説明

反りを防止した扉の製造方法

【目的】 フラッシュドアーの木質ボードの両面に、非透水・非透湿性シートを貼着して水分移動を木質ボードの極狭い範囲内に限定することによって反りを防止するものであり、本発明は上記の欠点を解消するため、反り狂いの極めて少ない扉の製造方法を開発するものである。
【構成】 非透水性・非透湿性シートを、木質ボード1の両面に貼着し、該木質ボードを、木質基材からなる芯材5の両側に貼り合わせたことを特徴とする反りを防止した扉の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、反りを防止することを目的とした扉の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のフラッシュ扉は薄い合板の片面に突板,化粧シート,塩ビシート等を貼着した化粧合板を木質基材からなる芯材の両面に貼り合わせたものがほとんどであった。
【0003】扉は、環境条件の異なる二つの空間の境界に、扉自体を釘,接着剤等で固定することなく、蝶番,レール,吊り金具等で比較的フリーな状態に置かれるため、二つの環境条件が異なる場合には、温・湿度の影響を受け、反りや狂いが生じやすく、一般的には、扉の厚みが薄いほど芯材の強度が弱くなりドアーより引き戸の方が反り狂いを生じやすい結果となっている。
【0004】通常、木質材は温度より湿度の影響を受けやすいため、表面を塗装するより、塩ビシートを貼着した方が非透水透湿性に優れ、反り防止には効果的と考えられるが、化粧合板の片面にだけ貼着したものでは充分な効果が得られておらず、特に引き戸の場合は、2枚の扉が定められたレールの上に配置されるため、僅かな反り狂いが生じても、お互いが擦り合って欠点が目立ちやすい状況にある。
【0005】部屋を廊下の環境条件を考えた場合、暖房のきいた冬では図3のように部屋側が高温多湿となり、廊下側が低温低湿になる。冷房のきいた夏にはこの逆になる。冬の場合を想定して、ムク材の扉や突板貼り化粧合板を用いたフラッシュドアーでは、木質部が、高温多湿の水分を吸収するため扉は、図3のBのような反り方をする。ところが、非透水・非湿性シートを貼着した化粧合板を用いたフラッシュドアーでは図3のAのような反り方をする。これは、非透水・非透湿性シートを用いた為、多湿側の水分を吸収することはないが、室内の高温が扉内の水分を廊下側に押しやり、扉内に水分移動が起るため廊下側の水分が高くなってAのような反り方をすることが実験によりわかった。従って扉内に水分を移動させなくても扉内で水分移動が起こるため、従来の反り対策では、反りを充分防ぐことが出来ないことが研究の結果判明した。
【0006】
【発明が解決しようとする問題点】そこで本発明は、このためフラッシュドアーの木質ボードの両面に、非透水・非透湿性シートを貼着して水分移動を木質ボードの極狭い範囲内に限定することによって反りを防止するものであり、本発明は上記の欠点を解消するため、反り狂いの極めて少ない扉の製造方法を開発するものである。
【0007】
【問題点を解決するための手段】本発明の方法は、非透水・非透湿性シートを、木質ボードの両面に貼着し、該木質ボードを、木質基材からなる芯材の両側に貼り合わせたことを特徴とする反りを防止した扉の製造方法からなり、すなわち、扉内の水分移動を極めて小さい範囲に限定して、全体の動きを小さくしようとするものである。
【0008】非透水透湿性シートとは、合成樹脂性のシート例えば、塩ビ,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリカーボネート,アクリル,ウレタン等で木質材を接着可能又は可能になるよう処理したものであればよい。その他金属箔,樹脂含浸紙あるいは、合成樹脂シートと紙を複合したもの等、水分や湿度を透過させないものであればよい。又、接着剤や塗料を厚く塗布して非透水性・非透湿性にしたものも可能であるが通常の塗布程度のものは効果的でない。
【0009】
【実施例】本発明の一実施例を次下に記す。910×2100mm、厚さ2.7mmの合板(2)の表面に0.15mm厚の塩ビ化粧シート(3)を、裏面に0.15mm厚の塩ビシート(4)をそれぞれエチレン酢ビ系接着剤で貼着し3.0mm厚の木質化粧ボード(1)を2枚作成した。一方、芯材(5)の一実施例としては、幅30×厚さ21mmのLVL(単板積層材)で、図4のようなフラッシュ扉用芯材を作成し、この両側に前記木質化粧ボード(1)をエチレン酢ビ系接着剤で貼り合わせ、幅854×長さ2003×厚み27mmの扉(X)を作成した。両木端面には1mm厚みの縁材(6)を貼着した。この扉を図3のように2部屋の境界部に配置し環境試験を行ない、扉の反り具合を測定した。
条件 部屋側 30°C 80%廊下側 20°C 60%放置時間 10日間
【0010】
【比較例】
1.実施例において木質化粧ボードの裏面側塩ビシートを除いたもの。
2.実施例において木質化粧ボードの表面のみに0.3mmのナラの突板を貼着しウレタン塗装を施したもの。
1.2においても実施例と同様に環境試験を行ない、反り具合いを測定した。高さの中央点で反りの矢高を測定したところ、表1の結果を得て図5に状態を示す。尚、図3におけるAの反り方の矢高を+、Bの反り方を−とするものである。〕
【0011】
【表1】


【0012】
【発明の効果】この発明は、両面に非透水性・非透湿性シートを貼着した木質ボードを用いて扉を形成したため、実施例と比較例との差から見てわかるように、本発明の方法は環境試験の結果から極めて反りの小さい扉を製造することが出来、極めて有益なる効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を示す一部欠截側面図である。
【図2】この発明の従来の実施例を示す一部欠截側面図である。
【図3】この発明の環境試験の場所を示す説明図である。
【図4】この発明の一実施例を示すフラッシュ扉用芯材の一部欠截正面図である。
【図5】この発明の環境試験における扉の反り具合を測定したグラフ図である。
【符号の説明】
1 木質化粧ボード
2 合板
3 塩ビ化粧シート
4 塩ビシート
5 フラッシュ扉用芯材
6 縁材
X 扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】 非透水性・非透湿性シートを、木質ボードの両面に貼着し、該木質ボードを、木質基材からなる芯材の両側に貼り合わせたことを特徴とする反りを防止した扉の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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