説明

反応性ホスホナート

示される構造式に対応する新規反応性ホスホナート化合物が開示される。この反応性部分は、好ましくはCl、I、Br、HSO4、NO3、ClとIとの混合物、CH3SO3およびp−トルエンスルホン酸からなる群から選択されるが、窒素と反応性部分との炭化水素連結基は、最も好ましくは3〜12個の炭素原子を有する直鎖状炭化水素鎖である。本発明の新規ホスホナートは、洗浄、水処理、石油回収、医薬品中間体および医薬品製品のような多様な確立された適用において使用することができる。この新規化合物は、有益な性能要求を満たすことのできる最適化された構造配置の「テイラー」合成に特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある種の新規ホスホナート化合物に関する。特に、式Y−X−N(W)(ZPO32)(ここで、この個々の構造部分は、以下に述べるとおりの特に定義された意味を有する)を有する新規反応性ホスホナート化合物に関する。この「反応性」部分であるYは、好ましくはCl、I、Br、HSO4、NO3、CH3SO3およびp−トルエンスルホン酸ならびにこれらの混合物によって表わされるが、窒素とその反応性部分との間の炭化水素連結Xは、好ましくは3〜30の炭素原子を有する炭化水素鎖または[A−O]x−Aであり、ここでAはC2−C6の炭化水素鎖であり、xは1〜100の整数である。本発明の新規ホスホナートは、例えば分散、水処理、スケール防止、腐骨分離(sequestration)、腐食防止、医薬品および医薬品中間体、繊維産業、洗剤、二次石油採収剤、製紙工業、製糖業およびビール産業、肥料(fertiliser)および微量栄養素ならびに金属処理のような多くの用途に使用するための新規なホスホナート化合物を「テイラー」合成するために特に有益である。
【背景技術】
【0002】
ホスホナート化合物は、広汎によく知られており、多くの用途で使用されている。従って先行技術は多くかつ多様である。特許文献1には、アミノホスホナート含有ポリマーならびに濃縮された水性粒子スラリーの分散剤としておよび腐食防止剤およびスケール防止剤としてのそれらの使用が記載されている。このホスホナートは、エチレン不飽和コモノマーを含み、ポリマー反応物と、ホスホナートハロヒドリンまたはホスホナートエポキシドとを反応させることによって製造することができる。
【0003】
特許文献2には、鉱物粒子または水硬化性バインダーペーストの水性懸濁液を流動化するための、少なくとも1つのホスホン酸アミノアルキレン基および少なくとも1つのポリアルコキシル化鎖を含む化合物の使用が記載されている。特許文献3は、同等の技術を公表している。
【0004】
特許文献4には、一般的には1未満のpHでのマンニッヒ反応に従い、α,ω−アルキレンジアミンを水性媒体中でホルムアルデヒドおよび亜リン酸と反応させることによってN,N’−二置換メチレンホスホン酸を製造する方法が記載されている。非特許文献1は、シリカ表面上に共有結合したアミノホスホン酸を含有する変性シリカを公表している。
【0005】
特許文献5には、アミノホスホン酸基(すなわち陽イオン性窒素に結合する1つまたは2つのいずれかの陰イオン性メチレンホスホン酸基)を含有するデンプンエーテル誘導体を記載している。このデンプン誘導体は、アミノホスホン酸試薬と一緒に、選択された基を導入することによって増加され得る陽イオン特性または陰イオン特性を示すと言われている。このデンプン誘導体は、製紙工程において顔料の歩留り改良剤として有利に使用することができる。特許文献6は、製紙工程における使用に際して望ましい顔料保持特性を示す、新規なN−(アルキル)−N−(2−ハロエチル)−アミノメチレンホスホン酸に関する。
【0006】
特許文献7には、α−アミノメチレンホスホナートベタインおよびそれと共に製造されるポリマーが記載されている。J.Mortierらは、オルガノジクロロボラン由来のN−アルキル/アリール−α/β−アミノアルキルホスホン酸およびポリボロホスホナート経由のα/β−アジドアルキルホスホナートの合成を記載している。
先行技術は、これまで広い範囲で知られている適用内および新規な適用内の使用のために、わずかに適合され最適化されることが多い、限られた数のホスホナート化合物を提供
する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第0401833号
【特許文献2】米国特許第5,879,445号
【特許文献3】WO94/08913
【特許文献4】米国特許第4,330,487
【特許文献5】米国特許第4,260,738号
【特許文献6】米国特許第4,297,299号
【特許文献7】米国特許第4,707,306号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Zaitsev V.N.ら、Russian Chemical Bulletin、(1999)、48(12)、2315−2320
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主な目的は、多種多様な適用に対して非常に適切であり最大限に活用される、新規のホスホナート化合物を提供することである。本発明の別の目的は、高い選択性をもって、ホスホナート化合物を「テイラー」(“tailor”)合成するために適切な一連の新規反応性ホスホナートを作製することを目指しており、この化合物は、確立された適用および現行の用法に付け加えられた適用において有益に使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述および他の目的は以下に詳細に定義するとおりの、特に定義された種の反応性ホスホナート化合物によってここに達成することができた。
用語「パーセント」または「%」は本出願をとおして使用される場合、異なって定義されない限り「質量パーセント」または「質量%」を意味する。また、用語「ホスホン酸」と「ホスホナート」とは、もちろん媒体で優勢なアルカリ性/酸性条件に依存して交換可能に使用される。用語「反応性」ホスホナートは、それを用いると特許請求されるホスホナート化合物が他のホスホナートを簡単に合成できることを強調することを意図しているだけである。
【0011】
本質的に、炭化水素連結の手段であるXによってアミノホスホン酸部分に結合される反応性部分Yを含むホスホン酸化合物をここに開示した。より詳細には本発明は、以下の式:
Y−X−N(W)(ZPO32
を有する反応性ホスホナート化合物
[式中、Yは4.0と等しいかまたは4.0より小さいpKaを有する共役酸である置換基から選択され;
Xは、場合によりC1−C12の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族基によって置換されるC3−C50の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖(該鎖および/または該基は、場合によりOH、COOH、F、OR’、およびSR’(ここで、R’は、C1−C12の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖である)部分によって置換されてもよい);および[A−O]x−A(ここで、Aは、C2−C9の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖であり、xは、1〜200の整数である)から選択され;
ただし、XがOHによって置換される場合、このような部分は、Yから出発して第2の炭素原子以外の任意の炭素原子に結合することができ;
Zは、C1−C6のアルキレン鎖であり;
Mは、HおよびC1−C20の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖から選択され;
Wは、H、ZPO32および[V−N(K)]nKから選択され、ここで、Vは、場合によりC1−C12の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族基によって置換されるC2−C50の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖(該鎖および/または該基は、場合によりOH、COOH、F、OR’、またはSR’(ここで、R’は、C1−C12の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖である)部分によって置換される);および[A−O]x−A(Aは、C2−C9の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖であり、xは、1〜200の整数である)から選択され;
Kは、ZPO32またはHであり、nは、0〜200の整数であり;
ここで以下の化合物:
クロロプロピルイミノモノ(メチレンホスホン酸)
は除外される]に関する。
【0012】
好ましい実行において、pKaは、1.0に等しいかまたは1.0より小さく、Xは3〜30の炭素原子を有する炭化水素または[A−O]x−Aであり、ここでAはC2−C6の炭化水素鎖であり、xは1〜100の整数であり、WはZPO32である。
【0013】
このpKaの値は以下に示される公知の変数であり:
pKa=−log10Ka
ここで、Kaは、熱力学的酸解離定数を示す。全ての酸物質のpKa値は、文献によって知られているかまたは必要であれば簡単に測定することができる。これらの値は例えば、Handbook of Chemistry and Physicsに列挙されている。
【0014】
Yは、好ましくはCl、Br、I、HSO4、NO3、CH3SO3およびp−トルエンスルホナートならびにこれらの混合物から選択することができる。
X、R’、AおよびVの定義において、Cx−Cyの直鎖または分枝鎖の炭化水素鎖は、好ましくは示される鎖長をもつ直鎖または分枝鎖のアルカンジイルである。環状炭化水素鎖は、好ましくはC3−C10−シクロアルカンジイルである。芳香族炭化水素鎖は、好ましくはC6−C12−アレーンジイルである。前出の炭化水素鎖が置換される場合、好ましくは示された鎖長の直鎖または分枝鎖のアルキルを有するC3−C10−シクロアルキル、またはC6−C12−アリールである。全てのこれらの基は、それぞれの記号で挙げられる基でさらに置換されてもよい。
【0015】
アルカン部分のより好ましい、および特に好ましい鎖長は、特定の記号で示される。環状部分は、シクロヘキサン部分がより好ましく、シクロヘキサンジイルの場合、特にシクロヘキサン−1,4−ジイル部分が好ましい。芳香族部分は、フェニレンまたはフェニルが好ましく、場合によってはフェニレンについて、1,4−フェニレンが特に好ましい。
【0016】
ホスホナート化合物の個々のラジカルは好ましい方法で、以下の種から有益に選択することができる:
部分 好ましい 最も好ましい
X C3−C303−C12
[A−O]x−A [A−O]x−A
V C2−C302−C12
[A−O]x−A [A−O]x−A
XおよびVの両方は、独立して以下のとおりである:
A C2−C62−C4;および
x 1−100 1−100
Z C1−C31
M H,C1−C6 H,C1−C4
n 1−100 1−25
【0017】
Yがハロゲンを意味する場合には、Yから出発して、Xの第2の炭素原子に結合されるOH置換基を有するホスホナート化合物は、本発明の意味におけるホスホナートではない。好ましくは、Yがハロゲンを意味する場合の反応性ホスホナートは、Yから出発して、Xの第2、第3または第4の炭素原子の任意のひとつに結合したOH置換基を担持しない。
【0018】
本発明の好ましい実施形態において、XはC3−C30の炭化水素鎖または[A−O]x−Aであるが、ただしC3−炭化水素鎖の場合、(W)はZPO32である。
本発明のさらに好ましい実施形態において、XはC3−C30または[A−O]x−Aであり、(W)はZPO32である。
本発明のなおさらに好ましい実施形態において、Xは[A−O]x−Aである。
【0019】
本明細書中の新規ホスホナート化合物の製造は、通常化学合成の分野において型どおりに利用可能な個々によく知られた一連の手段を必要とし得る。ひとつのアプローチにおいて、このホスホナート化合物は、クロロアルキルアミン塩酸塩を従来の方法で、水性媒体中で、酸性媒体中の亜リン酸およびホルムアルデヒドと、一般的には50℃〜140℃、好ましくは90℃〜120℃の範囲の温度で反応させることによるホスホナート化によって製造することができる。この反応パートナーは、合成しようとするホスホナート生成物の部分比と一致するモル比で使用される。別のアプローチにおいて、反応性ホスホナートは、6またはそれより小さいpHを有する水性媒体中で対応するアルコール(例えばHO−X−N(ZPO322)とYの適切な前駆体(例えば、臭化水素酸、塩酸および/またはヨウ化水素酸)とを明らかに酸性の媒体中で100℃〜200℃、好ましくは110℃〜150℃の範囲の温度で反応させることによって合成することができる。反応性ホスホナート化合物はまた、例えばアクリロニトリルの変換を含む一連の反応によって以下に示されるように製造することができる:
CH2=CH−CN (H)+HCl/H2O → Cl−CH2−CH2−C≡N (I)
(I)+H2/触媒 → Cl−CH2−CH2−CH2−NH2 (C)
(C)+CH2O/H3PO3/HCl → Cl−(CH23−N(CH2PO322 (D)
【0020】
あるいは、本発明のホスホナート化合物は、以下のとおりに別の方法で合成することができる:
(H)+H+/H2O → HO−CH2−CH2−CN (E)
(E)+H2/触媒 → HO−(CH23−NH2 (F)
(F)+HCl/H2O → (C) → (D) または
(F)+CH2O/H3PO3/HCl → HO−(CH23N(CH2PO322
(G)
(G)+HCl/H2O → (D)
【0021】
このアクリロニトリル出発物質は、反応性ホスホナートを得ることのできる他の出発物質に置き換えることができる。例として、このようなホスホナートは、ジクロロエタンおよびアルカリシアン化物から出発して型どおりに合成することができる。
【0022】
なお別のアプローチにおいて、本発明は、10℃〜100℃の温度にてクロロ−ホスホナート化合物を無機の、好ましくはアルカリ金属、ヨウジド塩またはブロミド塩を含有す
る水溶液でイオン交換(このイオン交換反応媒体は、6と等しいかまたは6より小さい、好ましくは1〜4の範囲の酸性pHを有する)することによる、Yが、IまたはBrである請求項1のホスホナート化合物の製造方法を意図している。
【0023】
これらの製造処理におけるpH測定は、その反応温度における反応媒体中で測定される。
反応生成物の回収は、好ましくは当業者に自体公知の方法で実施される。例えば、遊離ホスホン酸は、例えば濃塩酸による反応混合物の酸性化によって、または適切な媒体(例えば、エタノール)の添加によって沈澱させることができ、濾過、洗浄および乾燥させる。さらなる精製は、例えば再結晶またはクロマトグラフィー法によって達成することができる。
【0024】
本発明のホスホナートは、好ましくは化学工業および製薬工業、繊維工業、石油産業、製紙工業、製糖業、ビール工業、農薬工業および農業における反応中間体として使用される。
好ましい用途は、分散剤、水処理剤、スケール防止剤、医薬品、洗剤、二次石油採収剤、肥料(fertiliser)および微量栄養素(植物用)の製造のための中間体としての使用である。
【実施例】
【0025】
本発明のホスホナートは、以下に示される実施例I〜VIの個々のサンプル製造方法を用いて説明される。
(実施例I)
260.04gの3−クロロプロピルアミン塩酸塩(2モル)を250mlの水に溶解し、328gの亜リン酸(4モル)および295.72gの37%HCl水溶液(3モル)と混合した。この混合物を攪拌しながら100℃〜110℃に加熱した。361.02gの36.6%ホルムアルデヒド溶液(4.4モル)を240分で加え、その間温度は104℃〜111℃の間で維持させた。110℃での加熱をさらに60分間続けた。次いで、反応混合物を1リットルの水と200mlのエタノールとの混合物中に50℃で注いだ。冷却下で形成した白色沈殿物をろ過によって分離した。乾燥後、414g(73.5%)の白色粉末が得られた。この白色粉末の31P NMR分析は、93.5%の3−クロロプロピルイミノビス(メチレンホスホン酸)(CPIBMPA);2.7%の対応するアゼチジニウム塩;3.7%のCPIBMPAのヒドロキシ同族体、および0.1%の亜リン酸の存在を示した。
【0026】
(実施例II)
14.76g(0.025モル)の44.53%3−ヒドロキシプロピルイミノビス(メチレンホスホン酸)水溶液を高圧ガラスチューブ中に入れ、9.86g(0.10モル)の37%HCl水溶液と混合した。このチューブの蓋をし、混合物を攪拌しながら120℃〜125℃で7時間加熱した。この粗反応生成物の31P NMR分析は、出発ヒドロキシ生成物がほとんどを占めるバランスを伴って、67%の3−クロロプロピルイミノビス(メチレンホスホン酸)の存在を示した。
【0027】
(実施例III)
14.76g(0.025モル)の44.53%3−ヒドロキシプロピルイミノビス(メチレンホスホン酸)水溶液を高圧ガラスチューブ中に入れ、17.21g(0.10モル)の47%HBr水溶液と混合した。このチューブの蓋をし、混合物を攪拌しながら120℃〜125℃で7時間加熱した。この粗反応生成物の31P NMR分析は、出発ヒドロキシ生成物がほとんどを占めるバランスを伴って、62%の3−ブロモプロピルイミノビス(メチレンホスホン酸)の存在を示した。
【0028】
(実施例IV)
14.76g(0.025モル)の44.53%3−ヒドロキシプロピルイミノビス(メチレンホスホン酸)水溶液を高圧ガラスチューブ中に入れ、22.44g(0.10モル)の57%HI水溶液と混合した。このチューブの蓋をし、混合物を攪拌しながら120℃〜125℃で7時間加熱した。室温で黄色沈殿物が形成され、水相から濾過によって分離した。洗浄および乾燥させた沈殿の31P NMR分析は、3−ヨードプロピルイミノビス(メチレンホスホン酸)(IPBMPA)であることを示した。収率は70%であった。
【0029】
(実施例V)
7.32g(0.025モル)の68.8%2−(2−イミノビス[メチレンホスホン酸]エトキシ)エタノール水溶液を高圧ガラスチューブ中に入れ、9.86g(0.10モル)の37%HCl水溶液と混合した。このチューブの蓋をし、混合物を攪拌しながら120℃〜125℃で7時間加熱した。この粗反応生成物の31P NMR分析は、出発ヒドロキシ生成物がほとんどを占めるバランスを伴って、69%の2−(2−イミノビス[メチレンホスホン酸]エトキシ)クロロエタンの存在を示した。
【0030】
(実施例VI)
7.32g(0.025モル)の68.8%2−(2−イミノビス[メチレンホスホン酸]エトキシ)エタノールを高圧ガラスチューブ中に入れ、17.21g(0.10モル)の47%HBr水溶液と混合した。このチューブの蓋をし、混合物を攪拌しながら120℃〜125℃で7時間加熱した。この粗反応生成物の31P NMR分析は、出発ヒドロキシ生成物がほとんどを占めるバランスを伴って、68%の2−(2−イミノビス[メチレンホスホン酸]エトキシ)ブロモエタンの存在を示した。
【0031】
エーテルまたはチオエーテル結合に関係するヨウ化水素酸の反応性は、この分野で実証されており;通常、実施例V〜VIのクロロ/ブロモ種に対応するヨード種の製造は、その後、反応生成物と無機ヨウ化物とのハロゲン交換の使用を必要とする。
【0032】
これらの試験データは、特許請求される技術の有意な側面を説明し、明らかにしている。実施例Iは、対応するクロロアミンから出発して、73.5%の収率でのクロロプロピル誘導体の形成を示している。実施例II、IIIおよびIVは、それぞれ対応するアルコールから出発して、3−クロロプロピル誘導体、3−ブロモプロピル誘導体および3−ヨードプロピル誘導体の製造を記載している。これらの収率は、反応条件を最適化していないことを考えても、60%〜70%の範囲であり、これは、未反応部分(副生成物)が、さらにリサイクルできる出発アルコールで主に代表されることに強く留意されたい。実施例VおよびVIは、対応するヒドロキシアルキルエーテルアミンから出発するクロロ誘導体またはブロモ誘導体の形成に関する。生成物は、68%〜69%の収率で形成された。それにより未反応の出発物質が大部分の副生成物を構成した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:
Y−X−N(W)(ZPO32
を有する反応性ホスホナート化合物。
式中、Yは4.0と等しいかまたは4.0より小さいpKaを有する共役酸である置換基から選択され、
Xは、場合によりC1−C12の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族基によって置換されるC3−C50の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖(該鎖および/または該基は、場合によりOH、COOH、F、OR’、およびSR’(ここで、R’は、C1−C12の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖である)部分によって置換されてもよい);および[A−O]x−A(ここで、Aは、C2−C9の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖であり、xは、1〜200の整数である)から選択され;
ただし、XがOHによって置換される場合、このような部分は、Yから出発して第2の炭素原子以外の任意の炭素原子に結合することができ;
Zは、C1−C6のアルキレン鎖であり;
Mは、HおよびC1−C20の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖から選択され;
Wは、H、ZPO32および[V−N(K)]nKから選択され、ここで、Vは、場合によりC1−C12の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族基によって置換されるC2−C50の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖(該鎖および/または該基は、場合によりOH、COOH、F、OR’、またはSR’(ここで、R’は、C1−C12の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖である)部分によって置換される);および[A−O]x−A(ここで、Aは、C2−C9の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖であり、xは、1〜200の整数である)から選択され;
Kは、ZPO32またはHであり、nは、0〜200の整数であり;
ここで、以下の化合物:
クロロプロピルイミノモノ(メチレンホスホン酸)
は除外される。
【請求項2】
pKaが1.0と等しいかまたは1.0より小さい、請求項1に記載のホスホナート化合物。
【請求項3】
個々の部分が以下:
XはC3−C30または[A−O]x−A;
VはC2−C30または[A−O]x−A
(両方についてXおよびVは独立して、AはC2−C6およびxは1−100);
ZはC1−C3
MはHまたはC1−C6;ならびに
nは1−100、
のように選択される、請求項1または2に記載のホスホナート化合物。
【請求項4】
XはC3−C30または[A−O]x−Aであり、(W)はZPO32である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のホスホナート化合物。
【請求項5】
YがCl、I、Br、HSO4、NO3、CH3SO3およびp−トルエンスルホナートならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のホスホナート化合物。
【請求項6】
個々の部分が以下:
XはC3−C12または[A−O]x−A;
VはC2−C12または[A−O]x−A
(両方についてXおよびVは独立して、AはC2−C4およびxは1−100);
ZはC1
MはHまたはC1−C4;および
nは1−25、
のように選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のホスホナート化合物。
【請求項7】
Xは直鎖状炭化水素鎖であり、xは1〜50の整数である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のホスホナート化合物。
【請求項8】
Yがハロゲンを意味する場合には、前記任意のOH置換基が、Yから出発して第2、第3または第4のX基の炭素原子以外の任意の炭素原子に連結される、請求項1〜7のいずれか1項に記載のホスホナート化合物。
【請求項9】
式:ハロゲン−X−NH2のアミン(ここで、ハロゲンは、Cl、BrまたはIを意味する)と請求項1〜8に定義されるとおりの意味を持つXとを、6と等しいかまたは6より小さいpHを有する水性媒体中で亜リン酸およびホルムアルデヒドと共に50℃〜140℃の範囲の温度にて反応させることによる、請求項1〜8のいずれか1項に記載のホスホナート化合物の製造方法。
【請求項10】
式:HO−X−N(ZPO322の化合物(ここで、X、ZおよびMは請求項1〜8に定義されるとおりの意味を有する)を、6と等しいかまたは6より小さい酸性pHを有する水性媒体中で、塩酸、臭化水素酸およびヨウ化水素酸から選択されるハロゲン化水素酸(ただし、ヨウ化水素酸は、Xがエーテルまたはチオ−エーテル結合を含む場合には使用されない)と反応させることによる、請求項1〜8のいずれか1項に記載のホスホナート化合物の製造方法。
【請求項11】
Yはヨウジドまたはブロミドであり、クロロ化合物を無機のヨウ化物塩または臭化物塩を含有する水溶液で、10℃〜100℃の温度でイオン交換する(ここで、イオン交換媒体は6またはそれより小さいpHを有する)ことによる、請求項10に記載のホスホナート化合物の製造方法。
【請求項12】
分散剤、水処理剤、スケール防止剤、医薬品、洗剤、二次石油採収剤、肥料および微量栄養素の製造のための中間体としての、請求項1〜8のいずれか1項に記載のホスホナート化合物の使用。

【公表番号】特表2010−512371(P2010−512371A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540749(P2009−540749)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063685
【国際公開番号】WO2008/071691
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(507239570)サームフォス・トレイディング・ゲー・エム・ベー・ハー (9)
【Fターム(参考)】