説明

双方向通信回路、双方向通信システム及び双方向通信回路の通信方法

【課題】伝送効率を向上させることができる双方向通信回路、双方向通信システム及び双方向通信回路の通信方法を提供すること。
【解決手段】双方向通信回路10は、半二重通信を行うケーブルの一端に接続される。この双方向通信回路10は、送受信方向を切り替える切替指示信号を含む制御信号を格納する制御用レジスタ40と、制御用レジスタ40に格納された制御信号に基づきタイミングの管理を行なう通信コントローラ30と、制御信号に基づき通信コントローラ30の指示に応じて周期的に送受信方向を切り替える送受信回路20とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PC、デジタル家電、車内映像機器などのデジタル製品で採用されるネットワークおよびインタフェース技術、例えばIEEE1394、HDMI(High Definition Multimedia Interface)などに好適な双方向通信回路、双方向通信システム及び双方向通信回路の通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、映像アプリケーションのデジタル化が加速し、それに伴い映像を物理的に伝送する伝送路もデジタル化が進んでいる。デジタルインタフェース技術としてはIEEE1394、HDMIなどが採用され、ネットワーク技術としてはEthernet(登録商標)などが採用されている。これらの方式においては、データ伝送のための調停信号、再送、データ間のアイドル期間などにより、伝送効率が最大限に引き出せてないという課題がある。
【0003】
図10に示すように、一般的なピンポン伝送では、送受信を交互に繰り返し、1線又は一対の伝送路を用いて情報交換を行う。ここで、送信対受信は一対一の比率である。
【0004】
これに対し、特許文献1においては、連続して送信、連続して受信することで、送信対受信の比率を変更できることを特徴とするピンポン伝送方法が開示されている。このピンポン伝送方法においては、先頭ビットが「1」のときには送信を継続する。また、先頭ビットが「0」のときには、送受信を変更する。図11は、特許文献1に記載のデータ転送方法を示す図である。図11においては、送信の2回目に先頭ビットを「0」として、送受信を切り替え、次に対向装置が送信となるが、対向装置において2回目に先頭ビットを「0」として、送受信を切り替えている。これで、再び元の装置が送信となるが、3回目の先頭ビットを「0」として、送受信を切り替えている。送信を継続するときには先頭ビットを「1」としている。
【0005】
また、特許文献2に記載のデータ転送制御装置は、パケットデータの後にホスト側装置が転送方向要求コードを送信し、ターゲット側装置がそれを検出することで転送方向の切り替えが可能な構成を有する。すなわち、データ転送制御装置は、シリアル信号線を介してデータを送信するトランスミッタ回路と、シリアル信号線を介してデータを受信するレシーバ回路と、転送方向の切り替えを行う転送方向切り替え回路と、転送方向の切り替えを指示する転送方向切り替え指示回路と、上層の回路から転送方向切り替え要求がきた場合に、転送方向切り替え要求コードを生成するコード生成回路を含む。そして、上層の回路から転送方向切り替え要求が来た場合に、トランスミッタ回路が、転送方向切り替え要求コードをシリアル信号線を介して送信し、転送方向切り替え要求コードの送信後に転送方向切り替え指示回路が、送信方向から受信方向への切り替えを転送方向切り替え回路に指示する。この構成により、転送方向の切替タイミングにおいてシリアル信号線に2つのトランスミッタ回路が接続されてしまうなどの事態を防止する。
【0006】
更に、特許文献3には、同一装置内にあり、かつ同一クロック信号が共通に与えられるマスタ論理回路とスレーブ論理回路の間の双方向シリアルデータ伝送方法において、マスタ論理回路よりスレーブ論理回路に伝送するシリアルデータ中に同期情報とは別に伝送方向制御パターンよりなるヘッダを挿入し、スレーブ論理回路において方向制御パターンよりなるヘッダを検出すると、スレーブ論理回路が一定時間だけ受信モードから送信モードに切り替わり逆方向伝送を行ってデータ伝送をクロック線を除く1本の信号線で行なう方法が開示されている。
【特許文献1】特開平09−098200号公報
【特許文献2】特開2005−260361号公報
【特許文献3】特開昭61−169037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、先ず、図12に示すように、送信単位が大きいときには、データが送信されない領域があるために帯域にムダが生じる。図12においては、太線が実際の送受信データを示しているが、これは送受信のスロットの一部を使っているだけなので、帯域にムダ(データ送受信に使っていない領域)が生じている。
【0008】
さらに、送信単位が小さいときには、送受信の切り替えを示すビットの影響が大きくなり、伝送効率が落ちる。図13において、送信単位が小さいため、全体に対する先頭ビットの比率が大きくなっている。
【0009】
このように、連続送信又は連続受信が可能であるが、1バースト当たりの送信時間、受信時間は変わらないため、送信データ量又は受信データ量が少ない場合でも同一のバースト時間を費やすために無駄な時間が生じる。そして、各送信データの先頭ビットに送信切り替え用のビットを付加するために、送信単位が小さいときは、送信データ全体に占める切り替え用のビットの割合が大きくなり伝送効率が低下するという問題点がある。
【0010】
また、応用システムにおいては、要求される機能が異なり、例えば、表示システム、例えばPC(Personal Computer)とモニタの接続、デジタルTVとチューナーの接続などでは表示装置(ディスプレイ、モニタ)が本体(TV,PC)を自主的に制御する必要はないが、車載LAN(Local Area Network)などにおいては、双方向通信が要求される。例えば、カーナビ(Car Navigation)とカメラ映像処理ユニットが相互に連携して、一つのアプリケーションを実現することが想定される。このとき、スレーブ(ターゲット装置)からも送信権を獲得する方式が必要となる。
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、送信、受信の切り替えは主局側が制御し、従局は制御することができない。また、特許文献2に記載のデータ転送制御装置は、ターゲットが自ら送信権を獲得することができない。すなわち、ホストとターゲットのいずれからも転送方向の制御を必要とするアプリケーションには適さない。さらに、特許文献3に記載の双方向シリアルデータ転送方法は、マスタ側が伝送方向制御パターンを送信するだけであり、スレーブ側が自主的に送信権を獲得することができない。スレーブからマスタへの送信時間は決まっており、スレーブ自らが送信時間を任意に設定及び変更することができないという問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る双方向通信回路は、半二重通信を行うケーブルの一端に接続された双方向通信回路であって、送受信方向を切り替える切替指示情報を含む制御信号を格納する制御用レジスタと、前記制御用レジスタに格納された前記制御信号に基づきタイミングの管理を行なう通信コントローラと、前記制御信号に基づき前記通信コントローラの指示に応じて周期的に送受信方向を切り替える送受信回路とを有するものである。
【0013】
本発明に係る双方向通信システムは、半二重通信を行うケーブルの両端にそれぞれ接続された双方向通信回路を有し、前記双方向通信回路の少なくとも一方は、送受信方向を切り替える切替指示情報を含む制御信号を格納する制御用レジスタと、前記制御用レジスタに格納された前記制御信号に基づきタイミングの管理を行なう通信コントローラと、前記制御信号に基づき前記通信コントローラの指示に応じて周期的に送受信方向を切り替える送受信回路とを有するものである。
【0014】
本発明においては、送受信方向を切り替える切替指示情報を含む制御信号を周期的にやり取りすることでケーブルに接続された両装置が送受信方向を周期的に切り替え、送信権を獲得することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、伝送効率を向上させることができる双方向通信回路、双方向通信システム及び双方向通信回路の通信方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
実施の形態1.
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。上述したように、例えばカーナビとカメラ映像処理ユニットが相互に連携して、一つのアプリケーションを実現する場合、スレーブ(ターゲット装置)からも送信権を獲得する方式が必要となる。先ず、カメラデータ処理システムを例にとって、本実施の形態の概要について説明する。図1は、カメラデータ処理システムを示す図である。カメラデータ処理システムは、カメラ101と処理ユニット102との間においてデータを双方向伝送することで実現する。この場合、カメラ101から処理ユニット102方向へのデータ転送帯域を多く確保し、双方向の制御信号も含めて高い伝送効率を確保することが望まれる。なお、本実施の形態においては、送受信方向を切り替える切替指示情報を含む制御信号を周期的にやり取りすることで送受信方向を切り替えるものであるが、以下の説明においては、この制御信号と区別するため、カメラからの映像データなどアプリケーションのデータを処理データということとする。
【0017】
図2は、本実施の形態にかかるカメラデータ処理システムにおける送受信の手順を示す図である。図2に示すように、先ずカメラ101から処理ユニット102に映像データ(処理データ)DATAが送られる(S1)。次に、カメラ101からの切り替え信号の役割を兼ねる制御信号が処理ユニット102に送られる(S2)。これにより、送信権が処理ユニット102に移り、制御信号がカメラに向けて送られる(S3)。制御信号は送受信方向を切り替える切替指示情報を含むため、制御信号の受信により送信の切り替えが起きる。再び、送信権がカメラ101に移り、映像データが送信される(S4)。続いて(S2)、(S3)と同様に映像データ及び制御信号を送信する。
【0018】
本実施の形態においては、このように、ターゲットとなるカメラ101と、マスタ装置(ホスト装置ともいう。)となる処理ユニット102との間で周期的に切り替え信号の役割を有する制御信号(CTRL)をやりとりすることで、ターゲット装置であるカメラ101においても常に送信権を獲得させる。後述するように、制御信号には、送受信の方向を切り替える指示(切替指示情報)が含まれており、周期的に制御信号をやりとりすることで、ターゲットであっても自主的に送信権を獲得して送信することができる。
【0019】
次に、本実施の形態にかかる双方向通信回路について詳細に説明する。図3は、本実施の形態にかかる双方向通信システムを示す図である。また、図4は、データ通信のための送受信のタイミングを示す図であって、上図が図3の装置Aの送受信切り替えのメカニズムで、下図が装置Bの送受信の切り替えのメカニズムを示している。
【0020】
送受信システム1は、装置Aと装置Bが1線又は1対のケーブルによって接続される。ケーブルは、例えば差動一対の伝送路を使用することができる。差動2対を用いることで双方向通信が可能となるが、コスト要求の厳しい分野では、差動一対のケーブルを用いることが有効である。
【0021】
本実施の形態においては、装置Aと装置Bとは同一構成としている。ここでは装置Aについて説明する。なお、後述するように、装置Aと装置Bとは異なる構成としてもよい。
【0022】
装置Aは、アプリケーションを実現するプロセッサなどの上位LSI(Large Scale Integrated circuit)(アプリケーション回路ともいう。)11と、双方向通信回路10とからなる。双方向通信回路10は、差動一対におけるデータ通信を実現する回路で、通信コントローラ30、制御用レジスタ(CTRL Register)40、送受信回路20とを有する。なお、制御用レジスタ40は通信コントローラ30内に設けられていてもよい。
【0023】
通信コントローラ30は、バッファ回路(Buffer)31、サイクル管理回路(Cycle manager)32、タイマ回路(Timer)35、制御信号管理回路(CTRL manager)36、制御信号送信回路(CTRL TX)33、制御信号受信回路(CTRL RX)34を有する。
【0024】
バッファ回路31は、送受信データを一時蓄積する。サイクル管理回路32は、通信のタイミングを制御する。タイマ回路35は、サイクル管理回路32が時間の経過を参照するための参照用の基準タイマである。制御信号管理回路36は、制御用レジスタ40への書き込み・読み出しを管理し、サイクル管理回路が指定するタイミングに応じて制御信号(CTRL)を送受信回路20に入出力する。制御信号送信回路33は制御信号を送信する。制御信号受信回路34は制御信号(CTRL)を受信する。
【0025】
制御信号(CTRL)を送信する場合は、制御信号管理回路36が制御用レジスタ40の値を取り出し、サイクル管理回路32から指示のあるタイミングに合わせて制御用レジスタ40から取り出した制御信号(CTRL)をバッファ回路31へ引き渡す。サイクル管理回路32により制御用レジスタ40から制御信号が周期的に取り出されてバッファ回路31へ送られる。受信の際には、サイクル管理回路32の管理のもと、制御信号管理回路36がバッファ回路31の制御信号(CTRL)を検出し、取り出し、制御用レジスタ40へ格納する。ここで、制御信号送信回路33及び制御信号受信回路34は、制御信号管理回路36内に設けられていてもよい。
【0026】
制御用レジスタ40は、図4に示す送信タイミングの制御信号(CTRL)を格納するレジスタで、対向装置(装置Aの対向装置は装置B)からの制御信号(CTRL)がバッファ回路31、制御信号受信回路34、制御信号管理回路36を介して書き込まれる。また、上位LSI11からもアクセス可能で、上位LSI11からの要求に応じて制御信号(CTRL)が書き込まれる。また、対向装置から送られてきた制御信号(CTRL)は上位LSI11に通知される。
【0027】
送受信回路20は、送信回路(DRV)21、レシーバ回路(REC)22、クロックデータリカバリー回路(CDR)63、データ変換回路24を有する。送信回路21はデータを送信する。レシーバ回路22はデータを受信する。CDR23は、入力されたシリアルデータをサンプリングするためのクロックを生成する。データ変換回路24は、データ送信時のパラレルデータをシリアルデータへ変換するパラレル−シリアル変換器(P/S)、及びデータ受信時のシリアルデータをパラレルデータへ変換するシリアル−パラレル変換回路(S/P)の両方の回路を有する。
【0028】
この送受信回路20は、送信受信のモードを切り替えられることを特徴とする。送信モードでは、レシーバ回路22を無効にし、送信回路21がシリアル化された信号を出力する。また、受信モードのときは、送信回路21は未使用となり、レシーバ回路22が有効となる。受信モードでは、ケーブルに対して電流を送出せず、また電流を引き込まず、ハイインピーダンス状態とする。
【0029】
次に、本実施の形態にかかる双方向通信システムの動作について説明する。ここでは、
(1)データ通信
(2)マスタ、ターゲットの設定
(3)送受信のタイミング
(4)制御信号
の順に説明する。
【0030】
(1)データ通信
装置Aは送信期間において、通信コントローラ30は、上位LSI11から送られてくる送信データ(処理データ)を送受信回路20へ送出し、データ送信が終了したら制御信号(CTRL)を付加して送出する。上述したように、この制御信号(CTRL)は送受信モードの切替指示情報を含む。制御信号が付加された処理データは、バッファ回路31から送受信回路20のデータ変換回路24に送られてシリアルデータに変換された後、送信回路(DRV)21によって、伝送路に送出される。通信コントローラ30は、制御信号の送信が終了したら、送信回路DRV21を無効にし、レシーバ回路REC12を有効にすることで、送受信回路20を送信モードから受信モードに切り替えて受信期間に入る。
【0031】
制御信号(CTRL)を検出した装置Bは受信モードから送信モードに切り替える。これにより装置Bが送信権を獲得したことになり、装置Aに対して処理データおよび制御信号の送信が可能となる。具体的には、装置Bに到達した処理データ及び制御信号(CTRL)は送受信回路60内の受信回路(REC)61によって受信され、クロックデータリカバリー回路(CDR)63に入力される。ここでは入力されたシリアルデータをサンプリングするためのクロックが生成される。さらに、データ変換回路64により処理データがシリアルデータからパラレルデータに変換されたのち、通信コントローラ70内のバッファ回路71に一時蓄積される。バッファ回路71から制御信号受信回路73に入力されて制御信号(CTRL)の検出が行われ、検出された制御信号は、制御信号管理回路76により制御用レジスタ80に登録されることにより、上位LSI51から読み出し可能となる。
【0032】
制御信号(CTRL)検出後、予め設定されたIDLE時間の後、制御信号管理回路76の制御により送受信回路が送信モードに設定される。ここで、送信期間、受信期間、IDLE時間は、制御用レジスタ80に登録される。サイクル管理回路72がこの制御用レジスタ80の値を読み出し、タイマ回路75のタイマ値を参照しながら送信期間、受信期間、IDLE期間を示す信号を生成し、バッファ回路71及び制御信号管理回路76にタイミング通知を行なう。
【0033】
装置Bは上位LSI51から送られてくるデータを送出し、最後に制御信号(CTRL)を付加する。この場合、制御用レジスタ80に登録されている制御信号(CTRL)を制御信号管理回路76が読み取り、サイクル管理回路72のタイミング指示に基づき、制御信号(CTRL)を制御信号送信回路73を使用してバッファ回路71に入力する。これにより図4に示すように、データの後に制御信号(CTRL)を付加する。送信が完了したら、制御信号管理回路76の制御により送受信回路60が送信モードから受信モードに切り替わる。その後は、上記手順の繰り返しとなる。これにより、装置A、装置Bは予め設定されたタイミングのもと交互に周期的にデータ転送を実施することができる。周期的にデータ及び制御信号(CTRL)をやり取りすることで、装置Aと装置Bとの間で、後述するように、いずれかマスタかターゲットかにかかわらず送信権を周期的にやり取りすることができる。
【0034】
このように、本実施の形態においては、データ送信の最後に、送受信方向を切り替える切り替え信号となる制御信号を付加することで、データの送信が終わったらすぐに送受信を切り替える。すなわち、従来のように先頭ビットは利用せず、パケットの最後に切り替え信号を付加するが、切り替え信号にアプリケーションで使われる制御信号を割り当てる。こうして送受信をタイムリに切り替えるため、利用しない帯域は存在せず、アプリケーションは物理的な伝送路を効率的に利用できることになる。また、マスタ装置が制御信号により送信期間、受信期間、IDLE期間を設定することで、送受信期間やデータのやり取りをしないIDLE期間を管理することができる。
【0035】
(2)マスタ、ターゲットの設定
電源投入後、又はリセット後に装置A、装置Bはマスタ、ターゲットのいずれかに設定される。両方がマスタになること、又は両方がターゲットになることはない。マスタは送受信のタイミングを主体的に管理し、ターゲットは必要に応じてタイミング変更要求をマスタへ送る。このマスタ、スレーブの設定については、図5に示すHighの区間及びLowの区間の周期が長い方がマスタとなる。すなわち、この周期を設定することでマスタとターゲットを決定する。この周期は、例えば、当該周期を決定するレジスタを制御用レジスタ40内に用意し、上位LSI11からこの周期を設定できるようにしておけばよい。すなわち、マスタになりたい装置がそれに応じた周期設定をするようにすればよい。
【0036】
ここで、自装置がマスタかスレーブかの判断は以下のように行なう。装置A、装置Bは電源投入後、予めそれぞれの装置で設定された時間に応じてHigh区間(1)、Low区間(0)の出力を繰り返す。装置A、装置Bから送出されるレベルが合成され、ケーブルの電位が決定される。本実施の形態においては、上述のように、送受信モードが切り替わることから、ケーブルの電位は図5のような合成波形となる。お互いがHighレベルを送出するときには、ケーブルの電位はHighとなり、お互いがLowレベルを送出するときには、ケーブルの電位はLowとなる。さらに、お互いのレベルが異なるときには、ケーブルの出にはHighとLowの中間のレベルZとなる。
【0037】
送受信回路20、60によってこのケーブルレベル(0、Z、1)をモニタすることで、図5(a)に示すように、装置Aにおいては装置Bの出力を、また装置Bにおいては装置Aの出力を復元する。この復元は、図5(b)の表に基づき行なうことができる。自装置の出力と、受信信号をもとに、対向装置が出力している信号を復元する。例えば、自装置が"1(High)"を出力中に、受信信号がZ(HighとLowの中間レベル)になっている場合、対向装置は"0(Low)"を出力しているとみなすことができる。また、例えば自装置が"0(Low)"を出力中に、受信信号がZであれば、対向装置は"1(High)"を出力しているとみなすことができる。こうして復元波形を復元することができる。そして、自装置の出力サイクルと、対向装置の出力サイクルを比較して、周期の長い方をマスターと判断する。
【0038】
なお、本実施の形態においては、マスタ決定手順と、周期的なデータ転送手順とは分離している。すなわち、マスタが決定した後、データ転送が開始されるため、本方式(IEEE1394(Institute of Electrical and Electronic Engineers 1394))以外のマスタ決定方式を用いてもよい。
【0039】
(3)送受信のタイミング
マスタ装置は、電源投入後、リセット後、一連のパケット転送の前、又はパケット転送間に送受信のタイミングの設定を行なう。具体的には、図4の送信期間、IDLE期間、受信期間を設定する。ここで、送信期間は、データ及び制御信号(CTRL)を送信する期間であり、受信期間は、送信禁止の期間である。また、IDLE期間は、送信も受信も行わない期間である。
【0040】
ここで、この設定は、マスタ装置がその装置の上位LSIからの指示に基づき行なう。ターゲット装置が時間の設定を行なわないのは、両装置で同時に時間の設定を行なうと、設定のずれ等を生じるためである。なお、本実施の形態においては、装置Aがマスタ、装置Bがターゲットとして説明しているため、装置Aが期間の設定が可能として説明しているが、装置Bがマスタになった場合は、装置Bが期間の設定をすることができる。
【0041】
上位LSI11は、制御用レジスタ40にタイミング情報を書き込む。値としては、下記表1の上位LSIからのタイミング通知のCTRLの欄の値(CTRLコード)を制御用レジスタ40に書き込む。サイクル管理回路32はこの制御用レジスタ40の値に従って、送信期間、受信期間、及びIDLE期間を管理する。すなわち、サイクル管理回路32は、タイマ回路35の時間を参照して、バッファ回路31および制御信号管理回路36に時間情報を通知する。バッファ回路31、制御信号管理回路36はこの時間に合わせてデータ送信、制御信号の送信を実施し、制御信号管理回路36はさらに、送受信回路20に送受信切り替え信号を送信し、送受信の切り替えを指示する。これらにより、結果的に、図4に示すタイミングを実現することができる。
【0042】
【表1】

【0043】
また、マスタ装置の上位LSIの指示からだけでなく、ターゲット装置からマスタ装置にタイミング変更要求を出して変更することも可能である。表1に示すCTRLの値を、ターゲットからのタイミング変更要求のCTRLを制御信号として送ることで、送信期間、受信期間、IDLE期間のタイミングを変更することができる。
【0044】
手順の違いとしては、上位LSIからの指示の場合には制御用レジスタ40に上位LSI11から書き込まれるが、ターゲット装置が要求を出す場合には、(1)のデータ通信の手順で送出される制御信号に表1のターゲットからのタイミング変更要求の制御信号(CTRL)のコードを使用し、マスタ装置では受信した制御信号がバッファ回路31、制御信号受信回路34、制御信号管理回路36を介して制御用レジスタ40に書き込まれる。その後の管理手順は同じである。
【0045】
(4)制御信号
制御信号の基本的な役割は送受信の切り替えにあるが、上述したように、対向装置からのタイミングの変更要求を行なう役割も有する。制御信号により送受信の切替を行なうことができるため、上述した(1)のデータ通信が実現できる。
【0046】
すなわち、上記表1に記載している制御信号は少なくとも送受信の切替指示情報を有する。この送受信の切替指示は、例えば制御信号の最初の4bit(1010)で通知することができる。これを検出した装置は送信受信の切り替え処理を実施する。データ中の1010ビットを制御信号と誤認識する可能性があるが、一般的に使われている8B10B符号化により、この配列(1010)を使用しないように実装すれば、誤動作を回避することができる。
【0047】
さらに、マスタからターゲットへのタイミング通知、ターゲットからマスタへのタイミング変更要求、上位アプリケーションからの制御指示・通知、受信確認などのメッセージを含めることができる。これらは上記送受信切替の4bitに続く8bitで通知することができる。特別なメッセージを含めない場合は、メッセージなしの切替指示のみの制御信号(1010 0000 0001)を利用することができる。
【0048】
アプリケーション制御指示・通知は、マスタの上位LSI11から制御用レジスタ40に設定される制御信号、又はターゲットの上位LSI51から制御用レジスタ80に設定される制御信号であり、例えばマスタの上位LSI11はカメラズーム指示やカメラ解像度設定などをターゲットに設定することができる。一方、ターゲットの上位LSI51はカメラのステータス報告などをマスタに設定することができる。また、マスタであってもターゲットであってもアプリケーション受信確認を行なうことができるが、表1においては、当該カメラズーム指示やカメラ解像度設定などを受信した場合は受信成功を示す制御信号をターゲットの上位LSI51の指示のもと制御信号として送る例を示している。
【0049】
本実施の形態においては、双方向伝送システムにおいて不要な伝送時間を削減でき、伝送効率を向上させることができる。すなわち、ターゲット装置が受信状態から送信状態へ変更するための制御信号を周期的に送信することにより、ターゲット装置が送信側となってデータ送信し、マスタ装置を受信側としてデータを受信させることが可能となる。従って、上述したような双方向伝送の応用システムで、処理ユニット側から伝送方向を切替える制御信号を送信し、これを受信したカメラは送受信モードを受信から送信に切替えることが可能となる。すなわち、処理ユニットはカメラに送信権を与えることができるので、ターゲットとなるカメラが自ら送信権を有することとなる。このことにより、不要な伝送時間を削減でき、伝送効率を向上させることができる。なお、カメラ及び処理ユニットのいずれをマスタ装置又はターゲット装置に設定するかについては、本実施の形態に限定されず、用途に応じて決めればよい。
【0050】
また、スレーブ(ターゲット装置)からも送信権を獲得することが可能となるため、マスタとターゲットのいずれからも転送方向の制御が可能である。さらに、制御信号により、スレーブ自らがマスタに対して送信時間を任意に設定及び変更することも可能である。
【0051】
実施の形態2.
図6は、実施の形態2にかかる送受信システム1bを示す図である。なお、図6に示す実施の形態2及び後述する図7に示す実施の形態3において、図3に示す実施の形態1にかかる送受信システムと同一構成要素には同一の符号を付してその説明は省略する。本実施の形態2においては、実施の形態1に対して装置Bをターゲット専用装置にしたものである。装置Bがターゲット専用装置である場合には、送受信のタイミングを自ら管理する必要がないため、サイクル管理回路72及びタイマ回路75を搭載していない。動作は、マスタ、ターゲットを設定する手順は省くことができる他は実施の形態1と同様である。
【0052】
実施の形態3.
次に、実施の形態3について説明する。図7は、実施の形態3にかかる送受信システム1cを示す図である。実施の形態3は、データ送信の方向が装置Aから装置Bの方向に限られる場合である。制御信号については、双方向に送受信を実施する。これは、装置Bが短いメッセージ、つまり制御信号だけを送信できれば十分なアプリケーションのときに有効である。バッファ回路31、71の入出力が片方向だけに限られる。
【0053】
図8に示すように、装置Bはデータを送出せず、制御信号のみを送出している。データを送出しない点以外を除いて、全体の切り替えの手順としては実施の形態1と同様である。
【0054】
実施の形態4.
次に、実施の形態4について説明する。図9は、実施の形態4にかかる送受信システムを示す図である。実施の形態4においては、実施の形態1乃至3のように一対一の通信ではなく、ネットワークに拡張した場合を示す。通信装置110、120、130、140、150は、それぞれ上位アプリケーション回路(上位LSI)111、121、131、141、151と双方向通信回路113乃至115、123及び124、133、143、153との間にそれぞれネットワーク制御回路112、122、132、142、152を挿入すれば、ネットワーク化が可能となる。本実施の形態では、通信制御を双方向通信回路113〜115、123及び124、133、143、153内ですべて管理しているため、ネットワーク制御回路112、122、132、142、152についてはIEEE802.1で定義されるような一般的なブリッジ回路を用いた構成が可能である。
【0055】
ここで、双方向通信回路113と123、124と133、114と143、115と153とで双方向通信が行われることになり、これらの双方向通信回路におけるいずれか一方がマスタ、他方がターゲットとなる。マスタとターゲットは、上述したように、周期的に制御信号をやり取りすることで送信権を受け渡すことができる。
【0056】
なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態にかかるカメラデータ処理システムを示す図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかるカメラデータ処理システムにおける送受信の手順を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる双方向通信システムを示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1にかかる双方向通信システムの送受信のタイミングを示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1にかかるマスタ及びスレーブの設定方法を説明する図であって、(a)は、対向装置の復元波形を示す図、(b)は自装置及びケーブルの電位と対向装置の出力との関係を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2にかかる送受信システムを示す図である。
【図7】本発明の実施の形態3にかかる送受信システムを示す図である。
【図8】本発明の実施の形態2にかかる双方向通信システムの送受信のタイミングを示す図である。
【図9】本発明の実施の形態4にかかる送受信システムを示す図である。
【図10】一般的なピンポン伝送を示す図である。
【図11】特許文献1に記載のデータ転送方法を示す図である。
【図12】特許文献1に記載のデータ転送方法であって、送信単位が大きいときのデータ転送方法を説明する図である。
【図13】特許文献1に記載のデータ転送方法であって、送信単位が小さいときのデータ転送方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0058】
10 双方向通信回路
11、51、111、121、131、141、151 上位LSI
20、60 送受信回路
21、61 送信回路
22、62 レシーバ回路
24、64 データ変換回路
30、70 通信コントローラ
31、71 バッファ回路
32、72 サイクル管理回路
33、73 制御信号送信回路
34、73 制御信号受信回路
35、75 タイマ回路
36、76 制御信号管理回路
40、80 制御用レジスタ
101 カメラ
102 処理ユニット
112、122、132、142、152 ネットワーク制御回路
113〜115、123、124、133、143、153 双方向通信回路
110、120、130、140、150 通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半二重通信を行うケーブルの一端に接続された双方向通信回路であって、
送受信方向を切り替える切替指示情報を含む制御信号を格納する制御用レジスタと、
前記制御用レジスタに格納された前記制御信号に基づきタイミングの管理を行なう通信コントローラと、
前記制御信号に基づき前記通信コントローラの指示に応じて周期的に送受信方向を切り替える送受信回路とを有する双方向通信回路。
【請求項2】
前記通信コントローラは、前記送受信回路を介して前記制御信号を送信させると当該送受信回路を送信モードから受信モードに切り替える
ことを特徴とする請求項1記載の双方向通信回路。
【請求項3】
前記送受信回路は、処理データに前記制御信号を付加して送信する
ことを特徴とする請求項1記載の双方向通信回路。
【請求項4】
前記制御信号は、送信期間及び受信期間の指定を含み、前記通信コントローラは、前記制御信号に基づき各期間のタイミングを管理する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の双方向通信回路。
【請求項5】
前記制御信号は、送受信を行わないアイドル期間の指定を含み、前記通信コントローラは、前記制御信号に基づき当該アイドル期間のタイミングを管理する
ことを特徴とする請求項4記載の双方向通信回路。
【請求項6】
前記制御信号は、ターゲット装置からマスタ装置へのタイミング変更要求を含み、前記通信コントローラは、前記制御信号に基づき、送受信期間のタイミングを変更する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の双方向通信回路。
【請求項7】
前記通信コントローラは、通信タイミングを制御するサイクル管理部と、前記サイクル管理部が指定するタイミングに応じて制御信号を周期的に前記送受信回路に入出力する制御信号管理部とを有する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の双方向通信回路。
【請求項8】
前記送受信回路は、データを送信する送信回路と、データを受信する受信回路と、データ送信時にパラレルシリアル変換しデータ受信時にシリアルパラレル変換するデータ変換回路とを有する
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の双方向通信回路。
【請求項9】
半二重通信を行うケーブルの両端にそれぞれ接続された双方向通信回路を有し、
前記双方向通信回路の少なくとも一方は、
送受信方向を切り替える切替指示信号を含む制御信号を格納する制御用レジスタと、
前記制御用レジスタに格納された前記制御信号に基づきタイミングの管理を行なう通信コントローラと、
前記制御信号に基づき前記通信コントローラの指示に応じて周期的に送受信方向を切り替える送受信回路とを有する双方向通信システム。
【請求項10】
前記双方向通信回路の他方は、
送受信方向を切り替える切替指示情報を含む制御信号を格納する制御用レジスタと、
前記制御信号を送信し、及び前記一方の双方向通信回路からの制御信号を受信する送受信回路と、
前記制御用レジスタに格納された制御信号に基づき前記送受信回路を制御する通信コントローラとを有する
ことを特徴とする請求項9記載の双方向通信システム。
【請求項11】
前記通信コントローラは、上位LSIからのデータ又は制御信号を格納し送受信回路に出力するバッファを有する
ことを特徴とする請求項9記載の双方向通信システム。
【請求項12】
前記バッファは前記送受信回路に入力されたデータ又は制御信号を前記上位LSIに出力する
ことを特徴とする請求項11記載の双方向通信システム。
【請求項13】
半二重通信を行うケーブルの一端に接続された双方向通信回路の通信方法であって、
前記ケーブルの他端に接続された双方向通信回路から、送受信方向を切り替える切替指示情報を含む第1の制御信号を送受信回路により受信し、
前記第1の制御信号に基づき前記送受信回路を送信モードに切り替え、
前記送受信回路により送受信方向を切り替える切替指示信号を含む第2の制御信号を送信して当該送受信回路を受信モードに切り替える一連の動作を周期的に繰り返す双方向通信回路の通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−141525(P2008−141525A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326106(P2006−326106)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】