説明

原着糸を含むスクリーン用生地

【課題】後加工後の変色が小さいスクリーン用生地の提供。
【解決手段】本発明によるスクリーン用生地は、一般糸と原着糸で構成され、前記原着糸は、経糸及び緯糸、又は経糸あるいは緯糸に含まれるか又は、前記一般糸と原着糸が混紡又は合糸されて経糸及び緯糸、又は経糸あるいは緯糸に含まれ、前記生地の後加工後は、明度差±2以下、彩度差±2以下、色相差±0.1以下であることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原着糸が含まれるスクリーン用生地に関するものであり、特に、原着糸を用いることから生地の染色工程が必要ないため製造工程が短縮でき、生地の後処理加工による生地の変色を最小化する生地に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、家庭、ホテル、レストラン、その他建物等で内部の私生活の保護及び太陽光遮断のために、スクリーンは薄い金属板、木板、プラスチック板等を一定の間隔で繋ぎ合わせそれを垂らすように製造されていたが、最近は合成樹脂系列の織物生地を利用して一定幅に生地を裁断し、ロールに巻いて窓に固定させ、使用者がロールを解いて窓を遮蔽したり、ロールを巻いて視野を確保できるように作られた製品が多く出回っている。これらの製品は、ロール、パネルの形態に生地を切断したものであり、ロールスクリーン(Roll Screen)、パネルスクリーン(Panel Screen)、バーチカル等の名称で呼ばれている。
【0003】
前記スクリーンを制作するための生地は、従来はポリ塩化ビニルを主に用いていたが、ポリ塩化ビニルは火災発生時に分解して人体に非常に有害な塩素ガスが発生するため、米国、日本、欧州等の大部分の国では使用が禁止されており、最近では耐熱性、剛性、電気的性質、耐油性に優れ、温度と湿度の影響にも強いポリエステル系合成樹脂であるPETで製造される生地が多く用いられている。
【0004】
前記のPETを原料として製造される生地で製作されるスクリーンに色を付けるには、従来は生地を製作した後に染色加工を施して生地に色を付けていた。
【0005】
ところが、製作されたスクリーン用生地を染色して色を付けたスクリーン用生地は、スクリーン用として用いられるための洗浄加工、防汚加工、制電加工、コーティング加工、硬直性付与加工、熱処理加工等の様々な後処理加工を経るためスクリーン用生地の変色がひどく、スクリーン用生地の不良率を増加させ、生産単価が嵩む等の様々な問題点があった。
【0006】
一方、このような問題点を解決するために、染色糸を利用して生地を製作して生地に色を出す方法等、様々な染色方法が開発されたが、後加工による変色を効果的に防ぐことはできなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記のような問題点を解決するために発明されたものであり、スクリーン用生地を、紡糸時に染料とポリマーチップを一緒に入れた紡糸機から出した糸の原着糸を利用してスクリーン用生地を製織し、生地に色を付けるための染色工程を必要としないと共に、生地製織後、後加工によるスクリーン用生地の変色を最小化してスクリーン用生地の製造時の変色による生地不良率を低くし、耐久性に優れたスクリーン用生地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記のような目的を達成するために、本発明は照明の光や日光を遮蔽するスクリーン用生地において、前記生地は一般糸と原着糸で構成され、前記原着糸は経糸及び緯糸、又は経糸あるいは緯糸に含まるか又は、前記一般糸と原着糸が混紡又は合糸されて経糸及び緯糸、又は経糸あるいは緯糸に含まれ、前記生地の後加工後は、明度差±2以下、彩度差±2以下、色相差±0.1以下であることを特徴とする原着糸を含むスクリーン用生地を提供する。
【0009】
また、前記原着糸はポリエステル系原着糸であることを特徴とする原着糸を含むスクリーン用生地を提供する。
【0010】
また、前記一般糸及び原着糸、又は一般糸あるいは原着糸は、低融点糸と50:50〜80:20重量比で混紡又は合糸されることを特徴とする原着糸を含むスクリーン用生地を提供する。
【0011】
また、前記一般糸と原着糸は、20:80〜80:20重量比からなることを特徴とする原着糸を含むスクリーン用生地を提供する。
【0012】
また、照明の光や日光を遮断するスクリーン用生地において、前記生地は一般糸と難燃性ポリエステル系原着糸で構成され、前記原着糸は経糸及び緯糸、又は経糸あるいは緯糸に含まれるか又は、前記一般糸と難燃性ポリエステル系原着糸が混紡又は合糸されて経糸及び緯糸、又は経糸あるいは緯糸に含まれ、前記生地の後加工後は、明度差±2以下、彩度差±2以下、色相差±0.1以下であることを特徴とする原着糸を含むスクリーン用生地を提供する。
【0013】
また、前記一般糸及び難燃性ポリエステル系原着糸、又は一般糸あるいは難燃性ポリエステル系原着糸は、低融点糸と50:50〜80:20重量比で混紡又は合糸されることを特徴とする原着糸を含むスクリーン用生地を提供する。
【0014】
また、前記一般糸と難燃性ポリエステル系原着糸は、40:60〜80:20重量比からなることを特徴とする原着糸を含むスクリーン用生地を提供する。
【0015】
また、前記一般糸は、難燃糸であることを特徴とする原着糸を含むスクリーン用生地を提供する。
【0016】
以下、本発明の好ましい一実施例を詳しく説明する。本発明を説明するにあたり、関連する公知機能あるいは構成に対する具体的な説明は、本発明の要旨が模糊とならないようにするために省略する。
【0017】
本明細書で「生地」とは、織物、編成物、フェルト、プレート、不織布、接着織物、モルド(mold)織物、ウェブ(web)の全てを意味する用語として使用する。
【0018】
本発明にかかる原着糸を含むスクリーン用生地は、一般糸と原着糸が混合して形成される。
【0019】
前記一般糸は、合成樹脂で製造されるフィラメント糸の場合は制限なく使用できるが、生地の難燃性を高めるために難燃性が付加された難燃糸を使用することが好ましい。
【0020】
前記原着糸は、紡糸時にポリマーチップと染料を一緒に入れた紡糸機から出したフィラメント糸の場合は、制限なく使用できる。
【0021】
前記のような原着糸は、紡糸工程で染料が分散された状態で混合され、同時に紡糸しながら色糸が生産されたもので、繊維内部で染料と結合し日光堅牢度及び洗濯堅牢度が非常に優れる。
【0022】
前記のような目的を達成するために、一般糸と原着糸で構成される本発明にかかるスクリーン用生地は、原着糸が経糸及び緯糸、又は経糸あるいは緯糸に含まれたり、前記一般糸と原着糸が混紡されたり合糸して経糸及び緯糸、又は経糸あるいは緯糸に含まれて製造される。
【0023】
前記原着糸は、耐熱性、剛性、電気的性質、耐油性に優れ、温度と湿度の影響が少ないポリエステル系合成樹脂を使用することが好ましい。
【0024】
また、前記一般糸及び原着糸、又は一般糸あるいは原着糸を、低融点糸と混紡又は合糸して製造されたスクリーン用生地に別途のコーティング工程を省略でき、スクリーン用としての硬直性を付与できる。
【0025】
前記低融点糸との混紡又は合糸率は、一般糸及び原着糸と低融点糸を50:50〜80:20重量比で混紡又は合糸することが好ましい。
【0026】
前記低融点糸が混紡又は合糸されて制作されるスクリーン用生地は、低融点糸を融着させる熱処理工程を経る。このとき、低融点糸が繊維間に融着して生地に硬直性と形態安定性を付与させる。
【0027】
本発明で使用される低融点糸は、シース−コア型又は分割型複合繊維が非制限的な例として使用できる。前記低融点糸は、非制限的な例としてシース部は低融点ポリエステル系樹脂が、コア部は難燃性ポリエステル系樹脂が含まれる難燃性低融点ポリエステル系フィラメントであり得る。この場合、前記ポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート樹脂からなる群から1以上選択することができ、前記低融点ポリエステル系樹脂は、イソフタル酸成分、テレフタル酸成分、エチレングリコール成分及びジエチレングリコール成分を含むことができる。
【0028】
また、前記ポリエステル系樹脂は、融点は220℃〜260℃が好ましく、前記低融点ポリエステル系樹脂の融点は、110〜200℃が好ましい。前記の温度範囲未満の場合はポリエステル自体の形態安定性に問題があり、前記温度範囲を超過する場合はコア部の樹脂にも影響を及ぼし得る。
【0029】
前記一般糸と原着糸の構成比は、一般糸と原着糸の使用される材質及び色相の明度、彩度、色相差によって様々な構成比を有し得るが、最も好ましくは前記一般糸と原着糸は、20:80〜80:20重量比で構成されるものである。
【0030】
また、前記原着糸は、難燃性ポリエステル系原着糸を使用してスクリーン生地に難燃性を付与するため防炎加工を省略できる。
【0031】
前記難燃性ポリエステル系原着糸を使用する際にも、低融点糸と混紡又は合糸してスクリーン用生地を製造できる。
【0032】
前記低融点糸との混紡又は合糸率は、一般糸及び難燃性ポリエステル原着糸と低融点糸を50:50〜80:20重量比で混紡又は合糸することが好ましい。
【0033】
前記一般糸と難燃性ポリエステル系原着糸の構成比は、一般糸と難燃性ポリエステル系原着糸の使用される材質及び色相の明度、彩度、色相差によって様々な構成比を有し得るが、最も好ましくは、前記一般糸と難燃性ポリエステル系原着糸が40:60〜80:20重量比で構成されるものである。
【0034】
前記難燃性ポリエステル系原着糸は、リン系難燃剤と共重合されているものが好ましく、前記リン系難燃剤はポリエステル系樹脂内にリン原子が5,000ppm〜10,000ppm含まれることが好ましい。前記リンの含量が5,000ppm未満の場合は難燃効果が微々で、10,000ppmを超過するとポリエステル系樹脂の溶融粘度が低下し、紡糸時に作業性及び物性が低下するという問題がある。
【0035】
一方、本発明の一実施例によるスクリーン用生地は、難燃性の他に耐光堅牢度を優れたものにするために、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤や他の繊維用加工剤を使用することもできる。前記の使用可能な他の繊維用加工剤として、一般的に使用される帯電防止剤、撥水・撥油剤、汚れ防止剤、抗菌剤、吸水剤、滑り止め剤等を付加的に使用することもでき、このような一般的に公知の加工剤が付加されるとしても、本発明の本質的な発明の思想から外れない限り、本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0036】
前記のような本発明にかかる原着糸を含むスクリーン用生地は、生地製織後、スクリーン用として使用するための洗浄加工、防汚加工、熱処理加工等、各種後加工による変色の程度が非常に微々であり、スクリーン生地の製造時の不良率を減少させ生産性を高め、原価の削減に効果的である。
【0037】
また、本発明のスクリーン用生地は、使用が長期に亘ってもスクリーンが変色しないという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明にかかる原着糸を含むスクリーン用生地を製造するための方法の実施例を示すが、本発明が実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0039】
製織原糸として、経糸は一般ポリエステルを使用し、緯糸はポリエステル原着糸を使用して平織りした。このとき、組織密度は経糸方向に100本/インチ、緯糸方向に100本/インチである。
【実施例2】
【0040】
製織原糸として、経糸は一般ポリエステルを使用し、緯糸はポリエステル原着糸と一般糸を重量比1対1で合糸した原糸を使用して平織りした。このとき、組織密度は経糸方向に100本/インチ、緯糸方向に100本/インチである。
【実施例3】
【0041】
製織原糸として、経糸は一般ポリエステルを使用し、緯糸は難燃性ポリエステル原着糸を使用して平織りした。このとき、組織密度は経糸方向に100本/インチ、緯糸方向に100本/インチである。
【実施例4】
【0042】
製織原糸として、経糸は一般ポリエステルを使用し、緯糸は難燃性ポリエステル原着糸と一般糸を重量比1対1で合糸した原糸を使用して平織りした。このとき、組織密度は経糸方向に100本/インチ、緯糸方向に100本/インチである。
【実施例5】
【0043】
製織原糸として、経糸は一般難燃性ポリエステルを使用し、緯糸はポリエステル原着糸と低融点糸を重量比1対1で合糸した原糸を使用して平織りした。このとき、組織密度は経糸方向に100本/インチ、緯糸方向に100本/インチである。
【実施例6】
【0044】
製織原糸として、経糸は一般ポリエステルを使用し、緯糸はポリエステル原着糸と低融点糸を重量比1対1で合糸した原糸を使用して平織りした。このとき、組織密度は経糸方向に100本/インチ、緯糸方向に100本/インチである。
【実施例7】
【0045】
製織原糸として、経糸は一般ポリエステルを使用し、緯糸は難燃性ポリエステル原着糸と低融点糸を重量比1対1で合糸した原糸を使用して平織りした。このとき、組織密度は経糸方向に100本/インチ、緯糸方向に100本/インチである。
【実施例8】
【0046】
製織原糸として、経糸は一般難燃性ポリエステルを使用し、緯糸は難燃性ポリエステル原着糸と低融点糸を重量比1対1で合糸した原糸を使用して平織りした。このとき、組織密度は経糸方向に100本/インチ、緯糸方向に100本/インチである。
【0047】
後加工後の変色試験結果
1.実施例1〜5
前記の実施例1〜5において製造されたスクリーン生地を、それぞれ洗浄加工、防汚加工を施し、加工前と加工後の変色の程度をC.C.M.(Computer Color Match)で明度、彩度、色相差に対して測定し、洗浄加工による変色の程度は表1にまとめ、防汚加工による変色の程度は表2にまとめた。
【0048】
前記の洗浄加工及び防汚加工は、公知の方法で実施した。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
2.実施例6〜8
前記の実施例6〜8において製造されたスクリーン生地を、それぞれ洗浄加工、防汚加工、融着のための熱処理加工を施し、加工前と加工後の変色の程度を明度、彩度、色相差に対して測定し、洗浄加工による変色の程度は表3にまとめ、防汚加工による変色の程度は表4にまとめ、融着のための熱処理加工による変色の程度は表5にまとめた。
【0052】
前記洗浄加工及び防汚加工は公知の方法で実施し、融着による熱処理加工は170℃で実施した。
【0053】
【表3】

【0054】
【表4】

【0055】
【表5】

【0056】
前記実施例の変色差の実験結果から分かるように、本発明にかかるスクリーン用生地は、後加工後は明度差±2以下、彩度差±2以下、色相差±0.1以下であり、後加工による変色が非常に少ないことが分かる。
【0057】
以上説明した本発明は、前述の実施例によって限定されるものではなく、本発明の技術的思想から外れない範囲内で様々な置換、変形及び変更ができることは、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者において明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーン用生地において、
前記生地は一般糸と原着糸で構成され、前記原着糸は経糸及び緯糸、又は経糸あるいは緯糸に含まれるか、又は
前記一般糸と原着糸が混紡又は合糸されて経糸及び緯糸、又は経糸あるいは緯糸に含まれ、
前記生地の後加工後は、明度差±2以下、彩度差±2以下、色相差±0.1以下であることを特徴とする原着糸を含むスクリーン用生地。
【請求項2】
前記原着糸は、ポリエステル系原着糸であることを特徴とする請求項1に記載の原着糸を含むスクリーン用生地。
【請求項3】
前記一般糸及び原着糸、又は一般糸あるいは原着糸は、低融点糸と50:50〜80:20重量比で混紡又は合糸されることを特徴とする請求項1又は2に記載の原着糸を含むスクリーン用生地。
【請求項4】
前記一般糸と原着糸は、20:80〜80:20重量比からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の原着糸を含むスクリーン用生地。
【請求項5】
照明の光や日光を遮断するスクリーン用生地において、
前記生地は一般糸と難燃性ポリエステル系原着糸で構成され、前記原着糸は経糸及び緯糸、又は経糸あるいは緯糸に含まれるか、又は
前記一般糸と難燃性ポリエステル系原着糸が混紡又は合糸されて、経糸及び緯糸、又は経糸あるいは緯糸に含まれ、
前記生地の後加工後は、明度差±2以下、彩度差±2以下、色相差±0.1以下であることを特徴とする原着糸を含むスクリーン用生地。
【請求項6】
前記一般糸及び難燃性ポリエステル系原着糸、又は一般糸あるいは難燃性ポリエステル系原着糸は、低融点糸と50:50〜80:20重量比で混紡又は合糸されることを特徴とする請求項5に記載の原着糸を含むスクリーン用生地。
【請求項7】
前記一般糸と難燃性ポリエステル系原着糸は、40:60〜80:20重量比からなることを特徴とする請求項5に記載の原着糸を含むスクリーン用生地。
【請求項8】
前記一般糸は、難燃糸であることを特徴とする請求項1又は5に記載の原着糸を含むスクリーン用生地。