説明

収容方法

【課題】被収容物に凹陥を発生させることなく容器に収容することができる収容方法を提供する。
【解決手段】1枚のポリウレタンシートと2枚の両面テープとが貼り合わされた保持パッド30を収容するための容器10は、隔壁2a、2bが、外壁1と対向するように配置されている。外壁1の間に掛け渡されたフィルム3は、外壁1と隔壁2aとの間、隔壁2aと隔壁2bとの間で弛み部分4を有している。容器10に保持パッド30を収容するときは、捲回部形成工程で、保持パッド30の両外側部から連接箇所15に向けてそれぞれ捲回して捲回部20a、20bを形成する。位置あわせ工程で、隔壁2aの上端部に連接箇所15を位置付ける。収容工程で、連接箇所15を位置付けた隔壁2aを挟んで両側に位置する弛み部分4に捲回部20a、20bをそれぞれ載置する。捲回部20a、20bがそれぞれ下側の外周に沿ってフィルム3で支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は運搬方法に係り、特に、凹陥性を有する少なくとも1枚のシート状の部材と、部材の一面側に貼付された厚さが同じ2枚の貼付材とを有し、隣り合う貼付材が端部同士の直線状の連接箇所で連接した被収容物を、少なくとも1つの隔壁と、隔壁の両側に配置され底部が湾曲状の収容部とを有する容器に収容するための収容方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来荷物(被収容物)の運搬や保管に際しては、当該被収容物が種々の容器に収容され梱包されている。梱包時には、揺れや振動による被収容物の損傷等を回避するため、発泡性プラスチック、スポンジ等の緩衝材、ハニカム構造等を有する衝撃吸収材等が使用されている。
【0003】
被収容物がシート状のフィルムや紙等の場合、ある程度までの大きさであれば積層状態で梱包することができる。これに対して、長尺状や大型のシート状の被収容物では、梱包、開包時の作業性の向上、梱包サイズの縮小を目的として、ロール状に捲回され容器に収容されるのが一般的である。捲回状のフィルム等が容器内面に接触するように収容された場合は、揺れや衝撃、被収容物の自重等により容器内面に接触したフィルム等の表面が損傷し、外圧等を受けると被収容物自体を変形させる可能性がある。これらを避けるために緩衝材等を使用すると、緩衝材等との接触でフィルム等の表面を損傷する可能性もある。
【0004】
また、捲回状の被収容物では、巻き弛みや端面のずれが生じるため、容器内に固定しておく必要がある。捲回時に捲き芯が使用されていれば、捲き芯の両端部を容器内で固定するようにすることができる。例えば、容器の対向する内壁面にホルダを保持させ、ホルダに捲き芯を支持させることで被収容物が容器に直接接触しないようにする技術が開示されている(特許文献1参照)。ところが、この技術では、捲回時に捲き芯を使用するため、捲き芯を使用しない場合には適用することができず、容器にホルダを保持させる等の手間を要するうえ、梱包用の部品点数を増加させることとなる。一方、素材自体が軟質で、巻芯の巻き癖を嫌うような大型や長尺の被収容物の容器としては、例えば、容器の中に可撓性のシート材を設置し、その弛み部分にロールを積置する技術が開示されている(特許文献2参照)。
【0005】
一方、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)用のガラス基板や半導体デバイス用のシリコンウエハ等の被研磨物の表面を平坦化するための研磨加工で使用される研磨布や保持パッドでは、外力によって変形を受けやすい柔らかな材質が用いられている。被研磨物の平坦性を向上させるため、研磨布や保持パッドは表面の平坦性が重要となる。このため、研磨布や保持パッドでは、運搬時や保管時に捲回状にされる場合でも、捲き癖を嫌うことから、捲き芯が使用されないのが通常である。また、捲き芯がない状態で捲回された研磨布等では、外力を受けたときや自重によって凹陥(へこみ)を発生しやすく、捲回された形状が崩れやすい、という問題がある。捲回形状が崩れた場合は、研磨布等の平坦性が損なわれ、捲回跡が残されるため、研磨加工の対象となる被研磨物の平坦化が不十分となるおそれがある。このような研磨布等の運搬や保管に際しては、特許文献2の技術により、凹陥の発生する問題を回避することができる。
【0006】
【特許文献1】特開2006−103785号公報
【特許文献2】特開2009−137644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば、LCDの構成材料であるガラス基板では、LCDの生産性向上を目的に年々大型化が進んでおり、一辺が3mに迫る大型のガラス基板が使用されるに至っている。このようなガラス基板の製造における研磨加工時に使用される保持パッドも、ガラス基板のサイズ変化にあわせて大型化する必要があるが、保持パッドを研磨機の定盤に装着するための両面テープではサイズ対応が既に難しくなっている。このため、ガラス基板を定盤に保持させるために用いられる樹脂製のシート材に対して、2枚の同種の両面テープを連接させたものが用いられている。このような被運搬物の場合は、ロール状に捲回したときに連接箇所が保持パッドの他の箇所に接触するため、特許文献2の技術でも凹陥の発生する問題を回避することが難しくなる。すなわち、運搬中に自重や外力が加わるため、連接箇所の内周や外周に位置する保持パッドの凹陥性を有するシート材にダメージを与え、品質不良を引き起こす、という問題がある。
【0008】
本発明は上記事案に鑑み、被収容物に凹陥を発生させることなく容器に収容することができる収容方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、凹陥性を有する少なくとも1枚のシート状の部材と、前記部材の一面側に貼付された厚さが同じ2枚の貼付材とを有し、隣り合う前記貼付材が端部同士の直線状の連接箇所で連接した被収容物を、少なくとも1つの隔壁と、前記隔壁の両側に配置され底部が湾曲状の収容部とを有する容器に収容するための収容方法であって、前記被収容物を、両外縁部から前記連接箇所に向けてそれぞれ捲回して2つの捲回部を形成する捲回部形成ステップと、前記容器の隔壁の上端部に、前記捲回部形成ステップで捲回部が形成された被収容物の連接箇所を位置付ける位置合わせステップと、前記位置合わせステップで隔壁の上端部に位置付けられた連接箇所の両側の捲回部を、それぞれ前記隔壁の両側に配置された収容部に載置し前記容器に前記被収容物を収容する収容ステップと、を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明では、位置合わせステップで隔壁の上端部に凹陥性を有するシート状の部材に貼付された貼付材の連接箇所を位置付けるため、連接箇所が各捲回部に捲回されず被収容物の部材と接触することなく隔壁に位置付けられるとともに、隔壁の両側に配置され底部が湾曲状の収容部に各捲回部をそれぞれ載置することで、各捲回部が下側に沿って支持されるので、揺れ、振動や自重が加わっても被収容物に凹陥を発生させることなく収容することができる。
【0011】
この場合において、収容ステップで被収容物の捲回部がそれぞれ捲き解けるように収容部に載置することもできる。容器の収容部が非伸縮性の樹脂製で表面が平坦状のシート材で形成されていてもよい。収容部を、底部の下面が容器の内底面から離隔し、被収容物が容器の上端より下側に位置するように形成することができる。被収容物を研磨加工に用いられる保持パッドとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、位置合わせステップで隔壁の上端部に凹陥性を有するシート状の部材に貼付された貼付材の連接箇所を位置付けるため、連接箇所が各捲回部に捲回されず被収容物の部材と接触することなく隔壁に位置付けられるとともに、隔壁の両側に配置され底部が湾曲状の収容部に各捲回部をそれぞれ載置することで、各捲回部が下側に沿って支持されるので、揺れ、振動や自重が加わっても被収容物に凹陥を発生させることなく収容することができる、という効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した実施形態の容器の長手方向と交差する方向の断面を模式的に示す断面図である。
【図2】実施形態の容器に収容される被収容物であり1枚のポリウレタンシートに2枚の両面テープが貼付された保持パッドを模式的に示す断面図である。
【図3】他の態様の被収容物であり2枚のポリウレタンシートに2枚の両面テープがそれぞれ貼付された保持パッドを模式的に示す断面図である。
【図4】容器に被収容物を収容する方法の概略を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明を適用し被研磨物保持用の保持パッドを収容するための容器の実施の形態について説明する。
【0015】
(容器)
図1に示すように、本実施形態の容器10は、1枚のポリウレタンシートに2枚の両面テープが貼付された被収容物としての保持パッド30を収容可能な矩形箱状に形成されている。容器10は、平板状の紙材で形成されており、長手方向(図1における紙面と交差する方向)に沿う2つの外壁1を有している。容器10内には、外壁1より小さい高さの2つの隔壁2aと、外壁1と同じ高さの1つの隔壁2bとが、外壁1と対向するように配置されている。2つの外壁1、2つの隔壁2aおよび1つの隔壁2bは、容器10の長手方向と交差する方向(図1における左右方向。以下、幅方向と呼称する。)で交互に高さが異なるように配置されている。すなわち、外壁1、隔壁2a、隔壁2b、隔壁2a、外壁1の順となる。隔壁2a、2bは容器10の幅方向で略等間隔に配置されている。
【0016】
容器10では、両外側の外壁1の間に、可撓性を有する1枚のフィルム3が掛け渡されている。フィルム3は、隣り合う外壁1と隔壁2aとの間、および、隣り合う隔壁2aと隔壁2bとの間で湾曲状の収容部としての弛み部分4を有している。すなわち、容器10では、4箇所に弛み部分4が形成されており、隔壁2bを挟む両側に1つずつ、合計2つの保持パッド30を収容することができる。フィルム3は、保持パッド30を載置したときに、保持パッド30の上端が外壁1および隔壁2bの上端より下側に位置するように掛け渡されている。換言すれば、外壁1および隔壁2bの高さ(容器10の深さ)は、捲回状の保持パッド30の捲回された部分20a、20bの外径より大きく形成されている。
【0017】
また、フィルム3の弛み部分4は、下面が容器10の内底面から離隔している。フィルム3は、隔壁2a、2bの上端部に位置する部分がそれぞれ図示を省略した両面テープ等で隔壁2a、隔壁2bの上端部に固定されている。フィルム3には、非伸縮性で樹脂製の材質が用いられており、矩形状に形成されている。本例では、フィルム3としてポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する。)製フィルムが用いられており、フィルム3の厚みが0.02〜2.0mm程度に設定されている。フィルム3は、少なくとも保持パッド30と接触する表面が平坦状に形成されている。
【0018】
(被収容物)
保持パッド30は、例えば、液晶ディスプレイ用ガラス基板等の被研磨物の表面に研磨加工を施す際に、当該被研磨物を研磨装置の定盤に保持させるために使用されるものである。図2に示すように、保持パッド30では、大型化する傾向のあるガラス基板等を保持するために、1枚のポリウレタンシート22に対し、厚さが同じ2枚の両面テープ26の端部同士を隣接させた直線状の連接箇所15で連接するように貼付し形成されている。すなわち、保持パッド30は、ポリウレタン樹脂製のポリウレタンシート22と、研磨装置に装着するための両面テープ26とで形成されており、2枚の両面テープ26のポリウレタンシート22と反対の面側にはそれぞれ剥離紙27が配されている(詳細後述)。
【0019】
保持パッド30は、100%モジュラス(2倍長に引っ張る時の張力)が20MPa以下のポリウレタン樹脂で形成されたポリウレタンシート22を有している。100%モジュラスを20MPa以下としたことで、ポリウレタンシート22では、湿式成膜した樹脂が被研磨物の形状に合うように密着するため、被研磨物の保持性向上を図ることができるものの、外力を受けたときや自重により凹陥(へこみ)を発生しやすくなる。ポリウレタンシート22は、被研磨物を定盤に保持させるときに被研磨物に当接する保持面Pを有している。ポリウレタンシート22の保持面Pと反対の面(図2の下面。以下、裏面という。)側には、本例では、ポリウレタンシート22の厚さ(図2の縦方向の長さ)が一様となるようにバフ処理が施されている。このため、ポリウレタンシート22の保持面Pが略平坦となる。
【0020】
ポリウレタンシート22には、湿式成膜法により、保持面P側に、表面平坦性を有するスキン層24が形成されている。スキン層24の下側(ポリウレタンシート22のスキン層24より内部側)には、ポリウレタンシート22の厚さ方向に沿って丸みを帯びた断面三角状の発泡23が形成されている。発泡23は、保持面P側の大きさが、裏面側より小さく形成されている。すなわち、発泡23は保持面P側が裏面側より縮径されている。発泡23は、ポリウレタンシート22の厚さ方向の長さにバラツキを有している。発泡23の間のポリウレタン樹脂は、発泡23より小さい孔径の図示しない微多孔が連続状に形成されたミクロポーラス状に形成されている。また、保持パッド30は、裏面側(バフ処理された面側)に、一面側(図2の最下面側)に剥離紙27を有する両面テープ26の他面側が貼り合わされている。両面テープ26は、PETフィルム製の基材26aを有しており、基材26aの両面に粘着剤層26bがそれぞれ形成されている。なお、本例では、基材26aが保持パッド30を支持する機能も兼ねている。また、本例では、裏面側がバフ処理されているため、発泡23が裏面側の表面で開孔している。
【0021】
保持パッド30の作製時には、湿式成膜法により形成されロール状に捲回されたポリウレタンシート22に対して、一面側に剥離紙27が貼付された両面テープ26の他面側が粘着剤層26bを介して貼り合わされる。すなわち、1つのロールから引き出された1列のポリウレタンシート22に対して、2つのロールから引き出された2列の両面テープ26が貼り合わされる。このとき、直線状の連接箇所15において、2列の両面テープ26に重なりが生じないように、つまり端面同士が連接するように位置あわせされる。そして、矩形状の所望のサイズに裁断され保持パッド30が作製される。
【0022】
(収容器への収容)
得られた保持パッド30を保管、運搬するときは、上述した容器10に収容する。収容する手順は、図4に示すように、保持パッド30に2つの捲回部20a、20bを形成する捲回部形成工程、容器10の隔壁2aに、保持パッド30の連接箇所15を位置付ける位置あわせ工程、保持パッド30の2つの捲回部20a、20bを弛み部分4にそれぞれ載置し容器10に保持パッド30を収容する収容工程、を経る。以下、工程順に説明する。
【0023】
捲回部形成工程では、保持パッド30を、両外縁部から連接箇所15に向けてそれぞれ捲回して2つの捲回部20a、20bを形成する。各捲回部20a、20bは、保持パッド30のサイズにもよるが、3〜20回、好ましくは5〜10回捲回したロール状に形成される。このとき、保持面Pを損傷させないため、捲き芯を使用せずに保持面Pを内側とし内径がおよそ100〜200mm、好ましくは120〜180mmとなるように捲回する。内径が100mmより小さいと捲回跡ができて保持パッドの性能を損なうため、好ましくない。反対に、200mmを超えると容積が大きくなるので、保管や運搬に際しての効率が低下する。捲回終端部には、捲き戻りや捲きずれが生じないようにテープ等を貼付してもよい。保持パッド30のポリウレタンシート22では、凹陥性を有しているため、フィルム3を用いずに運搬用具にそのまま載置すると、外力がかけられたときや自重により凹陥を発生しやすいものである。
【0024】
位置あわせ工程では、容器10の隔壁2aの上端部に連接箇所15を位置付ける。すなわち、直線状の連接箇所15を隔壁2a上に載置する。次いで、収容工程では、連接箇所15を位置付けた隔壁2aを挟んで両側に位置するフィルム3の弛み部分4に2つの捲回部20a、20bをそれぞれ載置する。このとき、捲回終端部にテープ等を貼付していない場合は、捲回部20a、20bが捲き解けるように載置することもできる。換言すれば、保持パッド30を両外縁部から連接箇所15に向けてそれぞれ捲回することから、外縁部が捲回部20a、20bの内側に巻き込まれるため、捲回終端部にテープ等を貼付しなくても、捲回部20a、20bが捲き解けるように載置し収容することができる。容器10に収容された状態で、保持パッド30を運搬することができ、そのまま保管することもできる。
【0025】
(作用等)
次に、本実施形態の容器10および容器10への保持パッド30の収容方法の作用等について説明する。
【0026】
本実施形態の容器10では、外壁1間にフィルム3が掛け渡されており、フィルム3が隣り合う外壁1と隔壁2aとの間、および、隣り合う隔壁2aと隔壁2bとの間で弛み部分4を有している。このため、凹陥性を有する保持パッド30を収容するときに、位置あわせ工程で連接箇所15を隔壁2a上に位置付け、収容工程で2つの捲回部20a、20bをそれぞれ弛み部分4に載置することができる。このため、位置あわせ工程では、連接箇所15を捲回部20a、20bに巻き込むことなく隔壁2a上に位置付けることができる。連接箇所15では剥離紙27が隣接するようにポリウレタンシート22に貼付されているため、保持パッド30を連接箇所15が巻き込まれた1つのロール状に形成した場合は、隣接する両面テープ26の段差が外周側ないし内周側に位置する保持パッド30のポリウレタンシート22と接触するため、保持パッド30に凹陥を発生させることがある。連接箇所15を隔壁2a上に位置付けることで、連接箇所15による凹陥の発生を回避することができる。また、保管時や運搬時には、保持パッド30の捲回部20a、20bがそれぞれ下側(容器10の底側)の外周に沿ってフィルム3で支持される。換言すれば、捲回部20a、20bの下面側の全面がフィルム3と接触する面接触の状態で支持されることとなる。このため、保管中に保持パッド30の自重がかかり、また、運搬中に揺れや振動(ローリングやピッチ)が加えられても、保持パッド30の凹陥の発生を抑制することができる。
【0027】
また、保持パッド30が研磨加工時に被研磨物を保持するために用いられることから、運搬中に損傷を受けたり、捲回された形状が崩れて保持面Pに捲回跡がついたりした場合は、研磨加工の対象となる被研磨物の平坦性を損なうこととなる。本実施形態の容器10では、フィルム3の弛み部分4が内底面から離隔しており、保持パッド30の上端、つまり捲回部20a、20bの上端および連接箇所15が外壁1および隔壁2bの上端より下側に位置するようにフィルム3が掛け渡されている。このため、弛み部分4に載置された捲回部20a、20bは、容器10の内壁面や内底面と接触しない位置に、フィルム3の撓みに沿うように宙づりの状態となる。従って、保持パッド30が容器10の内壁面や内底面と直接接触することなくフィルム3に面接触により支持された状態で保管ないし運搬されるので、揺れ等が加わっても、保持パッド30の損傷や捲回形状が崩れることを抑制して保持パッド30(保持面P)の平坦さを確保することができる。
【0028】
更に、本実施形態の容器10では、平板状の紙材で形成された外壁1間にフィルム3が掛け渡されている。このため、捲き芯を使用して捲回された被収容物を収容するために容器に捲き芯の固定部材等を組み込む場合と比べて、外力や自重による変形を受けやすく捲き芯を使用せずに捲回された被収容物を収容するための容器を少ない部品数で構成することができ容器10の構造を単純化することができる。保持パッド30や研磨加工に使用される研磨布等の場合、例えば、矩形状の1辺や円形状の直径が1000mm程度までの1枚のシートであれば、積層状態で梱包することができるのに対して、例えば、1辺が1400mmを超える矩形状や直径が1400mmを超える円形状では、積層状態で梱包すると却って梱包時や運搬時に手間がかかることとなる。更には、1辺が3000mmに及ぶ矩形状の保持パッドの場合、両面テープ26のサイズ対応上、保持面Pを有する1枚のポリウレタンシート22に対して、2枚の両面テープ26が貼り合わされる。このような保持パッドを1つのロール状に捲回すると、連接箇所による凹陥を発生することがある。これに対して、本実施形態の容器10では、連接箇所15を隔壁2a上に位置付け、弛み部分4に2つの捲回部20a、20bを載置することで収容、梱包ができることから、大判の保持パッド30等の被収容物を収容するときに好適に使用することができる。
【0029】
なお、本実施形態では、容器10の材質に平板状の紙材を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、紙材以外に、例えば、樹脂材や金属材を用いることも可能である。繰り返し使用することを考慮すれば、樹脂材を用いることが有利である。また、本実施形態では、容器10を矩形箱状とする例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、外壁1、隔壁2a、2bが略等間隔に配置されていればよい。
【0030】
また、本実施形態では、フィルム3としてPET製フィルムを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、底部が湾曲状に形成されていればよい。換言すれば、弛み部分4に被運搬物を載置して収容したときに変形しないように、ある程度の強度を有する非伸縮性の材質で表面が平坦状に形成されていればよい。フィルム3の表面に凹凸が形成されていると、被収容物に凹陥を発生させる可能性があるため好ましくない。フィルム3の材質としては、例えば、ナイロンやポリエステル等の樹脂を挙げることができる。また、フィルム3の厚みが0.02mmを下回ると運搬中の揺れ等でフィルム3自体が破損する可能性があり、反対に2.0mmを上回ると被運搬物を柔らかく支持することが難しくなる。このため、フィルム3の厚みを0.02〜2.0mmとすることが好ましい。
【0031】
更に、本実施形態では特に言及していないが、容器10の上部を蓋材で覆うようにしてもよい。この場合、蓋材を別部材とし容器10の上側に載置するようにしてもよく、容器1と蓋材とを一体形成するようにしてもよい。このようにすれば、運搬時等に外部からの異物混入、ひいては、保持パッド30等の被収容物に対する異物付着を抑制することができる。蓋材の形状は、容器10を覆うことができればよく、特に制限されるものではない。例えば、蓋材を、外壁1および隔壁2bの上端部に接するように平板状に形成してもよい。
【0032】
また更に、本実施形態では、容器10が2つの隔壁2a、1つの隔壁2bを有する例を示したが、本発明はこれらの数に制限されるものではない。例えば、3つの隔壁2aと2つの隔壁2bとを交互に高さが異なるように配置してもよい。このようにすれば、本実施形態の容器10が2つの保持パッド30を収容できるのに対して、3つの保持パッド30を収容することができる。反対に、1つの隔壁2aを有するようにしてもよく、この場合には保持パッド30を1個ずつ収容することができる。また、本実施形態では、隔壁2bの高さを隔壁2aより大きくする例を示したが、隔壁2bを用いず隔壁2aのみを配置するようにしてもよく、保持パッド30の上端が外壁1より下側に位置していればよい。また、本実施形態では、隔壁2bが外壁1aと同じ高さの例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、隔壁2a、2bが外壁1aより小さい高さを有していればよい。
【0033】
更にまた、本実施形態では、被収容物として1枚のポリウレタンシート22と2枚の両面テープ26とを貼り合わせた保持パッド30を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、凹陥性を有する少なくとも1枚の部材を連接した被収容物の収容に好適に使用することができる。例えば、図3に示すように、大きさが異なる以外はポリウレタンシート22と同様に形成されたポリウレタンシート22a、22bにそれぞれ両面テープ26が貼り合わされた保持パッド30a、30bを連接部材18で連接した被収容物40に適用することも可能である。連接部材18としては、テープ状であればよく、特に制限されるものではない。この場合は、連接部材18を隔壁2a上に位置付けるようにすればよい。また、被収容物としては、保持パッド以外に、例えば、樹脂製のフィルムや不織布等を有する、被研磨物を研磨加工するための研磨布を挙げることができる。また、本実施形態では、保持パッド30が湿式成膜法で作製したポリウレタンシート22と両面テープ26とを有する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、乾式法で作製された樹脂シートを有していてもよい。また、保持パッドや研磨布の材質や内部の発泡構造についても、特に制限されるものではない。更に、本実施形態では、保持パッド30を捲回状とするときに保持面Pを内側とする例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、保持面Pを外側としてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、保持パッド30に、裏面側にバフ処理を施したポリウレタンシート22を用いる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、バフ処理を施すことなく湿式成膜法により形成されたポリウレタンシートを両面テープ26と貼り合わせるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は被収容物に凹陥を発生させることなく容器に収容することができる収容方法を提供するものであるため、容器の製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0036】
2a、2b 隔壁
4 弛み部分(収容部)
10 容器
15 連接箇所
20a、20b 捲回部
22 ポリウレタンシート(部材)
26 両面テープ(貼付材)
30 保持パッド(被収容物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹陥性を有する少なくとも1枚のシート状の部材と、前記部材の一面側に貼付された厚さが同じ2枚の貼付材とを有し、隣り合う前記貼付材が端部同士の直線状の連接箇所で連接した被収容物を、少なくとも1つの隔壁と、前記隔壁の両側に配置され底部が湾曲状の収容部とを有する容器に収容するための収容方法であって、
前記被収容物を、両外縁部から前記連接箇所に向けてそれぞれ捲回して2つの捲回部を形成する捲回部形成ステップと、
前記容器の隔壁の上端部に、前記捲回部形成ステップで捲回部が形成された被収容物の連接箇所を位置付ける位置合わせステップと、
前記位置合わせステップで隔壁の上端部に位置付けられた連接箇所の両側の捲回部を、それぞれ前記隔壁の両側に配置された収容部に載置し前記容器に前記被収容物を収容する収容ステップと、
を含むことを特徴とする収容方法。
【請求項2】
前記収容ステップにおいて、前記被収容物の捲回部がそれぞれ捲き解けるように前記収容部に載置することを特徴とする請求項1に記載の収容方法。
【請求項3】
前記容器は、前記収容部が非伸縮性の樹脂製で表面が平坦状のシート材で形成されたことを特徴とする請求項1に記載の収容方法。
【請求項4】
前記収容部は、底部が、下面が前記容器の内底面から離隔し、前記被収容物が前記容器の上端より下側に位置するように形成されたことを特徴とする請求項3に記載の収容方法。
【請求項5】
前記被収容物は、研磨加工に用いられる保持パッドであることを特徴とする請求項1に記載の収容方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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