説明

参照オブジェクトに対するクエリオブジェクトの類似性を評価するための方法およびシステム

本発明は、D次元のデータ空間内のテストデータのクラスを評価するための方法およびシステムに関し、D≧3であり、各データはいくつかのデータをまとめる少なくとも1つのクラスに属する。
この方法は、データ空間の参照データ一式をQ次元の空間内に射影するステップを含み、Q<Dであり、各参照データのクラスは知られている。
この方法は、参照データのそれぞれに対するテストデータの類似性の測定を計算するステップも含む。
この方法は、それぞれが唯一の参照データの射影を含む、複数のばらばらの領域に射影空間を区分化するステップも含む。
この方法は、テストデータのクラスを評価するステップを最後に含み、このクラスは、類似性測定の点でテストデータに最も近い参照データを含む領域の1つに含まれる参照データの1つと同じクラスであるものとして評価される。
実際に、これらの領域はテストデータの射影を含む可能性が最もある領域である。
用途:弁別における決定エイド、形状認識、異常検出

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、参照オブジェクトに対するクエリオブジェクトの類似性を評価するための方法およびシステムに関する。本発明は、例えば形状認識の分野に適用される。例えばオブジェクトは、その物理的特性の一部が測定されるハードウェアオブジェクト、個人、システムの状態、あるいはそのようなオブジェクト、個人、または状態のグループとすることができる。
【背景技術】
【0002】
弁別器(discriminator)はオブジェクトを分類できるようにし、つまり、オブジェクトのクラスまたはオブジェクトのいくつかの既定義クラスにおけるオブジェクトの帰属についての決定を行えるようにする。例えば、患者の身長、体重、年齢、脈拍、体温など、患者の状態の物理的特性を測定する。この患者がクエリオブジェクトまたはクエリ患者である。その後それらの測定値を弁別器に与え、弁別器はそれらの特性を、しかじかの病気を患っていると特定される他の患者の特性と比較する。これらの他の患者が参照オブジェクトまたは参照患者である。病気がクラスである。弁別器は、測定した特性に基づいて近似性測定の点で最も近い参照患者の病気と同じ病気をクエリ患者に割り当てる。そのような応用は決定エイドとして用いられ、専門家の意見を不要にすることさえ可能にすることができる。しかし、それらの応用は専門家に帰属クラスを提供することもでき、帰属クラスはその専門家による患者の診断を補強しまたは弱め、不一致がある場合にはより優れた解析を専門家に促すことができる。ただし、専門家が後者に自信をもつことができ、エイドが有用かつ効果的であるために、弁別器の結果の理解容易性が極めて重要である。
【0003】
ユーザの信頼を得るために、決定エイドシステムは弁別器が行った決定に信頼性指標を関連させることを提案する。提案される決定は説明されず、システムはブラックボックスとして動作するが、その決定の品質に関してユーザの不安をなくすと推定される指標をユーザに与える。この指標は、確率的性質のものとすることができ、あるいはいくつかの異なる弁別器の決定を相対的に比較することによって得ることができる。いかなる場合でも、この指標は弁別法の非専門家ユーザの観点からすると比較的複雑なプロセスによって得られる。ある方法では、決定およびその決定に関する信頼性指標の両方を提供する弁別システムは広い意味で裁判官と陪審員であり、このことはユーザに信頼を抱かせる傾向にない。
【0004】
他の決定エイドシステムは、弁別器が行う決定をユーザが理解できる用語を使って説明することに基づく。例えば、ファジイ推論システムは、自らの決定をオブジェクトの元の特性に直接かかわる論理規則の加重和の結果として説明し、それらの量およびその組合せはユーザが簡単に解釈できると考えられる。しかし、良い品質の弁別を得るために規則およびパラメータの数がしばしば多量にあり、その結果システムの理解容易性を大幅に下げている。
【0005】
最後に、他の決定エイドシステムは、様々なクラスにおける帰属の確率を提供する。この場合、弁別器が行う決定は一意ではなく、システムはクラスの割当を特に決定しない。クエリオブジェクトのためのクラスの選択は、これらの確率によって支援され得るユーザの明敏さに委ねられる。しかし、参照オブジェクトから参照オブジェクトの帰属クラスに移行することを可能にするプロセスを説明することなしに、これらの確率は一揃いとしてクラスに割り当てられる。したがって、評価すべき確率の数はクラスの数に等しいので減らされるが、これらの確率を計算するプロセスはユーザにとって未知のままである。その結果、ユーザにとって情報が全体的に非常に不明朗である。
【0006】
従来技術による弁別器のこれらの3つの事例では、当初の目的はユーザの作業を支援することだが、実際にはそのユーザは自動弁別分野におけるさらなる技能を習得することが求められる。実際、ユーザにとってのシステムの理解容易性は、決定を生成するために用いられる大抵は洗練された方法に対するそのユーザの理解次第である。
【0007】
オブジェクトの分類問題を解決するために弁別器を使用することに加え、クラスの構造を解析しあるいは射影を等級分けするために、オブジェクトおよびクラスを視覚化するための方法も存在する。これらの視覚化法は、例えば平面マップ上にオブジェクトおよびクラスをとりわけ表せるようにする、オブジェクトを射影するための方法を利用することができる。このマップ上でのオブジェクトの位置は、類似性測定に照らして互いに類似するオブジェクトがマップ上で幾分近いというものである。逆に、あまり類似性のないオブジェクトはマップ上で幾分離れる。その後、既に配置されている参照オブジェクトに対する類似性を考慮に入れることにより、同じ原理を用いてクエリオブジェクトをこのマップ上に配置することができる。他のオブジェクトに対するこのクエリオブジェクトの位置決めの技術的問題に加え、帰属クラスに関してこの位置を解釈する問題が生じる。実際に、クラスを考慮に入れようが入れまいが、射影法は、類似性の測定によれば実際は遠く離れているオブジェクトを人為的に集めて一団にする、偽の近傍(false neighborhood)またはスティッチングと呼ばれる情報消失を引き起こす。これらの偽の近傍は、射影中に類似性を丸ごと忠実に守ることが技術的に不可能であることを理由に、または類似性を丸ごと忠実に守ることが技術的に可能でも、射影法がこの解決策をどのように見つけたらよいのか分からなかったことを理由に存在する。したがって、ユーザはマップ上の周辺オブジェクトの多数決クラスを、たとえそれらのオブジェクトがクエリオブジェクトに虚偽的に近くても、クエリオブジェクトに割り当てることができる。
【0008】
偽の近傍に関する問題を克服しようとするために、これらの偽の近傍を視覚化できるようにする診断法が、例えば記事「Visualizing distortions and recovering topology in continuous projection techniques」(Aupetit M., Neurocomputing, vol.10, no.7−9 pp.1304−1330,2007)の中などで提案されている。不都合なことに、この方法は、既知のクラスに属する参照オブジェクトを用いてクエリオブジェクトのクラスを評価できるようにはしない。したがって、射影を等級分けするためにこの方法を実施する場合、この方法は全て「ラベル付けされていない」オブジェクトを単純に操作するのに対し、クラスの構造を解析するためにこの方法を実施する場合、この方法は全て「ラベル付けされた」オブジェクトを単純に操作する。
【0009】
最後に、クエリオブジェクトの近くにある参照オブジェクトを、クエリオブジェクトに対する近似性の低下に応じて順序付けされる参照オブジェクトの一覧形式で視覚化することもできる。これはインターネットネットワーク上の検索エンジンに典型的に当てはまり、検索エンジンでは、クエリに対する近似性によって順序付けられる参照インターネットページの一覧表示をクエリが引き起こす。この場合、ユーザに提示される参照オブジェクトの一覧は、一方では使用されるクエリに依拠し、他方では線形順序を示す。インターネットネットワーク上の特定の検索エンジンでは、クエリが、1組の順序付けされた参照インターネットページの表示を、そのクエリに対する近似性を表すためにグラフィカルに強調される(色、大きさ等)平面マップ上のグループ形式で引き起こす。この場合もやはり、ユーザに提示されるマップはクエリに依拠する。これらの全ての事例において、提示される参照オブジェクトの一覧、ならびに空間表現(マップ)または線形表現(順序付き一覧)内のオブジェクトの位置はクエリに依拠する。したがって、ユーザは参照オブジェクトの母集団の確固とした心的表示(mental representation)を構築することができず、この母集団は完璧な方法でまたはクエリから独立した方法でユーザに提示されることは決してない。ユーザは、自らに提示されるクエリに対する近似性に関する情報の品質を独力で判断することはできない。ユーザは決まった比較基準を有さないので、参照オブジェクトによる表現によって伝えられる、クエリオブジェクトとの間の類似性または違いを容易に評価することもできない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の狙いは、とりわけ、ユーザがクエリオブジェクトとは独立に、参照オブジェクトの母集団の確固とした心的表示を作成できるようにすることである。したがって本発明は、マップをそれぞれが参照オブジェクトに関連するばらばらの区域に切断し、各区域において、クエリオブジェクトとその区域の参照オブジェクトとの間の類似度をユーザに示すことを提案する。したがって、クエリオブジェクトをマップ上に配置することも、クエリオブジェクトに対応するマップの区域を定めることも必要でない。このために、本発明の主題は、D次元のデータ空間内のテストデータのクラスを評価するための方法であり、D≧3であり、各データは1つまたは複数のデータを含む少なくとも1つのクラスに属する。この方法は、データ空間の参照データ一式をQ次元の空間内に射影するステップを含み、Q<Dであり、各参照データのクラスは知られている。この方法は、参照データのそれぞれに対するテストデータの類似性の測定を計算するステップも含む。この方法は、それぞれが唯一の参照データの射影を含む、複数のばらばらの領域に射影空間を区分化するステップも含む。この方法は、テストデータのクラスを評価するステップを最後に含み、このクラスは、類似性測定の点でテストデータに最も近い参照データを含む領域の1つに含まれる参照データの1つと同じクラスであるものとして評価される。実際に、これらの領域はテストデータの射影を含む可能性が最もある領域である。
【0011】
例えばデータはデジタル化データとすることができ、デジタル化データは、その物理的特性の一部を測定することができるハードウェアオブジェクトであろうとハードウェアオブジェクトのグループであろうと、または個人であろうと個人のグループであろうと、またはシステムの状態であろうとシステムの状態のグループであろうと、オブジェクトの物理的特性の1つまたは複数の測定値を含むことができる。
【0012】
有利には、射影空間内で参照データの空間的構成を保つために、参照データ間の類似性の測定および前記参照データの射影間の距離に依拠する関数を最小化するように参照データを射影空間内に射影することができる。
【0013】
例えば、領域は射影空間内の参照データの射影に関連するボロノイ領域とすることができる。
【0014】
例えば、データはデジタル化された手書き文字とすることができ、クラスは同一文字をまとめることができ、各データは場合により画素のベクトルによって定められる。
【0015】
一実施形態では、データはデジタル化された地震曲線とすることができ、あるクラスは、その記録が地震に対応する曲線をまとめることができ、別のクラスは、その記録が地震に対応しない曲線をまとめることができる。
【0016】
別の実施形態では、データは黒色腫のデジタル写真とすることができ、あるクラスは悪性黒色腫の写真をまとめることができ、別のクラスは良性黒色腫の写真をまとめることができる。
【0017】
本発明の主題は、D次元のデータ空間内のテストデータのクラスをユーザが決定するのを支援するための方法でもあり、D≧3であり、各データは1つまたは複数のデータを含むクラスに属する。この方法は、テストデータのクラスを評価するための本発明によるステップ、ならびに類似性測定の点でテストデータに最も近い参照データの射影を含む領域をユーザに提示するステップを含む。
【0018】
例えば、類似性測定の点でテストデータに最も近い参照データの射影を含む領域は、その領域を表すための定義済みの色を用いることによってユーザに提示することができる。
【0019】
例えば、類似性測定の点でテストデータに最も近い参照データの射影を含む領域は、テストデータとの類似性が高い順にそれらの領域を表すように、それらの領域を表すための定義済みの色を用いることによってユーザに提示することができる。
【0020】
有利には、この方法は、ユーザがテストデータにクラスを割り当てるステップを含むことができ、ユーザがテストデータに割り当てるクラスは、場合によりユーザに提示される領域のうちの1つに含まれる参照データのクラスであり、またはそうしたクラスではない。
【0021】
本発明の主題は、本発明による方法を実施することを特徴とする、形状を認識するための装置でもある。
【0022】
本発明の主題は、D次元のデータ空間内のテストデータのクラスを評価するためのシステムでもあり、D≧3であり、各データは1つまたは複数のデータを含む少なくとも1つのクラスに属する。このシステムは、データ空間の参照データ一式をQ次元の空間内に射影するためのモジュールを含み、Q<Dであり、各参照データのクラスは知られている。このシステムは、参照データのそれぞれに対するテストデータの類似性の測定を計算するためのモジュールも含む。このシステムは、それぞれが唯一の参照データの射影を含む、複数のばらばらの領域に射影空間を区分化するためのモジュールも含む。このシステムは、テストデータのクラスを評価するためのモジュールも含み、このクラスは、類似性測定の点でテストデータに最も近い参照データを含む領域の1つに含まれる参照データの1つと同じクラスであるものとして評価される。実際に、これらの領域はテストデータの射影を含む可能性が最もある領域である。
【0023】
例えばデータはデジタル化データとすることができ、デジタル化データは、その物理的特性の一部を測定することができるハードウェアオブジェクトであろうとハードウェアオブジェクトのグループであろうと、または個人であろうと個人のグループであろうと、またはシステムの状態であろうとシステムの状態のグループであろうと、オブジェクトの物理的特性の1つまたは複数の測定値を含むことができる。
【0024】
有利には、射影空間内で参照データの空間的構成を保つために、参照データ間の類似性の測定および前記参照データの射影間の距離に依拠する関数を最小化するように参照データを射影空間内に射影することができる。
【0025】
例えば、領域は射影空間内の参照データの射影に関連するボロノイ領域とすることができる。
【0026】
例えば、データはデジタル化された手書き文字とすることができ、クラスは同一文字をまとめることができ、各データは場合により画素のベクトルによって定められる。
【0027】
一実施形態では、データはデジタル化された地震曲線とすることができ、あるクラスは、その記録が地震に対応する曲線をまとめることができ、別のクラスは、その記録が地震に対応しない曲線をまとめることができる。
【0028】
別の実施形態では、データは黒色腫のデジタル写真とすることができ、あるクラスは悪性黒色腫の写真をまとめることができ、別のクラスは良性黒色腫の写真をまとめることができる。
【0029】
本発明の主題は、D次元のデータ空間内のテストデータのクラスをユーザが決定するのを支援するためのシステムでもあり、D≧3であり、各データは1つまたは複数のデータを含むクラスに属する。このシステムは、テストデータのクラスを評価するための本発明によるモジュール、および類似性測定の点でテストデータに最も近い参照データの射影を含む領域をユーザに提示するためのモジュールを含む。
【0030】
例えば、類似性測定の点でテストデータに最も近い参照データの射影を含む領域は、その領域を表すための定義済みの色を用いることによってユーザに提示することができる。
【0031】
例えば、類似性測定の点でテストデータに最も近い参照データの射影を含む領域は、テストデータとの類似性が高い順にそれらの領域を表すように、それらの領域を表すための定義済みの色を用いることによってユーザに提示することができる。
【0032】
有利には、このシステムは、ユーザがテストデータにクラスを割り当てるためのモジュールを含むことができ、ユーザがテストデータに割り当てるクラスは、場合によりユーザに提示される領域のうちの1つに含まれる参照データのクラスであり、またはそうしたクラスではない。
【0033】
本発明の主な利点はさらに、事前選択を一切引き起こすことなしに、クエリオブジェクトと参照オブジェクトとの間のあらゆる類似性をユーザが即座に理解できるようにするグラフィカルな手段を、参照オブジェクトのマップを用いて提供することである。逆説的に言えば、本発明のもう1つの利点は本発明が決定を一切行わないことであり、つまり、ユーザは意思決定者の役割において自身が相変わらず不可欠であることを知っており、このことはユーザが意思決定に直面する際、責任感を保つことを可能にする点で有益である。同様に、たとえユーザが、自動システムが提供する決定に従えることを利用することにより道徳上の義務または法的義務を逃れたくても、本発明では、ユーザはその可能性を有さない。自動決定がないことは、ユーザが競争行動ではなく協調的行動をこの方法に対して計画し、ユーザが自らの行動に有する自信を高める傾向がある点でも有益である。最後に、本発明による方法を実施するシステムは、図形表示装置を備えるほとんどのコンピュータ上で実装することができる。
【0034】
さらに、クエリオブジェクトに対する類似性の測定と共同して、参照オブジェクトの相対的な位置決めは、有利には参照オブジェクトに対するクエリオブジェクトの類似度をもはやクエリオブジェクトと参照オブジェクトとの間の類似度の測定に応じてだけではなく、その類似度および参照オブジェクト自体の間の相対的類似性の両方に応じて順序付けられるようにし、特定の位置決めは、例えば参照オブジェクトをその位置を用いてD次元のベース空間B内に射影することにより、または類似度行列によって与えられる参照オブジェクトの相対的類似性を用いて得られる。クエリオブジェクトとの類似性について降順に順序付けられる参照オブジェクトの単純な一覧だけではなく、本発明による方法によって得られる参照オブジェクトの表現空間は、射影によって得られるベース(basis)内で位置的に見て同様の参照オブジェクトのグループを決定できるようにし、それらのグループのそれぞれは類似性測定の点でクエリオブジェクトにある程度似通った参照オブジェクトを含む。これらのグループを用いて、例えばクエリオブジェクトに最も似ている参照オブジェクトのグループ内の最上位クラスをクエリオブジェクトに割り当て、クエリオブジェクトに最も似ている第2のクラスとして、クエリオブジェクトに最も似ている参照オブジェクトの第2のグループ内の最上位クラスを割り当てることができ、このようにして既存のG個のグループに対して割り当てることができる。したがって、本発明による方法によって得られる参照オブジェクトの表現空間は、参照オブジェクトに対するクエリオブジェクトの類似性についての、このより厳密な推定を可能にする。
【0035】
本発明の他の特徴および利点は、添付図面に関連して示す以下の説明の助けを借りて明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の例示的実施形態をデータマップによって示す図である。
【図1−2】本発明による射影ステップをチャートによって示す図である。
【図2】本発明を実施するために使用可能な別の例示的データマップである。
【図3】本発明の実施形態の一例を図4および図5と同じデータマップにより示す図である。
【図4】本発明の実施形態の一例を図3および図5と同じデータマップにより示す図である。
【図5】本発明の実施形態の一例を図3および図4と同じデータマップにより示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、本発明による動物種の例示的マップを示す。図1には不図示の人類に相当するクエリオブジェクトは、それぞれが別の動物種に相当する参照オブジェクトに対する1組の類似性測定によって特徴付けられる。したがって、ある参照オブジェクトはハマグリの一種に相当し、別の参照オブジェクトはロブスターの一種に相当し、別の参照オブジェクトはてんとう虫の一種に相当し、別の参照オブジェクトは蜂の一種に相当し、別の参照オブジェクトはキーウィの一種に相当し、別の参照オブジェクトはシタガレイの一種に相当し、別の参照オブジェクトはコダラの一種に相当し、別の参照オブジェクトはカラスの一種に相当し、別の参照オブジェクトはカモメの一種に相当し、別の参照オブジェクトはナマズの一種に相当し、別の参照オブジェクトはイルカの一種に相当し、別の参照オブジェクトはカエルの一種に相当し、別の参照オブジェクトはハムスターの一種に相当し、別の参照オブジェクトはアザラシの一種に相当し、別の参照オブジェクトはピラニアの一種に相当し、別の参照オブジェクトはノウサギの一種に相当し、別の参照オブジェクトはモグラの一種に相当し、別の参照オブジェクトはヤギの一種に相当し、別の参照オブジェクトはピューマの一種に相当し、別の参照オブジェクトはゴリラの一種に相当する。有利には、各参照オブジェクトを囲む領域を該当する種に対する人間の近似性に応じて色付けすることができ、この色付けは所与の測定基準に従う。本発明により、哺乳類、具体的にはゴリラに対する人間の近似性を確認することができる。
【0038】
したがって、本発明は以下の原理にとりわけ基づく。セットSはN個の参照オブジェクトを含み、N個の参照オブジェクトは、Sの各オブジェクトiとSに属さないクエリオブジェクトqとの間の1組のNxKの類似性の測定値M={iqz=1...K,i=1...Nによって示される。類似性iqは実数であり、その値は、検討するオブジェクトiおよびオブジェクトqを少なくとも引数として取る関数である。オプションで、iqは、IRのベースB内で定められるDの特性のベクトル(vectors of D characteristics)形式vおよびvで表される、オブジェクトiとオブジェクトqとの間で定められる距離測定を用いて得ることができる。一部の相似値iqが場合により欠けている場合があり、その場合には値がないことが特定の方法で符号化される。オブジェクトの帰属クラスをオプションで提供することができ、その帰属クラスは、それぞれが帰属クラスを特定するCのあり得る値の中から取得される値の形を取ることができる。
【0039】
クエリオブジェクトqを基準にしてSの各オブジェクトiの外観を規定するために、1組のKのパラメータpi1からpiKも考慮し、すなわちiqのKの関数、IR上に定められIR内に値を有するfi1からfiK、Fと呼ぶ1組の関数とともにNのベクトルpがIRのベースB内で定められ、それにより1...Kの全てのzについて、piz=fiziq)が成立する。関数fizは他のパラメータに依拠してもよいが、あらゆる場合において最低限iqに依拠する。
【0040】
参照オブジェクトがマップ、すなわちベースBによって定められるQ次元の距離空間上に配置され、その結果、参照オブジェクトiの位置は、B内のQの成分とともにベクトルwによって定められる。この位置決めは自然に生じることができ、参照オブジェクトはマップ上での表現を可能にする座標を場合により既にもっている。さもなければ、この位置決めは本発明のユーザによって実行される手動とすることができる。あるいはこの位置決めは自動とすることができ、つまり参照オブジェクト間の類似性測定あるいはベースB内の参照オブジェクトの位置を使用して、ベースB内の参照オブジェクトの位置を定める。例えば、ベースB内の参照オブジェクトの空間的構成をマップ上で保つために、参照オブジェクト間の類似性の測定および参照オブジェクトのマップ上の射影間の距離の関数を最小化するように参照オブジェクトをマップ上に配置することができ、場合によりこの関数は、例えば参照オブジェクト間の類似性の測定と、参照オブジェクトのマップ上の射影間のユークリッド距離との間の、x乗される対の不一致(pairwise discrepancies)の絶対値の加重和であり、例えば遠い距離よりも短い距離の保存に有利であるように、加重は、参照オブジェクト間の類似性の測定および参照オブジェクトのマップ上の射影間の距離の測定の関数であり、累乗xは実数である。
【0041】
次に、各参照オブジェクトiを以下に記載する領域Rであって、wが位置を決定する、領域Rによって表す。マップ上に配置される参照オブジェクトiごとに、その外観がK個の実数p=(pi1,...,iK)によってパラメータ化される領域Rを定める。これらのパラメータに関する値の欠如の様々な可能な組合せに特定の外観が関連する。後で記載する例示的実施形態では、オブジェクトiごとに、座標wを有する点のボロノイ領域を灰色で色付けすることができ、この灰色の光度はパラメータpi1の値に比例する。別の例示的実施形態では、点wのボロノイ領域を赤緑青のカラースケールを用いて色付けすることができ、色はこのスケール内の3つのパラメータpi1、pi2、およびpi3の値によって規定される。パラメータpは、例えば領域Rの形状または大きさを修正する役目を果たすこともできる。
【0042】
別の言い方をすれば、1組の入手可能情報に基づいて領域Riの外観特性(大きさ、形状、色、テクスチャ、方向、輝度)を計算する可能なステップが存在し、その入手可能情報とはすなわち、ベースBにおける座標の形を取り、またはベースBにおける座標の形を取る参照オブジェクトのセットS、参照オブジェクトに対するクエリオブジェクトの類似性の1組の測定値M、および1組の関数Fである。
【0043】
有利には、クエリオブジェクトを領域Rの外観によって視覚化することができる。この外観はパラメータpizを計算することによって求めることができ、パラメータpiziqの関数であり、オプションで1組の任意の追加パラメータの関数である。iqが値を有さない場合(欠損値)、パラメータpizはいかなる値も提供せず、特定の外観が使用される。
【0044】
例えば、pizは以下のように定めることができる。
iz=(iq−m)/(m−m)ただしmおよびmは2つのスケールパラメータである。
例えば、m=minkq)、およびm=maxkq)を使用することができる。
【0045】
別の言い方をすれば、図1−2に示すように、参照オブジェクトSおよびSに属さないクエリオブジェクトqは、同じベースB内に記述することができ、それは、一方でベースBにおけるqの座標を定める、クエリオブジェクトqに対するSの各オブジェクトiの類似性の測定値Mが、クエリオブジェクトqおよびSのオブジェクトのBにおける特性を引数として取る関数(例えばユークリッド距離)の形で計算され、他方では、ベースBにおけるSのオブジェクトの特性が、ベースB内に記述されるこれらSのオブジェクトを射影するための方法によって得られるおかげである。ベースBとベースBとのデカルト積はベースBを形成し、ベースBでは各参照オブジェクトSがベースB内のその座標によって、およびそのベースB内の座標によって記述され、別の言い方をすればSの各オブジェクトは、B内のその特性を射影することによって得られる1組の特性、およびクエリオブジェクトqに対するその類似度を計算するための関数Fによって得られる1組の特性により、ベースB内に記述される。クエリオブジェクトqはベースB内の1組の特性として存在せず、参照オブジェクトに対するその類似度の点でのみ黙示的に現れる。別の言い方をすれば、ベースB内の各参照オブジェクトの座標は、BのB部分におけるクエリオブジェクトqに対する類似度と、BのB部分におけるその絶対位置による他の参照オブジェクトに対する類似度とを同時に運び、このことは、ベースB内の他の参照オブジェクトに対するその参照オブジェクトの位置を暗に与える。有利には、BのベースB内にクエリオブジェクトqを射影する必要一切なしに、ベースB内の参照オブジェクトだけの特性を引数として取る関数により、参照オブジェクトに対するクエリオブジェクトの類似度を評価するステップを行うことができる。
【0046】
有利には、ベースBはグラフィカル形式を取ることができ、BのB部分は参照オブジェクトiごとに画面上の位置を与え、BのB部分は、この参照オブジェクトiに対するクエリオブジェクトqの類似度を、画面上の同じ場所に位置する領域Rの色または特定の外観の形で与える。別の言い方をすれば、本発明による方法は、ベースB内に記述される参照オブジェクトSおよびクエリオブジェクトqを、ベースB内の参照オブジェクトの分類記述(classifying description)に変換するための方法として見ることができる。別の言い方をすれば、参照オブジェクトSに対するクエリオブジェクトqの類似度はそれらのと同質であり、よって、有利には先に記載した意味でのより厳密な分類が、本発明を適用することに由来するベースB内の参照オブジェクトの座標によりそのようなものとして表される。本発明の主題である方法による分類の結果が、参照オブジェクトの座標の値により、および間接的にベースB内のクエリオブジェクトの座標の値によりそのようなものとして与えられる。
【0047】
図1−2は、BからBに射影するステップおよびBからBに射影するステップ、次いで、BおよびBのデカルト積によりBを構築するステップ、ならびにこのベースB内でクエリオブジェクトqを分類するステップを示す。
【0048】
図2は、決定エイドシステム、例えば手書き文字を認識するためのシステムにおいて本発明を実施するために使用することができる例示的データマップを示す。したがって、オブジェクトは、階調レベルとしての8×8画素の手書き数字のイミジット(imagettes)とすることができる。これらのイミジットを、10個の数字(0,1,2,...,9)に対応する均衡の取れた10のクラスに分ける。目的はクエリイミジットのクラスを取得すること、すなわち8×8画素の行列によって表される数字を0〜9から決定することであり、この数字は事前に知られていない。この例では、パブリックベース(public base)において300個の参照イミジットが任意に選択されている。出願人が別の特許を申請した方法を用いてこの300個のイミジットを平面内に配置してマップを形成し、これによりイミジットはマップ上で区域ごとにまとめられる。各区域は、その区域が含むイミジットの帰属クラス、すなわちその区域が含むイミジットによって表される手書き数字を用いて容易に視覚的に区切ることができ、この数字は事前に知られている。
【0049】
図3、図4、および図5は、図2のマップと同じデータマップを示し、このマップは、クエリイミジットの3つの例によって表される数字を本発明に従って評価するために使用する。3つのクエリイミジットは、図3、図4、および図5の左上に位置するイミジットに相当し、それらのイミジットはそれぞれ数字0、数字1、および文字xである。本発明によれば、これら3つのクエリイミジットは図3、図4、および図5に示すマップ上に配置されないことを明確に理解しなければならない。
【0050】
この例において各イミジットは、3つのクエリイミジットの1つであろうと300個の参照イミジットの1つであろうと、[0,1]内に64の値を有するベクトルによって定めることができ、[0,1]内の各値は画素の光度を表す。図3、図4、および図5に示すこの例では、視覚化を可能にする領域は、参照イミジットのそれぞれに関連するボロノイ領域とすることができる。参照イミジットに関連するボロノイ領域は、あるイミジットを表す他の任意の点よりも、マップ上でこのイミジットを表す点に近い1組の平面の点を含む。次に、クエリイミジットを提示するとき、検討するクエリオブジェクトと各参照オブジェクトとの間の類似性を視覚化するためにボロノイ領域を色付けする。この類似性は類似性測定値Mを用いて決定し、この例では、類似性測定値Mは画素の64次元のベクトル空間内のユークリッド距離とすることができる。例えば色は、ユークリッド距離の点で参照イミジットがクエリイミジットに近ければ近いほどますます明るくなり得る。したがって、ゼロのユークリッド距離m(同一のイミジット)を白の領域で表すことができるのに対し、高いユークリッド距離mは黒の領域で表すことができる。黒の領域に対応する最小ユークリッド距離を固定するために、例えば参照イミジットごとに6番目に近い近傍までのユークリッド距離を計算することができ、最小距離は場合により計算される6つの距離のうちの最大値(maximum)となる。したがって、この最小距離よりも大きいユークリッド距離mを黒色で表し、より短いユークリッド距離は、場合によってはえんじ色(m大)から橙黄色、次いで白(mゼロ)に及ぶカラーレベルに従って色付けすることができる。
【0051】
したがって、図3の左上にある挿入図に示すようにクエリイミジットが手書き数字0に相当する場合、周辺領域のグループが曖昧さなしにとりわけ黄色およびオレンジで非常に強調されて表示される。これらが、クラス0に属する参照イミジットに関連する領域である。この表示は、クエリイミジットが恐らくこのクラスに属することをユーザに示し、実際にそうである。したがって、本発明は形状認識の分野において効果的である。一般的応用では、本発明による形状認識は、参照オブジェクトのあらゆる典型的特性を示すオブジェクトを伴う。そのため決定が容易であり、エラーのリスクも低い。決定エイドシステムのフレームワークの範囲内で、ユーザのために警告信号「信号で伝えることは何もない」を発することができる。
【0052】
他方で、クエリイミジットが図4の左上にある挿入図に示す手書き数字1に相当する場合、ごく少数の散在する領域がとりわけ赤で僅かに強調されて表示される。これらは1、2、4、5、および9に関連する領域である。これらの領域は、様々なクラスに対応する平面の全く異なる区域を占有し、そのどれも著しくは強調表示されていない。したがって決定は困難であり、注意が必要である。ただし、クエリイミジットに基づいて確信をもって数字を推測することはリーダにとっても困難であることに留意されたい。一般的応用においてこの状況は、他とは異なるが、参照クラスのいくつかにとって識別可能であり続ける新たなオブジェクトを必然的に伴う。この場合、徹底的な解析が必要である。決定エイドシステムのフレームワークの範囲内で、ユーザのために警告信号「注意」を発することができる。
【0053】
最後に、図5の左上にある挿入図に示すようにクエリイミジットが文字xに相当する場合、すなわちどんな参照イミジットにも一致しない文字。この場合、強調表示される領域はなく、そのことは提示されるデータの異常の指標として解釈することができる。したがって、提案する本発明はユーザがこの異常を容易に検出できるようにする。一般的応用においてこの状況は、非定型であり、参照クラスにとって識別不能な新たなオブジェクトを必然的に伴う。この場合、徹底的な解析が必要であり、新たなクラスを作成することを考えなければならない。決定エイドシステムのフレームワークの範囲内で、ユーザのために警告信号「停止」を発することができる。
【0054】
したがって本発明によれば、クエリイミジットは決してマップ上に配置されず、それにより、この配置によって引き起こされる擬似(artificial)の近傍と類似性測定によって与えられる実際の近傍との間のいかなる視覚的矛盾も回避する。本発明では、視覚化する情報項目の理解容易性を最適化するために、類似性測定によって与えられる実際の近傍だけを視覚化する。
【0055】
クエリオブジェクトと参照オブジェクトとの間の類似性の測定が一切存在しない場合があるが(欠損値)、それらの1つまたは複数が存在し得ることにも留意すべきである。本発明の意義の範囲内で、類似性測定は、例えば2つのオブジェクト間の距離や2つのオブジェクト間の距離における不確実性、あるいは類似性測定の最小値および最大値などの類似性測定値の動的範囲を決定する役目を果たすスケールパラメータなど、2つのオブジェクトおよびそれらのオブジェクトと無関係のパラメータを引数として取る関数である。各参照オブジェクトは、マップ上の位置によって、およびオプションで他の全ての参照オブジェクトとの1つまたは複数の類似性測定によって特徴付けることができる。視覚的に評価できるようにするために、オプションで1組の類似性測定値を用いて、参照オブジェクトの少なくとも1つをマップ上に手動でまたは自動で配置することができる。視覚的解釈を容易にするために、第1に、追加で行う測定により参照オブジェクトが似ていれば似ているほど、それらのオブジェクトがマップ上でより近くなり、第2に、同様のクラスのオブジェクトはマップ上で近く、異なるクラスのオブジェクトはマップ上で遠く離れるように配置することを推奨する。ただし、クエリオブジェクト自体は決してマップ上に配置されない。
【0056】
クエリオブジェクトと参照オブジェクトとの間の類似性測定のゼロ、1つ、または複数を特定の外観により、例えば大きさ、形状、テクスチャ、色によって、あるいはこの参照オブジェクトに関連する領域形式でマップ上に視覚化することができる。これにより測定がないことを視覚化すること、またはその不正確さもしくは不確実さがある類似を視覚化することを可能にすることができる。
【0057】
参照オブジェクトは、連続的であろうと離散的であろうと、ゼロ、1つ、または複数の序数的もしくは数値的な特性(炉の温度、レーダエコーの方位、車両の車輪の数)をもつことができる。同様に、参照オブジェクトは、名前、種類、帰属クラスなど、ゼロ、1つ、または複数の名目上の特性をもつことができる。これらの追加特性は、特定の外観により、例えば大きさ、形状、テクスチャ、色によって、あるいはこの参照オブジェクトに関連する領域形式でマップ上に視覚化することができる。
【0058】
本発明は、ユーザが類似性の観点から参照オブジェクトに対するクエリオブジェクトの近似性を視覚的かつ全体的に評価できるようにする。したがって本発明は、このオブジェクトの性質およびこのオブジェクトに適合させることができる処理に関してユーザが決定を行うことを支援する。参照オブジェクトの位置が安定している地図製作タイプの視覚化の関連性、マップ上に視覚化される類似性測定の関連性、ならびにクエリオブジェクトがマップ上に配置されないことは、弁別における決定エイドの分野において、および参照オブジェクトに関してクエリオブジェクトの異常を検出する分野において本発明を一層際立って利用可能にする。
【0059】
本発明の主な利点はさらに、参照オブジェクトの位置または参照オブジェクトを表すのに役立つ区域の位置が固定され、クエリオブジェクトと無関係であるように参照オブジェクトのマップを提示することである。したがってこのマップは、参照オブジェクトの母集団を視覚的に評価できるようにするとともに、この表現を容易に記憶できるようにする安定したベースを構成する。ユーザは参照オブジェクトの位置が変化することに邪魔されないので、この安定性は、ユーザが参照オブジェクト自体の間の類似性ではなく、クエリオブジェクトと参照オブジェクトとの間の類似性に自らの意識を集中させることを可能にする。
【0060】
さらに、参照オブジェクトの間にクエリオブジェクトが配置されないことで、クエリオブジェクトと参照オブジェクトとの間に矛盾した刺激がない。
【0061】
さらに、位置以外の参照オブジェクトの視覚的パラメータにより、クエリオブジェクトと参照オブジェクトとの間の類似性を表現することは、クエリオブジェクトに最も似ている、またはクエリオブジェクトと最も異なる参照オブジェクトを即座に視覚的に認知できるようにする。
【0062】
最後に、先に記載した本発明による方法を実施するシステムは、図形表示装置を備えるほとんどのコンピュータ上で実装することができる。
【0063】
先に記載した本発明の主な利点はさらに、決定が行われないことであり、つまり信頼性指標も、論理規則のどんな組合せも、クラスにおける全体的な帰属の可能性も、その出所および解釈がユーザの管理下にないあらゆる情報もない。視覚化されるのは、クエリオブジェクトと各参照オブジェクトとの間の類似性の測定である。何よりも、視覚化されるのは、実際にクエリオブジェクトと各参照オブジェクトとの間の類似性の測定であり、クエリオブジェクトとは無関係の参照オブジェクトの特性だけではない。この点は、オブジェクトが2つ以上の特性を有し、オブジェクトごとにそれらの複数の特性を同一マップ上に視覚化することを困難にする場合、および同様に、クエリオブジェクトの特性との複雑な目視比較を視覚化することを困難にする場合にとりわけ有利である。
【0064】
さらに、本発明は、入力として与えられる未処理の類似性測定を変形させることなしに視覚化できるようにする。この応用によれば、その測定はユーザに知られ、または少なくともそのユーザにとって理解できるものであり、つまりユーザの管理下にない別の処理に起因するバイアスはない。このことは、視覚化される情報項目を理解できるようにし、その情報項目についてユーザに自信を与える点で有益である。本発明は、マップ形式の自然な表現を必ずしもなんら有さないオブジェクトにも適用され、その理由は、クエリオブジェクトと参照オブジェクトとの間の類似性の表現はこの配置に依拠しないからである。したがって、本発明は任意の自動または手動の手段によりマップ上に配置されるオブジェクトに適用できるだけでなく、例えば各区域が参照オブジェクトに対応する地理区域の境界など、マップ形式のグラフィカル表現があらかじめ定められているオブジェクトにも適用することができる。視覚化される測定は、クエリオブジェクトと参照オブジェクトとの間の類似性の測定であり、よって後者を基準にして前者を頭の中で配置できるようにするのに対し、従来技術によるマップは、クエリオブジェクトとは独立に、表される参照オブジェクトに固有の情報項目を表示する。
【0065】
本発明の適用分野は非常に広く、本発明による方法は汎用であり、したがって弁別において決定エイドシステム、とりわけ形状認識システムを用いるどんな分野にも適用することができる。
【0066】
例えば本発明は、黒色腫の診断など、医療診断支援の分野において適用できる。実際に、黒色腫の診断は一般医にとって非常に難しい。決定エイドツールは、皮膚科医と相談するために患者を送り出すかどうかに関する選択において一般医を支援することができる。したがって、「クエリ」黒色腫が参照黒色腫を色付けし、その深刻さを医者が判断できるようにする。一連の看護を通じて患者を導くことについて、本発明が医者を支援することを可能にする他の病変に汎用化することができる。
【0067】
例えば本発明は、地震事象の自然起源や人為起源(例えば採石爆破)を特定することなど、地震事象の発生源を研究する分野において適用できる。この研究は、複数の測定局上で拾われる信号を用いて地球物理学者の分析者が行う定型作業である。分析者は、習慣的に遭遇し、その発生源に応じて空間的にまとめられる事象のマップを見る。解析にかけられる事象は、類似の参照事象をマップ上で色付けし、それにより分析者がその事象の発生源を特定するのを支援する。
【0068】
例えば本発明は、顧客行動の分析など、マーケティングの分野において適用できる。参照顧客を視覚化し、マップ上でカテゴリごとにまとめることができ、各カテゴリは特定の広告メッセージが送られる独自のターゲットに対応する。参照顧客への近似性に応じて新たな顧客を視覚化し、それにより、その顧客が最も近い1つまたは複数のカテゴリを認識できるようにする。
【0069】
例えば本発明は、クレジット、株式市場または保険にかかわるリスク評価の分野において適用できる。この応用は、クライアントに適用するクレジットの種類または危険査定を定めるために、そのクライアントの経済状態の変動のリスクを評価することを必然的に伴う。
【0070】
例えば本発明は、生物測定の分野において適用できる。個人は、顔の写真または指紋によって特定することができる。これらの要素は、マップ上に配置される参照要素と比較することができる。調査を行う分析者は、その個人が、1人または複数の参照的個人と似ているか、または逆に完全に新しいかをすぐに認識する。
【0071】
例えば本発明は、産業上のセキュリティまたはコンピュータセキュリティの分野において適用できる。原子力施設では、施設の運転の監視を担当するオペレータが、通常運転中に習慣的に測定される様々な参照状態のマップを見る。現在の運転状態が、この現在の状態への類似性に関係する、参照状態の着色の形で表示される。現在の状態が参照状態からどんどん離れていくように見える場合、オペレータがそれに気付き、シャットダウン、避難、または簡単な検査のための適切な手順をトリガする。同様に、コンピュータシステム内への侵入者を検出することができ、その侵入者の行動様式は、参照される正常な行動様式に類似しない。
【0072】
例えば本発明は、輸送、ロジスティックス、あるいは予知保全の分野において適用できる。その場合、フローの状態を追跡し、参照状況を基準にして視覚的にドリフトを検出することを必然的に伴う。
【0073】
例えば本発明は、インターネットのお気に入り、ウェブページ、あるいは個人フォルダなどのデジタル文書を分類する分野において適用できる。新たなインターネットサイトを閲覧し、そのサイトを自らの好きなサイトのリストに追加したいインターネット利用者には、そのリスト内に既に存在するサイトのビューがマップ形式で提示される。その新たなサイトは、好きなサイトとの類似性に応じて好きなサイトを色付けし、それによりインターネット利用者がそのサイトを分類するための最適な1つまたは複数のカテゴリを決定できるようにし、または新たなカテゴリを作成できるようにする。写真であろうと映像やテキストであろうと、この原理はどんな種類の文書に対しても適合させることができる。
【0074】
例えば本発明は、テレビ、洗濯機、携帯電話、コンピュータ、車、家、保険、投資金融商品、携帯電話の加入など、複数の特性によって特徴付けられる複合製品の選択におけるコンシューマエイドの分野において適用できる。典型的である最後の事例では、マップ上にパッケージ契約(参照)が表示され、顧客は自らの消費タイプ(したがってその顧客の理想的なパッケージ)を明らかにするように求められる。すると本発明は、その顧客の理想的なパッケージに最も近いパッケージをその顧客に提示することを可能にし、このマップ状の構成は、他のパッケージを基準にして顧客の理想に近いパッケージを明確に区別できるようにする。本発明は、顧客が指定しなかった特徴(価格、インターネットオプション等)によって大幅に異なる、パッケージの様々なファミリーを区別することも可能にする。これにより顧客は、契約のこれらのファミリーのそれぞれに非常に早く注目し、マップのおかげで自らが情報のジャングルの中の「どこ」にいるのかを視覚化することができる。
【0075】
先のイミジットの例は単に実例として与えたに過ぎない。実際には本発明はあらゆる種類のデータ、とりわけデジタル化データに適用することもできる。これらのデジタル化データは、その物理的特性の一部が測定されるハードウェアオブジェクト、個人、システムの状態であろうと、あるいはそのようなオブジェクト、個人、または状態のグループであろうと、写真以外の非常に多岐にわたるオブジェクトについて取られる物理的特性の測定値を含むことができる。
【0076】
必然的に、これらのデジタル化データはスカラ、すなわちセンサによって与えられる測定値などの実数を含むことができる。
【0077】
ただし、これらのデジタル化データは、有限集合の要素値(単語の文字、オブジェクトの名前等)などの記号(アルファベットの要素)を含むこともできる。
【0078】
これらのデジタル化データは、センサ測定ならびにその不確実性、センサのネットワークから生じる1組の測定値、信号(一連の測定値、フロー等)、データベースから生じる1組の値、単語、文章、テキスト、1組の正規化された測定値(比率)、あるいはスカラまたは記号データの任意の組など、ベクトルを含むこともできる。
【0079】
これらのデジタル化データは、平らな白黒画像、センサのネットワークから生じる1組の信号、遺伝的データ、あるいはベクトル様データの任意の組など、行列を含むこともできる。
【0080】
これらのデジタル化データは、一連の画像(映像)、多重スペクトル画像(衛星画像)、カラー画像(写真、シミュレーションの結果)、3D画像(スキャナ)、多次元メッシュ(シミュレーションモデル)、あるいは行列様データの任意の組や、より低次元の多次元配列の任意の組など、多次元配列を含むこともできる。
【0081】
これらのデジタル化データは、ソーシャルネットワーク、インターネットネットワーク、輸送ネットワーク(道路交通、情報、エネルギ等)、相互作用のネットワーク(タンパク質、遺伝子)、センサのネットワーク、数値モデリングメッシュ(2D、3D、3Dと時間等によるモデリング)など、グラフおよびネットワークを含むこともできる。
【0082】
これらのデジタル化データは、数値モデリングメッシュ(仮想オブジェクト、マルチ物理モデリング、アニメ映画)、生物学的モデル、分子モデル、物理モデル、気候モデル、力学モデル、あるいは化学的モデルなど、小区画式の複合体(cellular complexes)または超グラフを含むこともできる。
【0083】
これらのデジタル化データは、マルチメディア文書(組織化された1組のテキスト、映像、音声信号等)、文書の集合、あるいは組織化された文書の任意の組(ライブラリ)など、複合データを含むこともできる。
【0084】
これらのデジタル化データは、例えば電話加入契約など、サービスに加入する契約を含むこともできる。本発明による方法およびシステムは、有利にはユーザのプロファイルに応じて最適な電話パッケージを選択できるようにすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
D次元のデータ空間内のテストデータのクラスを評価するための方法であって、D≧3であり、各データは1つまたは複数のデータを含む少なくとも1つのクラスに属する、方法において、
−前記データ空間の参照データ一式をQ次元の空間内に射影するステップであって、Q<Dであり、各参照データの前記クラスは知られている、射影するステップと、
−前記参照データのそれぞれに対する前記テストデータの類似性の測定を計算するステップと、
−それぞれが唯一の参照データの前記射影を含む、複数のばらばらの領域に前記射影空間を区分化するステップと、
−前記テストデータの前記クラスを評価するステップであって、このクラスは、前記類似性測定の点で前記テストデータに最も近い前記参照データを含む前記領域の1つに含まれる前記参照データの1つと同じクラスであるものとして評価される、評価するステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記データがデジタル化データであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記デジタル化データが、オブジェクトの物理的特性の1つまたは複数の測定値を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記オブジェクトが、
−ハードウェアオブジェクトもしくはハードウェアオブジェクトのグループ、または
−個人もしくは個人のグループ、または
−システムの状態もしくはシステムの状態のグループ
であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記射影空間内で前記参照データの空間的構成を保つために、
−前記参照データ間の類似性の前記測定、
−前記参照データの前記射影間の距離
に依拠する関数を最小化するように前記参照データを前記射影空間内に射影することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記領域が、前記射影空間内の前記参照データの前記射影に関連するボロノイ領域であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記データがデジタル化された手書き文字であり、前記クラスが同一文字をまとめ、各データが画素のベクトルによって定められることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記データがデジタル化された地震曲線であり、あるクラスは、その記録が地震に対応する曲線をまとめ、別のクラスは、その記録が地震に対応しない曲線をまとめることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記データが黒色腫のデジタル写真であり、あるクラスは悪性黒色腫の写真をまとめ、別のクラスは良性黒色腫の写真をまとめることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
D次元のデータ空間内のテストデータのクラスをユーザが決定するのを支援するための方法であって、D≧3であり、各データは1つまたは複数のデータを含むクラスに属する、方法において、
−前記テストデータのクラスを評価するための請求項1に記載のステップ、
−類似性測定の点で前記テストデータに最も近い参照データの射影を含む領域を前記ユーザに提示するステップ
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記類似性測定の点で前記テストデータに最も近い前記参照データの前記射影を含む前記領域が、前記領域を表すための定義済みの色を用いることによって前記ユーザに提示されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記類似性測定の点で前記テストデータに最も近い前記参照データの前記射影を含む前記領域が、前記テストデータとの類似性が高い順に前記領域を表すように、前記領域を表すための定義済みの色を用いることによって前記ユーザに提示されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ユーザが前記テストデータにクラスを割り当てるステップを含み、前記ユーザが前記テストデータに割り当てる前記クラスは、場合により前記ユーザに提示される前記領域のうちの1つに含まれる参照データの前記クラスであり、またはそうしたクラスではないことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法を実施することを特徴とする、形状を認識するための装置。
【請求項15】
D次元のデータ空間内のテストデータのクラスを評価するためのシステムであって、D≧3であり、各データは1つまたは複数のデータを含む少なくとも1つのクラスに属する、システムにおいて、
−前記データ空間の参照データ一式をQ次元の空間内に射影するためのモジュールであって、Q<Dであり、各参照データの前記クラスは知られている、射影するためのモジュールと、
−前記参照データのそれぞれに対する前記テストデータの類似性の測定を計算するためのモジュールと、
−それぞれが唯一の参照データの前記射影を含む、複数のばらばらの領域に前記射影空間を区分化するためのモジュールと、
−前記テストデータのクラスを評価するためのモジュールであって、このクラスは、前記類似性測定の点で前記テストデータに最も近い前記参照データを含む前記領域の1つに含まれる前記参照データの1つと同じクラスであるものとして評価される、評価するためのモジュールと
を含むことを特徴とする、システム。
【請求項16】
前記データがデジタル化データであることを特徴とする、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記デジタル化データが、オブジェクトの物理的特性の1つまたは複数の測定値を含むことを特徴とする、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記オブジェクトが、
−ハードウェアオブジェクトもしくはハードウェアオブジェクトのグループ、または
−個人もしくは個人のグループ、または
−システムの状態もしくはシステムの状態のグループ
であることを特徴とする、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記射影空間内で前記参照データの空間的構成を保つために、
−前記参照データ間の類似性の前記測定、
−前記参照データの前記射影間の距離
に依拠する関数を最小化するように前記参照データを前記射影空間内に射影することを特徴とする、請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
前記領域が、前記射影空間内の前記参照データの前記射影に関連するボロノイ領域であることを特徴とする、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記データがデジタル化された手書き文字であり、前記クラスが同一文字をまとめ、各データが画素のベクトルによって定められることを特徴とする、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記データがデジタル化された地震曲線であり、あるクラスは、その記録が地震に対応する曲線をまとめ、別のクラスは、その記録が地震に対応しない曲線をまとめることを特徴とする、請求項15に記載のシステム。
【請求項23】
前記データが黒色腫のデジタル写真であり、あるクラスは悪性黒色腫の写真をまとめ、別のクラスは良性黒色腫の写真をまとめることを特徴とする、請求項15に記載のシステム。
【請求項24】
D次元のデータ空間内のテストデータのクラスをユーザが決定するのを支援するためのシステムであって、D≧3であり、各データは1つまたは複数のデータを含むクラスに属する、システムにおいて、
−前記テストデータのクラスを評価するための請求項1に記載のモジュール、
−類似性測定の点で前記テストデータに最も近い参照データの射影を含む領域を前記ユーザに提示するためのモジュール
を含むことを特徴とする、システム。
【請求項25】
前記類似性測定の点で前記テストデータに最も近い前記参照データの前記射影を含む前記領域が、前記領域を表すための定義済みの色を用いることによって前記ユーザに提示されることを特徴とする、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記類似性測定の点で前記テストデータに最も近い前記参照データの前記射影を含む前記領域が、前記テストデータとの類似性が高い順に前記領域を表すように、前記領域を表すための定義済みの色を用いることによって前記ユーザに提示されることを特徴とする、請求項24に記載のシステム。
【請求項27】
前記ユーザが前記テストデータにクラスを割り当てるためのモジュールを含み、前記ユーザが前記テストデータに割り当てる前記クラスは、場合により前記ユーザに提示される前記領域のうちの1つに含まれる参照データの前記クラスであり、またはそうしたクラスではないことを特徴とする、請求項24に記載のシステム。

【図1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−508840(P2013−508840A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534714(P2012−534714)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065997
【国際公開番号】WO2011/048219
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(510163846)コミシリア ア レネルジ アトミック エ オ エナジーズ オルタネティヴズ (47)
【Fターム(参考)】