説明

原稿搬送装置

【課題】搬送される原稿を原稿押え板を用いて読取面に密着させて読み取る場合に、原稿の傾斜姿勢に基づく張力で前記原稿押え板に浮き上がりが生じることを防止し、精度の高い原稿の読み取りを可能とする原稿搬送装置を提供する。
【解決手段】読取手段の読取面に対向して配置され、読取位置10aにおける原稿を前記読取面側に押圧するように付勢して取り付けられた原稿押え板30と、前記搬送方向においてこの原稿押え板30より下流側で且つ前記読取面を含む平面から離間して配置され、原稿を前記搬送方向に搬送するように駆動される搬送手段と、前記原稿押え板30の前記搬送方向下流側における端部と前記搬送手段との間に配置され、原稿が前記端部と前記搬送手段とに跨って搬送されるときの当該原稿の張力に基づく前記原稿押え板30の浮き上がりを防止する浮上防止手段33とが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送される原稿の画像を読取位置で読み取る読取手段を有する画像読取装置に搭載される原稿搬送装置に関するものであって、特に、原稿を給紙部から前記読取位置を経て排紙部まで搬送する略Uターン形状の原稿搬送路が備えられる原稿搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、静止する原稿の画像の読み取りだけでなく、搬送される原稿の画像も読み取ることができる画像読取装置においては、それぞれの画像読取に対応して、静止原稿用と搬送原稿用の2種の透明板が設けられている。通常、これらの透明板は、画像読取装置の本体の最上面に設けられた開閉可能な蓋状カバー体を開放した際に表出する上面において、間口方向に並んで配置されている。そして、静止原稿用透明板は、間口方向の寸法が載置可能な最大原稿の長さに対応して大きく、この透明板の上面に載置された原稿の画像が、この透明板の下面側を移動する読取手段によって読み取られる。一方、搬送原稿用透明板は、間口方向の寸法が比較的小さく、この透明板の上面を通過する原稿の画像が、この透明板の下面側に静止した読取手段によって読み取られる。
【0003】
この読取手段における原稿の読み取り精度を上げるために、静止原稿の場合には、前記蓋状カバー体を閉塞することで、原稿を静止原稿用透明板側に押圧するが、搬送原稿の場合には、原稿が搬送原稿用透明板の上面を通過する際に、前記上面に原稿が接するかまたはきわめて接近させる機構が設けられている。このような機構として、例えば特許文献1には、前記搬送原稿用透明板の上方に対向して、下方側へ付勢された原稿押え板を設け、この原稿押え板の下面における原稿搬送の妨げとならない位置にスペーサを取り付けた構造が記載されている。そのため特許文献1では、原稿押え板が、搬送原稿用透明板の上方に常にスペーサのギャップ分の間隙を有して位置している。これにより、原稿押え板と搬送原稿用透明板との間を通過する原稿が、搬送原稿用透明板からスペーサのギャップ分以上に離間することが規制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−100140号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したような画像読取装置においては、読取手段としてCCD(Charge Coupled Device)が広く利用されてきたが、近年は、CCDより小型で安価なCIS(Contact Image Sensor)の利用も進んでいる。しかし、このCISは、CCDに比べて被写界深度が浅い。従って、このようなCISを読取手段に採用した画像読取装置において、上述した特許文献1のように原稿押え板の下面にスペーサを設けていると、そのギャップ範囲内において原稿が搬送原稿用透明板から浮き上がる虞れがあり、その結果、読取精度が低下する可能性がある。そのため、CISを用いる場合には、CCDを用いる場合よりも厳密に、原稿を読取手段の読取面である搬送原稿用透明板の上面に密着させる必要があり、原稿を直接読取面に押圧する原稿押え板の構造が求められる。
【0006】
一方、搬送される原稿を読み取る場合の原稿搬送路は、一般的に前記蓋状カバー体の内部空間に設けられるが、よりコンパクトにまとめるために、通常は原稿の給紙部から読取位置を経て排紙部に至る原稿搬送路は略Uターン形状に形成される。
【0007】
また、排紙部から排出された原稿を、ある程度積層して留めておくスペースを確保するために、通常、排紙部は原稿の読取位置よりも高い位置に配置されているので、読取位置から排紙部に搬送されるときの原稿は、読取位置側より排紙部側が高い傾斜姿勢となる。そのため、読取位置において原稿を読取面側に押圧するように付勢して原稿押え板が設けられている場合には、前記原稿の傾斜姿勢に基づく張力によって、原稿押え板を上方に浮き上がらせる力が作用することになる。従って、原稿押え板に作用する下方への付勢力が小さいと、前記張力が勝って原稿押え板が浮き上がり、原稿自体の浮き上りを発生しやすくなる。その結果、特に読取手段にCISを利用していると、読取精度を大きく低下させることになる。しかし逆に、前記張力に勝るために原稿押え板に作用する下方への付勢力を大きくすると、原稿押え板と搬送原稿用透明板との間での原稿に対する搬送抵抗が大きくなり、特に原稿が薄紙等の場合には、原稿が原稿押え板の下面に入り込むことができなくなる。
【0008】
本発明は、このような課題を解消し、搬送される原稿を原稿押え板を用いて読取面に密着させて読み取る場合に、原稿の傾斜姿勢に基づく張力で前記原稿押え板に浮き上がりが生じることを防止し、精度の高い原稿の読み取りを可能とする原稿搬送装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明における原稿搬送装置は、原稿搬送路を所定の搬送方向に搬送される原稿の画像を読取位置で読み取る読取手段を有する画像読取装置に搭載される原稿搬送装置であって、前記読取手段の読取面に対向して配置され、前記読取位置における原稿を前記読取面側に押圧する付勢手段を備えた原稿押え板と、少なくとも前記搬送方向においてこの原稿押え板より下流側に配置された一対のローラを含み、原稿を前記搬送方向に搬送するように駆動される搬送手段と、前記原稿押え板の前記搬送方向下流側における端部と前記搬送手段との間に配置され、原稿が前記端部と前記搬送手段とに跨って搬送されるときの前記原稿押え板の浮き上がりを防止する浮上防止手段と、が設けられ、前記浮上防止手段は、下方側の外周が前記原稿押え板による原稿押え位置の下流側端部と前記搬送手段の一対のローラにおける原稿の接触位置とを直線で結ぶ経路よりも前記読取面側に突出し、前記原稿搬送路の幅方向に沿って間隔を空けて形成された複数の突出部であり、前記原稿押え板による原稿押え位置の下流側端部と前記搬送手段の一対のローラにおける原稿の接触位置とを直線で結ぶ経路と前記読取面とがなす角度に対し、前記原稿押え板による原稿押え位置の下流側端部と前記浮上防止手段の外周面下側における原稿の接触位置とを直線で結ぶ経路と前記読取面とがなす角度を小さくするように設定されることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の原稿搬送装置において、前記突出部は、前記原稿搬送路の幅方向における中央に間隔を空けて2箇所形成されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の原稿搬送装置によれば、浮上防止手段を構成する複数の突出部により、搬送される原稿の張力による原稿押え板の浮き上がりが防止されるので、原稿押え板を読取面側に付勢する付勢力を過度に高める必要がなくなる。その結果、前記付勢力を、原稿の読取面への密着及び原稿の搬送を考慮して最適な値に設定することができる。
【0012】
また、請求項2に記載の原稿搬送装置によれば、突出部が、原稿搬送路の幅方向における中央に間隔を空けて2箇所形成されることで、搬送される原稿の張力による原稿押え板の浮き上がりが効果的に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の原稿搬送装置を備えた多機能装置の正面図である。
【図2】多機能装置の蓋状カバー体を開放した状態を示す斜視図である。
【図3】原稿搬送装置の側断面図である。
【図4】原稿搬送装置の要部拡大側断面図である。
【図5】多機能装置の蓋状カバー体を開放した状態を示す要部拡大外観図である。
【図6】(a)は回転体の第1の変形例を示す側断面図、(b)は(a)のVIb ―VIb 線矢視断面図である。
【図7】(a)は回転体の第2の変形例を示す側断面図、(b)は(a)のVIIb―VIIb線矢視断面図である。
【図8】(a)は回転体の第3の変形例を示す側断面図、(b)は(a)のVIIIb ―VIIIb 線矢視断面図である。
【図9】原稿押え板の変形例を示す要部拡大側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は本発明の原稿搬送装置を備えた多機能装置の正面図、図2は多機能装置の蓋状カバー体を開放した状態を示す斜視図、図3は原稿搬送装置の側断面図、図4は原稿搬送装置の要部拡大側断面図、図5は多機能装置の蓋状カバー体を開放した状態を示す要部拡大外観図、図6(a)は回転体の第1の変形例を示す側断面図、図6(b)は図6(a)のVIb ―VIb 線矢視断面図、図7(a)は回転体の第2の変形例を示す側断面図、図7(b)は図7(a)のVIIb―V IIb線矢視断面図、図8(a)は回転体の第3の変形例を示す側断面図、図8(b)は図8(a)のVIIIb ―VIIIb 線矢視断面図、図9は原稿押え板の変形例を示す要部拡大側断面図である。
【0015】
本発明の実施形態は、ファクシミリ機能、スキャナ機能、複写機能及びプリンタ機能を備えた多機能装置(複合装置)1における画像読取装置に搭載される原稿搬送装置2に適用したものである。
【0016】
図1及び図2に示すように、多機能装置1の本体ケース3の最上面には、後側縁に設けた蝶番7aを介して上下回動可能に蓋状カバー体7が装着され、この蓋状カバー体7の上部一側に、本発明の原稿搬送装置2が設けられている。この原稿搬送装置2に連続して蓋状カバー体7の上部には、自動原稿供給装置6が設けられている。蓋状カバー体7を開放した際に表出する上面中央には静止原稿用透明板4(例えば、ガラス板等)が、同じく上面一側には搬送原稿用透明板8(例えば、ガラス板等)が、いずれも水平状態で固定されている。また、前記本体ケース3の前方に突出して、ファクシミリ機能、スキャナ機能、複写機能を実行するためのテンキーや各種作業を指令するためのボタンキー、指令内容表示やエラー表示等を行う液晶パネルなどを備えた操作パネル部5が配置されている。さらに、スキャナ機能を実行するための画像読取装置は、図3に示すように、搬送原稿用透明板8の下面側に位置させた読取手段たる読取装置9(例えば、CIS等)を備えている。
【0017】
そして、静止原稿用透明板4上に画像が記載された面を下向きにして原稿を載置した場合には、前記読取装置9が静止原稿用透明板4の下面に配置されたガイドレール(図示せず)に沿って移動しながら画像を読み取ることができるよう構成されている。このとき、原稿を静止原稿用透明板4側に押圧するために、蓋状カバー体7が閉塞されるが、この蓋状カバー体7の下面には、スポンジ及び白板等からなる押え体7bが設けられている。
【0018】
原稿搬送装置2は、自動原稿供給装置6から給紙部11に供給された原稿を適宜間隔をあけて配置した複数の搬送ローラで搬送し、原稿の画像を読取位置10aで前記読取装置9によって読み取らせ、排紙部12から排出するように構成されている。この原稿を給紙部11から読取位置10aを経て排紙部12まで搬送する原稿搬送路20は、略Uターン形状に形成されている。なお、具体的な実施形態では、後述する給紙ローラ対23a、23bの位置を給紙部11、排紙ローラ対28a、28bの位置を排紙部12としている。また、図3及び図4では、原稿が搬送される経路を一点鎖線Mで図示している。
【0019】
原稿搬送路20の構成を詳細に説明する。図1〜図3に示すように、前記蓋状カバー体7の一側には、原稿搬送装置2及び自動給紙装置6を覆うケース部13が固定されており、このケース部13の一端には、原稿が積層される原稿載置台14がその自由端を上方とし、ケース部13への取り付け位置が低い高さとなるように傾斜状に配置されている。一方、原稿載置台14の下方となる前記蓋状カバー体7の上面に排紙トレイ部15が形成されている。
【0020】
そして、図3に示すように、前記ケース部13内の上側経路板21の始端部21aは、原稿載置台14に近接して配置されており、上側経路板21上には、前記原稿載置台14上に積層された原稿を1枚ずつ分離しながら給紙する分離ローラ22と、原稿の先端縁の衝突により回動する検知レバー付き原稿有無センサ(図示せず)と給紙ローラ対23a、23bとが設けられている。給紙ローラ23aは駆動ローラ、給紙ローラ23bは従動ローラである。上側経路板21の終端部21bは、後述する中間経路板25と下側経路板26との間隙に原稿を案内するよう下向き湾曲形状に形成されている。また、上側経路板21の終端部21bには、搬送される原稿によって自由回転する搬送ローラ24が設けられている。
【0021】
略対向して配置されている中間経路板25と下側経路板26は、いずれも下向き凸湾曲形状を有しており、これら経路板の間隙が、原稿搬送路20を構成している。そして、原稿搬送路20における読取位置10aの直上流側には、送りローラ対27a、27bが設けられており、駆動ローラである送りローラ27aは中間経路板25に、従動ローラである送りローラ27bは下側経路板26に各々配置されている。また、排紙部12では、排紙ローラ対28a、28bが設けられており、駆動ローラである排紙ローラ28aが中間経路板25に、従動ローラである排紙ローラ28bが下側経路板26に各々配置されている(この排紙ローラ対28a、28bが請求項1の搬送手段に相当する)。そして、排紙ローラ対28a、28bは、従来同様、排紙トレイ部15における原稿の積層厚さを確保するために、読取面となる搬送原稿用透明板8の上面を含む平面Sに対して原稿押え板30より離間して(上方の高い位置に)配置されている(図4参照)。また、この排紙部12から外側に延びる下側経路板26の上面部分が、排紙トレイ部15を構成している。なお、上述した各駆動ローラ23a、27a、28aは図示しない駆動モータによって駆動されている。
【0022】
原稿搬送路20における下側経路板26の中途部であって、下向き凸湾曲形状の最下端部位においては、前記読取位置10aを挟む領域に平面視矩形状の読取開口部10が穿設されている。そして、この読取開口部10は、読取面となる前記搬送原稿用透明板8の上面に対向している。読取開口部10は、原稿の搬送方向が短い長さで、且つこの搬送方向と直交する方向(以降、幅方向と記載する)の寸法が長い長さに形成されている(図2及び図5参照)。
【0023】
そして、図3に示すように、読取位置10aにおける原稿を搬送原稿用透明板8側に押圧するように付勢して取り付けられた原稿押え板30が、読取開口部10から下方に露出している。この原稿押え板30は、搬送可能な最大原稿の幅方向の寸法よりも長い(あるいは同じ)寸法の平板からなる部材であり、この部材の搬送方向における上流側の前縁部30a及び下流側の後縁部30bが、原稿の搬送を促すために上方に屈曲されている(図4参照)。また、原稿押え板30を付勢する手段であるコイルバネ31は、原稿押え板30と中間経路板25との間に取り付けられるが、この実施形態では、原稿押え板30が均等に押圧力を発揮するように、コイルバネ31は、原稿押え板30の上面における中央の一箇所に取り付けられている。さらに、この原稿押え板30は、透過率の高い原稿を読み取る際の影写りを防止するために、少なくとも搬送原稿用透明板8側の面は白色を呈している。すなわち、原稿押え板30の搬送原稿用透明板8側の面には、白色フィルムが貼着されている。
【0024】
そして、図4に示すように、この原稿押え板30に対しては、原稿押え板30の前記搬送方向下流側における端部30cと排紙ローラ対28a、28bとの間に配置され、原稿が前記端部30cと排紙ローラ対28a、28bとに跨って搬送されるときの当該原稿の張力に基づく前記原稿押え板30の浮き上がりを防止する浮上防止手段が設けられている。この実施形態では、浮上防止手段は、原稿押え板30の前記端部30cと排紙ローラ対28a、28bとを直接結ぶ原稿の予想搬送路N(図4にて点線で図示)の中途部で且つ前記読取面を含む平面Sから離間した位置に回転中心33bが設けられた回転体33であり、この回転体33の前記平面S側(下方側)の外周面33aが前記予想搬送路Nと交差するように回転体33を配置する。
【0025】
そして、この回転体33の外周面33aと原稿とが当接することにより、原稿の傾斜姿勢が変化する。ここでは、原稿が予想搬送路Nを通って搬送される場合の原稿の傾斜姿勢の度合い(水平からの角度、以降同様)をθ1とし、回転体33との当接により変化した後の回転体33から原稿押え板30に至る原稿の傾斜姿勢の度合いをθ2、同じく変化した後の回転体33から排紙ローラ対28a、28bに至る原稿の傾斜姿勢の度合いをθ3とする。
【0026】
この回転体33は、全体が円柱形状を呈するローラで、図5に示すように、2個の回転体33が幅方向に同軸で並べられている。そして、回転体33は搬送される原稿に摺動されることにより回転自在に設けられている。
【0027】
前記搬送原稿用透明板8には、その搬送方向下流側の端縁部8aに並んで、下流側が高くなるように傾斜した案内片32が取り付けられている。これにより、前記原稿押え板30の下面側を通過した原稿が、斜め上方に向かって速やかに案内される。なお、この案内片32の搬送方向上流側の端縁部32aは、搬送される原稿との衝突を避けるために、図4に示すように、搬送原稿用透明板8の前記端縁部8aよりも突出高さが低くなるよう取り付けられている。そのため、案内片32の端縁部32aと搬送原稿用透明板8の端縁部8aとの隙間に入り込んだ紙紛等が、案内片32に撓みが生じた場合に落下し、読取装置9に付着して読取精度を低下させることが懸念される。これを防止するため、この実施形態では、案内片32を挟む搬送原稿用透明板8の下面と静止原稿用透明板4の下面とに跨って、下方側から案内片32を覆うように粘着部材50(粘着テープ等)が貼り付けられている。
【0028】
このように構成された原稿搬送装置2で、搬送される原稿を読み取る場合には、まず原稿が原稿面を上にして原稿載置台14に載置され、原稿の有無センサ(図示せず)によって原稿の存在が検知される。そして、操作パネル部5によって原稿の読取指令が操作されると、原稿は、分離ローラ22によって1枚ずつ分離され、給紙部11の給紙ローラ対23a、23bによって原稿搬送路20への搬送が開始される。原稿は、搬送ローラ24、送りローラ対27a、27bによって、読取開口部10側へ搬送され、読取開口部10で原稿搬送路20から露出し、原稿押え板30の下面側に入り込んで、コイルバネ31によって付勢された原稿押え板30により搬送原稿用透明板8の上面(読取面)へ押圧される。そして、原稿は、読取位置10aで搬送原稿用透明板8の下面側に位置する読取装置9によって順次読み取られる。
【0029】
原稿が原稿押え板30の搬送下流側における端部30aと排紙ローラ対28a、28bとに跨って搬送されるときには、その中途部で原稿は回転体33の外周面33aと当接する。このとき、回転体33の回転中心33bは、前記原稿押え板30より前記平面Sに対して離間した位置にあり、回転体33の平面S側(下方側)の外周面33aが原稿と当接するため、回転体33は原稿の傾斜姿勢をその中途部で押し下げるように屈曲させる。これにより、原稿が予想搬送路Nを通って搬送される場合の原稿の傾斜姿勢の度合い(角度θ1)より、回転体33から原稿押え板30に至る原稿の傾斜姿勢の度合い(角度θ2)は小さくなり(θ2<θ1)、回転体33から排紙ローラ対28a、28bに至る原稿の傾斜姿勢の度合い(角度θ3)は大きく(θ3>θ1)なる。その結果、回転体33から原稿押え板30に至る原稿の傾斜姿勢の度合い(角度θ2)は、回転体33から排紙ローラ対28a、28bに至る原稿の傾斜姿勢の度合い(角度θ3)より小さくなる(θ2<θ3)。これにより、原稿押え板30を浮き上らせるように作用する原稿の張力を小さくすることができ、原稿押え板30による読取面への原稿の密着状態を維持できる。
【0030】
また、このとき、回転体33は、原稿に摺動されて自在に回転するため、回転体33によって搬送抵抗が高まることはない。すなわち、原稿搬送の障害となることはない。そして、原稿は排紙部12にある排紙ローラ対28a、28bに搬送されて、排紙トレイ部15に排出される。
【0031】
勿論、この回転体33の配置については、回転体33の回転中心33bが平面Sより離間した位置であり且つ回転体33の外周面のうちのいずれかの部位が予想搬送路Nと交差する場合であっても、回転体33から原稿押え板30に至る原稿の傾斜姿勢の度合いを、回転体33から排紙ローラ対28a、28bに至る原稿の傾斜姿勢の度合いより大きくする場合、すなわち回転体33の平面Sと反対側(上方側)の外周面が原稿の傾斜姿勢をその中途部で押し上げるように屈曲させる場合は除かれる。
【0032】
また、回転体33の位置は、原稿押え板30の前記端部30cと排紙ローラ対28a、28bとを直接結ぶ原稿の予想搬送路Nの中途部であるが、原稿押え板30の前記端部30cの近傍であることが望ましい。ここで言う近傍とは、回転体33の上下方向の位置及び水平方向の位置の双方が、上述した回転体33の配置条件を満たした上で前記端部30cに近い場合を指している。
【0033】
具体的に、前記回転体33の上下方向の位置が前記端部30cに近い場合とは、予想搬送路Nと交差する前記回転体33の外周面33aの前記平面Sに対する離間距離が、前記端部30cの前記平面Sに対する離間距離と同じかもしくはこれにきわめて近い(低い)位置にある場合である。これによれば、回転体33から原稿押え板30に至る原稿の傾斜姿勢の度合いが水平もしくは水平に近い小さい角度(θ2≒0)となり、原稿押え板30の浮き上がりに対する作用を無くすかもしくはきわめて小さくできる。また、前記回転体33の水平方向の位置が前記端部30cに近い場合とは、前記回転体33の回転中心33bから端部30cまでの水平方向の離間距離が、前記回転中心33bから排紙ローラ対28a、28bまでの水平方向の離間距離より近い場合である。仮に、回転体33の水平方向の位置が排紙ローラ対28a、28bに近いと、回転体33から原稿押え板30に至る原稿の傾斜姿勢の度合いを水平もしくは水平に近い小さい角度とするためには、回転体33から排紙ローラ対28a、28bに至る原稿の傾斜姿勢の度合いが大きな傾斜角(角度θ3)となる。その結果、原稿が回転体33において急激な姿勢変更をしなければならず、接触面積も増えて、回転体33による搬送抵抗が高まってしまう。そのため、前記回転体33の水平方向の位置が前記端部30cに近いと、回転体33から排紙ローラ対28a、28bに至るまでの原稿の傾斜姿勢の度合いを、僅かに大きくなる程度に留めることができ、回転体33により搬送抵抗が高まることを防止できる。
【0034】
なお、この実施形態では、回転体33を回転自在のローラとして記載したが、駆動ローラで構成してもよい。
【0035】
また、この実施形態では、原稿の傾斜姿勢を形成する搬送手段を、排紙部12の排紙ローラ対28a、28bとして説明したが、前記搬送手段を排紙ローラ対とは異なる搬送ローラとし、搬送手段のさらに搬送方向下流側に排紙ローラ対を設ける構成としてもよい。
【0036】
また、上述の実施形態では、回転体33は円柱形状として説明したが、その他の形態として、例えば図6(a)及び図6(b)に示す回転体133のように、回転中心133bを回転の中心として円柱形状に形成された回転体133の外周部全体を弾性部材133cで形成してもよい。この場合、外周面133aが原稿と当接することになる。この他に、図7(a)及び図7(b)に示す回転体233のように、回転中心233bを回転の中心とする回転体233の外周部の一部に、その他の部分よりも外径の大きいリング状の大径部233dを設け、少なくともこの大径部233dが弾性部材からなるように構成してもよい。また、図8(a)及び図8(b)に示す回転体333のように、回転中心333bを回転の中心とする回転体333の外周部の一部に、その他の部分よりも外径の大きい大径部を凸部とする凹凸部333eを設け、少なくともこの凹凸部333eが弾性部材からなるように構成してもよい。上述した弾性部材は、スポンジやゴム材等から適宜選択される。そして、回転体133、233、333のように、原稿と当接する部分を弾性部材で構成したり、回転体233、333のように、原稿と回転体との接触面積を少なくしたりすることにより、回転体での原稿の搬送抵抗を低減することができる。また、構造の都合上、回転体の回転中心を読取面を含む平面Sに近づけて(下方寄り)設置することができない場合でも、回転体233、333のように、外径部の一部に大径部を設けることでこの大径部の外周面が下方に突出して原稿と当接するため、回転体から原稿押え板30に至る原稿の傾斜姿勢の度合いを小さくする効果を得ることができる。
【0037】
さらに、原稿押え板30に関しては、上述した実施形態の他に、図9に示す原稿押え板130のように、その下面に、原稿押え板130に対して回転自在に取り付けられた第2の回転体51の外周面51aを突出させ、第2の回転体50により原稿Pを押圧するよう構成してもよい。この場合、原稿押え板130の下面側を通過する原稿が自由回転する第2の回転体51の外周面51aにより押圧されるので、原稿の搬送抵抗を小さくすることができる。
【0038】
また、本実施形態の多機能装置1は、静止原稿用透明板4における原稿読取に対する遮光構造を備えているので、次にこの遮光構造について説明する。
【0039】
図2に示すように、本体ケース3において静止原稿用透明板4を囲むフレーム部40のうち、奥側フレーム部40b、左側フレーム部40c、右側フレーム部40dの三方は、これらフレーム部を構成する平板部材が静止原稿用透明板4の端縁部を上側から覆うように取り付けられているが、手前側フレーム部40aの一方のみは、フレーム部の平板部材の上面と静止原稿用透明板4の上面とが同一平面となるように設けられている。そのため、手前側フレーム部40aの上面は、その他のフレーム部40b〜40cより僅かに低くなっている。そして、手前側フレーム部40aの上面がそのまま左右両端部にまで延長されてフレーム部40の前端部が高さの低い段付き端部41となっている。
【0040】
一方、蓋状カバー体7の下面は、閉塞時に前記フレーム部40の段付き端部41と合致する形状に構成されている。具体的には、図2及び図5に示すように、前記段付き端部41の深さ寸法に対応して、蓋状カバー体7の下面の手前において、手前側側縁部7c及び前縁部7eが、左右の奥側側縁部7dよりも下方に沈み込んだ形状で形成されている。
【0041】
これにより、静止原稿用透明板4上に載置された原稿が嵩高く、蓋状カバー体7を完全に閉塞できずに手前側に隙間を生じる場合であっても、蓋状カバー体7の前記手前側側縁部7c及び前縁部7eが、外部から静止原稿用透明板4に射し込もうとする光に対して遮光効果を奏するため、原稿の読み取り精度の低下を防止することができる。
【0042】
これによれば、浮上防止手段を構成する複数の突出部によりにより、搬送される原稿の張力による原稿押え板の浮き上がりが防止されるので、原稿押え板を読取面側に付勢する付勢力を過度に高める必要がなくなる。その結果、前記付勢力を、原稿の読取面への密着及び原稿の搬送を考慮して最適な値に設定することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 多機能装置
2 原稿搬送装置
3 本体ケース
4 静止原稿用透明板
5 操作パネル部
6 自動原稿給紙装置
7 蓋状カバー体
7a 蝶番
7b 押え体
7c 手前側側縁部
7d 奥側側縁部
7e 前側側縁部
8 搬送原稿用透明板
9 読取装置
10 読取開口部
10a 読取位置
11 給紙部
12 排紙部
13 ケース部
14 原稿載置台
15 排紙トレイ部
20 原稿搬送路
21 上側経路板
21a 始端部
21b 終端部
22 分離ローラ
23a、23b 給紙ローラ
24 搬送ローラ
25 中間経路板
26 下側経路板
27a、27b 送りローラ
28a、28b 排紙ローラ
30 原稿押え板
30a 前縁部
30b 後縁部
30c 搬送下流側端部
31 コイルバネ
32 案内片
33 回転体
33a 外周面
33b 回転中心
40 フレーム部
40a 手前側フレーム部
40b 奥側フレーム部
40c 左側フレーム部
40d 右側フレーム部
41 段付き端部
50 粘着部材
51 第2の回転体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿搬送路を所定の搬送方向に搬送される原稿の画像を読取位置で読み取る読取手段を有する画像読取装置に搭載される原稿搬送装置であって、
前記読取手段の読取面に対向して配置され、前記読取位置における原稿を前記読取面側に押圧する付勢手段を備えた原稿押え板と、
少なくとも前記搬送方向においてこの原稿押え板より下流側に配置された一対のローラを含み、原稿を前記搬送方向に搬送するように駆動される搬送手段と、
前記原稿押え板の前記搬送方向下流側における端部と前記搬送手段との間に配置され、原稿が前記端部と前記搬送手段とに跨って搬送されるときの前記原稿押え板の浮き上がりを防止する浮上防止手段と、が設けられ、
前記浮上防止手段は、
下方側の外周が前記原稿押え板による原稿押え位置の下流側端部と前記搬送手段の一対のローラにおける原稿の接触位置とを直線で結ぶ経路よりも前記読取面側に突出し、前記原稿搬送路の幅方向に沿って間隔を空けて形成された複数の突出部であり、
前記原稿押え板による原稿押え位置の下流側端部と前記搬送手段の一対のローラにおける原稿の接触位置とを直線で結ぶ経路と前記読取面とがなす角度に対し、前記原稿押え板による原稿押え位置の下流側端部と前記浮上防止手段の外周面下側における原稿の接触位置とを直線で結ぶ経路と前記読取面とがなす角度を小さくするように設定されることを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項2】
前記突出部は、前記原稿搬送路の幅方向における中央に間隔を空けて2箇所形成されることを特徴とする請求項1に記載の原稿搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−38789(P2013−38789A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−189568(P2012−189568)
【出願日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【分割の表示】特願2011−171590(P2011−171590)の分割
【原出願日】平成15年6月30日(2003.6.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】