説明

反射シート、及びそれを用いる面光源装置

【課題】薄くて軽量で反射率が高く、更に、熱による撓みが少ない反射シートを得ることにある。さらは、それを用いた面光源装置及び液晶ディスプレイ装置を得ることにある。
【解決手段】合成パルプ及び芯鞘構造繊維を含み、当該芯鞘構造繊維が芯部がエステル系重合体からなり鞘部がエチレン系重合体からなる反射シートを提供する。更には、その反射シートを用いてなる面光源装置、及び、その面光源装置をバックライト光源手段とする液晶ディスプレイ装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維及び合成パルプからなり、光の反射率が高く且つ熱たわみが少ない反射シートに関する。更には、その反射シートを用いてなる面光源装置及び当該面源装置をバックライト手段とする液晶ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、パーソナルコンピュータ、テレビジョン等の液晶表示装置の主要部品として反射シートが数多く使用されている。特に携帯電話に用いられる液晶表示装置は、薄型化、省電力化、軽量化できるものであることが重要であり、液晶表示装置の表示品位の向上も望まれており、この為には大容量の光を液晶部分に供給することが必要とされる。以上の要求を満たす為には、光源から供給する光量を多くすることが必要であり、反射シートは、反射効率が高く、高輝度が得られるものが求められている。
液晶表示装置のバックライトユニットには、光源を直接液晶部の下部に置く方式と、光源を透明な導光板の横に置く方式がある。反射シートとしては前者の方式では液晶部の下部にランプの光を反射するように配置され、後者の方式ではランプを覆うように導光板横、及び導光板の光を反射するように導光板下に配置される。
従来、反射シートの素材としては、アルミニウム等の金属板の表面に銀を主成分とする金属薄膜層を有するもの、または、白色顔料を塗工したアルミニウム等の金属板、白色のポリエチレンテレフタレート製のシートが用いられている。また、ポリオレフィン製のも報告されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、上記従来技術においては、反射シートとしての反射特性を高めるには、シート自体の厚みを大きくしたり、無機充填剤を多量に含ませて多孔質シートにする必要があった。これらは、薄型化、軽量化を図ると反射特性が劣るものとなり、十分な反射特性を持ちながら、薄型化、軽量化を図ることのできる反射シートは得ることができていなかった。
そのために反射シートが繊維からなるものが考えられた(例えば、特許文献2参照)。これにより軽量で反射率が高いものが得られたが、使用時にランプからの光の熱により高温になったときに反射シートが撓み、長期間の使用には適さない虞があった。
【0003】
【特許文献1】特開平11−174213号公報
【特許文献2】特開2005−316149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、薄くて軽量で反射率が高く、更に、熱による撓みが少ない反射シートを得ることを目的とする。更には、熱により光の反射が変化することがない面光源装置、及び、液晶ディスプレイ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑み、本発明者らは鋭意検討を行った結果、反射シートが合成パルプ及び特定の芯鞘構造繊維を含むことが好ましいことを発見し、本発明を完成させるに至った。
[1]合成パルプ及び芯鞘構造繊維を含み、該芯鞘構造繊維の芯部がエステル系重合体からなり鞘部がエチレン系重合体からなることを特徴とする反射シート。
[2]芯鞘構造繊維の平均繊維径が2.2dtex以下である[1]記載の反射シート。
[3]合成パルプが、合成パルプと芯鞘構造繊維の合計量に対して70重量%以上である[1]又は[2]に記載の光反射シート。
[4]厚さが300〜700μmである[1]〜[3]のいずれかに記載の反射シート。
[5]少なくとも片方の面に紫外線吸収剤層を有する[1]〜[4]のいずれかに記載の反射シート。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載の反射シート用いてなる面光源装置。
[7][6]に記載の面光源装置をバックライト光源手段とする液晶ディスプレイ装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、十分な反射特性を持ちながら、薄型化、軽量化を図ることができ、熱による撓みが少なく長期間の使用にも耐え得る反射シートを提供することができる。特に携帯電話やパソコンの液晶ディスプレイ装置に組み込まれる反射シートとして用いれば、光の反射の状態が変化することが無く、画面が明るいので、好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について具体的に説明する。
合成パルプ
本発明に係る合成パルプは、種々公知のものが用いられるが、合成樹脂からなり、繊維が分岐状構造をとり、繊維の長さが短いものをいう。
合成パルプを構成する樹脂は種々公知のものを用いることができるが、熱可塑性樹脂からなることが好ましく、その中でもポリオレフィンからなることが好ましい。ポリオレフィンとしては、炭素数2〜6のα−オレフィンの単独重合体、あるいは相互の共重合体、さらにはこれらと他の共重合性のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル等との共重合体、さらにはこれら単独重合体や共重合体に不飽和カルボン酸モノマーを過酸化物でグラフト反応させて得られるポリマーが好ましく例示される。特に、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテンまたは4−メチル−1−ブテンの結晶性の重合体および共重合体が好ましく例示される。具体的には、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンやエラストマー(エチレン−α−オレフィン共重合体)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン−メタクリル酸共重合体、マレイン酸やアクリル酸による酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ3−メチルブテン、ポリ4−メチルブテン及びこれらの混合物が挙げられる。これらのポリオレフィンは、発明の趣旨から明らかなようにどのような製造法で製造されたものであっても良い。これら中でも融点100〜175℃、密度0.900〜0.980g/cm3、分子量分布(Mw/Mn)1.5〜3.5、メルトフローレート(MFR:ASTM D1238、190℃)0.1〜100g/10minであるポリエチレンであることのが好ましく、適度に柔軟性及び剛性があり取り扱いが容易な点から、高密度ポリエチレンであることが更に好ましい。
【0008】
本発明に係る合成パルプの繊維は、最長部分の長さの平均値(以下、「平均繊維長」という。)は通常0.05〜50mmであり、好ましくは0.05〜10mmであり、特に好ましくは0.1〜5mmである。平均繊維長が上記範囲内にあることにより、芯鞘構造繊維と混合した際に反射シートとして好ましく使用することができる。
【0009】
また、本発明に係る合成パルプの繊維は、直径(以下、「繊維径」という。)の最小値は0.5μm程度であることが好ましく、繊維径の最大値が50μm程度であることが好ましい。繊維径が上記範囲内にあることにより、芯鞘構造繊維と混合した際に反射シート好ましく使用することができる。
【0010】
ここで、上記平均繊維長および繊維径の測定方法について説明する。
(1)平均繊維長
フィンランド国のメッツォオートメーション社製自動繊維測定機(製品名;FiberLab-3.5)を使用し、12000〜13000本の繊維について繊維長を測定し、繊維長0.05mm刻みで分級した各級の数平均繊維長ならびに繊維本数を下記の式に代入して得られる値を平均繊維長とする。
【0011】
平均繊維長(mm)=Σ(Nn×Ln)/Σ(Nn×Ln
Ln:各級の数平均繊維長(mm)
Nn:各級の繊維本数
ここで、各級の平均繊維長Lnは、次式で求められる。
Ln=ΣL/N
L:1つの級における一本一本の実測繊維長
N:1つの級における繊維本数
【0012】
尚、数平均繊維長は以下のようにして測定する。
繊維を希薄な濃度で水に分散し、キャピラリー中を流れる際の繊維にキセノンランプ光を照射してCCD(電荷結合素子)センサーで映像信号を採取し、画像解析することで測定する。より具体的には、繊維を0.02重量%の水に分散させ、フィンランド国のメッツォオートメーション社製自動繊維測定機(製品名;FiberLab-3.5)を使用し、12000〜13000本の繊維について測定する。それぞれの繊維長は0.05mm刻みで測定され、繊維長と各繊維長に該当する繊維の存在率(%)の両方の測定結果が得られる。
【0013】
(2)繊維径
繊維径は、1本、1本の繊維を光学顕微鏡あるいは、電子顕微鏡で観察することで測定する。具体的に、繊維径の最大値および最小値は、次のようにして測定する。
最大値:キーエンス社製デジタルHFマイクロスコープVH8000にて倍率100倍で観察し、10μm以上の部分につき無作為に100箇所選択し、選択部分の繊維径を測定し、該測定値の最大値とする。
最小値:日本電子社製走査型電子顕微鏡JSM6480にて倍率3000倍で観察し、
10μm未満の部分につき、無作為に100箇所選択し、選択部分の繊維径を測定し、該測定値の最小値とする。
【0014】
本発明に係る合成パルプの繊維は、分岐構造を有する。分岐構造とは、例えば図1に示すような形態が例示される。繊維の分岐は光学顕微鏡または電子顕微鏡で観察することにより確認する。なお、図1は、後述する実施例1の分岐構造の繊維の集合体を、キーエンス社製デジタルHFマイクロスコープVH8000にて75倍で観察した写真である。
【0015】
合成パルプの製造方法
本発明に係る合成パルプは、種々公知の方法で得ることができるが、水と懸濁剤の存在下に熱可塑性樹脂溶液をフラッシュする方法をとるのが好ましい。
具体的には、原料樹脂を、該樹脂を溶解可能な溶剤に溶解し、懸濁剤および水を加えてエマルジョンとする。原料樹脂としては、前述したポリオレフィンが好適であり、中でもより繊維が細くなる高密度ポリエチレンが好ましい。溶剤としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素系、ベンゼン、トルエン等の芳香族系、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭素類等の中から、原料樹脂を溶解せしめ、且つ、フラッシュ時に揮発し得られた繊維の集合体に残存しにくいものを適宜選択する。
【0016】
懸濁剤は、繊維の界面張力を低下させ、菌類と抗菌剤との接触効率を向上させ、結果として抗菌作用の向上にも寄与すると考えられる。懸濁剤としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリル酸塩、ゼラチン、トラガカントゴム、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの親水性ポリマーを使用することができ、また、それらの親水性ポリマーと、一般的なノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤またはアニオン系界面活性剤とを併用することもできる。中でも、生産性、抗菌作用への寄与等の点から、特にポリビニルアルコール系の親水性ポリマーが好ましく、ポリビニルアルコールは重合度200〜1000のものが好ましい 懸濁剤の添加量は、繊維中、懸濁剤が0.1〜5質量%となる量とするのが好ましい。製造過程において、添加した懸濁剤の一部が抜けるような操作をする場合は多めに添加する等、適宜調整し添加する。添加量の目安としては、原料樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部である。懸濁剤を添加することにより、エマルジョンを安定化することができるとともに、フラッシュ後の繊維切断を水中で安定的に行うことができる。
【0017】
フラッシュは、高圧で溶媒に溶解したポリマーを減圧することで溶媒を揮散させることである。特に、特開昭48-44523号公報に記載されているような方法により、ポリオレフィン溶液を懸濁剤の存在下、水媒体に分散させたものをフラッシュさせると、繊維が乱雑に分岐した形状を有する本発明に係る合成パルプが得られる。フラッシュは、得られたエマルジョンを100〜200℃、好ましくは130〜150℃に加熱し、圧力0.1〜5MPa、好ましくは圧力0.5〜1.5MPaの加圧状態にし、ノズルより減圧下へ噴出(フラッシュ)すると同時に溶剤を気化させる。減圧の条件は、圧力1kPa〜95kPaとすることが好ましく、噴出先は窒素雰囲気等の不活性雰囲気であることが好ましい。圧力とは絶対圧力のことを示す。
上記のようにしてフラッシュすることにより、分岐構造を有する不定長の繊維が得られるが、この繊維は、さらにワーリング・ブレンダー、ディスクリファイナー等にて切断および叩解して、所望の長さにすることが好ましい。そのとき、繊維を0.5〜5g/リットル濃度の水スラリーとして上記切断・叩解処理を行うことが好ましい。乾燥後、所望によりミキサー等によって開綿してもよい。
以上説明した方法によれば、分岐構造を有する繊維の集合体、すなわち本発明に係る合成パルプを好ましく製造することができる。
【0018】
芯鞘構造繊維
本発明に係る芯鞘構造繊維は、芯部がエステル系重合体からなり鞘成分がエチレン系重合体からなる。芯鞘構造繊維は、繊維の中心付近にある芯部とその外側にある鞘部で構成される。
【0019】
芯部を構成するエステル系重合体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート又は全芳香族ポリエステル等が挙げられるが、この中でポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。これらのエステル系重合体は1種類であっても2種類以上が混合していても良い。また本発明の目的をそこなわない範囲で種々の添加剤や顔料等を含んでいても良い。芯部の原料樹脂がポリプロピレンの場合は、反射シートに成形した際に熱による撓みが発生し好ましくない。
【0020】
鞘部を構成するエチレン系重合体としては、低密度ポリエチレン、線型低密度ポリエチレンやエラストマー(エチレン-α-オレフィン共重合体)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン-メタクリル酸共重合体、マレイン酸やアクリル酸による酸変性ポリエチレンなどが挙げられる。あるいはそれらを主体とした共重合体、あるいはそれらを主体とした他のポリマ−とのブレンドが挙げられる。鞘成分の原料樹脂は、合成パルプに使われる熱可塑性樹脂と同種のものがよい。なぜならば、湿式抄造して得られる合成紙の紙力強度を向上させ、かつ繊維の発塵を低減するために、湿式抄造した合成紙を熱ロールにて熱処理を行うことが好ましいが、このとき、鞘成分の原料樹脂と合成パルプの原料樹脂が同種である場合は、お互いの繊維同士が融着して良好な物性が得られる。一方、異種原料である場合は、お互いの繊維が融着しないため、熱ロールに原料繊維が接着して生産上の不具合が発生し、得られたシートは発塵しやすくなる。合成パルプの原料樹脂が高密度ポリエチレンの場合、繊維が細く反射率が高くなり好適であるので、芯鞘構造繊維の鞘成分の原料樹脂は、低密度ポリエチレン、線型低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンもしくは高密度ポリエチレンが好ましく、その中でも、高密度ポリエチレンが好ましい。これらのエチレン系重合体は1種類であっても2種類以上が混合していても良い。また本発明の目的をそこなわない範囲で種々の添加剤や顔料等を含んでいても良い。
【0021】
このように、芯部をエステル系重合体、鞘部をエチレン系重合体とすることにより、反射シートを得る為に熱をかけたときに、芯部は溶融しないが鞘部は溶融する。芯部が溶融しないので反射シートの熱によるたわみが少なく、且つ、鞘部が溶融するので繊維同士が強固に接着する。また、反射シートを使用している際に熱が加えられた場合には、芯部は熱により膨張することが無く、熱による撓みが少ない。合成パルプに混合する繊維が芯鞘構造でない場合は、熱による撓みが大きいので好ましくない。
【0022】
芯鞘構造繊維の断面形状については特に制限はない。繊維の断面形状は、円形であっても楕円形であっても良く、多角形等の異形断面のものであってもよい。芯の断面形状についても特に制限は無く、円形であっても楕円形であっても良く、多角形等の異形断面のものであってもよい。
【0023】
また、芯と鞘の配置についても特に制限がない。繊維の断面に対して、芯が中心にあっても中心からずれていても(偏心)良いし、芯の一部が繊維の表面に出ていても良い。
芯鞘構造繊維の芯部と鞘部の重量比は、特に限定されないが、通常は1:4〜4:1程度であり、通常は1:1が多い。芯部が少ない場合は熱撓み性が劣り、鞘部が少ない場合は接着強度が不足する場合がある。
【0024】
本発明に係る芯鞘構造繊維の平均繊維径は、繊維が太すぎると反射率が低下してしまうため好ましくない。したがって、平均繊維径は芯鞘構造とすることが可能な範囲で小さい方が好ましく、具体的には2.2dtex以下であることが好ましい。繊維径の測定方法は、前記合成パルプと同様の方法を用いる。
本発明に係る芯鞘構造繊維は、比較的短い繊維である。繊維の長さは特に限定されないが、合成パルプと混合しての湿式抄造するのに適した長さのものを用いる。
【0025】
また、芯鞘構造繊維は、複合紡糸し延伸し開繊して得ることもできる。その場合には、複数の紡糸孔を設けた円形或いは矩形の複合紡糸口金により紡糸する方法が一般的である。延伸は空気力やローラを利用する方法があり、独立した円形断面のジェット等を使用できる。開繊方法は、空気流を利用するものや、摩擦あるいは高電圧を利用し帯電させる方法などが一般的である。このようにして得られた繊維をカット長1〜25mm、好ましくは3〜15mmにカットする。次に、離解機を用いて、得られた繊維を溶液中で離解し、短繊維として分散させる。繊維が均一な分散となれば、抄造が容易である。
【0026】
反射シート
本発明の反射シートは、前記合成パルプ及び芯鞘構造繊維を含んでなる。本発明の反射シートは本発明の目的を損なわない範囲で当該パルプや繊維以外に、他の繊維を含んでいても良く、或いは他の樹脂や添加剤を含んでいても良い。例えば、光による劣化を抑制したり、シートの帯電性を抑制するために、耐光剤や帯電防止剤を塗工したり、シートに含浸してもよい。
【0027】
本発明の反射シートは、光を照射したときの反射率が高く、且つ、熱により撓みが少ないので、長期間の面源装置に設置して使用することができる。反射率は例えば(株)日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計U−3010により測定することができる。熱によるたわみは、例えばサンプルを20cm×10cmに切出し、10cmの両辺に両面テープを貼り、アルミ板に貼り付けて温風乾燥機にて80℃で15分間加熱して、シートの撓みの状態を外観目視することで評価することができる。
【0028】
本発明の反射シートは、前記合成パルプの繊維と芯鞘構造繊維とが混合しており、それら繊維部分と繊維間に生じた空隙部分とがランダムに混合した状態になっている。合成パルプは繊維が分岐状に分かれており、繊維の先端は細く多数に分岐して、芯鞘構造繊維と絡まっている。光を反射シートに照射すると、光は当該繊維の表面で反射及び屈折し、複数の方向に分散する。光は繊維表面で複数方向への反射及び屈折を繰り返し、空隙部分では直進する。光は繊維に当たる回数が多ければ多い程、反射及び屈折を多数行う。
【0029】
また、本発明の反射シートは、熱をかけたときの撓みが少ない。繊維は、通常、加熱すると膨張するため、その膨張する繊維をシートにすると強度が落ちるため撓みが生じる。芯部のエステル系重合体は繊維を製造する際に延伸するために高度に配向結晶化しているので、熱による膨張が少ない。それにより芯鞘構造繊維全体が膨張することを抑え、その結果熱による撓みが小さいと考えられる。また、熱による撓みには、芯鞘構造繊維同士が熱によりある程度結合している必要があると思われる。また、合成パルプの繊維同士が結合していることも熱による撓みに対して影響している。
【0030】
本発明の反射シートは、厚さが通常300〜700μm、好ましくは400〜600μmである。厚すぎると柔軟性を損なうため製品をロール形状で取り出せず、取り扱いが困難となる虞がある。薄すぎると光が反射及び屈折をすることなく反射シートを透過するので好ましくない。
【0031】
本発明の反射シートは、目付けが150〜300g/m、好ましくは180〜250g/mである。目付けが小さすぎると、光を反射シートに照射したときに透過する光の量が多くなり、反射率が低下する虞がある。また目付けを一定にして、反射シートの厚さを薄くすると繊維同士が接触して空隙部分が無くなり、反射及び屈折した光が複数方向に分散しなかったり、その部分で吸収されたりして反射率が低下する虞がある。
【0032】
反射シートの製造方法
本発明の反射シートは種々公知の方法で得ることができるが、通常は以下のようにして製造することができる。
すなわち、合成パルプ及び芯鞘構造繊維をそれぞれ得て混合し、これを湿式抄造し、乾燥し、加熱する繊維同士を接合することでシートとする。
【0033】
抄造は、抄紙機を用いる。抄紙機は、一般的に用いられているものを使用すればよく、抄造濃度は目標とする反射シートの目付に合わせて適宜選定すればよい。すなわち、抄造濃度が低いと低目付の抄造ができ、また、抄造回数を増加させることにより均一な抄造物となる。抄造濃度が高いと高目付の抄造が可能となるので、生産速度に見合った濃度を選定することが必要である。
なお、前記離解工程、抄造工程で適宜表面活性剤や分散剤や増粘剤を添加すると、尚一層均一な短繊維の分散あるいは均一な抄造が可能となるので好ましい。
【0034】
抄造をした物はコンベア−上に移動して脱水し、ヤンキ−ドライヤ−やフラットカレンダ−などの熱処理装置を使用して熱処理する。熱風ドライヤ−、サクションドライヤ−等で熱処理した後にプレスロ−ラ−を用いても良い。このいずれの場合も、一般的には100℃〜110℃程度で行うのが好ましい
【0035】
続いて、湿式抄造したシートをカレンダー機で熱処理を行う。この処理は、合成パルプと芯鞘構造繊維の熱接着を行うものであり、熱処理条件としては、合成パルプ及び芯鞘構造繊維を構成する重合体の中で最も低い融点を持つ重合体の融点以上かつ最も高い融点を持つ重合体の融点未満の温度を適用することが良い。合成パルプ及び芯鞘構造繊維を構成する重合体の中で最も低い融点を持つ重合体の融点未満の温度を適用すると、短繊維間が熱接着できず、実用的な強度を得ることができない。また、最も高い融点を持つ重合体の融点以上の温度を適用すると、合成パルプ及び芯鞘構造繊維が全て溶融して、シートの空隙部分が無くなるので、反射率が低下する。具体的には、125〜136℃で行うのが好ましい。この温度であれば、芯鞘構造繊維の芯部分の重合体は溶融しないが、鞘部分の重合体が溶融して繊維同士が接着しやすい。本発明の反射シートは、芯鞘構造繊維の鞘部にエチレン系重合体を用いることで、芯鞘構造繊維同士或いは合成パルプとの接着を低い温度で可能とすることができる。
【0036】
用途
本発明の面光源装置は、前記の本発明の反射シートを用いてなる。面光源装置としては、種々のものが挙げられ、液晶ディスプレイや表示体のバックライト光源が挙げられ、特に携帯電話やPDAなどのLEDや冷陰極管を光源とする薄型パネルに用いる薄型のバックライトユニットが挙げられる。
また、本発明の反射シートを用いた面光源装置をバックライト光源手段とする液晶ディスプレイ装置とすることができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は当該実施例により限定されるものではない。得られた反射シートについては反射率及び熱撓み性を測定した。結果は、表1に示す。
【0038】
繊維径
電子顕微鏡で写真撮影を行い、50本の繊維の直径を測定し、平均して求めた。
目付け
100×100mmの試験片を採取し重量を測定し、1mあたりに換算して求めた。
厚さ
測定は目付け測定に使用した試料を用い、JIS Z1702に準拠したデジタル式厚み計でn=9測定し、平均値を求めた。
反射率
日立自記分光光度計(型式U−3010)に150φの積分球を設置し、波長550nmにおける値を測定して反射率を求めた。
熱撓み性
サンプルを20cm×10cmに切出し、サンプル片面の10cmの両辺に両面テープを貼り、3mmアルミ板に浮かない様に貼り付け、80℃の温風乾燥機で15分加熱した際に、撓まないものを○、撓んだものを×とした。
【0039】
(実施例1)
芯がポリエステルテレフタレートで鞘がポリエチレンである芯鞘構造繊維(帝人ファイバー(株)製 TJ04EN(繊維径1.2dtex、繊維長5mm)10重量%と高密度ポリエチレンからなる合成パルプ(三井化学製“SWP”(登録商標)E620)90重量%を2L家庭用ミキサーに入れて水を満たし、繊維を開繊した。これを縦25cm×横25cm×高さ30cmの角型抄紙機に入れ抄造し、厚さ650μm、目付け210g/m2のシートを得た。次に、このシートをカレンダー機(由利ロール機械(株)製)にて129℃でカレンダー処理を行い、厚さを500μmとし、表面が毛羽立ちのない反射シートを得た。用いた合成パルプは、キーエンス社製デジタルHFマイクロスコープVH8000にて75倍で観察すると図1のようになる。得られた反射シートの反射率は98.5%であり、熱撓み性の評価は撓むことが無く良好であった。
【0040】
(実施例2〜6、参考例1〜5)
合成パルプ、芯鞘構造繊維及び反射シートを表1のようにしたこと以外は実施例と同様にして反射シートを得た。それらの反射率及び熱撓み性を評価した。
【0041】
(比較例1)
芯鞘構造繊維を全く用いず合成パルプのみを用いた以外は実施例1と同様にして反射シートを得た。得られた反射シートの反射率は98.4%であり、熱撓み性の評価は撓みが生じ好ましくなかった。
【0042】
(比較例2)
芯がポリプロピレンで鞘がポリエチレンである芯鞘構造繊維30重量%と高密度ポリエチレンからなる合成パルプ(三井化学製“SWP”(登録商標)E620)70重量%を用いた以外は実施例1と同様にして反射シートを得た。
得られた反射シートの反射率は97.4%であり、熱撓み性の評価は撓みが生じ好ましくなかった。
【0043】
(比較例3)
芯鞘構造繊維の繊維径を2.2dtexとした以外は比較例2と同様にして反射シートを得た。
得られた反射シートの反射率は97.4%であり、熱撓み性の評価は撓みが生じ好ましくなかった。
【0044】
(比較例4)
芯がポリエステルテレフタレートで鞘がポリエーテルスルホンである芯鞘構造繊維30重量%と高密度ポリエチレンからなる合成パルプ(三井化学製“SWP”(登録商標)E620)70重量%を用いた以外は実施例1と同様にして反射シートを得た。
得られた反射シートの反射率は98.2%であり、熱撓み性の評価は撓み評価は撓みがなく良好であったが、カレンダー加工した際に繊維がロールに付着して反射シートとしては好ましくなかった。
【0045】
(比較例5)
ポリエチレンテレフタレートからなる単繊維30重量%と高密度ポリエチレンからなる合成パルプ(三井化学製“SWP”(登録商標)E620)70重量%を用いた以外は実施例1と同様にして反射シートを得た。
得られた反射シートの反射率は98.4%であり、熱撓み性の評価は撓みが生じ好ましくなかった。
【0046】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】合成パルプの繊維の顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成パルプ及び芯鞘構造繊維を含み、該芯鞘構造繊維の芯部がエステル系重合体からなり鞘部がエチレン系重合体からなることを特徴とする反射シート。
【請求項2】
芯鞘構造繊維の平均繊維径が2.2dtex以下である請求項1記載の反射シート。
【請求項3】
合成パルプが、合成パルプと芯鞘構造繊維の合計量に対して70重量%以上である請求項1又は2に記載の反射シート。
【請求項4】
厚さが300〜700μmである請求項1〜3のいずれかに記載の反射シート。
【請求項5】
少なくとも片方の面に紫外線吸収剤層を有する請求項1〜4のいずれかに記載の反射シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の反射シート用いてなる面光源装置。
【請求項7】
請求項6に記載の面光源装置をバックライト光源手段とする液晶ディスプレイ装置。

【図1】
image rotate