説明

反射スクリーン、映像表示システム

【課題】明るい室内等であってもコントラストが高く、良好な画像を得ることができ、製造が容易であり安価で提供できる反射スクリーン、及び、これを備える映像表示システムを提供する。
【解決手段】スクリーン面に対して直交する断面において、光を透過可能な光透過部12と、光透過部12とスクリーン面に沿って交互に複数配列され、空気が存在する空洞部13とを備え、光透過部12及び空洞部13の裏面側には、光を反射する反射層15が形成されている反射スクリーン10とした。このとき、光透過部12は、スクリーン面に対して直交し、かつ、その配列方向に平行である断面において、裏面側における幅より映像源側における幅の方が広い略台形形状とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方から投影された映像光を反射させて観察可能とする反射スクリーン、及び、これを備える映像表示システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の反射スクリーンは、透明シートの前面側に光透過拡散層、背面側に光反射用のリニアフレネルレンズ面が設けられたものが知られていた(例えば、特許文献1)。また、特許文献2には、外光によるコントラストの低下を抑え、好適な視野角を得ることを可能にする反射スクリーンの構成が開示されている。さらに、特許文献3には、レンチキュラーレンズと反射部を設けた裏面の直交方向に配列されたリニアフレネルレンズの組み合わせによる反射スクリーンについて記載されている。
【0003】
しかし、よりコントラストの高い画像を得たいという要求、及び、投影側光源の光量が少ない場合であって、できる限り高輝度な画像を得たいという要求があった。また、高輝度な画像を得られた場合であっても、不要な映り込みを排除することは、常に要求されることである。
さらに、上述した従来の反射スクリーンでは、その製造工程が複雑になり、結果として製造コストが高くなるという問題があった。
【0004】
特許文献4には、単位プリズム形状の間の谷部分に光吸収部が形成されており、コントラストが高く、高輝度な映像を表示でき、製造が容易な反射スクリーンが開示されている。しかしながら、より製造が容易であり、生産コストを抑え安価に提供できる反射スクリーンとしたいという要求があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−29875号公報
【特許文献2】特開平10−62870号公報
【特許文献3】特開2002−311507号公報
【特許文献4】特開2006−301588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、明るい室内等であってもコントラストが高く、良好な画像を得ることができ、製造が容易であり安価で提供できる反射スクリーン、及び、これを備える映像表示システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施例に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、映像源から投影された映像光を反射させて観察可能にする反射スクリーンであって、スクリーン面に対して直交する断面において、光を透過可能な光透過部(12,22)と、前記光透過部とスクリーン面に沿って交互に複数配列され、空気が存在する空洞部(13,23)と、を備え、前記光透過部及び前記空洞部の裏面側には、光を反射する反射層(15)が形成されていること、を特徴とする反射スクリーン(10,20)である。
請求項2の発明は、請求項1に記載の反射スクリーンにおいて、前記光透過部(12,22)は、スクリーン面に対して直交し、かつ、その配列方向に平行である断面において、裏面側における幅より前記映像源側における幅の方が広い略台形形状であること、を特徴とする反射スクリーン(10,20)である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の反射スクリーンにおいて、前記光透過部(12,22)は、その配列方向において、非対称な形状であること、を特徴とする反射スクリーン(10,20)である。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の反射スクリーンにおいて、前記光透過部(22)と前記空洞部(23)との界面(22a,22b)がスクリーン面の法線方向となす角度は、前記光透過部と前記空洞部との配列方向の位置に応じて異なること、を特徴とする反射スクリーン(20)である。
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の反射スクリーンにおいて、前記反射層(15)は、該反射スクリーンの使用状態における垂直方向よりも水平方向の拡散作用が強いこと、を特徴とする反射スクリーン(10,20)である。
【0008】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の反射スクリーン(10,20)と、前記反射スクリーンに映像光を投影する映像源(L)と、を備える映像表示システムである。
請求項7の発明は、請求項6に記載の映像表示システムにおいて、前記映像源(L)は、前記反射スクリーン(10,20)の使用状態において、前記反射スクリーンの中央を通る法線より下方となる位置に設置されること、を特徴とする映像表示システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本発明による反射スクリーンは、スクリーン面に対して直交する断面において、光を透過可能な光透過部と、光透過部とスクリーン面に沿って交互に複数配列され、空気が存在する空洞部とを備え、光透過部及び空洞部の裏面側には、光を反射する反射層が形成されている。空洞部には、空気が存在するため、光透過部と空洞部との屈折率差が大きくなり、外光は、空洞部と光透過部との界面で全反射した後に反射層で反射され、再び空洞部と光透過部との界面で全反射する等して反射スクリーンの上方や下方等、映像光の観察に影響を与えない方向に向かい、スクリーン正面方向の観察者側へは映像光のみが反射される。従って、本発明によれば、コントラストが高く、照明等の付いた明るい室内等であっても良好な映像を表示できる。また、空洞部は、空気が存在するので、製造が容易であり、安価で提供できることに加え、反射スクリーンを軽量化できる。
【0010】
(2)光透過部は、スクリーン面に対して直交し、かつ、その配列方向に平行である断面において、裏面側における幅より映像源側における幅の方が広い略台形形状であるので、外光を反射スクリーンの上方や下方等、映像光の観察に影響を与えない方向へ効率よく反射させることができ、かつ、観察者側へは映像光のみを反射できる。よって、コントラストの高い映像を表示できる。
【0011】
(3)光透過部は、その配列方向において、非対称な形状であることので、映像光を観察者側へ向けて反射することができ、かつ、不要な外光を効率よく反射スクリーンの上方や下方等、映像光の観察に影響を与えない方向へ向けて反射することができる。
【0012】
(4)光透過部と空洞部との界面がスクリーン面の法線方向となす角度は、光透過部と空洞部との配列方向の位置に応じて異なるので、反射スクリーンに対する映像光や外光が入射すると想定される方向に応じて最適な形状とすることができ、映像光をより効率よく観察者側へ向けることができ、かつ、不要な外光を、映像光の観察に影響を与えない方向へ向けることができる。
また、光透過部と空洞部との界面がスクリーン面の法線方向となす角度が、その配列方向の位置に応じて異なるので、従来の映像源に比べ、より近い距離からより大きな入射角度で映像光を投射する短焦点系のプロジェクター等を映像源として使用する場合にも、良好な映像を表示できる。
【0013】
(5)反射層は、反射スクリーンの使用状態における垂直方向よりも水平方向の拡散作用が強いので、垂直方向に比べてより広い視野角を確保する必要がある水平方向の視野角を広げることができる。
【0014】
(6)本発明による反射スクリーンと、反射スクリーンに映像光を投影する映像源とを備える映像表示システムであるので、照明等の付いた明るい室内であっても、コントラストが高く、良好な映像を表示できる。
【0015】
(7)映像源は、反射スクリーンの使用状態において、反射スクリーンの中央を通る法線より下方となる位置に設置されるので、例えば、机上に設置された映像源から映像光を斜め上方へ向けて投射して反射スクリーン上に表示する場合等においても、コントラストが高く、良好な映像を表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態の映像表示システムを示す図である。
【図2】第1実施形態の反射スクリーン10の光透過部12に入射した映像光及び外光の様子を説明する図である。
【図3】第2実施形態の映像表示システムを示す図である。
【図4】第2実施形態の反射スクリーン20の光透過部22に入射した映像光及び外光の様子を説明する図である。
【図5】第2実施形態の反射スクリーン20の光透過部22に入射した映像光及び外光の様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、明るい室内等であってもコントラストが高く、良好な画像を得ることができ、製造が容易であり安価で提供できる反射スクリーン、及び、これを備える映像表示システムを提供するという目的を、スクリーン面に対して直交する断面において、光を透過可能な光透過部と、光透過部とスクリーン面に沿って交互に複数配列され、空気が存在する空洞部とを備え、光透過部及び空洞部の裏面側には、光を反射する反射層が形成されている反射スクリーンとすることにより実現した。このとき、光透過部は、スクリーン面に対して直交し、かつ、その配列方向に平行である断面において、裏面側における幅より映像源側における幅の方が広い略台形形状とした。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の映像表示システムを示す図である。なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。特に図1及び後述の図3では、室内照明G、映像源L,反射スクリーン10,20をまとめて模式的に示しているため、実際とは配置関係が異なり、各光線の入射角度等が後述の説明における大小関係とは異なる部分が含まれている。
また、本明細書中に記載する材料名等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用してよい。
さらに、本明細書中において、板、シート、フィルム等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無い。従って、板、シート、フィルムの文言は、適宜置き換えることができるものとする。例えば、シート状の部材は、フィルム状の部材としてもよいし、板状の部材としてもよい。
【0019】
本実施形態の映像表示システムは、反射スクリーン10、映像源Lを備えており、映像光を投影するプロジェクター光学エンジン部(映像源)Lを、反射スクリーン10の中央を通る法線に対して下方に設置し、映像光L0を、主に略スクリーン面に対して垂直に方向、又は、斜め上方へ投射させる配置としている。
また、本実施形態の映像表示システムは、外光源である室内照明Gが天井等の上方に配置された室内に設置されている。従って、室内照明Gが発する照明光等の外光G0は、反射スクリーン10に対して主に上方から入射する。
本実施形態の映像表示装置及びこれに用いられる反射スクリーン10は、上述のような環境を考慮してなされたものである。
なお、本実施形態では、映像源Lを、反射スクリーン10の中央を通る法線に対して下方に設置する例を挙げて説明するが、これに限らず、反射スクリーン10の中央を通る法線上に設置してもよい。
【0020】
図1では、第1実施形態の反射スクリーン10は、スクリーン面に直交し、かつ、反射スクリーン10の使用状態における垂直方向に平行な方向における断面図が示されている。
ここで、スクリーン面とは、反射スクリーン10全体として見たときにおける、反射スクリーン10の平面方向となる面を示すものであり、以下の説明中、及び、特許請求の範囲においても同一の定義として用いている。
また、以下の説明中において、特に断りが有る場合を除いて、垂直方向,水平方向とは、反射スクリーン10の使用状態における垂直方向,水平方向を示すものとする。
さらに、以下の説明中において、反射スクリーン10の垂直方向での断面とは、図1に示すように、スクリーン面に直交し、かつ、反射スクリーン10の使用状態における垂直方向(後述する光透過部12の配列方向)に平行な方向における断面であるとする。
本実施形態の反射スクリーン10は、基材部11,光透過部12,空洞部13,接着層14,反射層15,裏面層16,表面処理層17等を備えている。
【0021】
基材部11は、光透過部12を形成するときに必要な基材(ベース)となる部分であり、光透過性を有し、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等の樹脂製のシート状の部分である。本実施形態では、基材部11は、アクリル樹脂を用いて形成されている。なお、この基材部11には、必要に応じて所定の透過率に減じさせるようなグレー等の染料や顔料等で着色(ティント)が施されていてもよい。
【0022】
光透過部12は、光透過性を有し、図1に示す垂直方向における断面において、裏面側における幅より映像源側(観察面側)における幅の方が広い略台形形状の部分である。この光透過部12は、スクリーン面に沿って一方向に(図1では、垂直方向に)複数配列されている。
光透過部12は、紫外線硬化型樹脂を基材部11上に塗布し、型を当て付けた状態で紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させることにより、上述のような略台形形状が賦形される。なお、本実施形態では、光透過部12は、紫外線硬化型樹脂を用いて形成される例を示したが、これに限らず、電離放射線硬化型樹脂等の他の光硬化型樹脂を用いてもよい。また、アクリル樹脂、PET樹脂等の熱可塑性樹脂を用いて、熱溶融押し出し成形によって形成してもよい。なお、光透過部12を熱溶融押し出し成形で形成する場合には、基材部11を設けない形態としてもよい。
空洞部13は、隣り合う光透過部12の間の谷部分に形成され、空気が存在する部分である。
【0023】
本実施形態では、図1に示すように、光透過部12と空洞部13とは、スクリーン面に沿って垂直方向に交互に配列されている。
また、光透過部12及び空洞部13の垂直方向での断面形状は、垂直方向(光透過部12及び空洞部13の配列方向)において非対称な形状(上下方向において非対称な形状)である。ここで、光透過部12と空洞部13との界面となる2つの面のうち、光透過部12の下側の面(空洞部13の上側の面)を第1の面12a、光透過部12の上側の面(空洞部13の下側の面)を第2の面12bとし、第1の面12a,第2の面12bがスクリーン面の法線方向となす角度をそれぞれ、α1,β1とする。本実施形態では、反射スクリーン10の垂直方向における位置に関わらず、α1及びβ1は一定の大きさであり、かつ、α1<β1となっている。
【0024】
反射層15は、光透過部12及び空洞部13の裏面側に形成され、映像光及び外光を反射する機能を有する層である。本実施形態では、反射層15の映像源側(光透過部12側)の表面には、垂直方向に延在する微細な筋目(ヘアライン)が形成されている。
接着層14は、光透過部12及び空洞部13と反射層15との間に設けられ、略透明であり、粘着性又は接着性を有する部分である。接着層14は、反射層15を、光透過部12等と接合する機能を有している。
【0025】
本実施形態では、反射層15及び接着層14として、基材となるシート状の部材の片面に、予め微細な筋目を形成し、その表面にアルミニウムを蒸着し、さらにアルミニウムを蒸着した表面に、接着材又は粘着材が塗布されたシートを用いている。このようなシート状の部材を光透過部12の裏面側に貼付することにより、空洞部13を容易に形成できる。なお、ドライラミネート法と呼ばれる方法により、反射層15と光透過部12とを接合してもよい。
本実施形態では、上述のように、反射面(反射層15の表面)に微細な筋目(ヘアライン)が形成されているので、反射層15が反射する光は、垂直方向に比べて、水平方向へ拡散反射する成分が多くなる。従って、垂直方向に比べて、反射スクリーン10の水平方向での視野角を広げることができる。
【0026】
裏面層16は、反射層15の裏面側に設けられる層である。
本実施形態では、裏面層16は、黒色の樹脂製のシート状の部材を用いており、光を吸収する作用を有している。
表面処理層17は、基材部11より映像源側(観察面側)に設けられる層であり、反射防止、防眩、帯電防止、紫外線吸収、ハードコート、防汚等の処理が施される層である。
本実施形態では、表面処理層17は、反射防止処理が施されており、不要な外光の映り込みや映像源の映り込み等を低減する機能を有している。なお、この表面処理層に施す処理は、必要に応じて、適宜選択して自由に施すことができる。
【0027】
図2は、第1実施形態の反射スクリーン10の光透過部12に入射した映像光及び外光の様子を説明する図である。なお、図2では、反射スクリーン10は、垂直方向での断面図が示されており、理解を容易にするため、基材部11と表面処理層17とは、省略して示してある。
室内照明Gは、反射スクリーン10に対して上方に位置しているため(図1参照)、照明光等の不要な外光の多くは、反射スクリーン10の上方から、反射スクリーン10のスクリーン面に対して大きな入射角度で入射する。
光透過部12に入射した外光G1は、例えば、図2に示すように、光透過部12と空洞部13との界面(第2の面12a)に対して臨界角以上の角度で入射するので、全反射して反射層15側へ向かい、反射層15で反射した後に、光透過部12と空洞部13との界面(第1の面12b)で再び全反射する等して、反射スクリーン10の上方へ向かう。
また、裏面側から反射スクリーン10へ到達した外光G2は、反射スクリーン10の裏面側に設けられた裏面層16によって吸収される。
【0028】
一方、映像源Lは、反射スクリーン10の垂直方向の中央より下方に配置されるため、ほとんどの映像光は、反射スクリーン10のスクリーン面に対して、略法線方向から入射(映像光L1,L2)、又は、外光G1に比べて小さな入射角度で入射する(映像光L3)。
光透過部12に入射した映像光のうち、スクリーン面の略法線方向から入射した映像光の一部(映像光L1)は、反射層15で反射して、観察者O側へ戻される。
また、それ以外の映像光L2,L3は、光透過部12と空洞部13との界面に対して臨界角を超えない角度で入射し、空洞部13を透過して空洞部13の裏面側に位置する反射層15へ向かう。映像光L2,L3は、反射層15で反射した後に、再び、光透過部12と空洞部13との界面に入射し、光透過部12を透過して観察者O側へ向かう。
【0029】
上述のように、本実施例によれば、映像のコントラスト低下の原因となる照明光等の外光を、映像光の観察に影響を与えない方向(スクリーンの上方)へ向けることができ、かつ、映像光を観察者O側へ向かわせることができる。従って、照明が点いている明るい室内であっても、コントラストが高く、良好な映像を表示することができる。
また、反射層15の反射面は、垂直方向に比べて強い水平方向への拡散反射作用を有しているので、水平方向への視野角を広げることができ、反射スクリーンとして良好な視野角を得ることができる。
さらに、空洞部13は、空気が満たされているので、製造が容易であり、また、生産コストを抑えることができる。従って、高画質の反射スクリーンを安価で提供できる。また、反射スクリーン10を軽量化することができる。
さらにまた、反射スクリーン10は、外光を、光透過部12と空洞部13との界面で全反射させる等により、観察者Oが反射スクリーンを観察する際に影響を与えない外光源G側へ出射しており、外光を吸収するための光吸収部材等を用いていない。従って、映像光が光吸収剤等によって吸収されることがなく、映像光の光量の低下を防止でき、輝度の高い映像を表示できる。
加えて、表面処理層17は、反射防止処理を有しているので、不要な外光の映り込みや、映像源の映り込みを低減でき、画質をより向上させることができる。
【0030】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態の映像表示システムを示す図である。図3では、第2実施形態の反射スクリーン20は、スクリーン面の垂直方向での断面図が示されている。
第2実施形態の映像表示システムは、反射スクリーン20を用いている点が異なる以外は、第1実施形態に示した映像表示システムと略同様の形態である。
第2実施形態の反射スクリーン20は、基材部11,光透過部22,空洞部23,接着層14,反射層15,裏面層16,表面処理層17等を備えている。
この第2実施形態の反射スクリーン20は、垂直方向における断面での光透過部22及び空洞部23の形状が、第1実施形態に示した反射スクリーン10の光透過部12及び空洞部13とは異なる点以外は、第1実施形態に示した反射スクリーン10と略同様の形態である。従って、第2実施形態では、第1実施形態の反射スクリーン10と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0031】
光透過部22及び空洞部23は、光透過部22及び空洞部23の配列方向、すなわち、反射スクリーン20の垂直方向における位置によって、すなわち、反射スクリーン20の垂直方向に沿って映像源Lから離れるにしたがって、光透過部22と空洞部23との界面と反射スクリーン20の法線方向とがなす角度が徐々に変化している。そのため、図3に示すように、映像源Lから遠い反射スクリーン20の上方(領域A)と、上方に比べて映像源Lに近い反射スクリーン20の下方(領域B)とでは、光透過部22及び空洞部23の形状が異なっている。
図4及び図5は、第2実施形態の反射スクリーン20の光透過部22に入射した映像光及び外光の様子を説明する図である。図4は、図3に示した領域A(反射スクリーン20の使用状態における上方)での断面図であり、図5は、図3に示した領域B(反射スクリーン20の使用状態における下方)での断面図である。なお、図4及び図5では、理解を容易にするために、基材部11及び表面処理層17は、省略して示してある。
【0032】
図4,図5に示すように、反射スクリーン20の上方,下方において、空洞部23と光透過部22との界面のうち、光透過部22において、垂直方向下側となる界面(第1の面22a)と反射スクリーン20の法線方向とがなす角度をそれぞれ角度α2,α3とし、垂直方向上側となる界面(第2の面22b)と反射スクリーンの法線方向とがなす角度をそれぞれ角度β2,β3とする。
図4,図5に示すように、角度α2,α3は、反射スクリーン20の下方における角度α2がスクリーンの上方における角度α3よりも小さく(α2<α3)、反射スクリーン20の垂直方向において、上方から下方へ角度が徐々に大きくなっている。
また、角度β2,β3は、反射スクリーン20の下方における角度β2がスクリーンの上方における角度β3よりも大きく(β2>β3)、反射スクリーン20の垂直方向において、上方から下方へ角度が徐々に小さくなっている。
そして、反射スクリーン20の全面において、角度α(α2,α3)は、角度β(β2,β3)に比べて小さい(α<β、すなわち、α2<β2,α3<β3)形態となっている。
【0033】
次に、本実施形態の反射スクリーン20に到達した外光及び映像光の様子について説明する。まず、外光の様子について説明する。
図4,5に示すように、反射スクリーン20の上方に到達する外光G3は、外光源Gから遠い反射スクリーン20の下方に到達する外光G4に比べて、小さな入射角度でスクリーンへ入射する。そして、外光G3は、図4に示すように、光透過部22と空洞部23との界面(第1の面22a)に対して臨界角以上の角度で入射するので、その界面で全反射して反射層15側へ向かい、反射層15で反射した後に、光透過部22と空洞部23との界面(第2の面22b)で再び全反射する等して、反射スクリーン20の上方へ戻される。
【0034】
これに対して、図5に示すように、反射スクリーン20の下方に到達する外光G4は、スクリーンの上方に到達する外光G3に比べて大きな入射角度で反射スクリーン20へ入射する。そして、外光G4は、光透過部22を透過して光透過部22と空洞部23との界面(第1の面22a)へ到達するが、このとき、光透過部22と空洞部23との界面(第1の面22a)とスクリーン面の法線方向がなす角度α3は、上方の角度α2よりも大きい。そのため、外光G4は、光透過部22と空洞部23との界面(第1の面22a)に対して臨界角を超えない角度で入射してその界面で屈折し、空洞部23を透過して反射層15側へ向かう。そして、外光G4は、反射層15で反射した後、再び光透過部22と空洞部23との界面(第2の面22b)に入射してその界面で屈折し、光透過部22を透過し、反射スクリーン20の下方側へ出射さされる。すなわち、反射スクリーン20は、外光G4のように比較的大きな入射角度で、反射スクリーン20の上方から反射スクリーン20の下方部分に入射する外光を、観察者Oに影響を与えない方向へ出射することができる。
また、反射スクリーン20の裏面側へ到達した外光G5は、反射スクリーン20の上下方向における位置に依らず、第1実施形態に示した外光G2と同様に、反射スクリーン20の裏面層16によって吸収される。
【0035】
次に、映像光について説明する。
映像源Lは、反射スクリーン20の中央を通る法線上又は法線より下方に配置されるため(図3参照)、反射スクリーン20の下方に入射する映像光は、大部分が、図5に示すように、反射スクリーン20に対して略法線方向から入射(映像光L5)、又は、外光G4に比べて小さな入射角度で入射する(映像光L6)。
略法線方向から入射する映像光のうち、光透過部22と空洞部23との界面に入射しない映像光(映像光L5)は、光透過部22を透過して反射層15で反射し、光透過部22を再び透過して反射スクリーン20の略法線方向へ出射する。
また、映像光L5以外の略法線方向から入射する光や、外光G4に比べて小さな入射角度で反射スクリーン20へ入射する映像光(映像光L6)は、光透過部22と空洞部23との界面(図5では、第2の面22b)に対して臨界角以上の角度で入射して、その界面で全反射して反射層15側へ向かう。そして、映像光L6は、反射層15で反射した後、再び光透過部22と空洞部23との界面(図5では、第1の面22a)に対して臨界角を超える角度で入射して全反射し、再び反射スクリーン20の略法線方向へ出射して観察者O側へ向かう。
【0036】
一方、図4に示すように、反射スクリーン20の上方へ入射する映像光L4は、下方に入射する映像光L5、L6に比べて、反射スクリーン20に対して大きな角度で入射して、光透過部22を透過して、光透過部22と空洞部23との界面である第2の面22bに到達する。このとき、反射スクリーン20の上方では、光透過部22と空洞部23との界面である第2の面22bとスクリーン面の法線方向とがなす角度β2は、反射スクリーン20下方における角度β3に比べて小さい。
そのため、映像光L4は、光透過部22と空洞部23との界面である第2の面22bに対して臨界角を超えない角度で入射する。そして、映像光L4は、第2の面22bで屈折し、空洞部23を透過して空洞部23の裏面側に位置する反射層15へ向かい、反射層15で反射した後に、光透過部22と空洞部23との界面である第2の面22bに入射して第2の面22bで屈折し、光透過部12を透過して、観察者O側へ向かう。
【0037】
本実施形態によれば、上述のように、映像光L4,L5,L6を、反射スクリーン上の位置及び反射スクリーン20への入射角度によらず、観察者O側へ戻すことができる。また、外光G3,G4,G5を反射スクリーン上の位置及び反射スクリーン20への入射角度によらず、観察者O側へ戻すことができる。従って、本実施形態によれば、コントラストが高い良好な映像を表示することができる。
また、本実施形態の反射スクリーン20は、使用状態における垂直方向において、空洞部23と光透過部22との界面である第1の面22a,第2の面22bと反射スクリーン20の法線方向とがなす角度α,βが、それぞれ、垂直方向において徐々に変化している。従って、外光を全反射等を利用して外光源側へ再帰反射する(外光G3)又は光透過部と空洞部との界面での屈折を利用して下方へ反射する(外光G4)作用、映像光を全反射等により再帰反射する(映像光L5,L6)又は光透過部と空洞部との界面での屈折を利用して観察者O側へ戻す(映像光L4)作用をより効率よく行うことができる。よって、コントラストの向上や映像の輝度向上効果をより高めることができる。
【0038】
さらに、本実施形態においては、観察面側へ入射する外光を光透過部22と空洞部23との界面で全反射する等によって再帰反射する(外光G3)又は光透過部22と空洞部23との界面で屈折させる等によって反射スクリーン20下方へ反射(外光G4)しており、外光を吸収するための光吸収剤等を使用していない。従って、映像光が光吸収剤等によって吸収されることがなく、映像光の光量の低下を防止でき、輝度の高い映像を表示できる。
【0039】
(変形形態)
以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
(1)各実施形態において、空洞部13,23には空気が満たされている例を示したがこれに限らず、他の気体を用いて形成してもよい。
【0040】
(2)各実施形態において、光透過部12,22は、平面を組み合わせた略台形形状である例を示したが、これに限らず、例えば、その一部又は全てが曲面を組み合わせた形状や、平面又は平面と曲面とを組み合わせた五角形形状や六角形形状等の多角形形状としてもよい。また、光透過部12,22は、略台形形状に限らず、例えば、光透過部の空洞部との界面がスクリーンの法線方向に略平行である略矩形形状としてもよい。
【0041】
(3)第1実施形態において、光透過部12及び空洞部13は、その配列方向において非対称な形状である例を示したが、これに限らず、例えば、配列方向において対称な形状としてもよい。このとき、第1の面12a、第2の面12bがスクリーン面の法線方向に対してなす角度が等しくなる。
【0042】
(4)各実施形態において、反射層15の映像源側表面には、垂直方向に延在する微細な筋目(ヘアライン)が形成されている例を示したが、これに限らず、例えば、反射層15の映像源側表面に、反射層15の水平方向での断面形状が略正弦波形状であり、この略正弦波形状が略同一形状を保ち垂直方向に延在するような表面形状を付して、水平方向への拡散作用を向上させてもよい。また、表面形状の一例として、曲面によって形成され、水平方向において対称な形状である略正弦波形状を挙げたが、これに限らず、水平方向において非対称な形状として指向性を強めてもよいし、平面と曲面を組み合わせた形状としてもよいし、不連続な曲面を組み合わせた形状としてもよい。
【0043】
(5)各実施形態において、反射スクリーン10,20の反射層15及び接着層14は、基材となるシート状の部材の片面に、予め微細な筋目を形成し、その表面にアルミニウムを蒸着し、さらにアルミニウムを蒸着した表面に、接着材又は粘着材が塗布されたシートを用いている例を示したが、これに限らず、例えば、反射層15は、クロムや銀等の他の金属の蒸着膜を用いてもよいし、金属箔や転写箔等を用いてもよいし、光反射性の高い塗料等を用いてもよい。また、接着層14は、光透過部の反射層側端面(光透過部の台形形状の上底となる面)にのみに形成される形態としてもよい。
【0044】
(6)各実施形態において、反射スクリーン10,20の観察面側(映像源側)の表面に、反射防止処理等が施された表面処理層17が設けられる例を示したが、これに限らず、例えば、基材部11とは別層の表面処理層17を設けず、基材部11の観察面側(映像源側)表面に微細な凹凸を設けて、反射防止機能を持たせてもよい。
【0045】
(7)各実施形態において、反射スクリーン10,20は、固定式である例を示したが、これに限らず、例えば、不使用時には巻き取って収納可能な巻き取り式の反射スクリーンとしてもよい。
【0046】
(8)各実施形態において、光透過部12,22及び空洞部13,23は、同一断面形状で水平方向に延在し、垂直方向に配列される例を示したが、これに限らず、例えば、光透過部及び空洞部を水平方向に配列し、垂直方向に同一の断面形状が延在するように配置してもよく、反射スクリーンが使用される環境や、映像源及び外光源の位置等に合せて適宜自由に選択してよい。
【0047】
(9)各実施形態において、反射スクリーン10,20は、黒色の裏面層16を備える例を示したが、これに限らず、例えば、反射層が、裏面側にも反射作用を有していたり、裏面側からの外光を遮断できるような十分な厚みを有していたりする等して、裏面側からの外光を観察面側に透過させない機能を有するならば、裏面層16を設けなくてもよい。
【0048】
なお、各実施形態及び各変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は、以上説明した各実施形態及び各変形形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0049】
10,20 反射スクリーン
11 基材部
12,22 光透過部
13,23 空洞部
14 接着層
15 反射層
16 裏面層
17 表面処理層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像源から投影された映像光を反射させて観察可能にする反射スクリーンであって、
スクリーン面に対して直交する断面において、
光を透過可能な光透過部と、
前記光透過部とスクリーン面に沿って交互に複数配列され、空気が存在する空洞部と、
を備え、
前記光透過部及び前記空洞部の裏面側には、光を反射する反射層が形成されていること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載の反射スクリーンにおいて、
前記光透過部は、スクリーン面に対して直交し、かつ、その配列方向に平行である断面において、裏面側における幅より前記映像源側における幅の方が広い略台形形状であること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の反射スクリーンにおいて、
前記光透過部は、その配列方向において、非対称な形状であること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の反射スクリーンにおいて、
前記光透過部と前記空洞部との界面がスクリーン面の法線方向となす角度は、前記光透過部と前記空洞部との配列方向の位置に応じて異なること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の反射スクリーンにおいて、
前記反射層は、該反射スクリーンの使用状態における垂直方向よりも水平方向の拡散作用が強いこと、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の反射スクリーンと、
前記反射スクリーンに映像光を投影する映像源と、
を備える映像表示システム。
【請求項7】
請求項6に記載の映像表示システムにおいて、
前記映像源は、前記反射スクリーンの使用状態において、前記反射スクリーンの中央を通る法線より下方となる位置に設置されること、
を特徴とする映像表示システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−204573(P2010−204573A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52475(P2009−52475)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】