説明

収穫機用の掻込みリール

【課題】タイン取付部材に対するタインの組付けを能率よく行うと共に、タインの交換等のメンテナンス作業を行い易くすることができる収穫機用の掻込みリールを提供する。
【解決手段】左右一対のリール外枠の外周に横設される複数のタイン取付部材19に、上部をU字状に屈曲させた取付部20cとその先端を折り曲げて形成した係止部20dを有するタイン20を、左右方向の掻き込み間隔を有して着脱自在に取付ける収穫機用の掻込みリールであって、前記タイン取付部材19を前取付片26と後取付片27とにより構成し、前記前取付片26と後取付片27の間にタイン20の取付部20cを下方から挿脱自在に挿入する取付溝28を形成し、後取付片27又は前取付片26にタイン20の係止部20dを下方からタイン挿脱方向にスライド自在に挿入する係合溝27aを穿設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汎用コンバイン等に設置される収穫機用の掻込みリールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場に植立する作物を掻込みリールで掻込みながら刈取部で刈取り、刈取られた作物を搬送部を介し脱穀部に供給し脱穀選別する汎用コンバインは、掻込みリールを刈取部の前方で掻込回転自在に軸支している。上記掻込みリールは、左右一対のリール(リール外枠)間に複数のタイン取付部材を横設し、各タイン取付部材に複数のタインを左右方向の掻き込み間隔を有して着脱自在に取付けることができるタイン取付構造を備えている(例えば特許文献1参照。)。
上記タイン取付構造は、タインを弾力性を有する線状部材の上端部に逆U字状に屈曲させた上端屈曲部(取付部)を形成し、その折り返し端部にタイン取付部材側に向けて前後方向に屈曲させた係止部を設けている。そして、タイン取付部材に対し各タインは係止部を予め孔状の各係合部に挿入し並べた状態で、各上端屈曲部の上に帯板状の支持板を載せたのち、ボルトを支持板のボルト孔と上端屈曲部内とタイン取付部材のボルト孔に一連に挿入し、ボルト突出端にナットを螺装して締着することにより、タイン取付部材と支持板との間で上端屈曲部を挟持してタインを取付ける構成にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭64−439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示される掻込みリールは、タインの係止部をタイン取付部材の係合部に挿入するので、タイン取付部材に対するタインを位置決めし支持板を載せたとき、ボルトの挿入を行い易くすることができる利点がある。然し、多数のタインのうち1本のタインが折損しその交換や修理等のメンテナンス作業を行う場合でも、多数のボルトナットを外したのちタインを挟持している支持板を外す必要があること、及びその再組付けをするとき煩雑な作業と手間を要する欠点がある。またタインの組付け作業やメンテナンス作業時に部品の散逸や誤組付け等を伴い易く、特に圃場において行われるタインの取付け作業性やメンテナンス性が非能率になる等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の収穫機用の掻込みリールは、第1に、左右一対のリール外枠17の外周に横設される複数のタイン取付部材19に、上部をU字状に屈曲させた取付部20cとその先端を折り曲げて形成した係止部20dを有するタイン20を、左右方向の掻き込み間隔を有して着脱自在に取付ける収穫機用の掻込みリールにおいて、前記タイン取付部材19を、タイン取付け用のボルト29を挿入する取付孔30を形成した前取付片26と後取付片27とにより構成し、前記前取付片26と後取付片27の間にタイン20の取付部20cを下方から挿脱自在に挿入する取付溝28を形成し、後取付片27又は前取付片26にタイン20の係止部20dを下方からタイン挿脱方向にスライド自在に挿入する係合溝27aを穿設したことを特徴としている。
【0006】
第2に、前取付片26と後取付片27との間に形成される取付溝28を、溝口側の溝口幅L2が溝奥側の溝奥幅L1より徐々に広くなるように形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、タイン取付部材を前取付片と後取付片とにより構成し、前取付片と後取付片の間にタインの取付部を下方から挿脱自在に挿入する取付溝を形成し、後取付片又は前取付片にタインの係止部を下方からタイン挿脱方向にスライド自在に挿入する係合溝を穿設したことにより、タインを取付けるとき、取付部を取付溝内に下方から挿入しながら係止部を係合溝内に入れると、該係止部が係合溝に案内され取付部を取付孔に対向させた適正取付け位置にすることができるため、ボルトの挿入及び締着を能率よく速やかに行うことができる。従って、タインの交換等のメンテナンス作業を行うとき、従来のものように多数のボルトナットやタイン固定用の支持板を取り外す等の手間を要することなく、タインのみの着脱を簡単に行うことができる。
【0008】
請求項2の発明によれば、前取付片と後取付片との間に形成される取付溝を、溝口側の溝口幅が溝奥側の溝奥幅より徐々に広くなるように形成したことにより、タイン取付部材にタインを取付けるとき、取付部の取付溝内への挿入を拡開している溝口幅から差し入れて容易に行うことができる。また前取付片と後取付片は、ボルトの締め込みによって取付部を確実に挟持し固定することができ、タイン取付バーに対するタインの着脱を能率よく簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】汎用型コンバインの側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】掻込みリール及び刈取部並びに搬送部の側面図である。
【図4】タイン取付構造の正面図である。
【図5】タイン取付構造の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図示する符号1は本発明に係る汎用型コンバインであり、このコンバイン1は、左右一対のクローラ式の走行部2aを備える機体フレーム2に、その右側方位置に運転部3と原動機部4と穀粒貯留部5を前後方向に配設し、左側方位置に脱穀部6を配設し、脱穀部6の前方位置に刈取部9と搬送部10等を配設している。また刈取部9と搬送部10等は、刈取部9による作物の刈高さ調節を行うように昇降自在に支持されている。これにより圃場に植立する作物を刈取部9で刈取り、刈取られた作物を搬送部10を介し脱穀部6に搬送し、脱穀部6により脱穀選別された穀粒(精粒)を穀粒貯留部5に供給して貯留する。
【0011】
刈取部9は図1〜図3に示すように、プラットホーム11の前端部に左右一対の分草体12を取付け、該分草体12,12間の後方位置に刈刃13を設け、該刈刃13の後方位置にプラットホームオーガ14を設け、プラットホーム11の後端上部に左右一対のリール支持アーム15の基端を取付け、両リール支持アーム15,15間に収穫機用リールとしての掻込みリール16を回転自在に軸支している。
掻込みリール16は、左右のリール外枠17,17の中心部をリール支軸18を介してリール支持アーム15,15の先端部に取付け、両リール外枠17,17間に複数のタイン取付部材19を円周方向の掻き込み間隔を有して横設している。各タイン取付部材19には本発明に係るタイン取付構造によって、複数のタイン20を左右方向の掻き込み間隔を有して着脱自在に取付けている。上記掻込みリール16は前記リール支持アーム15,15の一方側に構成される伝動ケース21を介して下向き矢印方向に回転駆動される。
【0012】
次に、図3〜図5を参照しタイン取付構造について説明する。まずタイン取付部材19は、左右のリール外枠17に取付けられる円形パイプ状の横支持杆23と、該横支持杆23の略全長下部に沿ってタイン20を下向きに突出するように取付けるタイン取付バー25とからなる。タイン20は弾力性を有するバネ鋼線状部材からなり、正面視で直線状をなす掻込部20aの上部にコイル部20bを形成すると共に、その上部に逆U字状に屈曲させた取付部20cを形成し、且つ逆U字状に折り返された端部にタイン取付バー25側に向けて前後方向に屈曲させた係止部20dを形成している。
【0013】
タイン取付バー25は、1枚の帯状板の幅中央部から一側に偏らせた位置でU字状に屈曲させることにより、側面視において前後方向で長さを異ならせた短片部からなる前取付片26と長片部からなる後取付片27とを一体的に形成した構成にしている。また上記タイン取付バー25はプレス又はブレーキ加工等による曲げ加工時において、タイン20の取付部20cをタイン挿脱方向にスライド自在に挿入する取付溝28を、図5に点線で示すように、溝奥側の溝奥幅L1から溝口側(溝先端開放側)の溝口幅L2が徐々に広がるように形成し、取付溝28に対する取付部20cの挿脱を溝の拡開形状によって行い易くしている。
【0014】
さらにタイン取付バー25は、前取付片26と後取付片27の板面に対し、取付溝28内の取付部20cをボルト29によって取付ける取付孔30を、左右方向に所定の取付け間隔を有して穿設している。各取付孔30は、溝奥から解放端側に向けて離間させた所定の取付距離Hを有して穿設している。これにより、取付溝28に取付部20cを挿入した状態で、各取付孔30にボルト29を挿入し突出端にナット31を螺装し締着したとき、前取付片26と後取付片27とをその弾力性に抗し、図5に点線で示す溝拡開姿勢から実線の挟持姿勢に無理なく締め込み、取付溝28内の取付部20cを押圧し挟持するようにしている。
【0015】
また前取付片26は板端部を前側に向けて屈曲させたリブ26aを形成しており、該リブ26aは板剛性を高め且つ取付溝28内への取付部20cの挿入を容易にする。また後取付片27は下方の板端部から取付孔30側に向けて凹溝状の係合溝27aを穿設している。この係合溝27aは取付溝28内に取付部20cを挿入するとき、前記係止部20dを挿脱方向に挿入案内しタイン20を適正取付位置に簡単に位置決めすることができる。上記のように構成されるタイン取付バー25は、その屈曲部側を横支持杆23に一体的に固設している。
【0016】
以上のように構成されるタイン取付構造によるタイン20の取付け態様について説明する。先ず、タイン20を係止部20dが後方向きとなる姿勢で、取付部20cを前側から後取付片27の下部側に平行状に接当させると共に、取付部20cを下方から溝口幅L2の溝口を介し取付溝28内にスライド挿入しながら、係止部20dを係合溝27a内に挿入し、取付部20cを取付孔30に一致させる。次いで、ボルト29を前取付片26側の取付孔30から挿入し、取付溝28内で取付部20cの屈曲部内に入れて後取付片27側の取付孔30に挿入し、ボルト突出端にナット31を螺装し両者を締着する。
【0017】
これにより前取付片26と後取付片27は、ボルト29とナット31の締め込みにより、前記点線で示す溝拡開姿勢から取付部20cを押圧し強く挟持してタイン20を安定よく固定する。このとき係合溝27aは溝口側を広くしているので取付部20cの挿入が行い易く、また係止部20dは係合溝27aの奥端に接当するため、取付部20cが取付孔30から大きく外れることなく適正取付け位置になるので、ボルト29の挿入及び締着を速やかに行うことができる。従って、掻込みリール16に装着されたままのタイン取付バー25に対しても、全てのタイン20を1本づつ簡単且つ容易に取付けることができる。
【0018】
上記のように取付けられたタイン20は、機体を前進させながら掻込みリール16を回転して掻込み作業を行うとき、下向き姿勢の各掻込部20aが作物を引っ掛けて刈刃13及びプラットホームオーガ14側に掻き込む。これにより作物は刈刃13によって刈り取られプラットホームオーガ14から搬送部10を介して脱穀部6に搬送供給される。この作物掻き込み時に各タイン20は、前後及び左右方向に負荷を受けるが、前後方向負荷に対しては、前取付片26と後取付片27が取付部20cを挟持しているので安定支持される。また左右方向負荷に対しては、係止部20dが係合溝27aに係止され且つ取付部20cが挟持固定されていることにより安定支持される。従って、タイン20が倒伏作物を強引に掻き込む場合でも、ボルト29,ナット31の緩みを抑制し長期にわたり安定的な掻き込みを行うことができる。
【0019】
またタイン20が折損したり弾性疲労を生じて交換を要するときは、そのタイン20を締着しているボルト29を緩め取付孔30から引き抜くと、取付部20cの挟持及びボルト29の係止が解除され、タイン20をタイン取付バー25から離脱させることができる。このとき前取付片26と後取付片27は、板部材が有する弾力性によって取付溝28を拡開させる拡開姿勢に復帰するため、大きな取出し抵抗を伴うことなくタイン20を溝方向に沿って容易に取出すことができる。また係合溝27aは凹溝状に形成され溝端を開放しているので、係止部20dを溝方向にスライド移動させて溝端から離脱する。
【0020】
またタイン20を取外したタイン取付部材19に対するタイン20の再取付けは、前記したように後取付片27の下部側を利用して、取付部20cを下方からタイン挿脱方向に取付溝28内にスライド挿入しながら、係止部20dを係合溝27a内に差し入れる。このとき係合溝27aは溝口側を拡開しているため取付部20cの挿入が行い易く、また係止部20dが係合溝27aの奥端に接当するため、取付部20cが取付孔30から大きく外れないので、ボルト29の挿入及び締着を速やかに行うことができる。
【0021】
このように本発明による取付構造は、タイン20の交換や修理等のメンテナンス作業を行うとき、そのタイン20のみの着脱を行うことができるので、従来のものように複数のタイン固定用の支持板を止めている多数のボルトナットを外し支持板を取り外す等の手間を要することがない。従って、掻込みリール16に装着されたままのタイン取付バー25に対しても、タイン20毎のボルト29を着脱するだけの簡単な作業によって、タイン20の着脱を能率よく簡単に行うことができる等の特徴がある。
【0022】
尚、図示例のタイン取付バー25は、前取付片26と後取付片27とを帯状板の中途部を側面視でU字状に屈曲することにより形成し、その屈曲部を左右のリール外枠17を連結する横支持杆23に固設したが、これに限ることなく例えば、前取付片26と後取付片27とに分割した2枚の帯板を横支持杆23に取付溝28を有して固設するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 汎用コンバイン
6 刈取部
16 掻込みリール
17 リール外枠
19 タイン取付部材
20 タイン
20c 取付部
20d 係止部
25 タイン取付バー
26 前取付片
27 後取付片
27a 係合溝
28 取付溝
29 ボルト
30 取付孔
31 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のリール外枠(17)の外周に横設される複数のタイン取付部材(19)に、上部をU字状に屈曲させた取付部(20c)とその先端を折り曲げて形成した係止部(20d)を有するタイン(20)を、左右方向の掻き込み間隔を有して着脱自在に取付ける収穫機用の掻込みリールにおいて、前記タイン取付部材(19)を、タイン取付け用のボルト(29)を挿入する取付孔(30)を形成した前取付片(26)と後取付片(27)とにより構成し、前記前取付片(26)と後取付片(27)の間にタイン(20)の取付部(20c)を下方から挿脱自在に挿入する取付溝(28)を形成し、後取付片(27)又は前取付片(26)にタイン(20)の係止部(20d)を下方からタイン挿脱方向にスライド自在に挿入する係合溝(27a)を穿設したことを特徴とする収穫機用の掻込みリール。
【請求項2】
前取付片(26)と後取付片(27)との間に形成される取付溝(28)を、溝口側の溝口幅(L2)が溝奥側の溝奥幅(L1)より徐々に広くなるように形成した請求項1記載の収穫機用の掻込みリール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate