説明

反射スクリーンの製造方法、反射スクリーン

【課題】明室環境下であっても明るくコントラストが高い良好な映像を表示できる反射スクリーン、及び、そのような高品位な反射スクリーンを容易に製造可能な反射スクリーンの製造方法を提供する。
【解決手段】反射スクリーン10の製造方法は、単位レンズ111の配列方向においてレンズ面111a側から反射部12を形成する反射材料を塗布し、少なくともレンズ面111a上に反射部12を形成する反射部形成工程と、反射部形成工程の後に、レンズ層11の単位レンズ111及び反射部12が形成された面に光吸収層13を形成する光吸収材料を塗布して光吸収層13を形成する光吸収層形成工程とを備えるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射スクリーンの製造方法、及び、反射スクリーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、反射スクリーンに映像を投射する映像源として、至近距離からの投写で大画面表示を実現する短焦点型の映像投射装置(プロジェクタ)等が広く利用されている。このような短焦点型の映像投射装置は、反射スクリーンに対して、上方又は下方から従来の映像源よりも大きな入射角度で投射することができ、反射スクリーンを用いた映像表示システムの省スペース化等に寄与している。
そして、このような短焦点型の映像投射装置によって投射された映像光を良好に表示するために、単位レンズが複数配列されて形成されたリニアフレネルレンズ形状やサーキュラーフレネルレンズ形状を有するレンズ層の表面に反射層を形成した反射スクリーン等が様々に開発されている(例えば、特許文献1,2)。
また、反射スクリーンを用いた映像表示システムとして、明室環境下でもコントラスト等が良好な映像を表示可能である映像表示システムへの需要が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−29875号公報
【特許文献2】特開2008−76522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなレンズ層を用いた反射スクリーンでは、各レンズ形状を構成する単位レンズのレンズ形状の表面に反射層を形成し、投影された映像光を反射して映像を表示する。このような反射スクリーンの中には、映像光の反射に寄与しない非レンズ面に光を吸収する作用を有する光吸収層を形成することにより、外光や迷光等を吸収させ、コントラストの向上等を図ったものがある。
しかし、単位レンズは非常に微細であるため、反射層及び光吸収層を精度よく形成することは困難である。
特許文献1,2に記載の反射スクリーンは、上述のような光吸収層を備えておらず、また、光吸収層を備えた反射スクリーンの製造方法に関しては、一切開示されていない。
【0005】
本発明の課題は、明室環境下であっても明るくコントラストが高い良好な映像を表示できる反射スクリーン、及び、そのような高品位な反射スクリーンを容易に製造可能な反射スクリーンの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、映像源(30)から投射された映像光を反射させて観察可能に表示し、レンズ面(111a)及び非レンズ面(111b)を備える単位レンズ(111)が複数配列されたフレネルレンズ形状を背面側に有するレンズ層(11)と、前記レンズ層の少なくとも前記レンズ面上に形成される反射部(12)と、前記レンズ層及び前記反射部より背面側に形成される光吸収層(13)と、を備える反射スクリーンの製造法であって、前記単位レンズの配列方向において前記レンズ面側から反射材料を塗布し、少なくとも前記レンズ面上に反射部を形成する反射部形成工程と、前記反射部形成工程の後に、前記レンズ層の前記単位レンズ及び前記反射部が形成された面に光吸収材料を塗布して光吸収層を形成する光吸収層形成工程と、を備えること、を特徴とする反射スクリーンの製造方法である。
請求項2の発明は、請求項1に記載の反射スクリーンの製造方法において、前記反射部形成工程では、オフセット印刷により前記反射部(12)を形成すること、を特徴とする反射スクリーンの製造方法である。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の反射スクリーンの製造方法によって製造される反射スクリーンであって、前記反射部(12)は、前記レンズ面(111a)にのみ形成され、前記非レンズ面(111b)は、前記光吸収層(13)が被覆すること、を特徴とする反射スクリーン(10)である。
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2に記載の反射スクリーンの製造方法によって製造される反射スクリーンであって、前記レンズ面上に形成される第1反射部(12a)と、前記非レンズ面上に形成される第2反射部(12b)と、を備え、前記第2反射部は、前記第1反射部に比べて、その厚さが薄く、光反射作用が小さいこと、を特徴とする反射スクリーンである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レンズ面と非レンズ面で反射材料や光吸収材料を塗り分ける等の複雑な工程を経ることなく、容易に高品位の反射層を形成できる。また、本発明によれば、効率よく映像光を観察者側へ反射し、かつ、照明光等の不要な外光を吸収したり、観察者とは離れた方向へ反射したりすることができ、明室環境下でも明るくコントラストの高い良好な映像を表示できる反射スクリーンとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態の反射スクリーン10を備える映像表示システム1を示す図である。
【図2】実施形態の反射スクリーン10の層構成を示す図である。
【図3】実施形態の反射スクリーン10の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。従って、各光線の入射角度等に関して、実際の角度とは異なる場合がある。
また、板、シート、フィルム等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無いので、シート、板、フィルムの文言は、適宜置き換えることができるものとする。例えば、光学シートは、光学フィルムとしてもよいし、光学板としてもよい。
さらに、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用してよい。
【0011】
(実施形態)
図1は、本実施形態の反射スクリーン10を備える映像表示システム1を示す図である。図1(a)は、この映像表示システム1の斜視図であり、図1(b)は、この映像表示システムの側面図である。
この映像表示システム1は、反射スクリーン10、映像源30等を有している。本実施形態では、反射スクリーン10が映像源30から投影された映像光Lを反射して、その画面上に映像を表示する一般的な映像表示システムを例に挙げて説明するが、これに限らず、映像表示システム1は、例えば、映像光Lを映像源30から投射するフロントプロジェクションテレビシステム等としてもよいし、反射スクリーン10と映像源30と反射スクリーンの観察画面上の位置を検出する位置検出部やパーソナルコンピュータ等を備えたインタラクティブボードシステムとしてもよい。
映像源30は、映像光Lを反射スクリーンへ投影する映像投射装置であり、汎用のプロジェクタ等を用いることができる。この映像源30は、図1(b)に示すように、反射スクリーン10の使用状態におけるスクリーンの画面中央よりも下方側であって、反射スクリーン10の厚み方向における位置が従来のプロジェクタに比べて大幅に近い位置から映像光Lを反射スクリーン10に投射可能な短焦点型の汎用プロジェクタである。
【0012】
反射スクリーン10は、映像源30が投射した映像光Lを観察者O側へ向けて反射し、映像を表示する。使用状態において、この反射スクリーン10の観察画面は平面状であり、観察者O側から見て、その観察画面は、長辺方向が画面左右方向に平行となる略矩形状である。なお、以下の説明中において、画面上下方向、画面左右方向とは、特に断りが無い場合、この反射スクリーン10の使用状態における画面上下方向(鉛直方向)、画面左右方向(水平方向)であるとする。
この反射スクリーン10は、その背面側に、平板状の支持板50が、粘着材等からなる不図示の接合層を介して設けられており、この支持板50により、その平面性を維持している。本実施形態の支持板50は、光透過性を有していない。
【0013】
図2は、本実施形態の反射スクリーン10の層構成を示す図である。
図2(a)は、反射スクリーン10のスクリーン面に直交し、使用状態における画面上下方向に平行な断面での断面の一部を拡大して示し、図2(b)は、図2(a)における断面の単位レンズ111をさらに拡大して示している。また、図2(c)は、本実施形態の別の単位レンズ111の例を、図2(b)と同様の断面において示している。なお、図2では、理解を容易にするために、支持板50や基材層14等は適宜省略して示してある。
反射スクリーン10は、その映像源30側(観察面側)から順に、表面機能層15、基材層14、レンズ層11、反射部12、光吸収層13等を備えている。ここで、スクリーン面とは、この反射スクリーン10において、スクリーン全体として見たときにおける、反射スクリーン10の平面方向となる面を示すものであり、本明細書中、及び、特許請求の範囲においても同一の定義として用いている。この反射スクリーン10のスクリーン面は、反射スクリーン10の観察画面に平行である。
本実施形態の反射スクリーン10は、例えば、画面サイズが対角80インチサイズとすることができる。
【0014】
基材層14は、この反射スクリーン10の基材となる透明又は半透明のシート状の部材である。基材層14の映像源側(観察面側)には、表面機能層15が一体に形成され、背面側(裏面側)には、レンズ層11が一体に形成されている。
この基材層14としては、例えば、厚さが100〜200μmであるPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂や、PC(ポリカーボネート)樹脂、MS(メチルメタクリレート・スチレン)樹脂、MBS(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン)樹脂、アクリル系樹脂、TAC(トリアセチルセルロース)樹脂等の樹脂製のシート状部材を用いることができる。
【0015】
また、基材層14は、所定の透過率とするために、グレー等の染料や顔料等を含有することにより着色が施されていてもよいし、視野角を広げるために、拡散材を含有していてもよいし、顔料及び拡散材等を含有する層としてもよい。また、基材層14は、単層ではなく、複数の層が一体に積層された形態としてもよく、例えば、上述のような拡散材を含有する層と透明な層等が一体に積層された形態としてもよい。
本実施形態の基材層14は、厚さ200μmのMBS樹脂製であり、拡散材を含有するシート状の部材(拡散シート)を用いている。
【0016】
レンズ層11は、基材層14の背面側に設けられた光透過性を有する層であり、その背面側(基材層14とは反対側)の面には、フレネルレンズ形状が形成されている。
レンズ層11に形成されるフレネルレンズ形状は、単位レンズが一方向に配列されたリニアフレネルレンズ形状としてもよいし、単位レンズが同心円状に配列されたサーキュラーフレネルレンズ形状としてもよく、反射スクリーン10の使用環境や映像源30の光学特性等に合わせて、適宜最適な方を選択して用いることができる。
本実施形態では、レンズ層11は、リニアフレネルレンズ形状が形成されている例を挙げて説明する。本実施形態のレンズ層11のリニアフレネルレンズ形状は、単位レンズ111がスクリーン面に沿って画面上下方向に複数配列されることにより形成されている。
【0017】
レンズ層11は、紫外線硬化型樹脂により形成されている。なお、レンズ層11は、電子線硬化型樹脂等の他の電離放射線硬化型樹脂により形成してもよい。
このレンズ層11は、例えば、表面機能層15が一方の面に形成された基材層14の他方の面に、紫外線成形法等によりレンズ層11を形成することにより作成することができる。レンズ層11(単位レンズ111)を紫外線成形法により形成することにより、よりピッチの細かく、かつ、形状精度の高い単位レンズ111を形成することができる。なお、レンズ層11の形成方法は、適宜自由に選択してよく、この限りではない。
【0018】
単位レンズ111は、スクリーン面に直交する方向(反射スクリーン10の厚み方向)に平行であって単位レンズ111の配列方向(反射スクリーン10の画面上下方向)に平行な断面における断面形状が、略三角形形状であり、頂点tと、フレネルレンズ形状のレンズ面であるレンズ面111aと、頂点tを挟んでレンズ面111aと対向する非レンズ面111bとを有している。本実施形態の単位レンズ111は、背面側に凸となる略三角柱形状であり、その長手方向は、画面左右方向に平行であり、画面上下方向に配列されている。
単位レンズ111は、反射スクリーン10の使用状態において、レンズ面111aが頂点tを挟んで非レンズ面111bよりも鉛直方向上側に位置する。すなわち、鉛直方向において頂点tに対して、非レンズ面111bが映像源30側に位置し、レンズ面111aが映像源30とは反対側に位置する。
【0019】
単位レンズ111は、図2(b)に示すように、レンズ面111aがスクリーン面に平行な面となす角度がαであり、非レンズ面111bがスクリーン面に平行な面となす角度がβ(β>α)である。また、単位レンズ111の配列ピッチがPである。
単位レンズ111の配列ピッチPや角度α、角度βは、映像光を投影する映像源30(プロジェクタ)の画素(ピクセル)の大きさや、映像源30の映像光の投射角度(スクリーン面に対する映像光の入射角度)等に応じて、適宜変更可能である。
図2では、理解を容易にするために、単位レンズ111の配列ピッチP、角度α及び角度βは、一定である例を示しているが、実際には、角度αは、単位レンズ111の配列方向に沿って所定の角度範囲内でしだいに変化している。
【0020】
一例として、本実施形態の単位レンズ111は、配列ピッチPが100μm、角度αが6〜20°の範囲内で配列方向に沿って画面上下方向上側となるにしたがって大きくなるように連続的に変化しており、角度βが90°である。また、本実施形態の単位レンズ111(レンズ層11)は、ウレタンアクリレート樹脂製であり、その屈折率は、1.55である。
なお、配列ピッチPが単位レンズ111の配列方向に沿ってしだいに変化してもよいし、単位レンズ111は、反射スクリーン10を使用環境や所望する光学性能等に合わせて、適宜その形状を選択してよい。
【0021】
反射部12は、光を反射する作用を有し、少なくともレンズ面111a上(レンズ面111aの背面側)に形成されている。
反射部12は、白色系や銀色系の塗料や、白色形や銀色系の顔料やビーズ又は金属の微細な蒸着膜を粉砕した粒子等を含有する紫外線硬化型樹脂や熱硬化型樹脂等により形成される。また、反射部12は、明るい映像を表示するために、その反射率が40%以上とすることが好ましく、70%以上とすることがさらに好ましい。この反射部12により、レンズ面111aに入射する光は、反射される。
【0022】
本実施形態の反射部12は、レンズ面111aを被覆する形態となっており、銀色の顔料を含有する紫外線硬化型樹脂により形成されている。
なお、これに限らず、図2(c)に示すように、反射部12は、非レンズ面111b上にも形成されていてもよい。この場合には、非レンズ面111b上に形成された反射部12bの厚さは、レンズ面111a上に形成された反射部12aの厚さに比べて大幅に薄いものとすることが、外光や迷光を吸収し、コントラストを向上する観点から好ましい。また、図示しないが、反射部12は、レンズ面111aと、非レンズ面111bの頂点t近傍の領域に形成される形態としてもよい。この場合にも、非レンズ面111b上に形成される反射部12の厚さは、レンズ面111a上に形成される反射部12の厚さよりも薄い方が好ましい。
【0023】
光吸収層13は、光を吸収する作用を有する層であり、レンズ層11の非レンズ面111bと、レンズ面111a上の反射部12とを被覆するように形成されている。この光吸収層13は、黒色等の暗色系の塗料や、暗色系の顔料や染料、カーボン粒子等を含有する紫外線硬化型樹脂や熱硬化型樹脂等により形成される。
本実施形態の光吸収層13は、図2(a)に示すように、単位レンズ111間の谷部分を充填するように形成されているが、これに限らず、例えば、単位レンズ111及び反射部12の凹凸形状に沿って所定の厚さで形成されてもよい。このとき、十分な光吸収作用を有するならば、光吸収層13の厚さは一定でなくともよい。
【0024】
表面機能層15は、基材層14の観察者O側(映像源側)に設けられる層である。この表面機能層15は、反射防止機能や防眩機能、紫外線吸収機能、防汚機能や帯電防止機能等、適宜必要な機能を1つ又は複数選択して設けることができる。
この表面機能層15は、基材層14とは別層であって不図示の粘着材等により基材層14に接合される形態としてもよいし、基材層14のレンズ層11とは反対側の面に直接形成してもよい。
本実施形態の表面機能層15は、防眩機能及びハードコート機能を有しており、基材層14の映像源30側の表面に、ハードコート機能を有する電離放射線硬化型樹脂(例えば、ウレタンアクリレート等)を膜厚20μm程度で塗布して硬化させることにより、形成されている。
【0025】
ここで、図2(a)を参照しながら、本実施形態の反射スクリーン10へ入射する映像光及び外光の様子を説明する。なお、図2(a)では、理解を容易にするために、表面機能層15と基材層14とレンズ層11とは、同じ屈折率であるものとして示している。
映像源30から投影された映像光L1は、反射スクリーン10の下方から入射し、表面機能層15及び基材層14を透過してレンズ層11の単位レンズ111へ入射する。そして、図2(a)に示すように、映像光L1は、レンズ面111aに入射して反射部12によって反射され、観察可能な光線として観察者O側へ向かう。ここで、角度βが反射スクリーン10の画面上下方向の各点における映像光Lの入射角度よりも大きく(望ましくは90°)、かつ、映像光Lが反射スクリーン10の下方から投射されるため、非レンズ面111bには、映像光L1が入射しない。
【0026】
一方、照明光等の不要な外光は、主として反射スクリーン10の上方から入射し、表面機能層15及び基材層14を透過してレンズ層11の単位レンズ111へ入射する。そして、一部の外光は、図2(a)に示す外光G1のように、非レンズ面111bに入射して光吸収層13に吸収される。
なお、反射部が非レンズ面111b上に形成されている場合には、非レンズ面111b上に形成される反射部の厚さはレンズ面111a上に形成された反射部12に比べて薄く、十分な光反射性を有していないので、その殆どが光吸収層13へ入射して吸収される。従って、非レンズ面111b上に形成された反射部によって外光が反射されて生じる迷光等を大幅に抑えることができる。
【0027】
また、反射スクリーン10に上方から入射する外光の一部である外光G2は、図2(a)に示すように、レンズ面111aで反射して、反射スクリーン10の下方側であって観察者の視野角範囲外へ向かうので、観察者O側には直接届かない。
従って、上述のような光吸収層13による外光吸収作用や、反射部12による観察者Oの観察角度外への外光反射作用により、映像のコントラストを上げることができる。
よって、本実施形態の反射スクリーン10は、レンズ面111a上に形成された反射部12によって効率よく映像光Lを観察者O側へ反射でき、かつ、光吸収層13によって外光G1やレンズ層11内で発生した迷光等を吸収でき、さらに、外光G2を観察者Oには届かない方向へ反射するので、明室環境下であっても、明るく、コントラストの高い良好な映像を表示できる。
【0028】
(反射スクリーンの製造方法)
図3は、本実施形態の反射スクリーン10の製造方法を説明する図である。
なお、図3においては、反射スクリーン10の単位レンズ111の配列方向に平行であってスクリーン面に直交する方向(反射スクリーン10の厚さ方向)に平行な断面の一部を拡大して示している。
まず、図3(a)に示すように、基材層14を用意し、図3(b)に示すようにその一方の面に表面機能層15を形成する。
そして、次に、図3(c)に示すように、基材層14の表面機能層15とは反対側の面に、レンズ層11を形成する。このレンズ層11は、紫外線硬化型樹脂が充填されたフレネルレンズ形状を賦形する成形型に基材層14を押圧し、紫外線を照射して硬化させた後に成形型を離型する紫外線成形法等により作成される。レンズ層11の形成方法は、適宜選択してよく、この限りではない。また、レンズ層11は、上述のように、電子線硬化型樹脂等の他の電離放射線硬化型樹脂により形成してもよい。
【0029】
次に、図3(d)に示すように、オフセット印刷により、レンズ面111a上に反射部12を形成する。ブランケット胴40は、その外周面に、不図示の刷胴等から反射部12を形成する材料(本実施形態では、銀色の顔料を含有する紫外線硬化型樹脂)が転写されており、ブランケット胴40が回転しながら図3(d)に示す矢印A方向へ進むことにより、レンズ面111a上に所定の厚さで、反射部12を形成する材料が塗布される。
このとき、ブランケット胴40は、単位レンズ111の配列方向において、図3(d)に示す矢印A方向、すなわち、レンズ面111a側から非レンズ面111b側へ進む。そして、ブランケット胴40は、単位レンズ111を図3(d)に示す矢印B方向へ加圧するため、単位レンズ111がやや非レンズ面111b側へ倒れる。
【0030】
ブランケット胴40が単位レンズ111の配列方向においてレンズ面111a側から矢印A方向へ進むことにより、図3(e)に示すように、レンズ面111a上には、反射部12を形成する反射材料が塗布され、その塗膜が形成されるが、非レンズ面111b上には反射部12を形成する反射材料は塗布されない、もしくは、塗布された場合であってもその厚さは、レンズ面111a上に形成される塗膜に比べて大幅に薄いものとなる。
【0031】
形成された反射材料の塗膜は、紫外線照射等により硬化され、図3(e)に示すように、反射部12となる。
なお、反射部12の形成方法は、単位レンズ111の配列方向においてレンズ面111a側であってレンズ面111aに対して交差する方向から、反射材料を塗布、噴射、転写の何れかの方法により、形成されることが好ましい。特に、上述のオフセット印刷のように、ブランケット胴40により所定の方向から単位レンズ111を倒すようにして塗布することが好ましい。
【0032】
次に、図3(f)に示すように、スクリーン印刷等により、光吸収層13を形成する光吸収材料(本実施形態であれば、黒色顔料を含有する熱硬化性樹脂)を塗布して、硬化させ、光吸収層13が形成される。
なお、この光吸収材料を塗布する方法は、スクリーン印刷に限らず、例えば、グラビアリバースコート、インクジェット方式、フローコート方式、ダイコート方式等、公知の方法を適宜用いることができる。
【0033】
次に、所定の大きさに裁断するなどにより、反射スクリーン10が完成する。
なお、上述の図3では、理解を容易にするために、枚葉状の基材層14を使用する例を示したが、これに限らず、ウェブ状の基材層14を用いて反射スクリーン10を作製可能である。
また、本実施形態では、図3に示すように、表面機能層15は、レンズ層11を形成する前に基材層14の一方の面に形成される例を示したが、これに限らず、例えば、光吸収層13形成後に基材層14の単位レンズ111が形成される面とは反対側の面に形成してもよいし、形成する順序は、適宜選択して形成してよい。
【0034】
本実施形態によれば、上述のような製造方法を採用することにより、反射材料と光吸収材料との塗り分ける等といった煩雑な工程を経ることなく、容易に良好な映像を表示できる反射スクリーン10を製造できる。
また、ウェブ状の基材層を用いて作製する場合には、連続してレンズ層11を形成し、さらに、連続して反射部12及び光吸収層13を形成することができ、大量生産も容易に行え、生産コストを低減できる。
さらに、本実施形態によれば、上述のような製造方法により、効率よく映像光を観察者側へ反射し、かつ、照明光等の不要な外光は吸収したり、観察者とは離れた方向へ反射したりすることができ、明室環境下でも明るくコントラストの高い良好な映像を表示できる反射スクリーン10とすることができる。
【0035】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
(1)本実施形態において、反射部12は、白色や銀色の塗料等が用いられる例を示したが、これに限らず、例えば、銀やアルミニウム等の金属の蒸着膜や転写箔等により形成されてもよい。
【0036】
(2)本実施形態において、反射スクリーン10のレンズ層11の背面側にはリニアフレネルレンズ形状が形成される例を示したが、これに限らず、例えば、単位レンズが同心円状に配列されたサーキュラーフレネルレンズ形状が形成されたレンズ層としてもよい。
【0037】
(3)本実施形態において、反射スクリーン10は、基材層14,レンズ層11,反射部12,光吸収層13,表面機能層15等を備える例を示したが、これに限らず、例えば、光を拡散させる拡散材を含有した光拡散層や、反射スクリーンの剛性を高め、平面性を維持するためのガラス製や樹脂製の基板層や、コントラストを向上させる着色層や、タッチパネル層等を備えた形態としてもよい。
【0038】
(4)本実施形態において、反射スクリーン10は、その背面側に設けられた支持板50に粘着材層等を介して接合され、略平板状である例を示したが、これに限らず、例えば、粘着材層等を介して壁面に接合される形態としてもよい。
また、本実施形態において、反射スクリーン10は、使用状態及び不使用状態において略平板状である例を示したが、これに限らず、不使用時には巻き取って保管できる巻き取り可能な形態としてもよい。このような形態の場合には、支持板50等を設けず、反射スクリーン10の背面側を、光を透過しにくい布製又は樹脂製の遮光幕や耐傷性を向上させる保護層で被覆する形態としてもよい。
【0039】
(5)本実施形態において、単位レンズ111は、その配列方向に平行であって、反射スクリーン10の厚み方向に平行な断面において、レンズ面111a,非レンズ面111bがいずれも直線状である例を示したが、これに限らず、例えば、少なくとも何れかが曲線状であってもよいし、一部が曲面等であってもよい。また、レンズ面111a及び非レンズ面111bが複数の面から構成される形態であり、シート面に直交かつ単位レンズの配列方向に平行な断面において、その断面形状が例えば、略五角柱形状や略六角柱形状となる形状としてもよい。
【0040】
(6)本実施形態において、反射スクリーン10の使用状態において、映像光Lの主たる入射方向は、反射スクリーン10の下方からであり、単位レンズ111は、画面左右方向(水平方向)に同一断面形状で延在し、画面上下方向(垂直方向)に多数並んでいる例を示したが、これに限らず、例えば、映像光Lの主たる入射方向が画面上方である場合には、それに合わせて、本実施形態の反射スクリーン10を上下反転させた形態とすればよい。
【0041】
(7)本実施形態において、レンズ層11が基材層14の片面に紫外線成形により一体に形成される例を示したが、これに限らず、例えば、押し出し成形等によりレンズ層を形成してもよい。このとき、レンズ層11に十分な厚みがあれば、基材層14を備えない形態としてもよいし、レンズ層11と基材層14と一体に積層した状態で押し出し成形してもよい。これにより、大量生産がさらに容易になり、安価に提供できる。また、押し出し成形に限らず、射出成形やキャスト成形等、反射スクリーンの画面サイズ等に応じて、その製造方法は適宜選択してよい。
【0042】
(8)本実施形態において、反射部12は、非レンズ面111b上には形成されない例を示したが、これに限らず、レンズ面111a上の反射部12に比べて非常に薄い厚さであり、かつ、十分な反射性能を有していなければ非レンズ面111b上に形成されていてもよい。このような形態とした場合にも、非レンズ面111bに入射した光(主として外光や迷光)は、大半が光吸収層13によって吸収されるので、コントラストの低下を抑制できる。しかも、製造がより容易になり、かつ作業時間も低減できる。
【0043】
(9)本実施形態では、反射スクリーン10と映像源20とを備える映像表示システム1を示したが、これに限らず、例えば、パーソナルコンピュータ等の制御部や、使用者が触れた反射スクリーン10の画面上の位置を検出する位置検出装置を備え、位置検出装置及び映像源をパーソナルコンピュータ等の制御部と通信可能としたインタラクティブボードシステムとしてもよい。このような形態とすれば、例えば、使用者が反射スクリーン10の観察画面上にタッチペンや指等により描画した文字や図形等の情報を、投影画像と組み合わせ、図形や文字等が投影画像上に描かれたように表示したり、それらの情報を含む投影画像等をデータ化して保存したりすることができる。
また、反射スクリーン10は、一般的なホワイトボード等のように、マーカー等の所定の筆記具を用いてその表面(観察画面)に手書きで文字や図形等の情報を描画したり、描画した文字等を消去したりすることができる形態としてもよい。
【0044】
なお、本実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0045】
1 映像表示システム
10 反射素スクリーン
11 レンズ層
111 単位レンズ
111a レンズ面
111b 非レンズ面
12 反射部
13 光吸収層
14 基材層
15 表面機能層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像源から投射された映像光を反射させて観察可能に表示し、
レンズ面及び非レンズ面を備える単位レンズが複数配列されたフレネルレンズ形状を背面側に有するレンズ層と、
前記レンズ層の前記レンズ面上に形成される反射部と、
前記レンズ層及び前記反射部より背面側に形成される光吸収層と、
を備える反射スクリーンの製造法であって、
前記単位レンズの配列方向において前記レンズ面側から反射材料を塗布し、少なくとも前記レンズ面上に反射部を形成する反射部形成工程と、
前記反射部形成工程の後に、前記レンズ層の前記単位レンズ及び前記反射部が形成された面に光吸収材料を塗布して光吸収層を形成する光吸収層形成工程と、
を備えること、
を特徴とする反射スクリーンの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の反射スクリーンの製造方法において、
前記反射部形成工程では、オフセット印刷により前記反射部を形成すること、
を特徴とする反射スクリーンの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の反射スクリーンの製造方法によって製造される反射スクリーンであって、
前記反射部は、前記レンズ面上にのみ形成され、
前記非レンズ面は、前記光吸収層が被覆すること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の反射スクリーンの製造方法によって製造される反射スクリーンであって、
前記レンズ面上に形成される第1反射部と、
前記非レンズ面上に形成される第2反射部と、
を備え、
前記第2反射部は、前記第1反射部に比べて、その厚さが薄く、光反射作用が小さいこと、
を特徴とする反射スクリーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−68676(P2013−68676A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205337(P2011−205337)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】