説明

反応性セラミックスおよびその製造方法、ならびに水素製造方法および水素製造装置

【課題】集光太陽熱を利用した二段階水分解反応において、酸素分圧の高い空気中での酸素放出反応の進行、高反応性および高温安定性を有し、還元反応(酸素放出反応)と水分解反応(水素発生反応)を繰り返すことにより、水と太陽エネルギーから連続的に水素を生産することができる反応性セラミックスおよびその製造方法、ならびに水素製造方法および水素製造装置の提供。
【解決手段】セリウムおよびジルコニウムを含む固溶体からなり、立方晶と正方晶の結晶系が共存することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集光太陽光エネルギによる水素製造に用いる反応性セラミックスおよびその製造方法、ならびに水素製造方法および水素製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の枯渇、二酸化炭素の増加による地球温暖化などの問題の解決策として、化石燃料に代わって二酸化炭素を排出しないクリーンな再生可能エネルギの開発が重要度を増している。再生可能エネルギの一つである太陽光エネルギは枯渇の心配がなく、また、温室効果ガスの削減に貢献できる。また、近年、燃料電池が普及し始め、水素エネルギ社会の牽引役として期待されているが、現在製造されている水素の大半は化石燃料が原料であり、根本的な化石燃料削減の面では課題がある。このような世界情勢の中、一次エネルギを太陽光エネルギに求め、二次エネルギを水素で支える形は、理想的なクリーンエネルギシステムの一つであり、その確立は急務である。
【0003】
そこで、太陽光を集光して、集光した太陽光のエネルギーを利用して、水素やメタノールを製造して保存可能な化学エネルギーとして貯蔵できれば、エネルギ資源としての有用性が増すことになる。
【0004】
ところで、世界にはアメリカ南部、地中海およびオーストラリア等のサンベルト地域と呼ばれる、太陽光が年間を通して豊富に降り注ぐ地域がある。未開発の砂漠が大部分を占めるそのような地域において、豊富な太陽エネルギを利用して集光太陽熱発電を行うとともに、太陽光エネルギを利用して水素やメタノールを製造することが提案され、開発が進められている。
【0005】
そこで、集光太陽エネルギーを化学エネルギーに変換する方法の一つとして、反応性セラミックスを用いた二段階水分解反応による水素生産が提案されている(非特許文献1〜3参照)。この二段階水分解反応は、図9に示すように、還元型反応性セラミックスの生成過程(酸素放出反応)と、還元型セラミックスによる水分解過程(水素生成反応)の二段階で構成される。
酸素放出反応
MOox=MOred+1/2O (1)
水素生成反応
MOred+HO=MOox+H (2)
【0006】
還元型反応性セラミックスの生成過程(酸素放出反応)は吸熱反応であるため、集光太陽熱の持つ太陽エネルギーを吸収することができる。二段階水分解反応に用いる反応性セラミックスとして、これまで、フェライト系(非特許文献4〜5参照)、セリア系(非特許文献6〜7参照)などが研究されてきた。そして、本願発明者らは、反応性セラミックスを用いたロータリー式太陽反応炉(非特許文献8参照)によって、連続的に水素を生産するシステムの実用化を視野に入れている。このロータリー式太陽反応炉に用いる反応性セラミックスとしては、酸素分圧の高い空気中で酸素放出反応が進行でき、また、酸素放出過程での高エネルギーフラックス(1000−3000kW/m)に対応できる高温安定性と高反応性を合わせ持つ材料が望まれる。これまで、ニッケルフェライトを用いた二段階水分解反応において、空気中で酸素放出反応が進行することが明らかになっている(非特許文献4参照)。
【非特許文献1】Tamaura, Y., 2003: “Solar Fuel Production by Conversion of Concentrated Solar-Heat to Chemical Energy”, Eco-Engineering 15(3), 109-119.
【非特許文献2】Steinfeld, “A. Solar thermochemical production of hydrogen - a review.” Solar Energy 78, 603-615 (2005)
【非特許文献3】玉浦裕, 金子宏, 特願2006-274864, “水素製造方法、水素製造装置および金属酸化物”, (2006)
【非特許文献4】Tamaura et al.: “Oxygen-releasing step of ZnFe2O4/(ZnO+Fe3O4)-system in air using concentrated solar energy for solar hydrogen production”, Solar Energy, 78(5), 616-622, 2005.
【非特許文献5】長沼祐樹, 金子宏, 石原英之, 多久俊平, 今枝修平, 福角浩昭, 長谷川紀子, 玉浦裕, “Ni-フェライトを用いたソーラー水素生産−実用化に向けたロータリー式反応炉への利用−”平成18年度日本太陽エネルギー学会・日本風力エネルギー協会合同研究発表会講演論文集“, (2006), 417-419.
【非特許文献6】H. Kaneko, T. Miura, H. Ishihara, S. Taku, T. Yokoyama, H. Nakajima and Y. Tamaura, “Reactive ceramics of CeO2-MOx (M=Mn, Fe, Ni, Cu) for H2generation by two-step water splitting using concentrated solar thermal energy”, Energy (2007), 32(5), 656-663.
【非特許文献7】S. Taku, H. Kaneko and Y. Tamaura, “Two-step water splitting reaction with Ce-Zr oxide system for solar hydrogen production”, Eco-Engineering (2007), 19(4), 255-262.
【非特許文献8】H. Kaneko, T. Miura, A. Fuse, H. Ishihara, S. Taku, H. Fukuzumi, Y. Naganuma and Y. Tamaura, “Rotary-Type Solar Reactor for Solar Hydrogen Production with Two-step Water Splitting Process”, Energy & Fuels (2007), 21, 2287-2293.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ニッケルフェライトを用いた二段階水分解反応において、酸素放出反応は、融点付近(1500℃以上)で行われるため、融解、焼結が起こり、連続的に二段階水分解反応を進行させることが困難であった。一方、従来の立方晶型セリア系反応性セラミックスCeO−MOx(M=Mn,Fe,Ni,Cu)は、高温安定性を有し、水素生成反応が500℃付近の低温で進行するという利点を有するが、酸素分圧の高い空気中での酸素放出反応の進行は達成されていなかった。
【0008】
そこで、本発明の課題は、集光太陽熱を利用した二段階水分解反応において、酸素分圧の高い空気中での酸素放出反応の進行、高反応性および高温安定性を有し、還元反応(酸素放出反応)と水分解反応(水素生成反応)を繰り返すことにより、水と太陽エネルギーから連続的に水素を生産することができる反応性セラミックスおよびその製造方法、ならびに水素製造方法および水素製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、従来の立方晶型セリア系反応性セラミックスは、Ce原子の酸化還元反応のみで進行している、と考え、ZrOをCeOの蛍石型格子内に置換できる上限以上に固溶させることにより、立方晶系と正方晶系の二つの結晶系を同時に有するCeO−ZrO系の反応性セラミックスが、これらの結晶系間の相互作用を伴うと示唆される酸素欠損生成により空気中でも酸素放出反応が進行することを知見した。
【0010】
そこで、本発明の反応性セラミックスは、前記課題を解決するために、前記知見に基づき、セリウムおよびジルコニウムを含む固溶体からなり、立方晶と正方晶の結晶系が共存することを特徴とする。
【0011】
この反応性セラミックスは、セリウムおよびジルコニウムを含む固溶体からなり、立方晶と正方晶の結晶系が共存することによって、大気雰囲気中で1400〜1800℃に加熱して還元して酸素を放出する酸素放出反応と、還元された反応性セラミックスを300〜1200℃で水と反応させて酸化反応によって水素を生成する水素生成反応を行う2段階水分解反応を繰り返して行うことにより、水素を製造することができる。
【0012】
また、請求項2に係る発明の反応セラミックスは、前記セリウム/ジルコニウムのモル比が、90/10〜20/80であることを特徴とする。
【0013】
この反応性セラミックスでは、前記セリウム/ジルコニウムのモル比が、90/10〜20/80であることが好ましく、さらに、前記セリウム/ジルコニウムのモル比が、80/20〜50/50であることが好ましい。
【0014】
請求項4に係る発明の反応性セラミックスの製造方法は、セリウム硝酸塩と、ジルコニウム硝酸塩とを含む硝酸塩水溶液を、シュウ酸水溶液と混合して沈殿物を生成する工程と、前記沈殿物を含む懸濁液のpHを0〜7に調整する工程と、前記沈殿物を焼成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
この反応性セラミックスの製造方法では、セリウム硝酸塩と、ジルコニウム硝酸塩とを含む硝酸塩水溶液を、沈殿物を生成する工程と、前記沈殿物を含む懸濁液のpHを0−7に調整する工程と、前記沈殿物を焼成する工程とによって、セリウムおよびジルコニウムを含む固溶体からなり、立方晶と正方晶の結晶系が共存する反応性セラミックスを得ることができる。
【0016】
請求項5に係る発明の水素の製造方法は、前記の反応性セラミックスを用いて水素を製造する方法であって、前記反応性セラミックスに集光太陽光エネルギを照射して大気雰囲気中で1400〜1800℃に加熱して、前記反応性セラミックスを還元して酸素を放出する酸素放出反応と、前記還元された反応性セラミックスを300〜1200℃で水と反応させて前記反応性セラミックスを酸化して水素を生成する水素生成反応と、を行う2段階水分解反応を繰り返して行うことを特徴とする。
【0017】
この水素の製造方法では、反応性セラミックスに集光太陽光エネルギを照射して大気雰囲気中で1400〜1800℃に加熱して、反応性セラミックスを還元して酸素を放出する酸素放出反応と、還元された反応性セラミックスを300〜1200℃で水と反応させて反応性セラミックスを酸化して水素を生成する水素生成反応と、を行う2段階水分解反応を繰り返して行うことによって、集光太陽光エネルギを利用して水素を効率的に製造することができる。
【0018】
請求項6に係る発明の水素の製造方法は、前記集光太陽光エネルギのエネルギフラックスが1000〜3000kW/mであることを特徴とする。
【0019】
この水素の製造方法では、エネルギフラックスが1000〜3000kW/mである集光太陽光エネルギを利用して水素を効率的に製造することができる。
【0020】
請求項7に係る発明の水素製造装置は、前記の反応性セラミックスを配設した2段階水分解反応部と、前記2段階水分解反応部に太陽光エネルギを供給する太陽光供給部と、前記2段階水分解反応部に水を供給する水供給部と、を備え、前記2段階水分解反応部において、前記太陽光供給部から太陽光エネルギを供給して前記反応性セラミックスを大気雰囲気中で1400〜1800℃に加熱して、前記反応性セラミックスを還元して酸素を生成し、さらに、前記還元された反応性セラミックスを300〜1200℃で水と反応させて前記還元された反応性セラミックスを酸化して水素を生成する2段階水分解反応を繰り返して、水素を製造することを特徴とする。
【0021】
この水素製造装置では、2段階水分解反応部において、前記太陽光供給部から太陽光エネルギを供給して前記反応性セラミックスを大気雰囲気中で1400〜1800℃に加熱して、前記反応性セラミックスを還元して酸素を生成し、さらに、前記還元された反応性セラミックスを300〜1200℃で水と反応させて前記還元された反応性セラミックスを酸化して水素を生成する2段階水分解反応を繰り返して、集光太陽光エネルギを利用して水素を効率的に製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の反応性セラミックスは、集光太陽熱を利用した二段階水分解反応において、酸素分圧の高い空気中での酸素放出反応の進行、高反応性および高温安定性を有し、還元反応(酸素放出反応)と水分解反応(水素生成反応)を繰り返すことにより、水と太陽エネルギーから連続的に水素を効率的に製造することができる。
【0023】
また、本発明の反応性セラミックスの製造方法によれば、セリウムおよびジルコニウムを含む固溶体からなり、立方晶と正方晶の結晶系が共存する反応性セラミックスを得ることができる。
【0024】
さらに、本発明の水素製造方法によれば、反応性セラミックスを還元して酸素を放出する酸素放出反応と、還元された反応性セラミックスを大気雰囲気中で水と反応させて反応性セラミックスを酸化して水素を生成する水素生成反応と、を行う2段階水分解反応を繰り返して行うことによって、集光太陽光エネルギを利用して水素を効率的に製造することができる。
【0025】
さらにまた、本発明の水素製造装置によれば、集光太陽光エネルギを利用して反応性セラミックスを大気雰囲気中で加熱して、反応性セラミックスを還元して酸素を生成し、さらに、還元された反応性セラミックスを大気雰囲気中で水と反応させて水素を生成する2段階水分解反応を繰り返して、集光太陽光エネルギを利用して水素を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の反応性セラミックスおよびその製造方法、ならびに水素製造方法および水素製造装置について詳細に説明する。
本発明の反応性セラミックスは、セリウムおよびジルコニウムを含む固溶体からなるものである。セリウムとジルコニウムは、ZrOが、CeOの蛍石型格子内に置換できる上限:10−30mol%[1000℃(焼成温度)-1500℃(酸素放出反応温度))以上に固溶しているものである。そして、本発明の反応性セラミックスは、立方晶と正方晶の結晶系が共存する結晶形態を有する。この立方晶と正方晶の結晶系の含有割合は、反応性セラミックスの温度による相転位によって変動する。すなわち、この反応性セラミックスは、1500℃付近で立方晶−正方晶の相転移が起こり、これらの結晶系間の相互作用を伴うと示唆される酸素欠損生成により空気中でも酸素放出反応が進行する。また、ZrO(m.p.約2700℃)は、CeO(m.p.約2600℃)以上の高融点を持つため、従来CeOに固溶させていた遷移金属(Mn,Fe,Ni,Cu)酸化物のように、蛍石型格子内に置換しなくても焼結や融解が進行しないという利点がある。そのため、本発明の反応性セラミックスは、1500℃付近で酸素放出反応が進行するとともに、水素生成反応は500℃付近の低温で迅速に進行し、しかも高温安定性および高反応性を有するため、集光太陽熱を利用した二段階水分解反応による連続水素生産に有用である。
【0027】
本発明の反応性セラミックスにおいて、セリウムおよびジルコニウムの含有割合は、Ce/Zrのモル比で90/10〜20/80であることが好ましく、さらに好ましくはCe/Zrのモル比で80/20〜50/50である。特に、Ce/Zrのモル比で60/40の割合で含む反応性セラミックスが、水素の生成量が多いことから、好ましい。
【0028】
本発明の反応性セラミックスの製造は、セリウム硝酸塩と、ジルコニウム硝酸塩とを含む硝酸塩水溶液を、シュウ酸水溶液と混合して混合溶液を調製する工程と、前記混合溶液のpHを調整して沈殿物を生成する工程と、前記沈殿物を焼成する工程と、を含む方法によって行うことができる。この方法は、いわゆるシュウ酸塩共沈法と呼ばれる方法である。この方法によって、セリウムおよびジルコニウムを含む固溶体で構成されるとともに、立方晶と正方晶の結晶系が共存する結晶形態を有する反応性セラミックスを得ることができる。一方、この種の固溶体を得るために使われる、いわゆる錯体重合法によっては、セリウムおよびジルコニウムを含む固溶体で構成されるとともに、立方晶と正方晶の結晶系が共存する結晶形態を有する反応性セラミックスを得ることができず、正方晶の結晶系のみからなるセラミックスが得られる。
【0029】
セリウム硝酸塩としては、硝酸セリウム、硝酸アンモニウムセリウム、硝酸二アンモニウム、硝酸四アンモニウムセリウム、シュウ酸セリウム、塩化セリウム、臭化セリウム、炭酸セリウム、酢酸セリウム、ふっ化セリウム 、ほう化セリウム、よう化セリウム、りん酸セリウム等を用いることができ、また、ジルコニウム硝酸塩としては、硝酸酸化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、、ふっ化ジルコニウム、オキシりん酸ジルコニウム、けい酸ジルコニウム、臭化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム等を用いることができる。これらのセリウム硝酸塩とジルコニウム硝酸塩とを、前記Ce/Zrのモル比となる割合で、シュウ酸水溶液と混合して混合溶液を調製する。このとき、シュウ酸水溶液は、セリウム硝酸塩とジルコニウム硝酸塩の合計量に対して、少なくとも当量以上の割合となるように混合することが好ましい。
【0030】
また、混合溶液のpHは、0〜7の範囲、好ましくは2〜3の範囲に調整する。このpHの調整によって、収量が増大する。
【0031】
沈殿物の焼成は、固溶体とするために、900〜1500℃程度で行うことが好ましく、特に好ましくは1000〜1400℃である。沈殿物の焼成は、電気炉等を用いて、温度を調整して行うことが好ましい。
【0032】
本発明の反応性セラミックスを利用して、酸素放出反応と水素生成反応を繰り返して行う2段階水分解反応によって、水素と酸素を製造することができる。
【0033】
酸素放出反応は、本発明の反応性セラミックスに集光太陽光エネルギを照射して加熱して、前記反応性セラミックスを還元して酸素を放出する反応である。
酸素放出反応
反応性セラミックスox=反応性セラミックスred+1/2O (3)
【0034】
反応性セラミックスを照射する集光太陽光エネルギは、反応炉の耐熱性と、反応性セラミックスの反応特性および耐熱性の観点から、エネルギフラックスが1000〜3000kW/mであることが好ましい。集光太陽光エネルギは、反応性セラミックスの酸素放出反応(吸熱反応)によって吸収される必要がある。
【0035】
酸素放出反応において、反応性セラミックスを加熱する温度は、1400〜1800℃程度、好ましくは1500〜1600℃程度である。本発明の反応セラミックスは、1400〜1800℃程度の従来の反応性セラミックスよりも低温で酸素放出反応を生起するものであり、この点で、ZrO(m.p.約2700℃)は、CeO(m.p.約2600℃)よりも低温で酸素放出反応を生起するため、焼結や融解によって酸素放出反応が停止することがないため、有効である。
【0036】
また、酸素放出反応における反応雰囲気は、酸素分圧0〜20%の範囲の雰囲気が好ましく、大気雰囲気でもよい。この点で、本発明の反応性セラミックスは、Ar等の不活性雰囲気中で酸素放出反応を行う必要がある従来の反応性セラミックスよりも実用上有効である。
【0037】
水素生成反応は、酸素放出反応によって還元された反応性セラミックスを大気雰囲気中で水と反応させて前記反応性セラミックスを酸化して水素を生成する反応である。
水素生成反応
反応性セラミックスred+HO=MOox+H (2)
【0038】
水素生成反応において、反応性セラミックスと反応させる水は、反応性セラミックスに対して、少なくとも当量以上の割合で加えて反応させることが好ましい。このとき、反応性セラミックスを加熱する温度は、300〜1200℃程度、好ましくは400〜600℃である。
を行う2段階水分解反応を繰り返して行うことを特徴とする水素の製造方法。
【0039】
以上のように、還元反応(酸素放出反応)と水分解反応(水素生成反応)を繰り返すことにより、水と太陽エネルギーから連続的に水素を製造することができる。
【0040】
本発明の反応性セラミックスを用いて水素を製造する装置として、本発明の反応性セラミックスを配設した2段階水分解反応部と、前記2段階水分解反応部に太陽光エネルギを供給する太陽光供給部と、前記2段階水分解反応部に水を供給する水供給部と、を備え、前記2段階水分解反応部において、前記太陽光供給部から太陽光エネルギを供給して前記反応性セラミックスを大気雰囲気中で加熱して、前記反応性セラミックスを還元して酸素を生成し、さらに、前記還元された反応性セラミックスを水と反応させて前記還元された反応性セラミックスを酸化して水素を生成する2段階水分解反応を繰り返して行う装置が有用である。
【0041】
この水素製造装置において、太陽光エネルギを供給して前記反応性セラミックスを大気雰囲気中に加熱する温度は、好ましくは1400〜1800℃、特に好ましくは1500〜1600℃の範囲である。また、還元された反応性セラミックスを水と反応させる際の加熱温度は、好ましくは300〜1200℃、特に好ましくは400〜600℃の範囲である。
【0042】
この水素製造装置の具体例として、図1(a)に示す装置が挙げられる。
この水素製造装置1は、回転ロータ2の外周に沿って複数の反応セル3が、反応性セラミックス4を外側に向けて周設された構造を有し、反応性セラミックスによる酸素放出反応を行う酸素放出セル5と、反応性セラミックスによる水素生成反応を行う水素生成セル6とを備える。
【0043】
反応セル3は、図1(b)に示すように、断面円弧状の反応性セラミックス4を断熱材3aおよび3bとともに、ステンレススチール製のケース3cに取り付けた構造を有するものである。そして、反応性セラミックス4は、回転ロータ2の外周に反応セル3を取り付けたときに、反応性セラミックス4が、回転ロータ2の外側に上面が向かうように、反応セル3に配設される。
【0044】
酸素放出セル5は、集光太陽光を導入して反応セル3に照射するために外側に設けられた太陽光導入用石英窓5aと、導入された集光太陽光を通すために外側円筒体7に設けられた窓5bを有すると、石英窓支持体7a,7bとで囲まれた閉空間を構成している。そして、酸素放出反応によって生成した酸素を導出する酸素出口5cと、生成した酸素を導出するためのキャリヤガス(例えば、Ar)を導入するためのガス導入口5dとを有する。
【0045】
水素生成セル6は、反応性セラミックス4を加熱するための集光太陽光を導入する石英窓6aと、導入された集光太陽光を通すために外側円筒体7に設けられた窓6bと、石英窓支持体8a,8bとで囲まれた閉空間を構成している。そして、水素生成反応によって生成した水素を導出する水素出口6cと、生成した反応性セラミックス4に水蒸気を供給するための水蒸気入口6dとを有する。
【0046】
この水素製造装置1においては、回転ロータ2を矢印Aの方向に回転し、反応セル3が酸素放出セル5内に入ると、太陽光導入用石英窓5aから窓5bを通って、集光太陽光が反応セル3の反応性セラミックス4に照射されて1400〜1800℃に加熱される。これによって、反応性セラミックス4が酸素放出反応が生起され、反応セラミックス4から酸素が放出される。放出された酸素は、ガス導入口5dから導入されるキャリヤガスによって、酸素出口5cから外部で導出される。
【0047】
次に、酸素放出セル5内での酸素放出反応によって還元された反応性セラミックス4が配設された反応セル3は、回転ロータ2の回転に伴って、水素生成セル6に入る。そして、石英窓6aから窓6bを通って、集光太陽光が反応セル3の還元された反応性セラミックス4に照射されて、300〜1200℃に加熱されるとともに、水蒸気入口6dから導入される水蒸気と反応して水素を生成する。生成した水素は、水素出口6cから外部に取り出される。
【0048】
以上のように、この水素製造装置1においては、回転ロータ2の回転に伴って、反応性セラミックス4が、酸素放出セル5内で酸素放出反応、水素生成セル6内で水素生成反応を繰り返して行うことができる。これによって、集光太陽光のエネルギを利用して、水素を連続的かつ効率的に製造することができる。また、酸素放出反応によって生成する酸素も、有効に利用することができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例および比較例によって、本発明をより詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
CeとZrを、それぞれCe/Zrのモル比で100/0、80/20および60/40で固溶させた試料を、シュウ酸塩共沈法で下記のようにして調製した。
【0051】
CeイオンおよびZrイオンをモル比Ce/Zrで100/0、80/20および60/40で含む硝酸塩水溶液と、シュウ酸水溶液とを当量混合した混合溶液のそれぞれに、アンモニア水溶液を加えてpH3.2に調整し、24時間攪拌した後、遠心分離して沈殿物を分離した。得られた沈殿物のそれぞれを、80℃で24時間乾燥した後、1000℃の電気炉で1時間焼成して、セラミックス試料を得た。
【0052】
得られたセラミックス試料について、X線回折装置(理学電気(株)製、RINT2100;CuKα線)を用いて、X線回折パターンを測定した。得られたX線回折パターンを図2に示す。
【0053】
図2に示すX線回折パターンから、それぞれCe/Zrのモル比で100/0、80/20および60/40で固溶させた試料のいずれも、CeOの蛍石型構造に由来する立方晶の結晶系を主に含み、CeO(Ce/Zrのモル比:100/0)は立方晶のみ、Ce0.8Zr0.2(Ce/Zrのモル比:80/20)は立方晶と極微量の正方晶、Ce0.6Zr0.4(Ce/Zrのモル比:60/40)は立方晶と正方晶の2つの結晶系を含むものであることが確認された。また、X線回折パターンで確認された回折ピークは、全てCeOとZrOの固溶体によるものであることが分かった。
【0054】
次に、図3に示す酸素放出反応および水素生成反応を行うための実験装置31を用いて、得られたセラミックス試料について酸素放出反応を行った。
実験装置31は、内部に白金網33aを配設した反応部33を有する石英管からなる反応管32と、反応管32の外側に配置した赤外イメージ炉34と、反応部33に管路35aを通じて水蒸気を供給する水蒸気発生装置36と、反応部33で発生し、管路35bを通じて導出されるガスを分析する分析部37とを備えるものである。反応部33には、温度を測定するための熱電対38が挿入されている。水蒸気発生装置36は、水を貯留する水貯留部61と、水貯留部61から水を水蒸気発生部63に供給するマイクロポンプ62と、蒸気発生部63に供給された水を加熱して水蒸気を発生させる電気炉64と、ガスを導入するガス導入口65a,65bとを備えるものである。また、分析部37は、反応部33で発生したガスを冷却水によって一次冷却する一次冷却部71と、一次冷却部71で一次冷却されたガスをさらに氷によって冷却する二次冷却部72と、二次冷却部72に連結され、二次冷却部72からガスを直接導入して質量分析する直接ガス質量分析計73とを備えるものである。また、39a,39bは、管路切り替え弁であり、40はガス導入口である。
【0055】
この実験装置1の反応管32内の白金網33にセラミックス試料を載置し、セラミックス試料Sに赤外イメージ炉34を擬似集光太陽光として赤外線を照射して加熱し酸素放出反応実験を行った。実験は、管路切り替え弁39aを閉じ、管路切り替え弁39bを開き、ガス導入口40から、Arガスまたは空気を反応部33に供給して、反応性のセラミックス試料Sの酸素放出反応を行った。このとき、熱電対38により反応性のセラミックス試料Sの温度を測定しながら、赤外イメージ炉33からの赤外線による反応性のセラミックス試料Sの加熱を、昇温速度が200℃/minとなるように調整した。そして、反応性のセラミックス試料Sをアルゴンまたは空気を供給しながら、1500℃で5分間酸素放出反応を行った。酸素放出反応で生成したガスを、管路5bを通じて分析部7に導出し、一次冷却部71および二次冷却部72で冷却した後、直接ガス質量分析計73に導入して、酸素量を測定した。各セラミックス試料S(CeO、Ce0.8Zr0.2、Ce0.6Zr0.4)について測定した酸素放出量を表1に示す。その結果、CeO、Ce0.8Zr0.2は、酸素分圧が約20%となる空気中では、ほとんど酸素放出反応が進行しないが、Ce0.6Zr0.4では、1.08g/cmの酸素放出量が得られた。
【0056】
【表1】

【0057】
次に、酸素放出反応終了後のセラミックス試料Sを急冷し、それぞれX線回折パターンを測定した。酸素放出反応後のX線回折パターンを図4に示す。
この図4に示すX線回折パターンから、以下のことが推定される。
すなわち、通常、酸素欠損が生成するとX線回折パターンのピークは低角度側にずれる。また、カチオン移動が起こり全体に占めるCeの比が増大するとピークは低角度側にずれる。一方、Ar中の酸素放出反応後では、立方晶、正方晶のピークとも低角度側にずれているが、空気中での酸素放出反応後では、立方晶のピークは高角度側にずれている。これは立方晶と正方晶間でカチオン移動が起こり全体に占めるCeの比が変化したためだと考えられる。また、Ce0.6Zr0.4は、通常、1500℃付近で立方晶−正方晶の相転移が起こることが知られており(Yashima, M. and Yoshimura, M., 1995: Phase Transition and Phase Diagram of Zrconia Ceramics, Materia Japan, 34(4), 448-453.)、この空気中での特異な酸素放出反応の進行は、立方晶と正方晶の相互作用を伴う酸素欠損生成に起因すると示唆される。また、酸素放出反応後の試料は500℃付近で水分解反応が進行でき、酸素放出過程において焼結も進行しないため、連続的な水素生産が可能である。
【0058】
(比較例1)
CeとZrをモル比で60:40で固溶させたセラミックス試料を錯体重合法で下記のようにして調製した。
酢酸セリウム(Ce(CHCOO)・HO,3.516g)とオキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl・8HO、2.44g)を、蒸留水91.5mlに溶解した混合溶液を、クエン酸−エチレングリコール溶液(エチレングリコール28.0ml、クエン酸22.49g)と混合し、400−600℃で加熱重合させた。その後、約350℃で加熱して非結晶の前駆体を得た。この前駆体を、空気中で1000℃まで約10℃/minの昇温速度で昇温させて加熱して結晶化させ、さらに、有機物が完全に除去されるまで1000℃を保持して、焼成してセラミックス試料を得た。
【0059】
この錯体重合法で調製されたセラミックス試料は、X線回折法で分析したところ、正方晶の結晶系のみで形成されていることが確認された。
【0060】
(実施例2)
図3に示した実験装置31を用いて、実施例1で得られたCe0.6Zr0.4の反応性セラミックス試料の2段階水分解反応実験を行った。
実験装置1の反応部33の白金網33aに反応性セラミックス試料Ce0.6Zr0.4を載置し、Arガスを100ml/minを供給するとともに、赤外イメージ炉34から赤外線を照射して1500℃で5分間加熱して酸素放出反応を行った。次に、水蒸気(450ml/min)とArガス(100ml/min)の混合ガスを反応部33に供給するとともに、500℃、1000℃、800℃、600℃、400℃、500℃で、それぞれ5分間加熱して水素生成反応を行った。そして、各反応で発生した酸素および水素の量を分析部7の直接ガス質量分析計73で測定した。このときの1500℃(1773K)における酸素放出反応における酸素放出量を図5(a)に、500℃(773K)における水素生成反応における水素の生成量を図5(b)に示す。
【0061】
図5(a)および(b)に示すとおり、主に立方晶の結晶系で構成される反応性セラミックス試料Ce0.6Zr0.4では、水素生成反応が非常に早く進行することが分かった。また、500℃付近で、水素の生成量が最大値を示している。このことは、実施例1で調製した反応セラミックス試料CeOおよびCe0.8Zr0.2においても同様であった。
【0062】
以上のとおり、主に立方晶の結晶系で構成される反応性セラミックス試料Ce0.6Zr0.4では、水素の生成量が最大値を示す温度は、500℃付近であり、従来の反応性セラミックス(例えば、フェライト系等の水素生成反応温度:100℃以上)と比較して、大幅に低い温度で水素が生成できることが分かった。
【0063】
(比較例2)
比較例1で調製した、正方晶の結晶系のみで形成された反応性セラミックスCe0.6Zr0.4を用いて、実施例2と同様にして2段階水分解反応実験を行った。
この実験において、酸素放出反応は1500℃で5分間行い、水素生成反応は、酸素放出反応後に、500℃、1000℃、1200℃、1300℃、1100℃でそれぞれ5分間行った。1500℃(1773K)での酸素放出反応における酸素放出量を図6(a)に、500℃(773K)での水素生成反応における水素の生成量を図6(b)に示す。但し、1200℃では、白金の水分解反応が進行するため、図6(b)に示す水素の生成量は、水蒸気の供給時の酸素発生量から化学量論的に計算される白金の水分解反応による水素の生成量を除いた値を示す。
【0064】
図6(a)および(b)に示す結果から、実施例1で得られた反応性セラミックスCe0.6Zr0.4を用いた場合と異なり、比較例1で得られた反応性セラミックスは、水素生成反応が500℃では生起せず、1000℃以上で生起することが分かる。また、水素の生成量が最大値を示す温度(最適水素生成反応温度)は1200℃付近である。さらに、実施例1で得られた反応性セラミックスCe0.6Zr0.4と比較すると、1回目の酸素放出反応以外は、酸素放出反応および水素生成反応の両反応が、反応速度が遅く、酸素の生成量の少ない。
【0065】
これらの結果から、比較例1の錯体重合法で得られた正方晶の結晶系のみで形成される反応性セラミックスCe0.6Zr0.4と、実施例1のシュウ酸共沈法で得られた主に立方晶の結晶系で構成される反応性セラミックス試料Ce0.6Zr0.4とでは、同一の組成でも、結晶系が異なると、反応性が大きく異なることが分かった。
【0066】
(実施例3)
実験装置31を用いて、実施例2と同様にして、実施例1で得られた反応性セラミックスCeO、Ce0.8Zr0.2およびCe0.6Zr0.4のそれぞれについて、異なる酸素放出反応温度における2段階水分解反応を行った。酸素放出反応は、1500℃、1400℃、1300℃、1200℃で2回ずつ(1500℃でのみ3回ずつ)5分間行った。各酸素放出反応終了後、水素生成反応を、500℃で5分間行った。このときの水素の生成量の酸素放出反応温度依存性を図6に示す。
【0067】
図7に示すとおり、ほぼ同一の結晶構造を有する反応性セラミックスCeOおよびCe0.8Zr0.2を比較すると、いずれの酸素放出反応温度においても、酸素の放出量および水素の生成量は、反応性セラミックスCe0.6Zr0.4の方が大きいことが分かる。
【0068】
(実施例3)
実験装置31を用いて、実施例1で得られた、主に立方晶の結晶系で構成される反応性セラミックスCe0.6Zr0.4を用いて酸素放出反応(1500℃、5分間)、水素生成反応(500℃、5分間)を交互に5回繰り返す2段階水分解反応を行った。そして、このときの酸素放出量、水素の生成量を、それぞれ図8(a)および(b)に示した。
【0069】
図8(a)および(b)に示すとおり、一回目の酸素放出量が二回目以降の酸素放出量より大きく、また、それ以外の酸素放出量および水素の生成量はサイクルを繰り返し行ってもほぼ一定であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】水素製造装置の具体例を示す概略模式図である。
【図2】実施例1で得られた反応性セラミックスのX線回折パターンを示す図である。
【図3】酸素放出反応および水素生成反応を行うための実験装置を示す概略図である。
【図4】実施例1で得られた反応性セラミックスの酸素放出反応終了後のX線回折パターンを示す図である。
【図5】(a)は、実施例1で調製した反応性セラミックスの酸素放出量、(b)は、水素の生成量を示す図である。
【図6】(a)は、比較例1で調製した反応性セラミックスの酸素放出量、(b)は、水素の生成量を示す図である。
【図7】実施例1で得られた反応性セラミックスのそれぞれについて、2段階水分解反応における水素の生成量の酸素放出反応温度依存性を示す図である。
【図8】実施例1で得られた反応性セラミックスCe0.6Zr0.4を用いて酸素放出反応と水素生成反応を交互に5回繰り返す2段階水分解反応における酸素放出量および水素の生成量を示す図である。
【図9】反応性セラミックスを用いた二段階水分解反応による水素の製造を説明する概念図である。
【符号の説明】
【0071】
1 水素製造装置
2 回転ロータ
3 反応セル
3a,3b 断熱材
3c ケース
4 反応性セラミックス
5 酸素放出セル
5a 太陽光導入用石英窓
5b 窓
5c 酸素出口
5d ガス導入口
6 水素生成セル
6a 石英窓
6b 窓
6c 水素出口
7 外側円筒体
6d 水蒸気入口
7a,7b 石英窓支持体
8a,8b 石英窓支持体
31 実験装置
32 反応管
33 反応部
33a 白金網
34 赤外イメージ炉
35a,35b 管路
36 水蒸気発生装置
61 水貯留部
62 マイクロポンプ
63 水蒸気発生部
64 電気炉
65a,65b ガス導入口
37 分析部
71 一次冷却部
72 二次冷却部
73 直接ガス質量分析計
38 熱電対
39a,39b 管路切り替え弁
40 ガス導入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリウムおよびジルコニウムを含む固溶体からなり、立方晶と正方晶の結晶系が共存することを特徴とする反応性セラミックス。
【請求項2】
前記セリウム/ジルコニウムのモル比が、90/10〜20/80であることを特徴とする請求項1に記載の反応性セラミックス。
【請求項3】
前記セリウム/ジルコニウムのモル比が、80/20〜50/50であることを特徴とする請求項1に記載の反応性セラミックス。
【請求項4】
セリウム硝酸塩と、ジルコニウム硝酸塩とを含む硝酸塩水溶液を、シュウ酸水溶液と混合して沈殿物を生成する工程と、
前記沈殿物を含む懸濁液のpHを0〜7に調整する工程と、
前記沈殿物を焼成する工程と、
を含むことを特徴とする反応性セラミックスの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の反応性セラミックスを用いて水素を製造する方法であって、
前記反応性セラミックスに集光太陽光エネルギを照射して大気雰囲気中で1400〜1800℃に加熱して、前記反応性セラミックスを還元して酸素を放出する酸素放出反応と、
前記還元された反応性セラミックスを300〜1200℃で水と反応させて前記反応性セラミックスを酸化して水素を生成する水素生成反応と、
を行う2段階水分解反応を繰り返して行うことを特徴とする水素の製造方法。
【請求項6】
前記集光太陽光エネルギのエネルギフラックスが1000〜3000kW/mであることを特徴とする請求項5に記載の水素の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の反応性セラミックスを配設した2段階水分解反応部と、
前記2段階水分解反応部に太陽光エネルギを供給する太陽光供給部と、
前記2段階水分解反応部に水を供給する水供給部と、
を備え、
前記2段階水分解反応部において、前記太陽光供給部から太陽光エネルギを供給して前記反応性セラミックスを大気雰囲気中で1400〜1800℃に加熱して、前記反応性セラミックスを還元して酸素を生成し、さらに、前記還元された反応性セラミックスを300〜1200℃で水と反応させて前記還元された反応性セラミックスを酸化して水素を生成する2段階水分解反応を繰り返して、水素を製造することを特徴とする水素製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−263165(P2009−263165A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114899(P2008−114899)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年10月25日に日本太陽エネルギー学会が発行した太陽/風力エネルギー講演論文集2007にて発表
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】