説明

双安定型電気光学ディスプレイを駆動するための方法

【課題】好適な双安定性型電気光学ディスプレイの更新および駆動方法を提供する。
【解決手段】グレースケールの双安定型電気光学ディスプレイは、転移に必要なインパルスを表すデータを含有するルックアップテーブルの保存、各表示画素の少なくとも初期状態を表すデータの保存、少なくとも一表示画素の希望最終状態を表す入力信号の受信、および画素に印加される画素電圧を表す出力信号の生成により駆動される。補正電圧を表す補正電圧データは各画素ごとに保存され、各画素の当該補正電圧は各画素に以前印加され
た少なくとも一インパルスに基づき計算され、当該画素電圧は当該画素と当該ルックアップテーブルの初期・最終状態より決定される駆動電圧と、当該画素の当該補正電圧データより決定される補正電圧の合計である。上記のようなディスプレイの他の類似駆動方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は国際出願PCT/US02/37241号の関連出願である。公報WO 03
/044765号の全内容は、参考として本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は電気光学ディスプレイの駆動方法、特に双安定型電気光学ディスプレイの駆動
方法に関連する。また本発明は、当該方法で使用される駆動装置にも関連する。より具体
的には、本発明は電気光学ディスプレイの画素のグレー状態のより精密な調節ができるよ
うにデザインされた駆動方法と駆動装置(コントローラ)に関連する。また本発明は、電
気泳動ディスプレイに印加される駆動インパルスの長期に渡る直流(DC)バランスの維
持を可能にする方法にも関連する。本発明は、これに限定されないが、一つかそれ以上の
種類の荷電粒子が液中に懸濁され、電場の影響下で液中を移動してディスプレイの外観を
変化させる粒子型電気泳動ディスプレイとの使用を特に目的とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
物質やディスプレイに適用される「電気光学(electro−optic)」という
用語は、本出願においては画像分野の従来の意味で使用され、少なくとも一つの光学的性
質が異なる第一、第二表示状態を有する物質を指し、当該物質は当該物質に印加される電
場によりその第一表示状態から第二表示状態に変化する。当該光学的性質は、通常、人の
目で色覚認識可能だが、他の光学的性質、例えば光伝送、反射率、発光、あるいは機械読
取用のディスプレイの場合は、可視範囲外の電磁波長の反射率の変化による擬似光である
可能性もある。
【0004】
「グレー状態(gray state)」という用語は、本出願においては、画像分野
の従来の意味で使用され、画素の二つの極度光学状態間の状態を指し、当該極度光学状態
は必ずしも黒白間の転移を意味しない。例えば、下記の複数の登録特許や特許公報に記載
の電気泳動ディスプレイでは、極度状態が白と濃紺であり、したがって中間の「グレー状
態」は実際には淡い青色である。また既述のように、二つの極度状態間の転移が全く色の
変化ではない可能性もある。
【0005】
「双安定型(bistable)」および「双安定性(bistability)」と
いう用語は、本出願においては、表示分野の従来の意味で使用され、少なくとも一つの光
学的性質が異なる第一、第二表示状態を有する表示要素により構成されるディスプレイを
意味し、ある特定要素が、継続時間に限界のあるアドレスパルスで駆動された後、当該ア
ドレスパルス終了後に第一、あるいは第二表示状態を取り、当該状態は、当該表示要素の
状態を変更するのに必要な当該アドレスパルスの最低継続時間の少なくとも数倍、例えば
最低4倍の時間の間持続する。米国特許出願公開2002/0180687号によると、
グレースケール表示が可能な粒子型電気泳動ディスプレイは、極度な黒・白状態だけでな
く、中間グレー状態でも安定しているものがあり、同様のことが他種の電気光学ディスプ
レイにも該当する。この種のディスプレイは、正確には双安定型でなく「多安定型(mu
lti−stable)」と呼ばれるが、便宜上、本出願においては、「双安定型」とい
う用語を双安定型ディスプレイと多安定型ディスプレイの両方を指す意味で使用する。
【0006】
「ガンマ電圧(gamma voltage)」という用語は、本出願においては、表
示画素に印加される電圧を決定するためにドライバが使用する外部電圧基準を意味する。
当然ながら、双安定型電気光学媒体は、液晶の印加電圧と光学状態の性質間の一対一の相
関関係は表示せず、本出願で使用される「ガンマ電圧」という用語は、ガンマ電圧が電圧
レベルと出力電圧曲線上の変曲点を決定する、通常の液晶表示で使用される意味とは精密
には同じではない。
【0007】
「インパルス(impulse)」という用語は、本出願においては、時間に対する積
分電圧という従来の意味で使用される。しかし双安定型電気光学媒体の一部にはチャージ
トランスデューサとして作動するものがあるので、そのような媒体にはインパルスの別の
定義、つまり「経時的積分電流」(印加された総電荷量と同等)が使用されることがある
。当該媒体が電圧・時間トランスデューサとして作動するか、チャージインパルストラン
スデューサとして作動するかによって、適切なインパルスの定義が使用されるべきである

【0008】
複数の種類の電気光学ディスプレイが知られているが、その一種としては、例えば米国
特許5,808,783号、5,777,782号、5,760,761号、6,054
,071号、6,055,091号、6,097,531号、6,128,124号、6
,137,467号、6,147,791号などに記載の回転式二色要素ディスプレイ(
ただし、この種のディスプレイは「回転式二色ボール」ディスプレイと呼ばれることが多
いが、上記特許中、回転要素は必ずしも球状ではないので、より正確には「回転式二色要
素」である)がある。上述のディスプレイは、光学的性質の異なる二つかそれ以上の部分
と内部双極子を有する、数多くの小さな物体(通常、球状か円柱状)を使用する。電場を
印加することにより、当該物体は様々な位置に回転し、画面から見える当該物体の部分が
変化することで、当該ディスプレイの外観が変化する。この種の電気光学媒体は通常双安
定型である。
【0009】
他のタイプの電気光学ディスプレイとしては、エレクトロクロミック媒体、例えば、少
なくとも一部が半導体金属酸化物より形成された電極と、当該電極に付着した多数の可逆
変色性の色素分子より構成するナノクロミックフィルム形態のエレクトロクロミック媒体
を使用するものがある。例として、O’Reganら著「Nature 1991」誌3
53号737ページとWood著「Information Display」誌18(
3)号24ページ(2002年3月出版)、およびBachら著「Advanced M
aterials」誌2002年14(11)号845ページを参照。上述のタイプのナ
ノクロミックフィルムも、例えば米国特許6,301,038号、国際公開公報WO 0
1/27690号、および米国特許出願2003/0214695号に記載されている。
この種の電気光学媒体は通常双安定型である。
【0010】
何年にも渡り熱心な研究開発の対象となっている電気光学ディスプレイとしては、電場
の影響下、複数の荷電粒子が懸濁液中を移動する、粒子型電気泳動ディスプレイがある。
電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイに比べ、良好な明るさと対照、広範な視角、
状態の双安定性、低消費電力などの特徴を有する。いずれにせよ、上記ディスプレイの長
期的画質に問題があるため、幅広い使用には及んでいない。その理由は、例として、電気
泳動ディスプレイを構成する粒子が沈着傾向にあるので、当該ディスプレイの耐用年数が
不十分な結果に終わるからである。
【0011】
マサチューセッツ工科大学(MIT)とE Ink社に譲渡された、あるいは両者名義
の数多くのマイクロカプセル式電気泳動媒体に関する特許や特許出願が、昨今公開されて
いる。当該カプセル式媒体は、数多くの小さなカプセルより構成し、各カプセルはそれぞ
れ液状の懸濁剤に懸濁された電気泳動式可動粒子を含む内相と、当該内相を包むカプセル
壁により構成される。通常、当該カプセルはそれら自体が高分子バインダー内に収容され
、二つの電極に挟まれた密着層を形成する。当該カプセル式媒体は、例えば以下の文献に
記載される:米国特許5,930,026号、5,961,804号、6,017,58
4号、6,067,185号、6,118,426号、6,120,588号、6,12
0,839号、6,124,851号、6,130,773号、6,130,774号、
6,172,798号、6,177,921号、6,232,950号、6,249,7
21号、6,252,564号、6,262,706号、6,262,833号、6,3
00,932号、6,312,304号、6,312,971号、6,323,989号
、6,327,072号、6,376,828号、6,377,387号、6,392,
785号、6,392,786号、6,413,790号、6,422,687号、6,
455,374号、6,455,489号、6,459,418号、6,473,072
号、6,480,182号、6,498,114号、6,504,524号、6,506
,438号、6,512,354号、6,515,649号、6,518,949号、6
,521,489号、6,531,997号、6,535,197号、6,538,80
1号、6,545,291号、6,580,545号、6,639,578号、6,65
2,075号、6,657,772号、6,664,944号、6,680,725号、
6,683,333号、6,704,133号、米国特許出願公開2002/00190
81号、2002/0021270号、2002/0053900号、2002/006
0321号、2002/0063661号、2002/0063677号、2002/0
090980号、2002/0106847号、2002/0113770号、2002
/0130832号、2002/0131147号、2002/0145792号、20
02/0171910号、2002/0180687号、2002/0180688号、
2002/0185378号、2003/0011560号、2003/0011868
号、2003/0020844号、2003/0025855号、2003/00349
49号、2003/0038755号、2003/0053189号、2003/009
6113号、2003/0102858号、2003/0132908号、2003/0
137521号、2003/0137717号、2003/0151702号、2003
/0189749号、2003/0214695号、2003/0214697号、20
03/0222315号、2004/0008398号、2004/0012839号、
2004/0014265号、2004/0027327号、国際公開公報WO 99/
67678号、WO 00/05704号、WO 00/38000号、WO 00/3
8001号、WO 00/36560号、WO 00/67110号、WO 00/67
327号、WO 01/07961号、WO 01/08241号、WO 03/092
077号、WO 03/107,315号。
【0012】
多くの上記特許と特許出願では、マイクロカプセル式電気泳動媒体の不連続なカプセル
を包囲する壁を連続相に置き換えることで、電気泳動媒体が複数の不連続な電気泳動液の
液滴と高分子材の連続相より構成するいわゆる「高分子分散型電気泳動ディスプレイ」を
形成し、さらに上記高分子分散型電気泳動ディスプレイ内の当該不連続な電気泳動液の液
滴が、各液滴ごとに個別のカプセル膜で包囲されていなくても、カプセル、あるいはマイ
クロカプセルと見なされることが認められている。例として、上述2002/01311
47号参照。したがって、本出願における適用上、上述の高分子分散型電気泳動ディスプ
レイはマイクロカプセル式電気泳動媒体の亜種と見なされる。
【0013】
通常、マイクロカプセル式電気泳動ディスプレイは、従来の電気泳動装置のような集積
や沈着などの故障に見舞われることはなく、様々な、柔軟・剛体を問わない基材にディス
プレイの印刷・塗装が可能であるなど、新たな利点を提供している。(「印刷(prin
ting)」という語には、あらゆる形式の印刷や塗装が含まれ、これらに限られないが
、以下のものを含む:パッチダイコーティング、スロット・押し出しコーティング、スラ
イド・カスケードコーティング、カーテンコーティングなどの事前従量制コーティング、
KOR(ナイフ)コーティング、ロールコーティング、正回転・リバースロールコーティ
ングなどのロールコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、凹凸コ
ーティング、スピンコーティング、ブラシコーティング、エアナイフコーティング、シル
クスクリーン印刷法、静電印刷法、感熱印刷法、インクジェット印刷法、およびその他の
類似法。)したがって、結果として形成されるディスプレイは柔軟でも構わない。さらに
、表示媒体が(様々な方法を使用して)印刷できるので、ディスプレイそのものが安価で
生産できる。
【0014】
関連した電気泳動ディスプレイとしては、いわゆる「マイクロセル電気泳動ディスプレ
イ」がある。マイクロセル電気泳動表示法では、荷電粒子と懸濁液はカプセルに封入され
る代わりに、基材メディア(通常、高分子フィルム)内に形成される複数の空洞内に収容
される。例として、Sipix Imaging社に譲渡された、国際公開公報WO 0
2/01281号と米国特許出願公開2002/0075556号参照。
【0015】
電気泳動媒体は、(例えば、多くの電気泳動媒体において、粒子がディスプレイからの
可視光伝送を著しく遮断するので)多くの場合不透明であり、反射モードで作動する。多
くの電気泳動ディスプレイは、一方の表示状態は著しく不透明で、もう一方は透光的であ
る、いわゆる「シャッターモード」で作動できる。例として、上述の米国特許6,130
,774号と6,172,798号、および米国特許5,872,552号、6,144
,361号、6,271,823号、6,225,971号、6,184,856号を参
照。電気泳動表示に類似しているが、様々な電場強度に依存する誘電泳動ディスプレイは
、同様のモードで作動できる。米国特許4,418,346号参照。
【0016】
粒子型電気泳動ディスプレイの双安定あるいは多安定反応、並びに類似の反応を示す他
の電気光学ディスプレイは、従来の液晶(LC)ディスプレイとは、好対照を成している
。ねじれネマチック(TN)液晶は双安定や多安定でなく、電圧変換器として作動するの
で、当該ディスプレイの画素に特定の電場を印加すると、当該画素に先行表示されたグレ
ーレベルに関わらず、当該画素で特定のグレーレベルを形成する。さらにLCディスプレ
イは、電場の減少や削減により達成される明るい状態から暗い状態への逆転移による、単
一方向のみ(非透光性あるいは「暗い方」から透光性あるいは「明るい方」)への駆動よ
り構成される。最後に、LCディスプレイの画素のグレーレベルは電場の極性に左右され
ることはなく、その規模にのみ影響を受ける。実際に、技術的な理由により、市販のLC
ディスプレイは、駆動領域の極性を通常頻繁に逆転させる。
【0017】
逆に、双安定型電気光学ディスプレイは、まず得られた近似の結果では、インパルス変
換器として作動するので、画素の最終状態は印加された電場と当該電場が印加された時間
だけでなく、当該電場印加以前の画素状態にも依存する。さらに、少なくとも多くの粒子
型電気泳動ディスプレイにおいて、グレーレベルへの同等の変化によりある画素を変化さ
せるのに必要なインパルス(目、あるいは標準的光学機器の判断に基づく)は必ずしも一
定ではなく、また必ずしも可換的でもないことが今までに分っている。効果的に間隔の開
いた0(白)、1、2、あるいは3(黒)のグレーレベルを、各画素が表示できるディス
プレイを例に取ってみる。(レベル間の間隔は、目あるいは機器の測定に基づく、百分率
の反射率で直線でも、他の間隔方法でもよい。例えば、間隔は、L*上で直線でも(ここ
で、L*は通常の以下のCIE定義に基づく:
L* = 116(R/ R1/3 − 16
式中、Rは反射率、Rは標準反射率値を示す)、特定のガンマ値を出すように選択さ
れても構わない。モニターにはガンマ値2.2がよく利用され、本出願のディスプレイは
モニターの代わりとなるのが目的であるので、同等のガンマ値が好ましい。)当該画素を
レベル0からレベル1に変化(以下、便宜上「0−1転移」と呼ぶ)させるのに必要なイ
ンパルスは、1−2転移や2−3転移に要されるインパルスとは同様でないことが多いこ
とが判明している。さらに、1−0転移に必要なインパルスは、必ずしも0−1転移の逆
と同じではない。また、(例えば)0−1転移に必要なインパルスが、特定の画素の転移
の種類、0−0−1、1−0−1、あるいは3−0−1などに従って若干変動するように
、見かけ上「メモリ」効果を表示するシステムもある。(上記中、x、y、zが全光学状
態0、1、2、3である、「x−y−z」という表記法は、時間的に早い順から遅い順に
アクセスされる光学状態の順序を示す)。上記の問題は、目的の画素を次の状態に移動す
る前に、かなりの期間、全表示画素を一方の極度状態へ駆動することで低減あるいは克服
できるが、結果として生じる無地の「フラッシュ」は許容し難いことが多い。例えば、電
子ブックの読者が画面の文をスクロールダウンしたい時、もし画面が頻繁に黒か白の無地
のフラッシュを表示する必要があるとすると、気が散ったり、読んでいた場所が分らなく
なったりする可能性がある。さらに、そのような画面のフラッシュは、消費電力を増加さ
せ、当該ディスプレイの作動時間を減少させる可能性がある。最後に、少なくとも幾つか
の事例において、ある特定の転移に必要なインパルスは、ディスプレイの温度と総作動時
間、並びに、ある特定の転移以前にある特定の画素がある特定の光学状態に滞留していた
時間の影響を受け、また正確なグレースケール演出の確保には、これらの要因の補正が望
ましいことが明らかになっている。
【0018】
さらに前述の考察より容易に分かるように、双安定型電気光学媒体のドライブ要件は、
アクティブマトリクス型液晶表示(AMLCD)の駆動用にデザインされ、双安定型電気
光学媒体式ディスプレイには適さない未修正ドライバを提供する。しかし当該AMLCD
ドライブは、許容電圧範囲が大きく、ハイピンカウト(HPC)パッケージのものが市販
されており、容易に入手可能な上に安価なので、双安定型電気光学ディスプレイの駆動に
は魅力的である。一方、双安定型電気光学ディスプレイ用に特別設計された同様のドライ
バはかなり高額になり、設計と生産時間が相当掛かる。したがって、AMLCDドライバ
の構成を双安定型電気光学ディスプレイ用に変更することで、コストと開発時間が削減で
きるので、本発明はそれを可能にする方法と変形ドライバの提供を目指す。
【0019】
また既述のように、本発明はディスプレイに印加された駆動インパルスの長期に渡るD
Cバランスの維持を可能にする、電気泳動ディスプレイ(EPID)の駆動方法にも関係
する。マイクロカプセル式電気泳動ディスプレイ、およびその他の電気泳動ディスプレイ
は、画像安定性を保護し、左右対称のスイッチング特性を維持し、ディスプレイの有効な
最長作動時間を提供するため、正確にDCバランスが取れた波形(つまり、どんな特定の
表示画素でも、時間に対する積分電流が、作動時間の長期に渡ってゼロに維持される)に
より駆動される必要があることが判明している。正確なDCバランス維持のための従来方
法では、精密調整された電源、グレーレベル用の精密電圧で調節されたドライバ、および
時間調節のための水晶発振子が必要とされ、上記機器や類似機器を提供するとディスプレ
イのコストが大幅に上昇する。
【0020】
(厳密に言うと、DCバランスは電気光学媒体そのものが受けた電圧を考慮して、「内
部」で計測されるべきである。しかし実際には、そのような内部計測を、数十万もの画素
を有する作動中のディスプレイ内で実行するのは不可能であるので、現実にはDCバラン
スは「外部」測量、つまり電気光学媒体の両面に配置された電極への印加電圧を使用して
計測されている。さらに、DCバランスを検討する際に、通常二つの想定がなされる。ま
ず、通常最もな理由で、電気光学媒体の伝導性は極性関数ではなく、一定の電圧が印加さ
れている場合、DCバランスの追跡記録にはパルス長が適切であると想定され、次に、電
気光学媒体の伝導性は印加電圧に比例するので、DCバランスの追跡記録にはインパルス
が使用できると想定される。)
以下、初期画像から最終画像への、全ての不可欠なグレーレベルの変更に必要な連続表
示のスキャンフレームの配列を示すのに、「スーパーフレーム」という用語が使用される
。通常、ディスプレイ更新は一スーパーフレームの初期段階でのみ起動する。
【0021】
前述WO 03/044765号は、各画素が少なくとも三つのグレーレベル(従来の
表示分野での規則通り、極度な黒状態と白状態はグレーレベルの計算上、二つのグレーレ
ベルと見なされる)を表示可能な、複数の画素を有する双安定型電気光学ディスプレイの
駆動方法について記載する。当該方法は、
初期グレーレベルを最終グレーレベルに変換するのに必要なインパルスを表すデータを
含むルックアップテーブルの保存、
各表示画素の少なくとも初期状態を表すデータの保存、
少なくとも一表示画素の希望最終状態を表す入力信号の受信、および
ルックアップテーブルに基づき決定される、当該一画素の初期状態を希望最終状態へ変
換するのに必要なインパルスを表す出力信号の生成、から構成する。
【0022】
当該方法は、以下、便宜上「基本的ルックアップテーブル法」と呼ばれる。
【0023】
保存された先行状態の数に基づき、ルックアップテーブル法で使用されるルックアップ
テーブルの数は非常に多くなることがある。極端な例として、初期状態、最終状態、およ
び二つの先行状態を考慮するアルゴリズムを利用した256(2)階調のグレーレベル
を表示するディスプレイに使用されるルックアップテーブル法を検討する。必要な四次元
ルックアップテーブルは232入力あり、もし各入力に(例えば)64ビット(8バイト
)必要なら、当該ルックアップテーブルの合計サイズは約32ギガバイトになる。デスク
トップコンピュータへの保存なら、このサイズのデータでも全く問題はないが、携帯機器
の場合は問題になる可能性がある。別の面で、本発明は、当該ルックアップテーブル法に
類似した結果を実現するが、多数のルックアップテーブルを保存する必要のない双安定型
電気光学ディスプレイの駆動方法を提供する。
【0024】
本発明のある局面は、表示の一部が表示の残りの部分とは異なるビット深度(つまり、
グレースケールレベルの異なる数値)で作動できるような双安定型電気光学ディスプレイ
の駆動方法と駆動装置に関係する。上述WO 03/044765号の図11Aと11B
に図示される鋸歯状駆動方法の説明によると、多数のグレースケールレベルを有する双安
定型電気光学ディスプレイの全体的なイメージフローにおける連続した画像間の転移は、
同様の画像がモノクロモードで駆動されている場合に比べ、かなり時間が掛かるというこ
とは当業者にとって明らかである。通常、グレースケール転移は対応するモノクロ転移の
最高四倍の時間が掛かることがある。比較的速度の遅いグレースケール転移は、ディスプ
レイが一連の写真や電子ブックの連続したページなどの一連の画像を表示している場合な
どに好ましくない。しかし場合によっては、当該ディスプレイの限定領域のみ迅速に更新
するのが有用である。例えば、ユーザーが当該ディスプレイを使用してデータベースに保
存された一連の写真を検討し、後のデータベースからの画像検索を容易にするためにキー
ワードや他の索引用語を各写真に入力する場合など、連続した写真間の転移が比較的遅く
ても我慢できるかもしれない。例えば、もし各写真の検討と索引用語の選択に1〜2分掛
かるとすると、連続した写真間で転移に1〜2秒掛かっても、ユーザーの生産性に然程影
響はない。しかし処理能力が不十分なコンピュータでワープロソフトの起動を試みた経験
がある者なら十分承知のように、入力した索引用語を表示するダイアログボックスの更新
が1〜2秒遅れると、非常に苛立たしく、多くのタイプミスに繋がる可能性がある。した
がって、上記および類似状況において、敏速な転移のために、ダイアログボックスはモノ
クロモードで駆動し、残りのディスプレイは画像が正確に再現されるようにグレースケー
ルモードで表示し続けるのは効果的な方法であり、本発明はそれを可能にする方法と装置
を提供する。
【0025】
本発明の他局面は、電圧の微調整の必要なしに、インパルス駆動式画像媒体のグレーレ
ベルの微調節を実現する方法に関係する。既に指摘されているが、電気泳動ディスプレイ
と他の電気光学ディスプレイの一部は双安定性を示し、当該双安定性は無限ではないので
、当該ディスプレイの画像は時間と共に徐々に色褪せるので、ある画像を長期間に渡って
維持する場合には、画像の初期光学状態を復元するため、定期的に画像をリフレッシュす
る必要がある。
【0026】
しかし、そのような画像のリフレッシュは、それ自体が問題を起こす可能性がある。上
述の米国特許6,531,997号と6,504,524号に記載されているように、も
しディスプレイの駆動方法が電気光学媒体全体に渡って正味時間平均的に印加された電場
が、結果的にゼロかゼロ近似値にならなければ、問題が起こり、当該ディスプレイの作動
時間が減少することになる。電気光学媒体全体に渡って正味時間平均的に印加された電場
が、結果的にゼロになる駆動方法は、便利にも「直流バランス駆動方法」あるいは「DC
バランス駆動方法」と呼ばれる。リフレッシングパルスを印加することで画像を長期間維
持する場合、当該パルスは、該当する表示画素を維持する対象の光学状態に当初移動する
のに使用されたアドレスパルスと同様の極性である必要があり、結果としてDCバランス
不平衡な駆動方式に陥る。
【0027】
インパルス駆動式媒体において正確なグレースケールレベルを実現する際の難問は、適
切な電圧インパルスを印加して希望グレートーンを実現することにある。光学状態間にお
ける満足の行く転移は、駆動波形全体、あるいは一部で電圧を微調節することで実現でき
る。精度の必要性は以下の例より理解できる。現画像が半分黒で半分白の画面から成り、
希望する次の画像は黒と白の中間の均一したグレーである場合を例に取る。均一なグレー
レベルを実現するには、黒から実現するグレーレベルと白から実現するグレーレベルが一
致するように、黒からグレーおよび白からグレーへの転移に使用されるインパルスは微調
節される必要がある。実現された最終グレーレベルがディスプレイに記録された先行グレ
ーレベルの相関的要素である場合は、更なる同調が必要である。例えば、既述のように、
黒からグレーへの転移により実現された光学状態は、印加された波形だけでなく、現状の
黒状態以前にアクセスされた状態の相関的要素でもある。この場合、ディスプレイモジュ
ールで、先行画像状態などのディスプレイの一部のヒストリーを追跡し、波形の微同調に
より当該先行状態のヒストリーを補正するのが好ましい(この点に関するより詳細な考察
は以下参照)。
【0028】
インパルスの微同調は、印加パルス幅を高精度で調節することで、わずか3レベル(0
、+V、−V)の電圧で実現できる。しかし当該微同調は、高パルス幅の解像度を実現す
るためにフレーム率を上昇させる必要があるので、アクティブマトリクスディスプレイに
は適さない。高度なフレーム率はディスプレイの消費電力を増加させ、制御装置や駆動装
置などの電子機器により過酷な条件を課す。したがって、60−75Hzを著しく超過す
るフレーム率でアクティブマトリクスディスプレイを作動させるのは好ましくない。
【0029】
インパルスの微同調は、細かく間隔の開いた多くの電圧が使用可能な場合にも実現でき
る。アクティブマトリクスドライブで上記を実現するには、使用可能な電圧の少なくとも
一部に渡り、使用可能な数多くの電圧の内一つを出力できるソースドライバが必要となる
。例えば、−10から+10ボルトの電圧を出力するドライバでは、0Vと、−10から
ー7ボルト、および7から10ボルトの二帯域の電圧を備え、−10からー7ボルト間と
7から10ボルト間にそれぞれ16レベルの別々な電圧レベルを設けることで、必要な電
圧レベルの総数を33レベル(表1参照)にするのが効果的である場合がある。それから
、例えば、アドレス期間の最後の一つかそれ以上のスキャンフレームの電圧を+7から+
10ボルト間あるいは−10からー7ボルト間で変化させることで、最終光学状態の微調
節が実現できる。当該方法は、許容できるディスプレイ性能を実現するための、電圧調節
テクニックの一例である。
【0030】
(表1:電圧調節ドライブに必要な電圧例)
【0031】
【表1】


電圧調節テクニックの使用上の不利点は、ドライバである程度の電圧微調節ができる必
要があるという点である。ディスプレイモジュールのコストは2〜3レベルの電圧しかな
いドライバを使用することで削減できる。
【0032】
他の局面で、本発明は、特にインパルスの調節が、許容できるディスプレイ性能に必要
な微同調を実現するには粗過ぎる場合に、使用可能な電圧が少数しかないドライバを使用
してグレーレベルの微調節を実現する方法の提供を目指す。つまり本発明の当該局面では
、電圧の微調節の必要なしに、インパルス駆動式画像媒体のグレーレベルの微調節を実現
する方法の提供を目指すのである。本発明の当該局面は、例えば、2〜3レベルの電圧し
か出力できないソースドライバを備えたアクティブマトリクスディスプレイに適用できる

【0033】
他の局面で、本発明は、少なくともある程度の直流(DC)バランス転移を含む駆動方
式を使用した電気光学ディスプレイの駆動方法に関係する。上述の同時係属出願に詳述さ
れた理由により、電気光学ディスプレイを駆動する際には、DCバランスが取れている、
すなわち最終光学状態が初期光学状態に一致する際は、光学状態の配列を問わず、印加電
圧の積分が必ずゼロになる特質を有する駆動方式の使用が好ましい。そうすることで、電
気光学層が経験する正味DCバランス不平衡度は既知の値に必ず束縛されることになる。
例えば、15Vで300msのパルスを使用して、電気光学層が白状態から黒状態へ移行
されたとする。当該転移の後、画像層は4.5VのDCバランス不平衡インパルスを経験
したことになる。さらにフィルムを白へ戻すのに−15Vで300msのパルスが印加さ
れたとすると、一連の白から黒、および黒から白の転移全体に渡って、当該画像層はDC
バランスが取れていることになる。
【0034】
少なくともある程度の転移がそれ自体DCバランスが取れている駆動方式の使用が望ま
しいことも判明している。このような転移は、以下「DCバランス転移」と呼ぶ。DCバ
ランス転移には正味電圧インパルスが存在しない。DCバランス転移のみ使用する駆動方
式の波形は、各転移後に当該電気光学層をDCバランス状態のまま残す。例えば、−15
Vで300msのパルスの次に15Vで300msのパルスを印加して、当該電気光学層
が白から黒へ転移させられるとする。当該転移中、当該電気光学層の正味電圧インパルス
はゼロになる。それから、15Vで300msのパルスに続いて−15Vで300msの
パルスを印加して当該電気光学層を黒から白へ転移したとすると、当該転移中の正味電圧
インパルスもゼロになる。
【0035】
DCバランス転移要素のみで構成された駆動方式は、必然的にDCバランス波形を取る
が、DCバランス転移とDCバランス不平衡転移を含むDCバランス駆動方式を形成する
のも可能である。詳述は以下に続く。
【0036】
ある局面で、本発明はそれぞれが少なくとも三つのグレーレベルを表示可能な複数の画
素を持ち、
初期グレーレベルを最終グレーレベルに変換するのに必要なインパルスを表すデータを
含むルックアップテーブルの保存、
各表示画素の少なくとも初期状態を表すデータの保存、
いずれの画素の補正電圧も、各画素に以前印加された少なくとも一つのインパルスに基
づき計算される、各表示画素の補正電圧を表す補正電圧データの保存、
少なくとも一表示画素の希望最終状態を表す入力信号の受信、および
当該画素電圧が、当該画素と当該ルックアップテーブルの当該初期・最終状態より決定
される駆動電圧と当該画素の当該補正電圧データより決定される補正電圧の合計であり、
当該一画素に印加される画素電圧を表す出力信号の生成から構成する双安定型電気光学デ
ィスプレイの駆動方法を提供する。
【0037】
本方法は、以下、便宜上、本発明の「補正電圧」法と呼ばれる。
【0038】
当該補正電圧法において、各画素の当該補正電圧は、当該画素の時間的先行状態あるい
は当該画素の先行グレーレベル状態の少なくとも一つに基づき計算される。また各画素の
当該補正電圧は、当該画素に駆動電圧が印加される期間と当該画素に駆動電圧が印加され
ない停止期間の両期間中に当該画素に印加できる。
【0039】
以下に詳述される理由により、本発明の補正電圧法において使用される補正電圧を定期
的に更新する必要がある。各画素の当該補正電圧は、各スーパーフレーム(ディスプレイ
の完全アドレスに必要な期間)中に更新してもよい。各画素の当該補正電圧は、(1)該
当するスーパーフレーム中に印加されたパルスとは独立した固定アルゴリズムを使用して
当該補正電圧の先行値に変更を加えるか、(2)該当するスーパーフレーム中に印加され
たパルスにより決定される数値分だけステップ(1)の値を増加させることにより更新で
きる。当該更新方法の好適な変形法では、各画素の当該補正電圧は、(1)固定定数によ
り当該補正電圧の先行値を等分するか、(2)該当するスーパーフレーム中に電気光学媒
体に印加された電圧・時間曲線下の総面積に十分に比例する数値分だけステップ(1)の
値を増加させることにより更新される。
【0040】
本発明の補正電圧法において、当該補正電圧は、少なくとも一駆動パルスの終末で印加
された指数関数的に減少する電圧という形式で、印加されることもできる。
【0041】
本発明はこのような補正電圧法において使用されるデバイスコントローラも提供する。
当該コントローラは、
初期グレーレベルを最終グレーレベルに変換するのに必要なインパルスを表すデータを
含むルックアップテーブルの保存、各表示画素の少なくとも初期状態を表すデータの保存
、並びに各表示画素の補正電圧データの保存するよう設定された保存手段、
少なくとも一表示画素の希望最終状態を表す入力信号を受信するための入力手段、
当該画素の初期状態とルックアップテーブルを表す保存データと、当該一画素の初期状
態を希望最終状態に変更するのに必要な駆動電圧を入力信号より決定し、さらに当該画素
の補正電圧データより、当該画素の補正電圧を決定し、駆動電圧と補正電圧の合計より画
素電圧を決定する計算手段、および
当該画素電圧を表す出力信号を生成するための出力手段から構成する。
【0042】
当該コントローラにおいて、当該計算手段は、当該画素の時間的先行状態あるいは当該
画素の先行グレーレベル状態の少なくとも一つに基づいて当該補正電圧を決定するように
設定されてもよい。また当該出力手段は、当該画素に駆動電圧が印加される期間と当該画
素に駆動電圧が印加されない停止期間の両期間中に、当該画素に当該補正電圧を印加する
ように設定されてもよい。
【0043】
さらに当該コントローラにおいて、当該計算手段は、当該ディスプレイの完全アドレス
に必要な各スーパーフレーム中に、各画素の当該補正電圧を更新するように設定されても
よい。当該更新において、当該計算手段は、各画素の当該補正電圧を(1)該当するスー
パーフレーム中に印加されたパルスとは独立した固定アルゴリズムを使用して当該補正電
圧の先行値に変更を加えるか、(2)該当するスーパーフレーム中に印加されたパルスに
より決定される数値分だけステップ(1)の値を増加させることにより更新するように設
定されてもよい。当該手段の好適な変形法では、当該計算手段は各画素の当該補正電圧を
(1)固定定数により当該補正電圧の先行値を等分するか、(2)該当するスーパーフレ
ーム中に電気光学媒体に印加された電圧・時間曲線下の総面積に十分に比例する数値分だ
けステップ(1)の値を増加することにより更新するように設定される。
【0044】
当該コントローラの当該出力手段は、少なくとも一駆動パルスの終末で印加された指数
関数的に減少する電圧という形式で、当該補正電圧を印加するように設定されてもよい。
【0045】
他の局面で、本発明は、各画素が特定の行と特定の縦列の交点で独自に定義される、複
数の行と縦列に配列された複数の画素と、少なくとも三つの異なる表示状態を有する各画
素の表示状態を変更するため、各画素とは独立して電場を印加する駆動手段を備えた双安
定型電気光学ディスプレイの更新方法を提供する。当該方法は、
当該ディスプレイの全域よりは小さいが、一部を構成する特定領域を表す領域データの
保存、
各画素につき、当該画素が特定領域内か領域外かの決定、
特定領域内の画素への第一駆動方式の適用、および特定領域外の画素への第一駆動方式
とは異なる第二駆動方式の適用、から構成する。
【0046】
当該方法は、以下、便宜上、本発明の「特定領域」法と呼ばれる。
【0047】
当該特定領域法において、第一、第二駆動方式はビット深度が異なることがある。具体
的には、第一、第二駆動方式の一方式はモノクロで、もう一方の方式は少なくとも四つの
異なるグレーレベルを有するグレースケールである可能性がある。当該特定領域は、ディ
スプレイ上にテキストを入力するために使用されるテキストボックスを構成することもあ
る。
【0048】
他の局面で、本発明は、それぞれが少なくとも三つのグレーレベルを表示可能な、複数
の画素を持ち、
初期グレーレベルを最終グレーレベルに変換するのに必要なインパルスを表すデータを
含むルックアップテーブルの保存、
各表示画素の少なくとも初期状態を表すデータの保存、
少なくとも一表示画素の希望最終状態を表す入力信号の受信、および
ルックアップテーブルに基づき決定される、当該一画素の初期状態を希望最終状態へ変
換するのに必要なインパルスを表す出力信号の生成から構成し、
初期状態から最終状態への少なくとも一度の転移で、当該出力信号がDCバランス不平
衡の微同調シーケンスを構成し、当該微同調シーケンスは、
(a)非ゼロの正味インパルスを有し、
(b)非連続的で、
(c)DC基準パルスが電圧Vのパルスで、Vは微同調シーケンス中の最大印加電
圧であるが、当該微同調シーケンスの正味インパルスGと同様の符号で示され、当該基準
パルスの継続時間がG/Vであるところの当該DC基準パルスの光学状態からの変化と
はかなり異なる(通常50%以上異なる)画素のグレーレベル変化に終わり、
(d)時間基準パルスの定義が、当該微同調シーケンスと同じ継続時間の単極電圧パル
スで、当該基準パルスの符号はグレーレベルにより大きな変化を与えるものであるところ
の当該時間基準パルスによるグレーレベル変化と比べ規模が小さい(通常、半分以下)画
素のグレーレベル変化に終わる双安定型電気光学ディスプレイの駆動方法を提供する。
【0049】
本方法(および以下に定義される類似方法)は、以下、便宜上、本発明の「非連続アド
レス」法と呼ばれる。二つの方法を区別する必要がある場合は、それぞれ「DCバランス
不平衡非連続アドレス」法、および「DCバランス非連続アドレス」法と呼ばれる。
【0050】
当該非連続アドレス法の好適な形態では、当該微同調シーケンスは、時間基準パルスに
よるグレーレベル変化の半分以下の、画素のグレーレベル変化に終わる。
【0051】
また当該発明は、それぞれが少なくとも三つのグレーレベルを表示可能な、複数の画素
を持ち、
初期グレーレベルを最終グレーレベルに変換するのに必要なインパルスを表すデータを
含むルックアップテーブルの保存、
各表示画素の少なくとも初期状態を表すデータの保存、
少なくとも一表示画素の希望最終状態を表す入力信号の受信、および
ルックアップテーブルに基づき決定される、当該一画素の初期状態を希望最終状態へ変
換するのに必要なインパルスを表す出力信号の生成から構成し、
初期状態から最終状態への少なくとも一度の転移で、当該出力信号がDCバランスの取
れた微同調シーケンスを構成し、当該微同調シーケンスは、
(a)実質ゼロの正味インパルスを有し、
(b)当該微同調シーケンスのどの時点においても、画素のグレーレベルが、当該微同
調シーケンス当初のグレーレベルから、当該画素の二つの極度光学状態間のグレーレベル
の差の約3分の1以上変化することはない双安定型電気光学ディスプレイの駆動方法も提
供する。
【0052】
本発明の非連続アドレス法の両形態において、当該出力信号は、通常、当該微同調シー
ケンスに加えて、少なくとも一つの単極駆動パルスから構成する。当該非連続出力信号は
非周期信号である可能性もある。当該ルックアップテーブルにおける転移の大部分におい
て、当該出力信号の正味インパルスは非ゼロで、信号は非連続的である。非連続出力信号
を使用した少なくとも一回の転移において、当該出力信号は電圧レベルが+V、0、−V
であるパルスのみから構成、あるいは望ましくは、電圧レベルが0と、+Vと−Vの内一
つを有するパルスのみから構成する。当該方法の好適な形態では、非連続出力信号を使用
した少なくとも一回の転移において、また望ましくは、当該画素の当該初期状態と当該最
終状態が異なる当該ルックアップテーブルにおける転移の大部分において、当該出力信号
は、+Vか−Vの内どちらか一つの同じ電圧レベルを有する少なくとも二つのパルスに先
行、および後行される0の電圧レベルを有するパルスより構成する。望ましくは、当該転
移テーブルはDCバランスが取れている。また非連続出力信号を使用した少なくとも一回
の転移において、当該出力信号は、単一区間の整数の倍数である一連のパルスから構成す
ることもある。
【0053】
本発明の非連続アドレス法は、さらに、当該一画素の少なくとも一つの時間的先行状態
あるいは/または当該一画素の少なくとも一つの先行グレーレベル状態を表すデータの保
存と、当該一画素の少なくとも一つの時間的先行状態あるいは/または少なくとも一つの
先行グレーレベル状態に基づく当該出力信号の生成から構成する。
【0054】
また当該発明は、それぞれが少なくとも三つのグレーレベルを表示可能な、複数の画素
を持ち、各表示画素に画素を初期状態から最終状態に変更できる出力信号を印加すること
から構成し、当該画素の当該初期状態と当該最終状態が異なる少なくとも一回の転移にお
いて、当該出力信号は、+Vか−Vの内どちらか一つの同じ電圧レベルを有する少なくと
も二つのパルスに先行、および後行される0の電圧レベルを有するパルスより構成する双
安定型電気光学ディスプレイの駆動方法も提供する。
【0055】
他の局面において、当該発明は、それぞれが少なくとも三つのグレーレベルを表示可能
な、複数の画素を持ち、各表示画素に画素を初期状態から最終状態に変更できる出力信号
を印加することから構成し、少なくとも一回の転移において、当該出力信号は非ゼロであ
るがDCバランスの取れた双安定型電気光学ディスプレイの駆動方法も提供する。
【0056】
当該方法は、以下、便宜上、本発明の「DCバランス型アドレス」法と呼ばれる。
【0057】
当該DCバランス型アドレス法において、少なくとも一回の転移で、当該出力信号は、
同長であるが符号が逆であるパルスにより先行される電圧パルスより構成する一組目のパ
ルスを構成する。当該出力信号は、さらに二つのパルス間に電圧ゼロのある期間を構成、
あるいは少なくとも一パルス電圧ゼロのある期間で中断する。さらに当該出力信号は、同
長であるが符号が逆である二組目のパルスを構成することもある。当該二組目のパルスは
一組目のパルスとはパルス長が異なる場合がある。当該二組目のパルスの一つ目のパルス
は、当該一組目のパルスの一つ目のパルスとは極性が異なることもある。当該一組目のパ
ルスは、当該二組目のパルスの一つ目のパルスと二つ目のパルスの間に出現することもあ
る。
【0058】
さらに、当該DCバランス型アドレス法において、上述の転移においては、当該出力信
号は、一方の光レールへ画素を著しく移動できる、少なくとも一つのパルス要素から構成
する。
【0059】
以下にさらに詳述されるように、本発明のDCバランス型アドレス法はDCバランス転
移とDCバランス不平衡転移の組み合わせを利用することもある。例えば、画素の初期状
態と最終状態が同様である各転移において、当該出力信号は非ゼロであるがDCバランス
が取れており、当該画素の当該初期状態と当該最終状態が同様ではない各転移において、
当該出力信号はDCバランス不平衡である。当該アドレス法において、当該画素の当該初
期状態と当該最終状態が同様ではない各転移においては、ある場合においては、当該出力
信号の形式は−x/ΔIP/xであり、当該形式中、ΔIPは当該画素の当該初期状態と
当該最終状態間のインパルスポテンシャルの差を示し、−xとxは同長であるが符号が逆
である一組のパルスを示す。
【0060】
本発明のDCバランス型アドレス法は、さらに、
初期グレーレベルを最終グレーレベルに変換するのに必要なインパルスを表すデータを
含むルックアップテーブルの保存、
各表示画素の少なくとも初期状態を表すデータの保存、
少なくとも一表示画素の希望最終状態を表す入力信号の受信、および
ルックアップテーブルに基づき決定される、当該一画素の初期状態を希望最終状態へ変
換するのに必要なインパルスを表す出力信号の生成、から構成する。
【0061】
また本発明は、少なくとも一画素を持ち、
【0062】
【数1】


(式中、Tは波形の長さを示し、積分は波形の継続期間にわたり、V(t)は時間tの
関数としての波形電圧で、M(t)は、ゼロ時に短パルスより派生する滞留時間依存性を
誘起するために、残留電圧の効果減少を特徴付けるメモリ関数である)が約1ボルト秒よ
り少なくなるような、画素への波形V(t)の印加より構成する双安定型電気光学ディス
プレイの駆動方法も提供する。当該方法は、以下便宜上、本発明の「DTD積分減少」法
と呼ぶ。望ましくは、Jは約0.5ボルト秒以下で、最も望ましくは約0.1ボルト秒以
下が良い。実際に、Jは出来るだけ小さな値、理想的にはゼロに設定するべきである。
【0063】
当該方法の好適な形態において、Jは以下の式により計算される:
【0064】
【数2】


式中、τは減衰(緩和)時間を示し、望ましくは約0.7から約1.3秒の間の値であ
る。
(項目1)
それぞれが少なくとも三つのグレーレベルを表示可能な複数の画素を持ち、
初期グレーレベルを最終グレーレベルに変換するのに必要なインパルスを表すデータを
含むルックアップテーブルの保存、
各表示画素の少なくとも初期状態を表すデータの保存、
少なくとも一表示画素の希望最終状態を表す入力信号の受信、および
当該一画素に印加される画素電圧を表す出力信号の生成から構成し、
いずれの画素の補正電圧も、各画素に以前印加された少なくとも一つのインパルスに基
づき計算される、各表示画素の当該補正電圧を表す補正電圧データの保存と、
当該画素電圧が、当該画素と当該ルックアップテーブルの当該初期・最終状態より決定
される駆動電圧と当該画素の当該補正電圧データより決定される補正電圧の合計である
ことにより特徴付けられる、
双安定型電気光学ディスプレイ駆動方法。
(項目2)
各画素の当該補正電圧が、当該画素の時間的先行状態あるいは当該画素の先行グレーレベ
ル状態の少なくとも一方の状態に基づき計算される項目1に記載の双安定型電気光学ディ
スプレイ駆動方法。
(項目3)
各画素の当該補正電圧が、当該画素に駆動電圧が印加される期間と当該画素に駆動電圧が
印加されない停止期間の両期間中に当該画素に印加される項目1に記載の双安定型電気光
学ディスプレイ駆動方法。
(項目4)
各画素の当該補正電圧が、当該ディスプレイの完全アドレスに必要な各スーパーフレーム
中に更新される項目1に記載の双安定型電気光学ディスプレイ駆動方法。
(項目5)
各画素の当該補正電圧が、(1)該当するスーパーフレーム中に印加されたパルスとは独
立した固定アルゴリズムを使用して当該補正電圧の先行値に変更を加えるか、(2)該当
するスーパーフレーム中に印加されたパルスにより決定される数値分だけステップ(1)
の値を増加させることにより更新される項目4に記載の双安定型電気光学ディスプレイ駆
動方法。
(項目6)
各画素の当該補正電圧が、(1)固定定数により当該補正電圧の先行値を等分するか、(
2)該当するスーパーフレーム中に電気光学媒体に印加された電圧・時間曲線下の総面積
に十分に比例する数値分だけステップ(1)の値を増加させることにより更新される項目
5に記載の双安定型電気光学ディスプレイ駆動方法。
(項目7)
当該補正電圧が、少なくとも一駆動パルスの終末で印加された指数関数的に減衰する電圧
という形式で印加される項目1に記載の双安定型電気光学ディスプレイ駆動方法。
(項目8)
初期グレーレベルを最終グレーレベルに変換するのに必要なインパルスを表すデータを含
むルックアップテーブルの保存、各表示画素の少なくとも初期状態を表すデータの保存、
並びに各表示画素の補正電圧データの保存するよう設定された保存手段、
少なくとも一表示画素の希望最終状態を表す入力信号を受信するための入力手段、
当該画素の初期状態とルックアップテーブルを表す保存データと、当該一画素の初期状
態を希望最終状態に変更するのに必要な駆動電圧を入力信号より決定し、さらに当該画素
の補正電圧データより、当該画素の補正電圧を決定し、駆動電圧と補正電圧の合計より画
素電圧を決定する計算手段、および
当該画素電圧を表す出力信号を生成するための出力手段、
より構成するデバイスコントローラ。
(項目9)
当該計算手段が、当該画素の時間的先行状態あるいは当該画素の先行グレーレベル状態の
少なくとも一つに基づいて当該補正電圧を決定するように設定された項目8に記載のデバ
イスコントローラ。
(項目10)
当該出力手段が、当該画素に当該駆動電圧が印加される期間と当該画素に当該駆動電圧が
印加されない停止期間の両期間中に、当該画素に当該補正電圧を印加するように設定され
た項目8に記載のデバイスコントローラ。
(項目11)
当該計算手段が、当該ディスプレイの完全アドレスに必要な各スーパーフレーム中に、各
画素の当該補正電圧を更新するように設定された項目8に記載のデバイスコントローラ。
(項目12)
当該計算手段が、各画素の当該補正電圧を(1)該当するスーパーフレーム中に印加され
たパルスとは独立した固定アルゴリズムを使用して当該補正電圧の先行値に変更を加える
か、(2)該当するスーパーフレーム中に印加されたパルスにより決定される数値分だけ
ステップ(1)の値を増加させることにより更新するように設定された項目11に記載の
デバイスコントローラ。
(項目13)
当該計算手段が、各画素の当該補正電圧を(1)固定定数により当該補正電圧の先行値を
等分するか、(2)該当するスーパーフレーム中に電気光学媒体に印加された電圧・時間
曲線下の総面積に十分に比例する数値分だけステップ(1)の値を増加することにより更
新するように設定された項目12に記載のデバイスコントローラ。
(項目14)
当該出力手段が、少なくとも一駆動パルスの終末で印加された指数関数的に減少する電圧
という形式で、当該補正電圧を印加するように設定された項目8に記載のデバイスコント
ローラ。
(項目15)
各画素が特定の行と特定の縦列の交点で独自に定義される、複数の行と縦列に配列された
複数の画素と、少なくとも三つの異なる表示状態を有する各画素の表示状態を変更するた
め、各画素とは独立して電場を印加する駆動手段を備え、
当該ディスプレイの全域よりは小さいが、一部を構成する特定領域を表す領域データの
保存、
各画素につき、当該画素が特定領域内か領域外かの決定、
当該特定領域内の画素への第一駆動方式の適用、および当該特定領域外の画素への第一
駆動方式とは異なる第二駆動方式の適用、
から構成する双安定型電気光学ディスプレイ更新方法。
(項目16)
当該第一、第二駆動方式のビット深度が異なる項目15に記載の双安定型電気光学ディス
プレイ更新方法。
(項目17)
当該第一、第二駆動方式の一方式はモノクロで、他方式は少なくとも四つの異なるグレー
レベルを有するグレースケールである項目16に記載の双安定型電気光学ディスプレイ更
新方法。
(項目18)
当該特定領域が当該ディスプレイ上にテキストを入力するために使用されるテキストボッ
クスより構成される項目15に記載の双安定型電気光学ディスプレイ更新方法。
(項目19)
それぞれが少なくとも三つのグレーレベルを表示可能な複数の画素を持ち、
初期グレーレベルを最終グレーレベルに変換するのに必要なインパルスを表すデータを
含むルックアップテーブルの保存、
各表示画素の少なくとも初期状態を表すデータの保存、
少なくとも一表示画素の希望最終状態を表す入力信号の受信、および
ルックアップテーブルに基づき決定される、当該一画素の初期状態を希望最終状態へ変
換するのに必要なインパルスを表す出力信号の生成から構成し、
初期状態から最終状態への少なくとも一度の転移で、当該出力信号がDCバランス不平
衡の微同調シーケンスを構成し、当該微同調シーケンスは、
(a)非ゼロの正味インパルスを有し、
(b)非連続的で、
(c)DC基準パルスが電圧Vのパルスで、Vは当該微同調シーケンス中の最大印
加電圧であるが、当該微同調シーケンスの正味インパルスGと同様の符号で示され、当該
基準パルスの継続時間がG/VであるところのDC基準パルスの光学状態からの変化と
は著しく異なる当該画素のグレーレベル変化に終わり、
(d)時間基準パルスの定義が、当該微同調シーケンスと同じ継続時間の単極電圧パル
スで、当該基準パルスの符号はグレーレベルにより大きな変化を与えるものであるところ
の当該時間基準パルスによるグレーレベル変化と比べ規模が小さい当該画素のグレーレベ
ル変化に終わる双安定型電気光学ディスプレイの駆動方法。
(項目20)
当該微同調シーケンスが、時間基準パルスによるグレーレベル変化の半分以下の画素のグ
レーレベル変化に終わる項目19に記載の双安定型電気光学ディスプレイの駆動方法。
(項目21)
当該少なくとも一回の転移において、当該出力信号が、当該微同調シーケンスに加えて、
少なくとも一つの単極駆動パルスから構成する項目19に記載の双安定型電気光学ディス
プレイの駆動方法。
(項目22)
当該少なくとも一回の転移において、当該出力信号が非周期信号である項目19に記載の
双安定型電気光学ディスプレイの駆動方法。
(項目23)
当該ルックアップテーブルにおける転移の大部分において、当該出力信号の正味インパル
スは非ゼロで、当該信号は非連続的である項目19に記載の双安定型電気光学ディスプレ
イの駆動方法。
(項目24)
当該少なくとも一回の転移において、当該出力信号が電圧レベルが+V、0、−Vである
パルスからのみ構成する項目19に記載の双安定型電気光学ディスプレイの駆動方法。
(項目25)
当該少なくとも一回の転移において、当該出力信号が電圧レベルが0と、+VとーVの内
一つを有するパルスからのみ構成する項目23に記載の双安定型電気光学ディスプレイの
駆動方法。
(項目26)
当該少なくとも一回の転移において、当該出力信号が、+Vか−Vの内どちらか一つの同
じ電圧レベルを有する少なくとも二つのパルスに先行、および後行される0の電圧レベル
を有するパルスより構成する項目25に記載の双安定型電気光学ディスプレイの駆動方法

(項目27)
当該画素の当該初期状態と当該最終状態が異なる当該ルックアップテーブルにおける転移
の大部分において、当該出力信号が、+Vか−Vの内どちらか一つの同じ電圧レベルを有
する少なくとも二つのパルスに先行、および後行される0の電圧レベルを有するパルスよ
り構成する項目26に記載の双安定型電気光学ディスプレイの駆動方法。
(項目28)
当該転移テーブルのDCバランスが取れている項目19に記載の双安定型電気光学ディス
プレイの駆動方法。
(項目29)
当該少なくとも一回の転移において、当該出力信号が、単一区間の整数の倍数である一連
のパルスから構成する項目19に記載の双安定型電気光学ディスプレイの駆動方法。
(項目30)
さらに、当該一画素の少なくとも一つの時間的先行状態あるいは/または当該一画素の少
なくとも一つの先行グレーレベル状態を表すデータの保存と、当該一画素の少なくとも一
つの時間的先行状態あるいは/または少なくとも一つの先行グレーレベル状態に基づく当
該出力信号の生成から構成する19に記載の双安定型電気光学ディスプレイの駆動方法。
(項目31)
それぞれが少なくとも三つのグレーレベルを表示可能な複数の画素を持ち、各表示画素に
画素を初期状態から最終状態に変更できる出力信号から印加することから構成し、画素の
初期状態と最終状態が異なる少なくとも一回の転移において、当該出力信号は、+Vか−
Vの内どちらか一つの同じ電圧レベルを有する少なくとも二つのパルスに先行、および後
行される0の電圧レベルを有するパルスより構成する双安定型電気光学ディスプレイ駆動
方法。
(項目32)
それぞれが少なくとも三つのグレーレベルを表示可能な複数の画素を持ち、
初期グレーレベルを最終グレーレベルに変換するのに必要なインパルスを表すデータを
含むルックアップテーブルの保存、
各表示画素の少なくとも初期状態を表すデータの保存、
少なくとも一表示画素の希望最終状態を表す入力信号の受信、および
ルックアップテーブルに基づき決定される、当該一画素の初期状態を希望最終状態へ変
換するのに必要なインパルスを表す出力信号の生成から構成し、
初期状態から最終状態への少なくとも一度の転移で、当該出力信号がDCバランスの取
れた微同調シーケンスを構成し、当該微同調シーケンスは、
(a)実質ゼロの正味インパルスを有し、
(b)当該微同調シーケンスのどの時点においても、当該画素の当該グレーレベルが、
当該微同調シーケンス当初のグレーレベルから、当該画素の二つの極度光学状態間のグレ
ーレベルの差の約3分の1以上変化することはない双安定型電気光学ディスプレイの駆動
方法。
(項目33)
当該少なくとも一回の転移において、当該出力信号が、当該微同調シーケンスに加えて、
少なくとも一つの単極駆動パルスから構成する項目32に記載の双安定型電気光学ディス
プレイの駆動方法。
(項目34)
それぞれが少なくとも三つのグレーレベルを表示可能な複数の画素を持ち、各表示画素に
画素を初期状態から最終状態に変更できる出力信号を印加することから構成し、少なくと
も一回の転移において、当該出力信号は非ゼロであるがDCバランスが取れている双安定
型電気光学ディスプレイ駆動方法。
(項目35)
当該少なくとも一回の転移で、当該出力信号が、同長であるが符号が逆であるパルスによ
り先行される電圧パルスより構成する一組目のパルスを構成する項目34に記載のDCバ
ランスの取れた双安定型電気光学ディスプレイの駆動方法。
(項目36)
当該出力信号が、さらに二つのパルス間に電圧ゼロのある期間を構成する項目35に記載
のDCバランスの取れた双安定型電気光学ディスプレイの駆動方法。
(項目37)
少なくとも一パルスを電圧ゼロのある期間で中断する項目35に記載のDCバランスの取
れた双安定型電気光学ディスプレイの駆動方法。
(項目38)
当該少なくとも一回の転移で、当該出力信号が、さらに同長であるが符号が逆である二組
目のパルスを構成する項目35に記載のDCバランスの取れた双安定型電気光学ディスプ
レイの駆動方法。
(項目39)
当該二組目のパルスの長さが一組目のパルスと異なる項目38に記載のDCバランスの取
れた双安定型電気光学ディスプレイの駆動方法。
(項目40)
当該二組目のパルスの一つ目のパルスは、当該一組目のパルスの一つ目のパルスと極性が
異なる項目38に記載のDCバランスの取れた双安定型電気光学ディスプレイの駆動方法

(項目41)
当該一組目のパルスが、当該二組目のパルスの一つ目のパルスと二つ目のパルスの間に出
現する項目38に記載のDCバランスの取れた双安定型電気光学ディスプレイの駆動方法

(項目42)
当該少なくとも一回の転移で、当該出力信号が、一方の光レールへ画素をかなり移動でき
る少なくとも一つのパルス要素から構成する項目34に記載のDCバランスの取れた双安
定型電気光学ディスプレイの駆動方法。
(項目43)
当該画素の当該初期状態と当該最終状態が同様である各転移において、当該出力信号は非
ゼロであるがDCバランスが取れており、当該画素の当該初期状態と当該最終状態が同様
ではない各転移において、当該出力信号はDCバランス不平衡である項目34に記載のD
Cバランスの取れた双安定型電気光学ディスプレイの駆動方法。
(項目44)
当該画素の当該初期状態と当該最終状態が同様ではない各転移において、当該出力信号の
形式が−x/ΔIP/xであり、当該形式中、ΔIPは当該画素の当該初期状態と当該最
終状態間のインパルスポテンシャルの差を示し、−xとxは同長であるが符号が逆である
一組のパルスを示す項目43に記載のDCバランスの取れた双安定型電気光学ディスプレ
イの駆動方法。
(項目45)
当該初期グレーレベルを最終グレーレベルに変換するのに必要なインパルスを表すデータ
を含むルックアップテーブルの保存、
各表示画素の少なくとも初期状態を表すデータの保存、
少なくとも一表示画素の希望最終状態を表す入力信号の受信、および
ルックアップテーブルに基づき決定される、当該一画素の当該初期状態を当該希望最終
状態へ変換するのに必要な当該インパルスを表す出力信号の生成
より、さらに構成する項目34に記載のDCバランスの取れた双安定型電気光学ディスプ
レイの駆動方法。
(項目46)
少なくとも一画素を持ち、
【数3】



(式中、Tは波形の長さを示し、積分は波形の継続期間にわたり、V(t)は時間tの
関数としての波形電圧で、M(t)は、ゼロ時に短パルスより派生する滞留時間依存性を
誘起するために、残留電圧の効果減少を特徴付けるメモリ関数である)が約1ボルト秒よ
り少なくなるような、当該画素への波形V(t)の印加より構成する双安定型電気光学デ
ィスプレイの駆動方法。
(項目47)
Jが約0.5ボルト秒以下である項目46に記載の双安定型電気光学ディスプレイの駆動
方法。
(項目48)
Jが約0.1ボルト秒以下である項目47に記載の双安定型電気光学ディスプレイの駆動
方法。
(項目49)
Jが、
【数4】



により計算され、式中、τが減少(緩和)時間を示す項目46に記載の双安定型電気光学
ディスプレイの駆動方法。
(項目50)
Tが約0.7から約1.3秒の間の値である項目49に記載のプロセス。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1A〜1Eは、本発明の非連続アドレス法にて使用できる五つの波形を示す図である。
【図2】図2は、単極電圧の多数のフレームを使用して電気光学ディスプレイをアドレスする際の問題を示す図である。
【図3】図3は、本発明の非連続アドレス法を使用して、図2の問題を解決する一方法を示す図である。
【図4】図4は、本発明の非連続アドレス法を使用して、図13の問題を解決する二つ目の方法を示す図である。
【図5】図5は、本発明の非連続アドレス法に使用できる波形を示す図である。
【図6】図6は、図5の波形を生成するため、本発明に基づいて変更できる基本波形を示す図である。
【図7】図7は、DCバランスを保ちつつ、単極電圧の多数のフレームを使用して電気光学ディスプレイをアドレスする際の問題を示す図である。
【図8】図8は、本発明の非連続アドレス法を使用して、図7の問題を解決する一方法を示す図である。
【図9】図9は、本発明の非連続アドレス法を使用して、図7の問題を解決する二つ目の方法を示す図である。
【図10】図10は、以下の実施例に記載のように、本発明の非連続アドレス法を使用せずに、わずか4グレーレベルの電気光学ディスプレイ上で取得されたグレーレベルを示す図である。
【図11】図11は、様々な非連続アドレス系列を使用して、図10と同様のディスプレイより取得されたグレーレベルを示す図である。
【図12】図12は、本発明の非連続アドレス法に基づき変更された駆動方式を使用して、図10と同様のディスプレイより取得されたグレーレベルを示す図である。
【図13】図13は、電気光学ディスプレイを駆動するのに使用できる単純なDCバランス波形を示す図である。
【図14】図14は、電圧ゼロのある期間を組み込むための図13の波形への二つの変更を示す図である。
【図15】図15は、電圧ゼロのある期間を組み込むための図13の波形への二つの変更を示す図である。
【図16】図16は、どのように図13の波形を変形して一組の駆動パルスを印加できるかを図解的に示す図である。
【図17】図17は、図16に図示の方法で、図13の波形を変更することで形成される一つの波形を示す図である。
【図18】図18は、図16に図示の方法で、図13の波形を変更することで形成される二つ目の波形を示す図である。
【図19】図19は、どのように図18の波形をさらに変形して三組目の駆動パルスを印加できるかを図解的に示す図である。
【図20】図20は、図19に図示の方法で、図18の波形を変更することで形成される一つの波形を示す図である。
【図21】図21は、本発明の方法で使用される完全なルックアップテーブルを提供するために、DCバランス波形と併せて使用できる一つの好適なDCバランス不平衡波形を示す図である。
【図22】図22は、本発明の補正電圧法により実現できる滞留時間依存性の減少を示すグラフである。
【図23】図23は、電気光学ディスプレイにおいて滞留時間依存性の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0066】
前述より、本発明は、電気光学ディスプレイの駆動方法、および当該駆動方法を実現す
るためのデバイスコントローラやその他の装置に対し、様々な異なる改良を加えているこ
とが明白である。以下の記載では、本発明により提供される様々な異なる改良点が通常別
々に記載されるが、実際には、単一のディスプレイが一つ以上の重要な方法を利用するこ
と、例えば本発明の非連続アドレス法を使用するディスプレイが特定領域法も使用するこ
となどは、画像分野に精通した者にとっては当然のことである。
【0067】
インパルス駆動式電気光学ディスプレイの理想的なアドレス法は、いわゆる「全般的グ
レースケールイメージフロー」法と呼ばれる、各画素が初期グレーレベルから最終グレー
レベルへ直接転移するようにコントローラが画像の各書き込みを整理する方法であるかの
ように当初見えるかもしれない。しかし必然的に、インパルス駆動式ディスプレイへの画
像の書き込みにはエラーが伴う可能性がある。一部既述のように、実際に直面する当該エ
ラーには、以下が含まれる:
(a)先行状態依存性:画素を新規光学状態へ切り替えるのに必要なインパルスは、初
期光学状態と希望光学状態だけでなく、当該画素の以前の光学状態にも依存する。
【0068】
(b)滞留時間依存性:画素を新規光学状態へ切り替えるのに必要なインパルスは、当
該画素が様々な光学状態下で過ごした時間に依存する。本依存性のはっきりとした性質は
よく理解されていないが、一般に、画素が現行の光学状態に留まる時間が長ければ長いほ
ど、必要となるインパルスも大きくなる。
【0069】
(c)温度依存性:画素を新規光学状態へ切り替えるのに必要なインパルスは、温度に
大きく依存する。
【0070】
(d)湿度依存性:画素を新規光学状態へ切り替えるのに必要なインパルスは、少なく
ともある種の電気光学ディスプレイでは、周辺湿度に大きく依存する。
【0071】
(e)機械的一貫性:画素を新規光学状態へ切り替えるのに必要なインパルスは、ディ
スプレイにおける機械的多様性、例えば電気光学媒体の厚みや関連するラミネート接着剤
などから影響を受けることがある。その他の機械的非一貫性は、媒体の異なる製造バッチ
における不可避な多様性や、製造公差、材質の多様性などから生じることがある。
【0072】
(f)電圧誤差:ドライバが供給する電圧における不可避な若干の誤差のため、実際に
画素に印加されたインパルスは理論的に印加されたものとは若干異なる。
【0073】
一般的なグレースケールイメージフローは「誤差の蓄積」現象を被る。例えば、温度依
存性が各転移ごとに正方向における0.2L*誤差を生じるとする。50回の転移後、当
該誤差は10L*まで蓄積する。恐らくより現実的には、ディスプレイの理論上の反射率
と実際の反射率の違いとして表される各転移の平均誤差が±0.2L*であるとすると、
連続した100回の転移後、当該画素の予想状態からの平均偏差は2L*となる。当該偏
差は、ある種の画像の平均的観測者にとっては明らかである。
【0074】
当該誤差の蓄積現象は、温度による誤差のみでなく、他の種類の誤差にも該当する。当
該誤差の補正は可能であるが、精度には限界がある。例えば、温度誤差は温度センサーと
ルックアップテーブルで補正できるが、温度センサーの解像度は限られているので、電気
光学媒体が読み取った温度とは若干異なる温度を読み取る可能性がある。同様に、先行状
態依存性は先行状態の保存と多次元転移マトリクスにより補正できるが、記録できる状態
数と保存できる転移マトリクスのサイズをコントローラのメモリが限定するので、上述の
ように、この種の補正には限界がある。
【0075】
したがって、一般的なグレースケールイメージフローはよい結果を提供するには印加イ
ンパルスの非常に精密なコントロールを要し、電気光学ディスプレイ技術の現状では、一
般的なグレースケールイメージフローは市販用のディスプレイとしては通常不適切である
ことが実験的に分っている。
【0076】
ほとんどすべての電気光学ディスプレイにはリセット(誤差制限)メカニズム、つまり
「光レール」として機能する極度(通常黒と白)光学状態が内蔵されている。ある特定の
インパルスが電気光学ディスプレイのある画素に印加された後、当該画素はより白く(あ
るいはより黒く)なることはできない。例えば、マイクロカプセル式電気光学ディスプレ
イにおいて、ある特定のインパルス印加後、すべての電気泳動粒子は粒子同士、あるいは
カプセル壁に対して強制的に押し付けられ、移動不可能になるため、限定的な光学状態あ
るいは光レールを生じる。そのような媒体において、電気泳動粒子の大きさや電荷にばら
つきがあるため、他の粒子より先にレールに到達する粒子もあり、転移の最終光学状態が
極度黒・白状態に近づくと必要なインパルス精度が減少し、画素の光学領域の中央付近で
終了する転移の場合には必要な光学精度が激増する、「ソフトレール」現象を生じる。言
うまでもなく、純粋に一般的なグレースケールイメージフローの駆動方式において、ある
特定の画素のグレーレベルはいずれの光レールにも触れることなく無限大に変化し得るの
で、当該駆動方式は光レールに依存してグレーレベルの誤差を防止することはできない。
【0077】
上述の米国特許6,504,524号と6,531,997号に記載されるように、多
くの電気光学媒体、特に粒子型電気泳動媒体において、当該媒体の駆動には、長期間に渡
り特定の画素を通過する電流の代数和がゼロ、あるいはできるだけゼロ近似値であるべき
であるという意味で、直流(DC)バランスの取れた駆動方式の使用が望ましく、本発明
の当該駆動方式は上記の基準を念頭において設計されるべきである。より厳密には、画素
の一つの極度光学状態(黒、白)で開始・終了する転移の全配列のDCバランスが取れる
ようにルックアップテーブルを設計するべきである。上記の内容によると、グレーからグ
レーへの特定転移に必要なインパルス、如いては画素を通過する電流はかなり一定である
ので、当該DCバランス化は当初実現不可能に思われるかもしれない。しかし、これはま
ず得られた近似の結果にのみ真であり、少なくとも粒子型電気泳動媒体(他の電気光学媒
体でも同様のようである)において、(例えば)五つの間隔の開いた50msパルスを画
素へ印加する効果は、同電圧の250msパルスを印加するのと同様ではないことが実験
的に判明している。したがって、ある転移を実現するために画素を通過する電流にはある
程度の柔軟性があり、この柔軟性がDCバランス達成の役に立つのである。例えば、本発
明のルックアップテーブルは、ある転移につき複数のインパルス、並びに当該インパルス
のそれぞれにより提供される総電流の値を保存することができ、コントローラは、各画素
ごとに、ある先行時間(画素が最後に黒状態にあった時など)より画素へ印加されたイン
パルスの代数和を保存するよう設定されたレジスタを維持することができる。ある特定の
画素が白かグレー状態から黒状態へ移動される時、当該コントローラはその画素と関連し
たレジスタを調査して、先行黒状態から次回の黒状態への転移の全配列においてDCバラ
ンスを実現するのに必要な電流を決定し、関連したレジスタをゼロ、あるいは少なくとも
残余ができるだけ小さくなるように(この場合、関連したレジスタは当該残余の値を保持
し、後の転移中に印加される電流に付加する)、白・グレーから黒への転移に必要なイン
パルスを多数の保存されたインパルスの中から選択する。当該プロセスを繰り返すことに
より、各画素の長期に渡る正確なDCバランスが実現できることは明白である。
【0078】
本発明の多局面に関する以下の考察は、前述特許WO 03/044765号の全内容
、特に当該特許で開示される様々な波形との精通を前提とする。本発明の様々な方法が、
前述特許WO 03/044765号に記載の基本的ルックアップテーブル法の多様なオ
プション機能(温度補正、耐用寿命補正、湿度補正など)を加えるために変更できること
は、表示分野に精通した者にとっては当然明白である。本発明の様々な方法は、ルックア
ップテーブルに保存するべきデータ量を削減するため、前述特許WO 03/04476
5号に記載の方法を利用することもある。さらに、ルックアップテーブルを構成するデー
タは一般的な多次元データセットとして扱えるので、(a)データセットに必要なストレ
ッジの大きさ、(b)データ抽出に必要な計算量、あるいは(c)当該セットからある特
定要素の位置を確認し抽出するのに必要な時間の内、一つかそれ以上を削減するためには
、データ保存とデータ処理分野に精通した者に既知のどんな標準的機能、アルゴリズム、
記号化法でも使用できる。上記ストレッジ技術には、例えばハッシュ関数、可逆・不可逆
圧縮、および基底関数の組み合わせとしてのデータセットの表現が含まれる。
【0079】
(非連続アドレス法)
本発明法におけるグレーレベルの微調節は、本発明の非連続アドレス法により実現でき
る。上述のように、当該非連続アドレス法には二つの主な形態、つまりDCバランス不平
衡形態とDCバランス形態がある。DCバランス不平衡形態は、非ゼロの正味インパルス
(つまり、正セグメントと負セグメントの長さが同等でない)を有する出力信号によりグ
レーレベル間の少なくとも一転移を達成するので、内部的にはDCバランスが取れておら
ず、非連続である(つまり、パルスが電圧ゼロの部分、あるいは異極性を含む)。当該非
連続アドレス法に使用される当該出力信号は非周期的であることもないこともある(つま
り、+/−/+/−や++/−−/++/−−などの反復単位で構成することも構成しな
いこともある)。
【0080】
上記非連続波形(以下、「微同調(fine tuning)」あるいは「FT」波形
と呼ばれる)は異極性のフレームを持たず、あるいは/またはディスプレイ(通常、当該
ディスプレイは、電気光学媒体の画素に印加される電場が、関係する画素電極と前部電極
間の電圧差により決定されるように、各画素に関係した画素電極と多数の画素、通常ディ
スプレイ前面、に跨って延長する前部電極を有するアクティブマトリクスディスプレイで
ある)前面の効果的な電圧に関しては、+V、0、−Vの3レベルの電圧しか含まないこ
とがある。あるいは、FT波形は3レベル以上の電圧を含み、非連続波形が印加された上
述のどの種の一波形(n−prepulseなど)からでも構成することができる。
【0081】
FT波形は、(通常)一つかそれ以上の先行画像状態に依存し、標準的パルス幅変調(
PWM)技術により実現できる光学状態の変化より小さな変化を実現するために使用され
る。(したがって実際に使用されるFT波形は、転移によりルックアップテーブル内で異
なるので、例えば電気泳動粒子がカプセル壁などの表面に付着するのを防止するために交
互極性のパルスを使用すると申し立てている、ある先行技術の波形とは対照的である。)
当該非連続アドレス法の好適な形態においては、ディスプレイの全許容光学転移(「転移
マトリクス」を達成するのに必要なすべての波形の組み合わせが提供され、少なくとも一
波形は本発明のFT波形で、波形の組み合わせはDCバランスが取れている。当該非連続
アドレス法の他の好適な形態においては、全電圧セグメントの長さは単一間隔(「フレー
ム時間」)の整数の倍数である。電圧セグメントとは、電圧が一定である波形の一部を指
す。
【0082】
本発明の当該非連続アドレス法は、多くのインパルス駆動式電気光学媒体において、正
味インパルスがゼロで、それゆえに理論的には画素のグレーレベルに全面的な変化を及ぼ
さないと予測される波形が、当該媒体の性質上のある非線形効果のため、実際にはグレー
レベルに若干の変化を及ぼすので、パルス幅および/またはパルス長の変化力が限られて
いる単純なPWM駆動方式やドライバと比べ、グレーレベルのより微細な調節が実現でき
るという発見に基づいている。上記のような「微同調」波形を起こすパルスは、グレーレ
ベルに主変化を起こす「主駆動」パルスとは別で、当該主駆動パルスを先行・後行するこ
ともできる。また場合によっては、当該微調節パルスと当該主駆動パルスは、当該主駆動
パルスシーケンスの単一地点に微調節パルスの一ブロックを置くか、当該主駆動パルスシ
ーケンスの複数地点に単一、あるいは小グループの微調節パルスを置くことにより、混合
されても構わない。
【0083】
当該非連続アドレス法は、非常に一般的に適応できるが、三つの電圧出力(正、負、ゼ
ロ)を有するソースドライバと以下三種の波形要素から成る波形を使用した駆動方式を例
として主に記載される(他種のドライバと波形要素と使用するための本発明への必要な変
更は、電気光学ディスプレイ技術に精通した者には容易に理解できると考えられているか
らである):
1)飽和パルス:一符号、あるいは一符号とゼロボルトの電圧を持ち、反射率を一極度
光学状態(光レール、すなわち本出願で黒状態と呼ばれる暗い状態と本出願で白状態と呼
ばれる明るい状態)付近へ転移するフレームシーケンス、
2)セットパルス:一符号、あるいは一符号とゼロボルトの電圧を持ち、反射率を希望
グレーレベル(黒、白、あるいは中間のグレーレベル)へ転移するフレームシーケンス、
3)FTシーケンス:同長の単一符号シーケンスと比べ、インクの光学状態の移動量が
著しく減少するように、正、負、あるいはゼロになるように個々に選択された電圧を有す
るフレームシーケンス。全長が5スキャンフレームであるFドライブシーケンスの例は、
[+−+−−](ここで各フレームの電圧は順番に正電圧が+、電圧ゼロが0、負電圧が
−で示されている)、[−−0++]、[00000]、[00+−0]、[0−+00
]などである。上記のシーケンスは、図1A〜1Eに上記の順で図式的に図に示されてお
り、図中の丸はFTシーケンスの始点と終点を表し、各点の間には5つのスキャンフレー
ムが存在する。
【0084】
FTシーケンスは、前述のように、光学状態の微調節ができるように使用されるか、単
極(単一符号)電圧であるが異なる正味電圧インパルス(当該インパルスは経時的に印加
される電圧の積分として定義される)を有するシーケンスの光学状態に類似した状態に変
化を加えるために使用される。したがって、波形内のFTシーケンスは、DCバランスを
実現するための手段として使用できる。
【0085】
まず、FTシーケンスを使って光学状態の微調節を実現する方法に関して説明する。図
2において、0、1、2、3あるいはそれ以上の単極電圧で実現できる光学状態が反射率
軸上の点として図式的に示されている。当該図から、軸上に相当する点として示される反
射率を実現するには単極パルスの長さが選択できることが分る。しかし、図2の上記グレ
ーレベルにあまり近くない「ターゲット」で示されるグレーレベルを実現したい時もある
ので、この場合は、FTシーケンスを使用して、単極駆動パルス使用後に実現した最終状
態を微同調するか、初期状態を微同調してから単極駆動パルスを使用することで、反射率
を希望状態に微同調できる。
【0086】
図3に示されるFTシーケンスの第一例は、二パルスの単極駆動後にFTシーケンスが
使用された例を示す。FTシーケンスは最終光学状態をターゲット状態へ微同調するのに
使用される。図2のように、図3は多数のスキャンフレームで実現できる光学状態を黒丸
で示し、ターゲット光学状態と、二つのスキャンフレームの印加後の光変化、およびFT
シーケンスに誘導される光変化も示している。
【0087】
FTシーケンスの第二例は図4に示される。同図では、まずFTシーケンスを用いて、
単極駆動シーケンスで希望光学状態を実現できる位置に光学状態が微同調される。FTシ
ーケンス使用後に実現できる光学状態は図4では白丸で示される。
【0088】
またFTシーケンスは、前述特許WO 03/044765号の図11Aと11B示さ
れるようなレール安定型グレースケール(RSGS)波形との使用も可能である。当該R
SGS波形の本質は、特定の画素が一つの極度光学状態へ移動される前に実行できるグレ
ーからグレーへの転移許容数は限られているというものである。したがって、当該波形は
極度光学状態(光レールと呼ばれる)へ頻繁に転移することで、DCバランスを維持しつ
つ光学誤差を削減する(ここでDCバランスは、正味電圧インパルスがゼロで、詳細は以
下に記載される)。よく分割されたグレースケールは、一つかそれ以上のスキャンフレー
ムに微調節電圧を選択することで、当該波形を使用して実現できる。しかし、上記微調節
電圧が使用不可能な場合は、他方法を使用して、できればDCバランスも維持しつつ、微
同調を実現しなければならない。その目的を達成するのにFTシーケンスが使用できる。
【0089】
まず、各転移が上述のセットパルス(画素を希望グレーレベルへ移動するパルス)に後
行される0、1、2の飽和パルス(画素を一光レールへ転移するパルス)から構成する環
状形のレール安定型グレースケール波形を考察する。本波形でどのようにFTシーケンス
が使用できるかを示すため、各波形要素は記号表記される:「sat」は飽和パルスを示
し、「set」はセットパルスを、「N」はFTドライブシーケンスを示す。環状レール
安定型グレースケールの三つの基本形は、
set(WO 03/044765号、図11A中転移1104など)
sat−set(WO 03/044765号、図11A中転移1106/1108な
ど)
sat−sat’−set(WO 03/044765号、図11A中転移1116/
1118/1120など)
であり、satとsat’は二つの異なる飽和パルスを示す。
【0090】
上記の一番目の形式をFTシーケンスで変更すると、以下の波形が生じる:
N−set
set−N
つまり、FTシーケンスがセットパルスに後行されるか、同じ要素が逆になるかである

【0091】
上記の二番目の形式を一つか二つのFTシーケンスで変更すると、例えば、以下のよう
なFT変更波形が生じる:
N−sat−set
sat−N−set
sat−set−N
sat−N−set−N’
N−sat−set−N’
N−sat−N’−set
N−sat−N’−set−N”
上記中、N、N’、N”は三つのFTシーケンスであり、相異なることも異ならないこ
ともある。
【0092】
上記の二番目の形式の変更は、基本的に上述の形式に従い、三つの波形要素間にFTシ
ーケンスを散在することで実現できる。例の一部として、以下が挙げられる:
N−sat−sat’−set
N−sat−sat’−set−N’
sat−N−sat’−N’−set−N”
N−sat−N’−sat’−N”−set−N”’
FTシーケンスにより変更できる他の基本的波形としては、黒(あるいは白)へ駆動す
る単一パルスのスライドショー型グレースケールがある。当該波形において、光学状態は
、まず光レール、それから希望画像へ移行される。各転移波形は以下二つのシーケンスの
どちらででも記号的に示される:
sat−set
set
上記の波形は、レール安定型グレースケールシーケンスで既述の方法と基本的に同じ方
法で、FTドライブシーケンス要素を挿入することで変更でき、結果的に以下のようなシ
ーケンスが生じる:
sat−set−N
sat−N−set
など。
【0093】
上記二例は、波形の飽和パルスとセットパルス要素の前後にFTシーケンスを挿入する
例を示している。また、飽和パルスやセットパルスの途中でFTシーケンスの挿入を実施
するのも効果があることがある。つまり、基本シーケンス:
sat−set
は、以下のような形式に変更される:
{sat、part I}−N−{sat、part II}−set
あるいは、
sat−{set、part I}−N−{set、part II}
既述のように、一連の転移後に実現される多くの電気光学媒体の光学状態は先行光学状
態、および当該先行光学状態における経過時間に敏感であることが明らかになっており、
転移波形を適宜調節することで先行状態と先行滞留時間を補正する方法が報告されている
。同様の方法でFTシーケンスを使用することにより、先行光学状態と先行滞留時間が補
正できる。
【0094】
当該概念をより詳細に記述するため、特定の画素に表示されるグレーレベルのシーケン
スを考察する。当該レベルはR、R、R、Rなどと表示され、Rは検討対象の
転移の次の希望(最終)グレーレベルを表し、Rは当該転移の初期グレーレベルを表し
、Rは第一先行グレーレベル、Rは第二先行グレーレベルを表す、という具合に続く
。したがって、グレーレベルのシーケンスは以下のように表される:
nー1n−2......R
グレーレベルiに先行する滞留時間はDで表記される。Dはグレーレベルiに滞留
するスキャンフレーム数を表すこともできる。
【0095】
上述のFTシーケンスは、現行グレーレベルから希望グレーレベルへの転移に適切であ
るとして選択され得る。したがって、最も単純な形態では、当該FTシーケンスは現行お
よび希望グレーレベルの関数であり、以下の式で象徴的に表され、
N=N(R、R
FTシーケンスNがRかRに依存することを示す。
【0096】
装置性能を改善し、特に先行画像に関連した残留グレーレベルの変動を削減するため、
転移波形の微調節をするのは効果的である。多くのFTシーケンスが当該調節の実現に利
用できるが、様々なFTシーケンスは、様々な最終光学状態を生み、ある画素の異なる光
学ヒストリーには異なるFTシーケンスが選択できる。例えば、第一先行画像(R)を
補正するためには、Rに依存するFTシーケンスが選択でき、以下の式で表される:
N=N(R、R、R
つまり、FTシーケンスはRとRだけでなく、Rにも基づいて選択できる。
【0097】
当該概念を一般化すると、FTシーケンスは任意数の先行グレーレベル、あるいは/ま
たは任意数の先行滞留時間に依存でき、以下の式で表される:
N=N(D,Dm−1,…D,D;R,Rnー1,…R,R,R
式中、DはグレーレベルRに滞留した時間を示し、光学状態数nはFT決定関数に必
要な滞留時間数mと同等である必要はない。したがって、FTシーケンスは先行画像ある
いは/または先行・現行グレーレベル滞留時間の関数であり得る。
【0098】
当該概念の特例として、本来単極なパルスに電圧ゼロのスキャンフレームを挿入するこ
とで、実現される最終光学状態が変化することが分っている。例えば、電圧ゼロのスキャ
ンフレームが挿入される図5のシーケンス後に実現される光学状態は、電圧ゼロのスキャ
ンフレームはないが図5のシーケンスと総インパルスが同等である、図6の対応する単極
シーケンス後に実現される光学状態とは若干異なる。
【0099】
当該最終光学状態へのある特定パルスの影響は、当該パルスと先行パルス間の遅延時間
の長さに依存することが分っている。したがって、パルス要素間に電圧ゼロのフレームを
挿入することで波形の微同調が実現できる。
【0100】
本発明は、FTドライブ要素の使用と電圧ゼロのスキャンフレームの挿入を他の波形構
造における単極ドライブ要素にまで拡張する。他の例としては、これらに限られないが、
一光学状態から他の光学状態へ移行する際に、両光レールにアクセスする二重プリパルス
(三重プリパルス、四重プリパルスなどを含む)のスライドショー型グレースケール波形
や、レール安定型グレースケール波形などが含まれる。またFTシーケンスは、グレーレ
ベル間で直接転移が行われる、一般的なイメージフローグレースケール波形にも使用でき
る。
【0101】
電圧ゼロのフレームの挿入が、すべてゼロであるFTシーケンス挿入の具体例と考えら
れる中、当該特例が最終光学状態の変更に効果的なことが分っているので、注意が向けら
れる。
【0102】
上述の考察はグレーレベルの微同調達成のためのFTシーケンス使用に焦点を当ててき
た。現時点からは、DCバランス達成のための当該FTシーケンスの使用を検討する。F
Tシーケンスは、波形におけるDCバランス不平衡のレベルを変化(できれば、DCバラ
ンス不平衡の削減あるいは削除)するのに使用できる。DCバランスとは、すべての完全
回路式グレーレベルシーケンス(同様のグレーレベルで開始・終了するシーケンス)の正
味電圧インパルスがゼロであることを意味する。FTシーケンスが(a)飽和パルスやセ
ットパルスと同様の方法で光学状態を変更できるが、非常に異なる正味電圧インパルスを
有する、あるいは(b)光学状態にわずかな変化をもたらすが、最終的にDCバランス不
平衡であるという事実を利用して、一つかそれ以上のFTシーケンスにより、波形のDC
バランスを取る、あるいはDCバランス不平衡度を減少させることができる。
【0103】
以下の実例は、どのようにFTシーケンスを使用してDCバランスが達成できるかを示
す。当該例において、セットパルスのパルス長は様々、具体的には1、2、3スキャンフ
レームあるいはそれ以上であり得る。複数のスキャンフレームのそれぞれで実現される最
終グレーレベルは図7に示され、図中、各点の下の数字はグレーレベル達成に使用された
スキャンフレーム数を示す。
【0104】
図7は、数値が最終グレーレベルの実現に使用された単極フレーム数を特定する、単極
ドライブで正電圧のスキャンフレームを用いて使用可能な光学状態を示す。当該例におい
て、DCバランス維持には合計二つの正電圧フレームから成る電圧インパルス印加が必要
であると仮定する。希望(ターゲット)グレーレベルはインパルスの三つのスキャンフレ
ームにより実現できるが、そうすることで、システムは一フレーム分DCバランス不平衡
のまま残される。一方、三つのスキャンフレームの代わりに二つの正電圧スキャンフレー
ムを使用するとDCバランスが実現できるが、最終光学状態はターゲットよりかなり逸脱
することになる。
【0105】
DCバランスを実現する一方法としては、二つの正電圧フレームを使用して電気光学媒
体を希望グレーレベル付近に移動し、さらにDCバランスの取れたFTシーケンス(正味
電圧インパルスがゼロのFTシーケンス)を使用してターゲットグレーレベルに十分近づ
けるように最終調節をする方法がある。当該方法は図8に図式的に示され、当該図中、光
学状態に適切な変更を加えるように選択された正味電圧インパルスがゼロのFTシーケン
スに後行された二つのスキャンフレームにより、ターゲットグレーレベルが実現されてい
る。
【0106】
また別の方法として、単極ドライブの三つの正電圧スキャンフレームを使用して反射率
をターゲットの光学状態へ移動し、さらに最終的なDCバランスの不平衡度が一負電圧ス
キャンフレームと同等である一つのFTシーケンスを使用する方法がある。最終的な光学
状態がほとんど変化しないFTシーケンスを使用した場合は、最終光学状態は正確なまま
維持され、DCバランスが回復される。当該例は図9に示される。当然ながら、通常、F
Tシーケンスの使用は光学状態の調節と共にDCバランスにもある程度の影響を与えるの
で、上記二例は極端な例である。
【0107】
例証のみを目的としているが、以下に次の実施例を提示することで、本発明に基づいた
FTシーケンスの実験的使用例を示す。
【実施例】
【0108】
(環状RSGS波形におけるFTシーケンス使用)
本実施例は、単一画素ディスプレイにおいて、4グレーレベル(2ビット)アドレス達
成を目的とした、FTシーケンスの使用による波形の光学性能の改善を示す。当該ディス
プレイはマイクロカプセル式電気泳動媒体を使用し、前述2002/0180687号の
[0069]〜[0076]項記載の方法に実質的に基づき構成された。
【0109】
波形電圧は、2ビット(4状態)グレースケール内でグレーレベルシーケンスを実現す
るため、転移マトリクス(ルックアップテーブル)に基づき画素に印加された。既述のよ
うに、転移マトリクスやルックアップテーブルは、グレースケール内であるグレーレベル
から他のグレーレベルへ移行するために画素に電圧を印加する際の一連の規則である。
【0110】
波形は電圧とタイミングに拘束され、三つの電圧レベル、−15V、0V、+15Vの
みが画素全体に印加された。また、フレーム率が50Hzのアクティブマトリクスドライ
ブを刺激するため、電圧は20ms間隔で印加された。波形を最適化するため、つまりテ
ストシーケンス全体に及ぶ4グレーレベルそれぞれの実際の光学状態における展開が最小
限になる条件を実現するため、同調アルゴリズムが反復して使用された。
【0111】
最初の実験において、単純な飽和・セットパルスを使用して、環状レール安定式グレー
スケール(cRSGS)波形が最適化された。転移マトリクス確定に際し、先行状態への
考慮は初期(R)と希望最終(R)グレーレベルに限定され、当該波形は全体に渡り
DCバランスが取れていた。同調に使用可能な最小インパルス(15Vで20ms)が粗
く、当該転移マトリクスにおけるR先行状態が欠如していたため、当該波形からはかな
り低質な成績が予想された。
【0112】
当該転移マトリクスの行動は、ランダムに配列された全グレーレベルの五個一組のシー
ケンスを含む、「五個一組で完全な」グレーレベルシーケンス中でテスト画素を切り替え
て検証された。(五個一組のシーケンス要素とは、0−1−0−2−3や2−1−3−0
−3などの、五つのグレーレベルのシーケンスで、0、1、2、3は使用可能な四つのグ
レーレベルを示す。)完璧な転移マトリクスでは、四つのグレーレベルそれぞれの反射率
は、ランダムシーケンスの各グレーレベルがいつ発現しても、いつも全く同じである。現
実的な転移マトリクスでは、各グレーレベルの反射率はかなり変動する。現実に、図10
の棒グラフは、電圧とタイミングに拘束された転移マトリクスの性能不足を示している。
各ターゲットグレーレベルの様々な発現の計測された反射率は非常に様々である。本実験
の当該部分で展開されたFTシーケンスなしに最適化されたcRSGS波形は、以下基本
波形と呼ばれる。
【0113】
次に、FTシーケンスはcRSGS波形に組み込まれた。当該実験において、FTシー
ケンスは5スキャンフレームに限定され、DCバランスの取れたFTシーケンスのみを含
有した。各転移で、FTシーケンスは当該基本波形の終末に配置された。つまり各転移の
当該波形は、以下の形態の内の一形態を取っていた:
set−N
sat−set−N
sat−sat’−set−N
FTシーケンス要素をうまく当該波形に取り入れるには、次の二つのステップが、各グ
レーレベルでの様々なFTシーケンスの光学状態への影響の確認と、様々な波形要素へ印
加するFTシーケンスの選択が必要であった。
【0114】
各グレーレベルでの様々なFTシーケンスの光学状態への影響を確認するため、「FT
効果」実験が実施された。まず黒と白の光レール間で、繰り返し電気泳動媒体を切り替え
て、一貫した始点が確立された。それから本フィルムは、本出願では光学状態Rと呼ば
れる、四つのグレーレベル(0、1、2、3)の内の一レベルへ移動され、さらにFTシ
ーケンスが印加された他のグレーレベル(本出願ではRと呼ばれる)の内の一レベルへ
を転移するのに適切な基本波形が印加された。当該ステップは全51のDCバランス
の取れた5フレームのFTシーケンスに対して反復され、最終光学状態は各FTシーケン
スごとに記録された。それから、当該FTシーケンスはそれぞれの最終反射率に基づいて
整理された。当該プロセスは初期(R)および最終(R)グレーレベルのすべての組
合せに対して反復された。当該最終グレーレベル1(R=1)と現行グレーレベル0、
2、3(R=0、2、3)のFTシーケンスの順序は、順番に表2〜4に示され、「フ
レーム1」から「フレーム5」と題された縦列には該当するFTシーケンスの五つの連続
したフレーム中に印加された電位をボルトで表している。様々なFTシーケンスを使用し
て波形に実現された最終光学状態は図11に曲線で示されている。当該図から、正味電圧
インパルスが全く変わることなく、FTシーケンスを使用して最終光学状態に大きな変化
を及ぼせること、また五つのスキャンフレームを有するFTシーケンスにより最終光学状
態の微調節ができることが分る。
【0115】
(表2:様々なFTシーケンスにおけるグレーレベル0〜1の最終光学状態)
【0116】
【表2−1】

【0117】
【表2−2】

【0118】
【表2−3】


(表3:様々なFTシーケンスにおけるグレーレベル2〜1の最終光学状態)
【0119】
【表3−1】

【0120】
【表3−2】


(表4:様々なFTシーケンスにおけるグレーレベル3〜1の最終光学状態)
【0121】
【表4−1】

【0122】
【表4−2】


次に、表2〜4と図11(特に表2のシーケンス33、表3のシーケンス49、および
表4のシーケンス4)に示される結果と他のグレーレベルの類似物を用いて選択されたF
Tシーケンスを使用して、cRSGS波形が構成された。図11のy軸上の〜36.9と
〜37.5L*間部は、DCバランスの取れたFTシーケンスで使用可能になった同じ最
終(R)状態と異なる初期(R)状態の光反射率間の重複部を示す。したがって、R
=1のターゲットグレーレベルは37.2L*で選択され、本ターゲットに最も近い最
終光学状態を提示する各RのFTシーケンスが選択された。本プロセスは他の最終光学
状態(R=0、2、3)に対しても反復された。
【0123】
最後に、結果として得た波形が、五段階濃度の状態ヒストリーを全て含んだ前述の擬似
ランダムシーケンスを用いて検査された。当該シーケンスには324の重要な転移が含ま
れる。選ばれたFTシーケンスによって変更されたcRSGS波形を用いて、当該シーケ
ンス中の全ての転移が実現され、実現された各光学状態の反射率が記録された。実現され
た光学状態は図12に示される。図12と図10との比較から、各グレーレベルの反射率
の広がりが、当該FTシーケンスを組み込んだことにより著しく小さくなったことが明白
である。
【0124】
要約すれば、非連続アドレス法に関する面で、本発明は、(i) 光学状態の変化を可
能とするか、(ii) 波形のDCバランス実現、あるいは少なくとも波形のDCバラン
ス不平衡の度合いを変化させる手段を可能にする、複数のFTシーケンスを提供する。既
述の通り、例えば当該方法のDCバランスが不平衡な形態に対し、FTシーケンスを多少
数学的に定義できる。
【0125】
(a) DC基準パルスの光学状態の変化とは大幅に異なる光学状態の変化をもたらす
ようなDCバランスが不平衡なFTシーケンスの使用。当該「DC基準パルス」とは電圧
のパルスであり、VとはFTシーケンス中に印加される最大の電圧振幅に対応する
電圧であって、FTシーケンスの正味インパルスと符号を同じくする電圧である。あるシ
ーケンスの正味インパルスは、電圧・時間曲線下の面積であり、記号Gで表される。当該
基準パルスの継続時間はT = G/Vで表される。当該FTシーケンスは、当該基準
パルスの当該正味DCバランス不平衡とは大きく異なるDCバランス不平衡を導入するの
に用いられる。
【0126】
(b) 時間基準パルスで実現される光学状態の変化よりも著しく小規模な光学状態の
変化をもたらすようなDCバランスが不平衡なFTシーケンスの使用。当該「時間基準パ
ルス」の定義は、FTシーケンスと持続時間が同等の単一の符号を有する電圧パルスであ
るが、当該基準パルスの符号は光学状態の変化が最大になるように選ばれる。すなわち、
当該電気光学媒体が白状態に近い場合は、負電圧パルスは当該電気光学媒体を若干白状態
に近付けるだけであるかもしれないが、正電圧パルスは当該電気光学媒体を黒状態へ強く
変化させることがある。この場合の当該基準パルスの符号は正である。このタイプのFT
パルスの目的は、光学状態に強い影響を与えることなく、正味電圧インパルスを(例えば
、DCバランスを取るために)調節することである。
【0127】
非連続アドレス法に関する面で、本発明は転移波形のパルス要素間、あるいはパルス要
素内に一つかそれ以上のFTシーケンスを用いる構想、および先行グレーレベルと先行滞
留時間の影響を相殺するためにFTシーケンスを用いる構想にも関連する。本発明の一具
体例として、最終光学状態を変更するために、電圧ゼロのフレームを波形の一パルス要素
中、または複数のパルス要素間に挿入して使用する例が挙げられる。
【0128】
非連続アドレス法に関する面で、本発明は希望する精度で希望グレーレベルを実現する
ための波形の微同調、および電圧を微同調できないソースドライバ、特に二つか三つの電
圧レベルしか持たないソースドライバを使用して、ある波形をDCバランス状態に近づけ
る(すなわち、様々なグレーレベルへの全ての環状転移運動において正味電圧インパルス
をゼロにする)手段も可能にする。
【0129】
(DCバランス型アドレス法)
上述WO 03/044765号の図11Aと11Bに示された鋸歯状駆動方式は、い
かなる任意の画素についても、黒状態を連続して通過する間である限られた数の転移しか
起らないという点で、また実際に一画素は平均して全転移の半数でしか黒状態を通過しな
いという点で、DCバランスを取るために用いるのに好適であるという事実は注目に値す
る。
【0130】
しかし、既述の通り、本発明によるDCバランス法は、連続転移中に電気光学媒体に印
加されるインパルスの合計の平衡を取ることに限定されず、本発明のDCバランス型アド
レス法にしたがって、表示画素が経験する転移の少なくとも一部を「内部的に」平衡が取
れるようにするものでもある。当該方法を以下に詳述する。
【0131】
本発明のDCバランス型アドレス法は、ディスプレイ用のマイクロカプセル式電気泳動
方式など、インパルス駆動式電気光学媒体を駆動するのに効果的なDCバランスの取れた
転移に関連する。当該方法は、例えば二、三レベルの電圧しか出力できないソースドライ
バを有するアクティブマトリクス型ディスプレイに適用できる。これ以外の形式のドライ
バも使えるが、以下の詳細な説明の大部分は、三つの電圧出力(正、負、およびゼロ)を
有するソースドライバを用いた例に着目する。
【0132】
本発明のDCバランス型アドレス法に関する以下の説明では、本発明の他の局面につい
ての上記の記述と同様に、電気光学媒体のグレーレベルを1からNで表す。ここで、1は
最も暗い状態、Nは最も明るい状態を示し、中間状態には暗い順から明るい順に増加する
番号が付けられる。インパルス駆動式画像媒体の駆動方式は、初期グレーレベルから最終
グレーレベルへの転移を実現するために一連のルールを使用する。表5に2ビット(4グ
レーレベル)のグレースケールディスプレイで実現可能な16の各転移について示すよう
に、当該駆動方式は各転移について時間の関数としての電圧として表せる。
【0133】
(表5)
【0134】
【表5】


表5でVij(t)は、グレーレベルiからグレーレベルjへの転移に使用される波形
を示す。DCバランス転移とは、波形Vij(t)の時間積分値がゼロとなる転移である

【0135】
「光レール(optical rails)」という用語は、電気光学媒体の極度光学
状態を意味するとして既に定義されているが、以下「媒体を一方の光レールへ向けて、あ
るいは光レールの中へ押込む」という表現が使用される。ここで「(光レール)へ向けて
」という語は、当該媒体の当該光学状態を一方の光レールへ向けて移動させるように電圧
を印加するという意味である。また「押込む」という語は、電圧パルスが、当該電気光学
媒体の光学状態を一方の光レールに近づけるために十分な持続時間と振幅を有していると
いう意味である。「一方の光レールの中へ押込む」という文は、必ずしもパルスの終わり
である光レール状態が実現されることを意味するのではなく、当該パルスの終わりである
光学状態が最終光学状態にかなり近い状態になっていることを意味することに留意する必
要がある。例えば、反射率1%と50%地点に光レールを有する電気光学媒体を例に挙げ
ると、300msのパルスが最終光学状態を(反射率1%から)反射率50%に移動する
ことが分っている。この場合、最終的に達成する反射率が45%に過ぎないにも関わらず
、200msのパルスを印加することを高反射率の光レールへディスプレイを押込むと見
なすことがある。200msという持続時間は、例えば光学範囲を3分の1に区切った時
の中間部分という大きな光学範囲を横切るのに必要な時間と比べれば長いので、当該20
0msのパルスは媒体を一方の光レールの中へ押込むと見なされる(この場合、200m
sは媒体を中間に位置する反射率幅の3分の1の範囲、つまり反射率17%から34%の
範囲、を横切るのに必要なパルスに比べれば長いのである。)
本発明のDCバランス型アドレス法に従った三種類のDCバランス転移、およびDCバ
ランス転移とDCバランス不平衡転移の両方を用いた複合型駆動方式を以下に説明する。
以下の記述では、便宜上、各パルスは数字で表記され、数字の大きさは持続時間の長さを
を示す。数字が正数ならばパルスは正電圧であり、数字が負数ならばパルスは負電圧であ
る。したがって、例えば使用可能な電圧が+15V、0V、−15Vで、パルスの持続時
間がミリ秒(ms)で測られるならば、x =300という性質を持つパルスは300m
sで15Vのパルスを表し、x =−60という性質を持つパルスは60msで−15V
のパルスを表す。
【0136】
(タイプI)
本発明の最も単純な一番目のDCバランス転移では、図13に示されるように、電圧パ
ルス(x)が、同じ持続時間で符号が逆の電圧パルス(−x)に先行されている。(注:
xの値自体が負であることもあり得るので、正と負のパルスが図13とは逆の順番で現れ
ることもある。)
前述の通り、本発明の非連続アドレス法に従えば、転移のために用いる波形の効果は、
波形に含まれるいかなるパルスの途中、または出現以前に電圧がゼロの期間(事実上の時
間遅延)が存在することによって変化することが分っている。図13の波形の変形を図1
4と図15に示す。図14では、図13の二つのパルス間に時間遅延が挿入されている。
一方、図15では、図13の二つ目のパルスの中間に時間遅延が挿入されている、つまり
言い換えれば、図13の二つ目のパルスは当該時間遅延によって二つのパルスに分割され
ているのである。既述の通り、当該時間遅延がなくては実現できない光学状態を実現する
ために、ある波形に時間遅延を導入することが可能なのである。時間遅延は、最終光学状
態の微同調にも使用できる。アクティブマトリクス型駆動では、各パルスの時間分解能は
ディスプレイの走査速度によって決まるので、当該微同調能力は重要である。当該走査速
度による時間分解能は、何らかの追加的な微同調手段なしでは正確な最終光学状態が実現
できないほどに粗い可能性もある。時間遅延が最終光学状態に対し小規模な微同調を提供
する一方、以下に述べるような他の特徴は最終光学状態の粗同調と微同調の追加手段を提
供する。
【0137】
(タイプII)
タイプII型の波形は、図16に記号的に示すように、上述のタイプI型の波形とその
ある地点に挿入した正負1対のパルス(パルスy及び−y)から構成する。これらy及び
−yのパルスは連続している必要はなく、基本波形の異なる地点に存在するのでも構わな
い。当該タイプII型の波形には、特に有効な二つの形態がある。
【0138】
(タイプII:特例A)
この特殊な形態では、−yとyのパルス対が−xとxのパルス対の前に位置している。
図17のようにxとyとの符号が逆の場合、yの持続時間の調節がある程度粗くても、最
終光学状態の微同調が可能であることが分っている。したがって、電気光学媒体の最終光
学状態の粗調整のためにはxの値を調節し、最終調整のためにはyの値を調節する方法が
可能である。これは、yパルスが−xパルスを延長させ、その結果、電気光学媒体を一方
の光レールに押込む程度が変化するためと考えられる。当該電気光学媒体を一方の光レー
ルに押込む度合いにより、当該光レールから離れる方向へあるパルス(この場合、xパル
スがもたらす)が印加された後、最終光学状態が微調整できることが知られている。
【0139】
(タイプII:特例B)
上記の理由により、電気光学媒体を一方の光レールへ著しく移動するのに十分な長さを
有するパルス要素を少なくとも一つ有する波形を用いることが有効であることが分ってい
る。また、さらに見た目の良い転移のためには、一方の光レールに近いグレーレベルを実
現するには短い最終パルスさえあればよいので、最終光学状態の実現はより近い光レール
から実施するのが望ましい。このタイプの波形は、ある光レールへ移動するのに少なくと
も一つの長いパルスが必要で、さらに当該光レール近くの最終光学状態を実現するために
は短いパルスが一つ必要であるので、上記のタイプIの構造を有することはできないが、
タイプII型の波形の特例はこのタイプの波形を実現できる。図18はこの型の波形の一
例を示すが、当該波形ではyパルスは−x/xパルス対の後に位置し、−yパルスは同パ
ルス対の前に位置している。最終光学状態はyの大きさに非常に敏感であるので、この型
の波形では当該最後yパルスが粗同調を行う。一方、最終光学状態は通常光レールへの移
動の度合いにはそれほど強く左右されないので、当該xパルスが微同調を行う。
【0140】
(タイプIII)
本発明のDCバランス波形の三番目のタイプ(タイプIII型)では、図19に図式的
に示すように、当該波形にさらにもう一組のDCバランスの取れたパルス対(zと−z)
を導入する。当該タイプIII型波形の好適例を図20に示す。以下に述べる理由により
、この型の波形は最終光学状態を微同調するのに有効である。zと−zのパルスがない状
況(即ち、上記タイプII型の波形)を例に取ると、当該xパルス要素が微同調に用いら
れ、xを増加すると最終光学状態が減少され、xを減少すると最終光学状態が増加される
。しかしながら、xをある点以下に減少させるのは、電気光学媒体を光レールに十分に、
波形の安定性に必要な程度に近づけられなくなるため望ましくない。この問題を避けるた
めに、xを減少させる代わりに、図20に示すように、−zとzのパルス対を追加すれば
、xパルスを変えずに−xパルスを(実際に)延長させることが可能である。なお、zは
xとは符号が逆である。zパルスは−xパルスを延長させ、−zパルスは転移の正味イン
パルスをゼロに、即ち転移をDCバランスに維持する。
【0141】
当然ながら、以上で述べたタイプI、II、III型の波形は種々の方法で変形するこ
とが可能である。もっと一般的な構造とするために、さらに他のパルス対を波形に加える
ことも可能である。新たな追加パルス対の効果は、パルス要素の数が増加するにしたがっ
て減少するが、結果として出来る波形はタイプI、II、III型波形の自然な延長形と
なる。また前述の通り、当該波形の様々な箇所に、図14、15に図示するのと同様の方
法で、一つかそれ以上の時間遅延を挿入することが可能である。先に述べたが、パルス中
の時間遅延は、結果として得られる最終光学状態に影響を与えるので、微同調に有効であ
る。さらに、時間遅延の挿入により、同一転移中の他の要素や他の転移中の転移要素に関
連して、ある転移要素の位置を変化させることで、転移の外観も変化できる。時間遅延は
さらに波形中の特定転移要素の整列にも使用でき、特定の制御能力を有するある種のディ
スプレイモジュールに対して有効である場合がある。また印加パルスの順番における小変
化が、その後の光学状態に大きな変化を与えることがあるという事実を考慮すると、上記
の一パルス配列の全部または一部を入換えること、またはそうした入換えを繰り返すこと
、または上記のパルス配列の任意の一箇所にゼロボルト期間を一回かそれ以上挿入するこ
とで出力信号を形成してもよい。さらに、こうした入換えや挿入の演算子は(例えば、ゼ
ロボルト部分を挿入してから入換え、それからゼロボルト部分を挿入する)、どんな順番
で組み合わせても良い。このような変形操作で形成される当該全てのパルス配列が正味イ
ンパルスゼロという必須特性を保つことに留意が必要である。
【0142】
最後に、DCバランス転移は、DCバランス不平衡転移と組合せて駆動方式を形成する
ことも出来る。例えば、2003年7月2日に出願された同時係属出願 60/481,
053号には、−TM(R1,R2) [IP(R1)−IP(R2)] TM(R1,
R2)型の好ましい波形が記載されているが、ここで、[IP(R1)−IP(R2)]
は当該転移の初期状態と最終状態の間でのインパルスポテンシャルの差を表し、他の二項
はDCバランスの取れたパルス対を表す。以下、便宜上、当該波形を−x/ΔIP/x波
形と呼び、図21に図示する。当該波形は種々の光学状態間の転移には適しているが、初
期及び最終状態が同じであるゼロ転移にはあまり適さない。本実施例では、こうしたゼロ
転移には図17、18に示すようなタイプIIの波形を用いる。表6に当該波形の完全な
形態を記号で示す。当該表から、−x/ΔIP/x波形は非ゼロ転移に用い、タイプII
の波形はゼロ転移に用いられることが分る。
【0143】
(表6)
【0144】
【表6】


DCバランス転移は初期及び最終グレーレベルが同じである「リーディング・ダイアゴ
ナル(leading diagonal)型」転移だけに限定されているが、当該DC
バランス型アドレス法は、当然ながら当該タイプの転移マトリクスだけに限られるもので
はない。グレーレベルの制御を最大限に改善するには、DCバランス転移の数を極力多く
することが望ましい。しかしながら、使用する特定の電気光学媒体によっては、例えば黒
や白へ、または黒や白からの転移、即ちグレーレベル1や4といった極度グレーレベルへ
の転移またはそういった極度グレーレベルからの転移を伴った転移のDCバランスを取る
ことが困難な場合がある。その上、どの転移のDCバランスを取るか決定する際、転移マ
トリクス全体を不平衡にしないこと、つまり同じグレーレベルから開始・終了する閉ルー
プのDCバランスが不平衡である転移マトリクスを形成しないことが重要である。例えば
、グレーレベルの0または1レベルの変化だけを含んだ転移のDCバランスは取れている
が、その他の転移はDCバランスが取れていないなどの規則は好ましくない。なぜなら、
こういった規則は、次の例で示すように、転移マトリクス全体のバランスを不平衡にする
からである。2−4−3−2というグレーレベルのシーケンスを実施している画素は、2
−4(DCバランス不平衡)、4−3(DCバランスが取れている)、3−2(DCバラ
ンスが取れている)という転移を経過するので、全体のループのDCバランスが不平衡と
なる。上記の対立する二つの要求間で現実的な妥協を図るには、中間グレーレベル(レベ
ル2と3)だけが関与する場合にDCバランス転移を用い、転移が極度グレーレベル(レ
ベル1か4)で開始・終了する場合にはDCバランス不平衡転移を用いる方法がある。言
うまでもなく、当該規則で選択される中間グレーレベルは、使用する具体的な電気光学媒
体とコントローラによって異なるであろう。例えば、3ビット(8グレーレベル)のディ
スプレイでは、グレーレベル2〜7(または、場合によって3〜6)で開始・終了する全
ての転移にはDCバランス転移を用い、グレーレベル1または8(あるいは1、2、7、
8)で開始・終了する全ての転移にはDCバランス不平衡転移を用いることが可能な場合
がある。
【0145】
上記より、電圧の微同調ができないソースドライバ、特に2〜3レベルの電圧しか有し
ないソースドライバを用いて、希望グレーレベルを高精度で実現するために、本発明のD
Cバランス型アドレス法が、波形の微同調を可能にし、さらに波形転移がゼロ正味電圧を
有することができる手段の獲得を可能にすることが分るであろう。DCバランス波形によ
る転移はDCバランス不平衡波形による転移よりも優れた性能をもたらすと考えられてお
り、本発明は、ディスプレイ全般、またこれに限定されないが、特に2〜3レベルの電圧
しか有しないソースドライバを用いたアクティブマトリクス型ディスプレイモジュールに
適用される。本発明は、より複数の電圧レベルを有するソースドライバを用いたアクティ
ブマトリクス型ディスプレイモジュールにも適用される。
【0146】
本発明のDCバランス型アドレス法は、さらにまた別の効果を提供する。上述の通り、
本発明の一部の駆動方法では、転移マトリクスは、先行光学状態以外にも、例えば最後の
更新以来の経過時間の長さや、ディスプレイ媒体の温度といった変数の関数となっている
。上記の場合には、DCバランス不平衡転移を使用してDCバランスを保持することは非
常に難しい。例として、25℃で白から黒へ、次いで0℃で黒から白へ繰り返し転移する
ディスプレイを考察してみると、普通より長いパルス長で普通より遅い反応が低温では通
常指示される。その結果、当該ディスプレイは、白に偏ったDCバランスの不平衡に採取
的に陥る。一方、全転移が内部的に平衡ならば、DCバランス不平衡の影響を受けること
なく、種々の転移マトリクスを自由に混合して用いることが可能となる。
【0147】
(特定領域法)
上記のようなリセット方法の好ましくない効果は、全体的ではなく部分的に更新を行う
、つまり、ディスプレイの書き直す部分を「局部」または画素単位で選んで、連続した画
像間で変化する部分だけを書き直すことで、さらに減少できる可能性がある。例えば、機
械装置の一部を表示する図や、事故解析の図などに見られるように、大きな静止背景の中
で比較的小さな物体が動くような一連の画像は珍しくない。部分更新を用いるには、ディ
スプレイのコントローラは最終画像と初期画像を比較して、二画像間でどの部分が変化し
、したがってどの部分を書き直す必要があるかを決定しなければならない。当該コントロ
ーラは、一つかそれ以上の局部、通常、更新が必要な画素を含んだ、画素のマス目に沿っ
て縦軸と横軸が並んだ長方形の領域を特定するか、または単純に更新が必要な画素を個別
に特定することがある。上述のどの駆動方式でも使用して、上記で書き直しが必要と確認
された局部または個々の画素だけを更新できる。上述の部分更新方式は、ディスプレイの
消費電力を大幅に減少できる。
【0148】
さらに既述の通り、本発明の特定領域法は、ディスプレイの異なる領域に別々の更新方
法を使用して、双安定型電気光学ディスプレイの更新を可能にする特定領域法を提供する

【0149】
1ビットモードまたはグレースケールモードで全表示を駆動できる電気光学ディスプレ
イが複数知られているが、そのようなディスプレイが1ビットモードに設定されている場
合、1ビットの全体イメージフロー(GIF)波形を用いて更新が行われる。一方、当該
ディスプレイがグレースケールモードに設定されている場合、ある特定の表示領域で1ビ
ット情報だけが更新される場合でも、更新はマルチプリパルス型スライドショー波形、ま
たは他の低速波形を用いて行われる。
【0150】
当該電気光学ディスプレイは、当該コントローラ内でさらに二つのコマンド、即ち「領
域特定(DEFINE REGION)」コマンドと「全領域消去(CLEAR ALL
REGIONS)」コマンドを規定することにより、本発明の特定領域法を実行するよ
うに変更可能である。通常、当該「領域特定」コマンドは、例えば特定領域の右上角と左
下角のような、ディスプレイ内の長方形の領域を完全に特定するのに十分な位置情報を独
立変数として使用する。当該コマンドは、当該領域が設定されているビット深度を特定す
る独立変数をもう一つ持つことがあるが、当該特定領域が常にモノクロである場合、当該
最終独立変数は単純な形式の特定領域法では必要ではない。当該最終独立変数が設定する
ビット深度は、当然ながら、当該領域について以前設定されたすべてのビット深度に優先
する。もう一つの方法として、当該「領域特定」コマンドは多角形の頂点を形成する一連
の点を特定することも可能である。当該「全領域消去」コマンドは独立変数を取らず、単
にディスプレイ全体を予め定めた単一のビット深度にリセットする、または適用可能な各
種ビット深度の中から、消去後に全表示画面をどのビット深度にするかを特定する一つの
独立変数を取ることもある。
【0151】
当然のことながら、本発明の特定領域法は二つの領域だけの使用に限定されるものでは
なく、必要に応じてさらに多くの領域を提供できる。一例を挙げれば、画像編集プログラ
ムでは、主要領域に編集中の画像を全ビット深度で表示し、情報表示領域(現在のカーソ
ルの位置を表示するボックス等)とダイアログボックス領域(ユーザーの文章入力等)と
は1ビットモードで表示するのが有効である場合がある。二つ以上の領域を使用可能にす
る変更方法は、ディスプレイコントローラの構造に精通した者には容易に分るので、以下
では、本発明は主として二つの領域を使用した方法に関して説明される。
【0152】
当該コントローラは、様々な領域の深度を追跡するために、各記憶要素がディスプレイ
の各画素に対応するような記憶要素の配列を維持し、各要素はその対応する画素の現在の
ビット深度を表す数値を記憶する。例えば、1ビットか2ビットモードで作動できるXV
GA(800x600)ディスプレイは、1ビット要素を800x600に配列して使用
できる(各要素の0は1ビットモード、1は2ビットモードを示す)。上記のようなコン
トローラでは、当該「領域特定」コマンドはディスプレイの当該特定領域に対応する要素
を希望のビット深度に設定し、当該「全領域消去」コマンドは配列の全要素を同じ一つの
数値(既定の数値、またはコマンドの独立変数が定めた数値)にリセットする。
【0153】
別の方法としては、ある領域が特定または消去された場合、DCバランスを確保する、
または例えば前述のようにFTシーケンスで当該画素の光学状態を調節する目的で、ディ
スプレイをあるモードから他のモードへ転移するために当該コントローラは当該領域内の
画素を更新する。
【0154】
あるディスプレイが特定領域モードで作動している時、新規画像が当該コントローラへ
送信されると、当該ディスプレイを書き直す必要がある。次の三つのケースが存在する:
1.新しい画像では、特定(例えば)1ビット領域内の画素だけが変化した。この場合
、ディスプレイの更新には1ビット(高速)波形が使用できる。
【0155】
2.新しい画像では、特定されない(グレースケールの)領域内の画素だけが変化した
。この場合、ディスプレイを更新するにはグレースケール(低速)波形を使用する必要が
ある(なお、当然ながら、特定領域内で変更される画素は存在しないので、特定領域、例
えばダイアログボックスの書き直し中の読みやすさは問題にはならない)。
【0156】
3.新しい画像では、特定領域と特定されない領域両方の画素が変化した。この場合、
グレースケールの画素はグレースケール波形を用いて更新され、1ビットの画素は1ビッ
ト波形を用いて更新される(グレースケールの更新波形の長さに一致させるため、短い1
ビット波形は正しくゼロで満たされなくてはならない)。
【0157】
ディスプレイを走査する前に、当該コントローラは下記の論理検証を行って上記のどの
ケースが存在するか判定できる(既に定義した通り、1ビットの数値が各画素に対応し、
当該画素のモードを記憶するとの仮定に基づく)。
【0158】
(Old_image XOR new_image) > 0:ディスプレイの画素
が変更された
(Old_image XOR new_image) AND mode_arra
y > 0:グレースケールの画素が変更された
(Old_image XOR new_image) AND (NOT mode
_array) > 0:モノクロ画素が変更された
当該コントローラによって当該ディスプレイの走査中、ケース1かケース2では、全画
素に対して一波形のルックアップテーブルが使用できる。理由は、1ビットモードでの無
転移はグレースケールモードでの無転移と同じであると仮定すれば、無変化の画素にはゼ
ロボルトの電圧が印加される(言い換えれば、両波形共に部分更新である)からである。
反対に、グレースケール波形が全体更新(ディスプレイが更新される都度、全画素が更新
される)であるなら、全体更新波形の使用可否を決定するため、当該コントローラはある
画素が正しい領域内に存在するか調査する必要がある。ケース3では、当該コントローラ
がどの波形を使用するか決定する目的で走査する際に、各画素のモードを表すビット配列
の数値を確認する必要がある。
【0159】
他の方法として、1ビットモードで実現する黒・白状態の明度がグレースケールモード
で実現するものと同様であるなら、上記ケース3では、グレースケール波形をディスプレ
イの全画素に対して使用でき、1ビット波形とグレースケール波形間での関数転移の必要
がなくなる。
【0160】
上述の通り、本発明の特定領域法は基本ルックアップテーブル方式のどの選択機能でも
使用できる。
【0161】
本発明の特定領域法の主な利点は、既に書き込まれたグレースケール画像を表示するデ
ィスプレイに対して、1ビットの高速波形を使用できるという点である。従来技術の一般
的ディスプレイコントローラでは、どの時点でも、ディスプレイはグレースケールモード
か1ビットモードのどちらか一方しか表示できなかった。グレースケールモードで1ビッ
ト画像を書き込むのは可能だが、グレースケールモードの波形は非常に遅い。その上、コ
ントローラに画像を提供するホストシステム(システム、通常、コンピュータシステム)
がコントローラにどちらの波形を使用するべきか伝達する必要がないので、本発明の特定
領域法はホストシステムに対して本質的に透過的である。最後に、当該特定領域法がグレ
ースケール波形と1ビット波形の両方を同時にディスプレイに表示できるのに対して、他
の方法では両方の波形が使用されている場合には、更新を別々に二回行う必要がある。
【0162】
(波形に関するさらなる一般的な考察)
上記の駆動方式は、使用する特定の電気光学ディスプレイの特性に基づき、様々な方法
で変形し得る。例えば、上記の駆動方式で、リセット手順を大幅に除外できる場合もある
。一例を挙げると、使用する電気光学媒体が長期間に渡り双安定で(つまり、書き込まれ
た画素のグレーレベルが時間の経過と共に非常に低速でしか変化せず)、画素が初期グレ
ー状態に滞留した時間によって特定の転移に必要なインパルスが大きく変化しない場合に
は、黒・白状態への干渉的な帰還を経過せずに、あるグレー状態から別のグレー状態へ直
接転移するようにルックアップテーブルを配列し、かなりの時間が経過して画素がその名
目上のグレーレベルから次第に「ドリフト」し、その結果、表示画像に目立った誤差が生
じた場合にのみ、ディスプレイのリセットを実行すればよい。したがって、例えば、ある
ユーザーが電子ブックの読み出しに本発明のディスプレイを使用する場合には、当該ディ
スプレイのリセットが必要となるまでに数多くの情報画面が表示できるのである。適切な
波形とドライバを使用すれば、リセットが必要になるまでに、千画面にも及ぶ情報画面が
表示できるので、現実には電子ブックの通常の読み出しではリセットが必要ではないこと
が、実験的に分っている。
【0163】
ディスプレイ技術に精通する者には容易に分るように、本発明の装置は単独で有効的に
、様々な条件下で使用できる複数の様々な駆動方式と共に提供できる。例えば、上述WO
03/044765号の図9と10に示す駆動方式では、リセットパルスはディスプレ
イの総消費電力の大部分を消費するので、コントローラは、ディスプレイを頻繁にリセッ
トすることによりグレースケールの誤差を最小限に抑える第一駆動方式と、グレースケー
ルのより大きな誤差を許容する一方で消費電力を削減することで、ディスプレイを時々リ
セットする第二駆動方式を装備していることがある。当該二つの駆動方式間の切替えは、
手動、または外部要因に基づいて実行できる。例えば、ディスプレイがラップトップコン
ピュータに使用されている場合、当該コンピュータが主電源で作動中には当該第一駆動方
式を用い、当該コンピュータが内部電力で作動中には第二駆動方式が使用できる。
【0164】
(補正電圧法)
本発明の補正電圧法とその装置は、本発明の基本ルックアップテーブル法とその装置に
対して、さらなる変化を提供する。詳細は以下に記載する。
【0165】
既述の通り、本発明の補正電圧法とその装置は、非常に大規模なルックアップテーブル
を記憶する必要なしに、上記の基本ルックアップテーブル法と類似の結果の実現を試みる
ものである。ルックアップテーブルのサイズは、どのルックアップテーブルにインデック
スが付加されるかに関連して、先行状態数の増加に伴い急速に拡大する。そのため、既述
の通り、双安定型電気光学ディスプレイで希望の転移を実現するためのインパルスを選択
するに当って使用する先行状態数の増加には、実践上の制約やコスト上の制約が絡んでく
る。
【0166】
本発明の補正電圧法とその装置では、必要なルックアップテーブルのサイズは減少され
、ディスプレイの各画素について補正電圧データが記憶される。当該補正電圧データは、
当該画素に以前印加された少なくとも一つのインパルスに応じて 計算される。当該画素
に最終的に印加される電圧は、当該ルックアップテーブルから通常の方法で選択された駆
動電圧と、当該画素の補正電圧データから決定された補正電圧の合計である。実際に、当
該補正電圧データは、他の方法では一つかそれ以上の先行状態についてルックアップテー
ブルにインデックスを付加することで実行される「修正」を画素に加える。
【0167】
当該補正電圧法で使用されるルックアップテーブルは、前述のどの形態であってもよい
。したがって、当該ルックアップテーブルは、該当する転移について、画素の初期状態と
最終状態だけを考慮した単純な二次元テーブルでよい。または、当該ルックアップテーブ
ルは、画素の時間的先行状態あるいは画素の先行グレーレベル状態の一つかそれ以上を考
慮することもある。当該補正電圧は、該当する画素について記憶された補正電圧データの
みを考慮することもあるが、場合によっては一つかそれ以上の時間的先行状態あるいは先
行グレーレベル状態を考慮することもある。当該補正電圧は、駆動電圧が画素に印加され
る期間だけでなく、駆動電圧が印加されない停止期間中にも当該画素に印加できる。
【0168】
当該補正電圧データを決定する正確な方法は、使用する双安定型電気光学媒体の特性に
よって大幅に異なる可能性がある。一般的には、現行のスキャンフレーム中あるいは一つ
かそれ以上のスキャンフレーム中に当該画素に印加される駆動電圧で決められる方法で、
当該補正電圧データは定期的に変更される。本発明の好適な形態では、当該補正電圧デー
タは、各表示画素に対応した単一の数値(レジスタ)で構成される。
【0169】
本発明の好適な一実施例では、スキャンフレームは既述の方法でスーパーフレームにグ
ループ化されるので、ディスプレイの更新が開始されるのはスーパーフレームの開始時の
みである。一つのスーパーフレームは、例えば10個の表示スキャンフレームで構成する
ので、走査速度50Hzのディスプレイでは、一回のディスプレイ走査速度は20msと
なり、一回のスーパーフレーム走査速度は200msとなる。当該ディスプレイ更新中の
各スーパーフレームでは、各画素に対応した補正電圧データが更新される。当該更新は二
構成であり、順番は以下の通りである。
【0170】
(1)該当するスーパーフレーム中に印加されたパルスとは独立した固定アルゴリズム
を使用して、先行値を変更するステップと、
(2)該当するスーパーフレーム中に印加されたパルスにより決定される数値分だけ、
上記ステップ(1)の数値を増加するステップ。
【0171】
本発明の特に好適な一実施例では、ステップ(1)、(2)は以下のように実施される

【0172】
(1)先行値を、好都合にも2である固定定数で等分する。
【0173】
(2)該当するスーパーフレーム中に電気光学媒体に印加された電圧・時間曲線下の総
面積に比例した数値分だけ、上記ステップ(1)の数値を増加する。
【0174】
上記ステップ(2)では、増加分は該当するスーパーフレーム中に印加する電圧の電圧
・時間曲線下の面積に正確に比例しても、単におよそ比例するだけでもよい。例えば、以
下に図22を参照して詳述するように、当該増加分は、印加可能な全波形に関する有限集
合形の分類に「量子化」してもよい。ここで各分類は、二つの境界線に挟まれた総面積と
、印加波形が属する分類で決まるステップ(2)の増加分を有する全ての波形を包含する

【0175】
ここで、以下の一例を挙げる。使用されたディスプレイは2ビットのグレースケールに
よるマイクロカプセル式電気泳動ディスプレイ1台で、当該ディスプレイに使用された駆
動方式には、希望転移の初期状態と最終状態のみを考慮した、下記表7に示す二次元ルッ
クアップテーブルを使用した。当該表で、縦列の見出しは希望最終状態、行の見出しは初
期状態を示し、各マス目の数値は画素に既定の時間印加する電圧値をVで示したものであ
る。
【0176】
(表7)
【0177】
【表7】


本発明の補正電圧法を実行できるように、単一の数値で示すレジスタが各表示画素に割
り振られた。表7に示された様々なインパルスは分類され、表8に示すように、各インパ
ルスに付き一つのパルス分類が指定された。
【0178】
(表8)
【0179】
【表8】


各スーパーフレーム中に、各画素に対応した数値レジスタが2で等分され、次いで表1
3に示した当該スーパーフレーム中に該当する画素に印加するパルスの数値だけ増加され
た。当該スーパーフレーム中に各画素に印加された電圧は、表12に示す駆動電圧と下式
から得られる補正電圧Vcompとの合計である。
【0180】
comp = A*(画素レジスタ)
式中、画素レジスタの値は該当する画素に対応したレジスタから読み取った数値で、A
は所定の定数である。
【0181】
上記の本発明の好適な補正電圧法について実験室で実証実験を行った結果、平行電極間
に挟まれたマイクロカプセル式電気泳動媒体を用いた数台の単一画素ディスプレイは、黒
状態と白状態間で300msで+/-15 Vの方形波パルスで駆動された。ここで、前
側の平行電極は光伝達性のITOを用いた。当該ディスプレイは白状態から開始し、黒状
態へ移動され、滞留時間を開けた後、白状態へ戻された。添付図面の図22に示される通
り、最終白状態の明度は滞留状態の関数であることが判明した。したがって、当該マイク
ロカプセル式電気泳動媒体は滞留時間に対する感度が高く、白状態のL*は滞留時間の長
さによって約3単位変動した。
【0182】
本発明の補正電圧法の効果を提示するため、当該実験は繰り返えされたが、その際に、
各駆動パルスの終末から指数関数的に減衰する電圧で構成される補正電圧が各パルスに印
加された。当該印加電圧は、当該駆動電圧と当該補正電圧の合計であった。図22に示さ
れるように、無補正パルスに比べて、当該補正電圧を使った場合は、滞留時間が様々に変
化しても、白状態はより均一であった。このように、本発明による補正電圧を用いれば、
マイクロカプセル式電気泳動媒体の滞留時間に対する感度が著しく減少できることが、当
該実験により明らかとなった。
【0183】
本発明の補正電圧法は、前記の基本ルックアップテーブル法の何れの選択機能をも使う
ことができる。
【0184】
上述より、本発明によれば、電気光学ディスプレイの作動制御方法であって、双安定型
粒子型電気泳動ディスプレイ及び類似のディスプレイの特性によく適した制御方法を提供
できることが分るであろう。
【0185】
さらに上述より、本発明によれば、電気光学ディスプレイの作動制御方法であって、当
該ディスプレイ全体が一方の極度光学状態へ頻繁にフラッシングする都合の悪い状態を経
過することなく、グレースケールを正確に制御できる制御方法を提供できることが分るで
あろう。また本発明は、当該ディスプレイの温度や作動時間の変化に関らず、当該ディス
プレイの消費電力を下げつつ、当該ディスプレイの正確な制御を可能にする。本発明のコ
ントローラは市販の部品から構成できるので、上記の利点は安価で実現できる。
【0186】
(DTD積分減少法)
既述の通り、少なくとも場合によっては、一定の転移に必要なインパルスは、双安定型
電気光学ディスプレイではある光学状態下での画素の滞留時間によって異なることが判明
した。先行文献で取り上げられたことがないようである当該現象は、以下、「滞留時間依
存性」または「DTD」と呼ぶ。上述の性質ゆえに、ある転移に印加するインパルスを、
画素の初期光学状態での滞留時間の関数として変化させることが望ましい、あるいは実践
上、場合によっては、それが必要なこともあるだろう。
【0187】
滞留時間依存性という現象を、以下、添付図面の図23を参照して、さらに詳細に説明
する。図23は、R→R→Rで表す一連の転移について、画素の反射率を時間の関
数として示したもので、各々のR項はグレーレベルシーケンス中のあるグレーレベルを
表し、指数の大きなRは指数の小さなRに先行する。RからRへの転移とRからR
への転移も図示されている。DTDは、滞留時間と呼ばれる光学状態Rで経過した時
間の変動から生じる最終光学状態Rの変動である。本発明のDTD積分減少法は、双安
定型電気光学ディスプレイを駆動するにあたって滞留時間依存性を減少させる方法を提供
するものである。
【0188】
本発明はその起源について如何なる理論にも全く限定されないが、電気光学媒体により
経験される残留電場が、DTDの大きな原因になっているようである。当該残留電場は媒
体に印加された駆動パルスの残留パルスである。当該印加パルスに起因する残留電圧に関
する論議はよく普及しており、当該残留電圧は、単に、静電気学論に適合した通常の方法
で残留電場に相当するスカラポテンシャルである。当該残留電圧は、ディスプレイフィル
ムの光学状態を時間の経過と共にドリフトさせることがある。また、当該残留電圧は次に
印加する駆動電圧の有効性を変化させることもあるので、結果として当該後行パルス印加
後に実現される最終光学状態も変化させる。このように、一転移波形からの残留電圧は、
後行波形の印加後に得られる最終状態を、二つの転移が互いにかなり独立している場合の
最終状態とは異なったものにする可能性がある。「かなり独立している」というのは、第
一転移波形の残留電圧が第二転移波形の印加以前に実質的に減衰する程度に、二つの転移
が時間的に十分離れているという意味である。
【0189】
電気光学媒体に印加される転移波形やその他の単一パルスに起因する残留電圧の測定か
ら、当該残留電圧は時間の経過と共に減衰することが分っている。当該減衰は単調減衰で
あり、単純な指数関数的減衰ではないようである。しかし、まず得られる近似の結果によ
れば、検討したマイクロカプセル式電気泳動媒体の大部分について、1秒程度の減衰時間
定数の付いた指数関数に従うと考えられ、その他の双安定型電気光学媒体も同様の減衰時
間を示すものと予想される。
【0190】
したがって、本発明のDTD積分減少法は、少なくとも一画素を持ち、
【0191】
【数5】


(式中、Tは波形の長さを示し、積分は波形の継続期間にわたり、V(t)は時間tの関
数としての波形電圧で、M(t)は、ゼロ時に短パルスより派生する滞留時間依存性を誘
起するために、残留電圧の効果減少を特徴付けるメモリ関数である)が約1ボルト秒より
少なくなるような、画素への波形V(t)の印加より構成する双安定型電気光学ディスプ
レイの駆動方法も提供する。望ましくは、Jは約0.5ボルト秒以下で、最も望ましくは
約0.1ボルト秒以下が良い。実際、Jは出来るだけ小さな値、理想的にはゼロに設定す
るべきである。
【0192】
複合パルスを形成することによって、非常に低数値のJを提供し、その結果、DTDを
非常に小さくするように波形を設計することできる。例えば、短い正電圧のパルスに先行
する長い負電圧のパルス(電圧の振幅が同じで符号が異なる)はDTDを大幅に減少させ
る。(本発明はこうした意見に決して制限されることはないが)当該二つのパルスは符号
が逆の二つの残留電圧を残すと考えられている。二つのパルス長の比が正確に設定されて
いれば、二つのパルスの残留電圧は互いに互いの大部分を相殺することができる。当該二
つのパルス長の適切な割合は、当該残留電圧のメモリ関数で決定される。
【0193】
本発明の現在時点で好適な実施例では、Jは以下の式で計算される。
【0194】
【数6】


式中、τは実験的に求められた最適な減衰(緩和)時間を示す。
【0195】
ある種のマイクロカプセル式電気泳動媒体について、小さなJ値を生じる波形は特に低
数値のDTDを生じ、一方、J値が特に大きい波形はDTDも大きくすることが実験的に
分っている。事実、τを電圧パルス印加後の残留電圧の実測減衰時間とおよそ同じである
1秒に設定し、上記式(2)で計算した結果得られる複数のJ値間には良好な相関関係が
認められている。
【0196】
したがって、上述特許及び特許出願に記載された方法を、あるグレーレベルから他のグ
レーレベルへの各転移(または、少なくともルックアップテーブル内のほとんどの転移)
が低数値のJを生じる波形で実現される波形を用いて利用するのは効果的である。このJ
の値はゼロであることが望ましいが、少なくとも上述特許及び特許出願に記載されたマイ
クロカプセル式電気泳動媒体については、常温でJの値が約1ボルト秒未満である限り、
結果として生じる滞留時間依存性も非常に小さいことが実験的に分っている。
【0197】
上記の通り、本発明は一連の光学状態間の転移を実現するための波形として、どのよう
な転移についてもJの計算値が小さい波形を提供する。当該J値の計算は、単調減少する
と想定されるメモリ関数を用いて実施される。当該メモリ関数は任意に決定されるのでは
なく、ディスプレイフィルムの単一電圧パルスや複合電圧パルスに対する滞留時間依存性
を観察することで推定できる。例えば、第一光学状態から第二光学状態への転移を実現す
るため、ディスプレイフィルムに一電圧パルスを印加し、滞留時間を置いてから、さらに
二つ目の電圧パルスを印加して、第二電圧パルスから第三電圧パルスへの転移を実現する
方法がある。滞留時間の関数として第三光学状態での変化を観察することにより、メモリ
関数の形状が概略的に決定できる。当該メモリ関数は、滞留時間の関数として、第三光学
状態とその長い滞留時間値の差に大体類似した形態を有する。そうすると、当該メモリ関
数は上記の形態を印加され、その独立変数がゼロの時、単一の振幅を有することになる。
上記方法では当該メモリ関数が近似的に求められるだけであり、測定したメモリ関数の形
態は様々な最終光学状態に付き若干変化することが予想されるが、特有の減衰時間など、
当該メモリ関数の全体的な特性は種々の光学状態に対して同様であるはずである。しかし
ながら、最終光学状態によって形態に大きな差異が出るならば、採用に最も適したメモリ
関数の形態は、第三光学状態がディスプレイ媒体の光学範囲の中間の3分の1の領域にあ
る場合に得られるものである。電圧パルス印加後の残留電圧の減衰を測定すれば、当該メ
モリ関数の全体的特性が推定できるはずである。
【0198】
上述した当該メモリ関数の推定方法は精密なものではないが、おおよそのメモリから計
算されたJ値であっても、DTDの低い波形にはよい指針となることが分っている。上述
のように、有効なメモリ関数は、DTDの時間依存性の全体的特性を示す。例えば、1秒
の減衰時間で指数関数的なメモリ関数は、低いDTDを提供する波形を予測するのに有効
であることが分っている。減衰時間を0.7秒や1.3秒に変えても、DTDの低い波形
を予測する役割に対するJ値の有効性は損なわれない。しかし、減衰せず永久に1であり
続けるメモリ関数の当該予測効果の有効性はかなり低く、0.05秒などの非常に短い減
衰時間を有するメモリ関数はDTDの低い波形の予測には有効ではなかった。
【0199】
図19及び20の上記波形はJの値を小さくする波形の例であるが、これらの波形では
、x、y、zパルスはどれも持続時間がメモリ関数特有の減衰時間よりも著しく短い。当
該波形は符号が逆の連続したパルス要素で構成されており、当該パルス要素の残留電圧は
互いに殆ど相殺し合うので、上記条件が満たされている場合には、当該波形は有効に機能
する。当該メモリ関数特有の減衰時間よりも大幅に短くはないが、長くもないx値とy値
については、xとyの符号が逆である波形は小さなJ値を提供する傾向があることが分っ
ており、種々のパルス要素は、波形が印加された後に相殺し合う、または大幅に相殺し合
う残留電圧を生じるので、xとyパルスの持続時間が非常に小さなJ値を実際に許容する
こともある。
【0200】
波形に電圧ゼロの期間を挿入する、あるいは既に波形に存在する電圧ゼロのある期間の
長さを調節することによって、ある波形のJ値を変更できることは、以上から明白である
。このように、J値を常にゼロ付近に保ちつつ、様々な波形が使用できる。
【0201】
本発明のDTD積分減少法は広く適用できる。波形構造は工夫して複数のパラメータで
表現でき、当該パラメータの値に応じて当該波形のJ値を計算し、J値を最小にするため
に適切なパラメータ値を選択することで、波形のDTDが減少できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を有している双安定型電気光学ディスプレイを駆動する方法であって、該画
素の各々は、少なくとも3つのグレーレベルを表示可能であり、該方法は、
初期グレーレベルを最終グレーレベルに変換するのに必要なインパルスを表すデータを
含んでいるルックアップテーブルを保存することと、
該ディスプレイの各画素の少なくとも初期状態を表すデータを保存することと、
該ディスプレイの少なくとも1つの画素の希望最終状態を表す入力信号を受信すること
と、
ルックアップテーブルから決定されるように、該1つの画素の初期状態を希望最終状態
に変換するのに必要なインパルスを表す出力信号を生成することと
を包含し、
初期状態から最終状態への少なくとも1つの移行に対して、該出力信号は、DCバラン
ス不平衡の微同調シーケンスを含んでおり、該微同調シーケンスは、
(a)非ゼロの正味インパルスを有しており、
(b)非連続的であり、
(c)DC基準パルスが電圧Vのパルスであり、Vは該微同調シーケンスの間にお
いて印加される最大電圧であるが、該微同調シーケンスの正味インパルスGと同じ符号を
有しており、該基準パルスの継続時間がG/Vであるところの、DC基準パルスの光学
状態における変化と実質的に異なる該画素のグレーレベルにおける変化に終わり、
(d)時間基準パルスが該微同調シーケンスと同じ継続時間の単極電圧パルスとして規
定されており、該基準パルスの符号がグレーレベルにおいてより大きな変化を与えるもの
であるところの、該時間基準パルスによって引き起こされるグレーレベルにおける変化よ
りも大きさの点で小さい該画素のグレーレベルにおける変化に終わる、方法。
【請求項2】
複数の画素を有している双安定型電気光学ディスプレイを駆動する方法であって、該複
数画素の各々は、少なくとも3つのグレーレベルを表示可能であり、該方法は、該ディス
プレイの各画素に対して、初期状態から最終状態への該画素の変更に有効である出力信号
を適用することを包含し、該画素の初期状態と最終状態とが異なる少なくとも1つの移行
に対して、該出力信号は、+Vと−Vとのうちの同一のものの電圧レベルを有している少
なくとも二つのパルスの前および後において0の電圧レベルを有しているパルスからなる
、方法。
【請求項3】
複数の画素を有している双安定型電気光学ディスプレイを駆動する方法であって、該複
数の画素の各々は、少なくとも3つのグレーレベルを表示可能であり、該方法は、
初期グレーレベルを最終グレーレベルに変換するのに必要なインパルスを表すデータを
含んでいるルックアップテーブルを保存することと、
該ディスプレイの各画素の少なくとも初期状態を表すデータを保存することと、
該ディスプレイの少なくとも1つの画素の希望最終状態を表す入力信号を受信すること
と、
ルックアップテーブルから決定されるように、該1つの画素の初期状態を希望最終状態
に変換するのに必要なインパルスを表す出力信号を生成することと
を包含し、
初期状態から最終状態への少なくとも1つの移行に対して、該出力信号は、DCバラン
ス平衡の微同調シーケンスを含んでおり、該微同調シーケンスは、
(a)実質的にゼロの正味インパルスを有しており、
(b)該微同調シーケンスにおけるどの時点においても、該画素の該グレーレベルが、
該微同調シーケンス当初のグレーレベルから、該画素の二つの極端光学状態間のグレーレ
ベルの差の約3分の1よりも大きく変化することはない、方法。
【請求項4】
複数の画素を有している双安定型電気光学ディスプレイを駆動する方法であって、該複
数画素の各々は、少なくとも3つのグレーレベルを表示可能であり、該方法は、該ディス
プレイの各画素に対して、初期状態から最終状態への該画素の変更に有効である出力信号
を適用することを包含し、該少なくとも1つの移行に対して、該出力信号は、非ゼロであ
るがDCバランス平衡である、方法。
【請求項5】
少なくとも1つの画素を有している双安定型電気光学ディスプレイを駆動する方法であっ
て、該方法は、
【数7】


が約1ボルト秒未満であるように波形V(t)を該画素に適用することを包含し、
ここで、Tは該波形の長さであり、該積分は該波形の継続期間にわたり、V(t)は時
間tの関数としての波形電圧であり、M(t)は、時刻0において短パルスから生じる滞
留時間依存性を誘導するように、残留電圧の効果における減少を特徴付けるメモリ関数で
ある、方法。
【請求項6】
Jが、
【数8】


によって計算され、ここで、τが遅延(緩和)時間である、請求項5に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−133380(P2012−133380A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−22855(P2012−22855)
【出願日】平成24年2月6日(2012.2.6)
【分割の表示】特願2010−159213(P2010−159213)の分割
【原出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【出願人】(500080214)イー インク コーポレイション (148)
【Fターム(参考)】