説明

反すう動物用ルーメンバイパス剤

【課題】
生物学的活性物質を微生物が生息している反すう動物の第1胃で安定に保護し、第4胃以降の下部消化器官で効率良く放出させることである。
【解決手段】
生物学的活性物質を、硬化した動・植物性油脂、炭素数12〜22個を有する直鎖又は分岐状の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸、脂肪族エステル、ロウ及びワックスより選択される少なくとも1種の被覆剤と、レシチン及びプロピオン酸又はその塩、ソルビン酸又はその塩、安息香酸又はその塩、デヒドロ酢酸又はその塩、パラオキシ安息香酸エステル類、イマザリル、チアベンダゾール、オルトフェニルフェノール、オルトフェニルフェノールナトリウム及びジフェニルより選択される少なくとも1種の防腐剤で被覆することを特徴とする反すう動物用ルーメンバイパス剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反すう動物用飼料添加組成物に属する。さらに詳しくは、生物学的活性物質を反すう動物の第1胃(ルーメン)では安定に保護し、第4胃以降の下部消化器官で放出可能にする被覆組成物で被覆した、反すう動物用ルーメンバイパス剤に関する。
【背景技術】
【0002】
牛などの反すう動物は、ヒトなどの単胃動物とは異なり複数の胃が存在し、その第1胃には多数の微生物が生息している。そのため、反すう動物に無処理の生物学的活性物質を経口投与しても、微生物により大部分が分解され有効利用されない。
【0003】
生物学的活性物質を反すう動物の第1胃で安定に保護し、第4胃以降の下部消化器官で放出可能にする反すう動物用ルーメンバイパス剤の被覆組成物については、極めて多くの提案がなされている。しかしながら、いまだ十分な第1胃での保護性及び第4胃以降の下部消化器官での放出性を兼ね備えたルーメンバイパス剤は存在していないのが現状であった。これは、反すう動物の第1胃での保護性の評価方法及びルーメンバイパス剤の粒径あるいはコーティング層を有するなどの構造についての検討が、十分行われなかったことによると考えられる。
【0004】
特許文献1又は特許文献2などでは、第1胃での生物学的活性物質の保護性を、pH及び液温を調整した模擬第1胃液で評価するなど、牛などの反すう動物の特殊性である、第1胃に生息する微生物の影響が検討されていない。実際に、市販されているルーメンバイパス剤は、模擬第1胃液では高い保護性を有していたが、微生物が生息している反すう動物の第1胃液を用いて評価した結果、極端に保護性が損なわれていた。この原因としては、反すう動物の第1胃に多数生息している微生物の影響によるものと考えられる。したがって、生物学的活性物質を反すう動物の第1胃に多数生息する微生物からの影響を抑制することが可能な被覆組成物で被覆することが必要であった。
【0005】
また、特許文献3では、微生物の生息する第1胃液でルーメンバイパス剤の保護性を評価しているものの、粒径は4〜15mmと大きいため咀嚼により崩壊しやすく、さらに、このルーメンバイパス剤は2重被覆しているため、反すう咀嚼などで核表層部の被覆が破壊された場合は極端に保護効果が低下するなどの欠点があった。
【0006】
つまり、市販のルーメンバイパス剤においては、微生物の生息する第1胃での生物学的活性物質の保護性においては十分満足できるものではない。この原因は、反すう動物特有の第1胃に生息している微生物による影響であり、この微生物の存在を考慮した上で第1胃での保護性を検討する必要があった。また、この反すう動物の第1胃に生息している微生物は、反すう動物自身の生命維持に必要なエネルギーであり、タンパク質などの栄養素となりえるため、第1胃の微生物の生息に影響を与えることなく、生物学的活性物質を保護することができる被覆組成物で被覆した反すう動物用ルーメンバイパス剤の開発が必要であったわけである。
【0007】
養牛農家は牛に有効とされる生物学的活性物質を経口投与する場合、微生物が多数生息している第1胃においても生物学的活性物質を安定に保護し、第4胃以降の下部消化器官での放出性に優れ、かつ低価格の反すう動物用ルーメンバイパス剤が供給されることを切望している。
【特許文献1】特開平5−23114号公報
【特許文献2】特開平9−187228号公報
【特許文献3】特開2000−60440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、生物学的活性物質を微生物の生息している反すう動物の第1胃で安定に保護し、第4胃以降の下部消化器官で効率良く放出させ、かつ低コストで製造可能な方法でルーメンバイパス剤を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上記の目的を達成するため鋭意努力した結果、生物学的活性物質を、A)硬化した動物性油脂、硬化した植物性油脂、炭素数12〜22個を有する直鎖又は分岐状の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸、脂肪酸エステル、ロウ及びワックスより選択される少なくとも1種の被覆剤、B)レシチン及びC)プロピオン酸又はその塩、ソルビン酸又はその塩、安息香酸又はその塩、デヒドロ酢酸又はその塩、パラオキシ安息香酸エステル類、イマザリル、チアベンダゾール、オルトフェニルフェノール、オルトフェニルフェノールナトリウム及びジフェニルより選択される少なくとも1種の防腐剤、よりなる被覆組成物で被覆することにより、反すう動物の第1胃での保護性(ルーメンバイパス率)を向上させることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明に使用する防腐剤は、カビ、細菌など微生物の発育を抑制、又は抗菌作用を持つもので、これをルーメンバイパス剤に含有させることで、第1胃に生息する微生物による生物学的活性物質の分解やルーメンバイパス剤の表面付近への侵入を最小限に抑え、その結果、崩壊を防止する効果があるものと考えられる。また、防腐剤の添加量においては、大量に添加した場合、微生物の増殖及び発育に影響を及ぼす可能性があり、一方、少なすぎると効果が期待できない。したがって、防腐剤の含有量はルーメンバイパス剤全体の0.01〜2.0重量%が望ましい。好ましくは、0.1〜1.0重量%である。
【0011】
製造方法としては、硬化した動物性油脂、硬化した植物性油脂、炭素数12〜22個を有する直鎖又は分岐状の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸、脂肪酸エステル、ロウ及びワックスより選択される少なくとも1種の被覆剤と、レシチンを溶融混合し、その溶融混合液に生物学的活性物質及び防腐剤を分散及び/又は溶解した噴射用溶融液を空気中へ噴射する噴射造粒法である。この製造方法は、造粒する工程のみにより球状のルーメンバイパス剤を得ることができ、低コストで製造可能である。
【0012】
生物学的活性物質を第4胃以降の下部消化器官で放出させる点については、ルーメンバイパス剤にレシチンを含有させると良い。さらにステアリン酸を含有させることにより、第1胃での保護性及び第4胃以降の放出性が優れたルーメンバイパス剤を得ることができる。
【0013】
生物学的活性物質の粒径については、小さいほど球状のルーメンバイパス剤の表面付近に存在する生物学的活性物質が減少し、被覆しやすいため、微粉物を使用することが望ましい。
【0014】
生物学的活性物質の微粉物を得る手段としては、ピンミル、ボールミル又はジェットミルなどで粉砕する方法があり、平均粒径150μm以下にすることにより良好なルーメンバイパス剤が得られる。一方、平均粒径が1μm以下に微粉砕した生物学的活性物質を溶融混合液に分散させた場合、噴射用溶融液の粘度上昇により、噴射するのが困難なため、生物学的活性物質の含有率をかなり下げる必要がある。したがって、生物学的活性物質の平均粒径は1〜150μmに調整する必要がある。好ましくは、10〜100μmが望ましい。
【0015】
つまり本発明は、(1):生物学的活性物質を、下記のA)、B)及びC)よりなる被覆組成物で被覆することを特徴とする反すう動物用ルーメンバイパス剤。A)硬化した動物性油脂、硬化した植物性油脂、炭素数12〜22個を有する直鎖又は分岐状の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸、脂肪酸エステル、ロウ及びワックスより選択される少なくとも1種の被覆剤、B)レシチン、C)プロピオン酸又はその塩、ソルビン酸又はその塩、安息香酸又はその塩、デヒドロ酢酸又はその塩、パラオキシ安息香酸エステル類、イマザリル、チアベンダゾール、オルトフェニルフェノール、オルトフェニルフェノールナトリウム及びジフェニルより選択される少なくとも1種の防腐剤、(2):上記C)の防腐剤の含有量が0.01〜2.0重量%であることを特徴とする請求項1記載の反すう動物用ルーメンバイパス剤、(3):上記C)の防腐剤がプロピオン酸又はその塩であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の反すう動物用ルーメンバイパス剤、(4):生物学的活性物質が少なくともリジン塩酸塩を含有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか記載の反すう動物用ルーメンバイパス剤、(5):上記A)の被覆剤が少なくとも炭素数12〜22個を有する直鎖又は分岐状の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸を含有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか記載の反すう動物用ルーメンバイパス剤、(6):炭素数12〜22個を有する直鎖又は分岐状の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸がステアリン酸であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか記載の反すう動物用ルーメンバイパス剤、(7):生物学的活性物質を被覆組成物の溶融混合液中に分散及び/又は溶解した噴射用溶融液を空気中へ噴射して造粒することにより得たことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか記載の反すう動物用ルーメンバイパス剤、(8):生物学的活性物質の平均粒径が1〜150μmであることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか記載の反すう動物用ルーメンバイパス剤、(9):請求項1〜請求項8のいずれか記載の反すう動物用ルーメンバイパス剤を含有する飼料、に関する。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、生物学的活性物質を、A)硬化した動物性油脂、硬化した植物性油脂、炭素数12〜22個を有する直鎖又は分岐状の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸、脂肪酸エステル、ロウ及びワックスより選択される少なくとも1種の被覆剤、B)レシチン及びC)プロピオン酸又はその塩、ソルビン酸又はその塩、安息香酸又はその塩、デヒドロ酢酸又はその塩、パラオキシ安息香酸エステル類、イマザリル、チアベンダゾール、オルトフェニルフェノール、オルトフェニルフェノールナトリウム及びジフェニルより選択される少なくとも1種の防腐剤、よりなる被覆組成物で被覆することにより、反すう動物の第1胃の保護性、第4胃以降の下部消化器官での放出性に優れたルーメンバイパス剤を提供するものであり、産業上の意義は極めて大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明において、生物学的活性物質としては、アミノ酸類、ビタミン類、酵素類、炭水化物類、天然物及び医薬品類などから選ばれた少なくとも1種または2種以上の混合物が使用できる。
【0018】
具体的には、アミノ酸類としては、アミノ酢酸、アラニン、アルギニン、リジン、グルタミン酸ナトリウム、メチオニン、トリプトファン、トレオニン、バリン、ベタイン、タウリンなどのアミノ酸及びアミノ酸誘導体など;ビタミン類としてはビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、塩化コリン、パントテン酸カルシウム、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ビオチン、葉酸など;酵素類としてはプロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、混合酵素など;炭水化物としては澱粉、ショ糖、ブドウ糖など、天然物としては魚粉、海草粉、血粉、穀物粉、胆汁末など;医薬品類としては抗生物質及びホルモン剤などがあり、その抗生物質としてはアミノグリコシド系、テトラサイクリン系、ペニシリン系、マクロライド系、リンコマイシン系などが挙げられ、ホルモン剤としてはエストロジェン、スチルベストロール、ヘキセストロールなどが挙げられる。
【0019】
被覆剤において、硬化した動物性油脂としては、牛脂、豚脂など、硬化した植物性油脂としては、パーム硬化油、ダイズ硬化油、ナタネ硬化油、ヒマシ硬化油など、炭素数12〜22個を有する直鎖又は分岐状の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸など、脂肪酸エステルとしては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなど、ロウ類としては、カルナバロウ、蜜ロウなど、ワックス類としては天然ワックス、合成ワックス、パラフィンワックスなどが使用できる。
【0020】
防腐剤において、プロピオン酸又はその塩としては、プロピオン酸、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸又はその塩としては、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、安息香酸又はその塩としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸又はその塩としては、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル類としては、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピルが使用できる。
【0021】
さらに必要であれば、比重調整剤として炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、タルクなどを使用して比重を調整してもよい。
【0022】
また、噴射造粒で得たルーメンバイパス剤をリボンミキサーなどの混合機で脱脂米ぬか、小麦粉、乾燥オカラ、とうもろこし及び/又は魚粉などの原材料と均一に混合し、飼料とすることもできる。
【0023】
本発明をさらに詳細に説明する。本発明は以下の実施例より何ら制限を受けるものではない。
【0024】
本発明のルーメンバイパス剤としての評価は以下の方法で行った。
(第1胃の保護性の評価)牛の口より第1胃の中層から下層付近まで管を通し、第1胃液を吸引して得る。第1胃液を得た後、直ちにルーメンバイパス剤を第1胃液900mLに浸漬し40℃で16時間攪拌する。攪拌後、この試験に供したルーメンバイパス剤をすべて回収して生物学的活性物質の残存率(ルーメンバイパス率)を測定して評価した。
【0025】
(第4胃の溶出性の評価)上記の方法で採取した第1胃液900mLにルーメンバイパス剤を浸漬し、40℃で16時間攪拌する。攪拌後、この試験に供したルーメンバイパス剤をすべて回収し、第4胃液に相当するClark-Lubs緩衝液900mLに浸漬した。これを37℃で2時間攪拌した後に溶出した生物学的活性物質を測定して評価した。Clark-Lubs緩衝液:塩化カリウム3.73g、塩酸2.1mLを水に溶解した緩衝液。
【0026】
(小腸の溶出性の評価)第4胃液溶出率測定後、この試験に供したルーメンバイパス剤をすべて回収し、小腸液に相当する緩衝液900mLに浸漬した。これを37℃で7時間攪拌した後に溶出した生物学的活性物質を測定して評価した。
【実施例1】
【0027】
菜種硬化油1626g、レシチン90g及びステアリン酸150gを溶融混合して80℃に保温した後、この溶融混合液に粒径を調整したリジン塩酸塩(平均粒径約50μm)1125g及びプロピオン酸カルシウム(防腐剤)9gを加えて均一に分散し噴射用溶融液とした。その噴射用溶融液を空気中に噴射し、0.5〜2.0mmの球状に固化したルーメンバイパス剤を得た。
【実施例2】
【0028】
菜種硬化油1626g、レシチン90g及びステアリン酸150gを溶融混合して80℃に保温した後、この溶融混合液に粒径を調整したリジン塩酸塩(平均粒径約50μm)1125g及びプロピオン酸ナトリウム(防腐剤)9gを加えて均一に分散し、実施例1と同様に製造してルーメンバイパス剤を得た。
【実施例3】
【0029】
パーム硬化油1517g、レシチン90g及びステアリン酸150gを溶融混合して80℃に保温した後、この溶融混合液に粒径を調整したリジン塩酸塩(平均粒径約50μm)1125g、プロピオン酸カルシウム(防腐剤)18g及び炭酸カルシウム100gを加えて均一に分散し、実施例1と同様に製造してルーメンバイパス剤を得た。
【実施例4】
【0030】
菜種硬化油1608g、レシチン90g及びステアリン酸150gを溶融混合して80℃に保温した後、この溶融混合液に粒径を調整したリジン塩酸塩(平均粒径約50μm)1125g及びプロピオン酸カルシウム(防腐剤)27gを加えて均一に分散し、実施例1と同様に製造してルーメンバイパス剤を得た。
【実施例5】
【0031】
菜種硬化油1517g、レシチン90g及びステアリン酸150gを溶融混合して80℃に保温した後、この溶融混合液に粒径を調整したタウリン(平均粒径約50μm)1125g、プロピオン酸カルシウム(防腐剤)18g及び炭酸カルシウム100gを加えて均一に分散し、実施例1と同様に製造してルーメンバイパス剤を得た。
【0032】
(比較例1)
菜種硬化油1635g、レシチン90g及びステアリン酸150gを溶融混合して80℃に保温した後、この溶融混合液に粒径を調整したリジン塩酸塩(平均粒径約50μm)1125gを加えて均一に分散し、実施例1と同様に製造してルーメンバイパス剤を得た。
【0033】
(比較例2)
パーム硬化油1535g、レシチン90g及びステアリン酸150gを溶融混合して80℃に保温した後、この溶融混合液に粒径を調整したリジン塩酸塩(平均粒径約50μm)1125g及び炭酸カルシウム100gを加えて均一に分散し、実施例1と同様に製造してルーメンバイパス剤を得た。
【0034】
(比較例3)
菜種硬化油1716g及びステアリン酸150gを溶融混合して80℃に保温した後、この溶融混合液に粒径を調整したリジン塩酸塩(平均粒径約50μm)1125g、プロピオン酸カルシウム(防腐剤)9gを加えて均一に分散し、実施例1と同様に製造してルーメンバイパス剤を得た。
【0035】
(比較例4)
菜種硬化油1626g、レシチン90g及びステアリン酸150gを溶融混合して80℃に保温した後、この溶融混合液に粒径を調整したリジン塩酸塩(平均粒径約200μm)1125g、プロピオン酸カルシウム(防腐剤)9gを加えて均一に分散し、実施例1と同様に製造してルーメンバイパス剤を得た。
【0036】
(比較例5)
菜種硬化油1535g、レシチン90g及びステアリン酸150gを溶融混合して80℃に保温した後、この溶融混合液に粒径を調整したタウリン(平均粒径約50μm)1125g及び炭酸カルシウム100gを加えて均一に分散し、実施例1と同様に製造してルーメンバイパス剤を得た。
【0037】
実施例を表1、比較例を表2にまとめた。実施例と比較例より防腐剤を含有したルーメンバイパス剤が反すう動物の第1胃での保護性(ルーメンバイパス率)において良好な結果を示した。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
以上のように、生物学的活性物質を、A)硬化した動物性油脂、硬化した植物性油脂、炭素数12〜22個を有する直鎖又は分岐状の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸、脂肪酸エステル、ロウ及びワックスより選択される少なくとも1種の被覆剤、B)レシチン及びC)プロピオン酸又はその塩、ソルビン酸又はその塩、安息香酸又はその塩、デヒドロ酢酸又はその塩、パラオキシ安息香酸エステル類、イマザリル、チアベンダゾール、オルトフェニルフェノール、オルトフェニルフェノールナトリウム及びジフェニルより選択される少なくとも1種の防腐剤、よりなる被覆組成物で被覆したことを特徴とした反すう動物用ルーメンバイパス剤は優れた保護性(高いルーメンバイパス率)を有し、かつ第4胃以降の下部消化器官での放出性も優れていることが判明した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的活性物質を、下記のA)、B)及びC)よりなる被覆組成物で被覆することを特徴とする反すう動物用ルーメンバイパス剤。A)硬化した動物性油脂、硬化した植物性油脂、炭素数12〜22個を有する直鎖又は分岐状の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸、脂肪酸エステル、ロウ及びワックスより選択される少なくとも1種の被覆剤、B)レシチン、C)プロピオン酸又はその塩、ソルビン酸又はその塩、安息香酸又はその塩、デヒドロ酢酸又はその塩、パラオキシ安息香酸エステル類、イマザリル、チアベンダゾール、オルトフェニルフェノール、オルトフェニルフェノールナトリウム及びジフェニルより選択される少なくとも1種の防腐剤。
【請求項2】
上記C)の防腐剤の含有量が0.01〜2.0重量%であることを特徴とする請求項1記載の反すう動物用ルーメンバイパス剤。
【請求項3】
上記C)の防腐剤がプロピオン酸又はその塩であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の反すう動物用ルーメンバイパス剤。
【請求項4】
生物学的活性物質が少なくともリジン塩酸塩を含有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか記載の反すう動物用ルーメンバイパス剤。
【請求項5】
上記A)の被覆剤が少なくとも炭素数12〜22個を有する直鎖又は分岐状の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸を含有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか記載の反すう動物用ルーメンバイパス剤。
【請求項6】
炭素数12〜22個を有する直鎖又は分岐状の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸がステアリン酸であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか記載の反すう動物用ルーメンバイパス剤。
【請求項7】
生物学的活性物質を被覆組成物の溶融混合液中に分散及び/又は溶解した噴射用溶融液を空気中へ噴射して造粒することにより得たことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか記載の反すう動物用ルーメンバイパス剤。
【請求項8】
生物学的活性物質の平均粒径が1〜150μmであることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか記載の反すう動物用ルーメンバイパス剤。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか記載の反すう動物用ルーメンバイパス剤を含有する飼料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的活性物質を、下記のA)、B)及びC)よりなる被覆組成物で被覆する粒子において、その粒子がC)を0.01〜2.0重量%含有することを特徴とする反すう動物用ルーメンバイパス剤。A)硬化した動物性油脂、硬化した植物性油脂、炭素数12〜22個を有する直鎖又は分岐状の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸、脂肪酸エステル、ロウ及びワックスより選択される少なくとも1種の被覆剤、B)レシチン、C)プロピオン酸又はその塩、ソルビン酸又はその塩、安息香酸又はその塩、デヒドロ酢酸又はその塩、パラオキシ安息香酸エステル類、イマザリル、チアベンダゾール、オルトフェニルフェノール、オルトフェニルフェノールナトリウム及びジフェニルより選択される少なくとも1種の防腐剤。
【請求項2】
上記C)の防腐剤がプロピオン酸又はその塩であることを特徴とする請求項1記載の反すう動物用ルーメンバイパス剤。
【請求項3】
生物学的活性物質が少なくともリジン塩酸塩を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか記載の反すう動物用ルーメンバイパス剤。
【請求項4】
上記A)の被覆剤が少なくとも炭素数12〜22個を有する直鎖又は分岐状の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸を含有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか記載の反すう動物用ルーメンバイパス剤。
【請求項5】
炭素数12〜22個を有する直鎖又は分岐状の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸がステアリン酸であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか記載の反すう動物用ルーメンバイパス剤。
【請求項6】
生物学的活性物質を被覆組成物の溶融混合液中に分散及び/又は溶解した噴射用溶融液を空気中へ噴射して造粒することにより得たことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか記載の反すう動物用ルーメンバイパス剤。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか記載の反すう動物用ルーメンバイパス剤を含有する飼料。

【公開番号】特開2006−141270(P2006−141270A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−335286(P2004−335286)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【特許番号】特許第3728738号(P3728738)
【特許公報発行日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(300012664)バイオ科学株式会社 (2)
【Fターム(参考)】