説明

反射型スクリーン、反射型スクリーンの製造方法、及び反射型投射システム

【課題】高い反射率で映像光を反射可能としつつ、生産性が高くすることができる構成の反射型スクリーンを提供する。
【解決手段】映像源2から投射された映像光を観察者側に反射させる反射型スクリーン10であって、基材層11と、基材層よりも映像光が入射する側に配置される第一のリニアフレネルレンズ12と、基材層よりも映像光が入射する側とは反対側に配置され、第一のリニアフレネルレンズとは長手方向が90°ずれている第二のリニアフレネルレンズ13と、第二のリニアフレネルレンズに積層され、光を反射可能に蒸着により形成された蒸着反射層14と、を備えるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は映像源からの光を反射して観察者側に提供するための反射型スクリーン、当該反射型スクリーンの製造方法、及び反射型投射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
反射型スクリーンはプロジェクター等の映像源からの光を反射させて観察者側に出射し、その映像光を提供するためのスクリーンである。このような反射型スクリーンには、その裏面側に光を反射するための手段が設けられている。さらには、その反射光を輝度やコントラスト向上等による観察者にとって良質である光とするために、反射型スクリーンには光学的な形状が採用されている。例えば特許文献1には、スクリーン裏面の反射面を構成する部位にフレネルレンズ形状を用いたものが開示されている。ここにはフレネルレンズとしてサーキュラーフレネルレンズを用いた例やリニアフレネルレンズを2つ組み合わせて構成した例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3655972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年において、反射型スクリーンが対象とする映像が大型化する傾向にあり、大型化による明るさの低下を防止し、観察者により明るい映像を提供したいという要望がある。一方、このような反射型スクリーンの大型化は生産の困難を伴うことが多く、機能的な向上と製造の容易とを両立できることが好ましい。
【0005】
そこで本発明は、上記の問題に鑑み、高い反射率で映像光を反射可能としつつ、生産性を高くすることができる構成の反射型スクリーンを提供することを課題とする。また、このような反射型スクリーンの製造方法、及び反射型スクリーンを用いた反射型投射システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0007】
請求項1に記載の発明は、映像源(2)から投射された映像光を観察者側に反射させる反射型スクリーン(10、20)であって、基材層(11、21)と、基材層よりも映像光が入射する側に配置される第一のリニアフレネルレンズ(12)と、基材層よりも映像光が入射する側とは反対側に配置され、第一のリニアフレネルレンズとは長手方向が90°ずれている第二のリニアフレネルレンズ(13)と、第二のリニアフレネルレンズに積層され、光を反射可能に蒸着により形成された蒸着反射層(14)と、を備える、反射型スクリーンである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、映像源(2)と、該映像源から投射された映像光を観察者側に反射させる反射型スクリーン(10、20)と、を備える反射型投射システム(1)であって、反射型スクリーンは、基材層(11、21)と、基材層よりも映像源側に配置され、長手方向が鉛直とされる第一のリニアフレネルレンズ(12)と、基材層よりも映像源側とは反対側に配置され、第一のリニアフレネルレンズとは長手方向が90°ずれており、長手方向が水平である第二のリニアフレネルレンズ(13)と、第二のリニアフレネルレンズに積層され、光を反射可能に蒸着により形成された蒸着反射層(14)と、を備える、反射型投射システムである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、映像源(2)から投射された映像光を観察者側に反射させる反射型スクリーン(10、20)を製造する方法であって、基材層(11、21)の一方側に第二のリニアフレネルレンズ(13)を積層して積層体を形成し、これをロール状に巻き取る工程と、ロール状に巻き取られた積層体を巻き戻しつつ、第二のリニアフレネルレンズの表面に光を反射可能な層を蒸着して形成する工程と、蒸着して光を反射可能な層を形成した後に、基材層の第二のリニアフレネルレンズが形成された側とは反対側に、直接又は他の層を介して、第二のリニアフレネルレンズとは長手方向が90°ずらされた第一のリニアフレネルレンズ(12)が形成される工程と、を含む、反射型スクリーンの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、観察者側に提供される反射映像光の輝度を高いものとしつつ、生産性も高くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第一実施形態を説明する図で、反射型投射システムの斜視図である。
【図2】図1を矢印IIで示した方向から見た図である。
【図3】図1を矢印IIIで示した方向から見た図である。
【図4】反射型スクリーンの製造工程の一部を説明するための図である。
【図5】第二実施形態を説明する図で、反射型スクリーンの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。なお、以下に説明する反射型スクリーンに形成される形状は非常に微小なものであるため、以下に示す各図では見易さのため各形状を誇張、変形して表している。また、見易さのため、繰り返しのとなる符号は省略することがある。
【0013】
図1は第一実施形態を説明するための反射型投射システム1の斜視図である。また図2には図1にIIで示した方向から見た図(側面図)、図3には図1にIIIで示した方向から見た図(平面図)を示した。
【0014】
図1〜図3からわかるように、反射型投射システム1は、映像源2及び反射型スクリーン10を備えている。以下にそれぞれについて説明する。
【0015】
映像源2は、反射型スクリーン10に向けて映像光を投射する装置であり、公知のプロジェクターを用いることができる。図1〜図3からわかるように本実施形態では、映像源2は反射型スクリーン10より下方から映像光を反射型スクリーン10に向けて投射する。
【0016】
反射型スクリーン10は、全体として矩形の薄いシート状であり、使用時には展開されてシート面が鉛直方向に立てられるように設置される。なお、使用時において反射型スクリーン10の平面性を確保するため、反射型スクリーン10は所定の剛性を有する不図示の支持手段に粘着剤等により貼り付けられていることが好ましい。支持手段としては板やシート状の部材を挙げることができるが、反射型スクリーン10の姿勢を維持することができれば特に限定されることはない。また、支持体として柔軟性のあるものを用い、使用していないときにはロール状に巻いてコンパクトにすることができてもよい。
そして反射型スクリーン10は映像源2から投射された映像光を観察者A(図1参照)の側に反射させることによりスクリーンとして機能する。
【0017】
反射型スクリーン10の大きさは特に限定されることはないが、以下で示すように高い反射映像光の輝度を有しつつ、生産性にも優れるという効果を考慮すれば、より大きい反射型スクリーンにおいてその効果は顕著であり、例えば60インチ以上に反射型スクリーンで効果が顕著である。
【0018】
本実施形態の反射型スクリーン10は、基材層11、第一リニアフレネルレンズ12、第二リニアフレネルレンズ13、及び蒸着反射層14を備えている。
【0019】
本実施形態における基材層11は、第一リニアフレネルレンズ12及び第二リニアフレネルレンズ13の基材となるシート状の部材で、透光性が高く形成されている。基材層11を構成する材料は特に限定されることはないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン(MBS)、アクリル系、トリアセチルセルロース(TAC)等の各樹脂を挙げることができる。本実施形態は、入手性や取り扱い容易性、成形性、及び価格等の観点からMBSを用いた。
【0020】
ここで、基材層11は透光性を有しつつも、他の機能を備えてもよい。例えば視野角を拡大したり、面内の輝度の均一性を高めるために光散乱材を混入することができる。また、色調を修正したり、外光の一部を吸収してコントラストを向上させるために顔料や染料を混入してもよい。
【0021】
第一リニアフレネルレンズ12は、図1〜図3からわかるように、基材層11のうち観察者側に形成されるリニアフレネルレンズであり、複数の第一単位光学要素12aが配列されている。第一単位光学要素12aは、図3に現れる断面を維持して紙面奥手前方向に延びる柱状の要素であり、その延在する方向は、第一単位光学要素12aが配列される方向と直交する方向である。本実施形態では、反射型スクリーン10の使用の姿勢で第一単位光学要素12aが延びる方向が鉛直、複数の第一単位光学要素12aが配列される方向が水平である。
【0022】
図1、図3からわかるように、第一単位光学要素12aは、断面において観察者側に凸となるような三角形状の鋸刃状に形成されており、第一面12b、及び第二面12cを有している。第一面12b、第二面12cは後述するように扇状に広がって映像源2から出射される映像光の水平成分を、適切に屈折や全反射を利用して観察者方向へ出射するように設定される。
【0023】
ここで、第一面12bは、スクリーン面に平行な面となす角がβである(図3参照)。当該βは後で光路例を示すように、映像源2からの投射光のうち、水平方向成分を屈折又は全反射させ、蒸着反射層14による反射と併せて、最終的にこれを観察者に向けて出射させることができるように偏向機能を有するように構成されている。本実施形態では図3からわかるように、βの大きさは、複数の第一単位光学要素12aごとに異なり、具体的には、図3で表れる断面においてスクリーン中央の線に関して線対象であるとともに、中央でβが最も小さく、両端に向かう程βが大きくなるように形成されている。当該βの変化の程度は、映像源2からの光の角度等を考慮して適宜形状を選択することができる。従ってβの大きさは映像光を投射する映像源2の位置等に応じて適宜変更可能である。
【0024】
第一リニアフレネルレンズ12を構成する材料は、特に限定されることなく種々のものを使用することができる。ただし、スクリーン用の材料として広く使用され、優れた機械的特性、光学特性、安定性及び加工性等を有するとともに安価に入手可能な材料、例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等の一以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)が好適に使用され得る。
【0025】
第二リニアフレネルレンズ13は、図1〜図3からわかるように、基材層11のうち上記第一リニアフレネルレンズ12とは反対側に形成されるリニアフレネルレンズであり、複数の第二単位光学要素13aが配列されている。第二単位光学要素13aは、図2に現れる断面を維持して紙面奥手前方向に延びる柱状の要素であり、その延びる方向は、上記した第一単位光学要素12aが延びる方向に対して90°ずれた方向である。また、複数の第二単位光学要素13aは当該延びる方向に直交する方向に並べられるように配列される。本実施形態では、反射型スクリーン10が使用される姿勢で第二単位光学要素13aは、水平方向に延び、鉛直方向に配列されている。
【0026】
図1、図2からわかるように、第二単位光学要素13aは、断面において観察者側とは反対側に凸となるような三角形の鋸刃状に形成されており、第一面13b、第二面13cを有している。第一面13bは後述する蒸着反射層14の作用により光を反射させる反射面13bであり、第二面13cは反射面13bを形成するための立ち上げ面13cである。
【0027】
ここで、反射面13bは、スクリーン面に平行な面となす角がαである(図2参照)。当該αは後で光路例を示すように、映像源2からの投射光のうち、鉛直方向成分を反射させ、最終的にこれを観察者に向けて出射させることができるように偏向機能を有するように構成されている。従って、複数の第二単位光学要素13aの全てを同じ角度にする必要はなく、一部を変更したり、配列方向に沿ってしだいに変化させたりしてもよい。これらは映像源2から反射面13bに入射する光の角度等を考慮して適宜形状を選択することができる。
【0028】
第二リニアフレネルレンズ13を構成する材料は、特に限定されることなく種々のものを使用することができる。ただし、スクリーン用の材料として広く使用され、優れた機械的特性、光学特性、安定性および加工性等を有するとともに安価に入手可能な材料、例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等の一以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)が好適に使用され得る。
【0029】
上記αやβの大きさ、上記第一リニアフレネルレンズ12の第一単位光学要素12a、第二リニアフレネルレンズ13の第二単位光学要素13aのピッチや突出高さも特に限定されることなく、映像源2の投射角度等に応じて適宜変更可能である。例えば、第一単位光学要素12aのβの値はスクリーン左右方向(図3の紙面上下方向)中央付近で0°、端部付近で45.0°とし、第二単位光学要素13aのαの値はスクリーン鉛直方向(図2の紙面上下方向)下部付近で13.0°、上部付近で23.6°とすることもできる。ただしこの具体例はあくまでも例示であり、これに限定されるものではない。
【0030】
蒸着反射層14は、第二リニアフレネルレンズ13の表面に蒸着により形成された反射層である。蒸着膜の種類は特に限定されることはないが、高い反射率を得ることができるという観点から銀によるものやアルミニウムによるものを挙げることができる。銀蒸着による蒸着反射層の反射率は90%〜95%、アルミニウム蒸着による蒸着反射層の反射率は80%〜90%である。ただし、反射率に加えコストの観点を考慮すれば、アルミニウムによる蒸着反射層が好ましい。またその膜厚は0.05μm〜0.1μmが好ましい。かかる薄い膜厚でも高い反射率とすることができる。
このように第二リニアフレネルレンズ13に対して蒸着による反射層を形成することにより高い反射率を得ることができ、明るい映像を観察者に提供することができる。具体的には60%以上の反射率とすることが可能である。一方、従来では塗布による方法であり、これによれば反射率は60%未満であった。
また、本発明では、フレネルレンズをリニアフレネルレンズとすることにより、後述するように蒸着を効率的におこなうことができ、このような反射率の高い反射層を生産性良く形成することができる。
【0031】
次に、反射型スクリーン10に入射する映像光の進路について図2、図3に示した光路例L1〜L4を例に説明する。ただし、図に表した光路例は概念的に光の進路を表したものであり、屈折の程度や反射の角度を精密に表したものではない。
【0032】
図2に示した光路例L1、L2を参照しつつ、映像光のうち、鉛直方向成分に関する映像光の進行について説明する。映像源2から出射した映像光L1、L2は、斜め下方から第一リニアフレネルレンズ12の第一単位光学要素12aに上向きの角度で入射し、第二フレネルレンズ13に積層された蒸着反射層14で反射する。そして、再び同じ又は異なる第一単位光学要素12aから出射して観察者側に提供される。その際、適切な傾斜角度(α)とされた反射面13b上に形成された蒸着反射層14による反射の作用で観察者にとって見易いように光路が制御される。
【0033】
図3に示した光路例L3、L4を参照しつつ、映像光のうち、水平方向成分に関する映像光の進行について説明する。映像源2からの映像光L3、L4は、平面視(図3で表れた視点)において扇状に広がりを有して出射される。映像源2から出光し、反射型スクリーン10の水平方向中央付近に入射した映像光L3は、第一単位光学要素12aの第一面12bから反射型スクリーン10の内部に入射し、第二リニアフレネルレンズ13に積層された蒸着反射層14で反射する。反射した映像光L3は、再び同じ又は異なる第一単位光学要素12aの第一面12bから出射して観察者側に提供される。その際、上記したように第一リニアフレネルレンズ12の第一面12bは上記のように傾斜されている(傾斜角β)。従って、映像光の当該第一面12bへの出入の際の屈折により、蒸着反射層14における反射と相まって映像光L3は水平方向外側に発散されることなく偏向がおこなわれる。
一方、映像源2から出光し、反射型スクリーン10の水平方向端部付近に入射した映像光L4は、第一単位光学要素12aの第二面12cから反射型スクリーン10の内部に入射し、第一面12bで全反射して蒸着反射層14に向けて偏向される。そして映像光L4は蒸着反射層14で反射して再び同じ又は異なる第一単位光学要素12aの第一面12bから出射して観察者に提供される。すなわち、水平方向端部では単位光学要素12aは全反射を利用して映像光を偏向することができるようにβが構成されている。
【0034】
このように反射型スクリーン10によれば、映像光の鉛直方向及び水平方向のいずれにおいても、映像源2からの光を適切に観察者側に向けることができる。また、その際には蒸着反射層14で反射率が高められているので高い輝度の映像を観察者に提供することが可能である。
【0035】
次に反射型スクリーン10の製造方法の一例について説明する。
初めに基材層11上に第二リニアフレネルレンズ13を形成する。図4に説明のための図を示した。すなわち、第二リニアフレネルレンズ13を形成するに際し、当該第二リニアフレネルレンズの形状を転写可能な溝を有する金型ロール100を準備する。次に、当該金型ロール100とニップロール101との間に基材層11となる基材11’を送り込む。図4に示した矢印IVは、基材11’を送り込む方向である。基材11’の送り込みに合わせて、金型ロール100と基材11’との間に供給装置103から第二リニアフレネルレンズを構成する組成物104の液滴を供給し続ける。供給装置103から基材11’上に組成物104を供給するとき、金型ロール100と基材11’との間に、組成物104が溜まったバンク105が形成されるようにする。このバンク105において、組成物104が基材11’の幅方向に広がる。
【0036】
上記のようにして金型ロール100と基材11’との間に供給された組成物104は、金型ロール100及びニップロール101間の押圧力により、基材11’と金型ロール100との間に充填される。その後、光照射装置106によって組成物104に光を照射し、組成物104を硬化させ、第二リニアフレネルレンズ13を形成することができる。第二リニアフレネルレンズ13が形成された後、このシートは、剥離ロール107で引かれることによって、金型ロール100から引き剥がされる。そして基材層11と第二フレネルレンズ13との積層体はロール状に巻き取られる。
【0037】
ここでは、金型ロール100を用いて基材層11に第二リニアフレネルレンズ13を積層する例を示したが、必ずしも上記のような方法に限定されることはなく、例えば押し出し成型で形成することもできる。この場合には基材層11と第二リニアフレネルレンズ13とは境界がなく、一体である。
【0038】
次に、基材層11と第二リニアフレネルレンズ13とが積層されたシートのロールを蒸着装置に設置し、巻き出しつつ第二リニアフレネルレンズ13の面に蒸着を行い、蒸着反射層14を形成する。蒸着反射層14が形成されたシートは再び順次巻き取られてロールとされる。ここで、蒸着の方法は特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。これには例えば真空蒸着法、スパッタリング法等を挙げることができる。ただし、量産性及びコストの観点から真空蒸着法によるものが好ましい。
【0039】
そして、蒸着反射層14が形成されたロールを巻き出しつつ所定の大きさとなるように枚葉に切断する。枚葉に切断されたシートのうち、基材層11の第二リニアフレネルレンズ13が積層された側とは反対側の面に第一リニアフレネルレンズ12を形成する。第一リニアフレネルレンズ12は、第二リニアフレネルレンズ13と同様、第一リニアフレネルレンズ12の凹凸形状を転写可能な金型を用いた方法により形成することができる。
【0040】
以上のような反射型スクリーン10の製造方法によれば、フレネルレンズが全てリニアフレネルレンズにより構成されているので、少なくとも蒸着反射層の形成までをロールで行うことができ、製造効率を向上させることが可能である。フレネルレンズをサーキュラーフレネルレンズとした場合には、枚葉により製造せざるを得ず、特に蒸着を行う工程は、枚葉でおこなうといわゆるバッチ処理とする必要があるので効率が悪くなる。これに対して本実施形態ではこれを解消することが可能である。
【0041】
次に第二実施形態について説明する。図5には第二実施形態における反射型投射システムのうち、反射型スクリーン20の斜視図を表した。本実施形態の反射型投射システムのうち映像源2は第一実施形態と同様なのでここでは同じ符号を付して図示及び説明を省略する。
【0042】
反射型スクリーン20は、全体として矩形の薄いシート状であり、使用時には展開されてシート面が鉛直方向に立てられるように設置される。なお、使用時において反射型スクリーン20の平面性を確保するため、反射型スクリーン20は所定の剛性を有する不図示の支持手段に粘着剤等により貼り付けられていることが好ましい。支持手段としては板やシート状の部材を挙げることができるが、反射型スクリーン20の姿勢を維持することができれば特に限定されることはない。また、支持体として柔軟性のあるものを用い、使用していないときにはロール状に巻いてコンパクトにすることができてもよい。
そして反射型スクリーン20は映像源2から投射された映像光を観察者の側に反射させることによりスクリーンとして機能する。
【0043】
反射型スクリーン20の大きさは特に限定されることはないが、高い反射映像光の輝度を有しつつ、生産性にも優れるという効果を考慮すれば、より大きい反射型スクリーンにおいてその効果は顕著であり、例えば60インチ以上の反射型スクリーンで効果が顕著である。
【0044】
本実施形態の反射型スクリーン20は、基材層21、減光層22、第一リニアフレネルレンズ12、第二リニアフレネルレンズ13、及び蒸着反射層14を備えている。ここで、第一リニアフレネルレンズ12、第二リニアフレネルレンズ13及び蒸着反射層14は上記した第一実施形態の反射型スクリーン10と同様なので、ここでは同じ符号を付して説明を省略する。
すなわち、本実施形態の反射型スクリーン20では、基材層21の形態、及び基材層21と第一リニアフレネルレンズ12との間に減光層22が設けられている点で、第一実施形態で説明した反射型スクリーン10と異なる。そこで、ここでは基材層21及び減光層22について説明する。
【0045】
本実施形態における基材層21は、第二リニアフレネルレンズ13の基材となるシート状の部材で、透光性の高い母材中に光散乱材が混入されている。これにより、基材としての機能に加え、映像光の視野角を拡大し、画面内の輝度の均一性を向上させることができる。
基材層21の母材を構成する材料は特に限定されることはないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン(MBS)、アクリル系、トリアセチルセルロース(TAC)等の各樹脂を挙げることができる。本実施形態は、入手性や取り扱い容易性、成形性、及び価格等の観点からMBSを用いた。
一方、光散乱材は、一例として、平均粒径が1.0μm〜100μm程度であるシリカ(二酸化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂等の透明物質からなる粒子を用いることができる。これによれば母材と光拡散剤との屈折率差による界面反射や屈折を利用して光を散乱させることができる。
【0046】
減光層22は、外光の一部を吸収してコントラストを向上させる機能を有する層である。このような減光層は、母材となる樹脂に黒色の顔料や染料を混濁させたものを挙げることができる。母材を構成する材料は特に限定されることはないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン(MBS)、アクリル系、トリアセチルセルロース(TAC)等の各樹脂を挙げることができる。また、母材となる樹脂の代わりに、粘着材に黒色の顔料や染料を混濁させ、当該粘着剤で母材とその他機能層を貼合する形態としてもよい。
このような減光層22によれば、反射型スクリーン20に入射される映像光以外の光の少なくとも一部を吸収させることができ、観察者に提供される映像光のコントラストを向上させることができる。
【0047】
以上のような反射型スクリーン20についても、映像光は上記した反射型スクリーン10と概ね同じように反射型スクリーン20内を進み、観察者に映像が提供される。反射型スクリーン20によれば、映像光の鉛直方向及び水平方向のいずれにおいても、映像源2からの光を適切に観察者側に向けることができる。また、その際には蒸着反射層14で反射率が高められているので明るい映像を観察者に提供することが可能である。ただし、反射型スクリーン20では、基材層21で光が散乱されるので、これに起因して映像光の視野角が広げられ、また画面内の輝度の均一化が図られるように光が進む。
また反射型スクリーン20では、ここに入射した外光が減光層22を通過するとき、及び第二リニアフレネルレンズ13から反射して戻ってきた外光が減光層22を通過するとき、にそれぞれその一部が吸収される。これにより映像光に与える外光の影響を減ずることができ、コントラストの高い映像を提供することが可能となる。
【0048】
次に反射型スクリーン20の製造方法の一例について説明する。
初めに基材層21上に第二リニアフレネルレンズ13を形成して積層体を作製する。この工程は上記した反射型スクリーン10の製造方法と同様である。すなわち、第二リニアフレネルレンズ13を形成するに際し、当該リニアフレネルレンズの形状を転写可能な溝を有する金型ロールを準備する。次に、当該金型ロールとニップロールとの間に基材層21となる基材21’(不図示)を送り込む。基材21’の送り込みに合わせて、金型ロールと基材21’との間に供給装置から第二リニアフレネルレンズを構成する組成物の液滴を供給し続ける。供給装置から基材21’上に第二リニアフレネルレンズを構成する組成物を供給するとき、金型ロールと基材21’との間に、当該組成物が溜まったバンクが形成されるようにする。このバンクにおいて、この組成物が基材21’の幅方向に広がる。
【0049】
上記のようにして金型ロールと基材21’との間に供給された第二リニアフレネルレンズを構成する組成物は、金型ロール及びニップロール間の押圧力により、基材21’と金型ロールとの間に充填される。その後、光照射装置によって当該組成物に光を照射し、この組成物を硬化させ、第二リニアフレネルレンズ13を形成することができる。第二リニアフレネルレンズ13が形成された後、このシートは、剥離ロールを用いられて引かれることによって、金型ロールから引き剥がされる。そして基材層21と第二フレネルレンズ13との積層体がロール状に巻き取られる。
【0050】
ここでは、基材層21に第二リニアフレネルレンズを金型ロールを用いて積層する例を示しが、必ずしも上記のような方法に限定されることはなく、例えば押し出し成型で形成することもできる。この場合には基材層21と第二フレネルレンズ13とは境界がなく、一体となり、第二リニアフレネルレンズ内に光散乱材が含まれることになるがそれでも構わない。
【0051】
次に、基材層21と第二リニアフレネルレンズ13とが積層された積層体のロールを蒸着装置に設置し、巻き出しつつ第二リニアフレネルレンズ13の面に蒸着を行い、蒸着反射層14を形成する。蒸着反射層14が形成された積層体は再び順次巻き取られてロールとされる。ここで、蒸着の方法は特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。これには例えば真空蒸着法、スパッタリング法等を挙げることができる。ただし、量産性及びコストの観点から真空蒸着法によるものが好ましい。
【0052】
そして、蒸着反射層14が形成されたロールを巻き出しつつ、基材層21のうち第二リニアフレネルレンズ13が積層された側とは反対側の面に減光層22を形成する。減光層22の形成は、減光層22の形態により適宜その方法を適用することができ、例えば塗布、ロールを用いた方法等が挙げられる。または、上記押し出し成型時に基材層21と第二フレネルレンズ13、減光層22の2層構成としてもよいし、基材層21及び減光層22を共押し出し等で事前に成形しておき、その後に上記のように第二リニアフレネルレンズ13を成形してもよい。
その後、基材層21、減光層22及び第二フレネルレンズ13の積層体が枚葉に切断される。
【0053】
枚葉に切断された積層体のうち減光層22に第一リニアフレネルレンズ12を形成する。第一リニアフレネルレンズ12は減光層22の態様により適宜その方法を選択することができ、例えば、第二リニアフレネルレンズ13と同様に、第一リニアフレネルレンズ12の凹凸形状を転写可能な金型を用いる方法や、別途作製しておいた第一リニアフレネルレンズ12を貼り付ける方法であってもよい。
【0054】
以上のような反射型スクリーン20の製造方法によっても、フレネルレンズが全てリニアフレネルレンズにより構成されているので、少なくとも蒸着反射層の形成までをロールで行うことができ、製造効率を向上させることが可能である。フレネルレンズをサーキュラーフレネルレンズとした場合には、枚葉により製造せざるを得ず、特に蒸着を行う工程は、枚葉でおこなうといわゆるバッチ処理とする必要があるので効率が悪くなる。これに対して本実施形態では上記のようにこれを解消することが可能である。
【0055】
以上説明した各実施形態では、観察者側には鉛直に延びるリニアフレネルレンズを配置し、反射層が積層されるリニアフレネルレンズは水平方向に延びるように配置した。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、観察者側には水平に延びるリニアフレネルレンズを配置し、反射層が積層されるリニアフレネルレンズは鉛直方向に延びるように配置してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 反射型投射システム
2 映像源
10 反射型スクリーン
11 基材層
12 第一リニアフレネルレンズ
13 第二リニアフレネルレンズ
14 蒸着反射層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像源から投射された映像光を観察者側に反射させる反射型スクリーンであって、
基材層と、
前記基材層よりも前記映像光が入射する側に配置される第一のリニアフレネルレンズと、
前記基材層よりも前記映像光が入射する側とは反対側に配置され、前記第一のリニアフレネルレンズとは長手方向が90°ずれている第二のリニアフレネルレンズと、
前記第二のリニアフレネルレンズに積層され、光を反射可能に蒸着により形成された蒸着反射層と、を備える、
反射型スクリーン。
【請求項2】
映像源と、該映像源から投射された映像光を観察者側に反射させる反射型スクリーンと、を備える反射型投射システムであって、
前記反射型スクリーンは、
基材層と、
前記基材層よりも前記映像源側に配置され、長手方向が鉛直とされる第一のリニアフレネルレンズと、
前記基材層よりも前記映像源側とは反対側に配置され、前記第一のリニアフレネルレンズとは長手方向が90°ずれており、長手方向が水平である第二のリニアフレネルレンズと、
前記第二のリニアフレネルレンズに積層され、光を反射可能に蒸着により形成された蒸着反射層と、を備える、
反射型投射システム。
【請求項3】
映像源から投射された映像光を観察者側に反射させる反射型スクリーンを製造する方法であって、
基材層の一方側に第二のリニアフレネルレンズを積層して積層体を形成し、これをロール状に巻き取る工程と、
前記ロール状に巻き取られた前記積層体を巻き戻しつつ、前記第二のリニアフレネルレンズの表面に光を反射可能な層を蒸着して形成する工程と、
前記蒸着して前記光を反射可能な層を形成した後に、前記基材層の前記第二のリニアフレネルレンズが形成された側とは反対側に、直接又は他の層を介して、前記第二のリニアフレネルレンズとは長手方向が90°ずらされた第一のリニアフレネルレンズが形成される工程と、を含む、
反射型スクリーンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−252227(P2012−252227A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125754(P2011−125754)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】