説明

反響装置およびオーディオ信号を反響させる方法

オーディオ信号(5)を反響させるための反響装置(10)は、反響周波数サブバンド信号(27)を得るために、異なるループ遅延(23)によってオーディオ信号(5)を示す少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号(17)を遅延させるためのフィードバック遅延ループ・プロセッサ(20)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は、反響装置およびオーディオ信号を反響させる方法に関する。さらに、本発明の実施例は、任意の残響時間のための制御をすることができる効率的な周波数変換領域反響装置に関する。
【背景技術】
【0002】
反響装置は、オーディオ信号に室内効果をつくる際に用いられる。室内効果、すなわち早期反射および反響を信号に加える必要がある多数のオーディオ信号処理アプリケーションがある。これらの二つのうち、早期反射は信号自体の後で非常に短い時間だけ現れて容易にモデル化されることができるが、反響は長い時間間隔にわたり、乾燥した源音の消失後、最大で数秒間にわたってしばしば聞き取ることができる。長い時間幅は、中程度の計算コストを低く要求しながら、反響装置の設計を、室内効果を必用とするシステムの主焦点にもってくる。
【0003】
反響装置の設計目標は、特定の実際のまたは仮想の空間に対する知覚的な類似性を最大にするか、またはリスナーの好みを最大にするためにいくつかの他の知覚的特性を最大にする反響をつくることである。特に時間領域信号に対して、反響のためのいくつかのアルゴリズムが存在し、設計目標は、たいてい、計算負荷が最小化されると共に所望の品質にもっとも達するところで、バランスを見つけることである。
【0004】
歴史的に、残響設計は、ほぼ完全に時間領域信号に焦点を合わせてきた。しかしながら、最新の音声処理スキームにおいて、例えば、MPEGサラウンドおよびそれに関連する技術において使用されるQMF(直交ミラーフィルタバンク)領域、知覚的なオーディオ・コーデックにおいて使用されているMDCT(修正離散コサイン変換)領域、およびアプリケーションの非常に広い範囲において使用されるSTFT(短時間フーリエ変換)領域におけるような、短時間周波数変換領域において処理をすることは、非常に一般的である。方法に違いはあるが、図16に示されるように、共通因子は時間領域信号が時間−周波数タイルに分けられるということである。変換および逆変換処理は、典型的には可逆であり、音の内容に関する情報は両方の表現に完全に含まれる。時間−周波数表現は、特にオーディオの知覚的な処理において特に使用されるが、それは人間の聴覚系が音を処理する方法によく似ているからである。
【0005】
最高水準の技術によれば、反響をつくることについて、いくつかの従来の解決策がある。
“Frequency Domain Artificial Reverberation using Spectral Magnitude Decay”,Vickers et al,2006,121th AES convention Oct 2006、および、米国特許明細書US2008/0085008 A1において、周波数領域において機能する周知の残響アルゴリズムが記載されている。また、“Improvements of Artificial Reverberations by Use of Subband Feedback Delay Networks”Igor Nicolic、112nd AES convention,2002は、周波数帯域に残響をつくろうと提案している。
【0006】
無限に反復しながら減衰する残響のインパルス応答が、“Artificial Reverberation Based on a Pseudo−Random Impulse Response”parts I and II,Rubak & Johansen,104th AES convention 1998 and 106th AES convention 1999および“Reverberation Modeling Using Velvet Noise”,Karjalainen & Jaervelaeinen,30th AES conference March 2007において見ることができる。しかしながら、ちょうど言及された参考文献は、時間領域残響アルゴリズムに関するものである。
【0007】
“The Switch Convolution Reverberator”,Lee et al,127th AES convention Oct.2009において、少ないメモリで、計算コストの少ない、モバイル機器にふさわしい反響装置が示されている。反響装置は、短いノイズ・シーケンスで畳込みを駆動する均一化された櫛形フィルタから成る。反響装置の同等化および減衰率は、下位のIIRフィルタによって制御され、反響密度はノイズ・シーケンスのそれであり、ノイズ・シーケンスは、定期的に更新されるかまたは「切換えられる」。さらに、信号波高因子およびマルチバンド・アーキテクチャに影響される漏れる積分計を含むノイズ・シーケンスを更新するためのいくつかの構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許明細書US2008/0085008 A1
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】“Frequency Domain Artificial Reverberation using Spectral Magnitude Decay”,Vickers et al,2006,121th AES convention Oct 2006
【非特許文献2】“Improvements of Artificial Reverberations by Use of Subband Feedback Delay Networks”Igor Nicolic、112nd AES convention,2002
【非特許文献3】“Artificial Reverberation Based on a Pseudo−Random Impulse Response”parts I and II,Rubak & Johansen,104th AES convention 1998 and 106th AES convention 1999
【非特許文献4】“Reverberation Modeling Using Velvet Noise”,Karjalainen & Jaervelaeinen,30th AES conference March 2007
【非特許文献5】“The Switch Convolution Reverberator”,Lee et al,127th AES convention Oct.2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
既存の解決策の基本的な課題は、最も進んだ効率的な反響アルゴリズム機能の傾向は時間領域で機能するということである。しかしながら、周波数領域で働く多くのアプリケーションは反響ユニットを必要とする。このように、これらの時間領域アルゴリズムを信号に適用するために、アプリケーションは、時間領域において反響アルゴリズムを適用する前に、まず信号を逆変換しなければならない。しかしながら、これは、アプリケーションによっては非現実的である。
【0011】
周知の時間領域反響装置の他の不利な点は、それらが特に人間の空間知覚にとって重要である周波数依存残響時間の特定の一組に合うように残響を設計することに関して柔軟性がないということである。
【0012】
したがって、本発明の目的は、オーディオ信号を反響させるためのコンセプトを提供することであり、それは品質向上および効率的実行を可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、請求項1に記載のデバイス、請求項15に記載の方法または請求項16に記載のコンピュータ・プログラムによって達成される。
【0014】
本発明の一実施例によれば、オーディオ信号を反響させるための反響装置は、フィードバック遅延ループ・プロセッサを含む。フィードバック遅延ループ・プロセッサは、反響周波数サブバンド信号を得るために、異なるループ遅延によりオーディオ信号を示す少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号を遅延させるために構成される。
【0015】
実施例において、周波数領域信号表現は、実数領域または複素数領域にあることができる。したがって、反響装置(例えば、遅延、合計または乗算)の範囲内で実行されるすべての演算は、実数演算または複素数演算でありえる。
【0016】
本発明の基礎をなしている根本概念は、オーディオ信号を示す少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号が異なるループ遅延によって遅延させられるとき、上述の品質向上/効率的実行を達成することができるということである。このような手段によって、フィードバック処理の把握された反復は回避または少なくとも減らされることができ、それによって、よりよく知覚品質を維持することができる。
【0017】
本発明の他の実施例によれば、フィードバック遅延ループ・プロセッサは、各周波数サブバンド信号に対して、フィルタ・インパルス応答を有するフィルタを含み、フィルタ・インパルス応答は、第1のフィルタ・インパルス応答サンプルの第1のブロックおよび第2のフィルタ・インパルス応答サンプルの第2のブロックを含む。ここで、第2のブロックは、インパルス応答サンプル間隔に関して第1のブロックと類似している。さらに、第2のブロックの第1のインパルス応答サンプルは、周波数サブバンド信号のためのループ遅延によって、第1のブロックの第1のインパルス応答サンプルから遅延させられる。このようにして、周波数サブバンド信号のためのフィルタのフィルタ・インパルス応答の第1のブロックおよび第2のブロックは、異なるループ遅延によって遅延させられる。
【0018】
本発明の他の実施例によれば、フィードバック遅延ループ・プロセッサは、各周波数サブバンド信号に対して、可変フィルタ・タップ密度を有するスパース・フィルタを含む。適切にフィルタ・タップ密度を変化させることによって、スパース・フィルタのフィルタ・インパルス応答は、所定のエネルギー・エンベロープに近づく。したがって、周波数依存方法でスパース・フィルタのインパルス応答のエネルギー・エンベロープを制御することは可能である。
【0019】
本発明の他の実施例によれば、フィードバック遅延ループ・プロセッサは、減衰係数によって少なくとも2つの周波数サブバンド信号の各周波数サブバンド信号を減衰させるように構成される。ここで、減衰係数は、所定の残響時間および周波数サブバンド信号のためのループ遅延によって決まる。これは、所望の残響時間に従ったエネルギー減衰が成し遂げられるように、フィードバック遅延ループのゲインをサブバンド的に調整することを可能にする。
【0020】
本発明は、効率の改善、従って低出力プロセッサ上の低コスト実現を伴った反響構造を提供する。
以下に、本発明の実施例は、添付図面を参照して説明される、
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1a】図1aは、オーディオ信号を反響させるための反響装置の実施例を示すブロック図である。
【図1b】図1bは、本発明の一実施例による少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号のための異なるループ遅延の典型的な設計を示す。
【図1c】図1cは、個々の周波数サブバンド信号を処理するためのシングル・サブバンド反響ユニットの実施例のブロック図を示す。
【図1d】図1dは、図1cによるシングル・サブバンド反響ユニットの実施例のインパルス応答の図解図を示す。
【図2a】図2aは、フィードバックループの中に減衰器を有するシングル・サブバンド反響ユニットの更なる実施例のブロック図を示す。
【図2b】図2bは、図2aに示すシングル・サブバンド反響ユニットの実施例のインパルス応答の図解図を示す。
【図3】図3は、指数関数的に減衰するノイズフィルタを有するシングル・サブバンド反響ユニットの更なる実施例のブロック図を示す。
【図4】図4は、図3に示すシングル・サブバンド反響ユニットの実施例によって使用される、指数関数的に減衰しているノイズを示す典型的なフィルタ応答機能のグラフを示す。
【図5】図5は、図3に示すシングル・サブバンド反響ユニットの実施例の典型的なインパルス応答のグラフを示す。
【図6】図6は、スパース遅延線の出力を有するシングル・サブバンド反響ユニットの更なる実施例のブロック図を示す。
【図7】図7は、図6に示すシングル・サブバンド反響ユニットの実施例によって使用される、減衰密度を有する単一のインパルスを示す典型的なフィルタ応答機能のグラフを示す。
【図8】図8は、図6に示すシングル・サブバンド反響ユニットの実施例の典型的なインパルス応答のグラフを示す。
【図9】図9は、スパース遅延線の出力および増加のない位相演算を有するシングル・サブバンド反響ユニットの更なる実施例のブロック図を示す。
【図10】図10は、図9に示すシングル・サブバンド反響ユニットの実施例によって使用される典型的な増加のない位相演算の表を示す。
【図11a】図11aは、本発明の一実施例による位相修正ユニットのブロック図を示す。
【図11b】図11bは、本発明の他の実施例による位相修正ユニットのブロック図を示す。
【図11c】図11cは、本発明の他の実施例による位相修正ユニットのブロック図を示す。
【図11d】図11dは、本発明の他の実施例による位相修正ユニットのブロック図を示す。
【図12】図12は、連続的に結合された遅延線ユニット、中間の乗算器、遅延線入力および遅延線出力を有するシングル・サブバンド反響ユニットの更なる実施例のブロック図を示す。
【図13】図13は、周波数領域におけるオーディオ信号を反響させるための反響装置の実施例の概念構造を示す。
【図14】図14は、スペクトル・コンバータ、いくつかの異なるシングル・サブバンド反響ユニットおよび出力プロセッサを有するオーディオ信号を反響させるための反響装置の実施例のブロック図を示す。
【図15】図15は、直交チャネルの特有の出力ベクトルを有するオーディオ信号を反響させるための反響装置の更なる実施例のブロック図を示す。
【図16】図16は、本発明の一実施例による連続的な短期時間−周波数変換の図解図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1aは、オーディオ信号を反響させるための反響装置10の実施例のブロック図を示す。図1aに示すように、反響装置10は、反響周波数サブバンド信号27を得るために、異なるループ遅延23によってオーディオ信号5を示す少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号17を遅延させるためのフィードバック遅延ループ・プロセッサ20を含む。反響装置10は、反響オーディオ信号41を得るために、反響周波数サブバンド信号27を処理するための出力プロセッサ30を含む。
【0023】
図1aを参照すると、反響装置10は、例えば、オリジナルのオーディオ信号5から少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号17を生成するためのQMF(直交ミラーフィルタバンク)のようなフィルタバンク12を含む。さらに、フィードバック遅延ループ・プロセッサ20は、第1の反響周波数サブバンド信号25−1を得るために、第1の遅延によって少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号17のうちの第1の周波数サブバンド信号15−1を遅延させるための第1のループ遅延ユニット22−1、および、第2の反響周波数サブバンド信号25−2を得るために、第2の異なる遅延によって少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号17のうちの第2の周波数サブバンド信号15−2を遅延させるための第2のループ遅延ユニット22−2を含む。第1および第2の反響周波数サブバンド信号25−1、25−2は、反響周波数サブバンド信号27を構成する。図1aの実施例において、反響装置10の出力プロセッサ30は、混合信号37を得るために少なくとも2つの周波数サブバンド信号17および対応する反響周波数サブバンド信号27を混合して、最終的に反響オーディオ信号41を得るために混合信号37を合成するように構成される。図1aに示すように、出力プロセッサ30は、第1および第2の何らかの処理デバイス32−1、32−2および対応する加算ユニット34−1、34−2を含む。第1の何らかの処理デバイス32−1は、第1の処理された信号33−1を得るために第1の反響した周波数サブバンド信号25−1に何らかの処理を実行するように構成され、第2の何らかの処理デバイス32−2は、第2の処理された信号33−2を得るために第2の反響した周波数サブバンド信号25−2に何らかの処理を実行するように構成される。ここで、第1および第2番の何らかの処理デバイス32−1、32−2によって実行される何らかの処理操作は、例えば、所定の乗算または利得係数が反響周波数サブバンド信号27のうちの第1および第2の反響周波数サブバンド信号25−1、25−2に適用されることである。第1の加算ユニット34−1は、第1の加算信号35−1を得るために、少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号17のうちの第1の周波数サブバンド信号15−1またはその処理されたバージョンと何らかの処理装置32−1の第1の処理信号33−1とを加算するように構成され、第2の加算ユニット34−2は、第2の加算信号35−2を得るために、少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号17のうちの第2の周波数サブバンド信号15−2またはその処理されたバージョンと何らかの処理装置32−2の第2の処理信号33−2とを加算するように構成される。ここで、第1および第2の加算信号35−1、35−2は、少なくとも2つの混合信号37を構成する。
【0024】
図1aに示されているように、出力プロセッサ30は、少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号17のうちの第1および第2の周波数サブバンド信号15−1、15−2を処理するための少なくとも2つの任意の何らかの処理装置44−1、44−2を含む。第1の任意の何らかの処理装置44−1は、第1の任意に処理された信号45−1を得るために第1の周波数サブバンド信号15−1に何らかの任意の処理を実行し、対応する加算ユニット34−1に第1の任意に処理された信号45−1を提供するように構成され、第2の任意の何らかの処理装置44−2は、第2の任意に処理された信号45−2を得るために第2の周波数サブバンド信号15−2に何らかの任意の処理を実行し、対応する加算ユニット34−2に第2の任意に処理された信号45−2を提供するように構成される。したがって、第1および第2の任意の何らかの処理装置44−1、44−2は、少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号17のうちの第1および第2の周波数サブバンド信号15−1、15−2のために、それぞれ、基本的に、フィルタバンク12および加算ユニット34−1、34−2の間の並行(直接音)経路に挿入されることができる。例えばバイノーラル処理において、第1および第2の任意の何らかの処理装置44−1、44−2は、第1および第2の任意の処理された信号45−1、45−2を得るために、HRTFs(頭部伝達関数)を少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号17のうちの第1および第2の周波数サブバンド信号15−1、15−2に適用するように構成されることができる。
【0025】
ここで、第1の加算ユニット34−1は、第1の加算信号35−1を得るために、何らかの処理装置32−1の第1の処理された信号33−1と任意の何らかの処理装置44−1の第1の任意に処理された信号45−1とを加算するように構成され、第2の加算ユニット34−2は、第2の加算信号35−2を得るために、何らかの処理装置32−2の第2の処理された信号33−2と任意の何らかの処理装置44−2の第2の任意に処理された信号45−2とを加算するように構成される。ここで、第1および第2の加算信号35−1、35−2は、少なくとも2つの混合信号37を構成する。
【0026】
さらに、図1aには、反響オーディオ信号41を得るために、出力プロセッサ30が、混合信号37を合成するためのコンバイナ38を含むことが示されている。出力プロセッサ30のコンバイナ38は、少なくとも2つの更なる何らかの処理装置36−1、36−2および組立ユニット39を含む。第1の更なる何らかの処理装置36−1は、第1の更なる処理信号37−1を得るために、少なくとも2つの混合信号37のうちの第1の混合信号35−1を更に処理するように構成され、第2の更なる何らかの処理装置36−2は、第2の更なる処理信号37−2を得るために、少なくとも2つの混合信号37のうちの第2の混合信号35−2を更に処理するように構成される。第1および第2の何らかの処理装置32−1、32−2と同様に、第1および第2の更なる何らかの処理装置36−1、36−2は、混合信号37に所定の乗算または利得係数を適用することによって更なる何らかの処理操作を実行する。出力プロセッサ30内のコンバイナ38の組立ユニット39は、反響装置10の出力において反響オーディオ信号41を得るために、第1および第2の更なる処理信号37−1、37−2をその後に組立てまたは合成するように構成される。例えば、反響装置10で実行されるような処理によって、合成されたかより大きいバンド幅を有する合成された反響周波数サブバンド信号を示す反響オーディオ信号が得られる。基本的に、図1aの実施例は、QMF領域の中におけるようなサブバンド領域の中でオーディオ信号を反響させるための反響装置を示している。
【0027】
図1bは、本発明の実施例において、少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号のための異なるループ遅延の典型的な設計50を示す。図1a、1bを参照すると、反響装置10は、低い周波数帯域を示す少なくとも2つの周波数サブバンド信号53の第2の周波数サブバンド信号51−2のためのループ遅延56−2が高い周波数帯域を示す少なくとも2つの周波数サブバンド信号53の第1の周波数サブバンド信号51−1のためのループ遅延56−1より大きくなるように構成されるフィードバック遅延ループ・プロセッサ54を含む。特に、フィードバック遅延ループ・プロセッサ54は、少なくとも2つのループ遅延ユニット57を含み、第1のループ遅延ユニットは、第1の反響周波数サブバンド信号55−1を得るために、第1のループ遅延56−1によって高い周波数帯域を示す第1の周波数サブバンド信号51−1を遅延させるように構成され、第2のループ遅延ユニットは、第2の反響周波数サブバンド信号55−2を得るために、第2のループ遅延56−2によって低い周波数帯域を示す第2の周波数サブバンド信号51−2を遅延させるように構成される。第1および第2の反響周波数サブバンド信号55−1、55−2は、反響周波数サブバンド信号57を構成する。ここで、図1bのフィードバック遅延ループ・プロセッサ54、周波数サブバンド信号53および反響した周波数サブバンド信号57は、それぞれ、図1aのフィードバック遅延ループ・プロセッサ20、少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号17および反響周波数サブバンド信号27に対応する。図1bの設計において、反響装置10は、反響オーディオ信号61を得るために、反響周波数サブバンド信号57を処理するように構成された出力プロセッサ60を含む。ここで、図1bに示される出力プロセッサ60は図1aに示される出力プロセッサ30に対応し、出力プロセッサ60によって出力される反響オーディオ信号61は図1aの出力プロセッサ30によって出力される反響オーディオ信号41に対応する。したがって、図1bに示される異なるループ遅延の設計によって、増加する周波数帯域を示す少なくとも2つの周波数サブバンド信号の連続した周波数サブバンド信号のためのループ遅延は、反響の改良された知覚品質が得られるように、平均して減少させることができる。
【0028】
実施例において、連続した周波数サブバンド信号のためのループ遅延は、例えば、線形に減少するかまたはランダムに設定される。少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号のための異なるループ遅延を設定することによって、反響の反復効果は、能率的に回避されることができるかまたは少なくとも低減させることができる。
【0029】
図1cは、個々の周波数サブバンド信号を処理するためのシングル・サブバンド反響ユニット100の実施例のブロック図を示す。シングル・サブバンド反響ユニット100は、遅延線110、フィードバックループ120およびコンバイナ130を含む。図1cに示すように、遅延線110は異なる遅延を示す複数の遅延線出力または遅延線タップ115を有する。遅延線110は、遅延量(N)を提供するために構成される。ここで、z-Nで表示される遅延線110は、個々の周波数サブバンド信号101のための遅延線入力105を有する。フィードバックループ120は、遅延線110に接続され、個々の周波数サブバンド信号101または遅延バージョンを処理するために、そして、処理された信号または個々の周波数サブバンド信号101または個々の周波数サブバンド信号の遅延バージョンを遅延線入力105に入力するために構成される。フィードバックループ120は、遅延線110とともに基本的にフィードバックループ120の中で循環している信号の循環ごとにそれぞれの遅延量Nを信号に導入するフィードバック遅延ループを示す。コンバイナ130は、反響周波数サブバンド信号135を得るために、複数の遅延線出力または遅延線タップ115によって出力される信号を合成するように構成される。特に、コンバイナ130は、複数の遅延線出力115によって出力される信号を互いに加算するために、または、最初に信号に利得/減衰係数を乗算して、次にそれらを加算するか、複数の遅延線出力115によって出力される選択された信号を線形に合成するために用いられる。図1cの実施例のシングル・サブバンド反響ユニット100は、遅延量Nより大きい残響時間に対応する反響を有する反響周波数サブバンド信号135を生成することができる。
【0030】
図1dは、図1cに示すシングル・サブバンド反響ユニット100の実施例のインパルス応答150の図解図を示す。図1dに示すように、インパルス応答150は、遅延量Nによって分けられた等しい間隔を有するパルスのシーケンス(P0、P1、P2、P3・・・)を含む。等しく間隔を置かれたパルス(P0、P1、P2、P3・・・)は、遅延量Nに対応する繰り返し間隔160を示す。さらに、複数の遅延線出力115によって出力される遅延パルス155は、等しく間隔を置かれたパルス(P0、P1、P2、P3・・・)の繰り返し間隔160の中で割り振られる。図1dにおいて、シングル・サブバンド反響ユニット100のインパルス応答150の等しく間隔を置かれたパルス(P0、P1、P2、P3・・・)が、それぞれ、同じ大きさを有することがわかる。図1c、1dに関して、反響周波数サブバンド信号135の反響は、遅延量Nより大きい期間165に対応する。
【0031】
図2aは、フィードバックループの中に減衰器210を有するシングル・サブバンド反響ユニット200の更なる実施例のブロック図を示す。図2aのデバイス200は、基本的に、図1cの装置100と同じブロックを含む。したがって、類似の実施および/または機能を有する同一のブロックは同じ数字によって表示される。しかしながら、図2a実施例におけるシングル・サブバンド反響ユニット200のフィードバックループ220は、遅延信号205を減衰させるための減衰器210を含む。ここで、遅延信号205は、減衰信号215または周波数サブバンド信号101のそれぞれの供給のための遅延量Nを遅延線入力105に与える遅延線110から受信する。図2aに示すように、減衰器210は、減衰係数bを遅延信号205に適用するように構成され、減衰係数bは、与えられた遅延量Nおよび残響時間T60に依存する。フィードバックループ220の中の減衰器210による減衰の結果、フィードバックループ220のインパルス応答は、等しく間隔を置かれた減衰しているパルス(P0、P1、P2、P3・・・)のシーケンスによって特徴づけられ、等しく間隔を置かれた減衰しているパルス(P0、P1、P2、P3・・・)の繰り返し間隔160は、遅延量Nによって再び規定される。
【0032】
図2bは、図2aに示すシングル・サブバンド反響ユニット200の実施例のインパルス応答250の図解図を示す。図2aの実施例に関して、反響周波数サブバンド信号135の反響は、等しく間隔を置かれた減衰しているパルス(P0、P1、P2、P3・・・)のシーケンスから成るインパルス応答250に対応し、複数の遅延線出力115によって出力される遅延パルス255は、等しく間隔を置かれた減衰しているパルス(P0、P1、P2、P3・・・)の繰り返し間隔160の中で分配される。
【0033】
図3は、指数関数的に減衰しているノイズフィルタを有するシングル・サブバンド反響ユニット300の更なる実施例のブロック図を示す。図3実施例のシングル・サブバンド反響ユニット300は、基本的に図2a実施例のシングル・サブバンド反響ユニット200に対応する。図3に示すように、図1c、2aの遅延線110に対応する遅延線310は、遅延線入力105に入力される減衰信号215または周波数サブバンド信号101を連続して遅延させるための複数の連続的に結合された遅延線ユニット(z-D1,z-D2,・・・,Z-DN)を含む。ここで、遅延線310の各遅延線ユニット312は、連続して遅延された信号のためのそれぞれの遅延線出力314を有する。シングル・サブバンド反響ユニット100;200のコンバイナ130に対応するシングル・サブバンド反響ユニット300のコンバイナ330は、各々対応する遅延線出力に接続される複数の乗算器350を含む。特に、複数の乗算器350は、乗算器出力信号355を得るために、複数の遅延線出力115によって出力される各連続した遅延信号にフィルタ応答関数h(n)、n=1、2・・・、Nの対応するフィルタ係数を乗算するために構成される。
【0034】
実施例において、個々の遅延線ユニット(個々の基本の遅延スロット)はz-Diで表されることができ、Di(i=1、2、・・・、N)は、個々の遅延線ユニットによって導入される部分的な遅延量である。特に、D1、D2、・・・、DNは、1(z-1)のような同じ(z-D)であってもよく、異なる値であってもよい。この一般化は、明確には示されていないが、他の図にも言及している。ここで、部分的な遅延量Diは1つのサンプル(タイムスロット)によって遅延に対応し、その結果、複数の遅延線出力によって出力される遅延パルスが互いに隣接して近接する。特に、遅延線は、複数の連続的に結合された遅延線ユニット(z-Di)からなる遅延線によって与えられる遅延量Nに対応する複数の個々の遅延ラインユニットを含む。さらなる実施例によれば、部分的な遅延量Diが1つ以上のサンプルによる遅延に対応して増加するとき遅延線によって与えられる遅延量Nが得られ、同時に個々の遅延線ユニットの数が減少する。この場合、複数の遅延線出力によって出力される遅延パルスは、より粗い解像度に対応して互いにもっと間隔を置いて配置される。
【0035】
図3に示すように、コンバイナ330は、反響周波数サブバンド信号135を得るために、乗算器出力信号355を合計するための加算器360を含む。図3に示す実施例によれば、フィルタ応答関数h(n)が減衰する振幅特性を有するようにコンバイナ330が設定され、フィルタ応答関数h(n)の長さNは遅延量Nに等しい。さらに、図3実施例において、シングル・サブバンド反響ユニット300のフィードバックループ120は、処理方向において、遅延線310の最後の遅延線ユニット出力315から図2aの遅延信号205に対応する遅延信号を受信するために構成される。ここで、処理方向は、フィードバックループ120および遅延線310の中で矢印の方向によって示される。
【0036】
図4は、図3によるシングル・サブバンド反響ユニット300の実施例に用いられる指数関数的に減衰するノイズを示す典型的なフィルタ応答関数400のグラフを示す。特に、シングル・サブバンド反響ユニット300のコンバイナ330は、hDNF(n)=noise(n)・an、n=1,2,・・・、Nに基づくフィルタ応答関数400を提供するように構成され、noise(n)はノイズ関数であって、フィルタ応答関数hDNF(n)の減衰する振幅特性は、指数関数的に減衰するエンベロープanに基づいている。典型的なフィルタ応答関数hDNF(n)400のノイズ関数noise(n)およびエンベロープanは、図4において明らかに見える。さらに、フィルタ応答関数hDNF(n)400は、0とNとの間の範囲で見本として示され、この範囲は、図3に示すような遅延線310によって与えられる遅延量Nにほぼ等しいフィルタ応答関数hDNF(n)の長さ405に対応する。特に、シングル・サブバンド反響ユニット300のコンバイナ330は、エンベロープanがタイムスロットごとの減衰aに依存するように設定され、タイムスロットごとの減衰は残響時間に対応する所定のパラメータT60に基づくものである。このような手段によって、フィルタ応答関数hDNF(n)は、対応する指数関数的に減衰するエネルギー曲線を表すように調整される。
【0037】
図3に示されるシングル・サブバンド反響装置300は、フィードバックループ120の中に配置される図2aに示される減衰器210に対応する。シングル・サブバンド反響ユニット300の減衰器340は、フィードバックループ120の中の信号の各周回のために減衰係数を遅延信号に適用することによって最後の遅延線ユニット出力315から受け取る遅延信号を減衰させるために用いられる。特に、シングル・サブバンド反響ユニット300の減衰器340は、遅延信号にb=aNに等しい減衰係数を適用するように構成され、aはタイムスロットごとの減衰であり、Nは遅延量である。ここで、フィードバックループ120の各周回のための減衰は、最後の遅延線出力315からの遅延信号に減衰係数b=aNを乗算することによって実行される。
【0038】
図5は、図3によるシングル・サブバンド反響ユニット300の実施例の典型的なインパルス応答500のグラフを示す。図5に示すように、シングル・サブバンド反響ユニット300のインパルス応答500は、エンベロープ関数aNを有する指数関数的に減衰するノイズ510によって特徴づけられ、タイムスロットごとの減衰は所定のパラメータT60に従って設定される。
【0039】
特に、フィードバックループにおける減衰係数(すなわち、フィードバックループの中で減衰器によって適用される減衰係数b)は、特定の周波数帯域の所望の残響時間から算出することができ、次式で表される。
b=aN
ここにおいて、bはフィードバックループにおいて結果として生じる減衰係数であり、

ここにおいて、aはタイムスロットごとの減衰、Nは特定の周波数帯域における遅延線長(すなわち、遅延線によって与えられる遅延量)、Pは周波数変換のダウンサンプリング係数、T60は残響時間、fsはサンプルレートである。この数式は、基本的に、所定の残響時間T60に対応する減衰係数を与える。
【0040】
バンド的な指数関数的に減衰するガウス雑音は、通常、本当の拡散反響の良好な近似であると考えられる。これは、まさに、タイムスロットごとの係数によって減衰するエンベロープによってガウス雑音を調整することにより反響フィルタとしてつくられることである。したがって、残響FIR(有限インパルス応答)フィルタは、次の関数によって設計されることができる。
h[n]=white[n]・an
または、複素領域において、例えば、次の関数で設計される。
h[n]=white[n]・an・ei2π・rand[n]
ここで、white(n)はホワイトノイズを生成するプロセス、nはタイムスロット・インデックス、rand(n)は0から1までの公平な分配から確率変数を生成するプロセスである。特に、図3実施例において使用される図4に示されるフィルタ応答関数hDNF(n)は、このプロセスによって生成されることができる。図4は、その変調包絡線と共に手本となってこの種の反響フィルタの実部を示す。
【0041】
図6は、まばらな遅延線出力を有するシングル・サブバンド反響ユニット600の更なる実施例のブロック図を示す。図6のシングル・サブバンド反響ユニット600は、基本的に、図2aのシングル・サブバンド反響ユニット200と同じブロックを有する。したがって、類似の実施および/または機能を有する同一のブロックは、同じ数字によって表される。しかしながら、シングル・サブバンド反響ユニット200の遅延線110に対応するシングル・サブバンド反響ユニット600の遅延線610は、遅延線入力105に入力される減衰信号215または周波数サブバンド信号101を連続して遅延させるための複数の遅延線ユニット(z-D)を含む。図6実施例において、遅延線610は、図2aの複数の遅延線出力115に対応する少なくとも3つの遅延線出力615を含み、第1の遅延線出力617−1および第2の遅延線出力617−2の間の遅延が第2の遅延線出力617−2および第3の遅延線出力617−3の間の遅延と異なるように、遅延線出力615は構成される。シングル・サブバンド反響ユニット600のフィードバックループ120は、処理方向において、遅延線610の最後の遅延線ユニット出力613から遅延信号を受信するために構成される。
【0042】
さらに、シングル・サブバンド反響ユニット600のフィードバックループ120は、遅延信号を減衰させるための減衰器640を含み、遅延信号は、遅延線入力105への減衰信号215またはオーディオ信号101の入力ごとに遅延量Nを提供する遅延線610の最後の遅延線出力613から受信される。特に、減衰器640は、遅延信号にb=aNに等しい減衰係数を適用するように構成され、aはタイムスロットごとの減衰であり、Nは遅延量である。さらに、複数の遅延線出力615は、特に、連続した遅延対の間の差が平均して増加するように構成される。ここで、図1cのコンバイナ130に対応するコンバイナ630は、反響周波数サブバンド信号135を得るために、少なくとも3つの遅延線出力615を合成するように構成される。
【0043】
図6の実施例において、それぞれの個々の遅延線ユニット612は、部分的な遅延量Dを連続して遅延信号に導入するように構成される。ここで、個々の遅延線ユニットの数および連続して遅延信号に導入される部分的な遅延量Dは、以前に対応して記載されているように設定される。
【0044】
図6実施例によれば、少なくとも3つの遅延線出力615によって出力される遅延パルスは、フィードバックループ120の応答によって定められた反復間隔の中で減衰密度特性をもって不均一に分布する。まばらな遅延線出力を有するシングル・サブバンド反響ユニット600のインパルス応答は、基本的にスパース・フィルタ応答関数に対応する。
【0045】
図7は、図6に関するシングル・サブバンド反響ユニット600の実施例に用いられる減衰密度を有する統一インパルス705を示す典型的なフィルタ応答関数700のグラフを示す。図7において典型的な統一インパルス705が時間/サンプル軸701の原点702の近くの領域710において密に分布されることがわかり、その一方で、典型的な統一インパルス705はフレームの境界703まで大きい時間/サンプル720に対してまばらに分布しており、フレームは0およびNの間で時間/サンプルによって定義され、時間/サンプルNは遅延線610によって与えられる遅延量Nに対応する。
【0046】
例えば、フィルタ応答関数hSF(n)700は、hSF(n)=sparse(n)(n=1、2、・・・、N)に基づくものであり、図6に示す複数の遅延線出力615は、連続的なタイムスロットについて減少密度を有する統一インパルス705をまばらに分布させるスパース関数「sparse(n)」に基づいて構成される。フィルタ応答関数hSF(n)700は、特に指数関数的に減衰するエネルギー曲線715を示すように設定される。基本的に、図7は、FIRフィルタのまばらなタップ位置を示す。曲線715は、モデル化された平均エネルギー減衰(ESF)を表す。ここで、図は、位相修正を含まない。
【0047】
図8は、図6に示すシングル・サブバンド反響ユニット600の実施例の典型的なインパルス応答800を示すグラフである。図8において、シングル・サブバンド反響ユニット600の複数の遅延線出力615によって出力される信号(すなわち遅延パルス)が明らかに見える。遅延線入力105の連続的な供給のために、遅延パルスは、時間/サンプル0およびNの間の第1の繰り返し区間810、時間/サンプルNおよび2Nの間の第2の繰り返し区間820および時間/サンプル2Nおよび3Nの間の第3の繰り返し区間830の中にまばらに、または、非一様に分配される。ここで、繰り返し区間810、820、830は、図1d;2bに示される繰り返し区間160に対応している。図1d;2bに示される期間165に対応する図8に示されるインパルス応答800の全体の区間865は、遅延量Nのほぼ3倍に対応する。特に、シングル・サブバンド反響ユニット600のインパルス応答800は、それぞれ、繰り返し区間810、820、830の範囲内で連続したタイムスロットに対して減衰密度を有する連続した遅延スパースパルスを含み、減衰密度は、図7に示されるように、統一パルスの特徴的な分布に対応する。
【0048】
図8において見られるように、第1、第2および第3の繰り返し区間810、820、830の範囲内の連続した遅延スパースパルス815、825、835の振幅/レベルが、それぞれ、互いに異なり、特に、各々について減衰される。ここで、減衰は、シングル・サブバンド反響ユニット600の減衰器640によって適用できるそれぞれの減衰係数b=aNによって制御されることができる。図6の実施例において、連続した遅延スパースパルス815、825、835の振幅/レベルが第1から第2、第3の繰り返し区間810、820、830に向かって著しく落ちるように、減衰係数b=aNは、例えば、制御される。
【0049】
図6;8を参照すると、シングル・サブバンド反響ユニット600(図8)のインパルス応答800およびシングル・サブバンド反響ユニット300(図5)のインパルス応答500が基本的に同じエネルギー減衰率を有するように、連続した遅延スパースパルス815、825、835の振幅/レベルに関する減衰密度および減衰は、特に遅延線610および減衰器640によって制御される。特に、シングル・サブバンド反響ユニット600は、シングル・サブバンド反響ユニット300と比較して、それほど多くない計算量で実現することができる。
【0050】
これは、シングル・サブバンド反響ユニット300によって与えられる反響アルゴリズムが概念的に比較的単純であるが、計算コストに関してオーバーヘッドを有しているからである。したがって、シングル・サブバンド反響ユニット600内にあるようなコンピュータ的に効果的なFIR構造は有利である。図6実施例は、特に人間の聴覚が減衰する拡散反響の微細構造に無感覚であるが、エネルギー減衰率に敏感であるという議論に基づく。このような理由により、同じ平均的な全体のエネルギー減衰を得るために、図4におけるインパルス応答400の減衰の大きさanを、図7のインパルス応答700におけるような減衰密度を有する統一インパルスで置き換えることができる。
【0051】
シングル・サブバンド反響ユニット300およびシングル・サブバンド反響ユニット600により得られる1つの周波数帯域の全体の応答500;800の視覚的な違いは、それぞれ、図5;8に明らかに見ることができる。特に、図5;8において、シングル・サブバンド反響ユニット300;600で実行される1つの周波数帯域における反響アルゴリズムの応答の絶対値が示され、短期のおよび長期の平均エネルギー減衰は、両方の応答において同様である。ここで、位相修正は、図に含まれない。両方の応答500;800はNサンプルの間隔において繰り返すが、効果は図8においてより見える。
【0052】
図9は、スパース遅延線出力および増加のない位相演算を有するシングル・サブバンド反響ユニット900の更なる実施例のブロック図を示す。図9のシングル・サブバンド反響ユニット900は、基本的に、図6のシングル・サブバンド反響ユニット600と同じブロックを含む。したがって、類似の実現および/または機能を有する同一のブロックは、同じ数字によって表される。しかしながら、シングル・サブバンド反響ユニット600のコンバイナ630に対応するシングル・サブバンド反響ユニット900のコンバイナ930は、「θ」−ブロックによって示される複数の位相修正ユニット950を含む。ここで、各位相修正ユニット(θ−ブロック)は、図6に示すシングル・サブバンド反響ユニット600の少なくとも3つの遅延線出力615に対応する、複数の遅延線出力(タップ)の個々の遅延線出力(タップ)に接続される。図9の実施例において、複数の位相修正ユニット950は、特に遅延線タップ出力信号の位相を修正するために構成され、第1の遅延線タップ出力917−1に対する位相修正は、第2の遅延線タップ出力917−2に対する位相修正と異なるようにすることができる。複数の遅延線タップ出力915に対する異なる位相修正を適用することによって、全体の位相変化がコンバイナ930の出力における反響周波数サブバンド信号135に導入される。
【0053】
したがって、統一インパルスを生成するための乗算器をもたず減衰密度を有するスパース遅延線出力だけを有することがすでに合理的な結果をもたらしているが、反響アルゴリズムの品質は位相変化を応答に加えることによって大きく増加することができる。特に、付加的な位相変化の結果としてシングル・サブバンド反響ユニット900で得られたインパルス応答は、基本的に、シングル・サブバンド反響ユニット600で得られたインパルス応答に比べてより高い品質を有するという特徴がある。しかしながら、任意の位相修正を適用することは、シングル・サブバンド反響ユニット300のそれと比べて、シングル・サブバンド反響ユニット600によって与えられる反響アルゴリズムによって得られた前に達成された計算の利益を取り除くかまたは少なくとも減少させる。しかしながら、これは、位相修正をk・π/2に制限することによって、能率的に回避されることができ、ここで、kは整数(k=0、1、2、3・・・)である。その結果、θ−ブロックによって実行される位相演算は、図10の表に示すように、出力の実部および虚部への入力信号の実部および虚部の単純な供給まで減少する。
【0054】
図10は、図9に応じたシングル・サブバンド反響ユニット900の実施例で使用される典型的な増加のない位相演算の表1000を示す。特に、それぞれ、表1000の第一列1010はk=0(1012)、k=1(1014)、k=2(1016)およびk=3(1018)に対する増加のない位相動作k・π/2を示し、各々がk・2πの周期性を有する。さらに、表1000の第2および第3の列1020、1030は、出力の実部(output real part)および虚部(output imaginary part)を表し、それは、対応する増加のない位相演算(行1012、1014、1016、1018)に関して、入力信号の実部(input real)および虚部(input imag)に直接関連している。
【0055】
図11a、11b、11c、11dは、位相修正ユニット1110、1120、1130、1140の異なる実施例のブロック図を示し、それは、図9に示されるシングル・サブバンド反響ユニット900によって使用される複数の位相修正ユニット950のうちの位相修正ユニットに対応する。特に、複数の位相修正ユニット950は、遅延線タップ出力信号に作用するように構成され、複数の位相修正ユニット950のうちの各位相修正ユニット1110、1120、1130、1140は、各遅延線タップ出力信号の実部に対する第1の位相修正ユニット入力1112−1、1122−1、1132−1、1142−1または各遅延線タップ出力信号の虚部に対する第2の位相修正ユニット入力1112−2、1122−2、1132−2、1142−2および各遅延線タップ出力信号の実部に対する第1の位相修正ユニット入力1112−1、1122−1、1132−1、1142−1または各遅延線タップ出力信号の虚部に対する第2の位相修正ユニット入力1112−2、1122−2、1132−2、1142−2および位相修正された出力信号の実部に対する第1の位相修正ユニット出力1114−1、1124−1、1134−1、1144−1または位相修正された出力信号の虚部に対する第2の位相修正ユニット出力1114−2、1124−2、1134−2、1144−2を含む。
【0056】
図11aにおいて、第1の位相修正ユニット入力1112−1は、第1の位相修正ユニット出力1114−1に直接接続され、第2の位相修正ユニット入力1112−2は第2の位相修正ユニット出力1114−2に直接接続される。
【0057】
図11bにおいて、第2の位相修正ユニット入力1122−2は第1の位相修正ユニット出力1124−1に直接接続され、第1の位相修正入力1122−1は相互接続された符号変換器1125に接続されており、それは第2の位相修正ユニット出力1124−2に接続している。したがって、図11bの実施例によれば、位相修正出力信号の実部はそれぞれの遅延線タップ出力信号の虚部に基づき、位相修正出力信号の虚部はそれぞれの遅延線タップ出力信号の符号変換された実部に基づく。
【0058】
図11cにおいて、第1の位相修正ユニット入力1132−1は、相互接続された符号変換器1135−1に接続され、それは第1の位相修正ユニット出力1134−1に接続されている。そして、第2の位相修正ユニット入力1132−2は相互接続された符号変換器1135−2に接続され、それは第2の位相修正ユニット出力1134−2に接続されている。したがって、図11cの実施例によれば、位相修正出力信号の実部はそれぞれの遅延線タップ出力信号の符号変換された実部に基づき、位相修正出力信号の虚部はそれぞれの遅延線タップ出力信号の符号変換された虚部に基づく。
【0059】
図11dにおいて、第1の位相修正ユニット入力1142−1は第2の位相修正ユニット出力1144−2に直接接続され、第2の位相修正ユニット入力1142−2は相互接続された符号変換器1145に接続されており、それは第1の位相修正ユニット出力1144−1に接続されている。したがって、図11dの実施例によれば、位相修正出力信号の虚部はそれぞれの遅延線タップ出力信号の実部に基づき、位相修正出力信号の実部はそれぞれの遅延線タップ出力信号の符号変換された虚部に基づく。
【0060】
異なる位相修正ユニット1110、1120、1130、1140によって実行される可能な位相演算(位相修正)は、増加がないとみなされるが、その理由は、信号への(複素)位相乗算器の適用を必要とせずに、上述したように、出力(すなわち、位相修正出力信号)は入力信号(すなわち、遅延線出力信号)から直接引き出すことができるからである。位相修正ユニット1110、1120、1130、1140は、したがって、計算機的に効率的な位相修正ユニットを示す。
【0061】
図12は、直列的に接続された遅延線ユニット(z-D)、中間乗算器1260、遅延線(タップ)入力1209および遅延線(タップ)出力1211を有するシングル・サブバンド反響ユニット1200の更なる実施例のブロック図を示す。図12に示すように、シングル・サブバンド反響ユニット1200の遅延線1210は、異なる遅延線入力に導入される周波数サブバンド信号1201によって表される減衰信号またはオーディオ信号を連続して遅延させるための複数の直列接続された遅延線ユニット(z-D)を含み、遅延線1210の各遅延線ユニットは、連続して遅延した信号のためのそれぞれの遅延線出力を有する。さらに、シングル・サブバンド反響ユニット1200は、第1の遅延線ユニット1205の遅延線出力1207および第2の連続的な遅延線ユニット1215の対応する遅延線入力1213に接続されている複数の中間乗算器1260を含む。特に、図12に示される遅延線1210の複数の連続的に接続された遅延線ユニット(z-D)は、図9に示される遅延線610の複数の連続的に接続された遅延線ユニット(z-D)に対応する。
【0062】
図12の実施例において、複数の中間乗算器1260は、特に中間乗算器出力信号を得るために、直列的に接続された複数の遅延線ユニット(z-D)からの連続的に遅延した信号出力に中間減衰係数を乗算するために、そして、図1cのコンバイナ130に、そして、遅延線1210内の連続的な遅延線ユニットの対応する遅延線入力に対応するコンバイナ1230に中間乗算器出力信号を供給するために調整される。ここで、中間乗算器1260は、例えば、実質的な乗算器として構成されることができる。図1cのフィードバックループ120に対応するフィードバックループ1220は、複数の中間乗算器1260の最後の中間乗算器の出力1265から遅延信号を受信するように構成され、最後の中間乗算器出力1265からの遅延信号は、中間乗算器1260の数および個々に適用される中間減衰係数に基づく有効な減衰係数に対応する減衰を有する。特に、複数の中間乗算器1260は、図9に示されるシングル・サブバンド反響ユニット900内にあるようなフィードバックループ120によって適用される減衰係数(b=aN)に対応する有効な減衰係数を提供するように構成される。シングル・サブバンド反響ユニット1200は、図9に示される位相修正ユニット950に対応する複数の位相修正ユニット1250も含む。
【0063】
図12の実施例を参照すと、複数の連続的に接続された遅延線ユニット(z-D)の各遅延線ユニットによって導かれる部分的な遅延量Dは、1つのサンプルまたはタイムスロットによる特定の遅延に対応する。図12の実施例において、遅延線出力1211に対応する複数の遅延線出力タップは、完全には装着されなくてもよい。これは、複数の連続的に接続された遅延ユニットのいくつかの出力タップだけがコンバイナ1230に接続されていることを意味する。さらに、複数の中間乗算器1260は、完全には装着されなくてもよい。
【0064】
図12の実施例によれば、複数の連続的に接続された遅延線ユニット(z-D)の少なくとも2つの遅延線ユニット1215、1218は、平行に周波数サブバンド信号1201によって表されるオーディオ信号を受信するための対応する遅延線入力1213、1217を有する。ここで、図12に示される周波数サブバンド信号1201は、図1cに示される周波数サブバンド信号101に対応する。
【0065】
図12の実施例において、オーディオ信号はいくつかの入力オーディオ・チャネルCh1、Ch2、Ch3から成り、例えば、「L」(左)、「R」(右)および「C」(中心)で表される。さらに、いくつかの入力オーディオ・チャネルのうちの各入力オーディオ・チャネルは、複数の異なる周波数サブバンド信号1203のうちの周波数サブバンド信号1201を含む。
【0066】
図12に示されているように、いくつかの入力オーディオ・チャネルCh1、Ch2、Ch3・・・(例えば、L、R、C)は、複数の連続的に接続された遅延線ユニット(z-D)の対応する遅延線入力に入力される前に、予め接続された位相修正ユニットによって別に処理されることができる。ここで、予め接続された複数の位相修正ユニット1240は、異なる入力オーディオ・チャネル(Ch1、Ch2、Ch3、・・・)によって異なる増加のない位相演算を適用するように構成される。
【0067】
したがって、実施例において、シングル・サブバンド反響ユニット1200は、異なる前処理された信号を得るために、いくつかの入力オーディオ・チャネル(L、R、C)の周波数サブバンド信号を別に前処理するように構成される。特に、いくつかの入力オーディオ・チャネル(L、C、R)のそれぞれの周波数サブバンド信号は、前処理された信号を複数の連続的に接続された遅延線ユニット(z-D)の対応する遅延線入力に入力する前にいくつかの入力オーディオ・チャネルL、C、Rのための異なる位相修正を適用するための異なる位相修正ユニット1240を用いて前処理されることができる。
【0068】
特に、図12で分かるように、シングル・サブバンド反響ユニット1200は、それぞれが複数の連続的に連結された遅延線ユニット(z-D)の対応する遅延線入力に接続された複数の連結された位相修正ユニット(θ−ブロック)1240を含み、その結果、位相修正は異なる遅延線入力に平行して注入されることができる周波数サブバンド信号1201に適用される。ここで、位相修正ユニット1240、1250が、例えば図11に記載されているような効率的な位相修正ユニットに対応する点に留意する必要がある。
【0069】
更なる実施例によれば、オーディオ信号のいくつかのチャネル(L、R、C)のための前処理された信号は、対応する遅延線入力1213、1217にそれを注入する前に加えられる。この種の加算演算は、図12において、L、C、R−チャネルにおいて働く「+」シンボル1242で手本として示される。
【0070】
更なる実施例によれば、オーディオ信号1201を受信するための遅延線入力1209の数および遅延線出力1211の数の合計が遅延線1210の個々の基本の遅延スロットの数より少なくなるように、遅延線1210は構成される。
【0071】
図12に示すコンバイナ1230の出力において、複数の異なる反響周波数サブバンド信号のうちの反響周波数サブバンド信号1235が得られ、反響周波数サブバンド信号1235は、前述の実施例の反響周波数サブバンド信号135に対応する。
【0072】
換言すれば、オーディオ信号のオーディオ・チャネル(L、R、C)は、複数の異なる周波数サブバンド信号にスペクトル的に分解されることができ、典型的なシングル・サブバンド反響ユニット1200が動いている。したがって、図12は、基本的に、遅延線入力(入力タップ)、遅延線出力(出力タップ)および中間減衰係数を有する周波数帯域のシングル・サブバンド反響ユニットの特定の構造に関する。ここで、位相修正ユニットは、0乗算器でもよい。
【0073】
実施例において、周波数帯域のシングル・サブバンド反響ユニットで実現される周波数領域反響アルゴリズムは、多重チャネルから遅延線の任意の位置への入力信号の任意の注入に基づくことができる。それは、遅延線のピックアップから多重出力チャネルを生成するために用いることもできる。更なる実施例によれば、反響構造内の効率的な位相修正ユニットおよび実質乗算器は、時間的に変化するまたは不変の複素乗算器と交換されてもよい。さらに、遅延線ユニット、中間乗算器(ゲイン)、ピックアップポイントおよびエントリーポイントの順序は交換可能である。特に、チャネルに特有の注入ベクトルが直交するように構成されるときに、シングル・サブバンド反響ユニットは等しく入力信号の位相のそろったおよび位相のそろわない部分を処理することを可能にされる。出力重み付けベクトルが直交するように構成される場合に、位相のそろわない出力チャネルが生成されることができる。ここで、出力重み付けベクトルは、対応する遅延線ユニットの後で各々配置される複数の中間乗算器によって出力される減衰(重み付け)信号に対応する。注入ベクトルが出力重み付けベクトルに直交性となるように構成される場合、インパルス応答の繰り返しの初めのエネルギー・ピークは防止される。
【0074】
更なる実施例によれば、1ループでのエネルギー減衰は、遅延線ユニットの間のゲインを調整することにより、および/または減らされる出力ピックアップの密度を有することにより制御されることができる。しかしながら、応用方法に関係なく、目標は所与の残響時間に従ったエネルギー減衰速度を得ることである。
【0075】
換言すれば、反響構造は、遅延線に位相修正を有する入力信号を注入するという可能性を利用することができる。ここで、システムのインパルス応答は遅延線入力(入力タップ)の数に対応する要因によって高密度となるため、遅延線に平行して入力信号を注入することは有益でありえる。これは、特に遅延線出力(出力タップ)の減少を許容して、より少ないメモリの超過および追加で等しいインパルス応答密度を有することを可能にする。好ましくは、各周波数帯域の遅延長は、入力タップの数かける出力タップの数と同じ範囲にあるように調整される。更なる実施例によれば、入力および出力タップ位置は、一様分布を使用して、ランダムに分配されることができる。さらに、全体の遅延長および入出力タップ位置は、各周波数帯域において異なることがありえる。更なる方法は、残響時間に従ってエネルギー減衰を提供するために遅延線ユニットの間に実質乗算器を利用することである。
【0076】
図12の実施例が非常にコンピュータのオーバーヘッドを有するので、それは特定のおよび効率的な反響構造の数に減少することができる。これらのうちの1つは、例えば、図9実施例に記載されているスパース・フィルタ構造である。
【0077】
上記の異なる実施例(図1c、2a、3、6、9、12)は、以下において、少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号を別に処理するように構成されている反響装置の異なる実施例が記載されると共に、少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号の1つのまたは個々の周波数サブバンド信号において働いているシングル・サブバンド反響ユニットに関連があった。
【0078】
図13は、周波数領域において動いている反響装置1300の実施例の概念構造を示す。図13の反響装置1300は、特に周波数帯域における反響アルゴリズムを実行するために用いることができる。特に、図13に示される反響装置1300は、図1aに示される反響装置10に対応する。ここで、図13の反響装置1300が上記したように複数のシングル・サブバンド反響ユニットを含み、複数の反響周波数サブバンド信号を得るために、複数のシングル・サブバンド反響ユニットのうちのそれぞれのシングル・サブバンド反響ユニットは複数の周波数サブバンド信号のうちの個々の周波数サブバンド信号において動き、複数のシングル・サブバンド反響ユニットは周波数サブバンド信号を別に処理するように構成される点に留意すべきである。
【0079】
図13の実施例を参照すると、反響装置1300は、図1aに示されるフィードバック遅延ループ・プロセッサ20に対応するフィードバック遅延ループ・プロセッサ1320を含む。任意に、図13に示される反響装置1300は、図1aに示す反響装置10のフィルタバンク12に対応する第1のスペクトル・コンバータ1310および図1aに示す反響装置10の出力プロセッサ30に対応する第2のスペクトル・コンバータ1340を含む。ここで、第1および第2のスペクトル・コンバータ1310、1340は、「時間−周波数変換(オプション)」および「逆時間−周波数変換(オプション)」で示される。第1のスペクトル・コンバータ1310は、オーディオ信号1301を複数の異なる周波数サブバンド信号1315を有するスペクトル表現に変換するために構成される。ここで、図13の実施例におけるオーディオ信号1301および複数の異なる周波数サブバンド信号1315は、図1aにおけるオーディオ信号5および少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号17に対応する。図13に図示するように、フィードバック遅延ループ・プロセッサ1320は、複数の異なる周波数サブバンド信号1315のうちの各周波数サブバンド信号1317に対して、フィードバックループ1350および複数の遅延線タップを有する拡散フィルタ1330を含む。図13において、フィードバックループ1350がフィードバック信号1353を得るために周波数サブバンド信号のためのループ遅延を決定している遅延素子1352を含むことがわかる。特に、フィードバックループ1350は、周波数サブバンド信号1317およびフィードバック信号1353を加算するための加算器1354を含む。図13においてわかるように、加算器1354は、拡散フィルタ1330に接続される。図13の実施例に特有なのは、フィードバックループの遅延素子が少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号(信号1315)によって異なっていてもよいということである。
【0080】
更なる実施例によれば、反響装置1300のフィードバック遅延ループ・プロセッサ1320は、少なくとも2つの周波数サブバンド信号のうちの各周波数サブバンド信号1317のためのフィードバックループ1350を含み、周波数サブバンド信号1317のためのフィードバックループ1350は、遅延素子1352および、加えて、減衰器1356を含む。ここで、遅延素子および減衰器は、少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号によって異なってもよい。
【0081】
反響装置1300の第2のスペクトル・コンバータ1340は、合成されたバンド幅を有する反響オーディオ信号1341を得るために、複数の反響周波数サブバンド信号1335を合成するために任意に用いられる。図13の反響装置1300で得られる反響オーディオ信号1341は、図1aの反響装置10の反響オーディオ信号41に対応する。
【0082】
換言すれば、反響装置1300または周波数領域反響構造のシングル・サブバンド反響ユニットは、それぞれ、時間−周波数変換および逆時間−周波数変換を実行するための2つの(任意の)スペクトル・コンバータ1310、1340内に設けられた(減衰する)インパルス列発生器(フィードバックループ1350)および(短時間)拡散フィルタ1330を含む。アプリケーションのオーディオ信号がすでに周波数変換領域にあるため、変換演算(ブロック1310、1340)は任意であって、説明の目的のためだけに示されている。変換領域において、処理ブロックの順序は、処理が線形であるために交換可能である。含まれるすべてのファクタは、異なる周波数帯域において違うものとすることができる。ここで、異なる周波数帯域は、時間−周波数変換コンバータ1310の出力および逆時間−周波数変換コンバータ1340の入力において点線で示される。
【0083】
上述したように、反響構造(反響装置1300)は、複数の異なる1入力−1出力反響ユニットを含み、それにより、多重の入力および出力または異なる周波数サブバンド信号のために働く。概念的には、複数の出力を作成することは、相互に位相のそろっていない複数の拡散フィルタを有することによって成し遂げられることができる。図13において、減衰インパルス列発生器1350(フィードバックループ)は、その特定の帯域の反響の反復する間隔を定める無限の指数関数的に減衰するスパース等間隔応答をつくるように構成される。FIR(有限インパルス応答)またはIIR(無限インパルス応答)フィルタ構造であってもよい拡散フィルタ1330は、同様に、応答に対して短時間散乱特性をつくるために用いられる。この構造によって、拡散フィルタ1330を短くすることができ、それにより計算機的に効率的にすることができる。フィードバックループは、全体として応答を無限に減衰させ、拡散フィルタは、好ましくは短時間エンベロープを同じファクタによって減衰させる。
【0084】
拡散フィルタの遅延線長には特定の制約がない。実施例において、設計目標は、反復構造のネガティブな知覚効果を最小にたもちながら、拡散フィルタにおける最小限のメモリ使用状況および計算コストを考慮に入れるために遅延線長をできるだけ短くすることである。
【0085】
拡散フィルタは、さまざまな方法で設計されることができる。それは、例えば、減衰ホワイトノイズによる短時間拡散フィルタの形で「理想的な反響」拡散フィルタとして(図3の設計方法)、または、減衰密度を有するスパース・フィルタおよび増加のない位相演算を有する統一ゲインによる効率的な拡散フィルタとして(図9の設計方法)、設計されることができる。ここで、図9の拡散フィルタ設計方法は、大幅な計算コストの削減を伴う一方で、日常的には図3の方法に知覚的に等しく聞こえる。このように、図9の方法は、図3の方法より好ましい。特に、例えば図6、9、12の実施例にあるようなスパース・フィルタ・ベースの実施は、反響アルゴリズムのより実際的な実施態様を表す。
【0086】
実施例において、反響構造は、基本的に、フィードバック遅延ループおよび拡散フィルタ(例えば、FIRスパース・フィルタ)によって共有される一般の遅延線を使用する。他のタイプの拡散フィルタは、同様に構築されることもできる。
【0087】
図3、6、9、12の実施例を参照すると、複数の連続的に接続された遅延線ユニットを含む遅延線は、少なくとも15、好ましくは少なくとも20以上で、200より少ない、好ましくは100より少ない個々の遅延線ユニット(遅延線スロット)から成っている。
【0088】
更なる実施例によれば、図13に示される拡散フィルタ1330または図1cに示される遅延線110は、典型的に複素数値デバイスである。
【0089】
図14はスペクトル・コンバータでオーディオ信号を反響させるための反響装置1400の実施例のブロック図を示し、フィードバック遅延ループ・プロセッサはいくつかの異なるシングル・サブバンド反響ユニットおよび出力プロセッサを含む。図14に示すように、反響装置1400は、スペクトル・コンバータ1410、フィードバック遅延ループ・プロセッサ1420および出力プロセッサ1430を含む。ここで、図14に示される反響装置1400のスペクトル・コンバータ1410、フィードバック遅延ループ・プロセッサ1420および出力プロセッサ1430は、図1aに示される反響装置10のフィルタバンク12、フィードバック遅延ループ・プロセッサ20および出力プロセッサ30に対応する。スペクトル・コンバータ1410は、図1aのオーディオ信号5に対応するオーディオ信号1401を図1aの少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号17に対応する複数の異なる周波数サブバンド信号1415に変換するように構成される。図14の実施例において、フィードバック遅延ループ・プロセッサ1420は、反響周波数サブバンド信号1425を得るために、異なる周波数サブバンド信号1415を処理するために構成される複数のシングル・サブバンド反響ユニット1421を含む。特に、フィードバック遅延ループ・プロセッサ1420の第1のシングル・サブバンド反響ユニット1422は、第1の反響周波数サブバンド信号1427−1を得るために、複数の異なる周波数サブバンド信号1415の第1の周波数サブバンド信号1417−1のために第1の合計遅延量N1を提供するように構成され、その一方で、フィードバック遅延ループ・プロセッサ1420の第2のシングル・サブバンド反響ユニット1424は、第2の反響周波数サブバンド信号1427−2を得るために、複数の異なる周波数サブバンド信号1415の第2の周波数サブバンド信号1417−2のために第2の異なる合計遅延量N2を提供するように構成される。出力プロセッサ1430は、以前に記載されたような反響オーディオ信号1435を得るために、反響周波数サブバンド信号1425を処理するように構成される。ここで、出力プロセッサ1430の出力で得られる反響周波数サブバンド信号1425および反響オーディオ信号1435は、それぞれ、図1aに示される出力プロセッサ30の出力において、反響周波数サブバンド信号27および反響オーディオ信号41に対応する。
【0090】
スペクトル・コンバータ1410は、例えば、QMF分析フィルタバンクとして、または、短時間フーリエ変換(STFT)を実行するために構成され、その一方で、出力プロセッサ1430は、例えば、QMF合成フィルタバンクとして、または、逆短時間フーリエ変換(ISTFT)を実行するために構成される。
【0091】
実施例において、周波数領域信号表現は、実部または複素領域においてありえる。したがって、反響装置(例えば遅延、加算または乗算)の範囲内で実行されるすべての演算は、実部または複素演算でありえる。
【0092】
更なる実施例によれば、スペクトル・コンバータ1410またはフィルタバンク12は、実数値デバイスとして実施することもできる。この種の実数値フィルタバンクの考えられる適用は、例えば、音声符号化の修正離散コサイン変換(MDCT)またはMPEGサラウンドの低出力モードであってもよく、QMFバンドの下方部分は複素数値であり、上方バンドは実数値のみであってもよい。この種のシナリオにおいて、サブバンドの少なくとも一部が実数値のみであり、このような反響を適用することが有益であるような環境があってもよい。これらの場合、信号は実数であり、ありうる位相修正(例えば、図11a−dに記載されたような効果的な位相修正)は、乗数1または−1による実信号の乗算に対応して、それぞれ1および−1のみである。
【0093】
複数の周波数サブバンド信号1415のための異なる合計遅延量(N1≠N2)を用いて、インパルス応答の反復は、異なる周波数サブバンド信号のための異なる結果として生じる反復間隔のため、著しく減らされることができる。
【0094】
図1cおよび図14の実施例を参照すると、反響周波数サブバンド信号1425を得るために、フィードバック遅延ループ・プロセッサ1420は、少なくとも2つの周波数サブバンド信号1415の中の各周波数サブバンド信号のために、異なるタップ遅延によって遅延される信号を提供している複数の遅延線タップ115を有する遅延線110、遅延線110に接続されたフィードバックループ120および複数の遅延線タップ115によって出力されるくし型信号出力のためのコンバイナ130を含む。特に、遅延線110は、最も高いタップ遅延より高い合計遅延量を提供するように構成される。この合計遅延量は、基本的に周波数サブバンド信号のためのループ遅延を決定する。図14に示されているように、フィードバック遅延ループ・プロセッサ1420の第1および第2の信号サブバンド反響ユニット1422、1424によって与えられる合計遅延量N1、N2は、少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号1415によって異なる。
【0095】
更なる実施例によれば、反響装置10のフィードバック遅延ループ・プロセッサ20は、各周波数サブバンド信号のために、例えば図8に示されるインパルス応答800のようなフィルタ・インパルス応答を有するフィルタを含む。上述したように、フィルタ・インパルス応答800は、フィルタ・インパルス応答サンプルの第1のブロック815およびフィルタ・インパルス応答サンプルの第2のブロック825を含む。ここで、第2のブロック825はインパルス応答サンプル間隔に関して第1のブロック815と類似しており、その一方で、第2のブロック825の第1のインパルス応答サンプル821は、周波数サブバンド信号のためのループ遅延によって第1のブロック815の第1のインパルス応答サンプル811から遅延する。さらに、フィルタによって与えられる周波数サブバンド信号のためのループ遅延は、基本的に、第2のブロック820の第1のインパルス応答サンプル821および第1のブロック815の第1のインパルス応答サンプル811によって定義される遅延量Nに対応する。
【0096】
これにより、フィードバック遅延ループ・プロセッサ20の出力で、少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号のためのフィルタ・インパルス応答サンプルの複数の異なる第1および第2のブロックが得られる。具体的には、周波数サブバンド信号のためのフィルタのフィルタ・インパルス応答の第1のブロックおよび2ブロックは、少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号のための異なるループ遅延によって遅延される。
【0097】
図6および14の実施例を参照すると、複数の遅延線タップ615(115)は、遅延線タップの第1の部分619−1および遅延線タップの第2の次の部分619−2を含む。実施例において、第2の部分619−2のタップ間の平均の間隙の大きさが第1の部分619−1のタップ間の平均の間隙の大きさより大きくなるように、シングル・サブバンド反響ユニットの遅延線610(110)は構成される。ここで、平均の間隙の大きさは、それぞれ遅延線タップの第1または第2の次の部分619−1、619−2における複数の遅延線タップ615(115)のうちのそれぞれの遅延線タップの間の連続した遅延の上の平均に対応する。
【0098】
図1c、13および14の実施例を参照すると、図13に示される反響装置1300の拡散フィルタ1330またはフィードバックループ120およびコンバイナ130に接続された遅延線110は、特に図6に手本となって示されるスパース・フィルタ600として構成されることができる。上述したように、スパース・フィルタ600は、スパース・フィルタ600のフィルタ・インパルス応答(例えば、図7のインパルス応答700)が所定のエネルギー・エンベロープ(例えば、図7のエネルギー・エンベロープ715)に近づくように変化することができるフィルタ濃度を有することができる。
【0099】
更なる実施例によれば、スパース・フィルタは、複数の位相修正ユニット950を含む図9の実施例(スパース・フィルタ900)におけるように実施することができ、複数の位相修正ユニット950のうちの各位相修正ユニットは複数の遅延線タップ915のうちの個々の遅延線タップに直接接続され、各位相修正ユニットは個々の遅延線タップによって出力される対応する増加のない位相演算を適用するように構成される。実施例において、複数の位相修正ユニット950のうちの各位相修正ユニットによって与えられる増加のない位相演算は、例えば、図10の表1000に従って実行されることができる。ここで、それぞれの位相修正ユニットは、図11a−dに示される効率的な位相修正ユニットとして構成される。図1c、13および14を参照すると、拡散フィルタ1330または遅延線110は、オーディオ信号を表している複素信号の実部および虚部を別に処理するための典型的な複素数値デバイスである。したがって、これらの複素数値デバイスを用いて、図11a−dに示されるような効率的な位相修正ユニット1110、1120、1130、1140が実現されることができる。
【0100】
図1aおよび2aの実施例を参照すると、反響装置10のフィードバック遅延ループ・プロセッサ20は、減衰係数bによって少なくとも2つの周波数サブバンド信号17のうちの各周波数サブバンド信号を減衰させるように構成される。前述のように、減衰係数bは、本発明の実施例に従って、所定の残響時間T60および周波数サブバンド信号に対するループ遅延に依存する。このような方法によって、少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号17に対する異なる減衰係数は、フィードバック遅延ループ・プロセッサ20によって適用されることができる。
【0101】
図15は、直交チャネル固有出力ベクトルを有する反響装置1500の更なる実施例のブロック図を示す。図15の実施例において、反響装置1500は、複数の入力オーディオ・チャネル(Chin,1、Chin,2・・・)のうちの第1および第2のチャネル1501−1、1501−2(Chin,1、Chin,2)のための少なくとも2つのスペクトル・コンバータ1510−1、1510−2を含み、少なくとも2つのスペクトル・コンバータ1510−1、1510−2は、2つのチャネル1501−1、1501−2をそれぞれ第1および第2の複数の異なる周波数サブバンド信号1515−1、1515−2にスペクトル的に分解する分析フィルタバンク(例えば、図1aのフィルタバンク12)として構成される。図15に示すように、フィードバック遅延ループ・プロセッサ1520(例えば、図1aのフィードバック遅延ループ・プロセッサ20)は、加算信号1555を得て、加算信号1555を複数のシングル・サブバンド反響ユニット1521の対応する入力に導入するために、第1および第2の複数の周波数サブバンド信号1515−1、1515−2の対応する周波数サブバンド信号を互いに加算するために用いられることができる複数の加算器1550を含む。特に、複数のシングル・サブバンド反響ユニット1521のうちのシングル・サブバンド反響ユニットは、それぞれ、第1の出力オーディオ・チャネルChout,1の周波数サブバンド信号1525−1および第2の出力オーディオ・チャネルChout,2の周波数サブバンド信号1525−2のための少なくとも2つの異なるフィルタ・タップ位置1522、1524を提供する遅延線1526を有する遅延線フィルタを含む。
【0102】
さらに、反響装置1500は、出力オーディオ信号の第1および第2の出力チャネル1535−1、1535−2(Chout,1、Chout,2)を提供するための2つの出力プロセッサ1530−1、1530−2を含み、2つの出力プロセッサ1530−1、1530−2は、合成フィルタバンク(例えば、QMF合成フィルタバンク)として構成される。特に、第1の出力プロセッサ1530−1は、第1の遅延線出力または複数のシングル・サブバンド反響ユニット1521のフィルタ・タップ位置1522によって出力される第1の複数の信号1525−1を合成するように設定され、その一方で、第2の出力プロセッサ1530−2は、第2の異なる遅延線出力または複数のシングル・サブバンド反響ユニット1521のフィルタ・タップ位置1524によって出力される第2の複数の信号1525−2を合成するように設定される。
【0103】
図15の実施例を参照すると、オーディオ信号5は、複数の異なる入力オーディオ・チャネルChin,1、Chin,2、・・・を有し、各入力オーディオ・チャネルは、少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号(信号1515−1、1515−2)を有する。具体的には、フィードバック遅延ループ・プロセッサ1520の一部としての遅延線フィルタの遅延線1526は、フィルタ・タップ位置または少なくともいくつかのフィルタ・タップ位置に接続される位相修正ユニットを含む。さらに、フィードバック遅延ループ・プロセッサ1520は、第1の出力オーディオ・チャネル1535−1、Chout,1の周波数サブバンド信号1525−1のための第1の出力構成、および第2の出力オーディオ・チャネル1535−2、Chout、2の周波数サブバンド信号1525−2のための第2の出力構成を含む。図15の実施例において、フィードバック遅延ループ・プロセッサ1520は、第1および第2の出力構成が異なるフィルタ・タップ位置または位相修正ユニットへの接続1527を含むように構成される。具体的には、図15の実施例において、第1および第2の出力構成は同じ遅延線1526に接続されることができる。
【0104】
基本的に、異なって遅延された周波数サブバンド信号を1つの入力周波数サブバンド信号から生成される出力オーディオ・チャネルに提供するための同じ遅延線1526を用いることによって、フィードバック遅延ループ・プロセッサ1520内の必要な遅延線の数は、2つの異なる遅延線が1つの入力周波数サブバンド信号から生成される別に遅延された周波数サブバンド信号を提供するために用いられる場合と比較して、能率的に削減されることができる。
【0105】
更なる実施例によれば、フィードバック遅延ループ・プロセッサは、第1の入力オーディオ・チャネルの周波数サブバンド信号のための第1の入力構造および第2の入力オーディオ・チャネルの周波数サブバンド信号のための第2の入力構造を含む。このような実施例において、フィードバック遅延ループ・プロセッサは、第1および第2の入力構造が異なるフィルタ・タップ位置または位相修正ユニットへの接続を含むように構成される。それにより、第1および第2の入力構造は、同じ遅延線に接続されることができる。
【0106】
実施例において、入力(Chin,1、Chin,2)および出力オーディオ・チャネル(Chout,1、Chout,2)の数は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0107】
基本的に、図15実施例の反響装置1500は、オーディオ信号の2つ以上のチャネルのサブバンド的な処理に基づく、周波数領域において働く反響アルゴリズムを提供する。図15に示すように、チャネルに特有の出力ベクトルは、例えば、互いに直交するように構成される。ここで、チャネルに特有の出力ベクトルは、それぞれの出力プロセッサによる合成のために用いられる特定の遅延線出力(ピックアップポイントまたはフィルタ・タップ位置)によって定義される。図15の実施例を参照すると、第1および第2のチャネルのために、それぞれ、異なるピックアップポイントまたはフィルタ・タップ位置1522、1524が用いられるため、チャネルに特有の出力ベクトルは各々に関して直交性である。
【0108】
いくつかの態様が装置との関連で示されたが、これらの態様も対応する方法の説明を示し、ブロックまたはデバイスは、方法ステップまたは方法ステップの特徴に対応することは明らかである。同様に、方法ステップの文脈に記載されている態様も、対応する装置の対応するブロックまたはアイテムまたは特徴の説明を表す。方法ステップのいくらかまたは全ては、例えば、マイクロプロセッサ、プログラム可能なコンピュータまたは電子回路などのようなハードウェア装置により(または用いて)実行される。いくつかの実施形態では、最も重要な方法ステップのどれか一つ以上は、この種の装置によって実行されることができる。
【0109】
発明の処理されたオーディオ信号は、デジタル記憶媒体に格納されることができるか、または例えば無線伝送媒体またはインターネットなどの有線伝送媒体のような伝送媒体上に送信されることができる。
【0110】
特定の実現要求に応じて、本発明の実施例は、ハードウェアにおいて、または、ソフトウェアで実施されることができる。実現は、その上に格納される電子的に読み込み可能な制御信号を有するデジタル記憶媒体、例えば、フレキシブルディスク、DVD、ブルーレイ(登録商標)、CD、ROM、PROM、EPROM、EEPROMまたはフラッシュメモリなどを使用して実行されることができ、それぞれの方法が実行されるように、それはプログラム可能なコンピュータ・システムと協働する(または協働することができる)。したがって、デジタル記憶媒体は、コンピュータに可読のものである。
【0111】
本発明によるいくつかの実施例は、本願明細書において記載されている方法のうちの1つが実行されるように、それはプログラム可能なコンピュータ・システムと協働することができる電子的に読み込み可能な制御信号を有するデータ記憶媒体を含む。
【0112】
通常、本発明の実施例は、プログラムコードを有するコンピュータ・プログラム製品として実施されることができ、コンピュータ・プログラム製品がコンピュータで動くときに、プログラムコードが方法のうちの1つを実行するように働く。プログラムコードは、例えば、機械可読キャリアに格納される。
【0113】
他の実施例は、本願明細書において記載されていて、機械可読キャリアに格納される方法のうちの1つを実行するためのコンピュータ・プログラムを含む。
【0114】
換言すれば、発明の方法の実施例は、コンピュータ・プログラムがコンビュータで動くとき、本願明細書において記載されている方法のうちの1つを実行するためのプログラムコードを有するコンピュータ・プログラムである。
【0115】
発明の方法の更なる実施例は、その上に記録されて、本願明細書において記載されている方法のうちの1つを実行するためのコンピュータ・プログラムを含むデータ記憶媒体(または、デジタル記憶媒体またはコンピュータ可読媒体)である。データ記憶媒体、デジタル記憶媒体または記録媒体は、典型的には有形でおよび/または変化のないものである。
【0116】
発明の方法の更なる実施例は、本願明細書において記載されている方法のうちの1つを実行するためのコンピュータ・プログラムを表しているデータストリームまたは信号のシーケンスである。データストリームまたは信号のシーケンスは、例えば、データ通信コネクション、例えばインターネットを介して移送されるように構成されることができる。
【0117】
更なる実施例は、本願明細書において説明した方法を実行するように構成される処理手段、例えばコンピュータまたはプログラマブル論理デバイスを含む。
【0118】
更なる実施例は、その上に、本願明細書において記載されている方法のうちの1つを実行するためのコンピュータ・プログラムをインストールしたコンピュータを含む。
【0119】
本発明による更なる実施例は、受信機に本願明細書において記載されている方法のうちの1つを実行するためのコンピュータ・プログラムを(例えば、電子的に、または、光学的に)移送するように構成される装置またはシステムを含む。受信機は、例えば、コンピュータ、モバイル機器、記憶装置等であってもよい。装置またはシステムは、例えば、コンピュータ・プログラムを受信機に移送するためのファイルサーバを含む。
【0120】
いくつかの実施形態において、プログラマブル論理デバイス(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ)は、本願明細書において記載されている方法の機能性のいくつかまたは全てを実行するために用いることができる。いくつかの実施形態において、フィールドプログラマブルゲートアレイは、本願明細書において記載されている方法のうちの1つを実行するために、マイクロプロセッサと協働することができる。通常、方法は、任意のハードウェア装置によっても好ましくは実行される。
【0121】
上述の実施例は、本発明の原理のために、単に示しただけである。本願明細書において記載されている配置および詳細の修正変更は他の当業者にとって明らかであるものと理解される。したがって、この目的は、間近に迫った特許クレームの範囲だけによって制限され、本願明細書においてされた実施例の記載および説明として示される具体的な詳細によっては制限されないということである。
【0122】
本発明は、基本的に、周波数領域において働くことができる反響装置のための新規な、コンピュータ的に効率的な構造を提供するものである。利点は、既存の周波数領域の解決策に比べて効率的な実施および周波数帯域における残響時間の任意の制御を含む。
【0123】
本発明の実施例は、周波数変換領域において作動し、各サブバンドにおける個々の処理を有するアルゴリズムに基づくことができる。さらに、このアルゴリズムのインパルス応答は、各周波数帯域において指数関数的に減衰している間、無限に繰り返していることができる。
【0124】
以下に、本発明の実施例の主な利点が記載されている。示された解決策は、本当の拡散反響のための良好な参照であると考えられる無限の周波数帯域的な指数関数的に減衰しているホワイトノイズに知覚的に非常に近い反響をつくり出す。さらに、長い残響時間の場合であっても、設けられているシステムの計算の複雑性は非常に少ない。特に、すべてのサブバンドを処理するための実施例実行は、時間領域サンプルにつき(パラメータT60に応じて)2.2実数乗算および10〜40実数加算だけを必要とした。
【0125】
示された解決策も、すべての周波数帯域において個々にパラメータT60の完全に自由な調整を可能にする。周波数帯域におけるパラメータT60が知覚スペースにおける人間のリスナーのための重要な特性であるため、これは部屋モデリングおよび仮想音響効果にとって特に重要で、実際に部屋音響測定およびシミュレーションにおける共通の手段である。最後に、現在の解決策は、周波数領域で働く。上質の周波数領域反響アルゴリズムに対する要求を有する多数の最新のオーディオ処理技術がある。
【0126】
以下に、本発明の実施例の好ましい実施事例のいくつかが記載されている。実施事例は、短時間周波数変換領域において機能するアプリケーションに部屋効果を加えることに関する。このような実施の例は、次に示されているようなMPEGサラウンドのバイノーラル復号化である。“Multi−Channel Goes Mobile: MPEG Surround Binaural Rendering”,Breebaart, Herre, Jun, Kjoerling, Koppens, Plogsties, Villemoes, 29th AES conference, September 2006およびMPEG Surround standard ISO/IEC FDIS 23003−1、および“Spatial Audio Object Coding(SAOC)−The Upcoming MPEG Standard on Parametric Object Based Audio Coding”,Breebaart, Engdegard, Falch, Hellmuth, Hilpert, Hoelzer, Koppens, Oomen, Resch, Schujiers, Trentievで説明したSAOC。これらのデコーダは、ハイブリッドQMF領域において部屋効果を有する際に利益を得る。反響装置の必要性は、ヘッドホンを用いているリスナーに自然な聴取経験をつくる必要性によって動機づけされる。他の使用事例は、アップミキシングすることに関する。バイノーラル復号化と同様に、アップミキシング・アプリケーションは、しばしば周波数領域でも働いて、反響装置を使用することもできる。他の使用事例は、部屋音響設計の音を頭に描くことに関する。部屋音響ソフトウェアは、設計段階におけるスペース(例えばコンサートホール)の音を頭に描くために、T60の自由制御を有する反響装置を必要とする。他の使用事例は、ゲーム・オーディオおよびVRに関する。バーチャルリアリティにおいて夢中になれる体験の成功した創作は、パラメータT60のいかなる所与の設定も正しく再現する能力に依存する。最後に、他の使用事例は、音声効果に関する。提案された技術は、時間領域反響装置のいくつかの限定を克服することができる。周波数変換および逆周波数変換の助けを借りて、提案された技術は音響設計の効果として適用されることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオ信号(5)を反響させるための反響装置(10)であって、
反響周波数サブバンド信号(27)を得るために、異なるループ遅延(23)によってオーディオ信号(5)を表す少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号(17)を遅延させるためのフィードバック遅延ループ・プロセッサ(20)を含む、反響装置。
【請求項2】
さらに、反響オーディオ信号(41)を得るために反響周波数サブバンド信号(27)を処理するための出力プロセッサ(30)を含む、請求項1に記載の反響装置(10)。
【請求項3】
出力プロセッサ(30;1340)は、混合信号(37)を得るために、および混合信号(37)を合成するために、少なくとも2つの周波数サブバンド信号(17)および対応する反響周波数サブバンド信号(27)を混合するように構成されるか、または、合成されたバンド幅を有する反響オーディオ信号(41;1341)を得るために、反響周波数サブバンド信号(27;1335)を合成するように構成される、請求項1または請求項2に記載の反響装置(10)。
【請求項4】
前記フィードバック遅延ループ・プロセッサ(20)は、各周波数サブバンド信号に対して、フィルタ・インパルス応答(800)を有するフィルタを含み、前記フィルタ・インパルス応答(800)は、フィルタ・インパルス応答サンプルの第1のブロック(815)およびフィルタ・インパルス応答サンプルの第2のブロック(825)を含み、前記第2のブロック(825)はインパルス応答サンプル間隔に関して第1のブロック(815)と類似し、周波数サブバンド信号のためのループ遅延によって第2のブロック(825)の第1のインパルス応答サンプル(821)が第1のブロック(815)の第1のインパルス応答サンプル(811)から遅延し、周波数サブバンド信号のためのフィルタのフィルタ・インパルス応答の第1のブロックおよび第2のブロックが異なるループ遅延(23)によって遅延する、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の反響装置(10)。
【請求項5】
フィードバック遅延ループ・プロセッサ(1320)は、各周波数サブバンド信号(1317)に対して、フィードバックループ(1350)および複数の遅延線タップを有する拡散フィルタ(1330)を含み、フィードバックループ(1350)は、フィードバック信号(1353)を得るために周波数サブバンド信号のためのループ遅延を決定する遅延素子(1352)を含み、フィードバックループ(1350)は、周波数サブバンド信号(1317)およびフィードバック信号(1353)を加算するための加算器(1354)を含み、前記加算器(1354)は拡散フィルタ(1330)に接続され、遅延素子が少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号(17)によって異なる、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の反響装置(1300)。
【請求項6】
フィードバック遅延ループ・プロセッサ(1320)は、少なくとも2つの周波数サブバンド信号(17)の各周波数サブバンド信号(1317)のためのフィードバックループ(1350)を含み、周波数サブバンド信号(1317)のためのフィードバックループ(1350)は、遅延素子(1352)と減衰器(1356)とを含み、遅延素子はループ遅延に関して少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号(17)によって異なる、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の反響装置(1300)。
【請求項7】
フィードバック遅延ループ・プロセッサ(1420)は、反響周波数サブバンド信号(1425)を得るために、少なくとも2つの周波数サブバンド信号(1415)の各周波数サブバンド信号に対して、異なるタップ遅延によって遅延する信号を提供する複数の遅延線タップ(115)を有する遅延線(110)、遅延線(110)に接続されるフィードバックループ(120)、および複数の遅延線タップ(115)によって出力される信号を合成するためのコンバイナ(130)を含み、遅延線(110)は最も高いタップ遅延より高くてループ遅延を決定する合計遅延量を有し、合計遅延量(N1、N2)は少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号(1415)によって異なる、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の反響装置(1400)。
【請求項8】
複数の遅延線タップ(115;615)は、遅延線タップの第1の部分(619−1)および遅延線タップの第2の次の部分(619−2)を含み、遅延線(115;615)は、第2の部分(619−2)のタップ間の平均の間隙の大きさが第1の部分(619−1)のタップ間の平均の間隙の大きさより大きくなるように構成される、請求項7に記載の反響装置(1400)。
【請求項9】
フィードバック遅延ループ・プロセッサ(54)は、低い周波数帯域を示す少なくとも2つの周波数サブバンド信号(53)の第2の周波数サブバンド信号(51−2)のためのループ遅延(56−2)が高い周波数帯域を示す少なくとも2つの周波数サブバンド信号(53)の第1の周波数サブバンド信号(51−1)のためのループ遅延(56−1)より大きくなるように構成される、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の反響装置(10)。
【請求項10】
フィードバックループ(120)およびコンバイナ(130)に接続される拡散フィルタ(1330)または遅延線(110)は、スパース・フィルタ(600)として構成され、スパース・フィルタ(600)のフィルタ・インパルス応答(700)が所定のエネルギー・エンベロープ(715)に近似するようにスパース・フィルタ(600)は可変的なフィルタ・タップ密度を有する、請求項5ないし請求項8のいずれかに記載の反響装置(100;1300)。
【請求項11】
スパース・フィルタ(600;900)は複数の位相修正ユニット(950)を含み、複数の位相修正ユニット(950)のうちの各位相修正ユニットが複数の遅延線タップ(915)のうちの個々の遅延線タップに直接接続され、各位相修正ユニットは、個々の遅延線タップによって出力される対応する信号に増加のない位相演算を適用するように構成される、請求項10に記載の反響装置(100;1300)。
【請求項12】
拡散フィルタ(1330)または遅延線(110)は複素数値デバイスであり、複数の位相修正ユニット(950)のうちの各位相修正ユニット(1110;1120;1130;1140)は、それぞれの遅延線タップ出力信号の実部のための第1の位相修正ユニット入力(1112−1;1122−1;1132−1;1142−1)またはそれぞれの遅延線タップ出力信号の虚部のための第2の位相修正ユニット入力(1112−2;1122−2;1132−2;1142−2)および位相修正出力信号の実部のための第1の位相修正ユニット出力(1114−1;1124−1;1134−1;1144−1)または位相修正出力信号の虚部のための第2の位相修正ユニット出力(1114−2;1124−2;1134−2;1144−2)を含み、
第1の位相修正ユニット入力(1112−1)が第1の位相修正ユニット出力(1114−1)に直接接続され、第2の位相修正ユニット入力(1112−2)が第2の位相修正ユニット出力(1114−2)に直接接続され、または
第2の位相修正ユニット入力(1122−2)は第1の位相修正ユニット出力(1124−1)に直接接続され、第1の位相修正入力(1122−1)は第2の位相修正ユニット出力(1124−2)に接続された相互接続符号変換器(1125)に接続され、それにより、位相修正出力信号の実部がそれぞれの遅延線タップ出力信号の虚部に基づき、位相修正出力信号の虚部がそれぞれの遅延線タップ出力信号の符号変換された実部に基づき、または
第1の修正ユニット入力(1132−1)は、第1の位相修正ユニット出力(1134−1)に接続された相互接続符号変換器(1135−1)に接続され、第2の位相修正ユニット入力(1132−2)は、第2の位相修正ユニット出力(1134−2)に接続された相互接続符号変換器(1135−2)に接続され、それにより、位相修正出力信号の実部がそれぞれの遅延線タップ出力信号の符号変換された実部に基づき、位相修正出力信号の虚部がそれぞれの遅延線タップ出力信号の符号変換された虚部に基づき、または
第1の修正ユニット入力(1142−1)は第2の位相修正ユニット出力(1144−2)に直接接続され、第2の位相修正入力(1142−2)は第1の位相修正ユニット出力(1144−1)に接続された相互接続符号変換器(1145)に接続され、それにより、位相修正出力信号の虚部がそれぞれの遅延線タップ出力信号の実部に基づき、位相修正出力信号の実部がそれぞれの遅延線タップ出力信号の符号変換された虚部に基づく、請求項11に記載の反響装置(100;1300)。
【請求項13】
オーディオ信号(5)は、複数の異なる入力(Chin,1、Chin,2、・・・)または、出力オーディオ・チャネル(Chout,1、Chout,2、・・・)を有し、各入力または出力オーディオ・チャネルは、少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号(1201;1515−1;1515−2)を有し、フィードバック遅延ループ・プロセッサ(1520)は遅延線フィルタ、フィルタ・タップ位置を含む遅延線フィルタの遅延線(1526)または少なくともいくつかのフィルタ・タップ位置に接続された位相修正ユニットを含み、フィードバック遅延ループ・プロセッサ(1520)は、第1の入力(Chin,1)または出力オーディオ・チャネル(Chout,1)の周波数サブバンド信号(1201;1525−1)のための第1の入力または出力構成、および、第2の入力(Chin,2)または出力オーディオ・チャネル(Chout,2)の周波数サブバンド信号(1201;1525−2)のための第2の入力または出力構成を含み、フィードバック遅延ループ・プロセッサ(1520)は、第1および第2の入力または出力構成が異なるフィルタ・タップ位置または位相修正ユニットへの接続(1527)を含むように構成され、第1および第2の入力または出力構成は、同じ遅延線(1526)に接続されている、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の反響装置(1500)。
【請求項14】
フィードバック遅延ループ・プロセッサ(20)は、減衰係数(b)によって少なくとも2つの周波数サブバンド信号(17)のうちの各周波数サブバンド信号を減衰させるように構成され、減衰係数(b)は所定の残響時間(T60)および周波数サブバンド信号のためのループ遅延に依存する、請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の反響装置(10)。
【請求項15】
オーディオ信号(5)を反響させる方法であって、
反響周波数サブバンド信号(27)を得るために、異なるループ遅延(23)によってオーディオ信号(5)を示す少なくとも2つの異なる周波数サブバンド信号(17)を遅延させるステップを含む、方法。
【請求項16】
コンピュータ・プログラムがコンピュータで実行されるときに、請求項15に記載の方法を実行するためのプログラムコードを有する、コンピュータ・プログラム。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2013−508760(P2013−508760A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534616(P2012−534616)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064909
【国際公開番号】WO2011/057868
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(591037214)フラウンホッファー−ゲゼルシャフト ツァ フェルダールング デァ アンゲヴァンテン フォアシュンク エー.ファオ (259)
【Fターム(参考)】