説明

反芻動物用のメタン生成抑制剤および飼料組成物

【課題】反芻動物のルーメン内メタン発生を抑制して飼料効率を向上するメタン生成抑制剤を提供すること。
【解決手段】有効成分として乳酸菌由来のプロテアーゼ耐性バクテリオシンを含むことを特徴とする反芻動物用メタン生成抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反芻動物用のメタン生成抑制剤および飼料組成物に関し、さらに詳しくは有効成分として乳酸菌由来のプロテアーゼ耐性バクテリオシンを含むことを特徴とする反芻動物用メタン生成抑制剤、ならびに該メタン生成抑制剤を含有することを特徴とする反芻動物用飼料組成物およびこれを使用することを特徴とする反芻動物の発育改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反芻動物のルーメンからのメタン発生は、飼料のエネルギー利用効率の損失となるのみでなく、メタンは地球温暖化現象に寄与する温室効果ガスであり、反芻動物のルーメンにおけるメタン生成を減らすことは極めて重要である。
【0003】
ルーメン内では多種多様の微生物による発酵が行われており、種々の代謝産物が生成される。メタンもその1つでメタン生成細菌により生成すると考えられている。ルーメン内メタン生成細菌は水素資化菌で、水素を利用して二酸化炭素を還元し、メタンを生成する。従って、これより強力な還元反応が存在すれば、メタン生成は阻害される。(特許文献1等)
【0004】
ルーメン内のメタン発生を抑制する方法としては、反芻動物にモネンシンやアイベリンといったイオノフォアを給与する方法が知られている。一方、ルーメンでの還元能の調節に着目した方法として、システインを給与する方法(特許文献3)、フマル酸を給与する方法(特許文献2および3)などが知られている。また、硝酸塩を添加することも効果があると報告されているが、ルーメン内に毒性のある亜硝酸が蓄積するため、反芻動物の亜硝酸中毒を引き起こすことも知られている。
【0005】
微生物の産出する抗菌物質バクテリオシンについても検討が実施されている。乳酸菌の産出するナイシンを単独で用いる報告もあるが(特許文献4)、ナイシンはルーメン中のプロテアーゼで容易に分解されるため持続効果がなく、またナイシン耐性菌も出現すると報告されている(非特許文献1)。また、ソルビン酸とバクテリオシンの調製物を併用することで飼料効率を改善する方法もあるが(特許文献5)、反芻動物の飼料として添加した場合のメタン発生抑制については明らかにされておらず、ナイシン同様、従来のプロテアーゼ感受性バクテリオシンでは持続効果が期待できない。
【特許文献1】国際公開第WO96/39860号パンフレット
【特許文献2】特開2003-88301号公報
【特許文献3】特開平7-322828号公報
【特許文献4】国際公開第WO99/41978号パンフレット
【特許文献5】特開2002-262780号公報
【非特許文献1】James B. Russell et al, Current Microbiology, Vol.35, p.90-96, (1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、反芻動物のルーメン内メタン発生を抑制して飼料効率を向上するメタン生成抑制剤、これを配合した飼料組成物及びこれを反芻動物に供与してその発育を改善する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、反芻動物のルーメン(液中)に乳酸菌由来のプロテアーゼ耐性バクテリオシンを有効成分とするメタン生成抑制剤を投与することによって、ルーメン内メタン生成を抑制できることを見出し、このような知見に基づいて本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
(1)有効成分として乳酸菌由来のプロテアーゼ耐性バクテリオシンを含むことを特徴とする反芻動物用メタン生成抑制剤。
(2)該有効成分が、乳酸菌培養液及び/又は乳酸菌培養上清液であることを特徴とする上記(1)に記載のメタン生成抑制剤。
(3)該乳酸菌がラクトバシラス属、ワイセラ属、ペディオコッカス属及びロイコノストック属からなる群から選ばれる一種又は二種以上の乳酸菌であることを特徴とする前記(1)〜(2)に記載のメタン生成抑制剤。
(4)該ラクトバシラス属乳酸菌がラクトバシラス・プランタラム、ラクトバシラス・リバリウスまたは/およびラクトバシラス・ペントサスであることを特徴とする前記(3)に記載のメタン生成抑制剤。
(5)該ワイセラ属に属する乳酸菌がワイセラ・エスピー FERM P-19577、ワイセラ・シバリア、ワイセラ・コンフューサ、ワイセラ・ヘレニカ、ワイセラ・カンドレリ、ワイセラ・マイナー、ワイセラ・パラメセンテロイデスまたは/およびワイセラ・タイランデンシスであることを特徴とする前記(3)に記載のメタン生成抑制剤。
(6)該ペディオコッカス属乳酸菌がペディオコッカス・ペントサセウスであることを特徴とする前記(3)に記載のメタン生成抑制剤。
(7)該ロイコノストック属に属する乳酸菌がロイコノストック・シトレウム、ロイコノストック・シュードメセンテロイデス、ロイコノストック・アルジェンティナム、ロイコノストック・カルノサムまたは/およびロイコノストック・メセンテロイデスであることを特徴とする前記(3)に記載のメタン生成抑制剤。
(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載のメタン生成抑制剤を含有することを特徴とする反芻動物用飼料組成物。
(9)上記(8)に記載の飼料組成物を反芻動物に投与することを特徴とする反芻動物の発育を改善する方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のメタン生成抑制剤の投与により、反芻動物のルーメンにおけるメタン生成は有意に抑制され、飼料のエネルギー効率が向上し、延いては反芻動物の発育が改善される。また、温室効果ガスであるメタン生成を減らすことによって地球温暖化現象などの環境問題へも貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明のメタン生成抑制剤は、有効成分として乳酸菌由来のプロテアーゼ耐性バクテリオシンを含むことを特徴とする反芻動物用のメタン生成抑制剤である。また、本発明における反芻動物とは、偶蹄目反芻亜目に属する哺乳類のことであり、胃が三または四室に分かれ、食物を反芻するもののことを指す。例えば、ウシ、ヒツジなどが挙げられる。
【0012】
一般にバクテリオシンとは、タンパク質性の抗菌性物質であるが(Klaenhammer, T.R., Biochemie 60(3): 337-349 (1988))、本発明のプロテアーゼ耐性バクテリオシンとは、従来のナイシン等のバクテリオシンと異なりタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)により分解されないバクテリオシンを意味し、ルーメン中でルーメンに存在するプロテアーゼやルーメン微生物由来のプロテアーゼによって分解を受けないバクテリオシンを意味する。ルーメン微生物由来のプロテアーゼとは、例えば、Butyrivibrio fibrisolvens 由来のプロテアーゼや Ruminobacter amylophilus、Butyrivibrio fibrisolvens または、 Prevotella ruminicola 由来のプロテアーゼを意味する。佐々木康之監修「反芻動物の栄養生理学」(農文協)または、Wallace,R.J,Onodera,R.and Cotta,M.A.(1997)pp283-328 Academic and Professional 参照。
【0013】
本発明における乳酸菌由来のプロテアーゼ耐性バクテリオシンは、ルーメンに存在するプロテアーゼやルーメン微生物由来のプロテアーゼ以外にも、醸造発酵の際に用いられるアスペルギウス属由来であるプロテアーゼや食品加工分野に用いられる食肉由来プロテアーゼにも耐性を有し、分解されないものもある。これらのプロテアーゼとしては、例えば、醸造発酵の際に用いられるアスペルギウス属由来のプロテアーゼである天野エンザイム(株)製「ウマミザイムG」や食品加工分野に用いられる食肉由来のプロテアーゼであるカセプシン(cathepsin)を挙げることができる。これらは本発明のバクテリオシンが耐性を有するプロテアーゼを代表するものであるが、本発明のバクテリオシンが耐性を有するプロテアーゼはこれらに限らない。
【0014】
本発明のプロテアーゼ耐性バクテリオシンは、その生産菌が乳酸菌であり、安全性が高い。このプロテアーゼ耐性バクテリオシンは、ルーメン微生物に対して抗菌作用を有する。その為、このプロテアーゼ耐性バクテリオシン又はそのバクテリオシンを含む培養液またはその上清液を(飼料用組成物として)ルーメンに投与しても、プロテアーゼによる分解を受けることがなく、そのまま残存するので、ルーメン中でメタンを生成する微生物のメタン生成作用を抑えることが出来る。更に、このバクテリオシンは、乳酸菌に由来しており、従来の化学合成されたもの等と比べ、大量に摂取しても安全性の上で心配がなく、反芻動物の健康面から好ましいものである。
【0015】
このプロテアーゼ耐性バクテリオシンは、以下に例示する乳酸菌を培養することにより効率よく製造することができる。
【0016】
本発明で使用されるプロテアーゼ耐性を有するバクテリオシンを生産する乳酸菌は、発酵食品等から分離された乳酸菌である。勿論、発酵食品等以外からでも、後述するスクリーニング法を用いてスクリーニングできる抗菌活性のある乳酸菌であれば何れでも構わない。
【0017】
本発明に用いられる乳酸菌は、ラクトバシラス属、ワイセラ属、ペディオコッカス属またはロイコノストック属に属する乳酸菌が好適であり、特に、ラクトバシラス属に属する乳酸菌のなかでは、ラクトバシラス・プランタラム、ラクトバシラス・サリバリウスおよびラクトバシラス・ペントサスを、ワイセラ属に属する乳酸菌のなかでは、ワイセラ・エスピー FERM P-19577、ワイセラ・シバリア、ワイセラ・コンフューサ、ワイセラ・ヘレニカ、ワイセラ・カンドレリ、ワイセラ・マイナー、ワイセラ・パラメセンテロイデスおよびワイセラ・タイランデンシスを、ペディオコッカス属に属する乳酸菌のなかでは、ペディオコッカス・ペントサセウスを、そしてロイコノストック属に属する乳酸菌のなかでは、ロイコノストック・シトレウム、ロイコノストック・シュードメセンテロイデス、ロイコノストック・アルジェンティナム、ロイコノストック・カルノサムおよびロイコノストック・メセンテロイデスを好適なものとして挙げることができる。
【0018】
これらの種に属する乳酸菌の中でも、ラクトバシラス・プランタラム JCM1149株、ラクトバシラス・サリバリウス JCM1231株、ラクトバシラス・ペントサス JCM1558、ペディオコッカス・ペントサセウス JCM5885株およびJCM5890株、ワィセラ・エスピー FERM P19577、ワイセラ・シバリア JCM12495、ワイセラ・コンフューサ JCM1093、ワイセラ・ヘレニカ JCM10103、ワイセラ・カンドレリ JCM5817、ワイセラ・マイナー JCM1168、ワイセラ・パラメセンテロイデス JCM9890、ワイセラ・タイランデンシス JCM10694、ロイコノストック・シトレウム JCM9696、ロイコノストック・シュードメセンテロイデス JCM11945、ロイコノストック・アルジェンティナム JCM11052、ロイコノストック・カルノサム JCM9695、ロイコノストック・メセンテロイデス JCM6124などが本発明の乳酸菌として特に好適である。ここに、JCMの寄託番号が記載されている菌株は、日本国埼玉県和光市広沢2−1(独立行政法人)理化学研究所「微生物系統保存施設」に保管されている。また、ワィセラ・エスピーFERM P19577は、平成15年10月31日付で 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(独立行政法人)産業技術総合研究所「特許生物寄託センター」に受託番号FERM P-19577として寄託されている。
【0019】
所与の乳酸菌が本発明のプロテアーゼに耐性であるバクテリオシン(以下、PRBと略称することがある)を産生するか否かは、例えば、以下の方法で確認出来る。すなわち、下記方法にて、検定菌の増殖阻止円を形成する乳酸菌培養物中にPRBが産生されていることが分る。
(1)乳酸菌の培養の常法(あるいは当該乳酸菌を分離したその培養方法)にて乳酸菌培養液を調製する。乳酸菌培養液はNaOHを用いてpH5.5-6.0に調整した後、12,000rpm×10min で遠心分離し、Disposable Syringe Filter Unit (ADVANTEC社製「Dismic-25cs」)で Cellulose Acetate 0.45μmにてフィルター濾過したものをサンプルとする。抗菌活性が低い場合は、室温で減圧にて4倍に濃縮を行う。さらに必要ならば、10倍まで濃縮を行う。
(2)検定菌としてListeria innocua ATCC33090T、Bacillus circulans JCM2504T、Bacillus coagulans JCM2257、Micrococcus luteus IFO12708、Bacillus subtilis JCM1465T、Bacillus subtilis IAM1381、Lactococcus lactis sub sp. Lactis ATCC19435、 Enterococcus faecium JCM5804T、Enterococcus faecium JCM5803TLactobacillus plantarum ATCC14917TLactobacillus sakei JCM1157Tのうち2〜3種、望ましくは全て菌株を用いて、後述するspot-on-lawn methodあるいは生菌数測定にて抗菌活性を測定し、最も強く抗菌活性を示す検定菌を選定する。
(3)酵素にはアスペルギルス由来プロテアーゼ(天野エンザイム(株)製「ウマミザイムG」等)を用いる。
(4)(1)記載のサンプルに(3)記載の酵素を10〜100 Unit/ml を添加し、30℃で1時間以上保持することにより反応させる。
(5)(2)の最も強く抗菌活性を示した検定菌を塗抹した、検定菌が増殖可能な培地、例えばMRS培地等に(4)の酵素処理したサンプルを0.01ml滴下し、検定菌の増殖最適温度(Listeria innocua、Bacillus coagulans、Enterococcus faecium、およびPediococcus pentosaceusは37℃、それ以外は30℃)で20〜24時間培養後、検定菌の増殖阻止円を確認する。ここに、JCMの寄託番号が記載されている菌株は、日本国埼玉県和光市広沢2−1(独立行政法人)理化学研究所「微生物系統保存施設」に保管されている。また、ATCCの寄託番号が記載されている菌株は、例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより、登録番号を利用して分譲を受けることができる。各菌株に対応する登録番号はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログに記載されている。またIAMの寄託番号が記載されている菌株は、東京大学分子細胞生物学研究所バイオリソーシス研究分野 IAM カルチャーコレクションに保管されており、登録番号を利用して分譲を受けることが出来る。各菌株に対応する登録番号は、IAMのカタログに記載されている。IAM Catalogue of strains Third Edition, 2004
【0020】
本発明のプロテアーゼ耐性バクテリオシンを含むことを特徴とするメタン生成抑制剤は、PRB産生乳酸菌の培養液をそのまま含むものでもよく、また培養液を乾燥させた菌体、また培養上清液でもよく、これから分離精製されたバクテリオシンでも構わないことはいうまでもない。あるいはこれらに、後記のように適宜の賦形剤などを使用してメタン生成抑制組成物の形態としたものでもよいことはもちろんである。要するに、乳酸菌由来のPRB活性を示すものであればよい。因みに、プロテアーゼ耐性バクテリオシン生産性乳酸菌によって産生したPRB(の活性)は産生菌の菌体内に存在し、また菌体外へ分泌される。
【0021】
なお、乳酸菌培養液から生成したプロテアーゼ耐性バクテリオシンを必要に応じて分離精製するには、この分野の常法に従い、PRB活性を有する画分を追求して硫安沈殿、カラムクロマトグラフィー、エタノール沈殿等によることができる。また、本発明で用いる乳酸菌は、使用する菌株やPRB生成に合わせた培地成分を用いて培養することができ、培養液は適宜濃縮した状態で用いた方がより効率的に精製処理を進めることができる。
【0022】
乳酸菌の培養は、例えば以下のようなこの分野の通常の方法で行うことができる。
【0023】
培地としては、炭素源として乳清、デンプン糖化液、食品用グルコース等が使用でき、窒素源として乳清タンパク濃縮物の加水分解産物、コーンペプチド、大豆ペプチド、業務用調味液原料、焼酎粕、食品用酵母エキス等が使用できる。その他、乳酸菌の生育、及び酵素生産に必要な各種の有機物や無機物またはこれを含有するもの、例えばリン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、マンガン塩等の塩類や、ビタミン類、酵母エキス等を適時追加することも出来る。培養温度や培養時間は通常の乳酸菌の培養方法、例えば静置培養で、30〜37℃における12〜36時間の培養とすることができる。
【0024】
本発明において、本発明のプロテアーゼ耐性バクテリオシン投与によりルーメン中メタン生成作用が減少した効果の確認は、人工ルーメン系(T. Hino et al., J. Gen. Appl. Microbiol., 39, 35-45 (1993))で確認出来るが、in vivo で実際に反芻動物に経口投与して確認してもよいことはいうまでもない。
【0025】
本発明に係る反芻動物用メタン生成抑制剤は様々な形態で用いることが可能であり、例えば粉末、顆粒、錠剤等の各種の形態が挙げられ、必要に応じて賦形剤、増量剤等を適宜添加することもできる。メタン生成抑制剤の有効成分としてPRB産生乳酸菌培養液などを使用する場合、同抑制剤における本発明の乳酸菌の割合は、使用目的などを考慮して決定すればよく、プロテアーゼ耐性バクテリオシンの純度が高い場合、比活性が高い場合等には少量で、培地をそのまま投与する場合、比活性が低い場合等には、高い割合で投与する。
【0026】
メタン生成抑制剤の投与時期は、本発明のメタン生成抑制効果の奏される限りは特に制限されるものではなく、飼料がルーメン内に滞留している間であれば何れの時期に投与しても良いが、メタン生成される前後にルーメンにメタン生成抑制剤が存在することが好ましいことから飼料投与直前に或いは同時にメタン生成抑制剤を投与することが好ましい。特に飼料に配合することで効率よく投与することができる。
【0027】
本発明のメタン生成抑制剤の投与量についても、本発明のメタン生成抑制効果の奏される限りは特に制限はないが、例えば、ルーメン中のルーメン液量に対して約10%ほど投与すればよい。具体的には、平均的なルーメンの液量を体重あたりに換算して投与すればよい。因みに、反芻動物体重の約20%がルーメン液量と考えられている(「新畜産ハンドブック」講談社 1995年)。予備試験により使用乳酸菌や投与動物によって適宜調整する。
【0028】
次に、本発明に係る反芻動物用飼料組成物は、上記のメタン生成抑制剤が添加されている飼料組成物であり、この飼料組成物におけるメタン生成抑制剤の配合割合は、培養液換算で通常0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。
【0029】
なお、反芻動物用飼料組成物については特に制限がなく、市販品をそのまま使用してもよく、あるいは必要に応じて市販品に対して適宜サイレージ、乾草などを加えてもよい。牛用の飼料組成物について例示すると、トウモロコシサイレージ40%、スーダングラス乾草またはアルファルファヘイキューブ14%、市販配合飼料46%からなるものがある。市販配合飼料の1例として、粗タンパク質16%以上、可消化性養分総量71%以上の飼料を挙げることができる。一方、羊用の飼料組成物について例示すると、チモシー乾草85%と市販配合飼料15%からなるものがある。
【0030】
本発明において、メタン生成抑制剤を配合した飼料組成物は、反芻動物に自由摂取させることができる。また、長期間にわたって摂取させることができる。こうすることによって、反芻動物におけるメタン生成が抑制され、延いては反芻動物の発育が改善される。
【実施例】
【0031】
以下に参考例と実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらのものによって限定されるものではない。
<参考例1>
【0032】
以下に本発明の重要な点であるプロテアーゼ耐性バクテリオシンを生産する乳酸菌のスクリーニング法について、発酵食品マトゥーン(Matsoon)からの分離を例にとって述べる。
【0033】
発酵食品の1つである発酵乳マトゥーンから分取した乳酸菌分離用の試料を乳酸菌の生育できる培地、例えばMRS培地(下記表1)やM17培地(下記表2)などの液体培地に0.5%添加し、30〜37℃で培養した(種培養)。培養日数は、菌株の性質や培養条件に応じて、1日、5日及び10日とした。培養終了後、0.5%の炭酸カルシウムを含む前述の寒天培地(Agar 1.2%)に塗抹培養し、生じた乳酸菌のコロニーを採取した。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
採取した乳酸菌は、前述の液体培地及び培養条件で同様に培養した(本培養)。次に、予めフィルター濾過したアスペルギルス・オリゼ由来のプロテアーゼである「ウマミザイムG」(天野エンザイム(株)製)を添加したMRS寒天培地プレートに、これらの乳酸菌を植菌し30℃で24時間培養した。次いで、このプレートに検定菌を混釈したLactobacilli AOAC培地(下記表3)を重層し、本プレートを30℃で24時間培養し、検定菌の生育阻止円を形成させた。
【0037】
【表3】

【0038】
尚、プロテアーゼを添加する方法としては、寒天培地に添加する本方法以外、次に挙げる方法を用いても構わない。すなわち、例えば、1)検定菌とともにプロテアーゼを混釈する方法;2)寒天培地にプロテアーゼを塗布する方法;3)乳酸菌コロニーを培養する際に、プロテアーゼを添加する方法(この際に、プロテアーゼは、培養開始時や培養途中さらには培養終了時に添加してもよい);および4)乳酸菌コロニーを培養した後、培養液中の菌体を除菌もしくは死滅させた後プロテアーゼを添加したサンプルの適量を、検定菌を混釈したプレートに滴下し、阻止円の形成を確認する方法;によることができる。繰り返し述べるが、上記1)から4)の方法に限定されるものではない。また、プロテアーゼもアスペルギルス・オリゼ由来のものに限定されるものではない。
【0039】
次に、抗菌スペクトル解析によるPRB活性の評価を行なった。後述する抗菌活性プレート上に、抗菌活性のみられた乳酸菌の培養液上清を順次希釈してスポットするspot-on-lawn methodを用いて抗菌スペクトルを調べた。
【0040】
まず、抗菌活性サンプルを調製した。前述の方法で取得した抗菌活性を有する菌株の培養液を10,000rpmで10分間遠心分離し、培養上清を得、さらに上清液をフィルター濾過し、無菌サンプルとした。本サンプルを2倍ずつ希釈し、段階的に211希釈液を作成した。また、活性が低い場合は必要に応じて、室温にて2倍ずつ減圧濃縮し、段階的に2-3希釈液を作成した。
【0041】
次に、抗菌活性プレートに混釈する検定菌の培養を行った。下記表4に記載した検定菌をTSBYE培地(下記表5)もしくはTSB培地(下記表6)またはMRS培地にて培養した。Bacillus属及びMicrococcus属は振盪培養を行ったが、それ以外は静置にて培養した。また、Bacillus coagulans、Listeria、PediococcusおよびEnterococcusは37℃で、それ以外は30℃で培養した。
【0042】
【表4】

【0043】
【表5】

【0044】
【表6】

【0045】
更に、抗菌活性プレートの作成を行なった。即ち、MRS寒天培地(agar 1.2%)10ml及びLactobacilli AOAC寒天培地(agar 1.2%)5mlを、それぞれ別途に121℃で15分加熱殺菌し、55℃にて保温した。滅菌シャーレに上記殺菌したMRS寒天培地を撒き、1時間クリーンベンチ内に置いておいた。次に、55℃で保温しておいたLactobacilli AOAC寒天培地に検定菌培養液50μlを添加して混釈し、MRSプレートに重層した。クリーンベンチ内でプレートの蓋を約15分開けて置いて表面を乾燥させた。
【0046】
上記で作成した抗菌活性含有サンプルを10μlずつ滴下し、蓋をして1時間ほど置いて乾燥させ、プレートを各検定菌の培養温度にて20時間培養し、生育阻止円の形成を調べた。なお、抗菌活性(AU/ml)は、以下のように定義した。すなわち、抗菌活性(AU/ml)=(阻止円を形成した最大の希釈率)×1000/10。
【0047】
このように抗菌スペクトルを解析したサンプルは、プロテアーゼ耐性を有しており、かつ幅広い抗菌スペクトルを示すものであった。
【0048】
上記の手法で選択した乳酸菌AJ110263株の菌学的性質を調べたところ、16SリボソームDNA(rDNA)塩基配列の相同性解析(Altschul, S. F., Madden, T. F., Schaffer, A. A., Zhang, J., Zhang Z., Miller, W., and Lipman, D. J. (1997) Gapped BLAST and PSI-BLAST: a new generation of protein database search programs. Nucleic Acids Res. 25:3389-3402)によりワイセラ・コンフューサ(Weissella confusa)ATCC 10881株と98.22%の相同性を示した(下記表7)。なお、相同性評価はATCCに寄託されている基準株(type culture)を用いた。
【0049】
【表7】

【0050】
AJ110263株の基本特性(下記表8)が乳酸菌の一般性状に一致し、糖質の発酵性(下記表9)は、ワイセラ・コンフューサの発酵性に類似すると考えられた。しかしながら、L−アラビノースの発酵性が異なること及び16SrDNAにおいて100%のホモロジーを示さなかったことから、公知菌とは明らかに異なる新規な菌株と認め、本菌をワイセラ・エスピー(Weissella sp.)AJ110263株と命名した。本菌は、(独立行政法人)産業技術総合研究所「特許生物寄託センター」に受託されており、その寄託番号は前述のFERM P-19577である。
【0051】
【表8】

【0052】
【表9】

【0053】
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
<実施例1>
【0054】
発酵乳マトゥーン(Matsoon)から分離した乳酸菌Weissella sp. AJ110263 (FERM P-19577)、ならびにタイプカルチャーから入取した乳酸菌Pediococcus pentosaceus JCM5885、Pediococcus pentosaceus JCM5890、Lactobacillus plantarum JCM1149およびLactobacillus salivarius JCM1231をMRS液体培地(前記表1)で前培養及び本培養を行った。培養温度は、Weissella sp.は30℃、それ以外の菌株は37℃とした。前記アスペルギルス由来プロテアーゼ「ウマミザイムG」を0U/ml(不添加)、200U/ml及び400U/mlそれぞれ添加したMRS寒天培地プレートに先の乳酸菌を植菌し24時間培養した。尚、培養は500mlの坂口フラスコにMRS培地100mlを張込み、前培養液100μlを植菌し、振盪数100回/分にて培養した。
【0055】
次いで、バクテリオシンを産生しないラクトバチラス・サケイ(Lactobacillus sakei)JCM1157 株を検定菌として混釈したLactobacilli AOAC培地を重層した。これらプレートを30℃で24時間培養した結果、検定菌の生育阻止円が形成された(下記表10)。この結果から、いずれの株もプロテアーゼ耐性バクテリオシンを産生していることが分かった。
【0056】
【表10】

<実施例2>
【0057】
Lactococcus lactis NCDO497 (NisinA生産菌)およびLactococcus lactis NCIMB702054(NisinZ生産菌)をそれぞれMRS液体培地で30℃にて培養を行った。実施例1と同様にラクトバチラス・サケイ(Lactobacillus sakei)JCM1157 株を検定菌として抗菌評価を実施した。また、Nisin生産菌株を用いる代わりにICN Biomedical社製「NisinA1000IU/ml液」10μlをMRS寒天培地プレート上にスポットし、上記抗菌評価を実施した(菌株不使用)。
【0058】
プロテアーゼ非存在下では検定菌の生育阻止円が形成されたが、プロテアーゼ存在下ではプロテアーゼ濃度が高くなるほどNisinによる抗菌活性が低下した(下記表11)。
【0059】
【表11】

<実施例3>
【0060】
検定菌であるWeissella sp. AJ110263(FERM P-19577)、Pediococcus pentosaceus JCM5885、Lactococcus lactis NCDO497(NisinA生産菌)及びLactobacillus sakei JCM1157株を、それぞれ、培養し、培養液を10,000rpmで10分遠心分離し、培養上清を得た。「ウマミザイムG」200U/mlを培養上清に添加し24時間プロテアーゼ処理した後に、上清液をフィルター(ADVANTEC社製「DISMIC25CS」)でCellulose Acetate 0.45μmにて濾過し、無菌サンプルとした。spot-on-lawn methodを用いて抗菌スペクトルを調べた結果、Nisin生産菌培養液やバクテリオシンを生産しない乳酸菌Lactobacillus sakei JCM1157に比べ、Weissella sp. AJ110263(FERM P-19577)およびPediococcus pentosaceus JCM5885はプロテアーゼ処理しても抗菌活性が観られた(下記表12)。検定菌をindicator strainsとして、本発明の乳酸菌をsample strainsとして表12に示す。これより、Weissella sp. AJ110263(FERM P-19577)およびPediococcus pentosaceus JCM5885はプロテアーゼ耐性バクテリオシンを生産していることが分かった。
【0061】
【表12】

<実施例4>
【0062】
下記表13に示したWeisella sp. AJ110263(FERM P-19577)、Pediococcus pentosaceus JCM5885、Lactobacillus plantarum JCM1149、Lactobacillus salivarius JCM1231、Leuconostoc citreum JCM9698、Leuconostoc pseudomesenteroides JCM9696, JCM11045、Lactococcus lactis NCIMB702054 (NisinZ 生産菌)等各種乳酸菌の培養液を実施例3と同様に酵素にて処理した後、Bacillus subtilis IAM1381を検定菌とし、spot-on-lawn method にて抗菌活性を測定した。酵素は実施例3におけると同様にアスペルギルス・オリゼ由来のプロテアーゼである「ウマミザイムG」を使用した。また、バチルス・ズブチルス由来のα-アミラーゼ(和光純薬社製) を乳酸菌培養液に100Unit/ml を添加し、30℃で1時間以上保持して反応させた後、同様にBacillus subtilis IAM1381を検定菌とし、spot-on-lawn method にて抗菌活性を測定し、α-アミラーゼによる抗菌活性への影響も調べた。
【0063】
【表13】

【0064】
表13に示したようにWeisella sp.AJ110263(FERM P-19577)、Weissella cibaria JCM12495、Weissella confuse JCM1093、Weissella hellenica JCM10103、Weissella kandleri JCM5817、Weissella minor JCM1168、Weissella paramesenteroides JCM9890、Weissella thailandensis JCM10694、Pediococcus pentosaceus JCM5885、Lactobacillus plantarum JCM1149、Lactobacillus salivarius JCM1231、Lactobacillus pentosus JCM1558、 Leuconostoc citreum JCM9698、Leuconostoc pseudomesenteroides JCM9696, JCM11045、Leuconostoc argentinum JCM11052、Leuconostoc carnosum JCM9695、Leuconostoc mesenteroides JCM6124の培養液はプロテアーゼ処理をしても抗菌活性が観られたことから各株は、プロテアーゼ耐性バクテリオシンを生産していることが確認された。また、これらの培養液はα−アミラーゼ処理により、抗菌活性が低下することも確認された。尚、表13の残存活性は、抗菌活性(AU/ml)=阻止円を形成した最大の希釈率×1000/10×(酵素処理サンプルの阻止円径/コントロールの阻止円径)として算出した。
<実施例5>
【0065】
<ルーメン液中の抗菌活性の測定>
MRS培地を用いて、Lactococcus lactis NCIMB8780(NisinA 生産菌)、Lactococcus lactis NCIMB702054(NisinZ 生産菌)、Weissella sp.AJ110263(PRB生産菌)およびLactococcus lactis ATCC19435(バクテリオシン非生産菌)を30℃でそれぞれ24時間静置培養した。
【0066】
(a) ルーメン液処理
乳酸菌培養液を12,000rpmで10分遠心分離後、フィルター(ADVANTEC社製「DISMIC25CS」)でCellulose Acetate 0.45μmにて濾過し、無菌上清液を作成した。各培養上清液4mlにルーメン液1mlを加え、37℃で24時間反応した。反応液は、NaOH及び塩酸にてpH5.5に調製し、減圧濃縮機を用いて30℃で4倍濃縮した。
【0067】
(b) 抗菌活性テスト
検定菌には、Bacillus subtilis IAM1381を用い、50μLを「GAM」寒天培地(日水製薬社製)プレートに塗りつけた。本プレート表面をよく乾燥した後、前項(a)記載の調製サンプルを10μLずつspotし、30℃で24時間培養後、阻止円の形成を確認した。下記表14の「+」印は阻止円径の大きさを表す。ルーメン液処理した場合は、ナイシンの抗菌活性は失活するが、PRBは抗菌活性を維持できることを確認した。詳述すると、表14中、「+」は抗菌活性あり、「−」は抗菌活性なしを意味する。これを生育阻止円径で表示すると、「++++」は10mm、「+++」は7mm、そして「++」は5mmを意味する。
【0068】
【表14】

<実施例6>
【0069】
<ルーメンでのメタン発生抑制効果試験>
(a) 乳酸菌の培養
下記表15に示す上清液1〜4を作成した。すなわち、Lactococcus lactis NCIMB702054(NisinZ 産生株)は、酵母エキス0.81%、塩化ナトリウム0.5%およびグルコース2.2%を含有する培地を用い、pH5.5(NaOH)にて30℃で20時間培養した。培養液は10,000rpmで10分遠心分離後、フィルター(ADVANTEC社製「DISMIC25CS」)でCellulose Acetate 0.45μmにて濾過した無菌上清液1を作成した。ナイシンの効果を確認するため、上清液1に「ウマミザイムG」(天野エンザイム社製)を40 Unit/mlになるように添加し、Nisin分解上清液2を調製した。
【0070】
Weissella sp. AJ110263 (PRB産生株)は、MRS培地にL−Cys 0.1%及びL−Met 0.1%を加えた培地を用いて、30℃にて24時間培養した。培養液は先と同様に遠心分離後、フィルター濾過した無菌上清液3を作成した。本培養液の効果を確認するため、同培地に、Lactococcus lactis NCIMB702054を培養し、無菌上清液を作成後、「ウマミザイムG」(天野エンザイム社製)を添加し、Nisin分解上清液4を調製した。培養上清液の成分を表15に示す。
【0071】
【表15】

【0072】
(b) ルーメンでのメタン発生抑制効果の確認
前項(a)記載の培養上清液を10%添加したin vitro ルーメン液を連続メタン発生解析用バイオリアクターシステムにて48時間培養した。
【0073】
<材料及び実験機器>
緩衝液および固形飼料の投入口、サーミスタープローブ、窒素ガス投入口、磁気的スターラー,近赤外メタンおよび二酸化炭素分析器を備えた、4つの1000ml発酵槽容器からなるインビトロ連続培養システム(高杉製作所社製)を用いておこなった。2頭の非授乳のホルスタインウシ(平均体重800kg)をドナーとして、帯広畜産大学の施設動物の世話と利用委員会で承認された外科手術によって、ルーメンに瘻管を取り付け、タイ・ストール・バーンにて飼育した。ウシは基礎飼料の干し草(DM: 87.33%, OM: 98.98%, CP: 14%, ADF: 38.84%, NDF: 73.26%, ADL: 4.10%, GE: 4.45 Mcal)を維持レベル(55g DM kg-0.75 BW/日)で午前8時と午後5時に同量を日に2回与えられ、水と塩化ナトリウムブロック(Fe: 1232, Cu: 150, Co: 25, Zn: 500, I: 50, Se: 15およびNa: 382mg/kg)を自由に取ることができる。そのウシから朝の餌やりの前にルーメン液を回収し、直ちにナイロン製の布で裏ごしして、酸素が取れるように口の空いた三角フラスコに入れた。裏ごししたルーメン液(400ml)の1つをオートクレーブした緩衝液(400ml)11)の1つと混合した。すべての培養は嫌気性で39℃にて24時間、10gの上述した粉末の飼料(1mm スクリーン)を基質として添加して、4通り行われた。1試験につき、2つの容器をランダムに割り当てた。嫌気状態にするために窒素を20ml/minの割合で投入した。上記培養発酵基礎ユニット(高杉製作所株式会社、東京)を用いて、発酵容器の温度を39℃に保ち、内容物を混合した。
【0074】
<メタン及び炭酸ガスの分析方法>
インビトロルーメン系に所定の材料を全て投入し、反応を開始した。反応開始時を0時間とし、ルーメンサンプルを0, 0.5, 1, 1.5, 2, 4, 6, 8, 10, 12 および24時間にて回収し直ちにpHおよび細胞成長(OD660)を調べた。ルーメン液のpHはpHメーター(HM-21P, 東亜電波工業、東京)を用いて測定した。分光光度計(Part No. 100-004, Serial No. 5667-15, 日立、東京)でOD660を測定する前に、サンプルを蒸留水で1:200に希釈した。連続的なメタンおよび二酸化炭素生成率は、赤外線ガス分析器(高杉製作所)を用いて自動的に測定した。次いで、それらのデータを分析器からインターフェースを通して1分間隔でコンピューター(Windows(登録商標)XP Professional 1-2 CPU, IMB Corporation)に取り込み、蓄積した。
【0075】
<統計分析方法>
それぞれの試験におけるインビトロの連続培養を2日間、1日に2回繰りかえして行った(n=4)。累積メタンおよび二酸化炭素生成はベルタランフィモデル(Bertalanffy model)の非線形回帰分析[メタン(ml)または二酸化炭素(ml)=a+b(1-e-ct)3、式中、a:最初のメタンまたは二酸化炭素生成、b:2回目のメタンまたは二酸化炭素生成、c:一定のメタンおよび二酸化炭素生成率、t:時間(分)]によって、メタンおよび二酸化炭素生成の24時間の時間経過から推定した。試験の結果の平均値の差の検定を、Statistical Analysis Systems Institute (SAS, 1994年) のGeneral Linear Models Proceduresを用いて、一元配置分散分析によって分析した。また各試験区の平均値間の統計学的有意差にはダンカンの多重検定(Duncan's Multiple−Range Test)と比較した。P<0.05を統計的有意水準とした。
【0076】
それぞれの試験におけるインビトロの連続培養を2日間、日に2回繰りかえして行った(n=4)。累積メタンおよび二酸化炭素生成はベルタランフィモデル(Bertalanffy model)の非線形回帰分析[メタン(ml)または二酸化炭素(ml)=a+b(1-e-ct)3、式中、a:最初のメタンまたは二酸化炭素生成、b:2回目のメタンまたは二酸化炭素生成、c:一定のメタンおよび二酸化炭素生成率、t:時間(分)]によって、メタンおよび二酸化炭素生成の24時間の時間経過から推定した。試験の結果の平均値を、Statistical Analysis Systems Institute (SAS, 1994年)のGeneral Linear Models Proceduresを用いて、一元配置分散分析によって分析した。試験平均を統計学的にダンカンの多重検定(Duncan's Multiple−Range Test)と比較した。P<0.05を有する差異を有意性ありとみなした。

1分あたりのメタン(CH)、二酸化炭素(CO)発生量を下記表16に示す。Weissella由来のPRBは、Nisinに比べ、CH及びCOの発生を顕著に抑制することが明らかとなった。
【0077】
【表16】

<実施例7>
【0078】
<ルーメン中のNisin安定性テスト>
Nisin非生産菌株Lactococcus lactis AJ13981をMRS培地を用いて、30℃にて24時間培養した。培養液は10,000rpmで10分遠心分離後、フィルター(ADVANTEC社製「DISMIC25CS」)でCellulose Acetate 0.45μmにて濾過した無菌上清液を作成した。in vitro ルーメン液にこの培養上清液を10%および試薬品のNisinAを10μMになるように添加して連続メタン発生解析用バイオリアクターシステムにて48時間培養した。(ナイシンの分子量は、3400ダルトンで、1μgあたり約40IUに該当する。従って、ナイシン10μMは、1360IU/mlに相当する)。下記表17に示すように、適時にサンプリングし、Tween-20を最終濃度0.1%となるように添加してよく懸濁後、上述のように上清液作成し、HPLC及びバイオアッセイ法にてナイシン濃度を測定した。バイオアッセイ法では検定菌にLactobacillus sakei JCM1157を使用した実施例5の方法を用いた。表17に示すように、ルーメンサンプル中のNisinは、添加後1時間程で抗菌活性がなくなり、少なくとも添加後6時間以内にほぼ完全に消滅していることが明らかとなった。
【0079】
【表17】

【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のメタン生成抑制剤を含有する飼料組成物を反芻動物に投与することにより、反芻動物のルーメン内のメタン生成が抑制され飼料効率が向上し、反芻動物の発育が改善される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として乳酸菌由来のプロテアーゼ耐性バクテリオシンを含むことを特徴とする反芻動物用メタン生成抑制剤。
【請求項2】
該有効成分が、乳酸菌培養液及び/又は乳酸菌培養上清液であることを特徴とする請求項1記載のメタン生成抑制剤。
【請求項3】
該乳酸菌がラクトバシラス属、ワイセラ属、ペディオコッカス属及びロイコノストック属からなる群から選ばれる一種又は二種以上の乳酸菌であることを特徴とする請求項1または2に記載のメタン生成抑制剤。
【請求項4】
該ラクトバシラス属乳酸菌がラクトバシラス・プランタラム、ラクトバシラス・サリバリウスまたは/およびラクトバシラス・ペントサスであることを特徴とする請求項3に記載のメタン生成抑制剤。
【請求項5】
該ワイセラ属に属する乳酸菌がワイセラ・エスピー FERM P−19577、ワイセラ・シバリア、ワイセラ・コンフューサ、ワイセラ・ヘレニカ、ワイセラ・カンドレリ、ワイセラ・マイナー、ワイセラ・パラメセンテロイデスまたは/およびワイセラ・タイランデンシスであることを特徴とする請求項3に記載のメタン生成抑制剤。
【請求項6】
該ペディオコッカス属乳酸菌がペディオコッカス・ペントサセウスであることを特徴とする請求項3に記載のメタン生成抑制剤。
【請求項7】
該ロイコノストック属に属する乳酸菌がロイコノストック・シトレウム、ロイコノストック・シュードメセンテロイデス、ロイコノストック・アルジェンティナム、ロイコノストック・カルノサムまたは/およびロイコノストック・メセンテロイデスであることを特徴とする請求項3に記載のメタン生成抑制剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のメタン生成抑制剤を含有することを特徴とする反芻動物用飼料組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の飼料組成物を反芻動物に投与することを特徴とする反芻動物の発育を改善する方法。


【公開番号】特開2006−166853(P2006−166853A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−366914(P2004−366914)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【出願人】(502073614)帯広畜産大学長 (1)
【Fターム(参考)】