説明

反射性を有する太陽電池用裏面保護シート

【課題】透過層は十分な透過性を有し、反射層は十分な反射性を持つと同時に、封止材と接着する前記透過層は十分な接着力を有し、且つ、当該透過層の封止材に接触する部分は十分な強度を有する太陽電池モジュールの裏面側に配置される太陽電池用裏面保護シートを提供する。
【解決手段】太陽電池モジュールの裏面側に配置される太陽電池用裏面保護シートであって、少なくとも、封止材に接する透過層(1)、反射層(2)及び保護層(3)の順に積層されて構成され、前記透過層(1)が、400nm〜1400nmの波長の光線を平均で70%以上透過し、前記反射層(2)が、白色フィラーを含み、400nm〜1400nmの波長の光を反射する、ことを特徴とする太陽電池用裏面保護シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽光により発電する太陽電池裏面保護シートに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、太陽光発電として最も多く用いられているのは結晶シリコンによる半導体セル(太陽電池)である。このセルは、光を受ける面にガラスを備え、その反対面に裏面保護シートを備えており、夫々の間をエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性樹脂による封止材を用いて加熱圧着されたものである。そして、太陽光がガラスを通してセルに到達する事で、発電が行われる。
【0003】
さて、この様なセルは、セルで発電した電気を取り出すための配線や配置の誤差等を考慮して、平面で見たときに太陽電池モジュール全体に隙間無く配置されていない。つまり、平面で見たときに、セルの無い部分は、裏面保護シートが直接見える部分となる。このセルの無い部分は当然に発電には寄与しない。また、セル自身も光を100%吸収するわけではなく、セルに当たった光の一部は、セルを透過後、封止剤を通して裏面保護シートに到達する。このセルを透過した光は発電には寄与しないという問題もあった。
【0004】
上記の問題を解決するために、特許文献1では、封止材を介してセルに接する側の樹脂製フィルムに、酸化チタン等のフィラーを混入させた裏面保護シートを用いる事により、光の反射率を高めると同時に光を乱反射させて隙間からの光をセルの裏面に到達させる方法が考案されている。しかしながら、樹脂製フィルムにフィラー等の固形物が混入されていることから、その樹脂製フィルム自身が破壊され易くなるという問題が生じる。また、光を有効に反射させるためには、樹脂製フィルムに多くのフィラーを混入させる必要がある。
【0005】
また、セルを封入する封止材及び裏面保護シートは、モジュールを作製する段階では真空ラミネーター等で接着されるが、その接着強度はセルを保護するために高い強度が求められる。そのため、樹脂製フィルムにフィラーを大量に混入させた場合、裏面保護フィルムの表層は十分な接着がなされていても、フィラーを混入した樹脂製フィルムそのものが破壊されやすくセルを保護する機能に支障をきたす。また、フィラーを混入した樹脂製フィルム自身が割れる等の破壊が生じない場合であっても、厚み方向に表層破壊した場合は、封止材との接着が十分であっても、樹脂製フィルムが弱い力で剥離し、セルとして十分な機能を保持できないという問題がある。
【0006】
特に、太陽電池モジュールにおいては、その背面に配置される保護シートに、ジャンクションボックスに発電した電気を集める配線を通す穴またはスリットが設けられている。この太陽電池モジュールのフレームの四方は、ゴム系の封止材等で密閉されている。つまり、背面保護シートと封止材を引き剥がすきっかけとなる部分がこの穴またはスリットであり、その部分を保持する事が重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−270025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、透過層は十分な透過性を有し、反射層は十分な反射性を持つと同時に、封止材と接着する前記透過層は十分な接着力を有し、且つ、当該透過層の封止材に接触する部分は十分な強度を有する太陽電池モジュールの裏面側に配置される太陽電池用裏面保護シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の透過層及び反射層を備える太陽電池用裏面保護シートを用いる場合には、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は下記の太陽電池用裏面保護シートに関する。
1. 太陽電池モジュールの裏面側に配置される太陽電池用裏面保護シートであって、
少なくとも、封止材に接する透過層(1)、反射層(2)及び保護層(3)の順に積層されて構成され、
前記透過層(1)が、400nm〜1400nmの波長の光線を平均で70%以上透過し、
前記反射層(2)が、白色フィラーを含み、400nm〜1400nmの波長の光を反射する、
ことを特徴とする太陽電池用裏面保護シート。
2. 前記透過層(1)が、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、エチレンメチルアクリレート共重合体、エチレンメチルメタクリレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアルコール共重合体及び塩化ビニルからなる群から選ばれた少なくとも1種の重合体を含む層である、上記項1に記載の太陽電池用裏面保護シート。
3. 前記透過層(1)が、10N/cm以上の破断強度を有するものである、上記項1又は2に記載の太陽電池用裏面保護シート。
4. 前記反射層(2)が、400nm〜1400nmの波長の光線を平均で80%以上反射するものである、上記項1〜3のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シート。
5. 前記反射層(2)が、気泡を含む、上記項1〜4のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シート。
6. 前記白色フィラーが、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム及び酸化バリウムからなる群から選ばれた少なくとも1種である、上記項1〜5のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シート。
7. 前記白色フィラーが、前記反射層(2)中に、5重量%以上含まれる、上記項1〜6のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シート。
8. 前記反射層(2)が、の樹脂成分として、ポリエチレンテレフタレートを含む、上記項1〜7のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シート。
9. 上記項1〜8のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シートを用いた太陽電池モジュール。
【0011】
以下、本発明の太陽電池用裏面保護シートについて詳細に説明する。
【0012】
本発明の太陽電池用裏面保護シートは、太陽電池モジュールの裏面側に配置される太陽電池用裏面保護シートであって、少なくとも、封止材に接する透過層(1)、反射層(2)及び保護層(3)の順に積層されて構成され、前記透過層(1)が、400nm〜1400nmの波長の光線を平均で70%以上透過し、前記反射層(2)が、白色フィラーを含み、400nm〜1400nmの波長の光を反射する、ことを特徴とする。
【0013】
この様に、本発明の太陽電池用裏面保護シートは、封止材に接着する透過層(1)はフィラー等を含まず、太陽光を十分に透過させることができ、且つ、透過層(1)の下層である反射層(2)は太陽光を十分に反射又は乱反射させる機能を有する。更に、封止材に接着する透過層(1)はフィラー等を含まいことから十分な接着力を有し、且つ透過層(1)の封止材に接触する部分は十分な強度を有している。そうして、本発明の太陽電池用裏面保護シートは、接着性と太陽光線の反射性を良好に両立できるものである。
【0014】
封止材と太陽電池用裏面保護シートの間は、剥離する要因があると剥がす事が可能である。太陽電池モジュールの場合は、ジャンクションボックスに電気を通すための、太陽電池用裏面保護シートに開けてある穴またはスリットが、その要因に相当する。しかしながら、本発明の太陽電池用裏面保護シートは、上記のように透過層(1)の下層に反射層(2)を設けた構造を有するので、太陽電池用裏面保護シートは、封止材に十分に接着させる事が可能である。
【0015】
太陽電池用裏面保護シートでは、透過層と反射層の層間を剥離しようとした時に、反射層の破壊により層間強度が保持できないという恐れがある。しかしながら、本発明の太陽電池用裏面保護シートは、上記のように透過層(1)の下層に反射層(2)を設けた構造を有するので、各層を剥がすきっかけが無く、剥離しないので、各層間の接着強度が低くなる心配がない。この様に、上述の穴またはスリット部分の下層には封止材が全面に存在しており、剥がすきっかけは封止材と太陽電池用裏面保護シート全体の間で発生する。従って、太陽電池用裏面保護シートに、第二層として反射層(2)を設ける事の効果は大きい。
【0016】
図1は、本発明の太陽電池用裏面保護シートの一つの実施の形態を示す断面図である。
【0017】
図1に示すように、太陽電池用裏面保護シートは、太陽電池セルから相対的に近い側から、順に、1.透過層(1)、2.反射層(2)及び3.保護層(3)の順に積層された積層体から構成されている。太陽電池セルと太陽電池用裏面保護シートは、封止材を介して、透過層(1)で接着される。太陽電池用裏面保護シートが、太陽電池が太陽電池セルと接着された状態において、保護層(3)が最外層となる。
【0018】
以下、本発明の太陽電池用裏面保護シートを構成する透過層(1)、反射層(2)及び保護層(3)について詳細に説明する。
【0019】
封止材
封止材は、太陽電池用裏面保護シートと太陽電池セルの裏面とを熱融着により接着させる層である。封止材は、熱融着により太陽電池セルの裏面と接着できる材料であれば限定されないが、封止剤としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を含有することが好ましい。封止材の厚さは限定的ではないが、セルや配線の厚みによる段差を埋めるという理由から、200〜1000μmが好ましく、400〜600μmがより好ましい。
【0020】
透過層(1)
封止材と接着する透過層は十分な接着力を有し、且つ、透過層の封止材に接触する部分はその基材自身の強度が必要である。このため、封止材に接する層にはフィラー等を含まない方が好ましく、太陽光を十分に透過させることが重要である。
【0021】
透過層(1)は、400nm〜1400nmの波長の光線を平均で70%以上透過するものである。
【0022】
透過層(1)は、封止材と引き剥がす時の力で透過層(1)のみが切れてしまえば、剥離の界面が第二層すなわち強度の弱い反射層(2)(後述)に移行する。そうなると、封止材との十分な接着が出来なくなる。そのため、透過層(1)の破断強度は、透過層(1)の封止材との接着力よりも強い強度が必要である。従って、透過層(1)はコートではなく、フィルムである事が望ましい。また、透過層(1)の厚みは、透過層(1)の破断強度が十分な厚みである事が望ましい。
【0023】
透過層(1)は、封止材と加熱ラミネートされた後に十分な接着性を有する事が必要である。この様な透過層(1)としては、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、エチレンメチルアクリレート共重合体、エチレンメチルメタクリレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアルコール共重合体及び塩化ビニルからなる群から選ばれた少なくとも1種の重合体を含む層であることが好ましい。透過層(1)は、価格及び取り扱いを考慮すると、ポリエチレンやエチレン酢酸ビニル共重合体から構成されるフィルム層が更に望ましい。
【0024】
ここで、前記「平均で70%以上透過する」とは、分光光度計により400〜1400nmの範囲の波長1nmごとの値を平均することで求める事ができる。この様に、透過層(1)の透過性が、平均で70%以上あることで、その透過層(1)に隣接する反射層(2)に光を有効に透過すると共に、反射層(2)より反射された光を太陽電池セルに有効に戻す事ができる。
【0025】
透過層(1)は、光の透過性から考えると、厚みは薄いほうが良いが、強度の観点からは厚いほうが良い。従って、透過層(1)の厚さは、10〜100μmが好ましく、20〜60μmがより好ましい。
【0026】
封止材と太陽電池用裏面保護シートとの接着強度は、封止材と接着する太陽電池用裏面保護シートの透過層(1)が関係する。封止材と太陽電池用裏面保護シートの接着強度に規定は無いが、10N/cm(15N/15mm)以上であれば十分に接着しているとことになり、20N/cm(30N/15mm)以上であることかがより好ましい。従って、上記透過層(1)の破断強度も10N/cmであれば反射層に界面移行することが抑制される。接着強度は、ガラス、封止材(ブリジストン社製S−11)、太陽電池用裏面保護シートの順に積層し、150℃で10分間真空ラミネートを行う。この時、封止材と透過層(1)が施食するようにする。その後、太陽電池用裏面保護シート側からカッターで切れ目を2本入れ、その間隔が10mmになるようにする。その状態で、2本の切れ目の間の太陽電池用裏面保護シートを引き剥がす事で封止材と太陽電池用裏面保護シート間の接着強度をプッシュプルゲージにて測定できる。また、破断強度は、積層前の透過層(1)を幅15mmの短冊状に切り出し、ストログラフにて破断するときの強度を測定できる。
【0027】
透過層(1)の厚さや材質は、透過層(1)の透過性、封止材との接着強度及び破断強度の基に、決定することができる。
【0028】
反射層(2)
本発明の太陽電池用裏面保護シートは、封止材に接する透過層(1)は太陽光を透過させ、その直ぐ下層に太陽光を十分に反射又は乱反射させる機能を有する反射層(2)を備える。この様に、本発明の太陽電池用裏面保護シートは、接着性と太陽光線の十分な反射を両立できる。
【0029】
封止材と太陽電池用裏面保護シートの間は剥離するきっかけがあると剥がす事が可能であり、太陽電池モジュールの場合は、ジャンクションボックスに電気を通すための太陽電池用裏面保護シートに開けてある穴又はスリットがそのきっかけに相当する。そこで、本発明の太陽電池用裏面保護シートには透過層(1)の下層に反射層(2)が設けられており、この様な太陽電池用裏面保護シートは、封止材を介して、太陽電池セルと十分に接着させる事が可能である。
【0030】
太陽電池用裏面保護シートでは、透過層と反射層の層間を剥離しようとした時に、反射層の破壊により層間強度が保持できないという恐れがある。本発明の太陽電池用裏面保護シートでは、上述の穴又はスリット部分の下層には封止材が全面に存在するので、剥がすきっかけは封止材と太陽電池用裏面保護シート全体の間で発生する。従って、太陽電池用裏面保護シートの第二層として反射層(2)を設ける事の効果は大きい。
【0031】
反射層(2)は、白色フィラーを含み、400nm〜1400nmの波長の光を反射するものである。
【0032】
反射層(2)は、白色フィラーを含むことで、高い反射率を有し、乱反射することで、セル(太陽電池)の隙間からの太陽光をセルに戻すことができる。白色フィラーとしては、反射層(2)を構成する樹脂への練混が容易であることから、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム及び酸化バリウム等が更に好ましい。
【0033】
前記白色フィラーは、反射率を向上させると同時にフィルムの強度を維持するという理由から、反射層(2)中に、5重量%以上含まれることが好ましく、7〜15重量%含まれることがより好ましい。
【0034】
反射層(2)は、太陽光を反射又は乱反射することができるという理由から、更に、気泡を含むことが好ましい。反射層(2)に含まれる気泡の大きさは、0.2〜20μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。反射層(2)には、体積比率として好ましくは5〜30体積%、更に好ましくは10〜20体積%の気泡が含まれること良い。加熱発泡性のフィラーをフィルムに混入させた状態で加熱することで、反射層(2)に気泡を含ませることができる。
【0035】
反射層(2)としては、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、エチレンメチルアクリレート共重合体、エチレンメチルメタクリレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアルコール共重合体及び塩化ビニルからなる群から選ばれた少なくとも1種の重合体を含む層であることが好ましい。反射層(2)は、価格、製造の容易性及び熱収縮を考慮すると、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0036】
反射層(2)は、400nm〜1400nmの波長の光線を平均で80%以上反射するものが好ましい。上記「平均で80%以上反射する」とは、分光光度計により400〜1400nmの範囲の波長1nmごとの値を平均することで求める事ができる。この様に、反射層(2)の反射が、平均で80%以上あることで、太陽電池セルに有効に光を戻す事ができる。
【0037】
反射層(2)の厚さは、反射率を高めるという理由から、30〜350μmが好ましく、50〜250μmがより好ましい。
【0038】
保護層(3)
保護層(3)は、太陽電池用裏面保護シートの最外層(太陽電池セル側とは反対の側)に設けられる層である。保護層(3)は、耐候性及び電気絶縁性を有するものが好ましい。
【0039】
保護層(3)の構成成分としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルフィルム;ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)などのフッ素系フィルム;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム;その他、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。上記PETとしては、屋外での耐久性も考慮して耐加水分解性PETを好適に使用できる。その他、エンジニアリングプラスチック及びフッ素系樹脂も挙げられる。エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、GF強化ポリエチレンテレフタレート(GF−PET)、超高分子量ポリエチレン(UHPE)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、非晶ポリアリレート(PAR)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、液晶ポリマー(LCP)等が挙げられる。保護層(3)は、耐候性と経済的理由から、ポリフッ化ビニルやポリエチレンテレフタレートから構成されるフィルム層が更に望ましい。
【0040】
保護層(3)は単層でも複層(積層フィルム)でもよい。保護層(3)が単層の場合には、厚さは20〜2000μmであることが好ましい。複層の場合には、耐候性に優れるフィルムと電気絶縁性に優れるフィルムとの積層体であることが好ましい。この場合には、電気絶縁性に優れるフィルムを樹脂フィルム基材側に配置し、耐候性に優れるフィルムを最外層とすることが好ましい。耐候性に優れるフィルムとしては、厚みが20〜150μmのフッ素系フィルムが好ましく、電気絶縁性に優れるフィルムとしては、厚みが100〜250μmのPETフィルムが好ましい。
【発明の効果】
【0041】
本発明の太陽電池用裏面保護シートによれば、透過層は十分な透過性を有し、反射層は十分な反射性を持つと同時に、封止材と接着する前記透過層は十分な接着力を有し、且つ、当該透過層の封止材に接触する部分は十分な強度を有する太陽電池モジュールの裏面側に配置される太陽電池用裏面保護シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の太陽電池用裏面保護シートの層構成を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0044】
実施例1
太陽電池モジュールに用いられる太陽電池用裏面保護シートを以下の通り作成した。
【0045】
構成として、透過層(1)、反射層(2)及び保護層(3)を順に積層した裏面保護シートを作製した。
【0046】
先ず、反射層(2)としてポリエチレンテレフタレート樹脂100部に酸化チタンを15部混合し、一般的なTダイによる樹脂押し出し方法で製膜された250μm厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム(A)(PETフィルム)を使用した。
【0047】
次いで、PETフィルム(A)の表面に保護層(3)として、38μmのデュポン社製テドラーフィルム(ポリフッ化ビニル樹脂)をウレタン系接着剤を用いてドライラミネート法で接着を行った。
【0048】
次いで、PETフィルム(A)の反対側には、透過層(1)として、50μmの密度0.94g/cmの低密度線状ポリエチレンフィルムをウレタン系接着剤を用いてドライラミネート法で接着を行った。これにより、裏面保護シートが得られた。
【0049】
次いで、この裏面保護シートの透過層(1)の外表面に封止材(EVA)を積層した。
【0050】
実施例2
反射層(2)として、ポリエチレンテレフタレート樹脂100部に硫酸バリウムを10部混合し、一般的なTダイによる樹脂押し出し方法で製膜された250μm厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム(A)を使用した以外は、実施例1と同様に太陽電池用裏面保護シートを作製し、透過層(1)の外表面に封止材を積層した。
【0051】
実施例3
透過層(1)として、50μm厚さのタマポリ株式会社製エチレン酢酸ビニル共重合体フィルムSB−3を使用した以外は、実施例1と同様に太陽電池用裏面保護シートを作製し、透過層(1)の外表面に封止材を積層した。
【0052】
比較例1
実施例1の透過層(1)に相当する層として、密度0.94g/cmの低密度線状ポリエチレン100部に対して酸化チタンを10部混合し、50μm厚さのフィルムにしたものを用いて、実施例1と同様に太陽電池用裏面保護シートを作製し、透過層(1)の外表面に封止材を積層した。
【0053】
比較例2
実施例1の透過層(1)に相当する層として、密度0.94g/cmの低密度線状ポリエチレン100部に対して酸化チタンを20部混合し、50μm厚さのフィルムにしたものを用いた以外は、実施例1と同様に太陽電池用裏面保護シートを作製し、透過層(1)の外表面に封止材を積層した。
【0054】
<評価方法>
(A)反射率
反射層(2)の反射率は紫外可視近赤外分光光度計(製品名「JASCO V570型」日本分光社製)を用いて全光線の反射率を求めた。なお上記光度計の仕様は、ホルダー形式:積分球式、測定サイズ:長さ8mm×幅9mm、積分球内径:60mm、積分球内壁塗布剤:硫酸バリウムとした。そして、400〜1400nmの範囲の波長1nmごとの値を平均することで求める事ができる。
【0055】
(B)透過率
透過層(1)の透過率は、紫外可視近赤外分光光度計(製品名「JASCO V570型」日本分光社製)を用いて全光線の透過率を求めた。なお上記光度計の仕様は、ホルダー形式:積分球式、測定サイズ:長さ8mm×幅9mm、積分球内径:60mm、積分球内壁塗布剤:硫酸バリウムとした。そして、400〜1400nmの範囲の波長1nmごとの値を平均することで求める事ができる。
【0056】
(C)透過層(1)の破断強度
透過層(1)の破断強度は、試料を15mm幅・長さ150mm長さの短冊状に切り出し、東洋精機社製ストログラフを用い透過層が破断するときの応力を計測する事で求めた。
【0057】
(D)封止材との接着強度
460μm厚さのブリジストン社製封止材S11(エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂)を青板ガラス上に乗せ、更にその上に透過層(1)が封止材に接するように実施例及び比較例で作成した太陽電池用裏面保護シートを乗せた後、真空ラミネーターにて150℃で10分間熱圧着(熱融着)させる事で、太陽電池用裏面保護シート及び封止材を接着させ、擬似モジュールを作製した。十分に冷却した後、太陽電池用裏面保護シートに15mm幅で150mmの長方形の切れ目を入れて、太陽電池用裏面保護シートを引き剥がした。この時の応力をプッシュプルゲージで計測した。
【0058】
試験結果を下記表1に示す。
【0059】
【表1】

【符号の説明】
【0060】
1 透過層(1)
2 反射層(2)
3 保護層(3)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールの裏面側に配置される太陽電池用裏面保護シートであって、
少なくとも、封止材に接する透過層(1)、反射層(2)及び保護層(3)の順に積層されて構成され、
前記透過層(1)が、400nm〜1400nmの波長の光線を平均で70%以上透過し、
前記反射層(2)が、白色フィラーを含み、400nm〜1400nmの波長の光を反射する、
ことを特徴とする太陽電池用裏面保護シート。
【請求項2】
前記透過層(1)が、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、エチレンメチルアクリレート共重合体、エチレンメチルメタクリレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアルコール共重合体及び塩化ビニルからなる群から選ばれた少なくとも1種の重合体を含む層である、請求項1に記載の太陽電池用裏面保護シート。
【請求項3】
前記透過層(1)が、10N/cm以上の破断強度を有するものである、請求項1又は2に記載の太陽電池用裏面保護シート。
【請求項4】
前記反射層(2)が、400nm〜1400nmの波長の光線を平均で80%以上反射するものである、請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シート。
【請求項5】
前記反射層(2)が、気泡を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シート。
【請求項6】
前記白色フィラーが、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム及び酸化バリウムからなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シート。
【請求項7】
前記白色フィラーが、前記反射層(2)中に、5重量%以上含まれる、請求項1〜6のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シート。
【請求項8】
前記反射層(2)が、の樹脂成分として、ポリエチレンテレフタレートを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シート。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シートを用いた太陽電池モジュール。

【図1】
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【公開番号】特開2013−21214(P2013−21214A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154756(P2011−154756)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(399054321)東洋アルミニウム株式会社 (179)
【Fターム(参考)】