説明

反射壁

【課題】反射光による周辺環境への影響を低減することができる反射壁を提供することを課題とする。
【解決手段】反射壁1であって、反射面22aを有する反射部20が壁体10の外壁面10aに形成されており、反射面22aは、南中高度に位置している太陽に正対するように傾斜している。また、反射面22aの法線の水平面に対する傾斜角度を夏至の南中高度に合わせることが好ましい。さらに、反射部20に他の反射面22b,22cを形成し、他の反射面22b,22cの法線の傾斜角度を反射面22aの法線の傾斜角度よりも小さく形成することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光を反射させる反射壁に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光を反射させる反射壁としては、傾斜面を有する反射タイルを壁体の外壁面に貼り付けることで、太陽光を反射させているものがある(例えば、特許文献1参照)。
このような反射壁では、太陽光による壁体の温度上昇を抑制することができるため、ヒートアイランド現象を抑制するとともに、建物内の冷却効率を向上させ、エネルギー効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−192016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の反射壁では、外壁面に対するタイルの傾斜角度が小さいため、太陽光が入射方向以外に反射される成分が多くなり、他の建物や地面等に向けて反射される光量が多くなるという問題がある。特に、太陽が南中高度に位置しているときには、太陽光のエネルギーが大きくなるため、他の建物や地面等に向けて反射された反射光による周辺環境への影響が大きくなる。
【0005】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、反射光による周辺環境への影響を低減することができる反射壁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、反射壁であって、反射面を有する反射部が壁体の外壁面に形成されており、前記反射面は、南中高度に位置している太陽に正対するように傾斜していることを特徴としている。
【0007】
この構成では、太陽光のエネルギーが大きくなり、反射効果を必要とする時期に、太陽光を天空方向に反射させることができ、意図しない方向への強い反射を防ぐことができるため、反射光による周辺環境への影響を低減することができる。
なお、前記した構成では、反射面の法線の水平面に対する傾斜角度を、南中高度に合わせることで、反射面を南中高度に位置している太陽に正対させることができる。このとき、反射面の法線の傾斜角度は、南中高度に一致している必要はなく、南中高度に対してプラスマイナス10度の範囲内に収まっていればよい。
また、本発明では、複数の反射面を介して太陽光を反射させる構成と比べて構造が簡単であるため、製造コストを安くすることができる。
【0008】
前記した反射壁において、前記反射面の法線の水平面に対する傾斜角度を夏至の南中高度に合わせて設定した場合には、一年中で最も太陽光のエネルギーが大きくなり、反射効果を最も必要とする時期に、太陽光を天空方向に反射させることができるため、反射光による周辺環境への影響を効果的に低減することができる。この構成においても、反射面の法線の傾斜角度は、夏至の南中高度に一致している必要はなく、夏至の南中高度に対してプラスマイナス10度の範囲内に収まっていればよい。
【0009】
前記した反射壁において、前記反射部に他の反射面を形成し、前記他の反射面の法線の傾斜角度を、前記反射面の法線の傾斜角度よりも小さく形成した場合には、南中時刻の前後の時刻における太陽光を天空方向に反射させることができる。
【0010】
前記した反射壁において、前記反射部に他の反射面を形成し、前記他の反射面の法線の水平面に対する傾斜角度を、冬至の南中高度に合わせて設定するとともに、前記他の反射面を前記反射面よりも低い反射率に仕上げてもよい。この構成では、他の反射面は冬至の南中高度に位置している太陽に正対し、他の反射面では冬季に太陽光による熱の吸収率が高くなるため、建物内の暖房効率を高めることができる。
なお、他の反射面の法線の傾斜角度は、冬至の南中高度に一致している必要はなく、冬至の南中高度に対してプラスマイナス10度の範囲内に収まっていればよい。
【0011】
前記した反射壁において、前記反射部を前記壁体の外壁面に形成された凹部によって形成し、前記凹部の内面に前記反射面を形成した場合には、壁体に対して反射面を簡単に形成することができるとともに、壁体の厚みを小さくすることができる。
【0012】
前記した反射壁において、前記反射部を前記壁体の外壁面に形成された突出部によって形成し、前記突出部の外面に前記反射面を形成した場合には、壁体に対して反射面を簡単に形成することができる。
【0013】
前記した反射壁において、前記壁体の外壁面に複数の前記反射部を形成することで、外壁面の広範囲で太陽光を天空方向に反射させることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の反射壁では、反射効果を必要とする時期に、太陽光を天空方向に反射させることができ、意図しない方向への強い反射を防ぐことができるため、反射光による周辺環境への影響を低減することができる。また、構造が簡単であるため、製造コストを安くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の反射壁を示した斜視図である。
【図2】本実施形態の反射部を示した図で(a)は正面図、(b)は側断面図である。
【図3】(a)は本実施形態の反射面と南中高度の関係を示した説明図、(b)は本実施形態の反射面の方角を示した説明図である。
【図4】他の実施形態の反射部を示した図で、突出部によって反射部が形成されている構成の斜視図である。
【図5】他の実施形態の反射部を示した図で、法線の傾斜角度を冬至の南中高度に合わせた第四の反射面を形成した構成の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態の反射壁1は、図1に示すように、建物などの構造物の側壁に用いられるコンクリート製の壁体10からなる。
壁体10には、外部に露出した鉛直面である外壁面10aが形成されている。外壁面10aには複数の反射部20が形成されている。本実施形態では、外壁面10aは南向きに配置されている。
【0017】
反射部20は、外壁面10aに形成された凹部21であり、外壁面10aよりも壁体10の内側に背面21aが形成されている(図2(b)参照)。本実施形態では、左右方向に並べられた二つの反射部20,20の間の上方または下方に、他の列の反射部20が配置されるように、上下の列では反射部20の左右方向の位置をずらして配列されている。
【0018】
凹部21は、図2(a)に示すように、正面視で略半円形状に形成されている。凹部21の上部には円弧状の曲面21bが形成され、凹部21の底部21c(下部)には、三つの反射面22a,22b,22cが形成されている。
【0019】
反射部20を形成する凹部21の形状は限定されるものではないが、図2(b)に示すように、外部から凹部21に入射された太陽光が、三つの反射面22a,22b,22cに照射されるように、凹部21の高さや開口形状が設定されている。
【0020】
三つの反射面22a,22b,22cは、図2(a)に示すように、反射部20の底部21cの上面に形成された平坦な面であり、第一の反射面22aと、第一の反射面22aの左右両側に配置された第二の反射面22bおよび第三の反射面22cとが形成されている。また、各反射面22a,22b,22cには、太陽光の反射率を高めるために、反射塗料や白い塗料が塗布されている。
【0021】
図3(a)に示す第一の反射面22aの法線H1は、南に配置された太陽を含む鉛直面S1(図3(b)参照)内において水平面に対して傾斜しており、その傾斜角度は、反射壁1の構築場所における夏至の南中高度Aに一致している。具体的には、第一の反射面22aは、夏至の南中高度に位置した太陽に正対するように、外壁面10a側よりも背面21a側が高い傾斜面となっている。
ここで、本実施形態では、外壁面10aが南向きに配置されており、夏至の南中時刻には、南中高度が約70度(東京地方における角度)となる。第一の反射面22aは、その法線H1が夏至の南中高度Aに一致するように、水平面に対して約20度の角度で傾斜している。
このような第一の反射面22aでは、夏至の南中高度に位置した太陽から入射された太陽光の多くの成分を天空方向に反射させることができる(図2(b)参照)。
【0022】
なお、本実施形態では、第一の反射面22aの法線H1の水平面に対する傾斜角度を、夏至の南中高度Aに一致させているが、第一の反射面22aの法線H1の傾斜角度を、夏至の南中高度Aに対してプラスマイナス10度の範囲内に設定することで、第一の反射面22aを夏至の南中高度Aに位置した太陽に正対させることができる。
【0023】
第二の反射面22bは、図2(a)において第一の反射面22aの左側に配置されている。図3(a)に示す第二の反射面22bの法線H2は、前記した第一の反射面22bの法線H1が配置される鉛直面S1(図3(b)参照)よりも、南東の方角に回転した鉛直面S2(図3(b)参照)内で傾斜している。水平面に対する法線H2の傾斜角度は、第一の反射面22aの法線H1の傾斜角度よりも小さくなっている。すなわち、第二の反射面22bは、夏至の南中時刻よりも前の時刻(例えば一時間前)において太陽に正対するように、水平面に対して傾斜している。
このような第二の反射面22bでは、夏至の南中時刻よりも前の時刻における太陽から入射された太陽光の多くの成分を天空方向に反射させることができる。
【0024】
第三の反射面22cは、図2(a)において第一の反射面22aの右側に配置されている。図3(a)に示す第三の反射面22cの法線H3は、前記した第一の反射面22bの法線H1が配置される鉛直面S1(図3(b)参照)よりも、南西の方角に回転した鉛直面S3(図3(b)参照)内で傾斜している。水平面に対する法線H3の傾斜角度は、第一の反射面22aの法線H1の傾斜角度よりも小さくなっている。すなわち、第三の反射面22cは、夏至の南中時刻よりも後の時刻(例えば一時間後)において太陽に正対するように、水平面に対して傾斜している。
このような第三の反射面22cでは、夏至の南中時刻よりも後の時刻における太陽から入射された太陽光の多くの成分を天空方向に反射させることができる。
【0025】
以上のような反射壁1では、図2(a)に示すように、太陽が夏至の南中高度に位置しているときに、第一の反射面22aを太陽に正対させることができる。したがって、太陽光のエネルギーが一年中で最も大きくなり、太陽光を天空方向に反射させることができ、意図しない方向への強い反射を防ぐことができるため、反射光による周辺環境への影響を効果的に低減することができる。
【0026】
また、夏至の南中時刻の前後で太陽に正対する第二の反射面22bおよび第三の反射面22cを形成することで、反射効果を最も必要とする時刻の前後に亘って、太陽光を天空方向に反射させることができる。
【0027】
また、図1に示すように、外壁面10aに複数の反射部20が形成されているため、外壁面10aの広範囲で太陽光を天空方向に反射させることができ、壁体10の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0028】
また、複数の反射面を介して太陽光を反射させる構成と比べて構造が簡単であるため、製造コストを安くすることができる。さらに、反射部20は壁体10の外壁面10aに形成された凹部21によって形成されているため、壁体10に対して各反射面22a,22b,22cを簡単に形成することができるとともに、壁体10の厚みを小さくすることができる。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、本実施形態では、図3(b)に示すように、外壁面10aが南向きに配置されているが、外壁面10aの向きは限定されるものではない。
また、本実施形態では、図3(a)に示すように、第一の反射面22aの法線H1の水平面に対する傾斜角度を、夏至の南中高度Aに合わせているが、夏至の南中高度Aに限定されるものではなく、反射壁1の構築場所における周辺環境を考慮し、反射面22aで反射される光量を低減することが有効な時期の南中高度に合わせてもよい。
【0030】
また、図2(a)に示すように、反射部20を凹部によって形成しているが、図4に示すように、壁体10の外壁面10aに形成された突出部31によって反射部30を形成することもできる。この構成では、突出部31の上面に各反射面32a,32b,32cを形成することで、壁体10に対して反射面32a,32b,32cを簡単に形成することができる。
【0031】
また、本実施形態では、反射部20に三つの反射面22a,22b,22cが形成されているが、第一の反射面22aのみが形成されていてもよい。また、二つの反射面が形成されていてもよく、さらには、三つ以上の多数の反射面が形成されていてもよい。
【0032】
また、図5に示す反射部20Aのように、夏至の南中高度Aに位置している太陽に正対させた第一の反射面22aに連続させて、冬至の南中高度Bに位置している太陽に正対させた第四の反射面22dを形成することもできる。
第四の反射面22dは、法線H4の水平面に対する傾斜角度が、冬至の南中高度Bに合わせて設定されている。冬至の南中時刻には、南中高度Bが約30度(東京地方における角度)となるため、第四の反射面22aの法線H4は、水平面に対して約60度の角度で傾斜している。
なお、第四の反射面22dの法線H4の傾斜角度を、冬至の南中高度Bに対してプラスマイナス10度の範囲内に設定することで、第四の反射面22dを冬至の南中高度Bに位置した太陽に正対させることができる。
また、第四の反射面22dは、第一の反射面22aよりも低い反射率に仕上げられている。
【0033】
図5に示す反射部20Aでは、冬季に第四の反射面22dに太陽光が照射され易くなっている。さらに、第四の反射面22dでは、太陽光の反射率が低いため、冬季に太陽光による熱の吸収率を高めることができる。したがって、反射部20Aでは、夏季には第一の反射面22aで太陽光を効果的に反射することで、建物内の冷房効率を高めることができ、冬季には第四の反射面22dが太陽光の熱を効果的に吸収することで、建物内の暖房効率を高めることができる。
なお、図5の構成では、反射部20Aが建物の屋根など上向きの外壁面10bに形成されているが、鉛直面など横向きの外壁面に反射部20Aを形成してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 反射壁
10 壁体
10a 外壁面
20 反射部
20A 反射部(他の実施形態)
21 凹部
21a 背面
21b 曲面
21c 底部
22a 第一の反射面
22b 第二の反射面
22c 第三の反射面
22d 第四の反射面
A 夏至の南中高度
B 冬至の南中高度
H1 第一の反射面の法線
H2 第二の反射面の法線
H3 第三の反射面の法線
H4 第四の反射面の法線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射面を有する反射部が壁体の外壁面に形成されており、
前記反射面は、南中高度に位置している太陽に正対するように傾斜していることを特徴とする反射壁。
【請求項2】
前記反射面の法線の水平面に対する傾斜角度は、夏至の南中高度に合わせて設定されていることを特徴とする請求項1に記載の反射壁。
【請求項3】
前記反射部には、他の反射面が形成されており、
前記他の反射面の法線の傾斜角度は、前記反射面の法線の傾斜角度よりも小さいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の反射壁。
【請求項4】
前記反射部には、他の反射面が形成されており、
前記他の反射面の法線の水平面に対する傾斜角度は、冬至の南中高度に合わせて設定されているとともに、前記反射面よりも低い反射率に仕上げられていることを特徴とする請求項2に記載の反射壁。
【請求項5】
前記反射部は、前記壁体の外壁面に形成された凹部によって形成されており、
前記凹部の内面に前記反射面が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の反射壁。
【請求項6】
前記反射部は、前記壁体の外壁面に形成された突出部によって形成されており、
前記突出部の外面に前記反射面が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の反射壁。
【請求項7】
前記壁体の外壁面には、複数の前記反射部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の反射壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−246878(P2011−246878A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117972(P2010−117972)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【出願人】(506122327)公立大学法人大阪市立大学 (122)
【Fターム(参考)】