11からの重量信号からなる計測信号とを入力し、ラインメリック11の計測信号から予め設定した単位時間Δt当たりの原料の搬送量(重量)〔T/H〕を搬送実績量として演算する。
【0014】
そして、この搬送実績量が、前記総括制御装置17により指定された目標搬送量と一致するように、前述の図示しない切り出し機構及び定量切り出しベルトコンベヤ3による切り出し量を制御する。
前記積み付けスタッカ制御装置15は、総括制御装置17から搬送ベルトコンベヤ5及びブームベルトコンベヤ8の搬送速度の指令値を入力し、これら搬送ベルトコンベヤ5及びブームベルトコンベヤ8の搬送速度がそれぞれ指定された搬送速度となるようにこれらを駆動制御する。また、総括制御装置17からの指令に応じて積み付けスタッカ7を駆動制御する。具体的には、積み付けスタッカ7を図示しないレール上で駆動制御し、前記ブームベルトコンベヤ8の先端位置が、パイル10の積み付け領域に対応した払い出し区間(図1においてX1〜X2の区間)で往復動するように積み付けスタッカ7の移動方向を切り換える。また、積み付けスタッカ制御装置15は、総括制御装置17から目標走行速度を入力し、積み付けスタッカ7の走行速度が目標走行速度となるように積み付けスタッカ7を駆動制御する。
【0015】
前記総括制御装置17は、前記積み付けスタッカ制御装置15から積み付けスタッカ7の現在位置情報、積み付けスタッカ7の移動方向、ブームベルトコンベヤ8の先端の位置情報等を入力し、これらに基づき、積み付けスタッカ7が移動中であるか、ブームベルトコンベヤ8の先端が払い出し区間(区間X1〜X2)の端部近傍に位置しているか、払い出し区間(区間X1〜X2)の端部近傍に位置しているときにはどの方向に移動しているか、積み付けスタッカ7は停止しようとしているか或いは移動開始しようとしているか等、積み付けスタッカ7の作業状況を判断する。
【0016】
そして、前記積み付けスタッカ7を定速走行させ一定量での払い出しを行なう区間として、前記払い出し区間(区間X1〜X2)内に予め設定した一定駆動区間(図1のx1′〜x2′)を設定し、ブームベルトコンベヤ8の先端位置が、前記一定駆動区間(図1のx1′〜x2′)にあるときには、定量切り出しベルトコンベヤ3による切り出し量、搬送ベルトコンベヤ5及びブームベルトコンベヤ8の搬送速度の制御目標値をそれぞれ予め設定した一定値に設定し、定量切り出しベルトコンベヤ3による切り出し量、搬送ベルトコンベヤ5及びブームベルトコンベヤ8の搬送速度が設定された制御目標値となるように、定量切り出し制御装置13、積み付けスタッカ制御装置15を介して制御する。また、このとき、積み付けスタッカ7の走行速度の制御目標値として予め設定した基準走行速度を設定し、この基準走行速度を後述の補正量に基づき補正して目標走行速度を演算し、積み付けスタッカ7の走行速度が目標走行速度となるように積み付けスタッカ7を駆動制御する。
【0017】
なお、前記定量切り出しベルトコンベヤ3による切り出し量、搬送ベルトコンベヤ5及びブームベルトコンベヤ8の搬送速度の制御目標値として設定される予め設定した一定値及び積み付けスタッカ7の基準走行速度は、例えば、貯留槽1から切り出された原料を積み付けてパイル10を形成する際に、パイル10を良好に形成することの可能な値に設定される。
【0018】
一方、前記ブームベルトコンベヤ8の先端位置が、前記一定駆動区間(区間x1′〜x2′)外にあるとき、すなわち、積み付け領域の端部近傍に位置するときには、積み付けスタッカ7の移動方向や現在位置情報等に基づき、積み付けスタッカ7を停止させるのか或いは移動開始させるのか等を判断し、これに基づき、積み付けスタッカ7の走行速度や、ブームベルトコンベヤ8の搬送速度、定量切り出し制御装置13の目標搬送量、搬送ベルトコンベヤ5の搬送速度、積み付けスタッカ7の走行速度など、各部の制御目標値を演算し、これらを定量切り出し制御装置13や積み付けスタッカ制御装置15に通知する。また、積み付けスタッカ7については、走行速度の制御目標値を目標走行速度としてスタッカ制御装置15に通知する。
【0019】
例えば、ブームベルトコンベヤ8の先端位置が払い出し区間(区間X1〜X2)の端部に近づくときには、積み付けスタッカ7を徐々に減速させると共に、定量切り出し制御装置13の目標搬送量を徐々に減少させる等、積み付けスタッカ7の作業状況に応じて、各種制御目標値を演算する。
また、総括制御装置17は、前記ブームベルトコンベヤ8の先端位置が前記一定駆動区間(区間x1′〜x2′)内にあるとき、前記ラインメリック11からの重量信号に基づき定量切り出し制御装置13で演算した単位時間Δt当たりの搬送実績量とそのときの目標搬送量とに基づき、積み付けスタッカ7の走行速度の補正量を演算する。
【0020】
前記走行速度の補正量は以下の手順で演算する。すなわち、まず、定量切り出し制御装置13から単位時間Δt当たりの搬送実績量を入力する。そして、これに基づき、速度制御用の単位時間ta内における搬送実績量の平均値(以下、搬送実績量平均値という。)PVaveを演算する。なお、前記速度制御用の単位時間taは前記単位時間Δtよりも長い時間に設定される。
【0021】
そして、演算した搬送実績量平均値PVaveを、このときの単位時間当たりの目標搬送量SPで割り算した、“PVave/SP”を補正量とする。なお、この補正量は、前記搬送実績量平均値PVaveの演算に用いた複数の搬送実績量が計測された期間を計測期間tanとしたとき、この計測期間tanにおける補正量とし、補正量は、計測期間tan毎に設定される。総括制御装置17は前記単位時間ta毎に演算した補正量を、計測期間tanと対応付けて記憶する。
なお、前記単位時間taは任意に設定することができる。例えば、補正量を単位時間ta毎に設定するようにしており、後述のように単位時間taが短いほどよりきめ細やかに補正が行なわれることになるため、必要とする積み付け精度に応じて単位時間taを設定すればよい。
【0022】
そして、総括制御装置17は、前記ブームベルトコンベヤ8の先端位置が前記一定駆動区間(区間x1′〜x2′)内にあるとき、次式(1)にしたがって、前記補正量“PVave/SP”に基づき前記基準走行速度Vを補正し、積み付けスタッカ7の目標走行速度Vtanを演算する。
Vtan=V×PVave/SP ……(1)
具体的には、ラインメリック11による計測位置を通過した原料が、実際にブームベルトコンベヤ8から払い出されるまでの時間を所要搬送時間として演算し(所要搬送時間演算手段)、所定の記憶領域に記憶している補正量に基づき、現時点からこの所要搬送時間だけ前の時点が含まれる前記計測期間tanに対応する前記補正量を特定し、これを現時点における補正量とし、特定した補正量に基づき前記(1)式にしたがって目標走行速度Vtanを演算する。そして、この目標走行速度Vtanを現時点における目標走行速度として積み付けスタッカ7に出力する。
【0023】
つまり、図2に示すように、単位時間ta毎に搬送実績量平均値PVaveを演算し、単位時間ta毎に目標搬送量SPとの誤差相当の走行速度の補正を行なうための補正量を演算する。そして、補正量に基づき積み付けスタッカ7の走行速度の制御目標値を補正する。このとき、目標搬送量SPに対して搬送実績量平均値PVaveの方が大きい場合には、走行速度が早められる方向に補正されるため、パイル10の同一地点に積み付けられる原料量は減少気味となり、この減少分と目標搬送量SPよりもより多く搬送された過多分とが相殺されて、結果的にパイル10には目標搬送量SP相当の原料が積み付けられることになる。逆に、目標搬送量SPに対して搬送実績量平均値PVaveの方が小さければ、走行速度が遅くなる方向に補正されるため、パイル10の同一地点に積み付けられる原料は過多気味となり、この過多分と目標搬送量SPよりも少なかった不足分とが相殺されて、結果的にパイル10には目標搬送量SP相当の原料が積み付けられることになる。なお、図2において、横軸は時間〔t〕、縦軸は単位時間当たりの搬送量〔T/H〕である。
【0024】
そして、現時点でブームベルトコンベヤ8から払い出される原料は、現時点から前記所要搬送時間だけ前の時点で演算した搬送実績量平均値PVaveに対応するため、現時点から前記所要搬送時間だけ前の時点で演算した搬送実績量平均値PVaveに対応する補正量に基づき、基準走行速度を補正することになる。
次に、上記実施の形態の動作を、図3及び図4を伴って説明する。図3は、総括制御装置17で実行される積み付け処理全体の総括処理の処理手順の一例を示すフローチャート、図4は、積み付けスタッカ7の走行速度の補正量を演算する補正量演算処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0025】
総括制御装置17は、原料の積み付けを行なう場合には、図3に示すように、まず前記積み付けスタッカ制御装置15から、積み付けスタッカの現在位置情報、積み付けスタッカ7の移動方向、ブームベルトコンベヤ8の先端の位置情報等を読み込み、これに基づき積み付けスタッカ7の作業状況を判断し(ステップS1)、この積み付けスタッカ7の作業状況から、ブームベルトコンベヤ8の先端が予め設定した一定駆動区間(区間x1′〜x2′)にあるかどうかを判断する。
【0026】
例えば起動時など、ブームベルトコンベヤ8の端部が払い出し区間(区間X1〜X2)のX1側の端部近傍に位置する場合には、ステップS2からステップS3に移行し、搬送ベルトコンベヤ5やブームベルトコンベヤ8、積み付けスタッカ7を起動して徐々に加速させ、払い出し区間のX1側の端部位置で積み付けスタッカ7からの原料の払い出しを開始させる等、定量切り出し制御装置13、積み付けスタッカ制御装置を介して各部を駆動制御する。
【0027】
そして、ブームベルトコンベヤ8の先端が一定駆動区間(区間x1′〜x2′)に到達すると、総括制御装置17は図3のステップS2からステップS5に移行し、記憶領域から、参照すべき前記計測期間を検索する。具体的には、原料が、ラインメリック11による計測位置を通過した時点からブームベルトコンベヤ8から実際に払い出されるまでの所要搬送時間だけ現時点よりも前の時点を特定し、この特定した時点が含まれる計測期間を検索する。
【0028】
前記所要搬送時間は、例えば、搬送ベルトコンベヤ5の搬送速度と搬送ベルトコンベヤ5の積み付けスタッカ7側の端部及びラインメリック11間の距離とから演算される、原料がラインメリック11による計測位置を通過した時点から積み付けスタッカ7の位置に到達するまでの搬送時間m1と、ブームベルトコンベヤ8のブーム長さと搬送速度とから演算される、ブームベルトコンベヤ8における原料の搬送時間m2との和から演算する。つまり、“m1+m2”が所要搬送時間となる。ブームベルトコンベヤ8の先端が一定駆動区間にあるときには、搬送ベルトコンベヤ5及びブームベルトコンベヤ8の搬送速度及び、ブームベルトコンベヤ8のブーム長さは既知の一定値となるため、所要搬送時間は一定値となる。
【0029】
ここで、起動時等、計測期間及び補正量等の演算が行なわれておらず記憶領域にこれら情報がまだ記憶されていない場合には、そのままステップS6を経てステップS7に移行し、例えば、補正量“PVave/SP”は“1”として、前記(1)式から目標走行速度Vtanを演算する。
一定駆動区間では、積み付けスタッカ7の走行速度の目標値は既知の基準走行速度Vに設定されるため、この基準走行速度Vと補正量“PVave/SP=1”とが乗算され、積み付けスタッカ7の目標走行速度は基準走行速度Vとなる。
【0030】
そして、ステップS8に移行し、一定駆動区間における各部の制御目標値をそれぞれ予め設定した一定値に設定し、定量切り出しベルトコンベヤ3による切り出し量、搬送ベルトコンベヤ5及びブームベルトコンベヤ8の搬送速度がそれぞれ制御目標値となり且つ、積み付けスタッカ7の走行速度が目標走行速度(=基準走行速度V)となるように、定量切り出し制御装置13、積み付けスタッカ制御装置15を介して制御する。
このため、積み付けスタッカ7は目標走行速度(=基準走行速度V)で定速走行することになる。
【0031】
さらに、総括制御装置17は、ブームベルトコンベヤ8の先端が一定駆動区間(区間x1′〜x2′)に到達すると補正量の演算を開始し、図4のステップS11からステップS12に移行し、定量切り出し制御装置13で演算した単位時間Δt当たりの搬送実績量を定量切り出し制御装置13から読み込む。
そして、単位時間Δt当たりの搬送実績量に基づき速度制御用の単位時間ta内における搬送実績量平均値PVaveを演算し、演算した搬送実績量平均値PVaveを単位時間当たりの目標搬送量SPで割り算して補正量“PVave/SP”を演算する(ステップS13)。
【0032】
また、この搬送実績量平均値PVaveの演算に用いた単位時間Δt当たりの搬送実績量が演算された、速度制御用の単位時間ta相当の期間を計測期間として特定する。そして、特定した計測期間と、この計測期間における補正量とを対応付けて所定の記憶領域に記憶する(ステップS14)。
そして、この処理を繰り返し行なうことにより、単位時間ta毎に補正量“PVave/SP”が演算され、これが計測期間と対応付けられて所定の記憶領域に格納されることになる。
【0033】
例えば、図2に示すように、計測期間ta1における搬送実績量平均値をPVave1、計測期間ta2における搬送実績量平均値をPVave2、計測期間ta3における搬送実績量平均値をPVave3、とすると、計測期間ta1における補正量は“PVave1/SP”、計測期間ta1(時点t11〜時点t12)として記憶され、同様に、計測期間ta2における補正量は“PVave2/SP”、計測期間ta2(時点t12〜時点t13)、計測期間ta3における補正量は“PVave3/SP”、計測期間ta3(時点t13〜時点t14)としてそれぞれ対応付けられて記憶される。
【0034】
そして、このようにして、補正量が演算されて所定の記憶領域に順次記憶され、図3の総括制御処理のステップS5において、現時点よりも前記所要搬送時間だけ前の時点に対応する計測期間が前記記憶領域に存在する状態となると、総括制御装置17は特定した計測期間に対応付けられた補正量を読み出す。そして、読み出した補正量をもとに前記(1)式から目標走行速度Vtanを演算し、積み付けスタッカ7が目標走行速度Vtanで走行するように積み付けスタッカ制御装置15を介して制御する。
【0035】
これによって積み付けスタッカ7は、基準走行速度Vが補正量に応じて補正された目標走行速度Vtanで走行することになる。
このため、ブームベルトコンベヤ8の先端が一定駆動区間内にある場合には、貯留槽1から一定量の原料の切り出しが行なわれ、搬送ベルトコンベヤ5やブームベルトコンベヤ8は、それぞれ一定の搬送速度で駆動される。一方、積み付けスタッカ7は搬送実績量に応じて補正が行なわれた目標走行速度Vtanに応じて駆動される。
【0036】
すなわち、図2に示すように、搬送実績量が目標搬送量SPよりも少なく、搬送実績量平均値PVave<目標搬送量SPとなる計測期間ta1、ta2にラインメリック11による計測位置を通過した原料がブームベルトコンベヤ8から払い出される時点では、基準走行速度Vがより小さくなるように目標走行速度Vtanが演算される。一方、搬送実績量が目標搬送量SPよりも多く、搬送実績量平均値PVave>目標搬送量SPとなる計測期間ta3にラインメリック11による計測位置を通過した原料がブームベルトコンベヤ8から払い出される時点では、基準走行速度Vがより大きくなるように目標走行速度Vtanが演算されることになる。
【0037】
ここで、定量切り出し制御装置13では、貯留槽1から所定量の原料を切り出すように定量切り出しベルトコンベヤ3や切り出し機構を制御しているが、貯留槽1内の原料固着による切り出し量の変化や、嵩比重の変化に対する制御系の遅れ等により単位時間当たりの目標搬送量と単位時間当たりの搬送実績量とに差が生じることがある。しかしながら、目標搬送量と搬送実績量との差に応じて、積み付けスタッカ7の基準走行速度Vを補正し、目標搬送量よりも搬送実績量が少ない場合には基準走行速度Vを遅めにし、逆に目標搬送量よりも搬送実績量が多い場合には基準走行速度Vを早めているため、パイル10を形成するに当たり各地点で実際に払い出される原料量は、定量切り出しベルトコンベヤ3での搬送実績量の増減に関わらず一定とすることができ、すなわち、パイル10の長手方向の積み付け量を均一にすることができる。
【0038】
そして、この状態から、ブームベルトコンベヤ8の先端が一定駆動区間(区間x1′〜x2′)外となり、払い出し区間(区間X1〜X2)の端部X2側に近づくと、総括制御装置17は、図3のステップS2からステップS3に移行し、定量切り出し制御装置13及び積み付けスタッカ制御装置15を介して各部を制御し、例えば、端部X2に近づくほど積み付けスタッカ7を徐々に減速させ、これに伴って貯留槽1からの切り出し量を減少させ、また搬送ベルトコンベヤ5及びブームベルトコンベヤ8の搬送速度を徐々に減速させる。
【0039】
その後積み付けスタッカ7の移動方向を切り換え、以後、前述の起動時と同様の手順で各部を動作させ、ブームベルトコンベヤ8の先端が一定駆動区間(区間x1′〜x2′)に到達すると、総括制御装置17は図3のステップS2からステップS5に移行し、各部の制御目標値を一定値として各部を一定駆動すると共に、図4のステップS11からステップS12に移行して補正量の演算を開始し、基準走行速度Vを補正量に応じて補正した目標走行速度で積み付けスタッカ7を駆動させる。
【0040】
この処理を繰り返し行い、積み付けスタッカ7を払い出し区間(区間X1〜X2)に沿って往復動させつつ、一定駆動区間(区間x1′〜x2′)への積み付けを行なうときには、搬送実績量に応じて積み付けスタッカ7の走行速度を補正しているため、搬送実績量と目標搬送量との間に誤差がある場合であっても、実際に積み付けられる原料量が目標搬送量相当となるように調整することができ、すなわち均一な層に積み付けることができる。
【0041】
そして、貯留槽1のある銘柄の原料の所定量の積み付けが終了したならば、別の銘柄の原料が収納された図示しない他の貯留槽からの原料の切り出しに切り換え、以後、同様の手順で積み付けを行なう。
このように、積み付ける原料の銘柄を切り換えて積み付けを行なうことにより、複数の異なる銘柄の原料が層状に積み付けられた、配合原料からなるパイル10が形成されることになる。
【0042】
ここで、上述のように、原料のパイル10への積み付けを均一に行なうことができるため、各銘柄の層もパイル10の長手方向に均一に形成することができる。このため、パイル10の長手方向において配合原料の成分分布を均一とすることができる。その結果、この配合原料のパイル10から原料を切り出して所定の処理を行なう下工程において、成分分布が安定した配合原料を得ることができる。
なお、上記実施の形態においては、配合原料のパイル10を形成する場合について説明したが、ある1種類の銘柄のみを積み付ける場合であっても適用することができる。
【0043】
また、上記実施の形態においては、補正量“PVave/SP”を乗算して基準走行速度Vを補正することにより、搬送実績量と目標搬送量との誤差を抑制する目標走行速度Vtanを獲得する場合について説明したがこれに限るものではない。例えば、搬送実績量平均値PVaveと目標搬送量SPとの誤差に応じた補正量を、加算または減算して基準走行速度Vを補正することにより搬送実績量と目標搬送量との誤差を抑制する目標走行速度Vtanを獲得するようにしてもよい。
【0044】
また、上記実施の形態においては、速度制御用の単位時間ta内における搬送実績量平均値PVaveを目標搬送量SPで割り算した値を補正量“PVave/SP”とする場合について説明したがこれに限るものではない。例えば、速度制御用の単位時間ta内における、単位時間Δt毎の搬送実績量のうちの中間値、或いは、最大値、または最小値を、単位時間ta内における搬送実績量の代表値とし、この代表値を目標搬送量SPで割り算した値を補正量とすることも可能である。
【0045】
また、例えば、速度制御用の単位時間ta毎にこれに対応する補正量を設定する場合に限るものではなく、前記単位時間Δt当たりの搬送実績量を目標搬送量SPで割り算した値を補正量とすることにより搬送実績量が演算される単位時間Δt毎にこれに対応する補正量を演算するようにしてもよく、また、ラインメリック11の計測信号を用いることにより単位時間Δtよりも短い時間毎にこれに対応する補正量を演算するようにしてもよい。
【0046】
また、上記実施の形態においては、定量切り出し制御装置13での切り出し制御用に用いられている搬送ベルトコンベヤ5に設けられたラインメリック11の計測信号に基づいて補正量を演算する場合について説明したがこれに限るものではない。例えば、ブームベルトコンベヤ8にラインメリックを設け、これに基づき補正量を演算するようにしてもよく、要は搬送実績量を得ることができれば、原料の搬送経路上のどの位置に設けてもよい。
【0047】
また、上記実施の形態においては、ブームベルトコンベヤ8の先端が、一定駆動区間(区間x1′〜x2′)にあるときにのみ積み付けスタッカ7の走行速度を補正する場合について説明したがこれに限るものではなく、ブームベルトコンベヤ8から払い出される原料が、ラインメリック11による計測位置を通過した時点から実際に払い出されるまでの所要搬送時間を獲得することができればどのような状況であっても適用することができる。例えば、ブームベルトコンベヤ8が一定駆動区間(区間x1′〜x2′)外となり、例えば搬送ベルトコンベヤ5やブームベルトコンベヤ8の搬送速度や積み付けスタッカ7の走行速度を減速した場合等であっても、その減速パターンが決まっており、減速パターンから前記所要搬送時間を演算することができれば、一定駆動区間(区間x1′〜x2′)外において原料の積み付けを行なう場合であっても適用することができる。
【0048】
なお、上記実施の形態において、定量切り出しベルトコンベヤ3及び定量切り出し制御装置13が切り出し手段に対応し、積み付けスタッカ制御装置15、総括制御装置17及び図3の総括制御処理が走行制御手段に対応し、ラインメリック11が搬送実績量検出手段に対応し、図4の補正量演算処理及び図3のステップS5からステップS7の処理が目標走行速度補正手段に対応している。
【符号の説明】
【0049】
1 貯留槽
3 定量切り出しベルトコンベヤ
5 搬送ベルトコンベヤ
7 積み付けスタッカ
8 ブームベルトコンベヤ
10 パイル
11 ラインメリック
13 定量切り出し制御装置
15 積み付けスタッカ制御装置
17 総括制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料の単位時間当たりの搬送量が目標搬送量となるように前記原料の切り出しを行なう切り出し手段と、
前記切り出し手段で切り出された前記原料を払い出す積み付けスタッカと、
前記積み付けスタッカを目標走行速度で走行させ、前記積み付けスタッカから払い出された前記原料を積み付けてパイルを形成する走行制御手段と、
前記切り出し手段で切り出された単位時間当たりの実際の搬送量を検出する搬送実績量検出手段と、
前記搬送実績量検出手段で検出した搬送実績量と前記目標搬送量とに基づいて前記目標走行速度を補正する目標走行速度補正手段と、を備えることを特徴とする原料の積み付け装置。
【請求項2】
前記原料が前記搬送実績量検出手段による前記搬送量の計測位置を通過した時点から前記積み付けスタッカから払い出される位置に到達するまでの所要時間を演算する所要搬送時間演算手段を備え、
前記目標走行速度補正手段は、前記所要搬送時間演算手段で演算された前記所要時間相当前の時点における前記搬送実績量及び前記目標搬送量に基づいて、前記目標走行速度を補正することを特徴とする請求項1記載の原料の積み付け装置。
【請求項3】
前記切り出し手段は、種類の異なる複数の原料を切り出し可能に形成され、
前記パイルとして種類の異なる複数の原料からなる配合原料のパイルを形成することを特徴とする請求項1または請求項2記載の原料の積み付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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