説明

反射防止構造及び光学部材

【課題】異なる波長の光や斜め入射の光に対しても低い反射率を得ることができ、かつ製造が容易で、機械的な強度が高い反射防止構造を提供する。
【解決手段】反射防止構造は、媒体1と媒体3とによって形成され、反射防止構造の有効屈折率をNeffとしたときに、
Neff=rANA+rCNC
ただし、rA、rC:第1の媒体、第3の媒体の体積率
NA、NC:第1の媒体、第3の媒体の屈折率
で表される有効屈折率が異なる2層(層A、層B)を備え、層Aは、反射防止波長域の最小波長以下の凸形微細構造4が配列されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な2次元凹凸構造を有する反射防止構造、及び該反射防止構造を表面に有する光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
照明機器、ディスプレイ装置、情報機器、撮影機器などの光を利用する各種製品には、ガラスやプラスチックなどからなる透光性を有する光学部材が多く用いられている。これら光学部材は、光の方向を制御して集光する、製品内部を汚れや衝撃などから保護するなどの機能を有している。しかし一方で、光学部材に光が入射、或いは出射する際に界面で生じる反射光は、照明機器の効率を低下させる、ディスプレイ機器の視認性を低下させる、情報機器のノイズの原因となる、撮影機器による撮影画像の画質を低下させるなど性能低下の一因ともなる。
【0003】
即ち、これら光学部材の界面で生じる反射光は、空気など周囲の媒体の屈折率と光学部材の屈折率とが異なることに起因して生じる。これは、屈折率の異なる媒体に光が入射する際に、界面における波の連続性によって入射側へ戻る成分が生じるためである。
【0004】
例えば、照明機器では、光学部材の表面で生じた反射光は光源側へと戻り、出射面から放射されずに吸収されてしまうことから、照明効率が低下する要因となる。また、ディスプレイ機器を備えた画像表示装置では、外光の一部がディスプレイ装置のパネル表面で反射され観察者へと届くために、本来このパネル表面から出射している光の割合が低下し、コントラストが低下する要因となる。
【0005】
このため、従来では上記したような性能低下の原因となる光学部材の界面での反射を低減するために、光学部材の表面に薄膜をコーティングする方法が一般的に用いられている。光学部材の表面に薄膜をコーティングすることによって、周囲の媒体、薄膜、光学部材のそれぞれの界面で生じる反射光を干渉させて、入射側へと戻る光の振幅を低減させることができる。
【0006】
ところで、近年、より優れた反射防止効果を得るために、上記したような光学部材の表面に薄膜をコーティングして反射防止する構造とは原理的に全く異なる技術として、光学部材の表面に微細な凹凸構造、いわゆる「モスアイ構造」を形成して反射防止効果を得る技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0007】
前記特許文献1に記載の技術では、「モスアイ構造」と呼ばれる光の波長よりも小さい構造の形を制御することにより、段階的に屈折率を変化させる効果と、光の干渉効果を組み合わせて、低い反射率を実現している。
【0008】
また、前記特許文献2に記載の技術では、「モスアイ構造」と呼ばれる光の波長よりも小さい構造の形を制御することにより、段階的に屈折率を変化させて反射光の発生を抑制し、低い反射率を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4398507号公報
【特許文献2】特表2008−508553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前記特許文献1の技術では、干渉効果を利用することにより、異なる波長の光や斜め入射の光では反射率が上昇する問題がある。また、波長よりも小さい構造の形を高さ方向にも精密に制御する必要があることから、量産製造が難しく生産性が低い。
【0011】
また、前記特許文献2の技術では、原理的に非常に低い反射率を実現可能であるものの、波長よりも小さい構造の形を高さ方向にも制御する必要があることから、量産製造が難しく生産性が低い。また、先端が非常に尖った構造となるために、他の部材や指先等が接触した場合にこの構造が倒れたり、傷が生じたりするなど強度が低い。
【0012】
そこで、本発明は、異なる波長の光や斜め入射の光に対しても低い反射率を得ることができ、かつ製造が容易で、機械的な強度が高い反射防止構造、及び該反射防止構造を表面に有する光学部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、第1の媒体と第2の媒体との境界に設けられた反射防止構造であって、前記反射防止構造は、前記第1の媒体と第3の媒体とによって形成され、前記反射防止構造の有効屈折率をNeffとしたときに、
Neff=rANA+rCNC
ただし、rA、rC:第1の媒体、第3の媒体の体積率
NA、NC:第1の媒体、第3の媒体の屈折率
で表される有効屈折率が異なる2層を備え、前記2層のうちの少なくとも1層は、反射防止波長域の最小波長以下の2次元凹凸構造を有することを特徴としている。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記反射防止構造は、高さ方向において前記第3の媒体の体積率が異なる、2段の2次元凹凸構造を有することを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記第1の媒体の屈折率をNA、前記第2の媒体の屈折率をNB、前記第3の媒体の屈折率をNCとしたときに、NA<NC<NBであることを特徴としている。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記第1の媒体の屈折率をNA、前記第2の媒体の屈折率をNB、前記第3の媒体の屈折率をNCとしたときに、NA<NC=NBであることを特徴としている。
【0017】
請求項5に記載の発明は、前記第2の媒体と前記第3の媒体とが同じ物質であることを特徴としている。
【0018】
請求項6に記載の発明は、前記有効屈折率の異なる2層のうち、前記第1の媒体側の層を第1の層、前記第2の媒体側の層を第2の層とし、反射防止波長域の任意の波長をλとして、前記第1の層の有効屈折率をNeff_1、厚みをd1、前記第2の層の有効屈折率をNeff_2、厚みをd2としたときに、
d1=λ/4Neff_1
d2=λ/4Neff_2
であることを特徴としている。
【0019】
請求項7に記載の発明は、前記有効屈折率の異なる2層のうち、前記第1の媒体側の層を第1の層、前記第2の媒体側の層を第2の層とし、前記第1の層の有効屈折率をNeff_1、厚みをd1、前記第2の層の有効屈折率をNeff_2、厚みをd2、反射防止波長域の任意の波長をλ、λ1、λ2として、λ1<λ<λ2、またはλ2<λ<λ1での関係を満たすときに、
d1=λ1/4Neff_1
d2=λ2/4Neff_2
0.02λ<|λ1−λ2|<0.08λ
であることを特徴としている。
【0020】
請求項8に記載の発明は、前記2次元凹凸構造が、第1の層の構造と第2の層の構造を、第1の媒体と第2の媒体との境界に平行な面に投影した場合に、前記第3の媒体の占める面積の割合が、それぞれ10〜90%であることを特徴としている。
【0021】
請求項9に記載の光学部材は、光学部材の透光性基材上に、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の反射防止構造を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る反射防止構造によれば、異なる波長の光や斜め入射の光に対しても低い反射率を得ることができ、かつ製造が容易で、機械的な強度が高い反射防止構造を提供することができる。
【0023】
また、本発明に係る光学部材によれば、光学部材の透光性基材上に本発明に係る反射防止構造を有しているので、高い反射防止効果を得ることができる光学部材を提供することができる。
【0024】
次に、本発明に係る反射防止構造について説明する前に、例えば図35に示すような、媒体1と媒体2の間に媒体3を有する場合の反射防止構造において、反射光が低減できる原理について以下に説明する。
【0025】
図35に示すように、媒体1側から、光の波長と同等程度の厚さの媒体3を通り、媒体2へ光が入射する場合、媒体1と媒体3の界面、媒体3と媒体2の界面で、それぞれ入射側へ戻る成分I1,I2が発生する。I1,I2の波の振幅が同じで、位相が逆になる場合、この2つの成分I1,I2は打ち消しあい、合成された反射光は低減される。
【0026】
干渉によって反射光を低減するためには、それぞれの界面で入射側に戻る成分が、干渉によってそれぞれ打ち消しあう振幅を有する必要がある。この振幅は界面を形成している媒体の屈折率によって決まるため、望む振幅が得られる材料を用いればよいが、屈折率の低い材料など得ることが困難である場合が多い。
【0027】
媒体1と媒体3を用いて、反射防止波長域の最小波長以下の構造を設けることによって、通常の物質では実現不可能な、反射防止に効果的な屈折率を得ることが可能である。波長以下の構造では、光はその構造を認識することができず、構造を形成する媒体それぞれの平均的な媒体が存在するものとして振る舞う。
【0028】
このとき、この平均的な媒体の屈折率は、有効屈折率をNeffとして、以下の式で求められる。
Neff=rANA+rCNC
rA、rC:媒体1,3の体積率
NA、NC:媒体1,3の屈折率
【0029】
また、干渉の効果は、ベクトル図を用いて説明することができる。各界面での入射側に戻る成分を、例えば、図36で示すようなベクトルで表すことができる。このベクトルは、X軸の正方向からの傾きが波の位相を、長さが振幅を表し、波の重ね合わせはこのベクトルの和で表現される。よって、各界面での入射側に戻る成分をベクトルで表し、和を取ることによって反射光の波の振幅を考えることができる。
【0030】
図37(a)は、図35に示した反射防止構造の場合のベクトルを表した図である。この図に示すように、IとI2が同じ振幅で、逆の位相であるために、反射光はゼロとなる。ここで、IとI2の振幅は、反射防止構造がない場合を「1」とするとその半分である。
【0031】
これに対して、例えば、図37(b)に示した図は、波長が異なる、斜めから入射するなどの反射防止の条件から外れた場合のベクトルを表したものである。この図に示すように、波長が異なる光や、斜めから入射する場合などは、I1に対してI2の位相がずれ、合成された波I1+I2が発生する。位相ずれをφとして、I1+I2は1/2×sinφ(φが十分小さい場合には、≒φ/2)である。例えば、図37(a)に示した場合の波長より20%長い波長に対しては、φ=0.52rad(=30°)、振幅が0.50/2(=0.25)となり、反射率は、反射防止構造を設けない場合に対し、前記振幅の2乗である6%分存在することになる。
【0032】
図37(b)に示すように、異なる波長では位相が異なってくるために、干渉による打ち消し合いが不十分となる。また、斜めの方向からの入射など、光から見た通過距離が異なるにも位相が異なり、反射の低減効果が不十分となる。
【0033】
これに対し、図38に示すように、媒体1と媒体2の間に設ける反射防止構造(媒体3+媒体1)を、有効屈折率の異なる2層(層A、層B)として界面を3つ設け、3つの波の干渉によって打ち消し合いを実現することによって、広い波長域や広い入射角度でも低い反射率を実現することができる。
【0034】
図38に示すように、媒体1と反射防止構造(媒体3+媒体1)の境界である界面1、反射防止構造内での有効屈折率の異なる境界である界面2、反射防止構造と媒体2との境界である界面3の3つの界面で、入射側に戻る成分I1、I2、I3が発生する。例えば、ある波長でI1とI3は同じ位相、振幅となるように、I2はI1と逆の位相、2倍の振幅となるように反射防止構造を制御する。このとき、この波長では、I1とI3の和がI2と打ち消しあい、低い反射率が実現可能である。
【0035】
以下、本発明の反射防止構造について、図39〜図41に示したベクトル図を用いて、斜め入射光や異なる波長に対しても低い反射率を実現可能であることを説明する。
【0036】
図39(a)は、本発明の反射防止構造に対して、目的とする波長、角度で入射した場合のベクトルを表した図である。図39(a)に示すように、図38の界面2での波I2を位相の基準とし、図38の界面1と界面3での波、I1とI3が逆の位相、I2のベクトルの長さはI1とI3の2倍となっており、3つの波の和がゼロになる。ここで、I2では1/2、I1とI3では1/4である。
【0037】
これに対して、目的とする波長や角度からずれた場合、I2を基準としてI1とI3の位相がずれ、図39(b)に示すベクトルのような関係になる。このときI1とI3の波の和は、I2よりも(1−cosφ)だけ小さくなり、1/2×(1−cosφ)(φが十分小さい場合には、≒(φ/2)2)に比例した振幅をもつ反射が発生する。
【0038】
しかしながら、多くの場合においてφ/2は絶対値が1より小さいため、反射光は低く抑えることができる。例えば、図39(a)の場合における波長より20%長い波長に対してはφ=0.52radであり、I1+I2+I3の振幅は0.13/2(≒(0.52/2))=0.066であり、反射率は反射防止構造を設けない場合の0.4%に抑えることができる。
【0039】
また、いわゆる「モスアイ構造」と呼ばれる、段階的に屈折率が変化する反射防止構造の場合は、例えば、図40(a)に示すようなベクトル図で表すことができる。段階的に屈折率が変化していることによって、長さの短いベクトルが各位相で連続的に繋がるが、ここでは、10のベクトルで代表させている。この場合、長さは1/10である。
【0040】
そして、図40(a)から位相がずれた場合には、図40(b)に示すような関係となる。このとき、連続的に繋がったベクトルの過不足分の面積分だけ、反射の波の振幅が発生する。この面積は、φ/(2π)に比例し、例えば、図40(a)の波長より20%長い波長に対しては、φ=0.52rad、合成波の振幅は0.52/(2π)=0.083、反射率は反射防止構造を設けていない場合の0.7%であり、本発明の反射防止構造よりも大きくなる。
【0041】
また、本発明の反射防止構造は、例えば、図41に示すような媒体2上に周知の2層薄膜a,bで形成された反射防止膜と比較して、低い反射率を実現可能である。これは、各層a,bでの入射側に戻る成分が小さく、異なる波長や角度となった場合に、合成された振幅を低く抑えることが可能であるためである。
【0042】
請求項1に記載の本発明の反射防止構造は、第1の媒体と第3の媒体の体積率によってのみ決定される有効屈折率の異なる2層によって形成され、少なくとも1層は、反射防止波長域の最小波長以下の2次元凹凸構造を有する構成としている。
【0043】
このような構成により、特殊な異種材料を用いる必要がないため、量産製造が容易であり、生産性が高い。また、波長以下の構造の精密制御が要らず、また先端が鋭利な構造を必要としないため、量産製造が容易であり、かつ構造の強度が高い。
【0044】
請求項2に記載の発明によれば、第3の媒体の体積率が異なる2段の2次元凹凸構造とすることによって、反射防止構造の有効屈折率を任意に選択することが可能であり、目的の反射防止域で、より低い反射率が実現できる。また、反射防止構造を、2次元凹凸構造を一括で形成するのみで作製可能であり、精密な膜厚の制御を必要とせず、生産性が高い。
【0045】
請求項3に記載の発明によれば、反射防止構造を形成する第3の媒体の屈折率を、第1の媒体と第3の媒体の屈折率の間とすることによって、各界面における、入射側に戻る成分の振幅を小さくすることが可能である。従って、広い波長域や、広い入射角度に対して反射率を低くすることができる。また、第1の媒体と第3の媒体によって形成される反射防止構造において、第3の媒体の体積率を大きくすることが可能であり、より強度の高い、傷が付きにくい反射防止構造が得られる。
【0046】
更に、第1の媒体と第3の媒体によって形成される、反射防止域の最小波長以下の2次元凹凸構造の背面側に、前記第3の媒体による基材層を一体に形成することができる。このような基材層を設けることによって、反射防止構造の強度をより高めることが可能である。
【0047】
請求項4に記載の発明によれば、反射防止構造を形成する第3の媒体の屈折率と、第2の媒体の屈折率を同じにすることによって、第3の媒体と第2の媒体の界面での反射光をなくし、より小さい反射率を実現することができる。
【0048】
請求項5に記載の発明によれば、反射防止構造を構成する第3の媒体を第2の媒体と同じ物質とすることによって、光学部材に転写などで簡便に、かつ低コストで反射防止構造を形成できる。
【0049】
請求項6に記載の発明によれば、その層の中での波長の1/4とすることによって、目的の波長で、図38に示した界面1、3と、界面2との位相を反転することができ、反射率を低減することができる。
【0050】
請求項7に記載の発明によれば、異なる波長や角度において、各界面で入射側に戻る成分の位相のずれを打ち消すような厚みの層を設けることによって、幅広い波長や角度範囲で、反射率を低減することができる。
【0051】
請求項8に記載の発明によれば、第3の媒体の占める割合をこの範囲とすることによって、反射率の低減に必要な有効屈折率を得ることができる。また、傷付き難いなど、強度を高めることができる。
【0052】
請求項9に記載の光学部材によれば、透光性基材上に本発明の反射防止構造を有しているので、表面の反射を小さく抑えることができ、照明や表示素子、情報機器などの高効率化、高品位化、低ノイズ化を実現することができる。
【0053】
ここで光学部材とは、例えば、照明の内部を保護するための保護部材や、光を均一に出射するための拡散板や導光板などが挙げられる。また、ディスプレイの画面を保護するための保護部材、タッチパネル、カメラなど情報機器に用いられるレンズなどが挙げられる。また、本発明の反射防止構造を有したフィルムを指す。このフィルムを貼り付けることによって、目的とする部材の反射防止を簡易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態1に係る反射防止構造を有する光学素子を示す概略斜視図。
【図2】本発明の実施形態1に係る反射防止構造を有する光学素子を示す断面図。
【図3】本発明の実施形態1の変形例に係る反射防止構造を有する光学素子を示す概略斜視図。
【図4】本発明の実施形態2に係る反射防止構造を有する光学素子を示す概略斜視図。
【図5】本発明の実施形態2の変形例に係る反射防止構造を有する光学素子を示す概略斜視図。
【図6】本発明の実施形態2の変形例に係る反射防止構造を有する光学素子を示す概略斜視図。
【図7】本発明の実施形態2の変形例に係る反射防止構造を有する光学素子を示す概略斜視図。
【図8】本発明の実施例1に係る反射防止構造を示す概略斜視図。
【図9】本発明の実施例2、11に係る反射防止構造を示す概略斜視図。
【図10】本発明の実施例3に係る反射防止構造を示す概略斜視図。
【図11】本発明の実施例4〜10に係る反射防止構造を示す概略斜視図。
【図12】本発明の比較例1に係る反射防止構造を示す概略斜視図。
【図13】本発明の比較例2に係る反射防止構造を示す概略斜視図。
【図14】本発明の比較例3に係る反射防止構造を示す概略斜視図。
【図15】本発明の比較例4に係る反射防止構造を示す概略斜視図。
【図16】本発明の比較例5に係る反射防止構造を示す概略斜視図。
【図17】本発明の比較例6に係る反射防止構造を示す概略斜視図。
【図18】本発明の実施例1に係る反射防止構造による反射率の算出結果を示す図。
【図19】本発明の実施例2に係る反射防止構造による反射率の算出結果を示す図。
【図20】本発明の実施例3に係る反射防止構造による反射率の算出結果を示す図。
【図21】本発明の実施例4に係る反射防止構造による反射率の算出結果を示す図。
【図22】本発明の実施例5に係る反射防止構造による反射率の算出結果を示す図。
【図23】本発明の実施例6に係る反射防止構造による反射率の算出結果を示す図。
【図24】本発明の実施例7に係る反射防止構造による反射率の算出結果を示す図。
【図25】本発明の実施例8に係る反射防止構造による反射率の算出結果を示す図。
【図26】本発明の実施例9に係る反射防止構造による反射率の算出結果を示す図。
【図27】本発明の実施例10に係る反射防止構造による反射率の算出結果を示す図。
【図28】本発明の実施例11に係る反射防止構造による反射率の算出結果を示す図。
【図29】本発明の比較例1に係る反射防止構造による反射率の算出結果を示す図。
【図30】本発明の比較例2に係る反射防止構造による反射率の算出結果を示す図。
【図31】本発明の比較例3に係る反射防止構造による反射率の算出結果を示す図。
【図32】本発明の比較例4に係る反射防止構造による反射率の算出結果を示す図。
【図33】本発明の比較例5に係る反射防止構造による反射率の算出結果を示す図。
【図34】本発明の比較例6に係る反射防止構造による反射率の算出結果を示す図。
【図35】本発明の反射防止構造を説明するための図。
【図36】本発明の反射防止構造を説明するための図。
【図37】本発明の反射防止構造を説明するための図。
【図38】本発明の反射防止構造を説明するための図。
【図39】本発明の反射防止構造を説明するための図。
【図40】本発明の反射防止構造を説明するための図。
【図41】従来の反射防止構造を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
【0056】
〈実施形態1〉
図1は、本発明の実施形態1に係る反射防止構造を有する光学素子を示す概略斜視図、図2は、その側面図である。
【0057】
図1、図2に示すように、本実施形態に係る反射防止構造は、媒体1と、この媒体1と光学素子の透光性基材としての媒体2との境界に設けた媒体3とによって形成され、この反射防止構造の有効屈折率をNeffとしたときに、
Neff=rANA+rCNC
ただし、rA:媒体1の体積率
rC:媒体3の体積率
NA:媒体1の屈折率
NC:媒体3の屈折率
で表される有効屈折率が異なる2層(層A,層B)を備えている。層Aは、平坦状の層B上に形成され、2次元に配列された凸形微細構造4とその間にある空気などの媒体1によって構成されている。
【0058】
媒体1は、例えば、空気や水などであり、使用環境の周囲の媒体を選択することができる。
【0059】
媒体2は、光学素子を構成する透光性基材であり、反射率を低減したい部材の材質を選択することができる。媒体2の材質としては、例えば、ガラス、Siやサファイヤなどの無機物、樹脂などが挙げられる。
【0060】
層Bと、層Aの2次元に配列された凸形微細構造4は、媒体3によって形成される。図1では、層Aは円柱状の凸形微細構造4を有している。
【0061】
また、図3に示すように、層Aは、層B上に2次元に配列された、媒体3からなる円柱状の凹形微細構造4aを有する構成としてもよい。このように凹形構造とすることによって、繋がった平坦面が境界にくるため、より強度を高めることができる。更に、円柱状の凸形微細構造4や凹形微細構造4a以外にも、例えば、四角柱状の凸形微細構造や四角柱状の凹形微細構造としてもよい。このように、媒体3の層Aは、2次元に配列された凹凸構造を有している。
【0062】
媒体3からなる層Aの凹凸構造(図1では円柱状の凸形微細構造4)は、例えば、ガラス、無機物などを用いて、エッチングなどで形成することができる。また、MgF2などの低屈折率材料を選択した場合は、層Aの凹凸構造の体積率を大きくして、強度を高くできる。
【0063】
媒体3からなる層Aの凹凸構造(図1では円柱状の凸形微細構造4)の製造方法としては、例えば、フォトリソグラフィーによるレジストの露光後に、レジストをマスクにしてエッチングする。また、電子線リソグラフィーによるレジストの露光後に、レジストをマスクにしたエッチングを行う。更に、粒子を配列させ、粒子をマスクにしたエッチングを行う。これらの製造方法によって、反射防止波長域の最小波長以下の凹凸構造(図1では円柱状の凸形微細構造4)を形成することができる。
【0064】
また、媒体3の層Aの凹凸構造(図1では円柱状の凸形微細構造4)は、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などを用いて型から転写することで形成することもできる。この場合は、媒体2(光学素子を構成する透光性基材)の形と媒体3を一括で転写することが可能であり、生産性の向上と低コスト化を図ることができる。
【0065】
層Aの凹凸構造の大きさ(図1では円柱状の凸形微細構造4の凸部間隔であり、図3では凹部微細構造4aの凹部間隔)は、反射防止波長域の最小波長以下に設定されている。この層Aの凹凸構造の大きさが最小波長以下より大きいと、回折光が発生し、反射率の上昇や着色の原因となる。
【0066】
層Aの凹凸構造(図1では円柱状の凸形微細構造4の凸部間隔であり、図3では凹部微細構造4aの凹部間隔)は、生産性や構造の強度に応じて適切な間隔に選択可能であり、例えば、波長380nm〜780nmの可視光に対しては、最小波長の380nm以下、望ましくは300nm以下、更に望ましくは250nm以下の大きさに形成する。
【0067】
層Aの凹凸構造(図1では円柱状の凸形微細構造4の凸部間隔であり、図3では凹部微細構造4aの凹部間隔)が300nm以下の大きさの場合には、斜め入射光に対しても回折光が生じることはなく、250nm以下の大きさの場合には、周期的な構造であっても幅広い入射角度に対して、回折光が生じない。
【0068】
なお、層Aの2次元に配列される凹凸構造(図1では円柱状の凸形微細構造4であり、図3では凹部微細構造4a)の周期性に関しては、例えば、フォトリソグラフィーや電子線リソグラフィーによる製造の場合には、規則的な構造の作製が容易である。
【0069】
本実施形態の反射防止構造では、媒体1の屈折率をNA、媒体2の屈折率をNB、媒体3の屈折率をNCとした場合に、NA<NC<NBを満足するように、媒体1、2,3の各屈折率NA、NB、NCを設定している。これにより、各界面において、入射側に戻る成分の振幅が小さく、反射率をより低減させることが可能となる。
【0070】
また、層Aの有効屈折利率をNeff_1、層Bの有効屈折利率をNeff_2とした場合に、NA<Neff_1<Neff_2<NBであることが望ましい。これにより、各界面で、入射側に戻る成分の振幅を更に小さくすることができる。
【0071】
更に、層Aの有効屈折利率Neff_1と層Bの有効屈折利率Neff_2を、以下の条件を満足するように設定することが望ましい。
【0072】
((NA3NB1/4−1)×0.5+1<Neff_1<((NA3NB1/4−1)×1.5+1
((NANB31/4−1)×0.5+1<Neff_2<((NANB31/4−1)×1.5+1
【0073】
更に望ましくは、層Aの有効屈折利率Neff_1と層Bの有効屈折利率Neff_2を、以下の条件を満足するように設定する。
((NA3NB1/4−1)×0.8+1<Neff_1<((NA3NB1/4−1)×1.3+1
((NANB31/4−1)×0.8+1<Neff_2<((NANB31/4−1)×1.3+1
【0074】
そして、最も望ましくは、層Aの有効屈折利率Neff_1と層Bの有効屈折利率Neff_2を、以下の条件を満足するように設定する。
((NA3NB1/4−1)×0.9+1<Neff_1<((NA3NB1/4−1)×1.1+1
((NANB31/4−1)×0.9+1<Neff_2<((NANB31/4−1)×1.1+1
【0075】
このように、層Aの有効屈折利率Neff_1と層Bの有効屈折利率Neff_2を最も望ましい条件に設定することにより、図38に示したように、界面1と界面3での入射側に戻る成分の振幅がほぼ等しく、界面2で入射側に戻る成分の振幅が界面1の倍となる。この場合、界面1と界面3の合成波を、界面2と打ち消し合わせることができ、低い反射率を実現することが可能である。
【0076】
また、最も望ましい層Aの有効屈折利率Neff_1と層Bの有効屈折利率Neff_2の別の条件としては、以下の関係を満足することである。
((NA3NB1/4−1)×1.01+1<Neff_1<((NA3NB1/4−1)×1.3+1
Neff_2 =NANB/Neff_1
【0077】
この場合には、界面1と界面3での入射側に戻る成分の振幅がほぼ等しく、界面2で入射側に戻る成分の振幅の1/2よりも僅かに大きくなる。これにより、斜め入射光や異なる波長に対して、界面1と界面3の合成波を、界面2と打ち消し合わせることができ、幅広い波長や角度に対して低い反射率を実現することが可能である。
【0078】
更に、媒体3の体積率を大きくすることが可能であり、より強度の高い、傷が付きにくい反射防止構造を得ることが可能となる。
【0079】
また、本実施形態における反射防止構造において、層Aの有効屈折利率をNeff_1、厚みをd1、層Bの有効屈折利率をNeff_2、厚みをd2、反射防止波長域の任意の波長をλとした場合、d1、d2が以下の条件を満足するように設定した。
d1=λ/4Neff_1
d2=λ/4Neff_2
このように、この場合は、層Aと層Bの厚みd1、d2が、それぞれその媒体内での波長の1/4に相当する反射防止構造である。層Aと層Bの厚さを波長の1/4とすることによって、図38に示したように、目的の波長で界面1、界面3と、界面2との位相を反転することができ、反射率を低減することが可能である。
【0080】
更に、本実施形態における反射防止構造において、層Aの有効屈折利率をNeff_1、厚みをd1、層Bの有効屈折利率をNeff_2、厚みをd2、反射防止波長域の任意の波長をλ、λ1、λ2として、λ1<λ<λ2、またはλ2<λ<λ1とした場合、d1、d2、及び波長λの範囲が以下の条件を満足するように設定した。
【0081】
d11/4Neff_1
d22/4Neff_2
0.02λ<|λ1−λ2|<0.08λ
このように、この場合は、層Aと層Bの厚みd1、d2が、それぞれその媒体内での波長λから0.02λ〜0.08λの範囲でずれた反射防止構造である。異なる波長や角度において、各界面で入射側に戻る成分の位相のずれを打ち消すような厚みの層を設けることによって、幅広い波長や角度範囲で、反射率を低減することが可能である。
【0082】
また、本実施形態における反射防止構造において、層Aの構造と層Bの構造を、媒体1と媒体2との境界に平行な面に投影した場合に、媒体3の占める面積の割合が、それぞれ10〜90%となるように設定する。
【0083】
層A、層Bにおける媒体3の占める面積の割合が10%より小さく、90%より大きいと、反射防止に必要な屈折率差が得られない。また、望ましくは、層A、層Bにおける媒体3の占める面積の割合が、層Aに関しては20〜70%、層Bに関しては40〜80%の範囲とすることで、高い反射防止効果が得られる。更に望ましくは、層A、層Bにおける媒体3の占める面積の割合が、層Aに関しては20〜50%、層Bに関しては50〜80%の範囲とすることで、より高い反射防止効果が得られる。
【0084】
このように、層A、層Bにおける媒体3の占める面積の割合を上記の範囲とすることによって、反射率の低減に必要な有効屈折率を得ることが可能である。また、傷付き難いなど、強度を高めることが可能である。
【0085】
〈実施形態2〉
本発明の実施形態2に係る反射防止構造では、前記層Aと前記層Bがそれぞれ2次元に配列される凹凸構造を有し、前記媒体3の高さ方向において体積率が異なる構成である。他の構成は実施形態1と同様であり、重複する説明は省略する。
【0086】
図4は、本発明の実施形態2に係る反射防止構造を有する光学素子を示す概略斜視図である。図4に示した実施形態2の反射防止構造では、層Aと層Bは、媒体3からなる2次元に配列された凸形微細構造4を有している。この凸形微細構造4は、層Aと層Bで幅(径)の異なる円柱である。これにより、媒体3は、層Aと層Bにおいて体積率が異なり、有効屈折率を変えることができる。なお、層Aと層Bに形成する凸型微細構造を、四角柱としてもよい。
【0087】
また、図5に示すように、層Aと層Bは、媒体3からなる、その高さ(深さ)方向において幅(径)の異なる2段の円柱状の凹形微細構造4aを2次元に配列してもよい。なお、層Aと層Bを、高さ方向において幅(径)の異なる四角状の凹形微細構造を有する構成としてもよい。
【0088】
更に、図6に示した反射防止構造では、層Aと層Bは、媒体3からなる2次元に配列された凸形微細構造4を有し、この凸形微細構造4は高さの異なる円柱を配列して構成されている。なお、層Aと層Bを、高さの異なる四角柱を配列した凸形微細構造としてもよい。
【0089】
また、図7に示すように、層Aと層Bは、媒体3からなる、深さの異なる円柱状の凹形微細構造4aを2次元に配列してもよい。
【0090】
なお、図4〜図7に示した実施形態2の層Aの凹凸構造は、例えば、フォトリソグラフィーによるレジストの露光量を変化させたり、あるいは電子線リソグラフィーによるレジストの露光量を変化させることで形成することができる。
【0091】
このように、前記実施形態1、2の反射防止構造によれば、異なる波長の光や斜め入射の光に対しても低い反射率を得ることができ、かつ製造が容易で、機械的な強度が高い反射防止構造を提供することができる。
【0092】
また、前記実施形態1、2の反射防止構造を有する光学部材によれば、高い反射防止効果を得ることができる光学部材を提供することができる。
【実施例】
【0093】
次に、本発明の反射防止構造による反射率の低減効果を評価するために、以下に示す実施例1〜11と比較用の比較例1〜6の反射防止構造を作製した。
【0094】
なお、反射率の低減効果を評価するために、RCWA(厳密結合波解析)法による電磁波解析シミュレーションソフトDiffract MOD(R-Soft社)を用いて、反射率計算を行った。実施例1〜11と比較例1〜6の設定条件と、反射率の算出結果は、以下の表1に記載したとおりである。
【0095】
【表1】

【0096】
この反射率計算における条件を、以下のように設定した。
反射防止波長域:380〜780nm(可視域)
媒体1:屈折率1(空気)
媒体2:屈折率1.5(ガラスや樹脂)
界面の法線から0deg、40deg、60degで光を入射し、380〜780nmの波長範囲での反射率の平均値を算出した。
【0097】
〈実施例1〉
図8に示すように、層Bの凹凸構造として、四角柱状の凸形微細構造4が2次元に配列された構造であり、以下のような条件に設定した。
【0098】
媒体3の屈折率NC:1.38
層A:媒体3で形成された、周期:200nm、高さ:110nm、幅:125nmの凸状の構造と空気(媒体1)によって形成(有効屈折率Neff_1:1.15)
層B:高さ:100nmの媒体3からなる構造(有効屈折率Neff_2:1.38)
【0099】
図18は、実施例1における反射率の算出結果を示す図である。
【0100】
〈実施例2〉
図9に示すように、媒体3からなる層A、層Bの凹凸構造として、2段に重なった四角柱状の凸形微細構造4が2次元に配列された構造であり、以下のような条件に設定した。
【0101】
媒体3の屈折率NC:1.46
層A:媒体3で形成された、周期:200nm、高さ:110nm、幅:114nmの凸状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_1:1.15)
層B:媒体3で形成された、周期:200nm、高さ:110nm、幅:174nmの凸状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_2:1.35)
【0102】
図19は、実施例2における反射率の算出結果を示す図である。
【0103】
〈実施例3〉
図10に示すように、媒体2(=媒体3)からなる層A、層Bの凹凸構造として、2段に重なった四角柱状の凸形微細構造4が2次元に配列された構造であり、以下のような条件に設定した。
【0104】
媒体3を媒体2と同じ媒体で形成した。屈折率NC:1.50
層A:媒体2で形成された、周期:200nm、高さ:110nm、幅:110nmの凸状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_1:1.15)
層B:媒体2で形成された、周期:200nm、高さ:100nm、幅:167nmの凸状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_2:1.35)
【0105】
図20は、実施例3における反射率の算出結果を示す図である。
【0106】
〈実施例4〉
図11に示すように、媒体2(=媒体3)からなる層A、層Bの凹凸構造として、2段に重なった四角柱のホール(凹形微細構造4a)が2次元に配列された構造であり、以下のような条件に設定した。
【0107】
媒体3を媒体2と同じ媒体で形成した。屈折率NC:1.50
層A:媒体2で形成された、周期:200nm、高さ:120nm、幅:179nmの凹状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_1:1.10)
層B:媒体2で形成された、周期:200nm、高さ:100nm、幅:110nmの凹状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_2:1.35)
【0108】
図21は、実施例4における反射率の算出結果を示す図である。
【0109】
〈実施例5〉
図11に示すように、媒体2(=媒体3)からなる層A、層Bの凹凸構造として、2段に重なった四角柱のホール(凹形微細構造4a)が2次元に配列された構造であり、以下のような条件に設定した。
【0110】
媒体3を媒体2と同じ媒体で形成した。屈折率NC:1.50
層A:媒体2で形成された、周期:200nm、高さ:110nm、幅:155nmの凹状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_1:1.20)
層B:媒体2で形成された、周期:200nm、高さ:90nm、幅:110nmの凹状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_2:1.35)
【0111】
図22は、実施例5における反射率の算出結果を示す図である。
【0112】
〈実施例6〉
図11に示すように、媒体2(=媒体3)からなる層A、層Bの凹凸構造として、2段に重なった四角柱のホール(凹形微細構造4a)が2次元に配列された構造であり、以下のような条件に設定した。
【0113】
媒体3を媒体2と同じ媒体で形成した。屈折率NC:1.50
層A:媒体2で形成された、周期:200nm、高さ:120nm、幅:167nmの凹状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_1:1.15)
層B:媒体2で形成された、周期:200nm、高さ:100nm、幅:89nmの凹状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_2:1.40)
【0114】
図23は、実施例6における反射率の算出結果を示す図である。
【0115】
〈実施例7〉
図11に示すように、媒体2(=媒体3)からなる層A、層Bの凹凸構造として、2段に重なった四角柱のホール(凹形微細構造4a)が2次元に配列された構造であり、以下のような条件に設定した。
【0116】
媒体3を媒体2と同じ媒体で形成した。屈折率NC:1.50
層A:媒体2で形成された、周期:200nm、高さ:124nm、幅:177nmの凹状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_1:1.11)
層B:媒体2で形成された、周期:200nm、高さ:101nm、幅:106nmの凹状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_2:1.36)
【0117】
そして、本実施例では、波長λ=550nmとして、d1=λ/4Neff_1、d2=λ/4Neff_2となるように制御した。
【0118】
図24は、実施例7における反射率の算出結果を示す図である。
【0119】
〈実施例8〉
図11に示すように、媒体2(=媒体3)からなる層A、層Bの凹凸構造として、2段に重なった四角柱のホール(凹形微細構造4a)が2次元に配列された構造であり、以下のような条件に設定した。
【0120】
媒体3を媒体2と同じ媒体で形成した。屈折率NC:1.50
層A:媒体2で形成された、周期:200nm、高さ:122nm、幅:172nmの凹状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_1:1.13)
層B:媒体2で形成された、周期:200nm、高さ:103nm、幅:117nmの凹状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_2:1.33)
【0121】
そして、本実施例では、波長λ=550nmとして、d1=λ/4Neff_1、d2=λ/4Neff_2となるように制御した。
【0122】
図25は、実施例8における反射率の算出結果を示す図である。
【0123】
〈実施例9〉
図11に示すように、媒体2(=媒体3)からなる層A、層Bの凹凸構造として、2段に重なった四角柱のホール(凹形微細構造4a)が2次元に配列された構造であり、以下のような条件に設定した。
【0124】
媒体3を媒体2と同じ媒体で形成した。屈折率NC:1.50
層A:媒体2で形成された、周期:200nm、高さ:119nm、幅:177nmの凹状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_1:1.11)
層B:媒体2で形成された、周期:200nm、高さ:105nm、幅:106nmの凹状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_2:1.36)
【0125】
そして、本実施例では、波長λ=550nmとして、λ1=528nm、λ2=571nm、|λ1−λ2|=0.078λとなるように制御した。
【0126】
図26は、実施例9における反射率の算出結果を示す図である。
【0127】
〈実施例10〉
図11に示すように、媒体2(=媒体3)からなる層A、層Bの凹凸構造として、2段に重なった四角柱のホール(凹形微細構造4a)が2次元に配列された構造であり、以下のような条件に設定した。
【0128】
媒体3を媒体2と同じ媒体で形成した。屈折率NC:1.50
層A:媒体2で形成された、周期:200nm、高さ:117nm、幅:172nmの凹状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_1:1.13)
層B:媒体2で形成された、周期:200nm、高さ:107nm、幅:117nmの凹状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_2:1.33)
【0129】
そして、本実施例では、波長λ=550nmとして、λ1=529nm、λ2=569nm、|λ1−λ2|=0.073λとなるように制御した。
【0130】
図27は、実施例10における反射率の算出結果を示す図である。
【0131】
〈実施例11〉
図10に示すように、媒体2からなる層A、層Bの凹凸構造として、2段に重なった四角柱状の凸形微細構造4が2次元に配列された構造であり、以下のような条件に設定した。
【0132】
媒体3を媒体2と同じ媒体で形成した。屈折率NC:1.46
層A:媒体2で形成された、周期:200nm、高さ:100nm、幅:132nmの凸状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_1:1.20)
層B:媒体2で形成された、周期:200nm、高さ:80nm、幅:162nmの凸状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_2:1.33)
【0133】
図28は、実施例11における反射率の算出結果を示す図である。
【0134】
上記した各実施例1〜11に対する比較例の反射防止構造を以下のように設定した。
〈比較例1〉
図12に示すように、比較例1では、反射防止構造を何も設けていない構成であり、屈折率1の媒体1(空気)から屈折率1.5の媒質2へ光が入射する。
【0135】
図29は、比較例1における反射率の算出結果を示す図である。
【0136】
〈比較例2〉
図13に示すように、比較例2では、媒体2の表面に屈折率1.38、厚さ100nmの薄膜(LR膜)10を形成した構成した。
【0137】
図30は、比較例2における反射率の算出結果を示す図である。
【0138】
〈比較例3〉
図14に示すように、比較例3では、媒体2の表面にAR膜(3層)を形成した構成であり、下から順に、屈折率1.64、厚さ83.8nmの第1の薄膜11、屈折率2.0、厚さ137.5nmの第2の薄膜12、屈折率1.38、厚さ99.6nmの第3の薄膜13を形成している。
【0139】
図31は、比較例3における反射率の算出結果を示す図である。
〈比較例4〉
図15に示すように、比較例4では、媒体2からなる層Aの凹凸微細構造として、四角柱状の凸形微細構造4が2次元に配列された構造であり、以下のような条件に設定した。
【0140】
層A(媒体3)を媒体2と同じ媒体で形成した。屈折率NC:1.50
層A:媒体2で形成された、周期:200nm、高さ:112nm、幅:174nmの凸状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_1:1.22)
【0141】
図32は、比較例4における反射率の算出結果を示す図である。
〈比較例5〉
図16に示すように、比較例5では、媒体2上に同じ媒体で高さ300nmの四角錐状のモスアイ構造14を形成した。
【0142】
モスアイ構造14を媒体2と同じ媒体で形成した。屈折率NC:1.50
【0143】
図33は、比較例5における反射率の算出結果を示す図である。
〈比較例6〉
図17に示すように、比較例6では、媒体2上に同じ媒体で高さ225nmの先端が砲弾状に突起した円錐状のモスアイ構造15を形成した。
【0144】
モスアイ構造15を媒体2と同じ媒体で形成した。屈折率NC:1.50
【0145】
図34は、比較例6における反射率の算出結果を示す図である。
【0146】
このように、実施例1〜11の反射防止構造によれば、380〜780nmの波長域全域で、比較例1〜6の場合よりも低い反射率を実現することができる。また、界面の法線から傾いて入射した光に対しても、低い反射率を維持することができる。
【0147】
また、実施例3〜11の反射防止構造では、媒体2の構造のみで反射防止性能が実現可能であり、屈折率の異なる材料を使用する必要がないため、低コストで、かつ生産性が高い。
【0148】
また、例えば、実施例11で示した反射防止構造を、屈折率1.5など屈折率の異なる透明基板上に形成することが可能である。媒体2部分は光学的なコヒーレンスが消失する厚さを有していれば、媒体2と前記透明基板との反射光による干渉は考える必要はない。この厚さは1μm程度であり、媒体2はこれ以上の厚さを有していればよい。また、透明基板の屈折率が1.5の場合、界面に法線方向から0degの入射で、0.01%、界面の法線方向から60deg傾いた入射で、0.15%と十分に小さい。従って、透明基板上に1μm以上の厚さを持たせて構造を転写することなどにより、簡易に反射率を低減することが可能である。
【符号の説明】
【0149】
1 媒体(第1の媒体)
2 媒体(第2の媒体)
3 媒体(第3の媒体)
4 凸形微細構造(2次元凹凸構造)
4a 凹形微細構造(2次元凹凸構造)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の媒体と第2の媒体との境界に設けられた反射防止構造であって、
前記反射防止構造は、前記第1の媒体と第3の媒体とによって形成され、前記反射防止構造の有効屈折率をNeffとしたときに、
Neff=rANA+rCNC
ただし、rA、rC:第1の媒体、第3の媒体の体積率
NA、NC:第1の媒体、第3の媒体の屈折率
で表される有効屈折率が異なる2層を備え、
前記2層のうちの少なくとも1層は、反射防止波長域の最小波長以下の2次元凹凸構造を有することを特徴とする反射防止構造。
【請求項2】
前記反射防止構造は、高さ方向において前記第3の媒体の体積率が異なる、2段の2次元凹凸構造を有することを特徴とする請求項1に記載の反射防止構造。
【請求項3】
前記第1の媒体の屈折率をNA、前記第2の媒体の屈折率をNB、前記第3の媒体の屈折率をNCとしたときに、
NA<NC<NB
であることを特徴とする請求項1又は2に記載の反射防止構造。
【請求項4】
前記第1の媒体の屈折率をNA、前記第2の媒体の屈折率をNB、前記第3の媒体の屈折率をNCとしたときに、
NA<NC=NB
であることを特徴とする請求項2に記載の反射防止構造。
【請求項5】
前記第2の媒体と前記第3の媒体とが同じ物質であることを特徴とする請求項4に記載の反射防止構造。
【請求項6】
前記有効屈折率の異なる2層のうち、前記第1の媒体側の層を第1の層、前記第2の媒体側の層を第2の層とし、
反射防止波長域の任意の波長をλとして、前記第1の層の有効屈折率をNeff_1、厚みをd1、前記第2の層の有効屈折率をNeff_2、厚みをd2としたときに、
d1=λ/4Neff_1
d2=λ/4Neff_2
であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の反射防止構造。
【請求項7】
前記有効屈折率の異なる2層のうち、前記第1の媒体側の層を第1の層、前記第2の媒体側の層を第2の層とし、
前記第1の層の有効屈折率をNeff_1、厚みをd1
前記第2の層の有効屈折率をNeff_2、厚みをd2
反射防止波長域の任意の波長をλ、λ1、λ2として、
λ1<λ<λ2、またはλ2<λ<λ1での関係を満たすときに、
d1=λ1/4Neff_1
d2=λ2/4Neff_2
0.02λ<|λ1−λ2|<0.08λ
であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の反射防止構造。
【請求項8】
前記2次元凹凸構造が、第1の層の構造と第2の層の構造を、第1の媒体と第2の媒体との境界に平行な面に投影した場合に、前記第3の媒体の占める面積の割合が、それぞれ10〜90%であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の反射防止構造。
【請求項9】
光学部材の透光性基材上に、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の反射防止構造を有することを特徴とする光学部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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