説明

反射型スクリーンの製造方法および反射型スクリーン

【課題】投射光を効率よく反射し、生産性が高い反射型スクリーンの製造方法、および反射型スクリーンを提供する。
【解決手段】反射型スクリーンの製造方法は、スクリーン基材2の基材表面2Aに投射光を反射する反射膜3を形成する反射膜形成工程と、複数の凹部5を有するように反射膜3を変形させる反射膜変形工程と、凹部5の反射膜3の一部を剥離する反射膜剥離工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型スクリーンの製造方法および反射型スクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクター等の投射型表示装置から射出された投射光を反射して画像を表示する反射型スクリーンが知られている。そして、投射光を観察側に効率よく反射させるために、反射型スクリーンの基材に加工を施し、観察面の一部に反射膜を形成する反射型スクリーンの製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の反射型スクリーンの製造方法は、基材(スクリーン基板)の観察面に複数の凹部または凸部を形成した後、観察面に対して斜めからアルミニウム等の材料を蒸着し、凹部または凸部の表面の一部に反射膜を形成する。そして、反射型スクリーンは、この反射膜によって投射光を反射するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−15196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、観察面に対して斜めから蒸着するために、反射型スクリーンとなるサイズの基材単品毎に観察面となる面を起立させた状態で蒸着する必要があると考えられる。つまり、枚葉式の製造となるため、一回の蒸着で製造する枚数に限りが生じ、生産性が悪く、製造コストが高くなるという課題がある。また、ロール式で連続的に蒸着可能とはいうものの、開示されている図面のように、緩やかな角度に傾斜させた基材に蒸着させると、所望の領域より広い領域に反射膜が形成されてしまう恐れがある。さらに、特許文献1に記載の技術は、蒸着される面の蒸着源から遠い位置程、膜厚が薄くなって反射率が低下し、観察者が観察する画像の明るさの面内ばらつきが発生する恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る反射型スクリーンの製造方法は、シート状の基材の表面に投射光を反射する反射膜を形成する反射膜形成工程と、複数の凹部、または複数の凸部を有するように前記反射膜を変形させる反射膜変形工程と、前記凹部または前記凸部の前記反射膜の一部を剥離する反射膜剥離工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、反射膜形成工程は、反射膜変形工程の前に設けられているので、凹部や凸部の形状の影響を受けることなく、反射膜を形成できる。よって、反射膜を形成する際の反射型スクリーンの基材の姿勢等の制約が緩和されるので、複数の反射型スクリーンが形成可能な長尺状の基材に連続して反射膜を形成することができる。したがって、反射型スクリーンとなるサイズの基材単品毎に反射膜を形成する枚葉式に比べて生産性向上が可能となる。また、凹部や凸部の形状を施した後に反射膜を形成する場合に比べて、反射膜の厚さを均一にすることができるので、反射特性の面内ばらつきを抑制した良好な反射型スクリーンの提供が可能となる。
さらに、反射膜剥離工程を備えているので、凹部または凸部の反射膜の一部を剥離して反射型スクリーンの基材を露出させることができる。よって、基材として光を吸収する部材を用いることで、容易に光を反射する部位と光を吸収する部位とを形成できる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係る反射型スクリーンの製造方法において、前記反射膜形成工程は、金属材料を蒸着し、前記反射膜を形成する蒸着工程であることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、反射膜は、金属材料の蒸着によって形成されるので、印刷等で形成される場合に比べて膜厚が均一で、また、基材に対する隠蔽性が良好に形成される。よって、観察者に効率よく投射光を反射させる反射型スクリーンを提供することが可能となる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係る反射型スクリーンの製造方法において、前記反射膜形成工程は、反射性材料を含む塗料を塗布し、前記反射膜を形成する塗膜形成工程であることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、反射膜は、反射性材料を含む塗料が塗布されることによって形成されるので、小規模の装置によって反射膜を形成できる。また、反射性材料の種類を変更したり、反射性材料の含有率を調整したりすることが容易にできるので、使用環境下に対応した反射特性を有する反射型スクリーンの提供が可能となる。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係る反射型スクリーンの製造方法において、前記反射膜剥離工程は、前記基材の表面に対して斜めから研削材を前記凹部、または前記凸部に衝突させるブラスト加工を有することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、反射膜剥離工程にて、基材の表面(以下、「基材表面」という)に対して斜めから研削材を凹部または凸部に衝突させるので、凹部または凸部は、研削材が衝突し、反射膜が剥離して基材が露出する部位と、研削材が衝突せず、反射膜が残存する部位とを有することが可能となる。よって、基材として光を吸収する部材を用いることで、多くの工程を経ずに、一方からの投射光を効率よく反射すると共に、他方からの外光の反射を抑制する反射型スクリーンを提供することが可能となり、生産性向上が図れる。
【0015】
[適用例5]本適用例に係る反射型スクリーンは、上記記載の製造方法により製造されたことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、反射型スクリーンは、上述した製造方法によって製造されているので、低コストで効率よく投射光を反射すると共に、投射光とは異なる方向から入射する外光の反射を抑制し、コントラスト等の品質が良好な画像を表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態の反射型スクリーンが設置された状態を示す模式図。
【図2】第1実施形態の反射型スクリーンの製造方法の手順を示す模式図。
【図3】第1実施形態のエンボス加工装置による反射膜変形工程を説明する模式図。
【図4】第1実施形態の反射膜変形工程後のスクリーン基材を前方から見た模式図。
【図5】第1実施形態のドライアイス粒子吐出工程を説明する模式図。
【図6】第1実施形態の反射型スクリーンが設置された状態を模式的に示す断面図。
【図7】第2実施形態の塗膜形成工程を説明する模式図。
【図8】変形例の反射型スクリーンの一部を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係る反射型スクリーンについて、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の反射型スクリーン1が設置された状態を示す模式図である。本実施形態の反射型スクリーン1は、図示しないフレーム等に保持されており、図1に示すように、床FLに対して略垂直に起立して設置される。そして、反射型スクリーン1は、この反射型スクリーン1に対して近接し、床や机上等に配置されたプロジェクターPJから射出された投射光L1を観察側に反射する。なお、図1を含む各図面では、各構成要素を図面上で認識され得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法や比率を実際のものと適宜異ならせて示している。また、以下において、説明の便宜上、床FLに対する垂直方向を上下方向、起立された状態の反射型スクリーン1の床側を下側(−Y側)、反射型スクリーン1が投射光L1を反射する方向を前方向(+Z方向)、Y方向およびZ方向に直交する方向を横方向(X方向)として記載する。
【0019】
先ず、本実施形態の反射型スクリーン1の製造方法について説明する。
本実施形態の反射型スクリーン1は、シート状の基材(以下、「スクリーン基材」という)に投射光L1を反射する反射膜等が形成されて構成される。スクリーン基材は、反射型スクリーン1の形成領域を多数備え、反射型スクリーン1の上下方向となる方向が繋がる長尺状に形成されている。このスクリーン基材は、光吸収性を有する、例えば黒色の塩化ビニル樹脂で形成され、ロール状に巻き取られた状態から引き出されて加工される。
【0020】
反射型スクリーン1の製造方法は、反射膜形成工程としての蒸着工程、オーバーコート形成工程、反射膜変形工程、反射膜剥離工程、および切断工程を備えている。各工程には、図示しない搬送装置が備えられており、ロール状に巻き取れたスクリーン基材は、この搬送装置によって順次引き出し、巻き取りが行われて加工される。
【0021】
図2(a)〜(d)は、反射型スクリーン1の製造方法の手順を示す模式図である。
蒸着工程は、図2(a)に示すように、蒸着によって、スクリーン基材2の表面(基材表面2A)に、反射膜3としてのアルミニウム等の材料を形成する工程である。
図示は省略するが、蒸着工程において、ロール状に巻き取れたスクリーン基材2を基材表面2Aが蒸着材料の上方に水平となるように引き出し、先端を巻き取り側のロール部材に取り付ける。次に、基材表面2Aの下方から蒸着材料を基材表面2Aに蒸着させ、反射膜3を形成する。そして、反射膜3が形成されたスクリーン基材2を巻き取り、反射膜3が形成されていないスクリーン基材2を引き出し、連続的に反射膜3を形成する。
【0022】
オーバーコート形成工程は、図2(b)に示すように、反射膜3上に光透過性を有するアクリル系溶剤樹脂等のオーバーコート膜4を形成する工程である。オーバーコート膜4は、反射膜3の酸化や損傷を防止する機能を有し、表面4Aには、プロジェクターPJから射出された投射光L1が入射する。
オーバーコート形成工程は、オーバーコート塗布工程およびオーバーコート乾燥工程を備え、オーバーコート塗布工程からオーバーコート乾燥工程が連続して行われるように、各工程の装置が隣接して設けられている。
オーバーコート塗布工程において、ロール状に巻き取られ、反射膜3が形成されたスクリーン基材2を順次引き出し、反射膜3上にアクリル系溶剤樹脂等を塗布する。次に、オーバーコート乾燥工程にて、アクリル系溶剤樹脂等が塗布されたスクリーン基材2を乾燥炉に搬送し、アクリル系溶剤樹脂等を乾燥してオーバーコート膜4として形成した後、ロール状に巻き取る。
【0023】
反射膜変形工程は、図2(c)に示すように、複数の凹部5を有するように反射膜3を変形させる工程であり、エンボス加工装置が用いられる。
図3は、エンボス加工装置による反射膜変形工程を説明する模式図である。図3に示すように、エンボス加工装置は、弾性部材等で形成された受けローラー10、および外周に凹部5の形状に近似する凸部111が連続的に形成されたエンボスローラー11を備えている。受けローラー10およびエンボスローラー11は、互いに対向して配置され、それぞれ中心軸を中心に回転自在に保持されている。
【0024】
そして、反射膜変形工程にて、反射膜3およびオーバーコート膜4が形成されたスクリーン基材2をエンボスローラー11と受けローラー10との間に挟持させる。具体的に、図3に示すように、表面4Aがエンボスローラー11に当接し、スクリーン基材2側が受けローラー10に当接するように挟持させる。そして、エンボスローラー11を回転させて表面4Aに凸部111を押圧し、つまり凸部111の形状を表面4Aに転写し、オーバーコート膜4、反射膜3およびスクリーン基材2を窪ませて連続的に凹部5を形成する。
【0025】
凹部5は、図2(c)に示すように、略半球状に形成され、X方向およびY方向に規則的に多数設けられる。
図4は、反射膜変形工程後のスクリーン基材2を前方から見た模式図であり、1枚分の反射型スクリーン1を見た図である。具体的に、図4は、凹部5の中心線を結ぶ線を一点鎖線で示し、一部の凹部5を示した図である。図4に示すように、凹部5は、X方向において、反射型スクリーン1のX方向の中心線Y1上の所定の位置を中心として円弧状に配列し、Y方向において、この中心を同心とする同心円状に配列するように形成される。本実施形態の凹部5は、ピッチ300μm程度、深さ185μm程度となるように形成される。
【0026】
図2に戻って、反射膜変形工程の後に、図2(d)に示すように、反射膜剥離工程にて、凹部5のオーバーコート膜4の一部、および反射膜3の一部を剥離する。本実施形態では、ブラスト加工、具体的には、ドライアイスブラスト法を用いて、この2つの膜の一部を剥離する。ドライアイスブラスト法は、研削材としてのドライアイス粒子を圧縮空気によってノズルから対象物に衝突させ、衝突力と同時に、界面に到達したドライアイス粒子が昇華する際の膨張エネルギーを利用して膜を剥離する。
【0027】
反射膜剥離工程は、ドライアイス粒子吐出工程および基材搬送工程を備える。
図5は、ドライアイス粒子吐出工程を説明する模式図である。
図5に示すように、ノズル21は、ドライアイス粒子が反射膜変形工程前の基材表面2Aに対して斜めから衝突するように設定され、±X方向に移動可能に構成されている。具体的に、図5に示すように、ノズル21は、ドライアイス粒子が前方(+Z方向)から各凹部5の−Y側の内面に衝突するように傾斜して設定されており、ドライアイス粒子を吐出しながら±X方向に規則的に並ぶ凹部5に沿って移動する。そして、ドライアイス粒子吐出工程にて、ノズル21が−X側から+X側、あるいは+X側から−X側に向かって移動しながら、±X方向に並ぶ複数列の凹部5にドライアイス粒子を吐出し、各凹部5の−Y側内面のオーバーコート膜4、および反射膜3を剥離させる。
【0028】
次に、基材搬送工程にて、ドライアイス粒子吐出工程で±X方向に並ぶ複数列の凹部5が加工された後、加工された凹部5に隣接する未加工の凹部5にドライアイス粒子が吐出されるようにスクリーン基材2を−Y方向に搬送する。そして、ドライアイス粒子吐出工程および基材搬送工程を順次行うことによって、凹部5を連続的に加工する。
【0029】
反射膜剥離工程の結果、オーバーコート膜4および反射膜3が剥離された凹部5の−Y側の内面は、スクリーン基材2が露出し、光が吸収される吸収面5Aとして形成される。一方、凹部5の+Y側の内面は、オーバーコート膜4の表面41Aおよび反射膜3の反射面3Aを有して残存する。
【0030】
以上の工程にて、長尺状のスクリーン基材2には、複数の反射型スクリーン1が形成される。
切断工程は、この複数の反射型スクリーン1が形成されたスクリーン基材2から1つの反射型スクリーン1、例えば、100インチサイズの反射型スクリーン1となるように切断する。そして、反射型スクリーン1の製造が終了する。
【0031】
次に、本実施形態で製造された反射型スクリーン1について説明する。
図6は、反射型スクリーン1が設置された状態を模式的に示す断面図である。
図6に示すように、反射型スクリーン1は、凹部5の反射面3Aが吸収面5Aの上側となるように設置される。そして、反射型スクリーン1は、反射型スクリーン1の前方の下側に配置されたプロジェクターPJから斜め上方に射出された投射光L1を、観察側(+Z方向側)に反射する。
【0032】
反射型スクリーン1に射出された投射光L1は、投射光L1に対して対向する位置となる反射面3Aに入射する。一方、投射光L1に対して、反射面3Aの影となる吸収面5Aには、投射光L1は、殆ど入射しない。
【0033】
具体的に、図6に示すように、複数の凹部5のうちの1つの凹部5(凹部51とする)に注目して説明する。なお、凹部51の下方に隣接する凹部5を凹部52とする。
凹部51に向かう投射光L11の上側の光は、凹部51の表面41Aに入射する。一方、凹部51に向かう投射光L11の下側の光は、凹部52の表面41Aに入射する。つまり、凹部52の反射面3Aの影になる凹部51の吸収面5Aには、投射光L11は、殆ど入射しない。そして、凹部51,52の表面41Aに入射した投射光L11は、オーバーコート膜4を透過した後、反射面3Aにて反射膜変形工程前の基材表面2Aに対する法線Z1に近い方向に反射される。同様に、反射型スクリーン1に射出された投射光L1は、各凹部5の反射面3Aにて法線Z1に近い方向に反射される。
【0034】
ところで、図6に示すように、反射型スクリーン1には、投射光L1以外に上方(+Y方向)から天井灯等から射出された外光L2が入射する。反射型スクリーン1に入射した外光L2は、外光L2に対して対向する位置となる凹部5の吸収面5Aに多くが入射し、外光L2に対して、吸収面5Aの影となる反射面3Aには、僅かな光が入射する。そして、吸収面5Aに入射した外光L2は、スクリーン基材2に吸収され、観察側に反射されることが抑制される。
このように、反射型スクリーン1は、投射光L1を観察側のより法線Z1に近い方向に反射すると共に、上方からの外光L2の反射を抑制する。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の反射型スクリーン1の製造方法によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)反射膜形成工程は、反射膜変形工程の前に設けられているので、凹部5の形状の影響を受けることなく、ロール状に巻き取られた長尺状のスクリーン基材2から連続して反射膜3を形成できる。よって、反射型スクリーン1となるサイズのスクリーン基材2単品毎に反射膜3を形成する枚葉式に比べて生産性向上が可能となる。
【0036】
(2)凹部5の形状を施した後に反射膜3を形成する場合に比べて、反射膜3の厚さを均一にすることができるので、反射特性の面内ばらつきを抑制した良好な反射型スクリーン1の提供が可能となる。
【0037】
(3)反射膜3は、金属材料が蒸着によって形成されるので、印刷等で形成される場合に比べて膜厚が均一で、また、スクリーン基材2に対する隠蔽性が良好に形成される。よって、観察者に効率よく投射光を反射させる反射型スクリーン1を提供することが可能となる。
【0038】
(4)スクリーン基材2は、光吸収性を有する部材で形成され、反射膜剥離工程は、ブラスト加工によって、研削材を反射膜変形工程前の基材表面2Aに対して斜めから凹部5に衝突させるので、多くの工程を経ずに吸収面5Aおよび反射面3Aを形成することができ、生産性向上が図れる。
【0039】
(5)反射膜剥離工程は、ドライアイスブラスト法を用いているので、加工後研削材が昇華するため、残留物が低減し、残留物処理の簡素化や環境負荷の低減が図れる。
【0040】
(6)反射型スクリーン1は、上述した製造方法によって製造されているので、低コストで輝度やコントラスト等の品質が良好な画像を表示することが可能となる。
【0041】
(7)反射型スクリーン1は、投射光L1を法線Z1に近い方向に反射するので、観察者により明るい画像を提供できる。また、反射型スクリーン1は、反射型スクリーン1に近接して配置されたプロジェクターPJ、つまり短焦点レンズを備えたプロジェクターに対して観察側に効率よく投射光L1を反射できる。さらに、反射型スクリーン1は、天井灯等からの外光L2の反射を抑制するので、観察者が観察する画像のコントラストの低下を抑制することが可能となる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る反射型スクリーン1の製造方法について、図面を参照して説明する。
以下の説明では、第1実施形態と同様の構造および同様の部材には、同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
本実施形態の反射型スクリーン1の製造方法は、反射膜形成工程として蒸着工程の代わりに塗膜形成工程を備えている。
【0043】
塗膜形成工程は、反射膜塗布工程および反射膜乾燥工程を備えている。
図7は、塗膜形成工程を説明する模式図である。
反射膜塗布工程および反射膜乾燥工程は、反射膜塗布工程から反射膜乾燥工程が連続して行われるように、各工程の装置が隣接して設けられている。
【0044】
先ず、反射膜塗布工程にて、図7に示すように、ロール状に巻き取れたスクリーン基材2を順次引き出し、塗料吐出装置31によってスクリーン基材2の基材表面2Aにアルミニウム箔等の反射性材料を含む塗料を連続的に塗布する。本実施形態では、塗膜の厚さが5μm〜10μm程度の厚さとなるように塗布する。なお、反射性材料は、アルミニウムに限らず他の材料であってもよい。
【0045】
次に、反射膜乾燥工程にて、塗布されたスクリーン基材2を乾燥炉32に搬送し、塗布された塗料を乾燥させ、反射膜3を形成する。以降は、第1実施形態と同様に、オーバーコート形成工程、反射膜変形工程、反射膜剥離工程、および切断工程を経て反射型スクリーン1の製造が終了する。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の反射型スクリーン1の製造方法によれば、第1実施形態の効果(1)、(2)、(4)〜(7)に加えて、以下の効果を得ることができる。
(1)反射膜3は、反射性材料を含む塗料が塗布されることによって形成されるので、小規模の装置によって反射膜3を形成できる。また、反射性材料の種類を変更したり、反射性材料の含有率を調整したりすることが容易にできるので、使用環境下に適応した反射特性を有する反射型スクリーン1の提供が可能となる。
【0047】
(変形例)
なお、前記実施形態は、以下のように変更してもよい。
前記実施形態の反射型スクリーン1は、反射膜変形工程にて、複数の凹部5を有するように形成されているが、複数の凸部を有するように形成し、反射膜剥離工程にて、この凸部の反射膜3の一部を剥離するように構成してもよい。図8は、変形例の反射型スクリーン1の一部を模式的に示す断面図である。図8に示すように、反射膜剥離工程にて、各凸部6の+Y側の反射膜3およびオーバーコート膜4を剥離し、各凸部6の−Y側の反射膜3およびオーバーコート膜4を残存させる。そして、反射型スクリーン1に射出された投射光L1は、残存する反射膜3によって観察側に反射され、上方(+Y方向)からの外光L2は、反射膜3が剥離されたスクリーン基材2に吸収される。この凸部6の形状は、略半球状や、断面視における三角形状、いわゆるプリズム状の形状等が考えられる。
また、反射膜変形工程にて、凹部5と凸部6とが混在するように形成し、反射膜剥離工程にて、一方からの投射光L1を反射し、他方からの外光L2を吸収するように反射膜3およびオーバーコート膜4の一部を剥離するように構成してもよい。
【0048】
前記実施形態のブラスト加工は、ドライアイスブラスト法に限らず、他の方法、例えばサンドブラスト法等を用いてもよい。
【0049】
前記実施形態の各工程におけるスクリーン基材2の搬送方向を同一方向に設定し、各工程が連続的に繋がるように構成してもよい。例えば、反射膜変形工程および反射膜剥離工程が一連に加工さるように構成してもよい。
【0050】
前記実施形態の凹部5は、中心線Y1上の所定の位置を中心として円弧状に配列されているが、この配列に限らず、上下方向および横方向に直線状に配列するように形成してもよい。
【0051】
前記第2実施形態の反射膜塗布工程は、インクジェット等による液滴吐出法によって塗布するように構成してもよい。
【0052】
前記実施形態のスクリーン基材2は、反射型スクリーン1の上下方向となる方向が繋がる長尺状に形成されているが、反射型スクリーン1の横方向となる方向が繋がる長尺状となるように形成してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…反射型スクリーン、2…スクリーン基材、2A…基材表面、3…反射膜、3A…反射面、4…オーバーコート膜、5,51,52…凹部、5A…吸収面、6…凸部、L1,L11…投射光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基材の表面に投射光を反射する反射膜を形成する反射膜形成工程と、
複数の凹部、または複数の凸部を有するように前記反射膜を変形させる反射膜変形工程と、
前記凹部または前記凸部の前記反射膜の一部を剥離する反射膜剥離工程と、
を備えることを特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の反射型スクリーンの製造方法であって、
前記反射膜形成工程は、金属材料を蒸着し、前記反射膜を形成する蒸着工程であることを特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の反射型スクリーンの製造方法であって、
前記反射膜形成工程は、反射性材料を含む塗料を塗布し、前記反射膜を形成する塗膜形成工程であることを特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の反射型スクリーンの製造方法であって、
前記反射膜剥離工程は、前記基材の表面に対して斜めから研削材を前記凹部、または前記凸部に衝突させるブラスト加工を有することを特徴とする反射型スクリーンの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたことを特徴とする反射型スクリーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−53387(P2011−53387A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201337(P2009−201337)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】